工作機械
【課題】 工具が取り付けられたツールホルダを主軸に装着し、主軸を回転駆動してワークを加工する工作機械であって、ツールホルダとの距離に応じてインピーダンスが変化する変位センサにアンプユニットから交流信号を印可し、変位センサに現れる信号レベルに基づき、ツールホルダの主軸への装着状態を判定する工作機械において、変位センサが接続されたアンプユニットの同調を現場において容易に可能とすることにより、現場における変位センサの交換を可能にし、もって変位センサの破損により生じる修理コストを低減する。
【解決手段】 工作機械1を、変位センサ10に接続されて変位センサ10とともに共振回路を成すための同調用回路40と、同調用回路40の内部インピーダンス定数を調整するための、インピーダンス調整回路50と、を備えて構成する。
【解決手段】 工作機械1を、変位センサ10に接続されて変位センサ10とともに共振回路を成すための同調用回路40と、同調用回路40の内部インピーダンス定数を調整するための、インピーダンス調整回路50と、を備えて構成する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回転軸を有する工作機械装置において、ツールホルダの装着状態の異常を判定するために、ツールホルダまでの距離を測定する測定装置を調整する技術に関するものであり、特に、マシニングセンタ(以下、「MC」と略称でいう)等のツールホルダを使用する工作機械において、上記測定装置を自動的に調整可能とすることで、使用されるセンサを容易に交換可能な工作機械に関する。
【背景技術】
【0002】
MCは、加工工程に従って各種工具を自動的に選択し、主軸に自動で装着して多種類の加工を行う装置である。このMCにおいて、工具の交換は自動工具交換(ATC:オートツールホルダチェンジ)装置で行われる。このATC装置は、工具が取り付けられたツールホルダを、工具マガジンから自動で取り出し、主軸に自動で装着する装置である。
【0003】
図14は、主軸4へツールホルダ3を装着した状態を示す断面図である。同図に示されるように、ツールホルダ3は、円錐状の嵌合部3Aを有しており、この嵌合部3Aを主軸4に形成された円錐状の被嵌合部4Aに嵌合させて装着される。
【0004】
この手順は、以下のようになる。軸杆90を右方に引っ張ることにより、これに伴ってボール保持体91及びボール92が移動する。ボール92の移動により、プルスタッド(ドローイングボルト)93が引っ張られ、これによって、ツールホルダ3の円錐状の嵌合部3Aが主軸4の円錐状の被嵌合部4Aに押し付けられる。この押し付けられた圧力により、嵌合部3Aが被嵌合部4Aと密着して装着(チャッキング)がなされる。
【0005】
図15は、工具2を把持するツールホルダ3の装着状態を示す説明図である。通常は、ツールホルダ3の装着が適正になされ、同図の(A)に示されるような状態となる。ところが、同図の(B)に示されるように、この嵌合部分に切り屑94などが付着すると、軸が曲がって装着される。そして、この状態で加工を行うと、工具2に振れが発生し、ワークの加工精度が低下するという欠点がある。
【0006】
このようなツールホルダ3のチャックミスの有無を自動で検出する技術として、ツールホルダ3のツールフランジ3Bまでの距離を、渦電流センサなどの変位センサにより測定し、この測定データに基づいて、ツールホルダ3の主軸4への装着状態の異常を判定する提案が、本願出願人によりなされている(例えば、下記特許文献1〜4)。
【0007】
【特許文献1】特開2004−276145
【特許文献2】特開2004−42208
【特許文献3】特開2003−334742
【特許文献4】特開2002−200542
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記特許文献1〜4に開示される異常判定方法では、ツールフランジ3Bまでの距離に応じて変位センサのインピーダンスが変化するので(例えば、渦電流センサではインダクタンスが変化する)、交流信号を変位センサに印可してこの変位センサに現れる信号の電圧レベルの変化を検出することにより、ツールフランジ3Bまでの距離を測定する。
【0009】
変位センサに交流信号を印可するために、交流信号を発生させる発振回路と、変位センサを含んで構成される電気回路を交流信号に対する共振回路とするために変位センサに接続される同調用回路と、を含むアンプユニットが使用される。
変位センサは、その種類、形式及び個体差により内部インピーダンス特性が異なる。このため、アンプユニットを個々の変位センサと組み合わせて使用する際には、その変位センサの内部インピーダンス特性に応じて、同調用回路の内部インピーダンス定数を調整する必要がある。
【0010】
しかし、従来、同調用回路の調整を作業現場で作業員が行うことは非常に困難であったため、すでに組み合わせ調整された同じ変位センサと同じアンプユニットを使用していた。このため、変位センサを破損した場合には、破損した変位センサと併せてアンプユニットも交換する必要があり不経済であった。
【0011】
また、従来の工作機械では、センサヘッドとアンプユニットの設置場所が異なるため、アンプユニットに接続されたセンサヘッドを工作機械から取り外すことは困難であった。
【0012】
さらに、従来の工作機械では、出荷時の変位センサとアンプユニットの組み合わせのままで使用しているため、個々の変位センサに対するアンプユニットのインピーダンス特性を評価する手段を設けていなかった。このため、例えば出荷時に組み合わせられていた変位センサと異なる他の変位センサと間において、その組み合わせが適正であるか否かの評価ができなかった。
【0013】
上記目的に鑑み、本発明は、工具が取り付けられたツールホルダを主軸に装着し、主軸を回転駆動してワークを加工する工作機械であって、ツールホルダとの距離に応じてインピーダンスが変化する変位センサにアンプユニットから交流信号を印可し、変位センサに現れる信号レベルに基づき、ツールホルダの主軸への装着状態を判定する工作機械において、変位センサが接続されたアンプユニットの同調を現場において容易に可能とすることにより、現場における変位センサの交換を可能にし、これにより変位センサの破損により生じる修理コストを低減することを目的とする。
また、本発明は、変位センサとを容易に取り外し、変位センサの交換を容易にすることをも目的とする。
さらに、本発明は、変位センサとアンプユニットとの組み合わせの適否を評価可能とすることをも目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記目的を達成するために、本発明による工作機械は、変位センサに接続されて変位センサとともに共振回路を成すための同調用回路の内部インピーダンス定数をディジタル信号によって変更できるように構成し、この同調用回路にディジタル信号を出力して内部インピーダンス定数を調整するインピーダンス調整回路を、備える。
【0015】
また、本発明による工作機械は、変位センサに同調用回路を接続し、発振回路の発振周波数を調整して変位センサと同調用回路とから成る回路のインピーダンスを調整するためのインピーダンス調整回路を、備える。
【0016】
さらに、本発明による工作機械は、変位センサと、上記同調用回路が設けられるアンプユニットが、着脱可能なコネクタにより接続される。
【0017】
さらにまた、本発明による工作機械は、変位センサとして渦電流センサを備え、さらに可変誘導回路と、この可変誘導回路と渦電流センサとを切り替えるための切替器と、を備える。
【発明の効果】
【0018】
アンプユニット内の同調用回路の内部インピーダンス定数を外部からディジタル信号によって変更できるように構成することにより、コンピュータやマイコン等のディジタル信号処理手段で変更することが可能となる。これによって、アンプユニットの同調を、ディジタル信号処理手段により実行可能な調整アルゴリズムに従って自動的に行うことが可能となる。したがって、アンプユニットを交換することなく、変位センサのみを現場で容易に交換することが可能となる。
また、同様に発振回路の発振周波数を調整して、変位センサと同調用回路とから成る回路のインピーダンスを調整することにより、アンプユニットの同調を自動的に行うことが可能となる。なお、上記同調用回路は、ディジタル信号だけでなく、アナログ信号によってインピーダンス定数の切り替えを行うように構成されてもよい。
【0019】
同調用回路と変位センサとを着脱可能なコネクタにより接続することにより、変位センサのみを現場で容易に交換することが可能となる。
また、可変誘導回路と渦電流センサとを切り替えることにより、この可変誘導回路のインダクタンスを変化させて、渦電流センサをシミュレーションすることが可能となる。したがって、仕様上接続可能な変位センサの特性範囲が既知であれば可変誘導回路を使用して、その変位センサと、アンプユニットとの組み合わせの適否を評価することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、添付する図面を参照して本発明の実施例を説明する。図1は、本発明に係る工作機械の第1実施例の概略構成図である。工作機械1は、ATC装置により加工工程に従って各種工具を自動的に選択し、主軸に自動で装着して多種類の加工を行うMCである。
以下、本発明をMCの例に沿って説明するが、本発明はこれに限られず、ツール着脱機能がある工作機械であれば広く適用することが可能である。例えばタッピングや複合旋盤のような工作機械でもよいし、必ずしもATC機能がなくともよい。
【0021】
工作機械1は、工具(ツール)2が取り付けられたツールホルダ3を装着するための主軸4と、ツールホルダ3のツールフランジ3Bの外周面との距離を測定するための、本発明に係るセンサヘッドである変位センサ10と、変位センサ10から入力される信号を解析し距離情報へ変換するためのアンプユニット20と、を備えて構成される。
【0022】
変位センサ10としては、渦電流センサのような、測定対象との間の距離にしたがってインピーダンスが変化するセンサが使用される(以下、例として、変位センサ10は渦電流センサであるとして説明を行うが、本発明に使用される変位センサ10はこれに限られず、本発明のセンサヘッド10及びアンプユニット20は、組み合わせ調整が必要なインピーダンス測定型システムであればよい。例えば変位センサ10として静電容量型のセンサを使用してもよい)。変位センサ10は、主軸4が取り付けられたヘッド5にブラケットを介して取り付けられる。
【0023】
アンプユニット20は、変位センサに交流信号(励磁信号)を供給するためのセンサ駆動回路21と、変位センサに現れる信号レベルを検出するための検波回路70と、検波回路70によって検出した測定データを収集し、その測定データを受信してそのデータを分析することによりツールホルダ3の主軸1への装着状態の異常を判定し、その結果を工作機械1の数値制御(NC)を行うNC制御装置9へ出力するマイコン8と、を備えて構成される。
【0024】
さらに、アンプユニット20のセンサ駆動回路21は、変位センサ10に交流信号を供給する発振回路60と、変位センサ10と発振回路60との間に接続されて、交流信号に対して変位センサ10とともに共振回路を成すための、本発明に係るインピーダンス回路である同調用回路40と、同調用回路40の内部インピーダンス定数を調整するインピーダンス調整回路50と、を備えている。
【0025】
検波回路70は、変位センサに現れる信号電圧を整流する整流回路と、整流された信号の高周波成分を取り除き直流成分を取り出すためのフィルタ回路72と、フィルタ回路72を通過したアナログ電圧信号をディジタル信号に変換するためのアナログ・ディジタル変換器(ADC)73とを備えて構成されており、変位センサに現れる交流の信号電圧の振幅値を示すディジタル信号を生成してマイコン8へ送信する。なお、マイコン8がA/D変換機能を有している場合はADC73は不要である。また、本項と同様の処理を行えるアナログ回路で代用してもよい。
【0026】
図2は、変位センサ10が接続されたセンサ駆動回路21の第1構成例を示す構成図である。同調用回路40は、発振回路60及び変位センサ10と並列に接続される可変容量回路C1と、発振回路60及び変位センサ10と直列に接続される可変容量回路C2とを備えている。
【0027】
渦電流センサ10は、金属物であるツールホルダ3のツールフランジ3Bの外周面までの距離に応じてそのインダクタンス値が変化する。したがって発振回路60により交流信号が供給されると、ツールフランジ3Bの外周面までの距離に応じて渦電流センサ10に現れる信号の電圧レベルが変化するので、この電圧レベルの変化を検波回路70を介してマイコン8にて読み取り、ツールフランジ3Bの外周面までの距離を測定する。なお、ツールホルダの材質は、空気中と異なる磁性を有するものであれば、金属でなくともよい。
【0028】
そして、同調用回路40は、渦電流センサ10に現れる信号の電圧レベルを所望の検出精度で検出するために、渦電流センサ10と同調用回路40とを含む回路を、発振回路60から印可される交流信号に対して共振させる(同調する)ために用いられる。
通常、同調用回路40の内部インピーダンスは、図3に示すように、渦電流センサ10の周囲に金属が無い状態にして(すなわちツールフランジ3Bの外周面までの距離=∞の状態にして)、そのときに、そのときに、渦電流センサ10に現れる信号の電圧レベルVが距離に対して最大値または最小値となって共振し、かつそのときの電圧レベルが所望の電圧レベルの範囲(V1〜V2)になるように調整される。
なお、調整時は周辺金属が無い状態以外でもよい。例えば所定の金属ブロックを取り付けて調整を行ってもよい。また、調整時の電圧レベルはd=∞時に最大でなくてもよい。例えばあるギャップ時に最大となるように調整してもよい。また、距離や調整容量の微分係数により調整してもよい。さらに、センサ駆動回路21の内部回路の構成によっては、渦電流センサ10に現れる信号の電圧レベルVの調整ポイントを最大値に限らず、最小値やある特定の電圧時としてもよい。
【0029】
