説明

工業用炉

本発明は非鉄金属を溶融し、ガス処理するための工業用炉に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は非鉄金属を溶融し、ガス処理するための工業用炉に関する。
【背景技術】
【0002】
従来技術として、銅(ここでは例えば陽極銅若しくは粗銅)、鉛、亜鉛、錫、ニッケル、アルミニウム若しくはこれらの合金のような非鉄金属を一次的及び二次的に冶金的に処理するための種々の型の炉が知られている。 これらの炉のうちの一つに、特に銅を精製(すなわち酸化及び還元)するための、いわゆるドラム型の炉(ロータリー炉)がある。 別の種類の炉には、例えば、銅スクラップを溶解し、これから得られる溶融物を精製するための、いわゆる傾斜炉(tilting furnace)がある。 また、他の種類の非鉄金属を溶融、処理、加工するために、それに応じた種類の炉が使用されている。 ドラム型の炉は特に、上流の溶融炉からドラム型の炉に供給される液状の非鉄金属溶融物を精製するために用いられている。 固体のリサイクルされた材料が炉にチャージされる場合もある。
【0003】
ドラム型の炉は実質的には鉄パイプ状を為し、軸方向両端がシールされていると共に長手方向の水平軸周りに回動可能とされている。 炉の内部では、パイプが耐火材料と共に並べられており、筒状の内部自由空間が形成されている。
【0004】
この筒状の内部自由空間は、下方の側で非鉄金属溶融物のためのチャネルを形成しており、ここでは非鉄金属溶融物が処理(例えば特に精製(酸化及び還元)、合金化、若しくは均質化)されている。
【0005】
この処理工程(すなわち特に精製、合金化、及び均質化)は、実質的には非鉄金属溶融物の浴表面の下方に設けられたノズル(いわゆる浴下ノズル(underbath nozzles)若しくはサブマージノズル(submerged nozzles))、若しくは、上方から溶融物内に浸漬されたランスから、溶融物に向けてガスを吹き付けることによって行われている。
【0006】
銅の溶融物若しくは他の非鉄金属溶融物を酸化するために使用されるガスは、特に酸素、空気若しくはいくつかの他のガス(例えば塩素ガス)であって、ガスは、溶融物内を通過して流れる際に、非鉄金属溶融物内の異物と反応する。 この結果、異物は、相当する反応生成物若しくはスラグとして溶融物の表面上に堆積されるか、又は、浮遊ダスト若しくは工程の排ガスの形態で凝集体(aggregate)を残す。 浮遊ダスト及び工程の排ガスは、例えば燃焼ガスの通気口を通じて凝集体を残す(leave)場合がある。
【0007】
非鉄金属溶融物を均質化するために、不活性ガス(例えば窒素若しくはアルゴン)が累積的に若しくは代替的にノズルを通じて溶融物内に吹き付けられ、これにより不活性ガスは、非鉄金属溶融物を通じて流れるときに溶融物の混合及び均質化を生じさせる。
【0008】
非鉄金属溶融物を還元するために、還元ガス(例えば天然ガス、LPG、アンモニア、水素若しくは液体炭化水素(オイル))が、非鉄金属溶融物内に吹き付けられる。
【0009】
十分な時間の間、ガスが溶融物内を流れると、溶融物の効率的な処理が行われ得る。 ガスが溶融浴下端の噴射地点から浴表面まで上昇するために必要な時間は、実質的には浴の高さによって決定されるので、浴中を噴射ガスが流れるための十分な時間が保証されるような最小の浴高さが必要となる。
【0010】
ドラム型の炉から非鉄金属溶融物を迂回させるために、この炉は(複数の)開口部を備えており、非鉄金属溶融物がこれら開口部に到達するような大きな角度だけ炉が長手方向の軸周りに回動した後に、これら開口部から非鉄金属溶融物が流出することができる。
【0011】
ドラム型の炉はガス噴射による非鉄金属溶融物の前記処理に非常に適しているが、チャージ内の非鉄金属スクラップ若しくは固体材料を溶解するのには適していない。 急速且つ効率的な非鉄金属スクラップの溶融/溶解は、非鉄金属溶融浴の上部領域のみで効率的に行われ、この溶融浴は、浴上の内部自由空間内に開口しているバーナーによって直接的に加熱されている(fired)。 しかしながら、最小の浴高さが必要とされるために、非鉄金属スクラップは非鉄金属溶融物内に少なくとも部分的に沈んでいるので、非鉄金属スクラップは溶解され得ない、すなわち全体として速やかに且つ効率的に溶融され得ない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
