説明

工作機械の誤差表示装置

【課題】直進軸と回転軸を有する工作機械を対象とした場合に、NCデータによる理想的な工作機械の動作に対する実際の工作機械の動作の誤差を把握することができる工作機械の誤差表示装置を提供する。
【解決手段】NCデータに基づいて工作機械1の直進軸および回転軸を運転した場合の直進軸および回転軸に関する機械座標系の軸位置測定データを取得する。直進軸および回転軸の機械座標系の軸位置測定データと機械情報とに基づいて座標変換をして、ワーク座標系における工具の測定加工点移動軌跡を算出する。NCデータに基づいてワーク座標系における工具の基準加工点移動軌跡を表示画面に表示すると共に、測定加工点移動軌跡を基準加工点移動軌跡に重ねて表示画面に表示して、基準加工点移動軌跡に対する測定加工点移動軌跡の誤差を表示画面に表示する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、直進軸と回転軸を有する工作機械を対象として、NCデータによる理想的な動作に対する実際の動作の誤差を表示する誤差表示装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、工作機械の誤差表示装置として、特開平11−143514号公報(特許文献1)に記載されたものがある。特許文献1には、直交3軸の構成からなる工作機械を対象として、NCデータの位置情報とNCデータを実行した場合の工作機械の実際の各軸の位置情報とを重ねて表示することで、誤差を表示することが記載されている。このような直交3軸の機械構成の場合には、NCデータに含まれるワーク座標系の原点が実際の工作機械における機械座標系の原点に対してずれているが、NCデータに含まれるワーク座標系の各軸指令は、工作機械における実際の各軸指令動作と一致している。そのため、実際の工作機械の各軸の位置情報を単に平行移動させることで、両者の座標系を容易に一致させることができる。
【0003】
ところで、複雑な形状の加工を可能とするために、直進軸に回転軸を加えた例えば5軸マシニングセンタなどがある(例えば、特許文献2参照)。特に、直進軸の位置制御を行いながら、同時に回転軸の位置制御を行う同時5軸加工は、より複雑な形状の加工が可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平11−143514号公報
【特許文献2】特開2008−090734号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ここで、特許文献2に記載されているような回転軸を有する工作機械を対象とした場合に、特許文献1に記載されている誤差表示方法をそのまま適用することができない。この理由は、NCデータに含まれる各軸の位置情報と工作機械の実際の各軸の位置情報とが、直交3軸の構成からなる工作機械のように平行移動すれば足りる関係にないためである。
【0006】
例えば、工具による加工点をA点からB点へ移動させるには、工具の軸方向の傾きを一定とするのであれば、直進軸のみの動作となるが、工具の軸方向の傾きを変化させるのであれば、直進軸と回転軸を動作させることが必要となる。このように、工具の軸方向の傾きを変化させる場合には、直進軸と回転軸とが相互に絡み合って、工具の加工点を移動させている。そして、上述したように、回転軸を有する工作機械を対象とした場合には、NCデータによる理想的な動作に対する実際の動作の誤差を把握することができない。そのため、これまでは、直進軸と回転軸を有する工作機械にて実際にワークを加工して、形状を計測することによって誤差を把握していた。つまり、トライアンドエラーを繰り返すことで、誤差が許容範囲に入るように、調整していた。
【0007】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、直進軸と回転軸を有する工作機械を対象とした場合に、NCデータによる理想的な工作機械の動作に対する実際の工作機械の動作の誤差を把握することができる工作機械の誤差表示装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1に係る工作機械の誤差表示装置は、
直進軸と回転軸とを備え、前記直進軸および前記回転軸を動作することによりワークに対して工具を相対移動させて前記工具により前記ワークを加工する工作機械における誤差表示装置であって、
表示画面と、
ワーク座標系における加工点と当該加工点に対する工具軸方向とを含むNCデータを取得するNCデータ取得手段と、
前記NCデータに基づいて、前記ワーク座標系における前記工具の基準加工点移動軌跡を前記表示画面に表示する基準加工点移動軌跡表示手段と、
前記NCデータに基づいて前記工作機械の前記直進軸および前記回転軸を運転した場合の前記直進軸および前記回転軸に関する機械座標系の軸位置測定データを取得する軸位置測定データ取得手段と、
前記機械座標系における前記ワーク原点の座標、前記機械座標系の前記回転軸の回転中心座標、および、前記工作機械の基準状態における前記機械座標系の前記工具の先端位置座標を含む機械情報を取得する機械情報取得手段と、
前記軸位置測定データ取得手段により取得した前記直進軸および前記回転軸の前記機械座標系の前記軸位置測定データと前記機械情報取得手段により取得した前記機械情報とに基づいて座標変換をして、前記ワーク座標系における前記工具の測定加工点移動軌跡を算出する測定加工点移動軌跡算出手段と、
前記基準加工点移動軌跡表示手段により前記基準加工点移動軌跡が表示されている前記表示画面に、前記測定加工点移動軌跡算出手段により算出した前記測定加工点移動軌跡を前記基準加工点移動軌跡に重ねて表示して、前記基準加工点移動軌跡に対する前記測定加工点移動軌跡の誤差を表示する測定加工点移動軌跡表示手段と、
を備えることである。
【0009】
請求項2に係る発明は、前記工作機械の誤差表示装置が、さらに、前記NCデータ取得手段により取得した前記NCデータと前記機械情報取得手段により取得した前記機械情報とに基づいて座標変換をして、前記機械座標系における前記工作機械の前記直進軸および前記回転軸に関する機械座標系の基準軸位置データを算出する基準軸位置データ算出手段と、前記基準軸位置データに基づいて、前記機械座標系における前記直進軸および前記回転軸についての基準軸位置移動軌跡を前記表示画面に表示する基準軸位置移動軌跡表示手段と、前記基準軸位置移動軌跡表示手段により前記基準軸位置移動軌跡が表示されている前記表示画面に、前記軸位置測定データ取得手段により取得した前記軸位置測定データに基づいて得られた測定軸位置移動軌跡を重ねて表示して、前記基準軸位置移動軌跡に対する前記測定軸位置移動軌跡の誤差を表示する測定軸位置移動軌跡表示手段と、を備えることである。
【0010】
請求項3に係る発明は、前記工作機械の誤差表示装置が、前記測定加工点移動軌跡と前記測定軸位置移動軌跡とにおいて時間要素が対応する部位を、前記表示画面に関連表示する関連表示手段をさらに備えることである。
請求項4に係る発明は、前記関連表示手段が、前記表示画面において、前記測定加工点移動軌跡および前記測定軸位置移動軌跡の一方の所定範囲を選択した場合に、前記測定加工点移動軌跡および前記測定軸位置移動軌跡の他方における前記所定範囲に時間要素が対応する範囲の表示属性を変更して表示することである。
【0011】
請求項5に係る発明は、前記工作機械の誤差表示装置が、前記表示画面に表示される前記測定加工点移動軌跡または前記測定軸位置移動軌跡の所定範囲に含まれる基点から終点までの時間要素をスライドバーが可動する可動領域の幅にて表示すると共に、前記可動領域の中で前記スライドバーを可動可能なスライド表示手段をさらに備え、前記関連表示手段は、前記測定加工点移動軌跡および前記測定軸位置移動軌跡において、前記可動領域中の前記スライドバーの位置に対応する部位を前記表示画面に関連表示することである。
【0012】
請求項6に係る発明は、前記関連表示手段が、前記表示画面において、前記測定加工点移動軌跡と前記測定軸位置移動軌跡において対応する時間要素の所定位置を基点とし、それぞれの軌跡において前記基点から時間要素の経過につれて同種の表示色となるように前記表示色を漸次的に変更してグラデーション表示することである。
