説明

嵌合式屋根材、吊子および嵌合式屋根構造

【課題】嵌合式屋根材の施工に当たり、屋根材の裏面が傷付いたりその裏面の断熱材が剥がれたりしない屋根材を提案することにある。
【解決手段】矩形状主板部の幅方向両端側縁に沿ってすくい側嵌合部と被せ側嵌合部とを曲成してなる金属板製の屋根材において、その被せ側嵌合部が、主板部からの延在位置に形成された被せ側立上り部と、この被せ側立上り部の延在位置に形成された、略水平な被せ側中央凹部ならびにこの中央凹部を挟んでその両側に位置する被せ側第1凸部および被せ側第2凸部とを連設してなり、前記第1凸部は、前記被せ側立上り部の延在位置に形成された被せ側第1嵌合アゴ部と、この第1嵌合アゴ部の延在位置に略水平に張り出した被せ側第1頂辺と、この頂辺端部から曲成された被せ側第1立下り辺と、この第1立下り辺下縁に形成された被せ側第1傾斜辺とによって構成され、前記第1凸部の前記被せ側第1立下り辺は、下方へゆくほど前記中央凹部へ近づいて垂直から僅かに傾斜しているものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、簡単かつ確実に屋根葺施工ができるように改善された嵌合式屋根材および、この屋根材を嵌着されて固定する吊子、並びにこれら屋根材および吊子を用いた嵌合式屋根構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、屋根葺きの方法として、図1(a),(b)に示すように、屋根の梁bの上に一定の間隔で、それぞれ台形状門形の固定金具fを介して吊子31を取付け、それらの吊子31の、屋根材1の幅方向(図では左右方向)に対応する横方向の両側部に設けられた第1固定部32および第2固定部33のうちの第1固定部32に、金属板からなる屋根材1の幅方向一側端部に設けられたすくい側嵌合部2を嵌合させ、さらに該すくい側嵌合部2と、吊子31の第2固定部33とに、隣接する他の屋根材1の幅方向他側端部に設けられた被せ側嵌合部3の中央凹部4で繋がれた二つの凸部5,6をそれぞれ重畳させて嵌着し、こうして屋根材1どうしをその幅方向に順次に繋ぎ合わせて、ボルトレス状態(嵌合式)で屋根を葺き上げる施工方法が知られている(特許文献1参照)。
【0003】
図1(a),(b)に示す屋根材1は、そのすくい側嵌合部2に、中央の主板部7の、屋根材1の幅方向に対応する幅方向の一端側縁から立上り部8を経て延設された折曲部である嵌合アゴ部9および、その嵌合アゴ部9から水平な頂辺10を経て順次に延設された傾斜内辺11および引掛け辺12を有するとともに、その被せ側嵌合部3の二つの凸部5,6のうち主板部7に近い方の凸部5に、主板部7の上記幅方向の他端側縁から立上り部13を経て延設された折曲部である嵌合アゴ部14と、その嵌合アゴ部14から水平な頂辺15を経て順次に延設された立下り内辺16および傾斜内辺17とを有し、さらに、主板部7から遠い方の凸部6に、中央凹部4から順次に延設された傾斜内辺18および僅かに内傾した立上り内辺19と、その立上り内辺19から水平な頂辺20を経て延設された折曲部である嵌合アゴ部21と、その嵌合アゴ部21から延設された引掛け辺22とを有している。
【0004】
この一方、図1(a)に示す吊子31と、図1(b)に示す吊子31とは異なっており、図1(a)に示す吊子31は、第1,第2固定部32,33がそれぞれ、中央の主板部34の上記横方向の両端縁に沿って曲成されたアゴ部35,36および、それらのアゴ部35,36から延設された水平な頂辺37,38を有して逆L字状をなしている。そして第2固定部33のアゴ部36には、回転防止用突起39が内向きに突設されている。
【0005】
これにより図1(a)に示す吊子31は、その第2固定部33の頂辺38および回転防止用突起39に、屋根材1のすくい側嵌合部2の傾斜内辺11および引掛け辺12を掛合させるとともに、その第2固定部33のアゴ部36に、屋根材1のすくい側嵌合部2の嵌合アゴ部9を掛合させることで、屋根材1のすくい側嵌合部2を第2固定部33に嵌合させる。またこの吊子31は、その第1固定部31のアゴ部35に、凸部5の嵌合アゴ部14を掛合させるとともに、その第1固定部31の頂辺37に、凸部5の立下り内辺16を掛合させることで、屋根材1の被せ側嵌合部3の凸部5を第1固定部31に嵌合させ、さらに、第2固定部32に嵌合したすくい側嵌合部2の傾斜内辺11に、凸部6の立上り内辺19を掛合させるとともに、そのすくい側嵌合部2の嵌合アゴ部9に、凸部6の嵌合アゴ部21を掛合させることで、屋根材1の被せ側嵌合部3の凸部6を、すくい側嵌合部2を介して第2固定部33に嵌合させる。
【0006】
また図1(b)に示す吊子31は、第1,第2固定部32,33がそれぞれ、中央の主板部34の上記横方向の両端縁から側方に順次に延設された傾斜辺40,41および立上り辺42,43を有し、さらに第1固定部32が、その立上り辺42から順位に延設された水平な頂辺44および下向きに傾斜した引掛け辺45を有し、また第2固定部33が、その立上り辺43から延設された下向きに傾斜した引掛け辺46を有している。
【0007】
