説明

工作機械の切屑排出装置

【課題】構造が簡単で、工具の自動交換が可能であり、主軸頭が主軸中心軸線に対して非平行の旋回中心軸線を中心にして旋回する工作機械に適用することが可能な工作機械の切屑排出装置を提供する。
【解決手段】第1の支持部材貫通孔192の軸心には、第1の旋回中心軸線191と平行に、第1の支持部材側切屑吸引管73が配置されている。第1の支持部材側切屑吸引管73の右端は、主軸頭18の左端面にボルトによって固定されている。第1の支持部材側切屑吸引管73の左端の外周面は、第2の連通管74の下端の内周面に、相対的に回転可能に接続されている。この接続部にはシール機構8が設けられ、外部からの空気が第2の連通管74内に吸引されるのを回避している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、工作機械の切屑排出装置、特に、複雑な形状のワークを加工するために、主軸頭が主軸中心軸線に対して非平行の旋回中心軸線を中心にして旋回する工作機械に適した工作機械の切屑排出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
回転工具で孔明け加工を行うと、孔の内部に切屑が溜まり、加工時に生ずる切削熱で切屑が加熱されて硬化する。硬化した切屑に回転工具が接触すると、回転工具に大きな切削抵抗が作用して、回転工具が破損することがある。また、マグネシウム合金やグラファイト等の軽金属を加工すると、粉塵状の切屑が発生する。この粉塵状の切屑は、工作機械内の広い範囲に散らばるため、加工後の清掃作業に時間が掛かり、作業者の健康上の問題や、機械の耐久性にも悪影響を与える。
【0003】
マグネシウム合金を切削加工する場合に発生する粉塵状の切屑の回収を可能とするフライス工具として、特許文献1に記載されたものがある。このフライス工具は、シャンクの軸芯に形成された吸出し開口を有し、この吸出し開口は締付け・供給装置に装着された吸出しホッパに連通している。この特許文献1のフライス工具では、締付け・供給装置に吸出しホッパを装着しているため、構造が複雑であり、しかもその構造上、工具の自動交換ができないといった問題がある。
【0004】
本出願人は、構造が簡単で、工具の自動交換が可能な主軸構造を有する切屑排出装置として、特願2008−125025の主軸構造を開発した。特願2008−125025の主軸構造は、ドローバーの軸心に形成した貫通孔を経由して、主軸後端から切屑を外部に排出している。しかし、特願2008−125025の主軸構造は、特許文献2に示すユニバーサルヘッドのように、主軸頭が旋回して複雑な形状のワークを加工する工作機械を想定していない。従って、特願2008−125025の主軸構造では、主軸頭の旋回動作を阻害せずに、主軸後端から切屑を外部に排出することができない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特表2005−532917号公報
【特許文献2】特開平10−94911号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、構造が簡単で、工具の自動交換が可能であり、主軸頭が主軸中心軸線に対して非平行の旋回中心軸線を中心にして旋回する工作機械に適用することが可能な工作機械の切屑排出装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題は以下の手段によって解決される。すなわち、第1番目の発明の工作機械の切屑排出装置は、主軸頭と、前記主軸頭に回転自在に軸支され、その軸心において、その中心軸線と平行に形成された主軸貫通孔を備えると共に、加工屑である切屑を吸引するための切屑吸引孔が形成された工具ホルダを装着可能な主軸と、前記工具ホルダを前記主軸へクランプ・アンクランプするために、前記主軸貫通孔内にて主軸中心軸線と平行に移動可能に内嵌されると共に、その軸心において、その中心軸線と平行且つ、切屑が通過可能に形成されたドローバー貫通孔を備えるドローバーと、前記主軸頭を主軸中心軸線に対して非平行の第1の旋回中心軸線を中心にして旋回可能に支持すると共に、その軸心において、前記第1の旋回中心軸線と平行且つ、切屑が通過可能に形成された第1の支持部材貫通孔を備える第1の支持部材とからなることを特徴とする。
【0008】