【0013】
請求項7に係る発明は、前記工作機械の誤差表示装置が、前記軸位置測定データ取得手段により取得した前記軸位置測定データに基づいて、速度または加速度を算出する速度加速度算出手段と、前記速度加速度算出手段により算出された前記速度または前記加速度を前記表示画面に表示する速度加速度表示手段と、をさらに備え、前記関連表示手段は、前記速度加速度表示手段により前記表示画面に表示される前記速度または前記加速度と前記測定加工点移動軌跡および前記測定軸位置移動軌跡とにおいて、時間要素が対応する部位を、前記表示画面に関連表示することである。
【0014】
請求項8に係る発明は、前記工作機械の誤差表示装置が、前記軸位置測定データ取得手段により取得した前記軸位置測定データに基づいて、速度または加速度を算出する速度加速度算出手段をさらに備え、前記関連表示手段は、前記速度加速度算出手段により算出された前記速度または前記加速度に応じて、前記表示画面に表示されている前記測定加工点移動軌跡および前記測定軸位置移動軌跡の少なくとも一方の表示属性を変更して表示することである。
【0015】
請求項9に係る発明は、前記工作機械の誤差表示装置は、前記基準軸位置データ算出手段により算出した前記基準軸位置データに基づいて、前記直進軸および前記回転軸の少なくとも一軸における軸反転位置を算出する軸反転位置算出手段をさらに備え、前記関連表示手段は、前記測定加工点移動軌跡が表示されている表示画面に、前記軸反転位置を重ねて表示することである。
【0016】
請求項10に係る発明は、前記基準加工点移動軌跡表示手段および前記測定加工点移動軌跡表示手段が、選択された二つまたは三つの軸に関する前記基準加工点移動軌跡および前記測定加工点移動軌跡を、前記表示画面に二次元表示または三次元表示することである。
また、請求項11に係る発明は、前記基準軸位置移動軌跡表示手段および前記測定軸位置移動軌跡表示手段が、選択された二つまたは三つの軸に関する前記基準軸位置移動軌跡および前記測定軸位置移動軌跡を、前記表示画面に二次元表示または三次元表示することである。
【0017】
請求項12に係る工作機械の誤差表示装置は、
直進軸と回転軸とを備え、前記直進軸および前記回転軸を動作することによりワークに対して工具を相対移動させて前記工具により前記ワークを加工する工作機械における誤差表示装置であって、
表示画面と、
ワーク座標系における加工点と当該加工点に対する工具軸方向とを含むNCデータを取得するNCデータ取得手段と、
前記機械座標系における前記ワーク原点の座標、前記機械座標系の前記回転軸の回転中心座標、および、前記工作機械の基準状態における前記機械座標系の前記工具の先端位置座標を含む機械情報を取得する機械情報取得手段と、
前記NCデータ取得手段により取得した前記NCデータと前記機械情報取得手段により取得した前記機械情報とに基づいて座標変換をして、前記機械座標系における前記工作機械の前記直進軸および前記回転軸に関する機械座標系の基準軸位置データを算出する基準軸位置データ算出手段と、
前記基準軸位置データに基づいて、前記機械座標系における前記直進軸および前記回転軸についての基準軸位置移動軌跡を前記表示画面に表示する基準軸位置移動軌跡表示手段と、
前記NCデータに基づいて前記工作機械の前記直進軸および前記回転軸を運転した場合の前記直進軸および前記回転軸に関する機械座標系の軸位置測定データを取得する軸位置測定データ取得手段と、
前記基準軸位置移動軌跡表示手段により前記基準軸位置移動軌跡が表示されている前記表示画面に、前記軸位置測定データ取得手段により取得した前記軸位置測定データに基づいて得られた測定軸位置移動軌跡を重ねて表示して、前記基準軸位置移動軌跡に対する前記測定軸位置移動軌跡の誤差を表示する測定軸位置移動軌跡表示手段と、
を備えることである。
【発明の効果】
【0018】
請求項1に係る発明によれば、軸位置測定データに対して機械座標系からワーク座標系に座標変換を行うことで、実際の工具の加工点の移動軌跡、すなわち、「ワーク座標系の測定加工点移動軌跡」を得ることができる。そして、NCデータによる理想的な工具の加工点の移動軌跡(「基準加工点移動軌跡」)と、算出した実際の工具の加工点の移動軌跡とを重ねて表示することで、直進軸と回転軸を備える工作機械を対象として、実際の工具の加工点の移動軌跡とNCデータによる理想的な工具の加工点の移動軌跡との誤差を把握することができる。従って、従来のような実際にワークを加工して行うトライアンドエラーを実行する必要なく、誤差を把握することができる。
【0019】
請求項2に係る発明によれば、NCデータに対してワーク座標系から機械座標系に座標変換を行うことで、機械座標系の理想的な各軸の位置の移動軌跡、すなわち、「基準軸位置移動軌跡」を得ることができる。そして、NCデータによる理想的な各軸の位置の移動軌跡と、実際に動作した各軸の位置の移動軌跡(「測定軸位置移動軌跡」)とを重ねて表示することで、直進軸と回転軸を備える工作機械に対して、実際の各軸の位置の移動軌跡とNCデータによる理想的な各軸の位置の移動軌跡との誤差を把握することができる。従って、このことからも、従来のような実際にワークを加工して行うトライアンドエラーを実行する必要なく、誤差を把握することができる。
【0020】
さらに、ワーク座標系におけるNCデータによる理想的な工具の加工点の移動軌跡と実際の工具の加工点の移動軌跡との重合表示したものと、機械座標系におけるNCデータによる理想的な各軸の位置の移動軌跡と実際の各軸の位置の移動軌跡とを重合表示したものをそれぞれ表示することにより、直進軸および回転軸を有する工作機械においては把握することができなかった工具の加工点の軌跡誤差と軸位置の軌跡誤差とを見比べることができる。これにより、工具の加工点の軌跡誤差が生じている場合に、どの軸に原因があるかを把握することができるようになる。
【0021】
請求項3に係る発明によれば、ワーク座標系における実際の工具の加工点の移動軌跡を表示したものと、機械座標系における実際の各軸の位置の移動軌跡を表示したもののそれぞれにおいて、時間要素が対応する部位が関連づけて表示されている。従って、実際の工具の加工点の移動軌跡における所定部位が、実際の各軸の位置の移動軌跡においてどこに対応するかが視覚的に把握できる。これにより、例えば、実際の工具の加工点の移動軌跡がNCデータによる理想的な工具の加工点の移動軌跡に対して大きく誤差が生じている部位において、工作機械のどの軸が原因であるかを視覚的に把握できる。
【0022】
請求項4に係る発明によれば、ワーク座標系の表示画面か機械座標系の表示画面において範囲を指示することで、実際の工具の加工点の移動軌跡と実際の各軸の位置の移動軌跡との対応を視覚的に把握できる。この表示属性は、例えば、線色、線種、線の点滅などが含まれる。
【0023】
請求項5に係る発明によれば、スライドバーを可動領域において移動することで、表示画面に表示されている実際の工具の加工点の移動軌跡および実際の各軸の位置の移動軌跡の時間要素が対応する部位が連動して移動する。つまり、スライドバーを可動領域において移動することで、時間経過につれて、実際の工具の加工点の移動軌跡と実際の各軸の位置の移動軌跡とが移動していく遷移を把握することができる。ここで、可動領域の幅は、任意に指定された範囲に含まれる基端から終点までの時間要素を表示している。例えば、実際の工具の加工点の移動軌跡または実際の各軸の位置の移動軌跡の全ての範囲を指定している場合には、基点と終点は、それぞれの移動軌跡の同一位置となる。また、実際の工具の加工点の移動軌跡または実際の各軸の位置の移動軌跡の一部範囲を指定している場合には、その範囲の境界に位置する両端点が、それぞれスライドバーの可動領域の開始点と終了点に対応する。
【0024】
請求項6に係る発明によれば、グラデーション表示することで、表示画面に表示されている実際の工具の加工点の移動軌跡と実際の各軸の位置の移動軌跡とにおいて、時間要素が対応する部位を全体に亘って視覚的に把握することができる。
【0025】