これにより図1(b)に示す吊子31は、その第2固定部33の立上り辺43に、屋根材1のすくい側嵌合部2の傾斜内辺11および引掛け辺12を掛合させるとともに、その第2固定部33の引掛け辺46に、屋根材1のすくい側嵌合部2の嵌合アゴ部9を掛合させることで、屋根材1のすくい側嵌合部2を第2固定部33に嵌合させる。またこの吊子31は、その第1固定部32の引掛け辺45に、凸部5の嵌合アゴ部14を掛合させるとともに、その第1固定部32の立上り辺42に、凸部5の立下り内辺16を掛合させることで、屋根材1の被せ側嵌合部3の凸部5を第1固定部32に嵌合させ、さらに、第2固定部33に嵌合したすくい側嵌合部2の傾斜内辺11に、凸部6の立上り内辺19を掛合させるとともに、そのすくい側嵌合部2の嵌合アゴ部9に、凸部6の嵌合アゴ部21を掛合させることで、屋根材1の被せ側嵌合部3の凸部6を、すくい側嵌合部2を介して第2固定部33に嵌合させる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2009−84926号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、図1(a)に示す吊子31を用いる場合には、屋根材1の主板7に近い方の凸部5を吊子31の第1固定部32に嵌合させる際に、その第1固定部32の頂辺37の端縁と屋根材1の凸部5の立下り内辺16とが摺接するため、屋根材1の裏面に傷が付く可能性があり、屋根材1の裏面に断熱材が張設されている場合はその断熱材が頂辺37の端縁に引掛かって剥がれる可能性があるという不都合があった。また、吊子31のアゴ部35,36が厚板の曲げ成形で形成されていることからその曲率半径を充分小さくできないため、屋根材1の嵌合アゴ部9,14がそれらのアゴ部35,36から外れやすくなるという不都合もあり、特に屋根材1の裏面に断熱材が張設されている場合にその不都合が顕著となった。
【0010】
さらに、第1,第2固定部32,33の頂辺37,38が吊子31の、屋根材1の長手方向(図では紙面と直交方向)に対応する奥行き方向の寸法の全長に亘る広い平坦面を持っており、アゴ部35,36の下向き外面も比較的広い平坦面を持っていることから、屋根材1の裏面に断熱材が張設されている場合に、第1,第2固定部32,33の頂辺37,38およびアゴ部35,36の下向き外面から断熱材に加わる面圧が低くなって、断熱材があまり圧縮されず、屋根材1と吊子31との嵌合状態に影響を与えてしまい、それゆえ吊子31の設置高さを調整する必要があるという不都合があり、また、断熱材の有無で吊子31の設置高さを変える必要があるという不都合もあった。
【0011】
加えて、図1(a)に示す吊子31では、アゴ部35,36が主板部34から低い角度で立ち上がっており、しかも主板部34が平坦であるので、そのままでは、屋根材1を嵌合させるために下向きの押圧力を加えるとアゴ部35,36が倒れやすいことから、主板部34の上記奥行き方向の両端縁からアゴ部35,36にかけて上向きのフランジを溶接等で設けて主板部34およびアゴ部35,36を補強しているため、吊子の製造に工数と費用が嵩むという不都合があった。
【0012】
この一方、図1(b)に示す吊子31を用いる場合には、吊子31の引掛け辺45,46の端縁の上記奥行き方向の寸法の全長に亘る長い端面に屋根材1の嵌合アゴ部9,14が嵌合することから、屋根材1の裏面に断熱材が張設されている場合に上記嵌合により断熱材に加わる面圧が低くなって、その断熱材に引掛け辺45,46の端縁が食い込みにくいため、屋根材1の嵌合アゴ部9,14が吊子31の引掛け辺45,46から外れやすいという不都合があった。
【0013】
さらに、第1固定部32の頂辺44が上記奥行き方向の寸法の全長に亘る平坦で広い面積を持っており、引掛け辺45の端縁も上記奥行き方向の全長に亘る長い端面を持っていることから、屋根材1の裏面に断熱材が張設されている場合に、第1固定部32の頂辺44および引掛け辺45の端面から断熱材に加わる面圧が低くなって、それら頂辺および端面が断熱材に食い込みにくいため、断熱材が屋根材1と吊子31との嵌合状態に影響を与えてしまい、それゆえ吊子31の設置高さを調整する必要があるという不都合があり、また、断熱材の有無で吊子31の設置高さを変える必要があるという不都合もあった。
【0014】
そこで、本発明は、嵌合式屋根材の施工に当たり、屋根材の裏面が傷付いたり断熱材が剥がれたりせず、また屋根材の嵌合アゴ部が吊子から外れにくく、しかも屋根材と吊子との嵌合状態が断熱材の影響を受けにくく、そして断熱材の有無にかかわらず吊子の設置高さを一定にできるような嵌合式屋根材、吊子および嵌合式屋根構造を提供することを目的としている。
【0015】
さらに本発明は、屋根材を嵌合させるために下向きの押圧力を加えても固定部が倒れにくく、しかも製造に工数と費用が嵩まない吊子を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0016】
