説明

工具、カメラ及び光源を装備したロボット装置

ロボット装置は、一つ以上の工具(5、15)と、カメラ(9)と、光源(13)とを備えており、該光源は、カメラ(9)の視界を異なる方向から照射するために、カメラ(9)とは独立して動かされることが可能である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光源と、被加工品の幾何学的特性を検知するためのカメラと、被加工品に対して操作を行うための少なくとも一つの工具、とが設けられたロボット装置に関する。このようなロボット装置は、例えば、特許文献1に開示されている。
【背景技術】
【0002】
この既知のロボット装置では、光源とカメラとは一緒に、しかし工具とは独立して、多関節ロボットアームの先端に取り付けられ、空間的に複数の自由度を持たせて配置され、それにより光源は機械加工される被加工品を照射し、カメラは被加工品の写真を記録する。
【0003】
この既知の装置では、カメラと光源とは互いに相対的に移動できない。実際、光源は、投影機を用いて、光源を移動せずに、カメラの視界における異なる帯状の領域を選択的に照射可能だが、視界において物体の特定点が照射される方向は、光源とカメラとが一緒に移動しないでいる間は、常に同じである。このことは、特に、対象となる物体の領域が、光源と対象領域との間に置かれた物体によって陰になる場合、カメラにより記録される画像を評価することを非常に困難にし得る。
【0004】
【特許文献1】特開平07−286820号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、被加工品の種々の幾何学的形状又は被加工品が設置される環境に関して被加工品を検知するためにカメラにとって最適な視界条件を実現することが可能なロボット装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この目的は、視界を異なる方向から照射するために、光源とカメラとが、互いに独立して動かされることにより達成される。すなわち、光源とカメラとが互いに対して所与の位置にある時に、対象となる被加工品の領域の照明が不十分である場合、光源は、この領域の照射を改善するために、カメラとは独立して動かされ得る。光源とカメラとの互いの相対的位置合わせの多様性は、さらに、カメラにより記録された画像から三次元情報を取得する過程を容易にする。これは、物体上への照射方向の変化に対応した影の形状の変化により、カメラに接続可能な画像評価用の電子装置が、元々暗い表面と影の領域を区別することが可能になるからである。
【0007】
カメラと、光源と、さらにカメラ及び光源を互いに相対的に動かすための少なくとも一つの第1調節装置と、を備えたサブアセンブリは、好ましくは第2調節装置によって共通の基板に対して動かされることが可能である。このように、例えば、カメラと光源との互いに対する標準位置とは、検査される被加工品のほとんどの幾何学形状について有用な画像を供給する位置であり、これは第1調節装置において設定されることが可能であり、カメラの視界もしくは視野角を変化させるために、第2調節装置のみを操作することが可能である。このカメラ及び光源は一緒に動くので、視差効果とは別に、光源はカメラの視界に合わせて位置合わせされたままであり、その動作を特に制御する必要はない。
【0008】
カメラ及び光源のうち一方は、好ましくは第2調節装置に固定的に接続され、それによってその位置及び向きは、完全に第2調節装置の位置だけにより定められ、一方光源のカメラに対する位置は、第1調節装置の位置によって規定される。
【0009】
さらに、カメラと、少なくとも一つの工具と、さらにカメラ及び工具を互いに相対的に動かすための少なくとも一つの第3調節装置とを備えたサブアセンブリは、第4調節装置によって共通の基板に対して動かされることが可能である。ここでも、カメラ及び工具のうちそれぞれ一方は、好ましくは第4調節装置に固定的に接続され、それによってその位置及び向きは完全に第4調節装置の位置だけにより定められ、第3調節装置の位置は、カメラと工具との互いに対する位置を固定する。
【0010】
本発明のロボット装置の工具は、好ましくは少なくとも一つの把持工具と、被加工品に対して任意の所望の機械加工工程を実行するための別の工具とを含む。把持工具は、ここでは、被加工品を一時的に保持し、必要があれば移動するための任意の望ましい工具を含むと解釈され、この把持工具は、特に、そのままでは光源からの光の自由な進入又はカメラの視界あるいは被加工品上の対象位置への別の工具の接近を妨害する障害物を、つかんで(少なくとも一時的に)取り除くために、使用することが可能である。
【0011】