請求項7に係る発明によれば、工作機械を構成する各軸(直進軸および回転軸)の速度または加速度が、実際の工具の加工点の移動軌跡および実際の各軸の位置の移動軌跡に対応して関連づけて表示されている。従って、実際の工具の加工点の移動軌跡または実際の各軸の位置の移動軌跡の所定部位において、各軸の速度または加速度がどのような時間挙動を示しているかを把握することができる。例えば、速度または加速度の急激な変化があると、実際の各軸の位置の移動軌跡が所望の軌跡に対して誤差を生じる可能性がある。つまり、誤差が生じる原因をより明確に把握することができる。
【0026】
請求項8に係る発明によれば、工作機械を構成する各軸(直進軸および回転軸)の速度または加速度が、実際の工具の加工点の移動軌跡および実際の各軸の位置の移動軌跡の少なくとも一方の表示属性を変更することで表示されている。従って、実際の工具の加工点の移動軌跡または実際の各軸の位置の移動軌跡の所定部位において、各軸の速度または加速度がどのような時間挙動を示しているかを把握することができる。例えば、速度または加速度の急激な変化があると、実際の各軸の位置の移動軌跡が所望の軌跡に対して誤差を生じる可能性がある。つまり、誤差が生じる原因をより明確に把握することができる。
【0027】
請求項9に係る発明によれば、軸反転位置を実際の工具の加工点の移動軌跡に重ねて表示することにより、軸反転位置による工具の加工点への影響を視覚的に把握することができる。つまり、誤差の原因が軸反転位置であるか否かを視覚的に即座に把握することができる。なお、軸反転位置とは、例えば、X軸を例に挙げると、X軸がプラス方向への移動状態からマイナス方向、またはその逆への移動に反転した位置を意味する。もちろん、他の軸、例えば、回転軸の場合にも同様である。
【0028】
請求項10に係る発明によれば、ワーク座標系の表示において二次元表示または三次元表示における系列を各座標軸とすることで、視覚的に工具の加工点の移動軌跡を把握できる。また、請求項11に係る発明によれば、二次元表示または三次元表示における系列を各座標軸とすることで、視覚的に各軸の誤差を把握できる。
さらに、ワーク座標系または機械座標系において上記のように表示することにより、経過時間の影響を受けることなく、工具の加工点または軸位置の軌跡を把握できる。NCデータによる指令値と実際の工作機械の各軸の計測値とは、実際には時間のずれが生じるものである。そのため、仮に、表示の系列に時間要素が含まれると(例えば横軸を時間軸とした場合)、実際には正確な位置にある場合であっても、ずれが生じるように見えてしまうおそれがある。そこで、本発明のように、選択された二つまたは三つの軸に関する移動軌跡を表示画面に二次元表示または三次元表示の系列として表示しているため、時間要素を含まない表示を行っている。従って、移動軌跡の誤差を確実に把握できる。
【0029】
請求項12に係る発明によれば、NCデータに対してワーク座標系から機械座標系に座標変換を行うことで、機械座標系の理想的な各軸の位置の移動軌跡、すなわち、「基準軸位置移動軌跡」を得ることができる。そして、NCデータによる理想的な各軸の位置の移動軌跡と、実際に動作した各軸の位置の移動軌跡(「測定軸位置移動軌跡」)とを重ねて表示することで、直進軸と回転軸を備える工作機械に対して、実際の各軸の位置の移動軌跡とNCデータによる理想的な各軸の位置の移動軌跡との誤差を把握することができる。従って、従来のような実際にワークを加工して行うトライアンドエラーを実行する必要なく、誤差を把握することができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】5軸横型マシニングセンタの斜視図である。
【図2】NC装置および誤差表示装置を示すブロック図である。
【図3】表示画面800の例である。
【図4】表示画面800の他の例である。
【図5】表示画面800の他の例である。
【図6】表示画面800の他の例である。
【図7】表示画面800の他の例である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、本発明の工作機械の誤差表示装置を具体化した実施形態について図面を参照しつつ説明する。本実施形態において、工作機械は、直進軸3軸と回転軸2軸を有する5軸横型マシニングセンタを例に取り説明する。なお、ここでは、直進軸3軸と回転軸2軸を有する5軸横型マシニングセンタを例に挙げるが、直進軸と回転軸により、ワークに対して工具を相対移動することができる工作機械であれば、同様に他の構成でも適用可能である。
【0032】
(5軸横型マシニングセンタの構成)
5軸横型マシニングセンタ1の構成について、図1を参照して説明する。図1は、5軸横型マシニングセンタ1の外観を示す斜視図である。図1に示すように、5軸横型マシニングセンタ1は、ベッド2と、コラム3と、主軸頭4と、主軸5と、サドル6と、チルトテーブル7と、回転パレット8と、ワークテーブル9とから構成される。
【0033】
ベッド2は、T字型に形成された基台21と、2つのZ軸ガイド22と、Z軸駆動用ボールねじ(図示せず)と、Z軸駆動用モータ23と、X軸ガイド(図示せず)と、2本のX軸駆動用ボールねじ(図示せず)と、2つのX軸駆動用モータ24を有する。2つのZ軸ガイド22とX軸ガイドは、基台21上にZ軸方向とX軸方向のそれぞれに平行に設けられている。Z軸駆動用ボールねじは、2つのZ軸ガイド22のほぼ中央に、Z軸ガイド22に平行に設けられている。2本のX軸駆動用ボールねじは、X軸ガイドのほぼ中央に、X軸ガイドに平行に設けられている。これらのZ軸駆動用ボールねじ及びX軸駆動用ボールねじには、それぞれの軸方向に移動可能なボールねじナットが取り付けられている。Z軸駆動用モータ23とX軸駆動用モータ24は、それぞれZ軸駆動用ボールねじの端側とX軸駆動用ボールねじの端側に設けられ、それぞれZ軸駆動用ボールねじとX軸駆動用ボールねじを回転駆動する。
【0034】
コラム3は、ベッド2上に立設されている。具体的には、コラム3の下端面が、2つのZ軸ガイド22に摺動可能に支持されると共に、Z軸駆動用ボールねじのボールねじナットに連結されている。すなわち、コラム3は、Z軸駆動用ボールねじの回転駆動に伴い、Z軸ガイド22に沿ってベッド2に対してZ軸方向に摺動する。そして、コラム3は、Y軸ガイド(図示せず)と、2本のY軸駆動用ボールねじ(図示せず)と、2つのY軸駆動用モータ31とを有する。Y軸ガイドは、コラム3の端面(垂直面)にY軸方向に平行に設けられている。Y軸駆動用ボールねじは、Y軸ガイドに平行に設けられている。このY軸駆動用ボールねじには、軸方向に移動可能なボールねじナットが取り付けられている。そして、Y軸駆動用モータ31は、Y軸駆動用ボールねじの端側に設けられ、Y軸駆動用ボールねじを回転駆動する。
【0035】
主軸頭4は、Y軸ガイドに摺動可能に支持されると共に、Y軸駆動用ボールねじのボールねじナットに連結されている。すなわち、主軸頭4は、Y軸駆動用ボールねじの回転駆動に伴い、Y軸ガイドに沿ってコラム3に対してY軸方向に摺動する。主軸5は、主軸頭4に、Z軸回りに回動可能に支持されている。そして、主軸5の先端側には、工具が着脱可能に取り付けられている。つまり、工具は、ベッド2に対して、Z軸方向およびY軸方向に相対移動可能となる。
【0036】
サドル6は、ベッド2上のうち、コラム3の主軸頭4が配置されている端面に対峙する位置に設けられている。このサドル6は、後述するチルトテーブル7を支持する一対の支持部61をX軸方向両端側に立設されている。さらに、この支持部61の一方側には、チルトテーブル7を回転可能とするA軸回転用モータ(図示せず)が設けられている。また、サドル6の下方側は、X軸ガイドに摺動可能に支持されると共に、X軸駆動用ボールねじのボールねじナットに連結されている。すなわち、サドル6は、X軸駆動用ボールねじの回転駆動に伴い、X軸ガイドに沿ってベッド2に対してX軸方向に摺動する。
【0037】
チルトテーブル7は、コの字型形状に形成されており、両端側がサドル6の一対の支持部61に対してA軸回転(X軸回りに回転)可能に支持されている。なお、チルトテーブル7は、サドル6の支持部61に配設されているA軸回転用モータの駆動により、サドル6に対してA軸回転を行う。さらに、チルトテーブル7のコの字型の凹底面には、回転パレット8を回転可能とするB軸回転用モータ(図示せず)が設けられている。