従来技術が抱えている上述した問題点を克服して、上記の目的を実現するため鋭意研究した結果、発明者らは、以下の要旨構成に係る本発明を開発した。即ち、本発明は、矩形状主板部の幅方向両端側縁に沿ってすくい側嵌合部と被せ側嵌合部とを曲成されてなる金属板製の屋根材において、前記すくい側嵌合部は;主板部からの延在位置に形成されたすくい側立上り部と、このすくい側立上り部からの延在位置に形成されたすくい側嵌合アゴ部と、この嵌合アゴ部からの延在位置に立ち上がるすくい側傾斜外辺と、この傾斜外辺上端から略水平に張り出したすくい側頂辺と、この頂辺から下向きに形成されたすくい側傾斜内辺と、この傾斜内辺からの延在位置に形成されたすくい側引掛け辺と、によって構成され、前記被せ側嵌合部は;主板部からの延在位置に形成された被せ側立上り部と、この被せ側立上り部からの延在位置に形成された、略水平な被せ側中央凹部ならびにこの中央凹部を挟んでその両側に位置する被せ側第1凸部および被せ側第2凸部と、を連設されてなるものであって、前記第1凸部は、前記被せ側立上り部からの延在位置に形成された被せ側第1嵌合アゴ部と、この第1嵌合アゴ部からの延在位置に略水平に張り出した被せ側第1頂辺と、この頂辺端部から曲成された被せ側第1立下り辺と、この第1立下り辺下縁に形成された被せ側第1傾斜辺と、によって構成され、前記第2凸部は、前記中央凹部から曲成された被せ側第2傾斜辺と、この傾斜辺上端から立ち上げられた被せ側第2立上り辺と、この立上り辺上端から曲成された被せ側第2頂辺と、この第2頂辺端部から曲成された被せ側第2嵌合アゴ部と、この第2嵌合アゴ部下縁から外側に向けて折返された被せ側引掛け辺と、によって構成され、前記第1凸部の前記被せ側第1立下り辺は下方へゆくほど前記中央凹部側へ寄るように垂直から僅かに傾斜していることを特徴とする嵌合式屋根材を提案する。
【0017】
なお、本発明の前記屋根材においては、前記被せ側嵌合部の前記第2凸部の前記被せ側第2立上り辺は下方へゆくほど前記中央凹部側へ寄るように垂直から僅かに傾斜していること、前記すくい側嵌合部の前記すくい側引掛け辺の先端は折り返されていること、そして前記主板部ならびにその両端側縁に沿って形成されたすくい側嵌合部および被せ側嵌合部の裏面に断熱材が貼着されていることが、より好ましい解決手段を提供できる。
【0018】
次に、本発明は、前記嵌合式屋根材を嵌着固定するための吊子において、前記屋根材の主板部の幅方向に対応する、矩形状主板部の幅方向の一端側縁に沿って曲成され、一の前記屋根材の被せ側嵌合部の被せ側第1凸部を嵌合される第1固定部と、前記主板部の幅方向の他端側縁に沿って曲成され、他の前記屋根材のすくい側嵌合部を嵌合されるとともにその上に前記一の屋根材の被せ側嵌合部の被せ側第2凸部を嵌合される第2固定部と、を具え、前記第1固定部と前記第2固定部とが、略対称の形状をなすとともに各々、主板部の側縁からの延在位置に形成された傾斜辺と、この傾斜辺の上端から立ち上がる立上り辺と、前記屋根材の主板部の長手方向に対応する奥行き方向の、前記傾斜辺の中央部から切起こされて、この立上り辺の前記奥行き方向中央部から斜め下方に外向きに張出した引掛け辺と、前記傾斜辺の前記奥行き方向両端部から外向きに張り出した突起状の引掛け角(つの)と、前記立上り辺の上縁から略水平に内向きに張り出した頂辺と、を有し、前記頂辺の前記奥行き方向中央部が下方へ窪んでいることを特徴とする吊子を提案する。
【0019】
なお、本発明の前記吊子においては、前記主板部の前記奥行き方向の両端部から前記第1固定部および前記第2固定部の傾斜辺の前記奥行き方向の両端部にかけて下向きに折曲形成されたフランジを具え、前記引掛け角(つの)は前記フランジからの延在位置に形成されていること、前記主板部から前記第1固定部および前記第2固定部の傾斜辺にかけて延在するように突条状に形成されたリブを有すること、そして前記主板部を支持する台形状門形の固定金具を具えることが、より好ましい解決手段を提供できる。
【0020】
次に、本発明は、前記嵌合式屋根材と、梁上に一定の間隔で固定された前記吊子と、を具え、前記吊子の前記第1固定部に一の前記屋根材の被せ側嵌合部の被せ側第1凸部を嵌合させ、さらに、前記吊子の前記第2固定部に他の前記屋根材のすくい側嵌合部を嵌合させるとともに、そのすくい側嵌合部の上に前記一の屋根材の被せ側嵌合部の被せ側第2凸部を嵌合させることで、隣接する嵌合式屋根材どうしを順次に繋いで屋根を形成したことを特徴とする嵌合式屋根構造を提案する。
【0021】
なお、本発明の前記嵌合式屋根構造においては、前記吊子の第1固定部の前記頂辺の端縁と、前記屋根材の被せ側嵌合部の被せ側第1凸部の前記被せ側第1立下り辺との間に隙間を設けたこと、そして前記吊子の第2固定部の前記傾斜辺に、前記屋根材のすくい側嵌合部の前記すくい側傾斜内辺とすくい側引掛け辺との繋ぎ部分を当接させたことが、より好ましい解決手段を提供できる。
【発明の効果】
【0022】
上述した構成を採用した本発明では、嵌合式屋根材の被せ側嵌合部のうち第1凸部の被せ側第1立下り辺が、下方へゆくほど中央凹部へ近づいて垂直から僅かに傾斜している構造としたことにより、嵌合式屋根材の施工に当たり、吊子の第1固定部への嵌合の際にその第1固定部の頂辺の端縁が、第1凸部の被せ側第1立下り辺の裏面に摺接しないので、嵌合式屋根材の裏面が傷付いたり、その裏面に張設された断熱材が剥がれたりすることがない。
【0023】
