説明

工具ホルダチェンジャー制御プログラム作成装置

【課題】 一つのスケジュールの実行の前に複数の工具ホルダの搬出または搬入が必要な場合に、工具ホルダを運ぶ移動体の往復動作回数を低減でき、効率の良い搬入搬出が行える工具ホルダチェンジャー制御プログラム作成装置を提供する。
【解決手段】プログラム作成装置35は、仮搬入搬出情報作成手段36と、複数同時搬送化手段38とを有し、仮搬入搬出情報作成手段は、スケジュール別使用工具ホルダ情報、およびスケジュール実行順情報から、単独搬出指令および単独搬入指令を仮の実行順に並べた情報である仮搬入搬出順情報を作成する。複数同時搬送化手段は、仮搬入搬出順情報において一つのスケジュール に2個以上の単独搬出、または単独搬入指令がある場合など、所定の複数同時搬送可能条件を充足する場合に、これらの指令よりも前にある単独搬出指令または単独搬入指令に繰上げ結合して複数同時搬入指令、複数同時搬出指令、または複数同時交換指令とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、パンチプレス等の板材加工機や、その他の加工機に対して、タレット等の工具ホルダを交換する工具ホルダチェンジャーの制御プログラムの作成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、複数の工具を交換使用可能としたパンチプレスとして、タレット式のものが一般的である。しかし、タレットパンチプレスでは、タレット内に保持できるパンチ工具の種類が限られ、多彩な加工が行えない。
このような課題を解消するものとして、複数のパンチ工具を搭載したタレット形式の工具ホルダを、旋回可能な工具ホルダマガジンの円周方向複数箇所に着脱自在に保持するマルチタレット形式のものが提案されている(例えば、特許文献1)。これは、工具ホルダマガジンの旋回により、希望の工具ホルダを所定の加工位置に割出し、その割り出された工具ホルダを旋回させて工具ホルダ中の希望のパンチ工具をパンチ加工に用いるものである。
【0003】
この形式のパンチプレスは、複数のパンチ工具を搭載する工具ホルダが工具ホルダマガジンに対して交換自在であるため、工具ホルダマガジンの外部に工具ホルダを準備しておき、その工具ホルダを工具ホルダマガジンの工具ホルダと交換することで多数のパンチ工具の使用が可能になる。
また、加工位置に割り出された同じ工具ホルダに搭載されたパンチ工具を使用するときは、工具ホルダマガジン等に比べて小さくて軽量の工具ホルダを旋回させれば良いため、工具割出の時間が短縮でき、効率の良いパンチ加工が行える。
【特許文献1】特開2004−237331号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記マルチタレット形式のパンチプレスは、機内の工具ホルダマガジンに対する工具ホルダの交換装置を備えているが、交換装置までの工具ホルダの運搬は手作業で行う必要があり、効率的でない。そのため、機内工具ホルダマガジンとは別に、機外工具ホルダマガジン設け、この機外工具ホルダマガジンと機内工具ホルダマガジンとの間で工具ホルダを自動交換する工具ホルダチェンジャーを備えた加工設備を考えた。このチェンジャーは、工具ホルダを運ぶ移動体を往復させて、パンチプレスへの工具ホルダの搬入や搬出を行うものである。
【0005】
この工具ホルダチェンジャーによるパンチプレスへの工具ホルダの搬入搬出は、パンチプレスを制御する加工プログラムの内容に従って、必要な工具を搭載した工具ホルダを1個ずつ必要時に搬送することになる。
すなわち、パンチプレスへの工具ホルダの搬入が必要となったときは、工具ホルダチェンジャーは、機外工具ホルダマガジンの近傍の待機位置に待機している移動体がパンチプレスまで走行移動して工具ホルダをパンチプレスへ搬入し、待機位置へ戻る。また、工具ホルダの搬出が必要になったときは、前記移動体がパンチプレスまで走行移動し、工具ホルダをパンチプレスから受け取って機外工具ホルダマガジンへ戻り、工具ホルダの搬出を行う。
【0006】
しかし、工具ホルダの搬入や搬出を、必要になった時点で行うのでは、工具ホルダチェンジャーの空搬送が多くなって、往復動作の回数が増え、効率が悪い。すなわち、搬入動作では移動体の戻り時に空の状態で移動することになり、搬出動作では行きの動作が空で行われることになる。
また、機外工具ホルダマガジンにおいて、工具ホルダに対する工具交換の段取り作業は作業者の手作業で行われるため、時間がかかる。そのため、工具ホルダに搭載する工具の交換が必要になったときに搬出するのでは、工具ホルダチェンジャーの搬出のための走行移動から、機外工具ホルダマガジンにおける工具交換の段取り作業、およびその段取り済みの工具ホルダの工具ホルダチェンジャーによる搬入までの動作を、パンチプレスの停止状態で行うことが必要となり、加工の効率が悪い。
【0007】
上記チェンジャーの移動体としては、工具ホルダを把持する2つのチャックを設け、パンチプレスや外方部材との工具ホルダの受け渡しの効率化を図るものも考えられる。すなわち、移動体の片方のチャックで工具ホルダを把持して搬送し、例えばパンチプレスとの間で工具ホルダを受け渡すときは、空のチャックでパンチプレスの工具ホルダを受け取り、その後にもう片方のチャックで把持している工具ホルダをパンチプレスに渡す。機外工具ホルダマガジンとの受け渡しも上記と同様に行う。これにより、移動体の1回の走行で工具ホルダの搬入と搬出とが行える。しかし、2つのチャックを備えながら、移動体の往復動作回数の低減が十分でない。特に、一つのスケジュールで2つ以上の工具ホルダの段取りが必要な場合に、効率化が不十分である。
【0008】
上記の課題は、加工機がマルチタレット形式のパンチプレスである場合につき説明したが、通常のタレットパンチプレスにおいても、またパンチプレス以外であっても、複数の工具ホルダを交換可能に装備する加工機に対する工具ホルダチェンジャーのプログラム作成において、上記と同様な課題が生じる。
【0009】
この発明の目的は、一つのスケジュールの実行の前に複数の工具ホルダの搬出または搬入が必要な場合などに、工具ホルダを運ぶ移動体の往復動作回数を低減できて、効率の良い搬入搬出が行え、また機外での工具交換の段取り作業が、できるだけ加工機の加工中に行えて、加工機による加工の効率化を図れるチェンジャー制御プログラムの作成が可能なプログラム作成装置を提供することである。
この発明のさらに他の目的は、機外での工具交換の段取り作業を早く開始することができ、これにより機外での工具交換の段取り作業をできるだけ加工機の加工中に行えるようにすることである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