【0038】
回転パレット8は、チルトテーブル7の凹底面上に載置され、チルトテーブル7の載置面に垂直な方向に回転可能に支持されている。すなわち、チルトテーブル7が図1に示す状態の場合には、回転パレット8の回転軸は、Y軸に平行な軸(B軸)となる。なお、回転パレット8は、チルトテーブル7の下面側に設けられているB軸回転用モータの駆動により、チルトテーブル7に対してB軸回転を行う。
【0039】
ワークテーブル9は、回転パレット8の上に配設され、ワークを載置可能である。従って、ワークテーブル9に載置されたワークは、ベッド2に対して、X軸移動、A軸回転およびB軸回転可能となる。つまり、ワークテーブル9に載置されたワークに対して、主軸5に装着された工具は、相対的に、X,Y,Z軸の直進軸、および、A,Bの回転軸の相対動作が可能となる。
【0040】
(NC装置200の説明)
次に、NC装置200について図2を参照して説明する。NC装置200は、入力されたNCデータ100および機械情報300に基づいて、上述した5軸横型マシニングセンタ1をNC制御するための装置である。このNCデータ100は、ワーク座標系における工具の加工点の点群データと、当該加工点の点群データに対する工具軸方向の情報とが含まれている。すなわち、NCデータ100は、ワークの所定位置を原点として、工具の加工点の移動軌跡が含まれている。
【0041】
機械情報300は、機械座標系におけるワーク原点の座標、機械座標系の回転軸(A,B軸)の回転中心座標、5軸横型マシニングセンタ1の基準状態(図1に示す状態)における機械座標系の工具の先端位置座標、および、5軸横型マシニングセンタ1の基準状態における機械座標系のワークの設置位置を含む。機械座標系におけるワーク原点の座標とは、NCデータ100のワーク原点が機械座標系においてどこに位置するかを示す情報、すなわち、機械座標系においてワークが設置された位置を示す情報に相当する。また、5軸横型マシニングセンタ1の基準状態における機械座標系の工具の先端位置座標は、Y軸の位置から工具の先端までの長さに相当する。すなわち、当該座標は、主軸頭の大きさは予め把握できるものであるため、実質的に、工具長の情報となる。
【0042】
そして、NC装置200が5軸横型マシニングセンタ1をNC制御するために、各軸(X,Y,Z,A,B軸)のそれぞれの位置の指令値を生成する。この各軸の位置の指令値を生成するのが、NC制御部210である。NC制御部210は、NCデータ100および機械情報300を入力して、これらに基づいて各軸の指令値を生成する。この指令値は、機械座標系により表されている。機械座標系とは、工作機械が有する機械原点に対して、工作機械の動作可能な軸の座標を示す座標系である。本実施形態においては、機械座標系は、5軸横型マシニングセンタ1が有するX,Y,Z,A,B軸の5つの軸で表した座標系を意味する。
【0043】
そして、NC制御部210により生成された位置指令値に従って各軸の駆動部220、具体的には各軸モータ23,24,31が駆動される。それぞれの移動体が移動した位置は、図示しないリニアスケールやエンコーダなどの位置検出器230により検出する。つまり、位置検出器230により検出される各軸の位置は、機械座標系における各軸の位置である。このように位置検出器230により検出されたそれぞれの移動体の各軸の位置は、NC制御部210にフィードバックされて、フィードバック制御が行われる。
【0044】
(誤差表示装置の概要の説明)
誤差表示装置の概要について、図3を参照して説明する。ここで、上述したように、NCデータ100はワーク座標系における工具の加工点を表しており、位置検出器230により検出される各軸の位置は機械座標系における各軸の位置を表している。そして、5軸横型マシニングセンタ1は、直進軸と回転軸を有するために、NCデータ100で表されるワーク座標系における工具の加工点と、位置検出器230により検出される機械座標系の各軸の位置は、そのまま比較できるものではない。
【0045】
例えば、同一ワークを加工する場合であっても、ワークテーブル9上にワークを載置する位置によって、機械座標系の各軸の位置は異なる。つまり、NCデータは同一であっても、ワークの載置位置が異なれば各軸の位置が異なる。これは、回転軸が直進軸に複雑に絡み合って、工具の加工点を決定しているためである。
【0046】
そこで、NCデータ100により5軸横型マシニングセンタ1を運転した場合に位置検出器230により検出された機械座標系の各軸の位置を、ワーク座標系に座標変換することで、実際のワークに対する工具の加工点を算出する。このようにして算出された実際の工具の加工点の移動軌跡と、NCデータ100から得られる理想的な工具の加工点の移動軌跡とを、図3の左上段に示すように、表示画面800に重ねて表示する。つまり、ワーク座標系において、工具の加工点の理想的な移動軌跡と実際の移動軌跡とを比較することができる。
【0047】
なお、NCデータ100により5軸横型マシニングセンタ1を運転して位置検出器230により機械座標系の各軸の位置を検出する場合には、ワークを加工せずに機械動作のみを行う、いわゆる空運転を行うようにしてもよいし、実際にワークを加工しながら行うようにしてもよい。前者の空運転を行う場合には、ワークを実際に加工しないので、調整のためのワークを必要としなくて済む。一方、後者の実際にワークを加工する場合には、加工抵抗などを考慮した実際の各軸位置を得ることができる。
【0048】
NCデータ100を座標変換することで、5軸横型マシニングセンタ1の理想的な機械座標系の各軸の位置を算出する。ここで、5軸横型マシニングセンタ1は回転軸を有するため、この座標変換には、回転軸の動作に起因する回転座標変換が少なくとも含まれる。このようにして算出された理想的な機械座標系の各軸位置の移動軌跡と、実際に位置検出器230により検出された機械座標系の各軸位置の移動軌跡とを、図3の右上段に示すように、表示画面800に重ねて表示する。つまり、機械座標系において、各軸位置の理想的な移動軌跡と実際の移動軌跡とを比較することができる。
【0049】
このようにして、ワーク座標系での誤差を把握することができると共に、機械座標系での誤差を把握することができる。さらに、ワーク座標系の重合表示と機械座標系の重合表示とにおいて、両者の対応する位置を把握できるように関連付けて表示するようにしている。これにより、ワーク座標系のある位置において、機械座標系においてどのような状況となっているかを関連付けることができる。
【0050】
ここで、NCデータ100は、予め設定しておいた複数の評価形状を用いる。評価形状は、例えば、所定の平面上に正方形の枠をなす形状、正方形の角部をR面取り(円弧面取り)した形状、円形などがある。また、実際の製品を素材から加工するためのNCデータを用いることもできる。例えば、汎用的な工作機械の初期製造出荷時においては、評価形状にて誤差を評価することで、各軸の制御パラメータの調整に用いる。また、専用の工作機械においては、評価形状にて誤差を評価することもできるし、実際の製品に対するNCデータにより誤差を評価することもできる。この場合に、両誤差に応じて、各軸の制御パラメータの調整を行う。
【0051】
(誤差表示装置の詳細の説明)
次に、誤差表示装置の構成の詳細について、図2を参照して説明する。誤差表示装置は、座標変換処理部400と、誤差算出部500と、速度加速度算出部600と、表示処理部700と、表示画面800とを備えて構成される。座標変換処理部400と、誤差算出部500と、速度加速度算出部600と、表示処理部700とは、例えば、電気回路などのハードウエアそのものにより実現することもできるし、コンピュータを用いてソフトウエアにより実現することもできる。また、表示画面800は、表示処理部700により出力される情報を表示する画面である。
【0052】
座標変換処理部400は、ワーク座標系の情報を機械座標系に変換処理すること、および、機械座標系の情報をワーク座標系に変換処理する。この座標変換処理部400は、機械座標系からワーク座標系に座標変換する順変換処理部410と、ワーク座標系から機械座標系に座標変換する逆変換処理部420とを備える。
