説明

工事用車輌の制限高さ警告装置

【課題】工事用車輌の車高が制限高さを超えていることを確実に工事用車輌を運転している運転者に認知させることが可能で、接触などの発生を未然に防止することができる工事用車輌の制限高さ警告装置を提供する。
【解決手段】工事現場内の走行路面7上を走行する工事用車輌6の車高が制限高さを超えている場合に警告を発する警告装置において、工事用車輌の車高が制限高さを超えていることを検知して検知信号を発信する光電センサ9と、光電センサ位置から工事用車輌の走行方向前方に設けられ、光電センサからの検知信号を受信して、警告を発する回転灯11とを備え、回転灯は、工事用車輌が工事現場に設定した制限速度で走行した場合に、光電センサ位置から5秒かかる距離よりも離隔させて配置される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、工事用車輌の車高が制限高さを超えていることを確実に工事用車輌を運転している運転者に認知させることが可能で、接触などの発生を未然に防止することができる工事用車輌の制限高さ警告装置に関する。
【背景技術】
【0002】
工事現場内、例えば山岳トンネルの掘削工事現場内では、荷台を斜め状態に上げ下げ自在なダンプカーなどの工事用車輌を用いて、坑内で発生したズリを坑外へ搬出し、ズリ置き場で荷台を傾けて荷下ろしするようにしている。荷下ろしを終えたならば、工事用車輌は、その荷台が下げられ、その後走行移動して、再度のズリ搬出のために坑内へ進入する。
【0003】
このとき、荷台を完全に下げたか否かを確認し忘れる場合がある。特に、夜間では、周囲に作業員がいることも少なく、また、工事用車輌の運転席からバックミラー等で荷台の様子を確認することも難しい。
【0004】
岩盤トンネル内で作業を行っているセントル台車の横架フレーム下端の高さ位置は、工事用車輌の通常の車高に対して僅かしか余裕がないため、荷台が完全に下げられておらず傾いた斜めの状態であって通常の車高を超えている工事用車輌がそのまま坑内に進入すると、荷台と横架フレームとが接触してしまうことになる。
【0005】
このような事態に対処可能な技術として特許文献1が知られている。特許文献1の「車輌などの制限高さ超過警告装置」は、門型に接触することなく、車輌などの運転者に確実に高さ制限の超過を認識させることを課題とし、車輌などの移動物体の高さを検知するセンサーと、移動物体が制限高さを超えている場合に、前記センサーからの信号により作動する警告装置とより構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】実用新案登録第3039909号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1にあっては、センサーと警告装置との位置関係が不明であり、移動物体の運転者が確実に警告を認知することができないおそれがあるという課題があった。すなわち、移動物体は移動しているため、センサーが異常を感知して警告装置を作動させても、センサーと警告装置の間隔が短いと、警告を認知し得る時間が短く、見落としてしまうおそれがあった。
【0008】
本発明は上記従来の課題に鑑みて創案されたものであって、工事用車輌の車高が制限高さを超えていることを確実に工事用車輌を運転している運転者に認知させることが可能で、接触などの発生を未然に防止することができる工事用車輌の制限高さ警告装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明にかかる工事用車輌の制限高さ警告装置は、工事現場内の走行路面上を走行する工事用車輌の車高が制限高さを超えている場合に警告を発する警告装置において、上記工事用車輌の車高が制限高さを超えていることを検知して検知信号を発信する検知センサと、該検知センサ位置から上記工事用車輌の走行方向前方に設けられ、該検知センサからの検知信号を受信して、警告を発する警告手段とを備え、上記警告手段は、上記工事用車輌が工事現場に設定した制限速度で走行した場合に、上記検知センサ位置から5秒かかる距離よりも離隔させて配置されることを特徴とする。