そこで、本発明では、可変容量回路C1及びC2を、これらの素子の外部から入力されるディジタル信号によって、その容量値を制御できるように構成する。そして、インピーダンス調整部50は、以下に説明する調整アルゴリズムに従って、可変容量回路C1及びC2へ出力するディジタル信号の値を変更することにより、これら可変容量回路C1及びC2の各々の容量値を変更する。なお、以下の説明において、インピーダンス調整部50が可変容量回路C1及びC2の容量値を変更するために出力するディジタル信号を、「容量値制御信号」とよぶことがある。また、容量値をアナログ信号で調整する場合も同様にインピーダンス調整部50が可変容量回路C1及びC2の容量値を変更するためのアナログ信号を「容量値制御信号」とよぶ。
【0030】
以下、図4及び図5を参照して、インピーダンス調整部50による可変容量回路C1及びC2の各々の容量値の調整動作について説明する。図4は、渦電流センサ10の交換手順のフローチャートであり、図5は、インピーダンス調整部50による調整方法の説明図である。
【0031】
まず、ステップS1において、渦電流センサ10の測定コイル部分である先端部だけをアンプユニット20から取り外し、新しく取り付ける渦電流センサ10の先端部を取り付けて、予め用意した測定環境の中に設置する。
ステップS2において、渦電流センサ10の周囲に金属がない状態にする。本ステップによりツールフランジ3Bの外周面までの距離=∞の状態が作られる。
【0032】
この状態で、インピーダンス調整部50は、電圧測定器51によって渦電流センサ10に現れる信号の電圧レベルVを測定する(ステップS3)。
ステップS4において、インピーダンス調整部50は、渦電流センサ10と同調用回路40とを含む回路が共振状態にあるか否かを判定する。
例えば、インピーダンス調整部50は、それまでに可変容量回路C1を変化させて測定した電圧レベルVの履歴から、今回測定した電圧レベルVの値が最大値や最小値であるか否かを判定する(電圧レベルVの値が最大値及び最小値のいずれであるかを判定するかは、渦電流センサ10と同調用回路40とを含む回路の回路構成に因る)。
従って、インピーダンス調整部50は、可変容量回路C1を変化させて測定した電圧レベルVの変化率が所定値以下であるか、予め回路が共振状態にあるときに測定されると予想される電圧レベルVの変化率の所定範囲であるか否かを判定する。
【0033】
ステップS4における判定の結果、回路が共振状態にある場合は、処理はステップS6に進み、回路が共振状態にない場合は、ステップS5にて、インピーダンス調整部50は可変容量回路C1に容量値指示用のディジタル信号を出力することによりその容量値を変更して回路が共振状態となるまで、ステップS3〜ステップS5を繰り返す。図5は、可変容量回路C1に伴う電圧レベルVの変化を示すグラフである。可変容量回路C1は、上記ステップS3〜S5によって回路が共振状態となる場合の容量Cr1に調整される。
【0034】
ステップS6において、電圧レベルVの値が所定の範囲の電圧V1〜V2となるか否かを判定する。ステップS6における判定の結果、電圧レベルVの値が所定の範囲V1〜V2となる場合は、処理はステップS8に進む。
電圧レベルVの値が所定の範囲V1〜V2でない場合は、インピーダンス調整部50は、ステップS7にて可変容量回路C2に容量値指示用のディジタル信号を出力することによりその容量値を変更し、電圧レベルVの値の値が所定の範囲V1〜V2になるまで、ステップS3〜ステップS7を繰り返す。このとき、可変容量回路C2の値が変化することにより回路の共振状態が変わるため、可変容量回路C2の値が変化する度にステップS3〜ステップS5が繰り返される。
なお、ステップS6において、電圧レベルVの値が所定の範囲内Vt1〜Vt2となるか否かを判定する代わりに、それまでに可変容量回路C2を変化させて測定した電圧レベルVの履歴から今回測定した電圧レベルVの値が最大値であるか否かを判定することにより、可変容量回路C2の変化について電圧レベルVの値が最大値となるように、可変容量回路C2を調整してもよい。
あるいは、それまでに可変容量回路C2を変化させて測定した電圧レベルVの履歴から今回測定した電圧レベルVの値が最小値であるか否かを判定することにより、可変容量回路C2の変化について電圧レベルVの値が最小値となるように、可変容量回路C2を調整してもよい。電圧レベルVの値を最大値及び最小値のいずれに調整するかは、渦電流センサ10と同調用回路40とを含む回路の回路構成に因る。
【0035】
ステップS8において、後段の回路すなわち検波回路70で、渦電流センサ10に現れる信号の電圧レベルVの振れ幅及び指示値を適切なディジタル信号に変換するために、マイコン8は、検波回路70のADC73等の利得及びオフセット調整を行う。
上記ステップS1〜S8によって調整が終了後、ステップS9において、インピーダンス調整部50は、ステップS3〜S7で定めた可変容量回路C1及びC2の値(又は可変容量回路C1及びC2に出力)を記憶しておき、マイコン8は、ステップS8で定めた利得及びオフセットの値を記憶する。
【0036】
このような動作を実現するインピーダンス調整部50は、上記調整アルゴリズムを実現するソフトウェアを実行するためのマイコン、並びにソフトウェアや上記C1、C2を記憶するためのメモリ素子で構成可能であり、またはこれらを内蔵したマイコンなどによって構成することも可能である。
【0037】
また、ステップS2において、渦電流センサ10の周囲に金属がない状態にするのに変えて、渦電流センサ10から所定の距離に既知の形状の金属を設置するとともに、ステップS4において、可変容量回路C1を、回路が共振状態となる場合の容量Cr1に調整する代わりに、可変容量回路C1を、微分値(dV/dC1)が所定の値以下となる容量Cr2に調整してもよい。
【0038】
また、発振回路60に、プログラマブル波形発生器のような発振周波数を自由に設定できる発振回路を使用してもよい。そして、インピーダンス調整部50は、可変容量回路C1又はC2の容量を調整するのに代えて、発振回路60の発振周波数を変更することにより、渦電流センサ10及び同調用回路40のインピーダンスを調整して、渦電流センサ10と同調用回路40とから成る回路を共振状態に調整し、または渦電流センサ10に現れる信号の電圧レベルVを調整してもよい。
【0039】
このように、インピーダンス調整部50が、センサ駆動回路21の同調用回路40の調整を自動的に行うことにより、従来出荷時にのみ行っていた渦電流センサ10とアンプユニット20の同調のための調整作業を現場で行うことを可能とする。これによりアンプユニット20の交換を伴うことなく、渦電流センサ10のみを現場で交換することが可能となる。
【0040】
図1に戻り、本発明の工作機械1では、アンプユニット20の交換を伴うことなく、渦電流センサ10のみを交換することが可能となるため、アンプユニット20の同調用回路40と渦電流センサ10とは、容易に着脱可能なコネクタ構造により接続されている。
【0041】
また、従来は、渦電流センサ10とアンプユニット20の同調のための調整作業を現場で行うことが困難であったために、渦電流センサ10とアンプユニット20との間を延長ケーブルにて接続することができなかった。これは延長ケーブルの接続によりインピーダンス特性が変わってしまうためである。
本発明の工作機械1では、延長ケーブルの接続によって渦電流センサ10と同調用回路40とを含む回路のインピーダンスが変わってしまっても、インピーダンス調整部50によって自動的にアンプユニット20の同調用回路40の調整を行うことができる。このため、コネクタ11のセンサ側端12と、アンプユニット側端13との間を、延長ケーブルでつなぐことも可能である。
【0042】
このようなコネクタ11としては、IP68のような防水・防塵性の優れたコネクタを使用することが好適であり、可能であれば水等の液体中でも使用可能なコネクタが好適である。また使用される現場の環境に応じて耐薬品性・耐クーラント性のコネクタを使用することも好適である。また図1に示すように、コネクタ11を、渦電流センサ10とアンプユニット20とを接続するケーブル途中に設ける場合には、ケーブルが引っ張られることにより、渦電流センサ10の取り付け位置に誤差が生じることのないように、コネクタ11を工作機械1のスピンドル部等の固定部分に固定するのが好適である。
【0043】
なお、図2に示す同調用回路40の構成は例示であり、これに限定されるものではない。したがって同調用回路40は、変位センサ10と発振回路60との間に接続されて、内部インピーダンス定数の値を調整することにより、発振回路60が生じる交流信号に対して変位センサ10とともに共振回路を成すことが可能な回路であればいかなる構成で実現してもよい。
【0044】
なお、発振回路60が生じる交流信号は、正弦波信号、方形波信号、鋸波信号などの様々な交流信号を採用することが可能である。または、発振回路60として、アナログ発振回路を使用してもよく、ダイレクト・ディジタル・シンセサイザ(DDS)などのディジタル発振回路を使用してもよい。
【0045】
以下図6〜図7を参照して、可変容量回路C1、C2を実現する回路構成例を説明する。図6の(A)は、可変容量回路C1、C2の第1構成例を示し、図6の(B)は、可変容量回路C1、C2の第2構成例を示し、図6の(C)は、可変容量回路C1、C2の第3構成例を示す。また、図7の(A)は、可変容量回路C1、C2の第4構成例を示し、図7の(B)は、(A)の可変誘導素子の第1構成例を示し、図7の(C)は、(A)の可変誘導素子の第2構成例を示す。
【0046】
図6の(A)に示すように、可変容量素子は、並列に接続された複数の容量素子C11、C12、C13…C1nと、これらを選択的に接続するためのアナログスイッチASWとから構成してよい。このとき、各容量素子の値を例えばC11=10pF、C11=20pF、C13=40pF…C1n=10×2(n-1)pFとし、アナログスイッチASWの各接点のON/OFF動作をインピーダンス調整部50から出力されるディジタル信号により制御することにより可変容量素子の値をディジタル的に変更することが可能である。
【0047】
なお、可変容量素子の抵抗成分への影響を低減するために、アナログスイッチASWには、各接点抵抗が約10Ω以下の低い抵抗値を有するものを使用することが好適である。ただし、並列に接続される各容量素子C11、C12、C13…C1nのうち、比較的小さな容量値の容量素子に接続される接点については、低い接点抵抗のアナログスイッチを使用しなくともよい。すなわち、大きな容量値の容量素子のみに低い接点抵抗のアナログスイッチを使用することとしてもよい。これは容量が小さければ抵抗値に換算するインピーダンス値が大きくなるため、アナログスイッチASWの接点抵抗が影響しなくなるためである。また、アナログスイッチASWには、機械的なリレー素子を用いてもよい。また、可変容量回路C1及びC2には、値が切り替え可能なキャパシタやインダクタを用いてもよい。
【0048】
また、可変容量回路は、図6の(B)及び(C)に示すような積分回路を用いた仮想容量回路によっても実現可能である。これらの仮想容量回路では、可変抵抗素子Rvの値をインピーダンス調整部50によって変更することにより、可変容量回路の容量値を変更することが可能である。
【0049】
さらに、可変容量回路は、図7の(A)に示すように容量値固定の容量素子Cと、可変誘導素子Lvとを組み合わせて実現することも可能である。可変誘導素子Lvは、図7の(B)に示すように、並列に接続された複数の宇誘導素子L11、L12、L13…L1nと、これらを選択的に接続するためのアナログスイッチASWとから構成してよい。アナログスイッチASWの各接点のON/OFF動作をインピーダンス調整部50から出力されるディジタル信号により制御することにより可変容量素子の値をディジタル的に変更することが可能となる。
なお、可変誘導素子の抵抗成分への影響を低減するために、アナログスイッチASWには、各接点抵抗が約10Ω以下の低い抵抗値を有するものを使用することが好適である。ただし、並列に接続される各容量素子L11、L12、L13…L1nのうち、比較的大きな値の素子に接続される接点については、低い接点抵抗のアナログスイッチを使用しなくともよい。
【0050】
また、可変誘導素子Lvは、図7の(C)に示すような積分回路を用いた仮想誘導回路によっても実現可能である。これらの仮想誘導回路では、可変抵抗素子Rvの値をインピーダンス調整部50によって変更することにより、可変誘導素子のインダクタンス値を変更することが可能である。
【0051】
また、図6の(B)及び(C)、並びに図7の(C)において、積分回路に含まれる可変抵抗素子Rvを、FETやバイポーラトランジスタやアナログフォトカプラ等のディスクリートデバイスによって実現することとしてよい。図8は、図6の(B)に示す可変容量回路の可変抵抗素子RvにJFETを使用した場合の、可変容量素子の第5構成例を示す図である。図6の(C)に示す可変容量素子及び図7の(C)に示す可変誘導素子においても同様に構成することが可能である。
【0052】
図8に示す構成例では、JFETであるディスクリートデバイスQのゲート電極Gに、インピーダンス調整部50から出力されるディジタル信号に応じた入力信号を印加することにより、ソースS−ドレインD間の抵抗値を、ディジタル信号に応じて変更することが可能となる。
しかし、このようにディスクリートデバイスを可変抵抗素子として使用する場合には、ディスクリートデバイスの温度などの要因によってその抵抗値が変動しやすく、その影響で可変容量回路の容量値が変動してしまうおそれがある。
したがって、この場合にはセンサ駆動回路21を図9に示すように構成し、ディスクリートデバイスの抵抗値の変動を補償する補償回路を設けることが望ましい。
【0053】
図9は、センサ駆動回路21の第2構成例を示す構成図である。図9において、可変容量回路C1及びC2には、図6の(B)もしくは(C)の可変容量素子、又は図7の(C)の可変誘導素子を有する可変容量素子が用いられ、その可変抵抗素子Rvには、図8を参照して説明したようにディスクリートデバイスが使用されている。
【0054】