別の工具のカメラに対する移動性は制限されることが可能である一方で、把持工具とカメラとは、相対的動作において出来る限り高い自由度を有することが望ましく、それによって把持工具は、その一部がカメラの視界を損なうことなく障害物を除去することが可能である。その結果、把持工具及びカメラは、好ましくは互いに独立して移動可能な支持体に取り付けられ、換言すると、把持工具とカメラとが互いに対して動かされることが可能である自由度は、カメラ及び把持工具のロボット装置の静止部に対する自由度より大きい。
【0012】
本発明のさらなる特徴及び利点は、添付の図を参照して、例示された実施形態の以下の記述から明らかである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
図1は、本発明の基本的原理の概略図を示す。例えば作業場の床上に取り付けられた静止基板1は、多数の関節部材3を備えたロボットアーム2を支える。基板1と部材3との間又は2つの部材3同士の間の関節4は、少なくとも一、好ましくは多数の、回転自由度を有し、アーム2の末端に取り付けられた工具5を全三方向の空間位置に配置しかつ旋回させるため、制御装置(図示せず)によって駆動されることが可能であり、アーム2の到達距離の範囲内で所望に応じてこれを行う。工具5は、被加工品6を機械加工するための任意の所望の既知の適切なタイプ、例えば、つかみ具、ドリル、フライス盤、溶接工具、等であることが可能である。
【0014】
第2基板7は、ロボットアーム2の設計と同じ設計が可能な、第2のロボットアーム8を支える。ロボットアーム8の自由端に取り付けられるのはカメラ9であり、このカメラ9は、被加工品6の画像を制御装置へ供給するために、制御装置に制御されて所望の空間に配置されることが可能であり、被加工品6と位置合わせされることが可能である。カメラ9から突き出ているのはレール10であり、その上で往復台11は、制御装置に制御されて動かされることが可能である。往復台11は、同様に制御可能な関節12を用いて、光源13を支える。光源13は、図に示すような、主要光線方向Bを持つ光錐を有する反射器等を備えた単純なスポットライトであることが可能で、往復台11を移動させかつ関節12を旋回させることで、カメラ9の視界方向に対して相対的に様々な角度から、被加工品6との位置を調節されることが可能である。レール10は好ましくは、カメラ9の光軸Aを中心として回転されることが可能であり、光源13主要光線方向Bとカメラ9の光軸Aとの間の角度だけでなく、この2つの方向により規定されるの平面の位置も、変動可能である。ロボットアーム8は第1調節装置を備え、その制御装置によりカメラ9と光源13とを互いに固定された位置関係のまま移動させることが可能である一方で、往復台11及び関節12は第2調節装置の一部であり、これによって、カメラ9の所与の位置及び向きにおいて、対象となる被加工品6の詳細がそれぞれ最も効果的に探知されることを可能にする照射をみつけるために、カメラ9の視界への照射は変えられることが可能である。
【0015】
ロボット装置の好ましい発展形態を図2に示す。このロボット装置で、図1で説明された部品に既に対応する部品は、同じ参照番号を有し、図1の構成と相違ない場合、新ためて説明しない。ロボットアーム8の自由端は、カメラ9を支えつつ、ここでは第3ロボットアーム14の基板を形成し、その第3ロボットアーム14の自由端に把持工具15が配置される。把持工具15は、通常の方法では、被加工品6又はその部分をつかむために、互いに相対的に動かされることが可能な多数の指を有し、つかまれる部品が強磁性体である場合は電磁石を含むようにすることも可能であり、さらに吸引源に接続された吸着カップ又は物体を一時的に保持するための他の望ましい装置を有するようにすることも可能である。制御装置が、カメラ9によって供給された画像内に、対象となる被加工品6の位置に対して視界を妨げる又はこの位置を陰にする物体を識別した場合、制御装置は、関連物体を一時的に取り除くように把持工具15を駆動し、例えば、検査される被加工品に接続されたホースを横に押しのける、あるいは、それに接続された差込式の接続子を引き抜く。被加工品が検査された後、差込式接続子は再び把持工具15によって差し込まれる。
【0016】
光源13はここでは、第3静止基板16の上に第4ロボットアーム17を用いて取り付けられ、これに対して把持工具15は、カメラ9に連結されて動かない。従って、ロボットアーム14のカメラ9周辺の移動性を制限しない。別の方法として、把持工具15と光源13とは両方とも、ロボットアーム8上に、カメラ9に対して移動可能に、取り付けられるようにすることも勿論可能である。
【0017】