この発明の工具ホルダチェンジャー制御プログラム作成装置(35)は、複数の工具ホルダ(7)を交換可能に装備する加工機(1)と、この加工機(1)外の工具ホルダ(7)を保管する機外工具ホルダマガジン(6)との間で移動する移動体(22)を有し、この移動体(22)に工具ホルダ(7)を保持する複数のチャック(23,24)を有する工具ホルダチェンジャー(3)の制御用のプログラムを作成する装置である。
作成するチェンジャー制御プログラム(34)は、前記移動体(22)の機外工具ホルダマガジン(6)から加工機(1)までの往復動作により加工機(1)から機外工具ホルダマガジン(6)へ工具ホルダ(7)を搬出させる搬出指令(R1a,R1b)、前記移動体(22)の前記往復動作により機外工具ホルダマガジン(6)から加工機(1)へ工具ホルダ(7)を搬入する搬入指令(R2a,R2b)、および前記移動体(22)の前記往復動作により機外工具ホルダマガジン(6)から加工機(1)へ工具ホルダ(7)を搬入しかつ加工機(1)から機外工具ホルダマガジン(6)へ工具ホルダ(2)を搬出させる交換指令(R3a,R3b)を、これらの指令の実行順に並べたプログラムである。 前記搬出指令(R1a,R1b)、搬入指令(R2a,R2b)、および交換指令(R3a,R3b)は、1個の工具ホルダ(7)を運搬する単独搬出指令(R1a)、単独搬入指令(R2a)、および単独交換指令(R3a)と、前記複数のチャック(23,24)でそれぞれ保持して複数の工具ホルダ(7)を同時に搬送する複数同時搬出指令(R1b)、複数同時搬入指令(R2b)および複数同時交換指令(R3b)とに区別されるものとする。
【0011】
このプログラム作成装置(35)は、上記前提構成において、次の仮搬入搬出順情報作成手段(36)および複数同時搬送化手段(37)を設けたことを特徴とする。
仮搬入搬出順情報作成手段(36)は、一つの素材を加工する加工単位であるスケジュール(Sch )で前記加工機(1)が用いる工具ホルダ(7)の識別番号を設定したスケジュール別使用工具ホルダ情報(F1)、およびスケジュール(Sch )の実行順を設定した情報(F2)から、前記単独搬出指令(R1a)および単独搬入指令(R2a)を、前記加工機(1)による前記スケジュール(Sch )の加工が可能な範囲で仮の実行順に並べて設定した情報である仮搬入搬出順情報(F3)を作成するものである。
複数同時搬送化手段(37)は、所定の複数同時搬送可能条件を充足する場合に、上記仮搬入搬出順情報(F3)における単独搬出指令(R1a)または単独搬入指令(R2a)を、これらの指令(R1a,R2a)よりも前にある単独搬出指令(R1a)または単独搬入指令(R2a)に繰上げ結合して複数同時搬入指令(R1b)、複数同時搬出指令(R2b)、または複数同時交換指令(R3b)とするものてある。
なお、仮搬入搬出順情報(F3)で作成する各指令(R1a,R2a)は、必ずしも指令の形式でなくても良く、搬入、搬出、および交換が区別できる情報であれば良い。複数同時搬送化手段(38)で作成する各指令(R1b,R2b,R3b)についても、必ずしも指令の形式でなくても良く、搬入、搬出、交換の区別と、単独の搬出か複数同時搬出かなどの単数と複数の区別とができる情報であれば良い。
【0012】
この構成のプログラム作成装置(35)によると、まずスケジュール別使用工具ホルダ情報(F1)およびスケジュール実行順情報(F2)により、搬入指令(R2)等を仮の実行順に並べて設定した情報である仮搬入搬出順情報(F3)が作成される。仮搬入搬出順情報(F3)は、この情報(F3)における実行順で工具ホルダチェンジャー(3)による搬入搬出を行っても、加工機(1)による前記スケジュール(Sch )の加工が可能であるが、効率については、必ずしも良くはない情報である。仮搬入搬出順情報(F3)は、例えば工具ホルダ(7)の搬入や搬出を、加工機(1)で必要になった時点で行わせるものであり、一般的には、工具ホルダチェンジャー(3)の移動は、片道が空搬送となる動作が多くなる。
上記仮搬入搬出順情報(F3)を作成した後、複数同時搬送化手段(38)は、上記仮搬入搬出順情報(F3)において一つのスケジュール(Sch )に2個以上の単独搬出指令(R1a)または2個以上の単独搬入指令(R2a)がある場合など、所定の複数同時搬送可能条件を充足する場合に、上記仮搬入搬出順情報(F3)における単独搬出指令(R1a)または単独搬入指令(R2a)を、これらの指令(R1a,R2a)よりも前にある単独搬出指令(R1a)または単独搬入指令(R2a)に繰上げ結合して複数同時搬入指令(R1b)、複数同時搬出指令(R2b)、または複数同時交換指令(R3b)とする。
このように、移動体(22)に複数のチャック(23,24)が備えられていることを利用し、複数の工具ホルダ(7)を同時に搬送するようにしたため、例えば一つのスケジュール(Sch )に2個以上の工具ホルダ(7)の搬入や搬出が必要な場合に、工具ホルダ(7)を運ぶ移動体(22)の往復動作回数が低減できて、効率の良い搬入搬出が行える。また搬出動作が繰上げられるため、機外での工具交換の段取り作業が、その繰上げ分だけ早期に開始できる。したがって、機外での工具交換の段取り作業が、できるだけ加工機(1)の加工中に行えて、加工機(1)による加工の効率化が図れる。
【0013】
上記所定の複数同時搬送可能条件は、例えば、
搬出については、繰上げ結合先の単独搬出指令(R1a)の実行時が、繰上げ結合元の単独搬出指令(R1b)で搬出する工具ホルダ(7)を前回使用するスケジュール(Sch )よりも後であって、搬出される工具ホルダ(7)を受け入れる余裕が機外工具ホルダマガジン(6)にある場合であり、
搬入については、結合する2つの単独搬入指令(R2a)が同じスケジュール(Sch )に対する指令であるか、または繰上げ結合先の単独搬入指令(R2a)が繰上げ結合元のスケジュール(Sch )のよりも前のスケジュール(Sch )に対する指令であって、搬入される工具ホルダ(7)を受け入れる余裕が加工機(1)にある場合とされる。
【0014】
この発明の工具ホルダチェンジャー制御プログラム作成装置(35)において、次の搬出繰上げ手段(37)を設けても良い。この搬出繰上げ手段(37)は、上記仮搬入搬出順情報(F3)において、今回のスケジュール(Sch )で使用される工具ホルダ(7)を搬出する単独搬出指令(R1a)があって、同工具ホルダ(7)を前回使用するスケジュール(Sch )と今回のスケジュール(Sch )との間に2スケジュール以上空く場合に、今回のスケジュール(Sch )における同工具ホルダ(7)の単独搬出指令(R1a)を、前回使用のスケジュール(Sch )の後でかつ今回から1スケジュール以上空くスケジュール(Sch )の前となるように順序を繰上げる手段である。この場合に、前記複数同時搬送化手段(38)は、前記搬出繰上げ手段(37)で繰上げられた単独搬出指令(R1a)を、上記複数同時搬送化手段(38)による繰上げ結合の対象とするものとしても良い。