また、センサ駆動回路21には、渦電流センサ10に印加する交流信号を生成し供給するための第1発振回路61と、この第1発振回路61により生成される第1交流信号と異なる周波数の第2交流信号を生成し供給するための第2発振回路62と、第1交流信号と第2交流信号とを重畳して、この重畳信号を同調用回路40に供給する重畳回路63と、をさらに備える。なお、第1発振回路61及び第2発振回路62を、上記DDSにて実現することにより、これら第1発振回路61及び第2発振回路62を、同一の発振回路にて構成することとしてもよい。
【0055】
さらに、センサ駆動回路21には、上記重畳信号をフィルタリングして第1交流信号のみを抽出して渦電流センサ10に印可するための第1フィルタ回路52を備え、また第1フィルタ回路52によるフィルタリング前の重畳信号から第1交流信号のみを抽出して検波回路70及び上記電圧測定器51に出力する第2フィルタ回路53と、を備える。この第2フィルタ回路53の働きによって、第2交流信号による検波回路70及び電圧測定器51の検出電圧への影響が除去される。
【0056】
さらに、センサ駆動回路21には、第1フィルタ回路52によるフィルタリング前の重畳信号から第2交流信号のみをモニタ信号として抽出する第3フィルタ回路54を備える。第1フィルタ回路52及び第3フィルタ回路54の働きによって、渦電流センサ10のインダクタンスの変動が、第3フィルタ回路54から抽出されるモニタ信号に影響を及ぼすことが回避され、モニタ信号の信号電圧レベルは、可変容量回路C1及びC2のインピーダンス定数のみに依存することになる。
【0057】
そして、抽出されたモニタ信号は、比較器55及び56によって、インピーダンス調整部50から可変容量回路C1及びC2へ出力される容量値制御信号とそれぞれ比較され、この比較結果を示す信号によって、可変容量回路C1及びC2の容量値を変更させる。このように、モニタ信号の信号レベルに基づき、可変容量回路C1及びC2内の可変抵抗素子Rvの抵抗値を増減するフィードバック回路を構成することにより、可変抵抗素子Rvの抵抗値は、可変容量回路C1及びC2のインピーダンス定数が一定となるように制御され、ディスクリートデバイスの抵抗値の変動が補償される。なお、例えば、温度等の外部環境により不必要に抵抗値が変動した場合にも、本回路の構成を用いることにより、ディスクリートデバイスの抵抗値を安定させることができる。
【0058】
図10は、センサ駆動回路21の第3構成例を示す構成図である。本構成例では、センサ駆動回路21は、図7の(B)及び(C)と同様に構成された可変誘導素子22を備え、さらにこの可変誘導素子22と渦電流センサ10とを切り替えて、同調用回路40に接続するための切換器23を備えている。可変誘導素子22のインダクタンス値の設定及び切換器23の切り替え制御は、センサ・同調回路検査部24により行われる。
【0059】
センサ・同調回路検査部24は、切換器23により可変誘導素子22を同調用回路40に接続する。この状態で既知の渦電流センサ10とツールフランジ3Bなどの金属物とのギャップを変えたとき渦電流センサ10のインダクタンス変化を、可変誘導素子22を用いてシミュレートし、この渦電流センサ10と同調用回路40との組み合わせの良否を評価する。
【0060】
例えば、センサ・同調回路検査部24を、メモリ素子等の記憶手段を備えて構成し、この記憶手段に、センサ駆動回路21に接続される既知の渦電流センサ10のインダクタンス特性、すなわち、渦電流センサ10と金属との間の間隔を変えて測定した各インダクタンス値を予め入力し記憶しておく。
そして、切換器23により可変誘導素子22を同調用回路40に接続し、可変誘導素子22の値を記憶された渦電流センサ10のインダクタンス特性に従って変化させる。このときの電圧測定器51の出力を検出することにより、既知の渦電流センサ10と同調用回路40との組み合わせの良否を判定することが可能となる。
【0061】
また、センサ・同調回路検査部24は、既知のインダクタンス特性にしたがって、同調用回路40に接続された可変誘導素子22のインダクタンス値を変動させたときの電圧測定器51の出力の変化と、実際の渦電流センサ10を同調用回路40に接続して金属物とのギャップを変化させながら検出した電圧測定器51の出力の変化と、を比較することにより、実際の渦電流センサ10のインダクタンス特性を評価することも可能である。
なお、本実施例では、センサ・同調回路検査部24とインピーダンス調整部50とを別個のブロックにて分けて表記したが、これらは1つのMCUとして構成してもよい。
【0062】
図1に戻り、検出回路70によって検出される信号レベルは、渦電流センサ10及びアンプユニット20などの温度上昇や、その他渦電流センサ10のセンサヘッド、アンプユニット20に通電させることに伴う、これらの内部のアナログ素子のインピーダンス定数の変化の影響を受ける。この影響により、センサヘッドとアンプユニットとの間の調整に支障をきたすことがある。この影響を防止するためには、ツールホルダ3の装着状態の異常を判定するときだけ渦電流センサ10及びアンプユニット20へ通電し、それ以外のときには通電を停止して、渦電流センサ10及びアンプユニット20などの温度上昇を防止することが望ましい。
【0063】
そこで、工作機械1は、渦電流センサ10とツールホルダ3のフランジ外周面3Bとの距離の測定を指令する測定指令信号を生成する測定指令信号生成部6を設ける。この測定指令信号生成部は、作業者による渦電流センサ10の交換が終了したときに、自動的に測定指令信号を生成する。
【0064】
生成された測定指令信号は、インターフェース回路(I/O)を介してマイコン8に入力され、マイコン8は、この測定指令信号を受信したときだけ渦電流センサ10及びアンプユニット20への通電を行い、それ以外の場合には、渦電流センサ10及びアンプユニット20への通電を停止する。
【0065】
なお、マイコン8は、この測定指令信号を受信しない間にアンプユニット20全体への通電を停止する代わりに、発振回路60による交流信号の供給のみを停止することとしてもよい。これにより同調用回路40及び渦電流センサ10への交流信号の供給が停止して、これらの温度上昇を防止することが可能となる。上述のDDSでは、交流信号の出力停止及び再開を瞬時に行うことができるため、発振回路60としてDDSを使用することが好適である。
【0066】
また、測定指令信号を受信しない非測定時の間、例えば工作機械1による工作作業時には、渦電流センサ10に流す電流、すなわち発振回路60の出力を、測定時よりも低減させて、渦電流センサ10及び同調用回路40の温度上昇を防止してもよい。このような非測定時における渦電流センサ10からの検出信号は、例えばツールホルダ3の装着の有無のみを検出するためのモニタ程度にしか用いられないため、分解能の低い低電流による駆動で足りる。
【0067】
さらに、図1に示すマイコン8を、図11に示す第2実施例のように渦電流センサ10やセンサ駆動回路21等の回路制御を行うための低消費電流タイプの制御用マイコン8aと、制御用マイコンが収集した測定データに基づきツールホルダ3の主軸への装着状態の異常を判定する演算用マイコン8bと、に分けて構成することとしてもよい。
そして、演算用マイコン8bは測定指令信号生成部6から測定指令信号が生成されたときにのみ起動することとして、演算用マイコン8bが消費する電力を節約することとしてもよい。
【0068】
図12は、図1に示す工作機械1の演算用マイコン8bの自動電源ON/OFF機能を説明するフローチャートである。
ステップS11及びS12のループにおいて、制御用マイコン8aは、測定指令信号生成部6からの測定指令信号の受信を待つ。一方、ステップS21及びS22においてのループ、演算用マイコン8bは、制御用マイコン8aからの起動命令をスリープモードで待つ。
【0069】
制御用マイコン8aが測定指令信号生成部6から測定指令信号を受信すると、処理はS13に進み、制御用マイコン8aに起動命令を送信した後、ステップS14にて、アンプユニット20やその内部のセンサ駆動回路21に通電して、渦電流センサ10からの検出信号を検波回路70を介して測定する。
【0070】
一方、演算用マイコン8bは、制御用マイコン8aから起動命令を受信すると、ステップS23において起動を行い、ステップS24にて内部のイニシャライズ処理を行った後、制御用マイコン8aによって渦電流センサ10からの検出信号の測定が終了するまで待機する。
制御用マイコン8aは、測定が終了すると、ステップS15において測定データを演算用マイコン8bに送信し、次の測定のための測定指令信号を待つためにステップS11に戻る。
【0071】
そして演算用マイコン8bは、ステップS25において制御用マイコン8aから送信された測定データを受信して、ステップS26においてツールホルダ3の装着状態の異常を判定するための計算を行う。そしてステップS27において判定結果を、表示装置やプリンタまたはネットワーク上に出力する。
そして、ステップS21に戻って、次の起動命令の受信があるまでスリープモードで待機する。なお、ここで演算用マイコン8bは、スリープモードで待機するのではなく、完全にシャットダウンしてもよい。
【0072】
上述の通り、本発明の工作機械1によって、渦電流センサ10等の変位センサが破損した場合に、現場で容易に交換することが可能となる。しかしながら、変位センサ10の破損を防止して交換作業そのものを低減するために、変位センサ10の先端部に、異物衝突の際にその衝撃を回避するための保護ブロックを装着することが好適である。
図13の(A)に変位センサ10の先端を保護するための保護ブロックの第1実施例の斜視図を示し、図13の(B)に変位センサ10の先端を保護するための保護ブロックの側断面図を示し、図13の(C)に変位センサ10の先端を保護するための保護ブロックの第2実施例の斜視図を示す。
【0073】
図13の(A)及び(B)に示すように、保護ブロック14は、中空の柱状形状を有するブロックからなり、その中空部分に変位センサ10の先端を収容することにより、変位センサ10の先端に異物が衝突したときの衝撃を回避する。
変位センサ10として上述の渦電流センサを使用する場合には、渦電流センサは金属との距離に応じてインピーダンス値が変化するセンサであるため、保護ブロック14を非金属性の材料(例えばポリエーテル・エータル・ケトン(PEEK)などのプラスチックエンジニアなどの樹脂材料)によって形成する必要がある。
【0074】
また、変位センサ10の先端部は、工具2により加工されるワークから飛来する切り屑によって損傷を生じる場合もある。したがって図13の(C)に示すように保護ブロック14の先端部にもまたカバー15を設けて、保護効果を増大させることも好適である。渦電流センサを使用する場合には、このカバー15もまた、非金属材料を使用する。
また、渦電流センサ10自身のカバー部材もまた、PEEKなどのエンジニアプラスチックを使用して形成してもよい。
【0075】
なお、上記渦電流センサ10には、測定対象物である金属表面に渦電流を発生させるためのコイルが内蔵されているが、従来の渦電流センサ10は、このコイルをボビンに電線を巻き取る方式で製造されており、巻き線ミスや巻きムラなどによって、渦電流センサの特性にばらつきを生じていた。したがって、本発明の工作機械1に使用される、渦電流センサ10を、コイルと同等のインピーダンス応答が得られるようなパターンが施された配線板を用いて実現しても良い。このようなパターンを施す配線板としてはガラス基盤やフレキ基盤などを用いてもよい。
【0076】
また、渦電流センサ10をアクチュエータなどの駆動手段によって移動させ、ツールフランジ3Bとの距離を変更できるように工作機械1に取り付け、ツールフランジ3Bからの距離を変化させつつ、渦電流センサ10からの検出信号を取得して、その結果を分析することにより、マイコン8により渦電流センサ10やアンプユニット20の良否判定を行うこととしてもよい。
【0077】
図1に示す構成例では、渦電流センサ10とアンプユニット20とをコネクタ11により接続していたが、渦電流センサ10のユニット自身に、発振回路や無線通信機能を持たせることにより、渦電流センサ10とアンプユニット20とを無線にて接続することとしてもよい。また、測定指令信号生成部6とマイコン8との信号送受信も無線にて行うこととしてもよい。
また、アンプユニット20は、図示しないパソコン等のコンピュータ装置との間の無線通信機能を備えることとしてよい。アンプユニット20を無線LAN環境に接続し、例えば不具合発生時、不具合情報を、社内の他の箇所(例えば事務室)にいる担当者の端末に自動的に送信する自動送信機能を付加することとしてもよい。
【0078】
また、無線LAN環境によりアンプユニット20と接続されるパソコン(図示せず)を用いて、過去最近の測定データの履歴を収集し、常時保存及び更新してもよい。異常が発生したときにこの履歴を解析することにより原因の特定に役立てることとしてよい。
さらに、渦電流センサ10とアンプユニット20とにそれぞれバーコード(2次元バーコード)を付加して、これらの組み合わせをバーコードにより管理してもよい。
【0079】
渦電流センサ10は、主軸4が取り付けられたヘッド5に複数設けてよい。例えば渦電流センサ10を複数平行して設置する。このようにセンサを設置し、複数のセンサ間における検出値の差を求めることにより、ワークが傾いて装着されている場合にワークの姿勢を姿勢することが可能となり、またはワークの形状等の測定も可能となる。このように複数の渦電流センサ10を設ける場合には、これらの複数のセンサにこれらの間で通信を可能とする通信機能を設けてもよい。
【0080】
渦電流センサ10やアンプユニット20に温度センサを設けて、アナログ素子の温度上昇による測定値の変動をキャンセルしてもよい。このためマイコン8には、予め温度センサの各検出値とそのときの補正値とを、実験又は理論値から予め求めて記憶しておき、測定の際に温度センサの検出値を読み取って、この検出値に基づき過電流センサ10から得た検出値を補正することとしてもよい。
【0081】
マイコン8に音声識別機能を設け、アンプユニットの調整、測定、工具2の登録などの工作機械1の各種動作を、作業者の音声による指令により自動的に開始するように構成してもよい。また、マイコン8に音声出力機能を設け、渦電流センサ10の取り付けの際のギャップ調整時に、現在のギャップ量を音声により作業者に通知することにより、取り付け作業を容易にしてもよい。