また本発明では、吊子の第1固定部と第2固定部とが、略対称の形状をなすとともに各々、主板部の側縁からの延在位置に形成された傾斜辺の奥行き方向中央部から切起こされて、立上り辺の奥行き方向の全体のうち中央部から部分的に斜め下方に外向きに張り出した短い奥行きの引掛け辺と、その傾斜辺の奥行き方向両端部から外向きに張り出した突起状の引掛け角(つの)とを具えている構造としたことにより、嵌合式屋根材の施工に当たり、屋根材のすくい側嵌合部の嵌合アゴ部および被せ側嵌合部の第1凸部の嵌合アゴ部がそれら短い奥行きの引掛け辺および突起状の引掛け角と掛合するので、屋根材のすくい側嵌合部の嵌合アゴ部が吊子から外れにくくなり、しかも傾斜辺の上端から立ち上がる立上り辺の上縁から略水平に内向きに張り出した頂辺の奥行き方向中央部が下方へ窪んでいるため、その頂辺の奥行き方向両端部のみが屋根材の被せ側嵌合部の第1凸部の頂辺およびすくい側嵌合部の頂辺と掛合するので、屋根材の嵌合アゴ部が短い奥行きの引掛け辺および突起状の引掛け角と掛合することと相俟って、屋根材の裏面に断熱材が張設されている場合に断熱材がそれらに当接する面積が狭くなってそれらから断熱材に加わる面圧が高くなり、それらが断熱材に食い込みやすいことから、屋根材と吊子との嵌合状態が断熱材の影響を受けにくくなり、また断熱材の有無にかかわらず吊子の設置高さを一定にすることができる。
【0024】
さらに本発明では、吊子が、主板部の奥行き方向の両端部から第1固定部および第2固定部の傾斜辺の奥行き方向の両端部にかけて下向きに折曲形成されたフランジを具えたり、主板部から第1固定部および第2固定部の傾斜辺にかけて延在するように溝状に形成されたリブを有したりすることにより、屋根材を嵌合させるために下向きの押圧力を加えても固定部が倒れにくく、しかも少ない工数と費用で吊子を製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】(a)および(b)は、従来の嵌合式屋根構造をそれぞれ示す概略説明図である。
【図2】本発明の一実施形態の嵌合式屋根材を示す概略説明図である。
【図3】本発明の一実施形態の嵌合式屋根構造を示す斜視図である。
【図4】上記実施形態の嵌合式屋根構造を示す概略説明図である。
【図5】(a),(b)および(c)は、本発明の一実施形態の吊子を示す正面図、側面図および平面図である。
【図6】(a)および(b)は、上記実施形態の吊子を示す、図5(c)のA−A線およびB−B線にそれぞれ沿う断面図である。
【図7】上記実施形態の吊子を示す斜視図である。
【図8】(a),(b)および(c)は、上記実施形態の嵌合式屋根構造の施工方法を示す概略説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下に、この発明を実施するための形態を、図面に基づき詳細に説明する。本発明の一実施形態に係る屋根材1は、金属板からなり、図2に示すように、その屋根材1の幅方向両側端部に沿ってそれぞれ凹凸状を形作るすくい側嵌合部2と被せ側嵌合部3とを具え、その被せ側嵌合部3に、底部となる中央凹部4で繋がれた二つの凸部5,6を有するものである。そしてこの屋根材1は、一の屋根材1のすくい側嵌合部2を後述する本発明の一実施形態に係る吊子31に嵌合させ、さらにその吊子31とすくい側嵌合部2とに他の屋根材1の被せ側嵌合部3の二つの凸部5,6を嵌合させることにより、屋根材1をその幅方向に順次に繋ぎ合わせて、ボルトレス施工方式により、図3に示すように屋根葺きするものである。なお、本実施形態の屋根材1、吊子31および屋根構造の説明は、主に屋根材1の断面形状を基準として述べるものである。
【0027】
まず、前記すくい側嵌合部2は、屋根材1の主板部7の一端側縁に沿って形成されたもので、主板部7から延在する位置に外側に向かって曲成されて斜め上向きに立ち上がるすくい側立上り部8に対してそこから延在する位置に設けられた部分である。その構造は、すくい側立上り部8から延在する位置において、主板部7側に張り出すように設けられた突起部によって構成されるすくい側嵌合アゴ部9と、この嵌合アゴ部9の延在上端から外側に向って略水平に張り出したすくい側頂辺10と、この頂辺10の端縁から主板側の斜め下向きに折曲されたすくい側傾斜内辺11と、この傾斜内辺11から延在する位置に外側に開くように屈曲形成されたすくい側引掛け辺12とによって構成されている。ここで、すくい側引掛け辺12はその先端を外側に向かって折り返されて補強されている。
【0028】
これに対し、屋根材1の主板部7の他端側縁に沿って形成された被せ側嵌合部4は、主板部7から延在する位置に外側に向かって曲成されて斜め上向きに立ち上がる被せ側立上り部13に対してそこから延在する位置に形成された、被せ側中央凹部4とそれを挟んだ両側の被せ側第1凸部5および被せ側第2凸部6とからなる2つの嵌合凸部を有している。
【0029】
まず、上記第1凸部5は、被せ側立上り部13からの延在位置にあって主板部7側に張り出す突起部によって構成される被せ側第1嵌合アゴ部14と、この第1嵌合アゴ部14の延在位置から外側に向って略水平に張り出した第1被せ側頂辺15と、この頂辺15遊端部から下向きに曲成された被せ側第1立下り辺16と、この第1立下り辺下縁から外側斜め下向きに形成された被せ側第1傾斜辺17とによって構成される。ここで、被せ側第1立下り辺16は、下方へゆくほど中央凹部4側へ寄るように垂直から僅かに傾斜している。
【0030】