今回のスケジュール(Sch )で使用される工具ホルダ(7)を搬出する単独搬出指令(R1a)がある場合に、今回のスケジュール(Sch )の直前に単独搬出指令(R1a)を実行するのでは、工具ホルダ(7)を搬出し、機外工具ホルダマガジン(6)で工具交換の段取りを行い、その段取り済みの工具ホルダ(7)を加工機(1)へ搬入する過程が必要となり、この間、加工機(1)が駆動できず、加工機(1)の停止時間が長くなる。
上記構成の搬出繰上げ手段(37)が設けられていると、単独搬出指令(R1a)が繰上げられ、工具ホルダ(7)の搬出が早期に行われるため、機外工具ホルダマガジン(6)での工具交換の段取り作業を早く開始することができる。これにより、機外での工具交換の段取り作業を、できるだけ加工機(1)の加工中に行えるようになり、加工機(1)を停止する工具ホルダ(7)の搬入搬出時間が短縮されて、加工機(1)の効率を向上させることができる。
複数同時搬送化手段(38)が、前記搬出繰上げ手段(37)で繰上げられる単独搬出指令(R1a)を、上記複数同時搬送化手段(38)による上記繰上げ結合の対象とする場合は、繰上げられた単独搬出指令(R1a)をさらに繰上げて複数同時搬出指令(R1b)とするため、より早期に工具ホルダを搬出して段取り作業が行え、加工機の効率がより一層向上する。
【発明の効果】
【0015】
この発明の工具ホルダチェンジャー制御プログラム作成装置は、複数の工具ホルダを交換可能に装備する加工機と、この加工機外の工具ホルダを保管する機外工具ホルダマガジンとの間で移動する移動体を有し、この移動体に工具ホルダを保持するチャックを複数有する工具ホルダチェンジャーの制御用のプログラムを作成する装置であって、作成するチェンジャー制御プログラムは、前記移動体の機外工具ホルダマガジンから加工機までの往復動作により加工機から機外工具ホルダマガジンへ工具ホルダを搬出させる搬出指令、前記移動体の前記往復動作により機外工具ホルダマガジンから加工機へ工具ホルダを搬入する搬入指令、および前記移動体の前記往復動作により機外工具ホルダマガジンから加工機へ工具ホルダを搬入しかつ加工機から機外工具ホルダマガジンへ工具ホルダを搬出させる交換指令を、これらの指令の実行順に並べたプログラムであり、前記搬出指令、搬入指令、および交換指令は、1個の工具ホルダを運搬する単独搬出指令、単独搬入指令、および単独交換指令と、前記複数のチャックでそれぞれ保持して複数の工具ホルダを同時に搬送する複数同時搬出指令、複数同時搬入指令、および複数同時交換指令とに区別されるものとし、このプログラム作成装置は、一つの素材を加工する加工単位であるスケジュールで前記加工機が用いる工具ホルダの識別番号を設定したスケジュール別使用工具ホルダ情報、およびスケジュールの実行順を設定した情報から、前記単独搬出指令および単独搬入指令を、前記加工機による前記スケジュールの加工が可能な範囲で仮の実行順に並べて設定した情報である仮搬入搬出順情報を作成する仮搬入搬出順情報作成手段と、所定の複数同時搬送可能条件を充足する場合に、上記仮搬入搬出順情報における単独搬出指令または単独搬入指令を、これらの指令よりも前にある単独搬出指令または単独搬入指令に繰上げ結合して複数同時搬入指令、複数同時搬出指令、または複数同時交換指令とする複数同時搬送化手段とを有するものとしたため、例えば、一つのスケジュールの実行の前に複数の工具ホルダの搬出または搬入が必要な場合などに、工具ホルダを運ぶ移動体の往復動作回数を低減できて、効率の良い搬入搬出が行え、また機外での工具交換の段取り作業が、できるだけ加工機の加工中に行えて、加工機による加工の効率化を図れるチェンジャー制御プログラムの作成が可能になる。
【0016】
上記仮搬入搬出順情報において、今回のスケジュールで使用される工具ホルダを搬出する単独搬出指令があって、同工具ホルダを前回使用するスケジュールと今回のスケジュールとの間に2スケジュール以上空く場合に、今回のスケジュールにおける同工具ホルダの単独搬出指令を、前回使用のスケジュールの後でかつ今回から1スケジュール以上空くスケジュールの前となるように順序を組み換える搬出繰上げ手段を設けた場合は、機外での工具交換の段取り作業を早く開始することができる。特に、前記複数同時搬送化手段が、前記搬出繰上げ手段で繰上げられる単独搬出指令を、上記複数同時搬送化手段による上記繰上げ結合の対象とするものとした場合は、機外での工具交換の段取り作業をさらに早く開始することができ、これにより機外での工具交換の段取り作業をできるだけ加工機の加工中に行えて、加工機の効率向上を図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
この発明の一実施形態を図1ないし図6と共に説明する。図1は、制御対象となる工具ホルダチェンジャーを備える加工設備の平面図である。この加工設備は、加工機であるパンチプレス1と、プリセッター2と、工具ホルダチェンジャー3と、ローダ4とを備える。パンチプレス1は、機内工具ホルダマガジン5を備え、個別工具8を搭載した複数の工具ホルダ7を、機内工具ホルダマガジン5に交換可能に装備するものである。工具ホルダチェンジャー3は、パンチプレス1およびプリセッター2にそれぞれ設けられた機内工具ホルダマガジン5および機外工具ホルダマガジン6の間で工具ホルダ7を自動交換する装置である。
【0018】
工具ホルダ7は、図3に示すように、平面形状が円形のタレットであり、一つまたは複数の個別工具8が搭載される。個別工具8は、工具ホルダ7に設けられた貫通孔等からなる工具支持部7a内に、交換自在に搭載される。個別工具8は、パンチ工具またはダイ工具である。パンチ工具およびダイ工具は、上下に対として用いられるものであり、工具ホルダ7は、パンチ工具用のものとダイ工具用のものとが、上下に対として設けられる。図では、パンチ工具用の工具ホルダ7のみを示し、ダイ工具用の工具ホルダは、図示を省略している。
【0019】
個別工具8は、パンチ加工する孔形状や寸法が種々異なるものがあり、工具ホルダ7に設けられた複数の工具支持部7aには、それぞれ異なる孔形状,寸法の加工用のものが搭載される。