【0053】
この順変換処理部410は、評価形状を対象とするNCデータ100に基づいて5軸横型マシニングセンタ1を運転した場合に、位置検出器230により検出された機械座標系の各軸(直進軸および回転軸)の位置データを取得する(軸位置測定データ取得手段)。また、順変換処理部410は、NC装置200に入力する機械情報を取得する(機械情報取得手段)。そして、順変換処理部410は、取得した実際の各軸位置と機械情報とにより座標変換をして、ワーク座標系における工具の加工点の移動軌跡(測定加工点移動軌跡)を算出する(測定加工点移動軌跡算出手段)。
【0054】
逆変換処理部420は、NC装置200に入力するNCデータ100を取得し(NCデータ取得手段)、NC装置200に入力する機械情報を取得する(機械情報取得手段)。そして、逆変換処理部420は、取得したNCデータ100と機械情報とにより座標変換をして、機械座標系における各軸の位置データ(基準軸位置データ)を算出する(基準軸位置データ算出手段)。
【0055】
誤差算出部500は、工具加工点誤差算出部510と、各軸誤差算出部520とを備えて構成される。工具加工点誤差算出部510は、順変換処理部410にて算出した実際の工具の加工点の移動軌跡と、NCデータ100による理想的な工具の加工点の移動軌跡との誤差を算出する。具体的には、実際の工具の加工点のそれぞれにおいて、理想的な工具の加工点の移動軌跡のうち最も近い位置を算出し、算出した当該位置からのずれ量を当該加工点における誤差とする。つまり、この誤差は、ワーク座標系における誤差に相当する。
【0056】
各軸誤差算出部520は、逆変換処理部420にて算出したNCデータ100による理想的な各軸位置の移動軌跡と、位置検出器230により検出した実際の各軸位置の移動軌跡との誤差を算出する。具体的には、位置検出器230により検出された実際の各軸位置のそれぞれにおいて、理想的な各軸位置の移動軌跡のうち最も近い位置を算出し、算出した当該位置からのずれ量を当該各軸位置における誤差とする。つまり、この誤差は、機械座標系における誤差に相当する。
速度加速度算出部600(速度加速度算出手段)は、位置検出器230により検出された各軸の位置データに基づいて、それぞれの軸における速度および加速度を算出する。
【0057】
表示処理部700は、表示画面800に、ワーク座標系における工具の加工点の理想的な移動軌跡と実際の移動軌跡とを重ねて表示すると共に、機械座標系における各軸位置の理想的な移動軌跡と実際の移動軌跡とを重ねて表示する。さらに、それぞれの誤差が拡大して表示されるように誤差の倍率を調整したり、表示する軸を変更したり、速度または加速度をさらに追加して表示したりすることができる。なお、これらの表示態様は、作業者による指示入力情報に基づいて変更される。
【0058】
この表示処理部700は、工具加工点移動軌跡表示部710と、各軸位置移動軌跡表示部720と、速度加速度表示部730と、関連表示部740と、表示画面指示部750とを備えて構成される。
【0059】
表示画面指示部750は、作業者により入力される指示に従って、各種表示態様を変更させる。入力される指示は、誤差の倍率、表示する軸の種類、ワーク座標系と機械座標系の表示において関連表示する位置(スクロールによる位置、数値入力される位置および表示画面800上で指示される位置を含む)、グラデーション表示の有無、速度加速度の表示の有無、速度加速度の表示態様、表示次元などが含まれる。
【0060】
工具加工点移動軌跡表示部710は、表示画面800のワーク座標系欄に、ワーク座標系におけるNCデータ100による理想的な工具の加工点の移動軌跡を表示する(基準加工点移動軌跡表示手段)。さらに、工具加工点移動軌跡表示部710は、工具加工点誤差算出部510にて算出された実際の工具の加工点の誤差を入力して、当該誤差を指定倍率した移動軌跡を重ねて表示する(測定加工点移動軌跡表示手段)。つまり、表示画面800のワーク座標系欄には、理想的な工具の加工点の移動軌跡と、実際の工具の加工点の移動軌跡とが重ねて表示されており、両者の差(誤差)が拡大されて表示されている。また、工具加工点移動軌跡表示部710は、表示画面指示部750にて指示された表示次元と、表示する軸とに応じた表示態様で表示画面800のワーク座標系欄に表示する。
【0061】
各軸位置移動軌跡表示部720は、表示画面800の機械座標系欄に、逆変換処理部420にて算出したNCデータ100による理想的な各軸位置の移動軌跡を表示する(基準軸位置移動軌跡表示手段)。さらに、各軸位置移動軌跡表示部720は、各軸誤差算出部520にて算出された実際の各軸位置の誤差を入力して、当該誤差を指定倍率した移動軌跡を重ねて表示する(測定軸位置移動軌跡表示手段)。つまり、表示画面800の機械座標系欄には、理想的な各軸位置の移動軌跡と、実際の各軸位置の移動軌跡とが重ねて表示されており、両者の差(誤差)が拡大されて表示されている。また、各軸位置移動軌跡表示部720は、表示画面指示部750にて指示された表示次元と、表示する軸とに応じた表示態様で表示画面800の機械座標系欄に表示する。
【0062】
速度加速度表示部730(速度加速度表示手段)は、速度加速度算出部600にて算出された各軸の速度および加速度について、表示画面指示部750の指示に従って表示画面800に表示する。表示画面指示部750により速度を表示するように指示された場合には、表示画面800には速度が表示され、加速度を表示するように指示された場合には加速度が表示され、何れも表示しないと指示された場合には何れも表示しない。また、表示態様として、グラフ表示が指示された場合にはワーク座標系欄および機械座標系欄とは別欄にグラフ表示をし、属性表示が指示された場合にはワーク座標系欄および機械座標系欄に表示されている情報に属性表示する。例えば、線種、線色、点滅などによる表示属性を、速度または加速度に応じて変更する。
【0063】
関連表示部740(関連表示手段)は、ワーク座標系欄の表示と機械座標系欄の表示とにおいて、時間要素が対応する部位を、表示画面800に関連表示させる。例えば、表示画面指示部750にてスクロールや直接入力により位置が指示された場合には、その位置に対応する時間が共通する部位を、ポイント表示する。また、表示画面800のワーク座標系欄または機械座標系欄において範囲を囲むように指示された場合には、ワーク座標系欄と機械座標系欄の他方において時間要素が対応する範囲の表示属性を変更して表示する。例えば、線種、線色、点滅などによる表示属性を、速度または加速度に応じて変更する。または、グラデーション表示が指示された場合には、ワーク座標系欄と機械座標系欄との表示を全体に亘ってグラデーション表示する。
【0064】
(誤差表示装置の表示画面の態様)
次に、誤差表示装置の表示画面800の各種態様について、図3〜図7について順に説明する。まずは、全てが表示されている図4を参照して、表示画面800について説明する。上段には、左からワーク座標系欄、機械座標系欄、速度(または加速度)欄が表示されている。ワーク座標系欄および機械座標系欄では、二次元表示または三次元表示がされる。また、速度または加速度欄では、横軸を時間として、縦軸を速度または加速度で表示される。ワーク座標系欄、機械座標系欄、および、速度または加速度欄の直下には、表示可能な系列(軸)が表示されており、それぞれ選択可能である。さらに、誤差の表示倍率が、ワーク座標系欄および機械座標系欄に表示されている。この表示倍率は、数値を入力可能である。
【0065】
その下欄には、スライドバーが表示されている(スライド表示手段)。スライドバーは、表示画面指示部750の指示に従って、可動領域中で可動可能に表示されている。このスライドバーが可動する可動領域の幅は、指定された範囲に含まれる基点から終点までの時間要素を表示している。指定された範囲とは、ワーク座標系欄または機械座標系欄において、範囲を指定することができる意味であって、その範囲の両境界がそれぞれ基点と終点となる。なお、範囲が指定されていない場合は全範囲が指定されたものとする。スライドバーの右欄には、時間要素に相当するポイント値を直接入力することができるように表示されている。