第2番目の発明の工作機械の切屑排出装置は、第1番目の発明の工作機械の切屑排出装置において、前記ドローバー貫通孔に内嵌され、一端が前記工具ホルダの切屑吸引孔に連通し、他端が前記主軸頭に固定された中空の主軸側切屑吸引管と、前記第1の支持部材貫通孔に内嵌され、一端が前記主軸側切屑吸引管に連通し、他端が切屑吸引装置に連通する中空の第1の支持部材側切屑吸引管とからなることを特徴とする。
【0009】
第3番目の発明の工作機械の切屑排出装置は、第1番目の発明の工作機械の切屑排出装置において、前記ドローバー貫通孔に内嵌される中空の主軸側切屑吸引管と、前記第1の支持部材貫通孔に内嵌される、中空の第1の支持部材側切屑吸引管と、前記第1の支持部材を第1の旋回中心軸線に対して非平行の第2の旋回中心軸線を中心にして旋回可能に支持すると共に、その軸心において、前記第2の旋回中心軸線と平行に形成された第2の支持部材貫通孔を備える第2の支持部材と、前記第2の支持部材貫通孔に内嵌される、中空の第2の支持部材側切屑吸引管とを有し、前記主軸側切屑吸引管は、その一端が前記工具ホルダの切屑吸引孔に連通し、他端が前記主軸頭に固定され、第1の支持部材側切屑吸引管は、その一端が前記主軸側切屑吸引管に連通し、他端が前記第2の支持部材側切屑吸引管に連通し、前記第2の支持部材側切屑吸引管は、その一端が前記第1の支持部材側切屑吸引管に連通し、他端が切屑吸引装置に連通することを特徴とする。
【0010】
第4番目の発明の工作機械の切屑排出装置は、第3番目の発明の工作機械の切屑排出装置において、前記主軸中心軸線と前記第1の旋回中心軸線とは直交しており、前記第1の旋回中心軸線と前記第2の旋回中心軸線とは直交していることを特徴とする。
【0011】
第5番目の発明の工作機械の切屑排出装置は、第3番目の発明の工作機械の切屑排出装置において、前記第1の支持部材側切屑吸引管と前記第2の支持部材側切屑吸引管は、前記第1の旋回中心軸線を中心として相対的に回転可能に接続されていることを特徴とする。
【0012】
第6番目の発明の工作機械の切屑排出装置は、第3番目の発明の工作機械の切屑排出装置において、前記主軸側切屑吸引管の他端と第1の支持部材側切屑吸引管の一端を滑らかに連通し、前記主軸頭に着脱可能に取り付けられた中空の第1の連通管を有することを特徴とする。
【0013】
第7番目の発明の工作機械の切屑排出装置は、第3番目の発明の工作機械の切屑排出装置において、前記第1の支持部材側切屑吸引管の他端と前記第2の支持部材側切屑吸引管の一端を滑らかに連通し、前記第1の支持部材に着脱可能に取り付けられた中空の第2の連通管を有することを特徴とする。
【0014】
第8番目の発明の工作機械の切屑排出装置は、第6番目の発明の工作機械の切屑排出装置において、前記主軸側切屑吸引管、前記第1の支持部材側切屑吸引管、前記第2の支持部材側切屑吸引管、及び前記第1の連通管の内径は略同一であることを特徴とする。
【0015】
第9番目の発明の工作機械の切屑排出装置は、第7番目の発明の工作機械の切屑排出装置において、前記主軸側切屑吸引管、前記第1の支持部材側切屑吸引管、前記第2の支持部材側切屑吸引管、及び前記第2の連通管の内径は略同一であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明の工作機械の切屑排出装置は、第1の支持部材側切屑吸引管は、第1の支持部材貫通孔の軸心に、主軸頭支持部材に対して相対的に回転可能に接続されている。従って、第1の支持部材側切屑吸引管は、主軸頭の周辺の部材との干渉が無く、主軸頭支持部材に対して主軸頭を旋回したときに、主軸頭の旋回動作を阻害せずに、主軸頭支持部材の内部を通して切屑を外部に排出することができる。
【0017】
また、本発明の工作機械の切屑排出装置は、第2の支持部材側切屑吸引管は、第2の支持部材貫通孔の軸心に、主軸頭支持部材に対して相対的に回転可能に接続されている。従って、第2の支持部材側切屑吸引管は、主軸頭の周辺の部材との干渉が無く、主軸頭支持部材を旋回したときに、主軸頭支持部材の旋回動作を阻害せずに第2の支持部材の内部を通して切屑を外部に排出することができる。
【0018】
また、本発明の工作機械の切屑排出装置は、第1の連通管及び第2の連通管は、主軸側切屑吸引管、第1の支持部材側切屑吸引管、第2の支持部材側切屑吸引管に滑らかに連通しているため、切屑を円滑に排出することができる。また、第1の連通管及び第2の連通管は、主軸頭または主軸頭支持部材に着脱可能に取り付けられているため、各連通管内部や各切屑吸引管内部の清掃が容易である。