【0010】
前記警告手段は、前記工事用車輌の走行方向に複数並設され、これら警告手段同士は、上記工事用車輌が工事現場に設定した制限速度で走行した場合に5秒かかる距離よりも離隔させて配置されることを特徴とする。
【0011】
前記警告手段は、回転灯であり、前記工事用車輌の運転席から視認可能に、前記走行路面上3〜4mの高さ位置に設けられることを特徴とする。
【0012】
前記工事現場は、セントル台車が用いられる山岳トンネルの掘削工事現場であり、前記工事用車輌の制限高さが、上記セントル台車のフレーム下端位置の高さ寸法から、前記走行路面の不陸に対応するゆとり寸法を差し引いた高さに設定されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明にかかる工事用車輌の制限高さ警告装置にあっては、工事用車輌の車高が制限高さを超えていることを確実に工事用車輌を運転している運転者に認知させることができ、接触などの発生を未然に防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明に係る工事用車輌の制限高さ警告装置の好適な一実施形態を説明する山岳トンネルの掘削工事現場に設置した様子を示す平面図である。
【図2】図1に示した工事用車輌の制限高さ警告装置における工事用車輌、検知センサ、警告手段、並びにセントル台車の高さ関係を説明する説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下に、本発明にかかる工事用車輌の制限高さ警告装置の好適な一実施形態を、添付図面を参照して詳細に説明する。図1は、山岳トンネル1の掘削工事現場の平面図である。掘削途中のトンネル1の坑内2では、セントル台車3を用いて、覆工作業等が実施されている。坑口4を境として、坑内2から坑外5へわたって工事用車輌6等が走行する走行路面7が形成されている。坑口4から相当の距離を隔てた箇所には、ズリ置き場8が設けられ、掘削工事現場内を走行するダンプカーなどの工事用車輌6は、ズリを坑内2からズリ置き場8へ搬出するために、走行路面7上を往復走行する。
【0016】
本実施形態にあっては、工事用車輌6は、荷下ろしのために荷台6aを斜め状態に上げ下げ自在に構成される。工事用車輌5は、坑内2でズリを積載する際、図2に示すように、セントル台車3の横架フレーム3a下端下方に進入する。
【0017】
本実施形態に係る工事用車輌の制限高さ警告装置は主に、工事用車輌6の車高が制限高さを超えていることを検知する検知センサと、制限高さを超えている場合に警告を発する警告手段とから構成される。
【0018】
検知センサとして本実施形態では、投光部9a及び受光部9bを有する周知の光電センサ9が用いられる。光電センサ9は、ズリ置き場8から坑口4へ向かって走行路面7上を走行する工事用車輌6の車高を検知する。図2に示すように、これら投光部9a及び受光部9bはそれぞれ、走行路面7を挟んでその幅方向両側の路肩に立設された一対のポスト10に設置される。受光部9bは、投光部9aからの光Lが遮られたことを検知して、検知信号を発信する。
【0019】
光電センサ9は基本的には、工事用車輌6が荷台6aを下げた状態の通常の車高に対し、荷台6aが完全に下げられておらず傾いた斜めの状態にあって、通常の車高を超えていることを検知するように、投光部9aからの投光高さ位置H1が設定される。すなわち、当該投光高さ位置H1が、工事用車輌6の制限高さとして設定される。
【0020】
本実施形態にあっては図2に示すように、投光部9aからの投光高さ位置(制限高さ)H1は、通常の車高よりも高く、かつセントル台車3と工事用車輌6との接触を未然に防止するために、セントル台車3の横架フレーム3a下端位置の高さ寸法から、走行路面7の不陸に対応するゆとり寸法Dを差し引いた高さ位置に設定される。ゆとり寸法Dは、坑内2の走行路面7の凸凹7aを見込んで、例えば10〜20cm程度に設定される。
【0021】