【0082】
以上、本発明を特にその好ましい実施の形態を参照して詳細に説明したが、本発明の容易な理解のために、本発明の具体的な形態を以下に追記する。
【0083】
(追記1)
工具が取り付けられたツールホルダを主軸に装着し、該主軸を回転駆動してワークを加工する工作機械であって、前記主軸に装着したツールホルダのフランジ外周面との距離に応じてインピーダンスが変化する変位センサと、前記変位センサに交流信号を供給する発振回路と、を備え、前記交流信号が印加された前記変位センサに現れる信号レベルから、前記ツールホルダの前記主軸への装着状態の異常を判定する工作機械において、
前記変位センサに接続されて、前記変位センサとともに共振回路を成すための同調用回路であって、その内部インピーダンス定数がディジタル信号によって変更可能な同調用回路と、
前記同調用回路にディジタル信号を出力することにより、前記内部インピーダンス定数を調整するインピーダンス調整回路と、
を備えることを特徴とする工作機械。
(追記2)
前記インピーダンス調整回路は、前記同調用回路の内部インピーダンス定数を調整して、前記変位センサと前記同調用回路とから成る回路を共振回路とすることを特徴とする追記1に記載の工作機械。
(追記3)
前記インピーダンス調整回路は、前記変位センサに現れる信号レベルを検出しながら前記同調用回路の内部インピーダンス定数を調整して、前記変位センサに現れる信号レベルを所定レベル以上とし、前記内部インピーダンス定数の変化に対する前記信号レベルの変化が所定値以下とすることを特徴とする追記1に記載の工作機械。
(追記4)
前記同調用回路は、複数のインピーダンス素子と、その1つ又は複数を選択して前記変位センサに接続可能なスイッチと、を備えることを特徴とする追記1〜3のいずれか1項に記載の工作機械。
(追記5)
前記インピーダンス素子は、容量素子であることを特徴とする追記4に記載の工作機械。
(追記6)
前記同調用回路は、可変容量素子を備える追記1〜3のいずれか1項に記載の工作機械。
(追記7)
前記同調用回路は、積分回路を用いた容量性回路と、この容量性回路の容量を変更可能な可変抵抗素子と、を備える追記1〜3のいずれか1項に記載の工作機械。
(追記8)
前記同調用回路は、容量素子と、可変誘導素子を備える追記1〜3のいずれか1項に記載の工作機械。
(追記9)
前記可変誘導素子は、複数の誘導素子と、その1つ又は複数を選択して前記変位センサに接続可能なスイッチと、を備えることを特徴とする追記8に記載の工作機械。
(追記10)
前記可変誘導素子は、積分回路を用いた容量性回路と、この誘導性回路のインダクタンスを変更可能な可変抵抗素子と、を備える追記8に記載の工作機械。
(追記11)
前記可変抵抗素子は、ディスクリートデバイスで構成されることを特徴とする追記7又は10に記載の工作機械。
(追記12)
前記発振回路を第1の発振回路とし、また該第1の発振回路から供給される前記交流信号を第1の交流信号とし、
前記同調用回路は、前記変位センサと前記第1の発振回路との間に接続され、
前記工作機械は、
前記第1の交流信号と異なる周波数の第2の交流信号を供給する第2の発振回路と、
前記第1の発振回路と前記同調用回路との間に接続され、前記第1の交流信号と前記第2の交流信号とを重畳して、この重畳信号を前記同調用回路に供給する重畳回路と、
前記同調用回路を介した前記重畳信号から、前記第2の交流信号をモニタ信号として抽出するモニタ信号抽出回路と、
前記モニタ信号の信号レベルに基づき、前記可変抵抗素子の抵抗値を増減するフィードバック回路と、
をさらに備えることを特徴とする、追記7、10又は11に記載の工作機械。
(追記13)
前記発振回路から供給される前記交流信号を第1の交流信号とし、
前記同調用回路は、前記変位センサと前記発振回路との間に接続され、
前記発振回路は、第1の交流信号と異なる周波数の第2の交流信号を、第1の交流信号に重畳して前記同調用回路に供給し、
前記工作機械は、
前記同調用回路を介した前記重畳信号から、前記第2の交流信号をモニタ信号として抽出するモニタ信号抽出回路と、
前記モニタ信号の信号レベルに基づき、前記可変抵抗素子の抵抗値を増減するフィードバック回路と、
をさらに備えることを特徴とする、追記7、10又は11に記載の工作機械。
(追記14)
前記インピーダンス調整回路は、前記発振回路の発振周波数を変えて、前記変位センサと前記同調用回路とから成る回路のインピーダンスを調整することを特徴とする追記1〜13のいずか1項に記載の工作機械。
(追記15)
工具が取り付けられたツールホルダを主軸に装着し、該主軸を回転駆動してワークを加工する工作機械であって、前記主軸に装着したツールホルダのフランジ外周面との距離に応じてインピーダンスが変化する変位センサと、前記変位センサに交流信号を供給する発振回路と、を備え、前記交流信号が印加された前記変位センサに現れる信号レベルから、前記ツールホルダの前記主軸への装着状態の異常を判定する工作機械において、
前記変位センサに接続されて、前記変位センサとともに共振回路を成すための同調用回路と、
前記発振回路の発振周波数を調整して、前記変位センサと前記同調用回路とから成る回路のインピーダンスを調整するための、インピーダンス調整回路と、
を備えることを特徴とする工作機械。
(追記16)
前記インピーダンス調整回路は、前記変位センサと前記同調用回路とから成る回路が共振回路となるように、前記発振回路の発振周波数を調整することを特徴とする追記15に記載の工作機械。
(追記17)
前記変位センサと前記同調用回路とは、着脱可能なコネクタにより接続されることを特徴とする追記1〜16のいずれか1項に記載の工作機械。
(追記18)
工具が取り付けられたツールホルダを主軸に装着し、該主軸を回転駆動してワークを加工する工作機械であって、前記主軸に装着したツールホルダのフランジ外周面との距離に応じてインピーダンスが変化する変位センサと、前記変位センサに流す交流信号を供給する発振回路と、を備え、前記変位センサに流れる前記交流信号のレベルから、前記ツールホルダの前記主軸への装着状態の異常を判定する工作機械において、
前記変位センサに接続されて、前記変位センサとともに共振回路を成すための同調用回路を備え、
前記変位センサと前記同調用回路とは、着脱可能なコネクタにより接続されることを特徴とする工作機械。
(追記19)
前記変位センサと、前記ツールホルダのフランジ外周面との距離の測定を指令する測定指令信号を生成する測定指令信号生成手段と、
前記測定指令信号生成手段から、前記測定指令信号を受信するまで、前記変位センサへの前記交流信号の供給を停止する信号停止手段と、
を備えることを特徴とする追記1〜18のいずれか一項に記載の工作機械。
(追記20)
前記変位センサは渦電流センサであり、
前記工作機械は、可変誘導素子と、該可変誘導素子と前記渦電流センサとを切り替えるための切替器と、をさらに備えることを特徴とする追記1〜19のいずれか1項に記載の工作機械。
(追記21)
工具が取り付けられたツールホルダを主軸に装着し、該主軸を回転駆動してワークを加工する工作機械であって、前記主軸に装着したツールホルダのフランジ外周面との距離に応じてインダクタンスが変化する渦電流センサと、前記渦連流センサに交流信号を供給する発振回路と、を備え、前記交流信号が印加された前記渦電流センサに現れる信号レベルから、前記ツールホルダの前記主軸への装着状態の異常を判定する工作機械において、
可変誘導素子と、
該可変誘導素子と前記渦電流センサとを切り替えるための切替器と、
をさらに備える工作機械。
【産業上の利用可能性】
【0084】
本発明は、回転軸を有する工作機械装置、特に、マシニングセンタ(以下、「MC」と略称でいう)等のツールホルダを使用する工作機械に好適に利用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0085】
【図1】本発明に係る工作機械の第1実施例の概略構成図である。
【図2】変位センサが接続されたセンサ駆動回路の第1構成例を示す構成図である。
【図3】図2に示す同調用回路の好適な調整状態を説明する図である。
【図4】渦電流センサの交換手順のフローチャートである。
【図5】図2に示すインピーダンス調整部による調整方法の説明図である。
【図6】(A)は可変容量回路の第1構成例を示す図であり、(B)は可変容量回路の第2構成例を示す図であり、(C)は可変容量回路の第3構成例を示す図である。
【図7】(A)は可変容量回路の第4構成例を示す図であり、(B)は(A)の可変誘導素子の第1構成例を示す図であり、(C)は(A)の可変誘導素子の第2構成例を示す図である。
【図8】可変容量回路の第5構成例を示す図である。
【図9】センサ駆動回路の第2構成例を示す構成図である。
【図10】センサ駆動回路の第3構成例を示す構成図である。
【図11】本発明に係る工作機械の第2実施例の概略構成図である。
【図12】図1に示す工作機械の自動電源ON/OFF機能を説明するフローチャートである。
【図13】渦電流センサの保護ブロックの説明図である。
【図14】ツールホルダの装着状態を示す断面図である。
【図15】ツールホルダの装着状態を示す説明図である。
【符号の説明】
【0086】
1 工作機械
2 工具
3 ツールホルダ
3B ツールフランジ
4 主軸
10 変位センサ
11 コネクタ
20 アンプユニット
21 センサ駆動回路
70 検波回路
【技術分野】
【0001】
本発明は、回転軸を有する工作機械装置において、ツールホルダの装着状態の異常を判定するために、ツールホルダまでの距離を測定する測定装置を調整する技術に関するものであり、特に、マシニングセンタ(以下、「MC」と略称でいう)等のツールホルダを使用する工作機械において、上記測定装置を自動的に調整可能とすることで、使用されるセンサを容易に交換可能な工作機械に関する。
【背景技術】
【0002】
MCは、加工工程に従って各種工具を自動的に選択し、主軸に自動で装着して多種類の加工を行う装置である。このMCにおいて、工具の交換は自動工具交換(ATC:オートツールホルダチェンジ)装置で行われる。このATC装置は、工具が取り付けられたツールホルダを、工具マガジンから自動で取り出し、主軸に自動で装着する装置である。
【0003】
図14は、主軸4へツールホルダ3を装着した状態を示す断面図である。同図に示されるように、ツールホルダ3は、円錐状の嵌合部3Aを有しており、この嵌合部3Aを主軸4に形成された円錐状の被嵌合部4Aに嵌合させて装着される。
【0004】
この手順は、以下のようになる。軸杆90を右方に引っ張ることにより、これに伴ってボール保持体91及びボール92が移動する。ボール92の移動により、プルスタッド(ドローイングボルト)93が引っ張られ、これによって、ツールホルダ3の円錐状の嵌合部3Aが主軸4の円錐状の被嵌合部4Aに押し付けられる。この押し付けられた圧力により、嵌合部3Aが被嵌合部4Aと密着して装着(チャッキング)がなされる。
【0005】
図15は、工具2を把持するツールホルダ3の装着状態を示す説明図である。通常は、ツールホルダ3の装着が適正になされ、同図の(A)に示されるような状態となる。ところが、同図の(B)に示されるように、この嵌合部分に切り屑94などが付着すると、軸が曲がって装着される。そして、この状態で加工を行うと、工具2に振れが発生し、ワークの加工精度が低下するという欠点がある。
【0006】
このようなツールホルダ3のチャックミスの有無を自動で検出する技術として、ツールホルダ3のツールフランジ3Bまでの距離を、渦電流センサなどの変位センサにより測定し、この測定データに基づいて、ツールホルダ3の主軸4への装着状態の異常を判定する提案が、本願出願人によりなされている(例えば、下記特許文献1〜4)。
【0007】
【特許文献1】特開2004−276145
【特許文献2】特開2004−42208
【特許文献3】特開2003−334742
【特許文献4】特開2002−200542
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記特許文献1〜4に開示される異常判定方法では、ツールフランジ3Bまでの距離に応じて変位センサのインピーダンスが変化するので(例えば、渦電流センサではインダクタンスが変化する)、交流信号を変位センサに印可してこの変位センサに現れる信号の電圧レベルの変化を検出することにより、ツールフランジ3Bまでの距離を測定する。
【0009】
変位センサに交流信号を印可するために、交流信号を発生させる発振回路と、変位センサを含んで構成される電気回路を交流信号に対する共振回路とするために変位センサに接続される同調用回路と、を含むアンプユニットが使用される。
変位センサは、その種類、形式及び個体差により内部インピーダンス特性が異なる。このため、アンプユニットを個々の変位センサと組み合わせて使用する際には、その変位センサの内部インピーダンス特性に応じて、同調用回路の内部インピーダンス定数を調整する必要がある。
【0010】
しかし、従来、同調用回路の調整を作業現場で作業員が行うことは非常に困難であったため、すでに組み合わせ調整された同じ変位センサと同じアンプユニットを使用していた。このため、変位センサを破損した場合には、破損した変位センサと併せてアンプユニットも交換する必要があり不経済であった。
【0011】
また、従来の工作機械では、センサヘッドとアンプユニットの設置場所が異なるため、アンプユニットに接続されたセンサヘッドを工作機械から取り外すことは困難であった。
【0012】
さらに、従来の工作機械では、出荷時の変位センサとアンプユニットの組み合わせのままで使用しているため、個々の変位センサに対するアンプユニットのインピーダンス特性を評価する手段を設けていなかった。このため、例えば出荷時に組み合わせられていた変位センサと異なる他の変位センサと間において、その組み合わせが適正であるか否かの評価ができなかった。
【0013】