そして、上記第2凸部6は、この被せ側第1傾斜辺17からの延在位置にあって外側に向って略水平に張り出した被せ側中央凹部4を介して、第1凸部5と連結され、全体として凹部を呈する断面形状を持っている。かかる被せ側嵌合部3の中央凹部4からは、外側斜め上向きに形成された被せ側第2傾斜辺18と、この傾斜辺18の上端から立ち上がる被せ側第2立上り辺19と、この立上り辺19の上端縁から曲成されて、外側に向って略水平に張り出した被せ側第2頂辺20と、この第2頂辺20の遊端部から外側に向って下向きに張り出し成形された被せ側第2嵌合アゴ部21と、この嵌合アゴ部21の下縁から外側に向って折返して形成された被せ側引掛け辺22とによって構成されている。ここで、被せ側第2立上り辺19は、下方へゆくほど中央凹部4側へ寄るように垂直から僅かに傾斜している。
【0031】
なお、この実施形態では、すくい側嵌合アゴ部9の延在上部に、外側斜め上向きに立ち上がってその上端ですくい側頂辺10に繋がるすくい側傾斜外辺74を形成する。また、この実施形態では、すくい側立上り部8および被せ側立上り部13に、いずれも少なくとも1段以上の折曲部を設ける。例えば、立上り部8,13の中央部付近に大きな折曲部を設けてもよく、図2に示すように折曲部70,71,72,73からなる補強リブを設けてもよい。これによって屋根材1の剛性が増し、熱膨張の伸縮により発生する板鳴音の防止に効果的に対処させることができる。
【0032】
また、この実施形態では、主板部7ならびにその両端側縁に沿って形成されたすくい側嵌合部2および被せ側嵌合部3の裏面に断熱材hを貼着する。断熱材hを貼着する範囲は、例えば、すくい側引掛け辺12から被せ側第2傾斜辺18までとする。なお、断熱材hの貼着により、屋根材1の断熱性が増し、日射熱を防ぎ、室内の環境改善および省エネに寄与することができる。また、結露や騒音の防止も可能となる。
【0033】
上記構成からなるこの実施形態の嵌合式屋根材1は、その両側端部の長手方向(奥行き方向)に沿って形成された筋形状のすくい側嵌合部2および被せ側嵌合部3を、屋根の梁b上にボルトや溶接等によって一定の間隔で固定された複数個の固定金具fにそれぞれ固定支持された、本発明の一実施形態の吊子31に嵌め入れることにより、隣接する一の屋根材1と他の屋根材1どうしを幅方向(横方向)に順次に接合し、図3に示す屋根を施工する際に用いられる。
【0034】
なお、図4に示すように、上記実施形態の吊子31は、台形状門形の固定金具fに、例えば図示例のボルトおよびナット等によって着脱可能に締結されるものであり、この吊子31は、屋根材1のすくい側嵌合部3ならびに被せ側嵌合部4に対応する位置に、主板34の幅方向両端部から上述した嵌合アゴ9,14,21に対応するように外向きに突設した第1固定部32と第2固定部33とを具えてなる。
【0035】
そして、本発明の一実施形態の嵌合式屋根構造を形成するに当たっては、上記吊子31の第1固定部32に、一の屋根材1の被せ側嵌合部3の第1凸部5を嵌着し、吊子31の第2固定部33には、他の屋根材1のすくい側嵌合部2と、その嵌合部2の上から被せるようにして先の屋根材1の被せ側嵌合部3の第2凸部6を重畳して嵌着することにより、屋根材の嵌合構造とすることができる。
【0036】
以下、図4に示す吊子31を用いた上記実施形態の嵌合式屋根構造について説明する。この吊子31は、金属製の厚板をプレス成形してなるもので、図5〜図7に詳細に示すように、主板34の幅方向両端側縁からの延在部分を曲成した第1固定部32と第2固定部33とを具える構造を有している。ここで、第1固定部32と第2固定部33とは、互いに略対称な形状で、各々略逆L字状をなしており、主板34の側縁から、それぞれ斜め外向きに張り出し成形された金具傾斜辺50,51と、この傾斜辺50,51の上端から内向き上方に立ち上がる立上り辺52,53と、屋根材1の主板部7の長手方向に対応する奥行き方向(図4では紙面と直交する方向)の、傾斜辺50,51の中央部から切起こされて、この立上り辺52,53の上記奥行き方向中央部から斜め下方に外向きに凸曲面状に張出した引掛け辺54,55と、立上り辺52,53の上縁から略水平に内向きに張り出した頂辺56,57と、を有している。そしてそれらの頂辺56,57の上記奥行き方向中央部は、下方へ窪んでいる。なお、この吊子31の第1固定部32の頂辺56は、図1(a)に示す吊子31の第1固定部32の頂辺37よりも内向き張り出し長さを短くされている。
【0037】
また、この吊子31は、立上り辺52,53の上記奥行き方向両端部から曲成された内向きフランジ58,59と、主板部34の上記奥行き方向両端部から第1固定部32および第2固定部33の傾斜辺50,51の上記奥行き方向の両端部にかけて折曲された下向きフランジ61と、を具えており、この下向きフランジ61からの延在位置には、傾斜辺50,51の上記奥行き方向両端部から外向きに張り出した突起状の引掛け角(つの)62,63が形成されている。
【0038】
かかる吊子31の第1固定部32に、一の屋根材1の被せ側嵌合部3の第1凸部5を嵌合させ、また第2固定部33に、他の屋根材1のすくい側嵌合部2を嵌合させるとともに、その嵌合部2の上にさらに被せるようにして、先の屋根材1の被せ側嵌合部3の第2凸部6を嵌合させることにより、図4の嵌合構造が形成される。そして、屋根材1,1は、この吊子31の上端の金具頂辺56,57によって下支えされると共に、引掛け辺54,55および引掛け角62,63に、屋根材1,1のすくい側嵌合部2と被せ側嵌合部3との嵌合アゴ部9,14,21を嵌合させることで、吊子31を介して雨水の侵入を効果的に防止できるように、強固に固定されることになる。