図3に示す構成では、工具5とカメラ9とが第1ロボットアーム2の自由端に取り付けられる。カメラ9は、被加工品と相互作用する工具5の先端に定常的に位置合わせされるように、工具5に固定的に接続されることが可能である。光源13と、ロボットアーム14を介して光源13に接続される把持工具15とは、第2ロボットアーム上に配置される。アーム14が動かされない限り、把持工具15は光源の全ての動作に追従し、光源とカメラ9により観察される被加工品6の表面との間、もしくはこの表面とカメラ9との間の、障害物を取り除くために、必要な場合常にこうして光源に近接して配置される。
【0018】
図4はロボット装置の概略図を示し、この場合、工具5を支えるアーム2と、カメラ9及び光源13を支えるアーム8とが、クラブトロリ19のレール18上に取り付けられ、その一部がガントリー上部構造のレール20上を移動可能である。アーム2、8の操作の構成及びモードは、ここでは図1の場合と同じである。しかし所望に応じて、この例示された実施形態のアーム2、8の場合の関節4の数は、図1と比べて削減されるようにすることも可能である。これは、レール18、20に沿った移動が、平行移動の2自由度を補足するからである。
【0019】
ロボットアームは、図示しない改良に従って、車両上に一緒に取り付けられるようにすることも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】カメラと、光源と、工具とが、静止基板上に取り付けられたロボットアームによってそれぞれ支えられる、本発明のロボット装置の第1の例示された実施形態を示す。
【図2】2つの工具を装備した、図1のロボット装置の改良形態を示す。
【図3】2つの工具を装備したロボット装置の第2の改良形態を示す。
【図4】カメラと、光源と、工具とを支えるロボットアームが、ガントリー上に取り付けられる、ロボット装置の第3の改良形態を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一つ以上の工具(5、15)と、カメラ(9)と、前記カメラ(9)の視界を照射するための光源(13)とを備えたロボット装置であって、
前記光源(13)と前記カメラ(9)とは、視界を異なる方向から照射するために、互いに独立して動かされることが可能であることを特徴とする、ロボット装置。
【請求項2】
前記カメラ(9)と、前記光源(13)と、さらにカメラ(9)及び光源(13)を互いに相対的に動かすための少なくとも一つの第1調節装置(10、11、12)とを備えたサブアセンブリは、第2調節装置(8)によって共通の基板に対して動かされることが可能であることを特徴とする、請求項1に記載のロボット装置。
【請求項3】
前記カメラ(9)及び光源(3)のうち一方は、前記第2調節装置(8)に固定的に接続されることを特徴とする、請求項2に記載のロボット装置。
【請求項4】
前記カメラ(9)と、少なくとも一つの前記工具(15)と、さらにカメラ(9)及び工具(15)を互いに相対的に動かすための少なくとも一つの第3調節装置(14)とを備えたサブアセンブリは、第4調節装置(8)によって共通の基板に対して動かされることが可能であることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか一項に記載のロボット装置。
【請求項5】
前記カメラ(9)及び工具(15)のうち一方は、前記第4調節装置(8)に固定的に接続されることを特徴とする、請求項4に記載のロボット装置。
【請求項6】
前記工具(5、15)は、少なくとも一つの把持工具(15)と別の工具(5)とを含むことを特徴とする、請求項1〜5のいずれか一項に記載のロボット装置。
【請求項7】
前記把持工具(15)と前記カメラ(9)とが互いに対して動かされることが可能な自由度は、前記カメラ(9)及び前記把持工具(15)の、前記ロボット装置の静止部に対する自由度より大きいことを特徴とする、請求項6に記載のロボット装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公表番号】特表2007−527800(P2007−527800A)
【公表日】平成19年10月4日(2007.10.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−551743(P2006−551743)
【出願日】平成17年1月13日(2005.1.13)
【国際出願番号】PCT/EP2005/000241
【国際公開番号】WO2005/075158
【国際公開日】平成17年8月18日(2005.8.18)
【出願人】(598051819)ダイムラークライスラー・アクチェンゲゼルシャフト (1,147)
【Fターム(参考)】