上記目的に鑑み、本発明は、工具が取り付けられたツールホルダを主軸に装着し、主軸を回転駆動してワークを加工する工作機械であって、ツールホルダとの距離に応じてインピーダンスが変化する変位センサにアンプユニットから交流信号を印可し、変位センサに現れる信号レベルに基づき、ツールホルダの主軸への装着状態を判定する工作機械において、変位センサが接続されたアンプユニットの同調を現場において容易に可能とすることにより、現場における変位センサの交換を可能にし、これにより変位センサの破損により生じる修理コストを低減することを目的とする。
また、本発明は、変位センサとを容易に取り外し、変位センサの交換を容易にすることをも目的とする。
さらに、本発明は、変位センサとアンプユニットとの組み合わせの適否を評価可能とすることをも目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記目的を達成するために、本発明による工作機械は、変位センサに接続されて変位センサとともに共振回路を成すための同調用回路の内部インピーダンス定数をディジタル信号によって変更できるように構成し、この同調用回路にディジタル信号を出力して内部インピーダンス定数を調整するインピーダンス調整回路を、備える。
【0015】
また、本発明による工作機械は、変位センサに同調用回路を接続し、発振回路の発振周波数を調整して変位センサと同調用回路とから成る回路のインピーダンスを調整するためのインピーダンス調整回路を、備える。
【0016】
さらに、本発明による工作機械は、変位センサと、上記同調用回路が設けられるアンプユニットが、着脱可能なコネクタにより接続される。
【0017】
さらにまた、本発明による工作機械は、変位センサとして渦電流センサを備え、さらに可変誘導回路と、この可変誘導回路と渦電流センサとを切り替えるための切替器と、を備える。
【発明の効果】
【0018】
アンプユニット内の同調用回路の内部インピーダンス定数を外部からディジタル信号によって変更できるように構成することにより、コンピュータやマイコン等のディジタル信号処理手段で変更することが可能となる。これによって、アンプユニットの同調を、ディジタル信号処理手段により実行可能な調整アルゴリズムに従って自動的に行うことが可能となる。したがって、アンプユニットを交換することなく、変位センサのみを現場で容易に交換することが可能となる。
また、同様に発振回路の発振周波数を調整して、変位センサと同調用回路とから成る回路のインピーダンスを調整することにより、アンプユニットの同調を自動的に行うことが可能となる。なお、上記同調用回路は、ディジタル信号だけでなく、アナログ信号によってインピーダンス定数の切り替えを行うように構成されてもよい。
【0019】
同調用回路と変位センサとを着脱可能なコネクタにより接続することにより、変位センサのみを現場で容易に交換することが可能となる。
また、可変誘導回路と渦電流センサとを切り替えることにより、この可変誘導回路のインダクタンスを変化させて、渦電流センサをシミュレーションすることが可能となる。したがって、仕様上接続可能な変位センサの特性範囲が既知であれば可変誘導回路を使用して、その変位センサと、アンプユニットとの組み合わせの適否を評価することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、添付する図面を参照して本発明の実施例を説明する。図1は、本発明に係る工作機械の第1実施例の概略構成図である。工作機械1は、ATC装置により加工工程に従って各種工具を自動的に選択し、主軸に自動で装着して多種類の加工を行うMCである。
以下、本発明をMCの例に沿って説明するが、本発明はこれに限られず、ツール着脱機能がある工作機械であれば広く適用することが可能である。例えばタッピングや複合旋盤のような工作機械でもよいし、必ずしもATC機能がなくともよい。
【0021】
工作機械1は、工具(ツール)2が取り付けられたツールホルダ3を装着するための主軸4と、ツールホルダ3のツールフランジ3Bの外周面との距離を測定するための、本発明に係るセンサヘッドである変位センサ10と、変位センサ10から入力される信号を解析し距離情報へ変換するためのアンプユニット20と、を備えて構成される。
【0022】
変位センサ10としては、渦電流センサのような、測定対象との間の距離にしたがってインピーダンスが変化するセンサが使用される(以下、例として、変位センサ10は渦電流センサであるとして説明を行うが、本発明に使用される変位センサ10はこれに限られず、本発明のセンサヘッド10及びアンプユニット20は、組み合わせ調整が必要なインピーダンス測定型システムであればよい。例えば変位センサ10として静電容量型のセンサを使用してもよい)。変位センサ10は、主軸4が取り付けられたヘッド5にブラケットを介して取り付けられる。
【0023】
アンプユニット20は、変位センサに交流信号(励磁信号)を供給するためのセンサ駆動回路21と、変位センサに現れる信号レベルを検出するための検波回路70と、検波回路70によって検出した測定データを収集し、その測定データを受信してそのデータを分析することによりツールホルダ3の主軸1への装着状態の異常を判定し、その結果を工作機械1の数値制御(NC)を行うNC制御装置9へ出力するマイコン8と、を備えて構成される。
【0024】
さらに、アンプユニット20のセンサ駆動回路21は、変位センサ10に交流信号を供給する発振回路60と、変位センサ10と発振回路60との間に接続されて、交流信号に対して変位センサ10とともに共振回路を成すための、本発明に係るインピーダンス回路である同調用回路40と、同調用回路40の内部インピーダンス定数を調整するインピーダンス調整回路50と、を備えている。
【0025】
検波回路70は、変位センサに現れる信号電圧を整流する整流回路と、整流された信号の高周波成分を取り除き直流成分を取り出すためのフィルタ回路72と、フィルタ回路72を通過したアナログ電圧信号をディジタル信号に変換するためのアナログ・ディジタル変換器(ADC)73とを備えて構成されており、変位センサに現れる交流の信号電圧の振幅値を示すディジタル信号を生成してマイコン8へ送信する。なお、マイコン8がA/D変換機能を有している場合はADC73は不要である。また、本項と同様の処理を行えるアナログ回路で代用してもよい。
【0026】
図2は、変位センサ10が接続されたセンサ駆動回路21の第1構成例を示す構成図である。同調用回路40は、発振回路60及び変位センサ10と並列に接続される可変容量回路C1と、発振回路60及び変位センサ10と直列に接続される可変容量回路C2とを備えている。
【0027】
渦電流センサ10は、金属物であるツールホルダ3のツールフランジ3Bの外周面までの距離に応じてそのインダクタンス値が変化する。したがって発振回路60により交流信号が供給されると、ツールフランジ3Bの外周面までの距離に応じて渦電流センサ10に現れる信号の電圧レベルが変化するので、この電圧レベルの変化を検波回路70を介してマイコン8にて読み取り、ツールフランジ3Bの外周面までの距離を測定する。なお、ツールホルダの材質は、空気中と異なる磁性を有するものであれば、金属でなくともよい。
【0028】
そして、同調用回路40は、渦電流センサ10に現れる信号の電圧レベルを所望の検出精度で検出するために、渦電流センサ10と同調用回路40とを含む回路を、発振回路60から印可される交流信号に対して共振させる(同調する)ために用いられる。
通常、同調用回路40の内部インピーダンスは、図3に示すように、渦電流センサ10の周囲に金属が無い状態にして(すなわちツールフランジ3Bの外周面までの距離=∞の状態にして)、そのときに、そのときに、渦電流センサ10に現れる信号の電圧レベルVが距離に対して最大値または最小値となって共振し、かつそのときの電圧レベルが所望の電圧レベルの範囲(V1〜V2)になるように調整される。
なお、調整時は周辺金属が無い状態以外でもよい。例えば所定の金属ブロックを取り付けて調整を行ってもよい。また、調整時の電圧レベルはd=∞時に最大でなくてもよい。例えばあるギャップ時に最大となるように調整してもよい。また、距離や調整容量の微分係数により調整してもよい。さらに、センサ駆動回路21の内部回路の構成によっては、渦電流センサ10に現れる信号の電圧レベルVの調整ポイントを最大値に限らず、最小値やある特定の電圧時としてもよい。
【0029】
そこで、本発明では、可変容量回路C1及びC2を、これらの素子の外部から入力されるディジタル信号によって、その容量値を制御できるように構成する。そして、インピーダンス調整部50は、以下に説明する調整アルゴリズムに従って、可変容量回路C1及びC2へ出力するディジタル信号の値を変更することにより、これら可変容量回路C1及びC2の各々の容量値を変更する。なお、以下の説明において、インピーダンス調整部50が可変容量回路C1及びC2の容量値を変更するために出力するディジタル信号を、「容量値制御信号」とよぶことがある。また、容量値をアナログ信号で調整する場合も同様にインピーダンス調整部50が可変容量回路C1及びC2の容量値を変更するためのアナログ信号を「容量値制御信号」とよぶ。
【0030】
以下、図4及び図5を参照して、インピーダンス調整部50による可変容量回路C1及びC2の各々の容量値の調整動作について説明する。図4は、渦電流センサ10の交換手順のフローチャートであり、図5は、インピーダンス調整部50による調整方法の説明図である。
【0031】
まず、ステップS1において、渦電流センサ10の測定コイル部分である先端部だけをアンプユニット20から取り外し、新しく取り付ける渦電流センサ10の先端部を取り付けて、予め用意した測定環境の中に設置する。
ステップS2において、渦電流センサ10の周囲に金属がない状態にする。本ステップによりツールフランジ3Bの外周面までの距離=∞の状態が作られる。
【0032】
この状態で、インピーダンス調整部50は、電圧測定器51によって渦電流センサ10に現れる信号の電圧レベルVを測定する(ステップS3)。
ステップS4において、インピーダンス調整部50は、渦電流センサ10と同調用回路40とを含む回路が共振状態にあるか否かを判定する。
例えば、インピーダンス調整部50は、それまでに可変容量回路C1を変化させて測定した電圧レベルVの履歴から、今回測定した電圧レベルVの値が最大値や最小値であるか否かを判定する(電圧レベルVの値が最大値及び最小値のいずれであるかを判定するかは、渦電流センサ10と同調用回路40とを含む回路の回路構成に因る)。
従って、インピーダンス調整部50は、可変容量回路C1を変化させて測定した電圧レベルVの変化率が所定値以下であるか、予め回路が共振状態にあるときに測定されると予想される電圧レベルVの変化率の所定範囲であるか否かを判定する。
【0033】
ステップS4における判定の結果、回路が共振状態にある場合は、処理はステップS6に進み、回路が共振状態にない場合は、ステップS5にて、インピーダンス調整部50は可変容量回路C1に容量値指示用のディジタル信号を出力することによりその容量値を変更して回路が共振状態となるまで、ステップS3〜ステップS5を繰り返す。図5は、可変容量回路C1に伴う電圧レベルVの変化を示すグラフである。可変容量回路C1は、上記ステップS3〜S5によって回路が共振状態となる場合の容量Cr1に調整される。
【0034】
ステップS6において、電圧レベルVの値が所定の範囲の電圧V1〜V2となるか否かを判定する。ステップS6における判定の結果、電圧レベルVの値が所定の範囲V1〜V2となる場合は、処理はステップS8に進む。
電圧レベルVの値が所定の範囲V1〜V2でない場合は、インピーダンス調整部50は、ステップS7にて可変容量回路C2に容量値指示用のディジタル信号を出力することによりその容量値を変更し、電圧レベルVの値の値が所定の範囲V1〜V2になるまで、ステップS3〜ステップS7を繰り返す。このとき、可変容量回路C2の値が変化することにより回路の共振状態が変わるため、可変容量回路C2の値が変化する度にステップS3〜ステップS5が繰り返される。
なお、ステップS6において、電圧レベルVの値が所定の範囲内Vt1〜Vt2となるか否かを判定する代わりに、それまでに可変容量回路C2を変化させて測定した電圧レベルVの履歴から今回測定した電圧レベルVの値が最大値であるか否かを判定することにより、可変容量回路C2の変化について電圧レベルVの値が最大値となるように、可変容量回路C2を調整してもよい。
あるいは、それまでに可変容量回路C2を変化させて測定した電圧レベルVの履歴から今回測定した電圧レベルVの値が最小値であるか否かを判定することにより、可変容量回路C2の変化について電圧レベルVの値が最小値となるように、可変容量回路C2を調整してもよい。電圧レベルVの値を最大値及び最小値のいずれに調整するかは、渦電流センサ10と同調用回路40とを含む回路の回路構成に因る。
【0035】
ステップS8において、後段の回路すなわち検波回路70で、渦電流センサ10に現れる信号の電圧レベルVの振れ幅及び指示値を適切なディジタル信号に変換するために、マイコン8は、検波回路70のADC73等の利得及びオフセット調整を行う。
上記ステップS1〜S8によって調整が終了後、ステップS9において、インピーダンス調整部50は、ステップS3〜S7で定めた可変容量回路C1及びC2の値(又は可変容量回路C1及びC2に出力)を記憶しておき、マイコン8は、ステップS8で定めた利得及びオフセットの値を記憶する。
【0036】
このような動作を実現するインピーダンス調整部50は、上記調整アルゴリズムを実現するソフトウェアを実行するためのマイコン、並びにソフトウェアや上記C1、C2を記憶するためのメモリ素子で構成可能であり、またはこれらを内蔵したマイコンなどによって構成することも可能である。
【0037】
また、ステップS2において、渦電流センサ10の周囲に金属がない状態にするのに変えて、渦電流センサ10から所定の距離に既知の形状の金属を設置するとともに、ステップS4において、可変容量回路C1を、回路が共振状態となる場合の容量Cr1に調整する代わりに、可変容量回路C1を、微分値(dV/dC1)が所定の値以下となる容量Cr2に調整してもよい。
【0038】