【0019】
更にまた、本発明の工作機械の切屑排出装置は、主軸側切屑吸引管、第1の連通管、第1の支持部材側切屑吸引管、第2の連通管、第2の支持部材側切屑吸引管の内径が同一であるため、切屑の滞留が少なく、切屑を円滑に外部に排出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の実施の形態の工作機械の切屑排出装置を有する門形マシニングセンタの斜視図である。
【図2】図1の門形マシニングセンタのユニバーサルヘッドの斜視図である。
【図3】本発明の第1の実施の形態を示す図2のユニバーサルヘッドの縦断面図である。
【図4】本発明の第1の実施の形態を示す図3の主軸の拡大縦断面図である。
【図5】本発明の第1の実施の形態を示すシール機構の拡大縦断面図である。
【図6】本発明の第2の実施の形態を示す主軸の要部拡大縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。図1は、本発明の実施の形態の工作機械の切屑排出装置を有する門形マシニングセンタの斜視図である。図2は、図1の門形マシニングセンタのユニバーサルヘッドの斜視図である。図1に示す門形マシニングセンタ1は、ベッド11とコラム12、12が、床面上に設置されている。コラム12、12は、正面(X軸方向)から見て左右一対配置されている。クロスレール13は、水平に左右方向に延びて配置され、コラム12、12の上端に支持されている。
【0022】
門形マシニングセンタ1は、床面に対して垂直に設置された一対のコラム12、12と、この一対のコラム12、12間に水平に掛け渡されたクロスレール13とにより、門形に構成されている。クロスレール13には、サドル14がY軸方向(左右方向)に移動可能に設けられている。サドル14にはラム(第2の支持部材)15がZ軸方向(垂直方向)に移動可能に設けられている。
【0023】
ベッド11上には、テーブル17がX軸方向(前後方向)に移動可能に設けられている。ラム15の下部(下端部)には、ユニバーサルヘッド16が取り付けられている。ユニバーサルヘッド16は、水平面内での旋回動作であるC軸方向移動と、垂直面内である旋回動作のA軸方向移動を行う。ユニバーサルヘッド16は、主軸頭18と、主軸頭18をA軸方向に旋回可能に支持する主軸頭支持部材(第1の支持部材)19等で構成されている。主軸頭支持部材19は、ラム(第2の支持部材)15の下部にC軸方向に旋回可能に支持されている。
【0024】
図3は、本発明の第1の実施の形態を示す図2のユニバーサルヘッドの縦断面図、図4は、本発明の第1の実施の形態を示す図3の主軸の拡大縦断面図である。図3、図4に示すように、主軸頭18は、主軸頭18に回転自在に軸支された主軸2と、主軸2の先端部に装着される工具ホルダ3と、工具ホルダ3を主軸にクランプ・アンクランプするクランプ機構4とを備えている。
【0025】
主軸2は、その軸心に、主軸中心軸線21に平行に主軸貫通孔22を有する筒体である。主軸2は、その前部及び後部が前軸受23及び後軸受24を介して主軸頭18に回転自在に軸支されている。また、主軸2の主軸貫通孔22の前端部にはテーパ孔25が形成され、テーパ孔25に工具ホルダ3が嵌合して固定される。主軸2の外周面にはロータ26が固定され、主軸頭18の内周面にはステータ27が固定されている。ステータ27は、ロータ26の外周面から径方向外側に一定間隔を隔ててロータ26を取り囲むように配置され、ステータ27に電流を供給することによって、ロータ26を回転させる。
【0026】
主軸頭18は、主軸頭支持部材(第1の支持部材)19に、主軸中心軸線21に対して直交(非平行)する第1の旋回中心軸線191を中心にして、A軸方向に旋回可能に支持されている。すなわち、主軸頭支持部材19には、その軸心に、第1の旋回中心軸線191と平行な第1の支持部材貫通孔192が形成されている。また、主軸頭18の左端部にボルトで固定された第1の旋回中心軸193が、第1の支持部材貫通孔192に内嵌し、前軸受194及び後軸受195を介して主軸頭支持部材19に旋回可能に軸支されている。
【0027】
第1の旋回中心軸193の外周面にはロータ196が固定され、第1の支持部材貫通孔192にはステータ197が固定されている。ステータ197は、ロータ196の外周面から径方向外側に一定間隔を隔てて、ロータ196を取り囲むように配置されている。ステータ197に電流を供給することによって、ロータ196を回転させ、主軸頭18を第1の旋回中心軸線191を中心にして旋回させる。