【0066】
スライドバーの下欄には、位置グラデーション表示の有無を選択できるように表示されている。位置グラデーション表示とは、ワーク座標系欄および機械座標系欄の各移動軌跡において対応する時間要素の所定位置を基点とし、それぞれの軌跡において基点から時間要素の経過につれて同種の表示色となるように表示色を漸次的に変更して表示することである。
【0067】
位置グラデーション表示の下欄には、速度加速度表示を選択できるように表示されている。図4に示すように、速度を表示する場合、加速度を表示する場合、速度も加速度も表示しない場合を選択できる。速度加速度表示の下欄には、速度加速度表示種類を選択できるように表示されている。速度、加速度の表示は、機械座標系欄の右欄にワーク座標系欄および機械座標系欄とは別個のグラフ表示する場合、ワーク座標系欄および機械座標系欄の属性として表示する場合を選択できる。速度加速度表示種類の下欄には、座標系表示次元が、二次元表示と三次元表示とから選択できる。
【0068】
以下に、図3〜図7に示す具体的な態様について説明する。図3は、表示画面800にて、ワーク座標系欄の表示軸が「XY」が指示され、ワーク座標系欄の「倍率」欄に「1000」が入力され、機械座標系欄の表示軸が「XY」が指示され、機械座標系欄の「倍率」欄に「1000」が入力され、「スライドバー」で「□」で示す部位が指示され、「位置グラデーション表示」で「なし」が指示され、「速度加速度表示」欄で「なし」が指示され、「座標系表示次元」で「二次元」が指示されている。また、ワーク座標系欄および機械座標系欄においては、範囲指定がされていないものとする。この場合、スライドバーが稼働する可動領域の幅は、全ての範囲、すなわち基点がP0であり、終点がP1000となる。
【0069】
この場合、上段には、ワーク座標系欄において、理想的な工具の加工点のXY軸の移動軌跡に、誤差1000倍として表示された実際の工具の加工点のXY軸の移動軌跡が重ねて表示されている。また、機械座標系欄において、理想的なXY軸の位置の移動軌跡に、誤差1000倍として表示された実際のXY軸の位置の移動軌跡が重ねて表示されている。さらに、ワーク座標系欄および機械座標系欄において、スライドバーのP350に相当する時間に対応する部位に、●印にて示している。つまり、●印にて示す部位が、同一の時間要素に相当する。
【0070】
上述したように、順変換処理部410において、検出された実際の各軸の位置データに対して機械座標系からワーク座標系に座標変換を行うことで、実際の工具の加工点の移動軌跡を得ることができる。そして、図3の上段のワーク座標系欄にて示すように、NCデータによる理想的な工具の加工点の移動軌跡と、算出した実際の工具の加工点の移動軌跡とを重ねて表示することで、直進軸と回転軸を備える工作機械を対象として、実際の工具の加工点の移動軌跡とNCデータによる理想的な工具の加工点の移動軌跡との誤差を把握することができる。従って、従来のような実際にワークを加工して行うトライアンドエラーを実行する必要なく、誤差を把握することができる。
【0071】
また、逆変換処理部420において、NCデータ100に対してワーク座標系から機械座標系に座標変換を行うことで、機械座標系の理想的な各軸の位置の移動軌跡を得ることができる。そして、図3の上段の機械座標系欄にて示すように、NCデータ100による理想的な各軸の位置の移動軌跡と、実際に動作した各軸の位置の移動軌跡とを重ねて表示することで、直進軸と回転軸を備える工作機械に対して、実際の各軸の位置の移動軌跡とNCデータによる理想的な各軸の位置の移動軌跡との誤差を把握することができる。従って、このことからも、従来のような実際にワークを加工して行うトライアンドエラーを実行する必要なく、誤差を把握することができる。
【0072】
さらに、図3のワーク座標系欄の表示と機械座標系欄の表示とにより、直進軸および回転軸を有する工作機械においては把握することができなかった工具の加工点の軌跡誤差と軸位置の軌跡誤差とを見比べることができる。これにより、工具の加工点の軌跡誤差が生じている場合に、どの軸に原因があるかを把握することができるようになる。
【0073】
さらに、図3のワーク座標系欄の表示と機械座標系欄の表示とにおいて、●印にて時間要素が対応する部位が関連付けて表示されている。従って、実際の工具の加工点の移動軌跡における所定部位が、実際の各軸の位置の移動軌跡においてどこに対応するかが視覚的に把握できる。これにより、例えば、実際の工具の加工点の移動軌跡がNCデータ100による理想的な工具の加工点の移動軌跡に対して大きく誤差が生じている部位において、工作機械のどの軸が原因であるかを視覚的に把握できる。
【0074】
また、図3のスライドバーを移動することで、ワーク座標系欄の表示および機械座標系欄の表示においてスライドバーの位置に応じた位置へ連動して移動する。つまり、スライドバーを可動領域において移動することで、時間経過につれて、実際の工具の加工点の移動軌跡と実際の各軸の位置の移動軌跡とが移動していく遷移を把握することができる。
【0075】
また、図3において、ワーク座標系欄の表示および機械座標系欄の表示は、5軸横型マシニングセンタ1の各軸を系列とする二次元表示としている。これにより、視覚的に各軸の誤差を把握できる。つまり、経過時間の影響を受けることなく、軸位置の軌跡を把握できる。NCデータ100による指令値と実際の5軸横型マシニングセンタ1の各軸の計測値とは、実際には時間のずれが生じるものである。そのため、仮に、表示の系列に時間要素が含まれると(例えば横軸を時間軸とした場合)、実際には正確な位置にある場合であっても、ずれが生じるように見えてしまうおそれがある。しかし、二次元表示のそれぞれの系列を時間要素ではなく各軸としているため、移動軌跡の誤差を確実に把握できる。
【0076】
図4は、表示画面800にて、ワーク座標系欄の表示軸が「XY」が指示され、ワーク座標系欄の「倍率」欄に「1000」が入力され、機械座標系欄の表示軸が「XY」が指示され、機械座標系欄の「倍率」欄に「1000」が入力され、速度欄の表示軸が「X」が指示され、「スライドバー」で「□」で示す部位が指示され、「位置グラデーション表示」で「なし」が指示され、「速度加速度表示」欄で「速度」が指示され、「速度加速度表示種類」欄で「グラフ表示」が指示され、「座標系表示次元」で「二次元」が指示されている。また、ワーク座標系欄および機械座標系欄においては、範囲指定がされていないものとする。この場合、スライドバーが稼働する可動領域の幅は、全ての範囲、すなわち基点がP0であり、終点がP1000となる。
【0077】
この場合、上段には、ワーク座標系欄において、理想的な工具の加工点のXY軸の移動軌跡に、誤差1000倍として表示された実際の工具の加工点のXY軸の移動軌跡が重ねて表示されている。また、機械座標系欄において、理想的なXY軸の位置の移動軌跡に、誤差1000倍として表示された実際のXY軸の位置の移動軌跡が重ねて表示されている。さらに、機械座標系欄の右欄には、横軸を時間とし縦軸を速度とするグラフが表示される。さらに、ワーク座標系欄、機械座標系欄および速度表示欄において、スライドバーのP350に相当する時間に対応する部位に、●印にて示している。つまり、●印にて示す部位が、同一の時間要素に相当する。
【0078】
図4においては、5軸横型マシニングセンタ1を構成する各軸の速度が、実際の工具の加工点の移動軌跡および実際の各軸の位置の移動軌跡に対応して関連づけて表示されている。従って、実際の工具の加工点の移動軌跡または実際の各軸の位置の移動軌跡の所定部位において、各軸の速度がどのような時間挙動を示しているかを把握することができる。例えば、速度の急激な変化があると、実際の各軸の位置の移動軌跡が所望の軌跡に対して誤差を生じる可能性がある。つまり、誤差が生じる原因をより明確に把握することができる。
【0079】