従って好適には、非鉄金属スクラップを溶解するために追加的な炉が必要とされる。 溶鉱炉に加えて、いわゆる(静置式の)炎熱炉床炉(flame hearth furnac)若しくは(傾斜可能な)傾斜炉(tilt furnace)が、非鉄金属スクラップ若しくは固体チャージ材料を溶解するための対応する炉として特に使用されている。 傾斜炉においては、非鉄金属スクラップは比較的低い浴高さで、非鉄金属溶融物の大きな浴表面を以って溶解される。 浴下ノズルを通じて非鉄金属溶融物を十分に溶解し、若しくは他の処理を行うことは、炉を傾斜させることにより可能ではあるけれども、浴高さが低いので、これは相対的に効率的な方法ではない。 非鉄金属溶融物を傾斜炉から除去するためには、炉を数度傾斜させる必要がある。
【0013】
本発明は、スクラップ金属を溶解することができる一方で、非鉄金属(例えば銅)を、ガスを用いて効率的に加工(すなわち効率的に精製及び均質化)されるような工業用炉を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
このような目的を達成するために、本発明によれば、非鉄金属を溶解し、ガス処理するために:
− 鋼ジャケットと、
− 内部自由空間を囲繞し、前記鋼ジャケットの内側に位置する耐火ライニングと、
− 前記内部空間にガスを供給するための少なくとも1つの装置と、
− 前記内部空間を加熱するための少なくとも1つのバーナーと、
を備えてなり、
− 炉が水平方向の回動軸周りに少なくとも40°回動するように取り付けられており、
− 前記内部空間が非円形断面を備えている、
ことを特徴とする工業用炉が提供されている。
【0015】
この発明は、従来使用されていた実質的に非鉄金属をガス処理するためのドラム型の炉が、炉の内部空間が非円形の断面形状を有している場合に、溶融並びに精製及びガス処理の工程段階の各々をより効率的に行うことができるように最適化され得るという知見に基づくものである。
【0016】
従来技術によれば(内部空間が円形断面を備えていたため)、たとえ炉が長手方向の軸線周りに回動している場合でも、ドラム型の炉が回動される際の、溶融金属浴深さに対する浴表面の比率は常に同じであったが、内部空間が非円形断面を備えた炉の場合、炉を回動軸周りに回動させることによって、この比率を変更することができる。
【0017】
特に、そのような炉の断面は、この炉が、第1の位置(以下、「溶融位置("melting position")」ともいう。)及び第2の位置(以下、「ガス処理位置("gas treatment position")」ともいう。)へと回動可能であり、ここで、第1の位置での内部空間に存在している非鉄金属溶融物(以下、単に「金属溶融物("metal melt")」という。)の浴表面の浴深さに対する比率は、第2の位置での当該比率よりも大きくなるような寸法とすることができる。
【0018】
溶融位置は、溶融物の体積が同じであると仮定すると、浴深さ(すなわち浴の体積)に対する溶融物の浴表面の比率が、ガス処理位置における当該比率よりも大きくなっていることで特徴付けられている。
【0019】
炉を回動軸周りに回動させることにより、炉は、溶融位置からガス処理位置まで及びその逆方向に回動することができる。 好ましくは、炉は、回動軸周りに90°回動させることによって、溶融位置からガス処理位置まで及びその逆方向に確実に回動することが可能となっている。 しかしながら本発明によれば、浴深さ(及び/若しくは体積)に対する内部空間に存在している金属溶融物の浴表面の比率の十分な変化は、炉を少なくとも40°回動させることにより達成できることが判明しており、これにより、非鉄金属を、溶融位置において効率的に溶融すると共に、40°回動させた後にガス処理位置で処理することができる。