また、発振回路60に、プログラマブル波形発生器のような発振周波数を自由に設定できる発振回路を使用してもよい。そして、インピーダンス調整部50は、可変容量回路C1又はC2の容量を調整するのに代えて、発振回路60の発振周波数を変更することにより、渦電流センサ10及び同調用回路40のインピーダンスを調整して、渦電流センサ10と同調用回路40とから成る回路を共振状態に調整し、または渦電流センサ10に現れる信号の電圧レベルVを調整してもよい。
【0039】
このように、インピーダンス調整部50が、センサ駆動回路21の同調用回路40の調整を自動的に行うことにより、従来出荷時にのみ行っていた渦電流センサ10とアンプユニット20の同調のための調整作業を現場で行うことを可能とする。これによりアンプユニット20の交換を伴うことなく、渦電流センサ10のみを現場で交換することが可能となる。
【0040】
図1に戻り、本発明の工作機械1では、アンプユニット20の交換を伴うことなく、渦電流センサ10のみを交換することが可能となるため、アンプユニット20の同調用回路40と渦電流センサ10とは、容易に着脱可能なコネクタ構造により接続されている。
【0041】
また、従来は、渦電流センサ10とアンプユニット20の同調のための調整作業を現場で行うことが困難であったために、渦電流センサ10とアンプユニット20との間を延長ケーブルにて接続することができなかった。これは延長ケーブルの接続によりインピーダンス特性が変わってしまうためである。
本発明の工作機械1では、延長ケーブルの接続によって渦電流センサ10と同調用回路40とを含む回路のインピーダンスが変わってしまっても、インピーダンス調整部50によって自動的にアンプユニット20の同調用回路40の調整を行うことができる。このため、コネクタ11のセンサ側端12と、アンプユニット側端13との間を、延長ケーブルでつなぐことも可能である。
【0042】
このようなコネクタ11としては、IP68のような防水・防塵性の優れたコネクタを使用することが好適であり、可能であれば水等の液体中でも使用可能なコネクタが好適である。また使用される現場の環境に応じて耐薬品性・耐クーラント性のコネクタを使用することも好適である。また図1に示すように、コネクタ11を、渦電流センサ10とアンプユニット20とを接続するケーブル途中に設ける場合には、ケーブルが引っ張られることにより、渦電流センサ10の取り付け位置に誤差が生じることのないように、コネクタ11を工作機械1のスピンドル部等の固定部分に固定するのが好適である。
【0043】
なお、図2に示す同調用回路40の構成は例示であり、これに限定されるものではない。したがって同調用回路40は、変位センサ10と発振回路60との間に接続されて、内部インピーダンス定数の値を調整することにより、発振回路60が生じる交流信号に対して変位センサ10とともに共振回路を成すことが可能な回路であればいかなる構成で実現してもよい。
【0044】
なお、発振回路60が生じる交流信号は、正弦波信号、方形波信号、鋸波信号などの様々な交流信号を採用することが可能である。または、発振回路60として、アナログ発振回路を使用してもよく、ダイレクト・ディジタル・シンセサイザ(DDS)などのディジタル発振回路を使用してもよい。
【0045】
以下図6〜図7を参照して、可変容量回路C1、C2を実現する回路構成例を説明する。図6の(A)は、可変容量回路C1、C2の第1構成例を示し、図6の(B)は、可変容量回路C1、C2の第2構成例を示し、図6の(C)は、可変容量回路C1、C2の第3構成例を示す。また、図7の(A)は、可変容量回路C1、C2の第4構成例を示し、図7の(B)は、(A)の可変誘導素子の第1構成例を示し、図7の(C)は、(A)の可変誘導素子の第2構成例を示す。
【0046】
図6の(A)に示すように、可変容量素子は、並列に接続された複数の容量素子C11、C12、C13…C1nと、これらを選択的に接続するためのアナログスイッチASWとから構成してよい。このとき、各容量素子の値を例えばC11=10pF、C11=20pF、C13=40pF…C1n=10×2(n-1)pFとし、アナログスイッチASWの各接点のON/OFF動作をインピーダンス調整部50から出力されるディジタル信号により制御することにより可変容量素子の値をディジタル的に変更することが可能である。
【0047】
なお、可変容量素子の抵抗成分への影響を低減するために、アナログスイッチASWには、各接点抵抗が約10Ω以下の低い抵抗値を有するものを使用することが好適である。ただし、並列に接続される各容量素子C11、C12、C13…C1nのうち、比較的小さな容量値の容量素子に接続される接点については、低い接点抵抗のアナログスイッチを使用しなくともよい。すなわち、大きな容量値の容量素子のみに低い接点抵抗のアナログスイッチを使用することとしてもよい。これは容量が小さければ抵抗値に換算するインピーダンス値が大きくなるため、アナログスイッチASWの接点抵抗が影響しなくなるためである。また、アナログスイッチASWには、機械的なリレー素子を用いてもよい。また、可変容量回路C1及びC2には、値が切り替え可能なキャパシタやインダクタを用いてもよい。
【0048】
また、可変容量回路は、図6の(B)及び(C)に示すような積分回路を用いた仮想容量回路によっても実現可能である。これらの仮想容量回路では、可変抵抗素子Rvの値をインピーダンス調整部50によって変更することにより、可変容量回路の容量値を変更することが可能である。
【0049】
さらに、可変容量回路は、図7の(A)に示すように容量値固定の容量素子Cと、可変誘導素子Lvとを組み合わせて実現することも可能である。可変誘導素子Lvは、図7の(B)に示すように、並列に接続された複数の宇誘導素子L11、L12、L13…L1nと、これらを選択的に接続するためのアナログスイッチASWとから構成してよい。アナログスイッチASWの各接点のON/OFF動作をインピーダンス調整部50から出力されるディジタル信号により制御することにより可変容量素子の値をディジタル的に変更することが可能となる。
なお、可変誘導素子の抵抗成分への影響を低減するために、アナログスイッチASWには、各接点抵抗が約10Ω以下の低い抵抗値を有するものを使用することが好適である。ただし、並列に接続される各容量素子L11、L12、L13…L1nのうち、比較的大きな値の素子に接続される接点については、低い接点抵抗のアナログスイッチを使用しなくともよい。
【0050】
また、可変誘導素子Lvは、図7の(C)に示すような積分回路を用いた仮想誘導回路によっても実現可能である。これらの仮想誘導回路では、可変抵抗素子Rvの値をインピーダンス調整部50によって変更することにより、可変誘導素子のインダクタンス値を変更することが可能である。
【0051】
また、図6の(B)及び(C)、並びに図7の(C)において、積分回路に含まれる可変抵抗素子Rvを、FETやバイポーラトランジスタやアナログフォトカプラ等のディスクリートデバイスによって実現することとしてよい。図8は、図6の(B)に示す可変容量回路の可変抵抗素子RvにJFETを使用した場合の、可変容量素子の第5構成例を示す図である。図6の(C)に示す可変容量素子及び図7の(C)に示す可変誘導素子においても同様に構成することが可能である。
【0052】
図8に示す構成例では、JFETであるディスクリートデバイスQのゲート電極Gに、インピーダンス調整部50から出力されるディジタル信号に応じた入力信号を印加することにより、ソースS−ドレインD間の抵抗値を、ディジタル信号に応じて変更することが可能となる。
しかし、このようにディスクリートデバイスを可変抵抗素子として使用する場合には、ディスクリートデバイスの温度などの要因によってその抵抗値が変動しやすく、その影響で可変容量回路の容量値が変動してしまうおそれがある。
したがって、この場合にはセンサ駆動回路21を図9に示すように構成し、ディスクリートデバイスの抵抗値の変動を補償する補償回路を設けることが望ましい。
【0053】
図9は、センサ駆動回路21の第2構成例を示す構成図である。図9において、可変容量回路C1及びC2には、図6の(B)もしくは(C)の可変容量素子、又は図7の(C)の可変誘導素子を有する可変容量素子が用いられ、その可変抵抗素子Rvには、図8を参照して説明したようにディスクリートデバイスが使用されている。
【0054】
また、センサ駆動回路21には、渦電流センサ10に印加する交流信号を生成し供給するための第1発振回路61と、この第1発振回路61により生成される第1交流信号と異なる周波数の第2交流信号を生成し供給するための第2発振回路62と、第1交流信号と第2交流信号とを重畳して、この重畳信号を同調用回路40に供給する重畳回路63と、をさらに備える。なお、第1発振回路61及び第2発振回路62を、上記DDSにて実現することにより、これら第1発振回路61及び第2発振回路62を、同一の発振回路にて構成することとしてもよい。
【0055】
さらに、センサ駆動回路21には、上記重畳信号をフィルタリングして第1交流信号のみを抽出して渦電流センサ10に印可するための第1フィルタ回路52を備え、また第1フィルタ回路52によるフィルタリング前の重畳信号から第1交流信号のみを抽出して検波回路70及び上記電圧測定器51に出力する第2フィルタ回路53と、を備える。この第2フィルタ回路53の働きによって、第2交流信号による検波回路70及び電圧測定器51の検出電圧への影響が除去される。
【0056】
さらに、センサ駆動回路21には、第1フィルタ回路52によるフィルタリング前の重畳信号から第2交流信号のみをモニタ信号として抽出する第3フィルタ回路54を備える。第1フィルタ回路52及び第3フィルタ回路54の働きによって、渦電流センサ10のインダクタンスの変動が、第3フィルタ回路54から抽出されるモニタ信号に影響を及ぼすことが回避され、モニタ信号の信号電圧レベルは、可変容量回路C1及びC2のインピーダンス定数のみに依存することになる。
【0057】
そして、抽出されたモニタ信号は、比較器55及び56によって、インピーダンス調整部50から可変容量回路C1及びC2へ出力される容量値制御信号とそれぞれ比較され、この比較結果を示す信号によって、可変容量回路C1及びC2の容量値を変更させる。このように、モニタ信号の信号レベルに基づき、可変容量回路C1及びC2内の可変抵抗素子Rvの抵抗値を増減するフィードバック回路を構成することにより、可変抵抗素子Rvの抵抗値は、可変容量回路C1及びC2のインピーダンス定数が一定となるように制御され、ディスクリートデバイスの抵抗値の変動が補償される。なお、例えば、温度等の外部環境により不必要に抵抗値が変動した場合にも、本回路の構成を用いることにより、ディスクリートデバイスの抵抗値を安定させることができる。
【0058】
図10は、センサ駆動回路21の第3構成例を示す構成図である。本構成例では、センサ駆動回路21は、図7の(B)及び(C)と同様に構成された可変誘導素子22を備え、さらにこの可変誘導素子22と渦電流センサ10とを切り替えて、同調用回路40に接続するための切換器23を備えている。可変誘導素子22のインダクタンス値の設定及び切換器23の切り替え制御は、センサ・同調回路検査部24により行われる。
【0059】
センサ・同調回路検査部24は、切換器23により可変誘導素子22を同調用回路40に接続する。この状態で既知の渦電流センサ10とツールフランジ3Bなどの金属物とのギャップを変えたとき渦電流センサ10のインダクタンス変化を、可変誘導素子22を用いてシミュレートし、この渦電流センサ10と同調用回路40との組み合わせの良否を評価する。
【0060】
例えば、センサ・同調回路検査部24を、メモリ素子等の記憶手段を備えて構成し、この記憶手段に、センサ駆動回路21に接続される既知の渦電流センサ10のインダクタンス特性、すなわち、渦電流センサ10と金属との間の間隔を変えて測定した各インダクタンス値を予め入力し記憶しておく。
そして、切換器23により可変誘導素子22を同調用回路40に接続し、可変誘導素子22の値を記憶された渦電流センサ10のインダクタンス特性に従って変化させる。このときの電圧測定器51の出力を検出することにより、既知の渦電流センサ10と同調用回路40との組み合わせの良否を判定することが可能となる。
【0061】
また、センサ・同調回路検査部24は、既知のインダクタンス特性にしたがって、同調用回路40に接続された可変誘導素子22のインダクタンス値を変動させたときの電圧測定器51の出力の変化と、実際の渦電流センサ10を同調用回路40に接続して金属物とのギャップを変化させながら検出した電圧測定器51の出力の変化と、を比較することにより、実際の渦電流センサ10のインダクタンス特性を評価することも可能である。
なお、本実施例では、センサ・同調回路検査部24とインピーダンス調整部50とを別個のブロックにて分けて表記したが、これらは1つのMCUとして構成してもよい。
【0062】
図1に戻り、検出回路70によって検出される信号レベルは、渦電流センサ10及びアンプユニット20などの温度上昇や、その他渦電流センサ10のセンサヘッド、アンプユニット20に通電させることに伴う、これらの内部のアナログ素子のインピーダンス定数の変化の影響を受ける。この影響により、センサヘッドとアンプユニットとの間の調整に支障をきたすことがある。この影響を防止するためには、ツールホルダ3の装着状態の異常を判定するときだけ渦電流センサ10及びアンプユニット20へ通電し、それ以外のときには通電を停止して、渦電流センサ10及びアンプユニット20などの温度上昇を防止することが望ましい。
【0063】
そこで、工作機械1は、渦電流センサ10とツールホルダ3のフランジ外周面3Bとの距離の測定を指令する測定指令信号を生成する測定指令信号生成部6を設ける。この測定指令信号生成部は、作業者による渦電流センサ10の交換が終了したときに、自動的に測定指令信号を生成する。
【0064】
生成された測定指令信号は、インターフェース回路(I/O)を介してマイコン8に入力され、マイコン8は、この測定指令信号を受信したときだけ渦電流センサ10及びアンプユニット20への通電を行い、それ以外の場合には、渦電流センサ10及びアンプユニット20への通電を停止する。
【0065】