図5は、表示画面800にて、ワーク座標系欄の表示軸が「XY」が指示され、ワーク座標系欄の「倍率」欄に「1000」が入力され、機械座標系欄の表示軸が「AB」が指示され、機械座標系欄の「倍率」欄に「1000」が入力され、加速度欄の表示軸が「X」が指示され、「スライドバー」で「□」で示す部位が指示され、「位置グラデーション表示」で「なし」が指示され、「速度加速度表示」欄で「加速度」が指示され、「速度加速度表示種類」欄で「グラフ表示」が指示され、「座標系表示次元」で「二次元」が指示されている。また、ワーク座標系欄および機械座標系欄においては、範囲指定がされていないものとする。この場合、スライドバーが稼働する可動領域の幅は、全ての範囲、すなわち基点がP0であり、終点がP1000となる。
【0080】
この場合、上段には、ワーク座標系欄において、理想的な工具の加工点のXY軸の移動軌跡に、誤差1000倍として表示された実際の工具の加工点のXY軸の移動軌跡が重ねて表示されている。また、機械座標系欄において、理想的なAB軸の位置の移動軌跡に、誤差1000倍として表示された実際のAB軸の位置の移動軌跡が重ねて表示されている。さらに、機械座標系欄の右欄には、横軸を時間とし縦軸を加速度とするグラフが表示される。さらに、ワーク座標系欄、機械座標系欄および加速度表示欄において、スライドバーのP350に相当する時間に対応する部位に、●印にて示している。つまり、●印にて示す部位が、同一の時間要素に相当する。
【0081】
図5においては、5軸横型マシニングセンタ1を構成する各軸の加速度が、実際の工具の加工点の移動軌跡および実際の各軸の位置の移動軌跡に対応して関連づけて表示されている。従って、実際の工具の加工点の移動軌跡または実際の各軸の位置の移動軌跡の所定部位において、各軸の加速度がどのような時間挙動を示しているかを把握することができる。例えば、加速度の急激な変化があると、実際の各軸の位置の移動軌跡が所望の軌跡に対して誤差を生じる可能性がある。つまり、誤差が生じる原因をより明確に把握することができる。
【0082】
図6は、表示画面800にて、ワーク座標系欄の表示軸が「XY」が指示され、ワーク座標系欄の「倍率」欄に「1000」が入力され、機械座標系欄の表示軸が「XY」が指示され、機械座標系欄の「倍率」欄に「1000」が入力され、「スライドバー」で「□」で示す部位が指示され、「位置グラデーション表示」で「なし」が指示され、「速度加速度表示」欄で「なし」が指示され、「座標系表示次元」で「二次元」が指示されている。また、ワーク座標系欄において、長方形状の枠により範囲指定がされている。この場合、スライドバーが稼働する可動領域の幅は、指定範囲の一端点に相当するP120が基点となり、他端点に相当するP400が終点となる。
【0083】
この場合、上段には、ワーク座標系欄において、理想的な工具の加工点のXY軸の移動軌跡に、誤差1000倍として表示された実際の工具の加工点のXY軸の移動軌跡が重ねて表示されている。また、機械座標系欄において、理想的なXY軸の位置の移動軌跡に、誤差1000倍として表示された実際のXY軸の位置の移動軌跡が重ねて表示されている。さらに、この機械座標系欄においては、ワーク座標系欄にて範囲指定された基点P120〜終点P400の範囲が、太線にて表示されている。さらに、ワーク座標系欄および機械座標系欄において、スライドバーのP350に相当する時間に対応する部位に、●印にて示している。つまり、●印にて示す部位が、同一の時間要素に相当する。
【0084】
この場合、ワーク座標系欄の表示において範囲を指示することで、実際の工具の加工点の移動軌跡と実際の各軸の位置の移動軌跡との対応を視覚的に把握できる。なお、この表示属性は、太線の他に、線色、線種、線の点滅などを変更するようにしてもよい。また、ワーク座標系欄の表示において範囲を指定したが、機械座標系欄の表示において範囲を指定してもよい。この場合、ワーク座標系欄の表示が、指定された機械座標系欄の範囲に応じて表示属性を変更させることになる。
【0085】
図7は、三次元表示の例の概要について示している。なお、図7のワーク座標系欄および機械座標系欄においては、系列の三軸について例示しており、工具の加工点の移動軌跡および各軸の位置の移動軌跡については図示していない。また、図7の系列の軸の向きは一例にすぎず、適宜変更可能である。そして、図7では、表示画面800にて、ワーク座標系欄の表示軸が「XYZ」が指示され、ワーク座標系欄の「倍率」欄に「1000」が入力され、機械座標系欄の表示軸が「XYZ」が指示され、機械座標系欄の「倍率」欄に「1000」が入力され、「スライドバー」で「□」で示す部位が指示され、「位置グラデーション表示」で「なし」が指示され、「速度加速度表示」欄で「なし」が指示され、「座標系表示次元」で「三次元」が指示されている。
【0086】
また、図示しないが、位置グラデーション表示において「あり」が指示された場合には、ワーク座標系欄および機械座標系欄において、基点P0から終点P1000に進むにつれて同種の表示色となるように表示色を漸次的に変更して表示される。このように、グラデーション表示することで、表示画面800に表示されている実際の工具の加工点の移動軌跡と実際の各軸の位置の移動軌跡とにおいて、時間要素が対応する部位を全体に亘って視覚的に把握することができる。
【0087】
また、速度加速度表示種類において、属性表示が指示された場合には、ワーク座標系欄および機械座標系欄のそれぞれにおいて、速度に応じた表示色、および、加速度に応じた表示色にて、表示される。これにより、実際の工具の加工点の移動軌跡または実際の各軸の位置の移動軌跡の所定部位において、各軸の速度または加速度がどのような時間挙動を示しているかを把握することができる。例えば、速度または加速度の急激な変化があると、実際の各軸の位置の移動軌跡が所望の軌跡に対して誤差を生じる可能性がある。つまり、誤差が生じる原因をより明確に把握することができる。
【0088】
また、各軸の反転位置を算出する軸反転位置算出部(軸反転位置算出手段)を備え、ワーク座標系欄および機械座標系欄において軸反転位置を示す印を重ねて表示することもできる。各軸の反転位置は、各軸のプラス方向への移動状態からマイナス方向への移動に反転した位置、または、マイナス方向への移動状態からプラス方向への移動に反転した位置を意味する。この各軸反転位置は、NCデータ100による理想的な各軸の位置データ、すなわち逆変換処理部420により算出された機械座標系の各軸の位置データに基づいて算出される。このように軸反転位置を実際の工具の加工点の移動軌跡に重ねて表示することにより、軸反転位置による工具の加工点への影響を視覚的に把握することができる。つまり、誤差の原因が軸反転によるバックラッシであるか否かを視覚的に即座に把握することができる。また、軸毎に異なる印を示すことにより、どの軸の軸反転であるかを把握することができる。
【符号の説明】
【0089】
1:5軸横型マシニングセンタ
2:ベッド、 21:基台、 22:Z軸ガイド
23:Z軸駆動用モータ、 24:X軸駆動用モータ
3:コラム、 31:Y軸駆動用モータ
4:主軸頭、 5:主軸、 6:サドル、 61:支持部
7:チルトテーブル、 8:回転パレット、 9:ワークテーブル
100:NCデータ、 200:NC装置、 210:NC制御部
220:駆動部、 230:位置検出器
300:機械情報
400:座標変換処理部、 410:順変換処理部、 420:逆変換処理部
500:誤差算出部、 510:工具加工点誤差算出部、 520:各軸誤差算出部
600:速度加速度算出部、 700:表示処理部
710:工具加工点移動軌跡表示部、 720:各軸位置移動軌跡表示部
730:速度加速度表示部、 740:関連表示部、 750:表示画面指示部
800:表示画面


【特許請求の範囲】
【請求項1】
直進軸と回転軸とを備え、前記直進軸および前記回転軸を動作することによりワークに対して工具を相対移動させて前記工具により前記ワークを加工する工作機械における誤差表示装置であって、
表示画面と、
ワーク座標系における加工点と当該加工点に対する工具軸方向とを含むNCデータを取得するNCデータ取得手段と、
前記NCデータに基づいて、前記ワーク座標系における前記工具の基準加工点移動軌跡を前記表示画面に表示する基準加工点移動軌跡表示手段と、
前記NCデータに基づいて前記工作機械の前記直進軸および前記回転軸を運転した場合の前記直進軸および前記回転軸に関する機械座標系の軸位置測定データを取得する軸位置測定データ取得手段と、