【0020】
それゆえ本発明によれば、発明性を有する工業用炉は、水平な回動軸周りで少なくとも40°回動可能であるように取り付けられている。 従って、炉を、少なくとも50°、70°、90°、120°、160°若しくは180°回動可能とすることもできる。 回動可能であることは、炉が、金属溶融物を開口部から外部(鋳造位置)へと迂回させることができる位置へ移動するためにも必要であるので、炉は、溶融位置とガス処理位置との間で、例えば40°〜120°若しくは70°〜120°正逆双方向に回動可能とされていると共に、溶融位置と鋳造位置との間で、40°〜180°若しくは90°〜180°正逆双方向に回動可能とされている。
【0021】
この炉は、ガスを内部空間に供給するための少なくとも1つの装置、例えば浴下ノズルを備えており、この装置を通じて、内部空間内に存在している非鉄金属溶融物をガス処理位置で処理することができる。 累積的に、炉は、ガスを内部空間に供給するための少なくとももう1つの装置を具備することができ、この装置を通じて、非鉄金属溶融物を溶融位置でも処理することができる。
【0022】
均一な量の溶融金属浴では、炉の断面形状は、
− 炉が溶融位置にある場合には、溶融金属は大きな浴表面積と小さな浴深さを有することによって、非鉄金属スクラップを溶解することができるような寸法とされ、
− 炉がガス処理位置にある場合には、溶融金属は、浴の下方で内部空間内にガスを供給するための装置を通じて吹き付けられるガスが、この位置で溶融金属浴へと吹き付けられ、この溶融金属浴を通じて流れるような(すなわち特に精製し、合金化し、均質に溶融金属を混合するために)寸法とされている。
【0023】
炉は、溶融位置とガス処理位置との間で、正逆双方向に回動可能とされているので、本発明の炉は、溶鉱炉として使用できると共に、同時に非鉄金属のガス処理炉としても使用することができる。
【0024】
本発明の炉は、実質的にどのような非円形断面でも有することができ、これにより、当該断面は幾何学平面において、回動軸に対して直交している。
【0025】
炉の断面形状を、内部空間の全長に亘って同じ形状とすることもできるし、異なる形状とすることもできる。 例えば、炉の断面形状を、内部空間において異なる地点では異なる形状に設計することができ、従って、これら異なる断面形状が、一の形状から他の形状に至る際に、例えば直線的若しくは湾曲したラインを形成することができる。
【0026】
本発明の一の態様によれば、炉の内部空間は、(例えば軸方向端部領域の一方若しくは双方で)円形の断面形状を有しており、各々の端部は、炉の中心に向かって非円形の断面形状を形成している。 炉の内部空間は、いくつかのセクションのみで、適宜に非円形の断面形状を有することもできる。
【0027】
非円形の断面形状のおかげで、炉の内部空間は(必然的に)異なる直径を有することとなる。 これにより、断面形状が一の最大直径と一の最小直径とを有するような内部空間が形成され、各々の直径は、任意的に互いに向かって、例えば直線的若しくは湾曲したラインを形成している。 最大直径と最小直径とが直線的なラインに沿って滑らかな移行状態を示す場合には、この断面形状は菱形状を為す。 最大直径と最小直径とが曲線的なラインに沿って(連続的な)滑らかな移行状態を示す場合には、この断面形状は楕円状(ellipse)若しくは長円状(oval)を為す。
【0028】
好ましい態様によれば、断面形状の最大直径と最小直径とは、互いに90°の角度で延在することもできる。 しかしながら実質的には、これら2つの直径は互いにどのような所望の角度でも為すことができ、例えば、30°〜90°、60°〜90°若しくは80°〜90°を為すことができる(ここで与えられた角度とは、2つの直径が為す小さな方の角度のことである。)。
【0029】
上述した楕円状、長円状若しくは菱面体晶状の断面形状に加えて、任意的に炉の内部空間を、例えば西洋ナシ状若しくは多角形状の断面形状とすることもできる。 多角形状の断面形状としては、例えば三角形状、四角形状、五角形状、六角形状とすることができる。