【0028】
第1の支持部材貫通孔192には、その右端と前軸受194との間に、ピストン198が、第1の旋回中心軸線191に平行に移動可能に内嵌している。ピストン198は、油圧力によって、第1の旋回中心軸線191に平行に移動する。ピストン198の右端面には環状の噛合歯が形成され、前軸受194の外輪の左端面と内輪の左端面にも、同心状に環状の噛合歯が形成されている。ピストン198の噛合歯、前軸受194の外輪の噛合歯、前軸受194の内輪の噛合歯は、3ピースカップリングを構成している。すなわち、ピストン198が右方向に移動すると、ピストン198の噛合歯が、前軸受194の外輪と内輪の噛合歯に同時に噛み合い、主軸頭18を旋回位置にクランプする。
【0029】
主軸頭支持部材19は、ラム(第2の支持部材)15に、第1の旋回中心軸線191に対して直交(非平行)する第2の旋回中心軸線151を中心にして、C軸方向に旋回可能に支持されている。すなわち、ラム15には、その軸心に、第2の旋回中心軸線151と平行な第2の支持部材貫通孔152が形成されている。また、主軸頭支持部材19にボルトで固定された第2の旋回中心軸153が、第2の支持部材貫通孔152に内嵌し、軸受154を介してラム15に旋回可能に軸支されている。
【0030】
第2の旋回中心軸153の外周面にはロータ155が固定され、第2の支持部材貫通孔152にはステータ156が固定されている。ステータ156は、ロータ155の外周面から径方向外側に一定間隔を隔ててロータ155を取り囲むように配置されている。ステータ156に電流を供給することによって、ロータ155を回転させ、主軸頭支持部材19を第2の旋回中心軸線151を中心にして旋回させる。
【0031】
第2の支持部材貫通孔152には、その下端と軸受154との間に、ピストン157が、第2の旋回中心軸線151に平行に移動可能に内嵌している。ピストン157は、油圧力によって、第2の旋回中心軸線151に平行に移動する。ピストン157の下端面には環状の噛合歯が形成され、軸受154の外輪の上端面と内輪の上端面にも、同心状に環状の噛合歯が形成されている。ピストン157の噛合歯、軸受154の外輪の噛合歯、軸受154の内輪の噛合歯は、3ピースカップリングを構成している。
【0032】
すなわち、ピストン157が下方向に移動すると、ピストン157の噛合歯が、軸受154の外輪と内輪の噛合歯に同時に噛み合い、主軸頭支持部材19を旋回位置にクランプする。また、クランプ機構4は、前記主軸2の主軸貫通穴22内に、主軸中心軸線21と平行に移動可能に内嵌され、工具ホルダ3をテーパ孔25にクランプ・アンクランプするドローバー5と、ドローバー5をアンクランプ方向に移動させる駆動機構(シリンダ機構)6とを有する。
【0033】
ドローバー5は、筒状の係合駆動部51と、係合駆動部51に着脱可能に接続された筒状のドローバー本体52で構成されている。係合駆動部51の上端部は、ドローバー本体52の下端部内に挿入され、ドローバー本体52の下端部の内面にねじ込まれて、固定されている。係合駆動部51は、前記テーパ孔25の近傍に配置されたコレット53内に挿入され、コレット53を前記工具ホルダ3の後端部に形成され係合段部31に係合させるよう構成されている。
【0034】
コレット53は、その上端部を基点にして径方向に拡開可能で、係合駆動部51の下端外周の傾斜面がコレット53の内面に摺接している。係合駆動部51が上端位置(図4の上方位置)にあるとき、コレット53を係合段部31に係合させ、下端位置(図4の下方位置)にあるとき、コレット53と係合段部31との係合を解除する。
【0035】
ドローバー本体52と主軸貫通穴22との間には多数の皿ばね54が介在されている。なお、55は皿ばね54の軸方向位置を規制するカラー部材である。皿ばね54はドローバー5をクランプ方向(図4の上方向)に付勢している。この付勢力により係合駆動部51がクランプ方向に移動すると、コレット53を拡開させて係合段部31に係合させ、工具ホルダ3のテーパ部32を前記テーパ孔25に強固に嵌合させる。
【0036】