【0039】
なお、図4に示す吊子31では、第2固定部33の傾斜辺51に、屋根材1のすくい側嵌合部2のすくい側傾斜内辺11とすくい側引掛け辺12との繋ぎ部分を当接させている。この当接状態は、屋根材1の主板部7に下方から押圧力が加わって主板部7が持ち上げられた場合に、下方向に傾こうとする屋根材1のすくい側嵌合部2の回転を抑える働きをする。
【0040】
また、この吊子31には、上記のように立上り辺52,53の上記奥行き方向両端部には内向きフランジ58,59が曲成され、主板部34の上記奥行き方向両端部から第1固定部32および第2固定部33の傾斜辺50,51の上記奥行き方向の両端部にかけては下向きフランジ61が曲成されているのに加えて、主板部34から第1固定部32および第2固定部33の傾斜辺50,51にかけて延在するように突条状に形成された4本のリブ60を有しており、これらのフランジ58,59,61およびリブ60は吊子31を補強して、吊子31に屋根材1,1を嵌着する際に、押圧によって第1固定部32と第2固定部33とが倒れるのを防止することができる。しかも、これらのフランジ58,59,61およびリブ60は厚板へのプレス成形で形成できるので、この吊子31は、工数と費用が嵩まずに製造することができる。
【0041】
本実施態様の屋根材1では、図3および図4に示すように、屋根材1の被せ側嵌合部3に、中央凹部4を介して2つの嵌合凸部、即ち第1凸部5および第2凸部6を設け、該第1凸部5によって吊子31に強固に嵌合すると共に、第2凸部6によって、吊子31および他の屋根材1のすくい側嵌合部2と強固に嵌着するように構成している。これにより、被せ側嵌合部3の第1凸部5,第2凸部6は共に片アゴ構造となり、小さい押圧力(弾性力)によって吊子31およびすくい側嵌合部2と簡単に嵌合することができる
【0042】
また、本実施形態の嵌合式屋根構造では、中央凹部4からの延在位置にある被せ側第2立上り辺19と、すくい側嵌合部2の傾斜内辺11とが、屋根材1の長手方向に連続して沿うように形成されている。このため、被せ側嵌合部3の被せ側第2立上り辺19とすくい側嵌合部2の傾斜内辺11とが、屋根材1,1の主板部7に加わった押圧力を横から支えるように支持反力(壁反力)を発揮し、強風や台風等によって大きな負圧が加わったとしても、屋根材1,1が浮き上がって回転することがなく、嵌合状態を常に一定に保持することができる。
【0043】
また、一の屋根材1のすくい側嵌合部2上に、他の屋根材1の被せ側嵌合部3を重畳させる際、被せ側嵌合部3の立上り辺19は、すくい側嵌合部2の傾斜内辺11を横から支持するようにして嵌め入れられるため、該立上り辺19が支持壁の役割を果たし、したがって吊子31の無い部分であっても、すくい側嵌合部2が、被せ側嵌合部3による嵌合押圧によって押し倒されて回転したり沈み込んだりするようなことがない。
【0044】
また、本実施形態の屋根材1では、すくい側嵌合部2の傾斜内辺11を、嵌合アゴ部9側に傾斜させたことにより、第2固定部33に嵌合させたすくい側嵌合部2がズレ落ち難くなると共に、すくい側嵌合アゴ部9と、被せ側第2嵌合アゴ部21とを嵌合させる際に、被せ側嵌合部3の立上り辺19を、すくい側嵌合部2の傾斜内辺11に沿って落とし込み易いという効果がある。
【0045】
さらに、本実施形態の屋根材1では、すくい側嵌合部2に傾斜外辺74を設けて窪みを付けたことにより、すくい側嵌合部2と被せ側嵌合部3との間に隙間が形成され、この隙間が空気層となって、被せ側引掛け辺22とすくい側立上り部8との間の隙間からの毛細管現象による浸水を防止することができる。
【0046】
また、本実施形態の屋根材1では、すくい側嵌合部2の引掛け辺12は、外側に開くように形成されているため、吊子31の第2固定部33にすくい側嵌合部2を落とし込み易く、同様に、被せ側嵌合部3に傾斜辺17,18を設け、第1凸部5と第2凸部5の下部が開くように形成されているため、被せ側嵌合部3を吊子31およびすくい側嵌合部2に容易に落とし込むことができる。
【0047】
次に、図4に示す本実施形態の吊子31に、本実施形態の屋根材1,1を嵌着し、図3に示すような屋根を施工する方法について、図8に基づいて説明する。まず、第1工程では、図8(a)に示すように、吊子31の第2固定部33上に、一の嵌合式屋根材1のすくい側嵌合部2を載置し、次いで、すくい側引掛け辺12を回し込みながら落し入れた後、屋根材主板部を幅方向(左右方向)に回転させると共に、同図中矢印(1)で示すようにすくい側嵌合部2の頂部を足で踏む等して押圧し、屋根材1を主板部が略水平になるようにすると同時に、すくい側嵌合アゴ部9と、吊子31の引掛け辺55および引掛け角63とを、雨水や風の浸入を防止できるように確実に嵌着させる。
【0048】
第2工程では、図8(a)中矢印(2)および矢印(3)で示すように、他の嵌合式屋根材1を、その被せ側嵌合部3の第1凸部5と第2凸部6とが、第1工程後の、吊子31の第1固定部32と第2固定部33との上に位置するように載置し、次に、該屋根材1の被せ側第1凸部5を押し下げて吊子31の第1固定部32に嵌め入れると同時に、図8(b)中矢印(4)で示すように、被せ側第1嵌合アゴ部14と、吊子31の引掛け辺54および引掛け角62とを嵌め合わせる。そして、引き続き、該屋根材1の被せ側第2凸部6を、第1工程において吊子31の第2固定部33上に嵌合させた、先の屋根材1のすくい側嵌合部2に重合するまで、該屋根材1を回し込む。