また、工具ホルダ7は、図2のように工具支持部7aの個数,配置,寸法等の種々異なる複数種類のものが準備される。同じ工具支持部7aに、外径寸法の合う複数種類の個別工具8の搭載が可能であり、各種類の工具ホルダ7の工具支持部7aに、適合可能な任意の個別工具8を搭載して工具ホルダ7の工具編成が行われる。
【0020】
機内工具ホルダマガジン5は、水平旋回自在に設けられ、外周部の円周方向複数箇所に、工具ホルダ7を着脱自在に保持する工具ホルダ保持部5aが設けられている。各工具ホルダ保持部5aは、制御上でアドレスM1〜M8が付される。機内工具ホルダマガジン5は、上下に一対のものが同心に設けられ、それぞれパンチ側およびダイ側の工具ホルダ7を保持して同期して旋回するが、図では上側の機内工具ホルダマガジン5のみを示している。
【0021】
図1において、パンチプレス1は、工具割出機構として、マガジン割出部と工具ホルダ割出部(いずれも図示せず)とを有する。マガジン割出部は、機内工具ホルダマガジン5の任意の工具ホルダ保持部5aが所定のプレスヘッド位置Qに来るように機内工具ホルダマガジン5を旋回させる機構である。工具ホルダ割出部は、プレスヘッド位置Qにある工具ホルダ7を保持してその工具ホルダ中心回りに旋回させ、工具ホルダ7の任意の個別工具8を所定のパンチ位置Pに割出す機構である。
パンチ位置Pに割り出された個別工具8は、サーボモータ等のパンチ駆動原により、昇降自在なラムを介してパンチ加工のための昇降動作が与えられる。
【0022】
パンチプレス1は、テーブル9上の板材Wを直交2軸(X軸,Y軸)方向に移動させる板材送り機構10を有しており、その移動により、板材Wの加工すべき箇所がパンチ位置Pへ移動させられる。板材送り機構10は、Y軸方向に進退するキャリッジ11に、X軸方向に進退可能にクロススライド12を搭載し、板材Wの端部を把持する複数のワークホルダ13を、クロススライド12に取付けたものである。
【0023】
ローダ4は、所定の板材載置部14に積載された板材Wを、一枚ずつ吸着等により把持してパンチプレス1のテーブル9上に供給する装置である。ローダ4は、架設レール15上を走行する走行体16に、板材Wを把持する吸着パッド(図示せず)を備えている。
【0024】
プリセッタ2は、機外工具ホルダマガジン6を旋回割出可能に設置したものであり、パンチプレス1の背後に設置されている。プリセッタ2には、機外工具ホルダマガジン6に対して作業者が工具ホルダ7の交換を行うための段取り用交換部17が設けられている。 機外工具ホルダマガジン6は、機内工具ホルダマガジン5と同様に水平旋回自在に設けられ、外周部の円周方向複数箇所に、工具ホルダ7を着脱自在に保持する工具ホルダ保持部6aが設けられている。機外工具ホルダマガジン6も、パンチ工具搭載の工具ホルダ7用のものと、ダイ工具搭載の工具ホルダ7用のものとが、上下に同心に設置され、旋回割出の駆動がマガジン割出手段(図示せず)で行われる。
【0025】
工具ホルダチェンジャー3は、パンチプレス1の機内工具ホルダマガジン5と、機外工具ホルダマガジン6との間で工具ホルダ7を交換する装置であり、これらマガジン工具5,6の所定の交換用割出位置R,Sで交換を行う。
工具ホルダチェンジャー3は、これら機内工具ホルダマガジン5と機外工具ホルダマガジン6の交換用割出位置R,Sに渡って設けられたガイドレール21と、このガイドレール21に沿って走行する移動体22とを備える。移動体22は、それぞれ工具ホルダ7を保持する2つのチャック23,24が走行方向に並んで設けられている。これら2つのチャック23,24は、例えば、いずれか片方のチャック23,24で交換用の工具ホルダ7を保持しておき、空の方のチャック23,24で工具ホルダマガジン5,6から工具ホルダ7を受け取り、上記片方のチャック23,24で保持していた交換用の工具ホルダ7を工具ホルダマガジン5,6に渡す動作を行う。これにより、移動体22の両工具ホルダマガジン5,6間の一度の走行で工具ホルダ7の交換が行える。
交換用の工具ホルダ7を工具ホルダマガジン5,6に対して、移動体22のいずれのチャック23,24で工具ホルダ7の受け渡しを行うかの選択は、移動体22の走行位置を前記交換用割出位置R,Sに対して変更することで行われる。
【0026】
なお、パンチプレス1の機内工具ホルダマガジン5および機外工具ホルダマガジン6の交換用割出位置R,Sの近傍には、工具ホルダ7を載せる仮置き台(図示せず)が設けられている。移動体22に設けられた2つのチャック23,24が共に工具ホルダ7を把持して移動体22が走行する場合には、いずれか片方のチャック23,24で把持する工具ホルダ7を上記仮置き台に載せて空とすることで、交換用割出位置R,Sにある工具ホルダ7を、その空のチャック23,24で受け取ることができる。
また、移動体22に設けられる上記チャック23,24は、いずれも各工具ホルダマガジン5,6と同じく、パンチ工具搭載の工具ホルダ7用のものと、ダイ工具搭載の工具ホルダ7用のものとが、上下に並んで設けられている。
【0027】
つぎに制御系およびプログラム作成装置につき説明する。図4に示すように、加工機であるパンチプレス1は加工機制御装置31により制御され、工具ホルダチェンジャー3はチェンジャー制御装置32により、またローダ4(図1)はローダ制御装置(図示せず)によりそれぞれ制御される。加工機制御装置31は、加工プログラム33に従って制御するものであり、チェンジャー制御装置32は、加工プログラム33とは別のチェンジャー制御プログラム34によって制御されるものとしてしている。
これら加工機制御装置31、チェンジャー制御装置32、およびローダ制御装置は、相互に信号を送受して、動作の連携を行う。加工機制御装置31、チェンジャー制御装置32、およびローダ制御装置は、物理的には同じコンピュータ等に構成されたものであっても良く、また別のコンピュータ等で構成されたものであっても良い。
【0028】
加工機制御装置31による加工は、スケジュール設定手段41の所定の記憶領域に設定された計画スケジュールFにおける個々のスケジュールSch の実行設定順で行われる。スケジュール設定手段41はパーソナルコンピュータ等で構成され、加工機制御装置31およびチェンジャー制御装置32に、バス,ネットワーク等で接続されている。個々のスケジュールSch は、1枚の素材板材を加工する加工単位であり、その実行設定順は、スケジュール設定手段41において、作業者の入力により自由に設定される。
【0029】