【0030】
しかしながら本発明の炉の内部空間は、楕円状若しくは長円状の断面形状を有することが好ましい。 内部空間が楕円状若しくは長円状の断面形状を有している場合には、楕円及び/若しくは長円の2つの主軸のうち、長い方の主軸の長さを、短い方の主軸の長さの1.2倍〜3倍若しくは1.6倍〜2.4倍とすることができる。
【0031】
好ましい態様によれば、内部空間の断面形状の最大直径は、炉の溶融位置において水平方向であるように設けられている。 換言すれば、溶融位置においては、炉の内部空間内の金属溶融物の浴表面は、この最大直径に対して平行に延在している。 しかしながら、溶融若しくは精製のために好適な、どのような他の位置も使用することができる。
【0032】
それゆえに、別の好ましい態様によれば、内部空間の断面形状の最小直径を、炉のガス処理位置において水平方向であるように設けることができる。 換言すれば、ガス処理位置においては、炉の内部空間内の金属溶融物の浴表面は、この最小直径に対して平行に延在している。
【0033】
内部空間が楕円状若しくは長円状の断面形状を有する場合には、2つの主軸のうち、長い方の主軸は、炉の溶融位置で水平方向に延在しており、従って、短い方の主軸は、炉のガス処理位置で水平方向に延在している。
【0034】
炉の内部空間は筒状とすることができ、例えばどのような非円形の断面形状でも有することができる。 炉の内部空間は好適には、楕円状若しくは長円状の断面形状を有する筒状を為している。 後者の断面形状の内部空間を有する場合には、筒状の軸線を、炉の回動軸に対して平行に延在させることができる。
【0035】
一の態様によれば、内部空間は楕円形状とされている。
【0036】
炉は、内部空間にガスを供給するための少なくとも1つの装置(以下、単に「ガス供給装置("gas supply device")」という。)を備えている。 ガスは金属溶融物を処理するため、すなわち、特に溶融物の精製、合金化若しくは均質な混合のために使用される。 そのようなガス供給装置は、一以上のノズル、例えばサブマージノズル若しくはガスパージングプラグ(gas purging plugs)を備えており、これらはいずれも、金属溶融物を処理する分野では公知である。 ノズル及び/若しくはガスパージングプラグの各々が、個々にガスを受け取るようにしても良いし、組合せて使用しても構わない。
【0037】
炉の内部空間内で金属溶融物を酸化させるためには、反応性のガス、特に空気、酸素、塩素ガス若しくはこれらの混合ガスが、ガス供給装置を通じて金属溶融物に供給される。
【0038】
均質な混合の効果(均質化)を改善するために、及び/若しくは金属溶融物をより均一とするために、不活性ガス(例えば窒素若しくはアルゴン)を、累積的若しくは代替的にガス供給装置を通じて金属溶融物内へ噴射することができる。
【0039】
更に、任意の適切な還元ガス、例えば天然ガス、LPG、アンモニア、水素若しくは液体炭化水素(オイル)を、金属溶融物の還元のために金属溶融物内へ噴射することができる。
【0040】
ガス供給装置は特に、2つの領域で内部空間に開口しており、
− 第1に、ガス供給装置(以下、単に「ガス処理位置のガス供給装置」とも言う。)は、ガス処理位置において、溶融浴の浴表面の下方に位置する領域で内部空間に開口することができる。 これらガス処理位置のガス供給装置は、ガスが、ガス処理位置での金属溶融物に供給されるように設けられる。 好ましくは、ガス処理位置のガス供給装置は、ガス処理位置において、溶融浴の浴表面の上方に位置している。
【0041】
− 第2に、ガス供給装置(以下、単に「溶融位置のガス供給装置」とも言う。)は、溶融位置において、溶融浴の浴表面の下方に位置する領域で内部空間に開口することができる。 これら溶融位置のガス供給装置は、ガスが、溶融位置にある場合に金属溶融物に供給されるように設けられる。 やはり好ましくは、溶融位置のガス供給装置は、ガス処理位置において、溶融浴の浴表面の上方に位置している。