前記駆動機構6は、主軸頭18の上端部にボルト61により締め付け固定されたケーシング62と、蓋部材63とで形成されたシリンダに、ピストン64を挿入した構造のものである。油圧力によって、このピストン64が図4の下方に移動すると、押圧プレート56を介して前記ドローバー5を、皿ばね54の付勢力に抗してアンクランプ方向(図4の下方向)に移動させ、工具ホルダ3のテーパ部32とテーパ孔25との嵌合を解除する。
【0037】
また、係合駆動部51の下端内には、その軸心に切屑吸引孔34が形成された工具ホルダ側切屑吸引管33が同軸をなすように挿入されており、工具ホルダ側切屑吸引管33はナット部材35により工具ホルダ3に固定されている。工具ホルダ3の下端には、図示しない刃具が取り付けられ、刃具の軸心には、切屑吸引孔34に連通する貫通孔が形成されている。
【0038】
また、前記ドローバー本体52の上端部521は、主軸側切屑吸引管71の下端部711内に挿入されている。この中空の主軸側切屑吸引管71は蓋部材63、ピストン64内に挿入され、かつ蓋部材63にボルトで固定されている。主軸側切屑吸引管71とドローバー本体52の上端部521との間には、シール機構8が設けられている。シール機構8は、主軸側切屑吸引管71と上端部521を相対的に回転可能に接続するとともに、外部からの空気が、主軸側切屑吸引管71内に吸引されるのを回避している。
【0039】
図5は本発明の第1の実施の形態を示すシール機構8の拡大縦断面図である。図5に示すように、シール機構8は、ドローバー本体52の上端部521の外周面522に摺接するカーボン製のシールリング81と、シールリング81を主軸側切屑吸引管71の段部712にスペーサ82を介在させて圧接する弾性部材製の押圧リング83と、押圧リング83の軸方向位置をスペーサ84を介在させて規制する止め輪85とを備えている。
【0040】
押圧リング83の弾性力によりシールリング81の端面が段部712に圧接し、シールリング81の内周面はドローバー本体52の上端部521の外周面522に摺接しており、これにより外部からの空気の進入を防止している。一方、シールリング81の外周面と主軸側切屑吸引管71の貫通孔713の下側の大径内周面714との間には隙間Cが形成されている。この隙間Cによって、ドローバー本体52と主軸側切屑吸引管71との間に振れがあっても、シールリング81が破損するのを回避している。
【0041】
図3、図4に示すように、係合駆動部51、ドローバー本体52の軸心部には、これらを軸方向に貫通するドローバー貫通孔511、523が形成されている。また、主軸側切屑吸引管71の軸心部にも、軸方向に貫通する貫通孔713が形成されている。このドローバー貫通孔511、523、主軸側切屑吸引管71の貫通孔713、工具ホルダ側切屑吸引管33の切屑吸引孔34の内径は、同一径に設定されている。
【0042】
また、主軸側切屑吸引管71の上端部には、中空の第1の連通管72の右端がボルトによって着脱可能に取り付けられている。また、第1の連通管72の左端は、主軸頭18の上端部にボルトによって着脱可能に取り付けられている。第1の連通管72は略U字形に形成され、その軸心に形成された貫通孔721の右端は、主軸側切屑吸引管71の貫通孔713に連通している。第1の連通管72の貫通孔721の内径は、主軸側切屑吸引管71の貫通孔713と同一径に設定されている。従って、切削時に発生した切屑は、工具ホルダ側切屑吸引管33、ドローバー貫通孔511、523、主軸側切屑吸引管71の貫通孔713を介して第1の連通管72の貫通孔721に排出される。
【0043】
第1の支持部材貫通孔192の軸心には、第1の旋回中心軸線191と平行に、第1の支持部材側切屑吸引管73が配置されている。第1の支持部材側切屑吸引管73の右端(図3の右側)は、主軸頭18の左端面にボルトによって固定されている。第1の支持部材側切屑吸引管73の左端の外周面は、第2の連通管74の下端の内周面に、相対的に回転可能に接続されている。この接続部にはシール機構8が設けられ、外部からの空気が第2の連通管74内に吸引されるのを回避している。このシール機構8は、前記した図5のシール機構8と同一機構なので、詳細な説明は省略する。
【0044】
従って、第1の支持部材側切屑吸引管73の軸心に形成された貫通孔731の右端は、主軸頭18に形成された貫通孔181を介して、前記第1の連通管72の貫通孔721の左端に連通している。第1の連通管72の貫通孔721は略U字形に形成されて、主軸側切屑吸引管71の貫通孔713と主軸頭18に形成された貫通孔181に滑らかに連通している。