前記機械座標系における前記ワーク原点の座標、前記機械座標系の前記回転軸の回転中心座標、および、前記工作機械の基準状態における前記機械座標系の前記工具の先端位置座標を含む機械情報を取得する機械情報取得手段と、
前記軸位置測定データ取得手段により取得した前記直進軸および前記回転軸の前記機械座標系の前記軸位置測定データと前記機械情報取得手段により取得した前記機械情報とに基づいて座標変換をして、前記ワーク座標系における前記工具の測定加工点移動軌跡を算出する測定加工点移動軌跡算出手段と、
前記基準加工点移動軌跡表示手段により前記基準加工点移動軌跡が表示されている前記表示画面に、前記測定加工点移動軌跡算出手段により算出した前記測定加工点移動軌跡を前記基準加工点移動軌跡に重ねて表示して、前記基準加工点移動軌跡に対する前記測定加工点移動軌跡の誤差を表示する測定加工点移動軌跡表示手段と、
を備えることを特徴とする工作機械の誤差表示装置。
【請求項2】
請求項1において、
前記工作機械の誤差表示装置は、さらに、
前記NCデータ取得手段により取得した前記NCデータと前記機械情報取得手段により取得した前記機械情報とに基づいて座標変換をして、前記機械座標系における前記工作機械の前記直進軸および前記回転軸に関する機械座標系の基準軸位置データを算出する基準軸位置データ算出手段と、
前記基準軸位置データに基づいて、前記機械座標系における前記直進軸および前記回転軸についての基準軸位置移動軌跡を前記表示画面に表示する基準軸位置移動軌跡表示手段と、
前記基準軸位置移動軌跡表示手段により前記基準軸位置移動軌跡が表示されている前記表示画面に、前記軸位置測定データ取得手段により取得した前記軸位置測定データに基づいて得られた測定軸位置移動軌跡を重ねて表示して、前記基準軸位置移動軌跡に対する前記測定軸位置移動軌跡の誤差を表示する測定軸位置移動軌跡表示手段と、
を備えることを特徴とする工作機械の誤差表示装置。
【請求項3】
請求項2において、
前記工作機械の誤差表示装置は、前記測定加工点移動軌跡と前記測定軸位置移動軌跡とにおいて時間要素が対応する部位を、前記表示画面に関連表示する関連表示手段をさらに備えることを特徴とする工作機械の誤差表示装置。
【請求項4】
請求項3において、
前記関連表示手段は、前記表示画面において、前記測定加工点移動軌跡および前記測定軸位置移動軌跡の一方の所定範囲を選択した場合に、前記測定加工点移動軌跡および前記測定軸位置移動軌跡の他方における前記所定範囲に時間要素が対応する範囲の表示属性を変更して表示することを特徴とする工作機械の誤差表示装置。
【請求項5】
請求項3において、
前記工作機械の誤差表示装置は、前記表示画面に表示される前記測定加工点移動軌跡または前記測定軸位置移動軌跡の所定範囲に含まれる基点から終点までの時間要素をスライドバーが可動する可動領域の幅にて表示すると共に、前記可動領域の中で前記スライドバーを可動可能なスライド表示手段をさらに備え、
前記関連表示手段は、前記測定加工点移動軌跡および前記測定軸位置移動軌跡において、前記可動領域中の前記スライドバーの位置に対応する部位を前記表示画面に関連表示することを特徴とする工作機械の誤差表示装置。
【請求項6】
請求項3において、
前記関連表示手段は、前記表示画面において、前記測定加工点移動軌跡と前記測定軸位置移動軌跡において対応する時間要素の所定位置を基点とし、それぞれの軌跡において前記基点から時間要素の経過につれて同種の表示色となるように前記表示色を漸次的に変更してグラデーション表示することを特徴とする工作機械の誤差表示装置。
【請求項7】
請求項3〜6の何れか一項において、
前記工作機械の誤差表示装置は、
前記軸位置測定データ取得手段により取得した前記軸位置測定データに基づいて、速度または加速度を算出する速度加速度算出手段と、
前記速度加速度算出手段により算出された前記速度または前記加速度を前記表示画面に表示する速度加速度表示手段と、
をさらに備え、
前記関連表示手段は、前記速度加速度表示手段により前記表示画面に表示される前記速度または前記加速度と前記測定加工点移動軌跡および前記測定軸位置移動軌跡とにおいて、時間要素が対応する部位を、前記表示画面に関連表示することを特徴とする工作機械の誤差表示装置。
【請求項8】
請求項3〜6の何れか一項において、
前記工作機械の誤差表示装置は、前記軸位置測定データ取得手段により取得した前記軸位置測定データに基づいて、速度または加速度を算出する速度加速度算出手段をさらに備え、
前記関連表示手段は、前記速度加速度算出手段により算出された前記速度または前記加速度に応じて、前記表示画面に表示されている前記測定加工点移動軌跡および前記測定軸位置移動軌跡の少なくとも一方の表示属性を変更して表示することを特徴とする工作機械の誤差表示装置。
【請求項9】
請求項3〜6の何れか一項において、
前記工作機械の誤差表示装置は、前記基準軸位置データ算出手段により算出した前記基準軸位置データに基づいて、前記直進軸および前記回転軸の少なくとも一軸における軸反転位置を算出する軸反転位置算出手段をさらに備え、
前記関連表示手段は、前記測定加工点移動軌跡が表示されている表示画面に、前記軸反転位置を重ねて表示することを特徴とする工作機械の誤差表示装置。
【請求項10】
請求項1〜9の何れか一項において、
前記基準加工点移動軌跡表示手段および前記測定加工点移動軌跡表示手段は、選択された二つまたは三つの軸に関する前記基準加工点移動軌跡および前記測定加工点移動軌跡を、前記表示画面に二次元表示または三次元表示することを特徴とする工作機械の誤差表示装置。
【請求項11】
請求項2〜9の何れか一項において、
前記基準軸位置移動軌跡表示手段および前記測定軸位置移動軌跡表示手段は、選択された二つまたは三つの軸に関する前記基準軸位置移動軌跡および前記測定軸位置移動軌跡を、前記表示画面に二次元表示または三次元表示することを特徴とする工作機械の誤差表示装置。
【請求項12】
直進軸と回転軸とを備え、前記直進軸および前記回転軸を動作することによりワークに対して工具を相対移動させて前記工具により前記ワークを加工する工作機械における誤差表示装置であって、
表示画面と、
ワーク座標系における加工点と当該加工点に対する工具軸方向とを含むNCデータを取得するNCデータ取得手段と、
前記機械座標系における前記ワーク原点の座標、前記機械座標系の前記回転軸の回転中心座標、および、前記工作機械の基準状態における前記機械座標系の前記工具の先端位置座標を含む機械情報を取得する機械情報取得手段と、
前記NCデータ取得手段により取得した前記NCデータと前記機械情報取得手段により取得した前記機械情報とに基づいて座標変換をして、前記機械座標系における前記工作機械の前記直進軸および前記回転軸に関する機械座標系の基準軸位置データを算出する基準軸位置データ算出手段と、
前記基準軸位置データに基づいて、前記機械座標系における前記直進軸および前記回転軸についての基準軸位置移動軌跡を前記表示画面に表示する基準軸位置移動軌跡表示手段と、
前記NCデータに基づいて前記工作機械の前記直進軸および前記回転軸を運転した場合の前記直進軸および前記回転軸に関する機械座標系の軸位置測定データを取得する軸位置測定データ取得手段と、
前記基準軸位置移動軌跡表示手段により前記基準軸位置移動軌跡が表示されている前記表示画面に、前記軸位置測定データ取得手段により取得した前記軸位置測定データに基づいて得られた測定軸位置移動軌跡を重ねて表示して、前記基準軸位置移動軌跡に対する前記測定軸位置移動軌跡の誤差を表示する測定軸位置移動軌跡表示手段と、
を備えることを特徴とする工作機械の誤差表示装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−165066(P2011−165066A)
【公開日】平成23年8月25日(2011.8.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−29180(P2010−29180)
【出願日】平成22年2月12日(2010.2.12)
【出願人】(000001247)株式会社ジェイテクト (7,053)
【Fターム(参考)】