なお、マイコン8は、この測定指令信号を受信しない間にアンプユニット20全体への通電を停止する代わりに、発振回路60による交流信号の供給のみを停止することとしてもよい。これにより同調用回路40及び渦電流センサ10への交流信号の供給が停止して、これらの温度上昇を防止することが可能となる。上述のDDSでは、交流信号の出力停止及び再開を瞬時に行うことができるため、発振回路60としてDDSを使用することが好適である。
【0066】
また、測定指令信号を受信しない非測定時の間、例えば工作機械1による工作作業時には、渦電流センサ10に流す電流、すなわち発振回路60の出力を、測定時よりも低減させて、渦電流センサ10及び同調用回路40の温度上昇を防止してもよい。このような非測定時における渦電流センサ10からの検出信号は、例えばツールホルダ3の装着の有無のみを検出するためのモニタ程度にしか用いられないため、分解能の低い低電流による駆動で足りる。
【0067】
さらに、図1に示すマイコン8を、図11に示す第2実施例のように渦電流センサ10やセンサ駆動回路21等の回路制御を行うための低消費電流タイプの制御用マイコン8aと、制御用マイコンが収集した測定データに基づきツールホルダ3の主軸への装着状態の異常を判定する演算用マイコン8bと、に分けて構成することとしてもよい。
そして、演算用マイコン8bは測定指令信号生成部6から測定指令信号が生成されたときにのみ起動することとして、演算用マイコン8bが消費する電力を節約することとしてもよい。
【0068】
図12は、図1に示す工作機械1の演算用マイコン8bの自動電源ON/OFF機能を説明するフローチャートである。
ステップS11及びS12のループにおいて、制御用マイコン8aは、測定指令信号生成部6からの測定指令信号の受信を待つ。一方、ステップS21及びS22においてのループ、演算用マイコン8bは、制御用マイコン8aからの起動命令をスリープモードで待つ。
【0069】
制御用マイコン8aが測定指令信号生成部6から測定指令信号を受信すると、処理はS13に進み、制御用マイコン8aに起動命令を送信した後、ステップS14にて、アンプユニット20やその内部のセンサ駆動回路21に通電して、渦電流センサ10からの検出信号を検波回路70を介して測定する。
【0070】
一方、演算用マイコン8bは、制御用マイコン8aから起動命令を受信すると、ステップS23において起動を行い、ステップS24にて内部のイニシャライズ処理を行った後、制御用マイコン8aによって渦電流センサ10からの検出信号の測定が終了するまで待機する。
制御用マイコン8aは、測定が終了すると、ステップS15において測定データを演算用マイコン8bに送信し、次の測定のための測定指令信号を待つためにステップS11に戻る。
【0071】
そして演算用マイコン8bは、ステップS25において制御用マイコン8aから送信された測定データを受信して、ステップS26においてツールホルダ3の装着状態の異常を判定するための計算を行う。そしてステップS27において判定結果を、表示装置やプリンタまたはネットワーク上に出力する。
そして、ステップS21に戻って、次の起動命令の受信があるまでスリープモードで待機する。なお、ここで演算用マイコン8bは、スリープモードで待機するのではなく、完全にシャットダウンしてもよい。
【0072】
上述の通り、本発明の工作機械1によって、渦電流センサ10等の変位センサが破損した場合に、現場で容易に交換することが可能となる。しかしながら、変位センサ10の破損を防止して交換作業そのものを低減するために、変位センサ10の先端部に、異物衝突の際にその衝撃を回避するための保護ブロックを装着することが好適である。
図13の(A)に変位センサ10の先端を保護するための保護ブロックの第1実施例の斜視図を示し、図13の(B)に変位センサ10の先端を保護するための保護ブロックの側断面図を示し、図13の(C)に変位センサ10の先端を保護するための保護ブロックの第2実施例の斜視図を示す。
【0073】
図13の(A)及び(B)に示すように、保護ブロック14は、中空の柱状形状を有するブロックからなり、その中空部分に変位センサ10の先端を収容することにより、変位センサ10の先端に異物が衝突したときの衝撃を回避する。
変位センサ10として上述の渦電流センサを使用する場合には、渦電流センサは金属との距離に応じてインピーダンス値が変化するセンサであるため、保護ブロック14を非金属性の材料(例えばポリエーテル・エータル・ケトン(PEEK)などのプラスチックエンジニアなどの樹脂材料)によって形成する必要がある。
【0074】
また、変位センサ10の先端部は、工具2により加工されるワークから飛来する切り屑によって損傷を生じる場合もある。したがって図13の(C)に示すように保護ブロック14の先端部にもまたカバー15を設けて、保護効果を増大させることも好適である。渦電流センサを使用する場合には、このカバー15もまた、非金属材料を使用する。
また、渦電流センサ10自身のカバー部材もまた、PEEKなどのエンジニアプラスチックを使用して形成してもよい。
【0075】
なお、上記渦電流センサ10には、測定対象物である金属表面に渦電流を発生させるためのコイルが内蔵されているが、従来の渦電流センサ10は、このコイルをボビンに電線を巻き取る方式で製造されており、巻き線ミスや巻きムラなどによって、渦電流センサの特性にばらつきを生じていた。したがって、本発明の工作機械1に使用される、渦電流センサ10を、コイルと同等のインピーダンス応答が得られるようなパターンが施された配線板を用いて実現しても良い。このようなパターンを施す配線板としてはガラス基盤やフレキ基盤などを用いてもよい。
【0076】
また、渦電流センサ10をアクチュエータなどの駆動手段によって移動させ、ツールフランジ3Bとの距離を変更できるように工作機械1に取り付け、ツールフランジ3Bからの距離を変化させつつ、渦電流センサ10からの検出信号を取得して、その結果を分析することにより、マイコン8により渦電流センサ10やアンプユニット20の良否判定を行うこととしてもよい。
【0077】
図1に示す構成例では、渦電流センサ10とアンプユニット20とをコネクタ11により接続していたが、渦電流センサ10のユニット自身に、発振回路や無線通信機能を持たせることにより、渦電流センサ10とアンプユニット20とを無線にて接続することとしてもよい。また、測定指令信号生成部6とマイコン8との信号送受信も無線にて行うこととしてもよい。
また、アンプユニット20は、図示しないパソコン等のコンピュータ装置との間の無線通信機能を備えることとしてよい。アンプユニット20を無線LAN環境に接続し、例えば不具合発生時、不具合情報を、社内の他の箇所(例えば事務室)にいる担当者の端末に自動的に送信する自動送信機能を付加することとしてもよい。
【0078】
また、無線LAN環境によりアンプユニット20と接続されるパソコン(図示せず)を用いて、過去最近の測定データの履歴を収集し、常時保存及び更新してもよい。異常が発生したときにこの履歴を解析することにより原因の特定に役立てることとしてよい。
さらに、渦電流センサ10とアンプユニット20とにそれぞれバーコード(2次元バーコード)を付加して、これらの組み合わせをバーコードにより管理してもよい。
【0079】
渦電流センサ10は、主軸4が取り付けられたヘッド5に複数設けてよい。例えば渦電流センサ10を複数平行して設置する。このようにセンサを設置し、複数のセンサ間における検出値の差を求めることにより、ワークが傾いて装着されている場合にワークの姿勢を姿勢することが可能となり、またはワークの形状等の測定も可能となる。このように複数の渦電流センサ10を設ける場合には、これらの複数のセンサにこれらの間で通信を可能とする通信機能を設けてもよい。
【0080】
渦電流センサ10やアンプユニット20に温度センサを設けて、アナログ素子の温度上昇による測定値の変動をキャンセルしてもよい。このためマイコン8には、予め温度センサの各検出値とそのときの補正値とを、実験又は理論値から予め求めて記憶しておき、測定の際に温度センサの検出値を読み取って、この検出値に基づき過電流センサ10から得た検出値を補正することとしてもよい。
【0081】
マイコン8に音声識別機能を設け、アンプユニットの調整、測定、工具2の登録などの工作機械1の各種動作を、作業者の音声による指令により自動的に開始するように構成してもよい。また、マイコン8に音声出力機能を設け、渦電流センサ10の取り付けの際のギャップ調整時に、現在のギャップ量を音声により作業者に通知することにより、取り付け作業を容易にしてもよい。
【0082】
以上、本発明を特にその好ましい実施の形態を参照して詳細に説明したが、本発明の容易な理解のために、本発明の具体的な形態を以下に追記する。
【0083】
(追記1)
工具が取り付けられたツールホルダを主軸に装着し、該主軸を回転駆動してワークを加工する工作機械であって、前記主軸に装着したツールホルダのフランジ外周面との距離に応じてインピーダンスが変化する変位センサと、前記変位センサに交流信号を供給する発振回路と、を備え、前記交流信号が印加された前記変位センサに現れる信号レベルから、前記ツールホルダの前記主軸への装着状態の異常を判定する工作機械において、
前記変位センサに接続されて、前記変位センサとともに共振回路を成すための同調用回路であって、その内部インピーダンス定数がディジタル信号によって変更可能な同調用回路と、
前記同調用回路にディジタル信号を出力することにより、前記内部インピーダンス定数を調整するインピーダンス調整回路と、
を備えることを特徴とする工作機械。
(追記2)
前記インピーダンス調整回路は、前記同調用回路の内部インピーダンス定数を調整して、前記変位センサと前記同調用回路とから成る回路を共振回路とすることを特徴とする追記1に記載の工作機械。
(追記3)
前記インピーダンス調整回路は、前記変位センサに現れる信号レベルを検出しながら前記同調用回路の内部インピーダンス定数を調整して、前記変位センサに現れる信号レベルを所定レベル以上とし、前記内部インピーダンス定数の変化に対する前記信号レベルの変化が所定値以下とすることを特徴とする追記1に記載の工作機械。
(追記4)
前記同調用回路は、複数のインピーダンス素子と、その1つ又は複数を選択して前記変位センサに接続可能なスイッチと、を備えることを特徴とする追記1〜3のいずれか1項に記載の工作機械。
(追記5)
前記インピーダンス素子は、容量素子であることを特徴とする追記4に記載の工作機械。
(追記6)
前記同調用回路は、可変容量素子を備える追記1〜3のいずれか1項に記載の工作機械。
(追記7)
前記同調用回路は、積分回路を用いた容量性回路と、この容量性回路の容量を変更可能な可変抵抗素子と、を備える追記1〜3のいずれか1項に記載の工作機械。
(追記8)
前記同調用回路は、容量素子と、可変誘導素子を備える追記1〜3のいずれか1項に記載の工作機械。
(追記9)
前記可変誘導素子は、複数の誘導素子と、その1つ又は複数を選択して前記変位センサに接続可能なスイッチと、を備えることを特徴とする追記8に記載の工作機械。
(追記10)
前記可変誘導素子は、積分回路を用いた容量性回路と、この誘導性回路のインダクタンスを変更可能な可変抵抗素子と、を備える追記8に記載の工作機械。
(追記11)
前記可変抵抗素子は、ディスクリートデバイスで構成されることを特徴とする追記7又は10に記載の工作機械。
(追記12)
前記発振回路を第1の発振回路とし、また該第1の発振回路から供給される前記交流信号を第1の交流信号とし、
前記同調用回路は、前記変位センサと前記第1の発振回路との間に接続され、
前記工作機械は、
前記第1の交流信号と異なる周波数の第2の交流信号を供給する第2の発振回路と、
前記第1の発振回路と前記同調用回路との間に接続され、前記第1の交流信号と前記第2の交流信号とを重畳して、この重畳信号を前記同調用回路に供給する重畳回路と、
前記同調用回路を介した前記重畳信号から、前記第2の交流信号をモニタ信号として抽出するモニタ信号抽出回路と、
前記モニタ信号の信号レベルに基づき、前記可変抵抗素子の抵抗値を増減するフィードバック回路と、
をさらに備えることを特徴とする、追記7、10又は11に記載の工作機械。
(追記13)
前記発振回路から供給される前記交流信号を第1の交流信号とし、
前記同調用回路は、前記変位センサと前記発振回路との間に接続され、
前記発振回路は、第1の交流信号と異なる周波数の第2の交流信号を、第1の交流信号に重畳して前記同調用回路に供給し、
前記工作機械は、
前記同調用回路を介した前記重畳信号から、前記第2の交流信号をモニタ信号として抽出するモニタ信号抽出回路と、
前記モニタ信号の信号レベルに基づき、前記可変抵抗素子の抵抗値を増減するフィードバック回路と、
をさらに備えることを特徴とする、追記7、10又は11に記載の工作機械。
(追記14)
前記インピーダンス調整回路は、前記発振回路の発振周波数を変えて、前記変位センサと前記同調用回路とから成る回路のインピーダンスを調整することを特徴とする追記1〜13のいずか1項に記載の工作機械。
(追記15)
工具が取り付けられたツールホルダを主軸に装着し、該主軸を回転駆動してワークを加工する工作機械であって、前記主軸に装着したツールホルダのフランジ外周面との距離に応じてインピーダンスが変化する変位センサと、前記変位センサに交流信号を供給する発振回路と、を備え、前記交流信号が印加された前記変位センサに現れる信号レベルから、前記ツールホルダの前記主軸への装着状態の異常を判定する工作機械において、
前記変位センサに接続されて、前記変位センサとともに共振回路を成すための同調用回路と、
前記発振回路の発振周波数を調整して、前記変位センサと前記同調用回路とから成る回路のインピーダンスを調整するための、インピーダンス調整回路と、
を備えることを特徴とする工作機械。
(追記16)
前記インピーダンス調整回路は、前記変位センサと前記同調用回路とから成る回路が共振回路となるように、前記発振回路の発振周波数を調整することを特徴とする追記15に記載の工作機械。
(追記17)
前記変位センサと前記同調用回路とは、着脱可能なコネクタにより接続されることを特徴とする追記1〜16のいずれか1項に記載の工作機械。
(追記18)