一つのスケジュールSch には、図1の計画スケジュールF中には図示を省略するが、一つの加工プログラム33が設けられ、かつその加工プログラム33で使用する工具ホルダ7の識別番号が定められている。工具ホルダ7の識別番号としては、その器である工具ホルダ7の識別番号である「T01」,「T02」,…等の番号があり、また器である工具ホルダ7の識別に加え、工具ホルダ7に搭載した工具の編成やその編成の作成日等よって区別される内容を示す識別番号として「TM11」,「TM21」,…等の番号がある。ここでは、各スケジュールSch 毎に、使用する工具ホルダ7の工具編成込みの識別番号「TM11」,「TM21」,…を、計画スケジュールFのテーブル上で一行に示している。この各一行の情報が、スケジュール別使用工具ホルダ情報F1となる。
計画スケジュールFにおける各スケジュールSch の並びの順が、スケジュール実行情報F2となる。なお、計画スケジュールFのテーブルの2行目に示した識別番号「TM11」,「TM21」,…は、スケジュールSch 実行前の初期配置を示す。
【0030】
上記スケジュール設定手段41に、チェンジャー制御プログラム34を作成する工具ホルダチェンジャー制御プログラム作成装置35が設けられている。チェンジャー制御プログラム34は、搬出指令R1a,R1b、搬入指令R2a,R2b、および交換指令R3a,R3bを実行順に並べたものである。
【0031】
搬出指令R1a,R1bは、移動体22の機外工具ホルダマガジン2からパンチプレス1までの往復動作により、パンチプレス1から機外工具ホルダマガジン2へ工具ホルダ7を搬出させる指令である。移動体22の前記往復動作は、パンチプレス1における所定の交換用割出位置Rと機外工具ホルダマガジン2における所定の交換用割出位置Sとの間で行われる。搬入指令R2a,R2bは、移動体22の前記往復動作により、機外工具ホルダマガジン2からパンチプレス1へ工具ホルダ7を搬入する指令である。
交換指令R3a,R3bは、移動体22の前記往復動作により、機外工具ホルダマガジン2からパンチプレス1へ工具ホルダ7を搬入しかつパンチプレス1から機外工具ホルダマガジン2へ工具ホルダ7を搬出させる指令である。
【0032】
前記搬出指令R1a,R1b、搬入指令R2a,R2b、および交換指令R3a,R3bは、1個の工具ホルダ7を運搬する単独搬出指令R1a、単独搬入指令R2a、および単独交換指令R3aと、前記複数のチャック23,24でそれぞれ保持して複数の工具ホルダ7を同時に搬送する複数同時搬出指令R1b、複数同時搬入指令R2b、および複数同時交換指令R3bとに区別されるものとする。搬入か搬出のいずれかで工具ホルダ7を複数同時に搬送する交換指令は、ここでは複数同時交換指令R3bとしている。
【0033】
工具ホルダチェンジャー制御プログラム作成装置35は、仮搬入搬出順情報作成手段36、搬出繰上げ手段37、複数同時搬送化手段38、および実行形式化手段39を有している。工具ホルダチェンジャー制御プログラム作成装置35は、これらの手段37〜39の他に、適宜の条件で単独搬出指令R1aの繰上げや、単独搬入指令R2aの繰上げ、また単独搬出指令R1aと単独搬入指令R2aとを単独交換指令R3aとする手段(図示せず)を有するものであっても良い。
【0034】
仮搬入搬出順情報作成手段36は、上記スケジュール別使用工具ホルダ情報F1およびスケジュール実行順設定情報F2から、仮搬入搬出順情報F3を作成する手段である。仮搬入搬出順情報F3は、前記単独搬出指令R1aおよび単独搬入指令R2aを仮の実行順に並べて設定した情報である。この仮の実行順は、必ずしも効率的でなくても良いが、パンチプレス1で前記スケジュールの加工が可能なものとされる。
仮搬入搬出順情報作成手段36による仮搬入搬出順情報F3の作成は、例えば、スケジュール別使用工具ホルダ情報F1およびスケジュール実行順設定情報F2において、工具ホルダ7の搬出や搬入が必要になった順に、その工具ホルダ7の搬出,搬入を行う単独搬出指令R1aおよび単独搬入指令R2aを作成するものとされる。
仮搬入搬出順情報F3は、同図の例では、例えばスケジュール Sch1で、T04の工具ホルダ7を搬出し、その後に同じT04の工具ホルダ7を搬入する動作を示している。
なお、仮搬入搬出順情報F3における単独搬入指令R1aおよび、単独搬出指令R2aは、必ずしも指令の形式でなくても良く、搬入、搬出、および交換が区別できる情報であれば良い。
【0035】
複数同時搬送化手段38は、所定の複数同時搬送可能条件を充足する場合に、仮搬入搬出順情報F2における単独搬出指令R1aまたは単独搬入指令R2aを、これらの指令R1a,R2aよりも前にある単独搬出指令R1aまたは単独搬入指令R2aに繰上げ結合して複数同時搬出指令R1b、複数同時搬入指令R2b、または複数同時交換指令R3bとする手段である。この複数同時搬送化手段38で処理した後の情報が、同図に示す繰上げ搬入搬出順情報F4である。
【0036】
上記所定の複数同時搬送可能条件としては、搬出については、例えば、繰上げ結合先の単独搬出指令R1aの実行時が、繰上げ結合元の単独搬出指令R1aで搬出する工具ホルダ7を前回使用するスケジュールSch よりも後であって、搬出される工具ホルダ7を受け入れる余裕が機外工具ホルダマガジン6にある場合とされる。この場合の余裕は、機外工具ホルダマガジン6に工具ホルダ7の借り置き台(図示せず)などが設けられている場合は、この借り置き台への配置個数を含めた値としても良い。
また、搬入については、例えば、結合する2つの単独搬入指令R2aが同じスケジュールSch に対する指令であるか、または繰上げ結合先の単独搬入指令R2aが繰上げ結合元のスケジュールSch の一つ前のスケジュールSch に対する指令であって、搬入される工具ホルダ7を受け入れる余裕がパンチプレス1にある場合とされる。この場合の余裕は、パンチプレス1に工具ホルダ7の借り置き台(図示せず)などが設けられている場合は、この借り置き台への配置個数を含めた値としても良い。
この他に、複数同時搬送可能条件は、一つのスケジュール Schに2つ以上の単独搬出指令または2つ以上の単独搬入指令がある場合としても良い。
【0037】
複数同時搬出の繰上げ結合の例を挙げると、矢印(1) で示すように、仮搬入搬出順情報F3における順位3で示す工具ホルダT08の単独搬出指令R1aを、その前の順位2における工具ホルダT07の単独搬出指令R1aに結合し、繰上げ搬入搬出順情報F4では、工具ホルダT07および工具ホルダT08を同時に搬出する複数同時搬出指令R1b1 としている。
複数同時搬入の繰上げ結合の例を挙げると、矢印(2) で示すように、仮搬入搬出順情報F3における順位(6)で示す工具ホルダT09の単独搬入指令R2aを、その前の順位(5)における工具ホルダT08の単独搬入指令R2bに結合し、繰上げ搬入搬出順情報F4では工具ホルダT08および工具ホルダT09を同時に搬入する複数同時搬入指令R2b1 としている。