警告手段として本実施形態では、所定時間点灯しつつ回転する回転灯11が採用されている。回転灯11は、光電センサ9位置から工事用車輌6の走行方向前方に設けられる。回転灯11は、走行路面7の路肩に立設されたポール12に設置される。回転灯11の高さ位置H2は図2に示すように、工事用車輌6の運転席から視認可能に、一般的な体格を有する運転者の目線の高さに相当する、走行路面上3〜4mの高さ位置に設けられる。
【0022】
回転灯11は、光電センサ9からの検知信号を受信して点灯する。回転灯11と光電センサ9との信号の送受は、有線であっても、無線であっても良い。本実施形態にあっては、回転灯11は、光電センサ9位置から坑口4へ向かって走行する工事用車輌6の走行方向前方に二つ並設されている。回転灯11は、三箇所以上並設するようにしても良い。
【0023】
特に、本実施形態にあっては、光電センサ9と回転灯11との位置関係は、工事用車輌6が工事現場に設定した制限速度で走行した場合に、光電センサ9位置から5秒かかる距離よりも離隔した位置に回転灯11が配置される。例えば、制限速度が20km/hである場合、28m以上の距離を隔てるように設定され、図示例では、工事用車輌6が6秒あまりで到達する35mに設定されている。
【0024】
同様に、回転灯11同士の位置関係も、通過した回転灯11位置から工事用車輌6が工事現場に設定した制限速度で走行した場合に、5秒かかる距離よりも離隔した位置に、次の回転灯11が配置される。制限速度が20km/hである場合、28m以上の距離を隔てるように設定されることとなり、図示例では、光電センサ9からの距離と同様に、35mに設定されている。
【0025】
光電センサ9からの位置(距離)が異なるこれら回転灯11の起動については、光電センサ9からの距離に応じて、近いものを早く、遠いものを遅く起動するなど、時間差を設定しても良く、あるいは同時起動としても良い。
【0026】
工事用車輌6の走行方向最後の回転灯11から坑口4までの距離は、40mに設定されている。従って、坑口4から光電センサ9までの距離は、110mに設定されている。
【0027】
次に、本実施形態に係る工事用車輌の制限高さ警告装置の作用について説明する。光電センサ9は常時、セントル台車3の横架フレーム3a下端位置の高さ寸法からゆとり寸法Dを差し引いた高さ位置を投光高さ位置H1として、投光部9aから光を出射し、受光部9bで受光している。
【0028】
坑内2からズリを搬出してズリ置き場8へ荷下ろしした工事用車輌6の荷台6aが下げられているときには、工事用車輌6は通常の車高であって、坑口4へ向かって走行する際、光電センサ9は、工事用車輌6の車高が制限高さを超えていることを検知することはない。従って、工事用車輌6はそのまま坑内2へ進入する。この場合にはもちろん、工事用車輌6がセントル台車3の横架フレーム3aと接触することはない。
【0029】
他方、工事用車輌6の荷台6aが斜めに傾いた状態であるとき、換言すれば、上記投光高さ位置H1を超えていて、車高が制限高さを超えているときには、工事用車輌6が光電センサ9位置を通過すると光Lが遮られ、これを光電センサ9の受光部9bが検知して検知信号を複数の回転灯11へ同時に発信する。検知信号を受信した回転灯11は点灯される。
【0030】
作業用車輌6の運転者は、回転灯11を視認することで、車高が制限高さを超えていること、具体的には荷台6aが傾いた傾斜状態であることを認知する。認知した運転者は、工事用車輌6を一旦停車させて、荷台6aを完全に下げることができる。これにより、作業用車輌6が制限高さを超えてセントル台車3と接触することが未然に防止され、ズリ搬出作業が円滑に遂行される。
【0031】
以上説明した本実施形態に係る工事用車輌の制限高さ警告装置にあっては、特に、警告を発する警告手段(回転灯11)を、制限速度に基づいて、検知センサ(光電センサ9)位置から5秒かかる距離よりも離隔する位置に配置するようにしたので、この距離設定により、警告手段11の作動を作業用車輌6の運転者が確実に確認することができ、これにより警告を運転者に確実に認知させることができて、制限高さを超えていることで発生する接触などを未然に防止することができる。
【0032】