工具が取り付けられたツールホルダを主軸に装着し、該主軸を回転駆動してワークを加工する工作機械であって、前記主軸に装着したツールホルダのフランジ外周面との距離に応じてインピーダンスが変化する変位センサと、前記変位センサに流す交流信号を供給する発振回路と、を備え、前記変位センサに流れる前記交流信号のレベルから、前記ツールホルダの前記主軸への装着状態の異常を判定する工作機械において、
前記変位センサに接続されて、前記変位センサとともに共振回路を成すための同調用回路を備え、
前記変位センサと前記同調用回路とは、着脱可能なコネクタにより接続されることを特徴とする工作機械。
(追記19)
前記変位センサと、前記ツールホルダのフランジ外周面との距離の測定を指令する測定指令信号を生成する測定指令信号生成手段と、
前記測定指令信号生成手段から、前記測定指令信号を受信するまで、前記変位センサへの前記交流信号の供給を停止する信号停止手段と、
を備えることを特徴とする追記1〜18のいずれか一項に記載の工作機械。
(追記20)
前記変位センサは渦電流センサであり、
前記工作機械は、可変誘導素子と、該可変誘導素子と前記渦電流センサとを切り替えるための切替器と、をさらに備えることを特徴とする追記1〜19のいずれか1項に記載の工作機械。
(追記21)
工具が取り付けられたツールホルダを主軸に装着し、該主軸を回転駆動してワークを加工する工作機械であって、前記主軸に装着したツールホルダのフランジ外周面との距離に応じてインダクタンスが変化する渦電流センサと、前記渦連流センサに交流信号を供給する発振回路と、を備え、前記交流信号が印加された前記渦電流センサに現れる信号レベルから、前記ツールホルダの前記主軸への装着状態の異常を判定する工作機械において、
可変誘導素子と、
該可変誘導素子と前記渦電流センサとを切り替えるための切替器と、
をさらに備える工作機械。
【産業上の利用可能性】
【0084】
本発明は、回転軸を有する工作機械装置、特に、マシニングセンタ(以下、「MC」と略称でいう)等のツールホルダを使用する工作機械に好適に利用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0085】
【図1】本発明に係る工作機械の第1実施例の概略構成図である。
【図2】変位センサが接続されたセンサ駆動回路の第1構成例を示す構成図である。
【図3】図2に示す同調用回路の好適な調整状態を説明する図である。
【図4】渦電流センサの交換手順のフローチャートである。
【図5】図2に示すインピーダンス調整部による調整方法の説明図である。
【図6】(A)は可変容量回路の第1構成例を示す図であり、(B)は可変容量回路の第2構成例を示す図であり、(C)は可変容量回路の第3構成例を示す図である。
【図7】(A)は可変容量回路の第4構成例を示す図であり、(B)は(A)の可変誘導素子の第1構成例を示す図であり、(C)は(A)の可変誘導素子の第2構成例を示す図である。
【図8】可変容量回路の第5構成例を示す図である。
【図9】センサ駆動回路の第2構成例を示す構成図である。
【図10】センサ駆動回路の第3構成例を示す構成図である。
【図11】本発明に係る工作機械の第2実施例の概略構成図である。
【図12】図1に示す工作機械の自動電源ON/OFF機能を説明するフローチャートである。
【図13】渦電流センサの保護ブロックの説明図である。
【図14】ツールホルダの装着状態を示す断面図である。
【図15】ツールホルダの装着状態を示す説明図である。
【符号の説明】
【0086】
1 工作機械
2 工具
3 ツールホルダ
3B ツールフランジ
4 主軸
10 変位センサ
11 コネクタ
20 アンプユニット
21 センサ駆動回路
70 検波回路
【特許請求の範囲】
【請求項1】
工具が取り付けられたツールホルダを主軸に装着し、該主軸を回転駆動して被加工物を加工する工作機械であって、前記被加工物との距離を検出するセンサヘッドと、前記センサヘッドから入力される信号に基づき距離情報を生成するアンプユニットと、により構成された変位検出手段を備える工作機械において、
前記変位検出手段は、前記センサヘッドと前記アンプユニットとの間のチューニングを自動で行うことを特徴とする工作機械。
【請求項2】
前記センサヘッドは、前記被加工物との距離に応じてインピーダンスが変化することを特徴とする請求項1に記載の工作機械。
【請求項3】
前記センサヘッドは、前記被加工物との距離に応じてインダクタンスが変化することを特徴とする請求項2に記載の工作機械。
【請求項4】
前記アンプユニットは、前記センサヘッドに印加する交流信号を供給する発振回路と、インピーダンス回路と、を備え、
前記センサヘッドと前記インピーダンス回路とからなる共振回路を構成して、前記センサヘッドのインピーダンス変化に基づき前記被加工物の変位を検出する請求項2に記載の工作機械。
【請求項5】
前記アンプユニットは、前記インピーダンス回路として可変インピーダンス回路を備え、前記センサヘッドが検出するインピーダンスと、前記可変インピーダンス回路とが共振するように、前記可変インピーダンス回路のインピーダンスを自動的に調整すること、を特徴とする請求項4に記載の工作機械。
【請求項6】
前記アンプユニットは、前記可変インピーダンス回路のインピーダンスの自動調整を行うインピーダンス調整回路をさらに備えることを特徴とする請求項5に記載の工作機械。
【請求項7】
前記可変インピーダンス回路は、ディジタル信号によってそのインピーダンスが可変制御されることを特徴とする請求項6に記載の工作機械。
【請求項8】
前記インピーダンス調整回路は、前記可変インピーダンス回路にディジタル信号を出力して、前記可変インピーダンス回路のインピーダンスを調整することを特徴とする請求項7に記載の工作機械。
【請求項9】
前記インピーダンス調整回路は、前記センサヘッドが所定の検出状態に置かれた際に前記センサヘッドから検出されるインピーダンスに基づいて、前記可変インピーダンス回路のインピーダンスを調整する請求項6に記載の工作機械。
【請求項10】
前記インピーダンス調整回路は、前記センサヘッドから、該センサヘッドのインピーダンスに応じて検出される電気信号に基づいて、前記可変インピーダンス回路のインピーダンスを調整する請求項9に記載の工作機械。
【請求項11】
前記インピーダンス調整回路は、前記電気信号が所定の条件を満たすように、前記可変インピーダンス回路のインピーダンスを調整する請求項10に記載の工作機械。
【請求項12】
前記電気信号は電圧信号であることを特徴とする請求項10又は11に記載の工作機械。
【請求項13】
前記アンプユニットは、前記可変インピーダンス回路の内部インピーダンス定数を変更することにより、前記可変インピーダンス回路のインピーダンスを調整することを特徴とする請求項5に記載の工作機械。
【請求項14】
前記可変インピーダンス回路は、複数のインピーダンス素子と、その1つ又は複数を選択して前記変位センサに接続可能なスイッチと、を備えることを特徴とする請求項5〜13のいずれか一項に記載の工作機械。
【請求項15】
前記インピーダンス素子は、容量素子であることを特徴とする請求項13又は14に記載の工作機械。
【請求項16】
前記発振回路及び前記交流信号を、それぞれ第1の発振回路及び第1の交流信号とし、
前記アンプユニットは、
前記第1の交流信号と異なる周波数の第2の交流信号を供給する第2の発振回路と、
前記第1の交流信号及び第2の交流信号を重畳して、この重畳信号を前記インピーダンス回路に供給する重畳回路と、
前記インピーダンス回路を経由した前記重畳信号から、前記第2の交流信号をモニタ信号として抽出するモニタ信号抽出回路と、を備え、
前記モニタ信号の信号レベルに基づき、前記インピーダンス回路のインピーダンス定数を補償する補償回路と、
をさらに備えることを特徴とする、請求項4に記載の工作機械。
【請求項17】
前記センサヘッドと前記アンプユニットとを着脱可能に接続するコネクタを、さらに備えることを特徴とする請求項1〜16のいずれか一項に記載の工作機械。
【請求項18】
前記センサヘッドと、前記ツールホルダのフランジ外周面との距離の測定を指令する測定指令信号を生成する測定指令信号生成手段と、
前記測定指令信号生成手段から前記測定指令信号を受信するまで、前記センサヘッドへの前記交流信号の供給を停止する信号停止手段と、
を備えることを特徴とする請求項1〜17のいずれか一項に記載の工作機械。
【請求項1】
工具が取り付けられたツールホルダを主軸に装着し、該主軸を回転駆動して被加工物を加工する工作機械であって、前記被加工物との距離を検出するセンサヘッドと、前記センサヘッドから入力される信号に基づき距離情報を生成するアンプユニットと、により構成された変位検出手段を備える工作機械において、
前記変位検出手段は、前記センサヘッドと前記アンプユニットとの間のチューニングを自動で行うことを特徴とする工作機械。
【請求項2】
前記センサヘッドは、前記被加工物との距離に応じてインピーダンスが変化することを特徴とする請求項1に記載の工作機械。
【請求項3】
前記センサヘッドは、前記被加工物との距離に応じてインダクタンスが変化することを特徴とする請求項2に記載の工作機械。
【請求項4】
前記アンプユニットは、前記センサヘッドに印加する交流信号を供給する発振回路と、インピーダンス回路と、を備え、
前記センサヘッドと前記インピーダンス回路とからなる共振回路を構成して、前記センサヘッドのインピーダンス変化に基づき前記被加工物の変位を検出する請求項2に記載の工作機械。
【請求項5】
前記アンプユニットは、前記インピーダンス回路として可変インピーダンス回路を備え、前記センサヘッドが検出するインピーダンスと、前記可変インピーダンス回路とが共振するように、前記可変インピーダンス回路のインピーダンスを自動的に調整すること、を特徴とする請求項4に記載の工作機械。
【請求項6】
前記アンプユニットは、前記可変インピーダンス回路のインピーダンスの自動調整を行うインピーダンス調整回路をさらに備えることを特徴とする請求項5に記載の工作機械。
【請求項7】
前記可変インピーダンス回路は、ディジタル信号によってそのインピーダンスが可変制御されることを特徴とする請求項6に記載の工作機械。
【請求項8】
前記インピーダンス調整回路は、前記可変インピーダンス回路にディジタル信号を出力して、前記可変インピーダンス回路のインピーダンスを調整することを特徴とする請求項7に記載の工作機械。
【請求項9】
前記インピーダンス調整回路は、前記センサヘッドが所定の検出状態に置かれた際に前記センサヘッドから検出されるインピーダンスに基づいて、前記可変インピーダンス回路のインピーダンスを調整する請求項6に記載の工作機械。
【請求項10】
前記インピーダンス調整回路は、前記センサヘッドから、該センサヘッドのインピーダンスに応じて検出される電気信号に基づいて、前記可変インピーダンス回路のインピーダンスを調整する請求項9に記載の工作機械。
【請求項11】
前記インピーダンス調整回路は、前記電気信号が所定の条件を満たすように、前記可変インピーダンス回路のインピーダンスを調整する請求項10に記載の工作機械。
【請求項12】
前記電気信号は電圧信号であることを特徴とする請求項10又は11に記載の工作機械。
【請求項13】
前記アンプユニットは、前記可変インピーダンス回路の内部インピーダンス定数を変更することにより、前記可変インピーダンス回路のインピーダンスを調整することを特徴とする請求項5に記載の工作機械。
【請求項14】
前記可変インピーダンス回路は、複数のインピーダンス素子と、その1つ又は複数を選択して前記変位センサに接続可能なスイッチと、を備えることを特徴とする請求項5〜13のいずれか一項に記載の工作機械。
【請求項15】
前記インピーダンス素子は、容量素子であることを特徴とする請求項13又は14に記載の工作機械。
【請求項16】
前記発振回路及び前記交流信号を、それぞれ第1の発振回路及び第1の交流信号とし、
前記アンプユニットは、
前記第1の交流信号と異なる周波数の第2の交流信号を供給する第2の発振回路と、
前記第1の交流信号及び第2の交流信号を重畳して、この重畳信号を前記インピーダンス回路に供給する重畳回路と、
前記インピーダンス回路を経由した前記重畳信号から、前記第2の交流信号をモニタ信号として抽出するモニタ信号抽出回路と、を備え、
前記モニタ信号の信号レベルに基づき、前記インピーダンス回路のインピーダンス定数を補償する補償回路と、
をさらに備えることを特徴とする、請求項4に記載の工作機械。
【請求項17】
前記センサヘッドと前記アンプユニットとを着脱可能に接続するコネクタを、さらに備えることを特徴とする請求項1〜16のいずれか一項に記載の工作機械。
【請求項18】
前記センサヘッドと、前記ツールホルダのフランジ外周面との距離の測定を指令する測定指令信号を生成する測定指令信号生成手段と、
前記測定指令信号生成手段から前記測定指令信号を受信するまで、前記センサヘッドへの前記交流信号の供給を停止する信号停止手段と、
を備えることを特徴とする請求項1〜17のいずれか一項に記載の工作機械。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【公開番号】特開2006−320979(P2006−320979A)
【公開日】平成18年11月30日(2006.11.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−144244(P2005−144244)
【出願日】平成17年5月17日(2005.5.17)
【出願人】(000151494)株式会社東京精密 (592)
【出願人】(598060350)株式会社東精エンジニアリング (33)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成18年11月30日(2006.11.30)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年5月17日(2005.5.17)
【出願人】(000151494)株式会社東京精密 (592)
【出願人】(598060350)株式会社東精エンジニアリング (33)
【Fターム(参考)】
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