【0045】
第2の連通管74は略U字形に形成され、その上端は、主軸頭支持部材19の左端面にボルトによって着脱可能に取り付けられている。主軸頭支持部材19の左端面には、中空の円筒部材77が固定され、第2の連通管74の下端は、円筒部材77の左端面にボルトによって着脱可能に取り付けられている。第2の連通管74の軸心に形成された貫通孔741の下端は、第1の支持部材側切屑吸引管73の貫通孔731の左端に連通している。
【0046】
第2の支持部材貫通孔152の軸心には、第2の旋回中心軸線151と平行に、第2の支持部材側切屑吸引管75が配置されている。図示しないが、第2の支持部材側切屑吸引管75の上端(図3の上側)は、ラム15の上端部にボルトによって固定されている。第2の支持部材側切屑吸引管75の下端の外周面は、中空の円盤部材76の内周面に、相対的に回転可能に接続され、この接続部にはシール機構8が設けられ、外部からの空気が第2の支持部材側切屑吸引管75内に吸引されるのを回避している。このシール機構8は、前記した図5のシール機構8と同一機構なので、詳細な説明は省略する。
【0047】
第2の支持部材側切屑吸引管75の軸心に形成された貫通孔751の下端は、主軸頭支持部材19に形成された貫通孔199を介して、前記第2の連通管74の貫通孔741の上端に連通している。また、第2の支持部材側切屑吸引管75の軸心の貫通孔751の上端は、送風ファンや送風タービン等の図示しない切屑吸引装置に連通している。第2の連通管74の貫通孔741は略U字形に形成されているため、第1の支持部材側切屑吸引管73の貫通孔731と、主軸頭支持部材19に形成された貫通孔199に、滑らかに連通している。
【0048】
主軸頭18の貫通孔181の内径、第1の支持部材側切屑吸引管73の貫通孔731の内径、第2の連通管74の貫通孔741の内径、主軸頭支持部材19の貫通孔199の内径、第2の支持部材側切屑吸引管75の貫通孔751の内径は、前記主軸側切屑吸引管71の貫通孔713と同一径に設定されている。
【0049】
次に本発明の第2の実施の形態の工作機械の切屑排出装置について説明する。図6は本発明の第2の実施の形態を示す主軸の要部拡大縦断面図である。上記第1の実施の形態では、主軸側切屑吸引管71はドローバー本体52の外周面522に外嵌している。第2の実施の形態は、ドローバー本体52、係合駆動部51の軸心部のドローバー貫通孔523、511内に主軸側切屑吸引管を内嵌して、工具ホルダ3の切屑吸引孔34まで延長し、工具ホルダ側切屑吸引管33の切屑吸引孔34に主軸側切屑吸引管を連通させた例である。
【0050】
すなわち、図6に示すように、本発明の第2の実施の形態では、主軸側切屑吸引管は、蓋部材63にボルトで固定された主軸側切屑吸引管71と、主軸側切屑吸引管71の貫通案713の下端部にねじ込んで固定された下部切屑吸引管78とで構成されている。下部切屑吸引管78は中空円筒状で、その軸心に貫通孔783が形成されている。
【0051】
主軸側切屑吸引管71の下端部711には、下部切屑吸引管78の上端部781の外周面との間に、Oリング86が設けられている。Oリング86は、主軸側切屑吸引管71の貫通案713と下部切屑吸引管78の上端部781の外周面との間をシールして、外部からの空気が、主軸側切屑吸引管71内に吸引されるのを回避している。
【0052】
下部切屑吸引管78の下側は、ドローバー本体52、係合駆動部51の軸心部のドローバー貫通孔523、511に内嵌して、工具ホルダ3の工具ホルダ側切屑吸引管33の切屑吸引孔34に内嵌している。また、下部切屑吸引管78の下端部782の外周は、工具ホルダ3に装着された軸受36によって回転可能に軸支されている。軸受36は、その外輪が工具ホルダ3に圧入して固定され、転動体としてのボールが保持器で保持された内輪無しのボール軸受である。
【0053】
従って、切削加工を行うために、主軸2、工具ホルダ3が回転しても、主軸頭18に対して固定の下部切屑吸引管78の下端部782は、軸受36によって工具ホルダ3に対して回転可能に軸支されるため、下部切屑吸引管78の振れが抑制される。
【0054】
従って、切削時に発生した切屑は、工具ホルダ側切屑吸引管33、下部切屑吸引管78の貫通孔783、主軸側切屑吸引管71の貫通孔713を介して第1の連通管72の貫通孔721に円滑に排出される。
【0055】