【0042】
金属溶融物の予精製(prerefining)若しくは予混合(premixing)を、溶融位置のガス供給装置によって、炉の溶融位置において既に達成することができる。
【0043】
ガス供給装置をパス(path)すなわちラインに沿って内部空間に開口させることができる。
【0044】
ガス供給装置は、いつくかのパスに沿って配置されていることが好ましい。
【0045】
これらのパスを、例えば互いに略平行に延在させ、また例えば回動軸に対して平行に延在させることができる。
【0046】
溶融位置のガス供給装置及びガス処理位置のガス供給装置を、それぞれ一以上のパスに沿って内部空間に開口させることができる。 ガス処理位置のガス供給装置を複数のパスに沿って配置することができ、例えば、それらを、隣接しているパスに関してオフセットした配置で内部空間に開口するように配置することができる。 それゆえに、ガスを非常に均一に分布させて非鉄金属溶融物内に導入することができる。 従って、溶融位置のガス供給装置に関しても同じことが言える。
【0047】
好ましくは、ガス処理位置のガス供給装置が内部空間に開口する領域と、溶融位置のガス供給装置が内部空間に開口する領域とを設け、これら領域が、所定の回動角で互いにオフセットしているように配置されている(ここで、一の領域における回動角を決定するための基準点は、回動軸に対して平行に延在している中心軸として定義されている)。 ここで、これら2つの領域の回動角のオフセット量は、例えば5°〜180°、特に好ましくは30°〜170°、更に好ましくは70°〜150°とすることができる。 換言すれば、炉が溶融位置にある(従って、溶融位置のガス供給装置は、処理ガスを金属溶融物に最適に供給できるように、金属溶融浴の下に配置され得るような位置にある。)場合、次いで、炉は、ガス処理位置に至るまで、上で決定された所定角度だけ回動軸周りに回動されなければならない(従って、ガス処理位置のガス供給装置は、処理ガスを金属溶融物に最適に供給できるように、金属溶融浴の下方に配置され得るような位置にある。)。
【0048】
ガス処理位置のガス供給装置を、内部空間の断面形状の最大直径が、内部空間に面している耐火ライニングから成る内部空間壁部と交差している2点のうちの1点の上、若しくは該1点に近接して配置することができる。 このようにして、ガス処理位置における金属溶融物には、浴深さが最大の領域において処理ガスが供給されている。
【0049】
同様にして、溶融位置のガス供給装置を、内部空間の断面形状の最小直径が、内部空間に面している耐火ライニングから成る内部空間壁部と交差している2点のうちの1点の上、若しくは該1点に近接して配置することができる。 このようにして、溶融位置における金属溶融物には、浴深さが最大の領域において処理ガスが供給されている。
【0050】
回動軸を、炉の内部空間を通過させても構わない。
【0051】
内部空間が筒状を為している場合には、炉の回動軸を、前記筒状の軸線と同軸に延在させることができる。 別な態様によれば、回動軸を、内部空間の前記筒状の軸線に対してオフセットさせても構わない。
【0052】
炉の内部空間を加熱するために、炉には少なくとも1つのバーナーが設けられている。 少なくとも1つのバーナーを、内部空間の軸方向の端部上の側面(side face)で内部空間に開口させるか(側壁バーナー)、若しくは、鋼ジャケットの軸方向の端部領域上で内部空間に開口させることができる(ルーフバーナー)。 ルーフバーナーの場合は、内部空間の側面に近接している領域内で内部空間に開口している。
【0053】
炉の回動軸が炉の内部空間を通過している場合には、少なくとも1つの側壁バーナーを、回動軸が軸方向の2つの端部領域のうちの1つでライニングと交差している領域で、内部空間に開口させることができる。
【0054】
少なくとも1つのルーフバーナーを、軸方向の2つの端部領域のうちの1つのみに設け、内部空間から排ガスを除去するための装置を、2つの端部領域のうちの他の1つに配置させることができる。 この排ガス除去装置を、内部空間の側部または内部空間の外側面(lateral surface)に沿って、内部空間に開口させることができる。 この態様においては、排ガスは、軸方向の一の端部領域において炉の内部空間に導入され、軸方向の他の端部領域で除去されている。