【0038】
なお、複数同時搬送化手段38は、次の搬出繰上げ手段37で繰上げられた単独搬出指令R1aも、上記繰上げ結合の対象としている。
【0039】
また、複数同時搬出の繰上げ結合、または複数同時搬入の繰上げ結合を行う場合に、複数同時搬出指令R1b,複数同時搬入指令R2bとするか、または複数同時交換指令R3bとするかは、複数同時搬送化手段38において、適宜定めた規則に従って選択されるものとする。例えば、複数同時交換が可能は場合、全て複数同時交換指令R3bとするものとしても良い。
【0040】
搬出繰上げ手段37は、今回のスケジュールSch で使用される工具ホルダ7を搬出する単独搬出指令R1aがあって、同工具ホルダ7を前回使用するスケジュールSch と今回のスケジュールSch との間に2スケジュール以上空く場合に、今回のスケジュールSch における同工具ホルダ7の単独搬出指令R1aを、前回使用のスケジュールSch の後でかつ今回から1スケジュール以上空くスケジュールSch の前となるように、順序を繰上げる手段である。
【0041】
この繰上げを具体例で説明する。図1の計画スケジュールFにおける今回のスケジュールがスケジュール Sch6であるとすると、ここでは工具ホルダT09(TM92)を用いており、この工具ホルダT09を前回使用するスケジュールは、スケジュール Sch1である。両スケジュール Sch1, Sch6間には、工具ホルダT09を使用しないスケジュールが4つ介在している。また、今回のスケジュール Sch6において、仮搬入搬出順情報F3には、順位(6)に工具ホルダT09を搬出する単独搬出指令R1aがある。
この場合、矢印(3) で示すように、今回のスケジュール Sch6における工具ホルダT09の搬出指令R1を、前回使用のスケジュール Sch1とその直後のスケジュール Sch2との間になるように順序を繰上げている。
同図の例では、この繰上げは他の処理と組み合わさって、工具ホルダT07の搬入と工具ホルダT09,T04の搬出とを結合した複数同時交換指令R3b1 とされている。
【0042】
実行形式化手段39は、作成された繰上げ搬入搬出順情報F4から、チェンジャー制御装置32で実行可能な形式のチェンジャー制御プログラム34を作成する手段である。例えば、各前記搬出指令R1a,R1b、搬入指令R2a,R2b、交換指令R3a,R3bの違いによる移動体22の移動位置,移動手順の違いに応じた指令内容、およびチャック23,24の開閉等の動作の指令内容が、繰上げ搬入搬出順情報F4による各指令に加えられる。上記仮置き台(図示せず)を使用する動作、つまり移動体22の2つチャック23,24で共に工具ホルダ7を把持して同時搬送する場合において、パンチプレス1または機外工具ホルダマガジン6に対する工具ホルダ7の受け渡し時に、片方のチャック23,24の工具ホルダ7を上記仮置き台(図示せず)に載せてそのチャック23,24を空とする動作についても、実行形式化手段39でその動作の指令が付加される。
【0043】
上記構成の工具ホルダチェンジャー制御プログラム作成装置35の動作を、図5,図6に示す具体例と共に説明する。図5は計画スケジュールFを示し、図6はその計画スケジュールFに基づいて作成した仮搬入搬出順情報F3および繰上げ搬入搬出順情報F4を示す。同図の繰上げ搬入搬出順情報F4は、搬出繰上げ手段37および複数同時搬送化手段38による処理の結果を示す。なお、図6においてスケジュール番号の表示部分の右側に示した搬入,搬出の動作は、そのスケジュール番号のスケジュールの実行前に行われる動作である。
【0044】
図5に示すように、計画スケジュールFのスケジュール別使用工具ホルダ情報F1、およびスケジュール実行順情報F2が設定されていたとする。
この場合に、仮搬入搬出順情報作成手段36は、上記スケジュール別使用工具ホルダ情報F1およびスケジュール実行順設定情報F2から、図6に示す仮搬入搬出順情報F3を作成する。
【0045】
図5からわかるように、初期配置とスケジュール Sch1とを比較すると、初期配置では機内工具ホルダマガジン5に、工具ホルダT04を用いた工具編成工具ホルダTM41が備えられているが、スケジュール Sch1では、同じ工具ホルダT04を用いて工具編成を異ならせた工具編成工具ホルダTM42が必要とされる。そのため、工具ホルダT04を機外工具ホルダマガジン6に一旦搬出し、ここで工具ホルダT04に対する工具交換の段取りを行った後に、その工具ホルダT04を搬入する必要がある。
そのため、仮搬入搬出順情報作成手段36では、順位(1)の動作として、スケジュール Sch1の開始前に、工具ホルダT04を搬出する動作を行い、その後に同じ工具ホルダT04を搬入する動作を行うものとしている。
【0046】
上記と同様に、スケジュール Sch1では図5のように工具ホルダTM71,TM81が用いられるのに対して、スケジュール Sch2では工具ホルダTM72,TM82が用いられるため、スケジュール Sch2の開始前に、工具ホルダT07の搬出、工具ホルダT07の搬入、工具ホルダT08の搬出、工具ホルダT08の搬入を行うようにしている。
他の搬入,搬出動作は説明を省略するが、図6の通りである。なお、搬入,搬出は、基本的には各スケジュール Schの前に行われ、スケジュール Schの実行途中では、止むを得ない場合を除き、行われないものとされる。
【0047】
図1の複数同時搬送化手段38は、この仮搬入搬出順情報F3において、上記所定の複数同時搬送可能条件が充足される場合に、この仮搬入搬出順情報F3における単独搬出指令R1aまたは単独搬入指令R2aを、これらの指令R1a,R2aよりも前にある単独搬出指令R1aまたは単独搬入指令R2aに繰上げ結合して複数同時搬入指令R1b、複数同時搬出指令R2b、または複数同時交換指令R3bとする。
【0048】
図5,図6の例では、矢印(1) で示すように、仮搬入搬出順情報F3における順位(3)で示す工具ホルダT08の単独搬出指令R1aを、その前の順位(2)における工具ホルダT07の単独搬出指令R1aに結合し、繰上げ搬入搬出順情報F4では、工具ホルダT07および工具ホルダT08を同時に搬出する複数同時搬出指令R1b1 としている。これは、同じスケジュール Sch2における単独搬出指令R1a同士を結合する例である。
また、矢印(4) で示すように、仮搬入搬出順情報F3における順位(5)で示す工具ホルダT08の単独搬出指令R1aを、その前の順位(4)における工具ホルダT07の単独搬出指令R1aに結合し、繰上げ搬入搬出順情報F4では、工具ホルダT07および工具ホルダT08を同時に搬出する複数同時搬出指令R1b2 としている。これは、異なるスケジュール Schの間(スケジュール Sch6とその直前のスケジュール Sch5)で単独搬出指令R1aを結合する例である。