【0049】
次に、第3工程では、図8(b)中矢印(5)で示すように、すくい側嵌合部2側、即ち、吊子31の第2固定部33側にある該被せ側第2凸部9の、外側の被せ側第2嵌合アゴ部21側を押し下げることにより、図8(c)中矢印(6)で示すように、被せ側嵌合アゴ部21と、すくい側嵌合アゴ部9ならびに吊子31の引掛け辺55および引掛け角63とを嵌め合わせ、吊子31への隣り合う屋根材1,1のすくい側嵌合部2と被せ側嵌合部3との重畳嵌着を果たして屋根葺を行う。
【0050】
これにより本実施形態の嵌合式屋根構造では、すくい側嵌合部2が被せ側嵌合部3の嵌合押圧によって沈み込むことがなく、小さい押圧力によって簡単かつ確実に屋根葺き施工をすることができる。
【0051】
しかも本実施形態の嵌合式屋根構造では、本実施形態の屋根材1の被せ側嵌合部3のうち第1凸部5の被せ側第1立下り辺16を、下方へゆくほど中央凹部4へ近づけて垂直から僅かに傾斜させ、また吊子31の第1固定部32の頂辺15の張出し長さを短くしたことにより、屋根材1の施工に当たり、吊子31の第1固定部32への嵌合の際に、その第1固定部32の頂辺15の端縁が、第1凸部5の被せ側第1立下り辺16の裏面に摺接しないので、屋根材1の裏面が傷付いたり、その裏面に張設された断熱材hが剥がれたりすることがない。
【0052】
また本実施形態の嵌合式屋根構造では、本実施形態の吊子31の第1固定部32と第2固定部33とが、略対称の形状をなすとともに各々、主板部34の側縁からの延在位置に形成された傾斜辺50,51の奥行き方向中央部から切起こされて、立上り辺52,53の奥行き方向の全体のうち中央部から部分的に斜め下方に外向きに張り出した短い奥行きの引掛け辺54,55と、その傾斜辺50,51の奥行き方向両端部から外向きに張り出した突起状の引掛け角62,63とを具えていることにより、嵌合式屋根材1の施工に当たり、屋根材1のすくい側嵌合部2の嵌合アゴ部9および被せ側嵌合部3の第1凸部5の嵌合アゴ部14がそれら短い奥行きの引掛け辺54,55および突起状の引掛け角62,63と掛合するので、屋根材1のすくい側嵌合部2の嵌合アゴ部9が吊子31から外れにくくなり、しかも傾斜辺50,51の上端から立ち上がる立上り辺52,53の上縁から略水平に内向きに張り出した頂辺56,57の奥行き方向中央部が下方へ窪んでいるため、その頂辺56,57の奥行き方向両端部のみが屋根材1の被せ側嵌合部3の第1凸部5の頂辺15およびすくい側嵌合部2の頂辺10と掛合するので、屋根材1の嵌合アゴ部9,14が短い奥行きの引掛け辺54,55および突起状の引掛け角62,63と掛合することと相俟って、屋根材1の裏面に断熱材hが張設されている場合に断熱材hがそれらに当接する面積が狭くなってそれらから断熱材hに加わる面圧が高くなり、それらが断熱材hに食い込みやすいことから、屋根材1と吊子31との嵌合状態が断熱材hの影響を受けにくくなり、また断熱材hの有無にかかわらず吊子31の設置高さを一定にすることができる。
【0053】
以上、図示例に基づき説明したが、この発明は上述の例に限定されるものでなく、特許請求の範囲の記載範囲内で適宜に変更し得るものであり、例えば、屋根材1の被せ側嵌合部3の第2凸部6の立上り辺19は、ほぼ垂直に立ち上がるものでもよい。また、吊子31の主板部34および傾斜辺50,51は、リブ60をなくした平坦なものとすることもできる。そして吊子31は、固定金具fを一体に、あるいはボルト・ナット等で結合されて具えるものでもよい。
【産業上の利用可能性】
【0054】
本発明は、一般住宅や学校、ガレージ、工場、倉庫、店舗、集会場、体育館当の屋根材として利用することができる。
【符号の説明】
【0055】
1 屋根材
2 すくい側嵌合部
3 被せ側嵌合部
4 被せ側中央凹部
5 被せ側第1凸部
6 被せ側第2凸部
7 主板部
8 すくい側立上り部
9 すくい側嵌合アゴ部
10 すくい側頂辺
11 すくい側傾斜内辺
12 すくい側引掛け辺
13 被せ側立上り部
14 被せ側第1嵌合アゴ部
15 被せ側第1頂辺
16 被せ側第1立下り辺
17 被せ側第1傾斜辺
18 被せ側第2傾斜辺
19 被せ側第2立上り辺
20 被せ側第2頂辺
21 被せ側第2嵌合アゴ部
22 被せ側引掛け辺
31 吊子
32 第1固定部
33 第2固定部
34 主板部
35,36 アゴ部
37,38 頂辺
39 回転防止用突起
40,41 傾斜辺
42,43 立上り辺
44 頂辺
45,46 引掛け辺
50,51 傾斜辺
52,53 立上り辺
54,55 引掛け辺
56,57 頂辺
58,59 内向きフランジ
60 リブ
61 下向きフランジ
62,63 引掛け角(つの)
70,71,72,73 折曲部
74 すくい側傾斜外辺
b 梁
f 固定金具
h 断熱材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
矩形状主板部の幅方向両端側縁に沿ってすくい側嵌合部と被せ側嵌合部とを曲成されてなる金属板製の屋根材において、
前記すくい側嵌合部は;