上記したように本実施形態では、第1の支持部材側切屑吸引管73は、第1の支持部材貫通孔192の軸心に、第2の連通管74(主軸頭支持部材19)に対して相対的に回転可能に接続されている。従って、第1の支持部材側切屑吸引管73は主軸頭18の周辺の部材との干渉が無く、主軸頭支持部材19に対して主軸頭18をA軸方向に旋回した時に、主軸頭18の旋回動作を阻害せずに、主軸頭支持部材19の内部を通して切屑を外部に排出することができる。
【0056】
また、本実施形態では、第2の支持部材側切屑吸引管75は、第2の支持部材貫通孔152の軸心に、円盤部材76(主軸頭支持部材19)に対して相対的に回転可能に接続されている。従って、第2の支持部材側切屑吸引管75は主軸頭18の周辺の部材との干渉が無く、ラム15に対して主軸頭支持部材19をC軸方向に旋回した時に、主軸頭支持部材19の旋回動作を阻害せずに、ラム15の内部を通して切屑を外部に排出することができる。
【0057】
また、本実施形態では、第1の連通管72及び第2の連通管74は、主軸側切屑吸引管71、第1の支持部材側切屑吸引管73、第2の支持部材側切屑吸引管75に滑らかに連通しているため、切屑を円滑に排出することができる。また、第1の連通管72及び第2の連通管74は、主軸頭18または主軸頭支持部材19に着脱可能に取り付けられているため、各連通管内部や各切屑吸引管内部の清掃が容易である。
【0058】
更にまた、本実施形態では、下部切屑吸引管78、主軸側切屑吸引管71、第1の連通管72、第1の支持部材側切屑吸引管73、第2の連通管74、第2の支持部材側切屑吸引管75の内径が同一であるため、切屑の滞留が少なく、切屑を円滑に外部に排出することができる。
【0059】
また、本実施形態では、相対的に回転するドローバー本体52と主軸側切屑吸引管71との間、第1の支持部材側切屑吸引管73と第2の連通管74との間、円盤部材76と第2の支持部材側切屑吸引管75との間に、シール機構8を設けたので、外部からの空気が吸引されるのを回避することができ、切屑の回収効率を高めることができる。
【0060】
本発明の実施の形態では、主軸中心軸線21と第1の旋回中心軸線191は直交しており、第1の旋回中心軸線191と第2の旋回中心軸線151は直交しているが、非平行であればよい。また、本発明の実施の形態では、主軸頭18がA軸方向とC軸方向の両方の旋回動作が可能な例について説明したが、A軸方向の旋回動作だけが可能な主軸頭に適用してもよい。
【符号の説明】
【0061】
1…門形マシニングセンタ
11…ベッド
12…コラム
13…クロスレール
14…サドル
15…ラム(第2の支持部材)
151…第2の旋回中心軸線
152…第2の支持部材貫通孔
153…第2の旋回中心軸
154…軸受
155…ロータ
156…ステータ
157…ピストン
16…ユニバーサルヘッド
17…テーブル
18…主軸頭
181…貫通穴
19…主軸頭支持部材(第1の支持部材)
191…第1の旋回中心軸線
192…第1の支持部材貫通孔
193…第1の旋回中心軸
194…前軸受
195…後軸受
196…ロータ
197…ステータ
198…ピストン
199…貫通穴
2…主軸
21…主軸中心軸線
22…主軸貫通穴
23…前軸受
24…後軸受
25…テーパ孔
26…ロータ
27…ステータ
3…工具ホルダ
31…係合段部
32…テーパ部
33…工具ホルダ側切屑吸引管
34…切屑吸引孔
35…ナット部材
36…軸受
4…クランプ機構
5…ドローバー
51…係合駆動部
511…ドローバー貫通孔
52…ドローバー本体
521…上端部
522…外周面
523…ドローバー貫通孔
53…コレット
54…皿ばね
55…カラー部材
56…押圧プレート
6…駆動機構(シリンダ機構)
61…ボルト
62…ケーシング
63…蓋部材
64…ピストン
71…主軸側切屑吸引管
711…下端部
712…段部
713…貫通孔
714…大径内周面
72…第1の連通管
721…貫通孔
73…第1の支持部材側切屑吸引管
731…貫通孔
74…第2の連通管
741…貫通孔
75…第2の支持部材側切屑吸引管
751…貫通孔
76…円盤部材
77…円筒部材
78…下部切屑吸引管
781…上端部
782…下端部
783…貫通孔
8…シール機構
81…シールリング
82…スペーサ
83…押圧リング
84…スペーサ
85…止め輪
86…Oリング

【特許請求の範囲】
【請求項1】
主軸頭と、