【0049】
また、矢印(2) で示すように、仮搬入搬出順情報F3における順位(6)で示す工具ホルダT09の単独搬入指令R2aを、その前の順位(5)における工具ホルダT08の単独搬入指令R2aに結合し、繰上げ搬入搬出順情報F4では工具ホルダT08および工具ホルダT09を同時に搬入する複数同時搬入指令R2b1 としている。
他に、矢印(5) で示すように、仮搬入搬出順情報F3における順位(11)で示す工具ホルダT09の単独搬入指令R2aを、その前の順位(10)における工具ホルダT07の単独搬入指令R2aに結合し、繰上げ搬入搬出順情報F4では工具ホルダT07および工具ホルダT09を同時に搬入する複数同時搬入指令R2b2 としている。
【0050】
このように、移動体22に複数のチャック23,24が備えられていることを利用し、複数の工具ホルダ7を同時に搬送するようにしたため、工具ホルダ7を運ぶ移動体22の往復動作回数が低減できて、効率の良い搬入搬出が行える。また搬出動作が繰上げられるため、機外での工具交換の段取り作業が、その繰上げ分だけ早期に開始できる。したがって、機外での工具交換の段取り作業が、できるだけパンチプレス1の加工中に行えて、パンチプレスによる加工の効率化が図れる。
【0051】
図1の搬出繰上げ手段37の処理を説明する。搬出繰上げ手段37は、その処理を前述したが、概略を説明し直すと、スケジュールSch で使用する工具ホルダ7によって、前回使用しているスケジュールSch との空きが2スケジュール以上の場合は、早く段取りが行えるように機外工具ホルダマガジン6へ搬出して出庫する順に組み換える処理を行う。
【0052】
前述のように、スケジュール Sch6では工具ホルダT09(TM92)を用いており、この工具ホルダT09を前回使用するスケジュールは、スケジュール Sch1である。両スケジュール Sch1, Sch6間には、工具ホルダT09を使用しないスケジュールが4つ介在しており、2スケジュール以上空いている。また、今回のスケジュール Sch6において、仮搬入搬出順情報F3には、順位(6)に工具ホルダT09を搬出する単独搬出指令R1aがある。
この場合、図6に矢印(3) で示すように、今回のスケジュール Sch6における工具ホルダT09の単独搬出指令R1aを、前回使用のスケジュール Sch1とその直後のスケジュール Sch2との間になるように順序を繰上げている。
【0053】
今回のスケジュール Sch6で工具ホルダT09を搬出するのは、工具ホルダT09の工具搭載内容を、前回使用のTM91からTM92に変更するためである。この場合に、仮搬入搬出順情報F3のように、今回のスケジュール Sch6の直前に搬出指令R1を実行するのでは、工具ホルダTM91を搬出し、機外工具ホルダマガジン6で工具交換の段取りを行い、その段取り済みの工具ホルダTM92をパンチプレス1へ搬入する過程が必要となり、この間、パンチプレス1が駆動できず、パンチプレス1の停止時間が長くなる。
上記の段取り搬出繰上げ手段37によると、工具ホルダTM91の単独搬出指令R1aが繰上げられ、工具ホルダTM91の搬出が早期に行われるため、機外工具ホルダマガジン6でのTM91からTM92とする工具交換の段取り作業を早く開始することができる。これにより、機外での工具交換の段取り作業を、できるだけパンチプレス1の加工中に行えるようになる。
【0054】
ただし、この場合、矢印(3) で繰上げられた工具ホルダT09の単独搬出指令R1aには、後述のように搬出繰上げ手段38の処理(矢印(7) で示す処理) で順位(9)から順位(5)に繰り上げられた工具ホルダT04の単独搬出指令R1aが、複数同時搬送化手段38の処理によって結合され(矢印(8) )、2個の工具ホルダT04,T09を搬出する複数同時搬出指令とされる。この指令はさらに工具ホルダT07の搬入指令と結合して、工具ホルダT07を搬出し、工具ホルダT04,T09を搬出する複数同時交換指令R3b1 とされている。
【0055】
すなわち、搬出繰上げ手段37の処理として、この例では、図6の上記矢印(3) の処理と同様に、矢印(7) で示すように、今回のスケジュール Sch9における工具ホルダT04の単独搬出指令R1aを、前回使用のスケジュール Sch1よりも後で今回のスケジュール Sch9から2スケジュール以上空くスケジュールとなるスケジュール Sch5の前になるように順序を繰上げている。この繰上げられた単独搬出指令R1aを、先に説明した矢印(3) で繰上げられた工具ホルダT09の単独搬出指令R1aと結合されるように(矢印(8) )、複数同時搬送化手段38によってさらに繰上げている。
この繰上げは、順位(2)における工具ホルダT07の単独搬入指令R1aと結合し、上記複数同時交換指令R3b1 とされている。
このように、移動体22の往復動作で共に工具ホルダ7を搬送する交換動作とすることで、空搬送が少なくなり、移動体22の往復動作回数がさらに低減されて、効率の良い搬入搬出が行える。
【0056】
搬出繰上げ手段37の処理としては、この他に、矢印(6) で示すように、今回のスケジュール Sch13における工具ホルダT09の搬出指令R1を、前回使用のスケジュール Sch6よりも後で今回のスケジュール Sch13から2スケジュール以上空くスケジュールとなるスケジュール Sch7の前になるように順序を組み換えている。
【0057】
なお、上記実施形態において、複数同時搬出、複数同時搬入、または複数同時交換を行う場合に、工具ホルダチェンジャー3で複数同時搬送した工具ホルダ7は、必ずしもその複数個を全て機外工具ホルダマガジン6へ搬出し、またはパンチプレス1に搬入しなくても良い。例えば、パンチプレス1から機外工具ホルダマガジン6へ複数同時搬送した工具ホルダ7のうち、1個の工具ホルダ7のみを機外工具ホルダマガジン6へ搬入し、残り1個は工具ホルダチェンジャー3で持ったままでパンチプレス1へ戻る動作を行うものとしても良い。機外工具ホルダマガジン6からパンチプレス1へ複数動作搬送する場合も、一部の工具ホルダ7を工具ホルダチェンジャー3で持ったままで機外工具ホルダマガジン6へ戻る動作を行うものとしても良い。
【0058】
なお、前記実施形態においては、工具ホルダチェンジャー3が扱う工具ホルダ7の番号を特定して説明したが、工具ホルダチェンジャー3自体の動作は、識別番号T01,…の異なる工具ホルダ7を扱う場合であっても、上記搬出,搬入,交換の動作は同じである。工具ホルダチェンジャー3は、機内工具ホルダマガジン5および機外工具ホルダマガジン6の動作によって、搬送する工具ホルダ7が異なることになる。工具ホルダチェンジャー3が、工具ホルダ7の識別番号の情報の授受を行う場合は、その情報については、扱う工具ホルダ7によって異なることになる。