主板部からの延在位置に形成されたすくい側立上り部と、このすくい側立上り部からの延在位置に形成されたすくい側嵌合アゴ部と、この嵌合アゴ部からの延在位置に立ち上がるすくい側傾斜外辺と、この傾斜外辺上端から略水平に張り出したすくい側頂辺と、この頂辺から下向きに形成されたすくい側傾斜内辺と、この傾斜内辺からの延在位置に形成されたすくい側引掛け辺と、によって構成され、
前記被せ側嵌合部は;
主板部からの延在位置に形成された被せ側立上り部と、この被せ側立上り部からの延在位置に形成された、略水平な被せ側中央凹部ならびにこの中央凹部を挟んでその両側に位置する被せ側第1凸部および被せ側第2凸部と、を連設されてなるものであって、
前記第1凸部は、前記被せ側立上り部からの延在位置に形成された被せ側第1嵌合アゴ部と、この第1嵌合アゴ部からの延在位置に略水平に張り出した被せ側第1頂辺と、この頂辺端部から曲成された被せ側第1立下り辺と、この第1立下り辺下縁に形成された被せ側第1傾斜辺と、によって構成され、
前記第2凸部は、前記中央凹部から曲成された被せ側第2傾斜辺と、この傾斜辺上端から立ち上げられた被せ側第2立上り辺と、この立上り辺上端から曲成された被せ側第2頂辺と、この第2頂辺端部から曲成された被せ側第2嵌合アゴ部と、この第2嵌合アゴ部下縁から外側に向けて折返された被せ側引掛け辺と、によって構成され、
前記第1凸部の前記被せ側第1立下り辺は下方へゆくほど前記中央凹部側へ寄るように垂直から僅かに傾斜していることを特徴とする嵌合式屋根材。
【請求項2】
前記被せ側嵌合部の前記第2凸部の前記被せ側第2立上り辺は下方へゆくほど前記中央凹部側へ寄るように垂直から僅かに傾斜していることを特徴とする請求項1に記載の嵌合式屋根材。
【請求項3】
前記すくい側嵌合部の前記すくい側引掛け辺の先端は折り返されていることを特徴とする請求項1または2に記載の嵌合式屋根材。
【請求項4】
前記主板部ならびにその両端側縁に沿って形成されたすくい側嵌合部および被せ側嵌合部の裏面に断熱材が貼着されていることを特徴とする請求項1から3までのいずれか1項に記載の嵌合式屋根材。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項に記載の嵌合式屋根材を嵌着固定するための吊子において、
前記屋根材の主板部の幅方向に対応する、矩形状主板部の幅方向の一端側縁に沿って曲成され、一の前記屋根材の被せ側嵌合部の被せ側第1凸部を嵌合される第1固定部と、
前記矩形状主板部の幅方向の他端側縁に沿って曲成され、他の前記屋根材のすくい側嵌合部を嵌合されるとともにその上に前記一の屋根材の被せ側嵌合部の被せ側第2凸部を嵌合される第2固定部と、を具え、
前記第1固定部と前記第2固定部とが、略対称の形状をなすとともに各々、主板部の側縁からの延在位置に形成された傾斜辺と、この傾斜辺の上端から立ち上がる立上り辺と、前記屋根材の主板部の長手方向に対応する奥行き方向の、前記傾斜辺の中央部から切起こされて、この立上り辺の前記奥行き方向中央部から斜め下方に外向きに張出した引掛け辺と、前記傾斜辺の前記奥行き方向両端部から外向きに張り出した突起状の引掛け角と、前記立上り辺の上縁から略水平に内向きに張り出した頂辺と、を有し、
前記頂辺の前記奥行き方向中央部が下方へ窪んでいることを特徴とする吊子。
【請求項6】
前記主板部の前記奥行き方向両端部から前記第1固定部および前記第2固定部の傾斜辺の前記奥行き方向の両端部にかけて下向きに折曲形成されたフランジを具え、
前記引掛け角は前記フランジからの延在位置に形成されていることを特徴とする請求項5に記載の吊子。
【請求項7】
前記主板部から前記第1固定部および前記第2固定部の傾斜辺にかけて延在するように突条状に形成されたリブを有することを特徴とする請求項5または6に記載の吊子。
【請求項8】
前記主板部を支持する台形状門形の固定金具を具えることを特徴とする請求項5から7までのいずれか1項に記載の吊子。
【請求項9】
請求項1から4までのいずれか1項に記載の嵌合式屋根材と、
梁上に一定の間隔で固定された、請求項5から8までのいずれか1項に記載の吊子と、を具え、
前記吊子の前記第1固定部に一の前記屋根材の被せ側嵌合部の被せ側第1凸部を嵌合させ、さらに、
前記吊子の前記第2固定部に他の前記屋根材のすくい側嵌合部を嵌合させるとともに、そのすくい側嵌合部の上に前記一の屋根材の被せ側嵌合部の被せ側第2凸部を嵌合させることで、隣接する嵌合式屋根材どうしを順次に繋いで屋根を形成したことを特徴とする嵌合式屋根構造。
【請求項10】
前記吊子の第1固定部の前記頂辺の端縁と、前記屋根材の被せ側嵌合部の被せ側第1凸部の前記被せ側第1立下り辺との間に隙間を設けたことを特徴とする請求項9に記載の嵌合式屋根構造。
【請求項11】
前記吊子の第2固定部の前記傾斜辺に、前記屋根材のすくい側嵌合部の前記すくい側傾斜内辺とすくい側引掛け辺との繋ぎ部分を当接させたことを特徴とする請求項9または10に記載の嵌合式屋根構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−219980(P2011−219980A)
【公開日】平成23年11月4日(2011.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−90019(P2010−90019)
【出願日】平成22年4月9日(2010.4.9)
【出願人】(000200323)JFE鋼板株式会社 (77)
【Fターム(参考)】