警告手段11を、工事用車輌6の走行方向に複数並設し、これら警告手段11同士を、制限速度で走行した場合に5秒かかる距離よりも離隔させて配置したので、複数の警告手段11で運転者に警告を認知させることができ、作業用車輌6の運転者がたとえいずれかの警告手段11を見落としても、他の警告手段11で認知させることができ、警告機能を高めることができる。
【0033】
警告手段を回転灯11とし、工事用車輌6の運転席から視認可能に、走行路面7上3〜4mの高さ位置H2に設けるようにしたので、警告の視認性を確実に向上することができ、また夜間であっても、容易に視認することができて、警告機能を高めることができる。
【0034】
工事現場が、セントル台車3を用いる山岳トンネル1の掘削工事現場である場合に、工事用車輌6の制限高さ(投光部9aからの投光高さ位置H1)を、作業用車輌6の通常の車高よりも高くかつセントル台車3の横架フレーム3a下端位置の高さ寸法から、走行路面7の不陸に対応するゆとり寸法Dを差し引いた高さに設定するようにしたので、走行路面7の不陸をも見込んでセントル台車3との接触をより確実に防止することができ、山岳トンネル1の掘削工事現場に好適に適用することができる。
【0035】
以上、添付図面を参照しながら本発明に係る工事用車輌の制限高さ警告装置の好適な一実施形態を説明したが、本発明は係る実施形態に限定されるものではなく、発明の思想を逸脱しない範囲で各種の変更が可能である。例えば、上記の実施形態では検知センサとして光電センサ9を使用しているが、超音波センサでも良く、また、ワイヤー等への接触に対して信号を発するセンサでも良い。要は、工事用車輌6が制限高さを超えている場合に、正確かつ確実にこれを検知できるものであればよい。また、制限高さ位置は、セントル台車3の横架フレーム3aの下端位置でなくても良い。さらに、工事用車輌6はダンプカーでなくても良い。
【符号の説明】
【0036】
1 山岳トンネル
3 セントル台車
3a セントル台車の横架フレーム
6 工事用車輌
7 走行路面
9 光電センサ
11 回転灯

【特許請求の範囲】
【請求項1】
工事現場内の走行路面上を走行する工事用車輌の車高が制限高さを超えている場合に警告を発する警告装置において、上記工事用車輌の車高が制限高さを超えていることを検知して検知信号を発信する検知センサと、該検知センサ位置から上記工事用車輌の走行方向前方に設けられ、該検知センサからの検知信号を受信して、警告を発する警告手段とを備え、上記警告手段は、上記工事用車輌が工事現場に設定した制限速度で走行した場合に、上記検知センサ位置から5秒かかる距離よりも離隔させて配置されることを特徴とする工事用車輌の制限高さ警告装置。
【請求項2】
前記警告手段は、前記工事用車輌の走行方向に複数並設され、これら警告手段同士は、上記工事用車輌が工事現場に設定した制限速度で走行した場合に5秒かかる距離よりも離隔させて配置されることを特徴とする請求項1に記載の工事用車輌の制限高さ警告装置。
【請求項3】
前記警告手段は、回転灯であり、前記工事用車輌の運転席から視認可能に、前記走行路面上3〜4mの高さ位置に設けられることを特徴とする請求項1又は2に記載の工事用車輌の制限高さ警告装置。
【請求項4】
前記工事現場は、セントル台車が用いられる山岳トンネルの掘削工事現場であり、前記工事用車輌の制限高さが、上記セントル台車のフレーム下端位置の高さ寸法から、前記走行路面の不陸に対応するゆとり寸法を差し引いた高さに設定されることを特徴とする請求項1〜3いずれかの項に記載の工事用車輌の制限高さ警告装置。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2011−227686(P2011−227686A)
【公開日】平成23年11月10日(2011.11.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−96524(P2010−96524)
【出願日】平成22年4月19日(2010.4.19)
【出願人】(000140292)株式会社奥村組 (469)
【Fターム(参考)】