【0059】
また、上記実施形態では、移動体22が2個のチャック23,24を有するものである場合につき説明したが、移動体22は3個以上のチャックを有するものであっても良い。その場合、移動体22に設けられた全てのチャックで工具ホルダ7を把持して搬送させるようにしても良い。
さらに、前記実施形態では、加工機1がマルチタレット式のパンチプレスである場合につき説明したが、この発明のプログラム作成装置で作成する制御プログラムの制御対象となる工具ホルダチェンジャーは、通常のパンチプレスと機外工具ホルダマガジンとの間で工具ホルダの交換を行うものであっても、またパンチプレスに限らず、個別工具を搭載した工具ホルダを交換可能に装備する加工機との間で交換を行うものであれば良い。
【図面の簡単な説明】
【0060】
【図1】この発明の一実施形態にかかるプログラム作成装置で作成された制御プログラムを用いる工具ホルダチェンジャーを備えたチェンジャー付き加工設備の一例を示す平面図である。
【図2】その機内工具ホルダマガジン、機外工具ホルダマガジン、および工具ホルダチェンジャーを示す拡大平面図である。
【図3】その工具ホルダ斜視図である。
【図4】同実施形態の工具ホルダチェンジャー制御プログラム作成装置の概念構成を示すブロック図である。
【図5】計画スケジュールの説明図である。
【図6】仮搬入搬出順情報および繰上げ搬入搬出順情報を示す説明図である。
【符号の説明】
【0061】
1…パンチプレス(加工機)
3…工具ホルダチェンジャー
5…機内工具ホルダマガジン
6…機外工具ホルダマガジン
7…工具ホルダ
8…個別工具
17…段取り用交換部
22…移動体
23,24…チャック
32…チェンジャー制御装置
33…加工プログラム
34…チェンジャー制御プログラム
35…工具ホルダチェンジャー制御プログラム作成装置
36…仮搬入搬出順情報作成手段
37…搬出繰上げ手段
38…複数同時搬送化手段
39…実行形式化手段
41…スケジュール設定手段
F…計画スケジュール
F1…スケジュール別使用工具ホルダ情報
F2…スケジュール実行順情報
F3…仮搬入搬出順情報
F4…繰上げ搬入搬出順情報
R1a…単独搬出指令
R1b…複数同時搬出指令
R2a…単独搬入指令
R2b…複数同時搬入指令
R3a…単独交換指令
R3b…複数同時交換指令
T01,T02…工具ホルダの識別番号
TM11,TM21,…工具編成別の工具ホルダの識別番号

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の工具ホルダを交換可能に装備する加工機と、この加工機外の工具ホルダを保管する機外工具ホルダマガジンとの間で移動する移動体を有し、この移動体に工具ホルダを保持する複数のチャックを有する工具ホルダチェンジャーの制御用のプログラムを作成する装置であって、
作成するチェンジャー制御プログラムは、前記移動体の機外工具ホルダマガジンから加工機までの往復動作により加工機から機外工具ホルダマガジンへ工具ホルダを搬出させる搬出指令、前記移動体の前記往復動作により機外工具ホルダマガジンから加工機へ工具ホルダを搬入する搬入指令、および前記移動体の前記往復動作により機外工具ホルダマガジンから加工機へ工具ホルダを搬入しかつ加工機から機外工具ホルダマガジンへ工具ホルダを搬出させる交換指令を、これらの指令の実行順に並べたプログラムであり、
前記搬出指令、搬入指令、および交換指令は、1個の工具ホルダを運搬する単独搬出指令、単独搬入指令、および単独交換指令と、前記複数のチャックでそれぞれ保持して複数の工具ホルダを同時に搬送する複数同時搬出指令、複数同時搬入指令、および複数同時交換指令とに区別されるものとし、
このプログラム作成装置は、
一つの素材を加工する加工単位であるスケジュールで前記加工機が用いる工具ホルダの識別番号を設定したスケジュール別使用工具ホルダ情報、およびスケジュールの実行順を設定した情報から、前記単独搬出指令および単独搬入指令を、前記加工機による前記スケジュールの加工が可能な範囲で仮の実行順に並べて設定した情報である仮搬入搬出順情報を作成する仮搬入搬出順情報作成手段と、
所定の複数同時搬送可能条件を充足する場合に、上記仮搬入搬出順情報における単独搬出指令または単独搬入指令を、これらの指令よりも前にある単独搬出指令または単独搬入指令に繰上げ結合して複数同時搬出指令、複数同時搬入指令、または複数同時交換指令とする複数同時搬送化手段とを有するものとした、
工具ホルダチェンジャー制御プログラム作成装置。
【請求項2】
上記所定の複数同時搬送可能条件は、
搬出については、繰上げ結合先の単独搬出指令の実行時が、繰上げ結合元の単独搬出指令で搬出する工具ホルダを前回使用するスケジュールよりも後であって、搬出される工具ホルダを受け入れる余裕が機外工具ホルダマガジンにある場合であり、
搬入については、結合する2つの単独搬入指令が同じスケジュールに対する指令であるか、または繰上げ結合先の単独搬入指令が繰上げ結合元のスケジュールよりも前のスケジュールに対する指令であって、搬入される工具ホルダを受け入れる余裕が加工機にある場合である、
請求項1記載の工具ホルダチェンジャー制御プログラム作成装置。
【請求項3】
上記仮搬入搬出順情報において、今回のスケジュールで使用される工具ホルダを搬出する単独搬出指令があって、同工具ホルダを前回使用するスケジュールと今回のスケジュールとの間に2スケジュール以上空く場合に、今回のスケジュールにおける同工具ホルダの単独搬出指令を、前回使用のスケジュールの後でかつ今回から1スケジュール以上空くスケジュールの前となるように順序を繰上げる搬出繰上げ手段を設け、前記複数同時搬送化手段は、前記搬出繰上げ手段で繰上げられた単独搬出指令を、上記複数同時搬送化手段による上記繰上げ結合の対象とするものとした請求項1または請求項2記載の工具ホルダチェンジャー制御プログラム作成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2006−326611(P2006−326611A)
【公開日】平成18年12月7日(2006.12.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−150549(P2005−150549)
【出願日】平成17年5月24日(2005.5.24)
【出願人】(000006297)村田機械株式会社 (4,916)
【Fターム(参考)】