前記主軸頭に回転自在に軸支され、その軸心において、その中心軸線と平行に形成された主軸貫通孔を備えると共に、加工屑である切屑を吸引するための切屑吸引孔が形成された工具ホルダを装着可能な主軸と、
前記工具ホルダを前記主軸へクランプ・アンクランプするために、前記主軸貫通孔内にて主軸中心軸線と平行に移動可能に内嵌されると共に、その軸心において、その中心軸線と平行且つ、切屑が通過可能に形成されたドローバー貫通孔を備えるドローバーと、
前記主軸頭を主軸中心軸線に対して非平行の第1の旋回中心軸線を中心にして旋回可能に支持すると共に、その軸心において、前記第1の旋回中心軸線と平行且つ、切屑が通過可能に形成された第1の支持部材貫通孔を備える第1の支持部材と
からなることを特徴とする工作機械の切屑排出装置。
【請求項2】
請求項1に記載の工作機械の切屑排出装置において、
前記ドローバー貫通孔に内嵌され、一端が前記工具ホルダの切屑吸引孔に連通し、他端が前記主軸頭に固定された中空の主軸側切屑吸引管と、
前記第1の支持部材貫通孔に内嵌され、一端が前記主軸側切屑吸引管に連通し、他端が切屑吸引装置に連通する中空の第1の支持部材側切屑吸引管と
からなることを特徴とする工作機械の切屑排出装置。
【請求項3】
請求項1に記載の工作機械の切屑排出装置において、
前記ドローバー貫通孔に内嵌される中空の主軸側切屑吸引管と、
前記第1の支持部材貫通孔に内嵌される、中空の第1の支持部材側切屑吸引管と、
前記第1の支持部材を第1の旋回中心軸線に対して非平行の第2の旋回中心軸線を中心にして旋回可能に支持すると共に、その軸心において、前記第2の旋回中心軸線と平行に形成された第2の支持部材貫通孔を備える第2の支持部材と、
前記第2の支持部材貫通孔に内嵌される、中空の第2の支持部材側切屑吸引管とを有し、
前記主軸側切屑吸引管は、その一端が前記工具ホルダの切屑吸引孔に連通し、他端が前記主軸頭に固定され、
第1の支持部材側切屑吸引管は、その一端が前記主軸側切屑吸引管に連通し、他端が前記第2の支持部材側切屑吸引管に連通し、
前記第2の支持部材側切屑吸引管は、その一端が前記第1の支持部材側切屑吸引管に連通し、他端が切屑吸引装置に連通する
ことを特徴とする工作機械の切屑排出装置。
【請求項4】
請求項3に記載された工作機械の切屑排出装置において、
前記主軸中心軸線と前記第1の旋回中心軸線とは直交しており、
前記第1の旋回中心軸線と前記第2の旋回中心軸線とは直交している
ことを特徴とする工作機械の切屑排出装置。
【請求項5】
請求項3に記載された工作機械の切屑排出装置において、
前記第1の支持部材側切屑吸引管と前記第2の支持部材側切屑吸引管は、前記第1の旋回中心軸線を中心として相対的に回転可能に接続されている
ことを特徴とする工作機械の切屑排出装置。
【請求項6】
請求項3に記載された工作機械の切屑排出装置において、
前記主軸側切屑吸引管の他端と第1の支持部材側切屑吸引管の一端を滑らかに連通し、前記主軸頭に着脱可能に取り付けられた中空の第1の連通管を有する
ことを特徴とする工作機械の切屑排出装置。
【請求項7】
請求項3に記載された工作機械の切屑排出装置において、
前記第1の支持部材側切屑吸引管の他端と前記第2の支持部材側切屑吸引管の一端を滑らかに連通し、前記第1の支持部材に着脱可能に取り付けられた中空の第2の連通管を有する
ことを特徴とする工作機械の切屑排出装置。
【請求項8】
請求項6に記載された工作機械の切屑排出装置において、
前記主軸側切屑吸引管、前記第1の支持部材側切屑吸引管、前記第2の支持部材側切屑吸引管、及び前記第1の連通管の内径は略同一である
ことを特徴とする工作機械の切屑排出装置。
【請求項9】
請求項7に記載された工作機械の切屑排出装置において、
前記主軸側切屑吸引管、前記第1の支持部材側切屑吸引管、前記第2の支持部材側切屑吸引管、及び前記第2の連通管の内径は略同一である
ことを特徴とする工作機械の切屑排出装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−253570(P2010−253570A)
【公開日】平成22年11月11日(2010.11.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−102754(P2009−102754)
【出願日】平成21年4月21日(2009.4.21)
【出願人】(000146847)株式会社森精機製作所 (204)
【Fターム(参考)】