【0055】
ここでは従来技術のどのようなバーナーも、適宜に使用することができる。
【0056】
代替的にバーナーに代えて、非鉄金属を誘導溶融する装置を使用することもできる。
【0057】
本発明の炉は、内部空間に非鉄金属を供給するために、外部から内部空間へと開口している少なくとも1つの開口部を備えている。 この開口部を、金属溶融物及びスクラップ金属の双方が、この開口部を通じて供給され得るような寸法に設計することができる。
【0058】
工業用炉は、外部から内部空間へと開口している少なくとも更にもう1つの開口部、すなわち、液状の非鉄金属を内部空間から外部へと送出するための開口部若しくはスラグを内部空間から除去することができるスラグ開口部(slag opening)、を備えている場合がある。
【0059】
非鉄金属を、単一の開口部を通じて炉に供給すると共に、融解された非鉄金属を、同一の開口部を通じて炉から送出することもできる。
【0060】
開口部を閉塞部材によって閉塞可能とすることもでき、これにより、金属溶融物が内部空間内でこの閉塞部材に負荷をかけている場合(例えば閉塞部材及び/若しくは開口部が浴表面よりも下にある場合)には、融解金属であっても、これら開口部を通じて内部空間から外部に貫通できないようにされている。
【0061】
発明性を有する工業用炉は、外側の鋼ジャケットによって共に保持されている。
【0062】
鋼ジャケットは、どのような所望の断面形状をもとることができ、例えば楕円状、長円状、円形状若しくは多角形状(すなわち例としては四角形状または八角形状)の断面形状とすることができる。
【0063】
発明性を有する工業用炉を長手方向の軸線周りに回動させるには、従来技術として知られている、非鉄金属を処理するために炉を回動及び/若しくは傾斜させる技術を実質的に流用することができる。
【0064】
鋼ジャケットが(少なくとも下方において)円形状の断面形状を有している場合には、鋼ジャケットをローラーベッド上に取付けて、ローラー上で回動軸周りに回動させることができる。
【0065】
別の態様によれば、炉を傾斜可能に設計し、傾斜機構(例えば油圧傾斜機構)によって軸受周りに傾斜させることができる。
【0066】
鋼ジャケットの内側には、内部自由空間を囲繞している耐火ライニングが設けられている。 この耐火ライニング用の耐火材料を選定するにあたっては、従来技術として知られている、非鉄金属を処理するために炉にライニングを敷設する技術を流用することができる。 例えば、酸化マグネシウム−クロムのレンガ、ケイ酸アルミニウムのレンガ、若しくは炭化ケイ素レンガを用いることができる。
【0067】
耐火ライニングは鋼ジャケット内で自立するように(self-supporting manner)設けられることが好ましい。 耐火材料を適宜に自立的に設けるにあたっては、(セメントを加熱するために)ドラム型の炉若しくは円管型の炉において、従来技術として知られている。 鋼ジャケットを囲繞するために保持部材でレンガを接着させる必要は無いが、その代わりに、レンガは360°の円弧状として相互に支持されている。 それゆえ炉は、長手方向の軸線周りに360°回動可能とされている。
【0068】
発明性を有する工業用炉は、銅、鉛、ニッケル、アルミニウム、錫、亜鉛、若しくはこれらの合金のようなどのような非鉄金属をも処理するために使用することができるが、特に銅を処理するのに好適である。
【0069】
本明細書に開示されている発明性を有する工業用炉の全ての特徴は、いかなる方法によっても組合せ可能であり、実際には、これら特徴は、個々に若しくは組合せて使用される。
【0070】
前記炉の追加的な特徴は他の出願書類(特に図面)から導出される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0071】
本発明の工業用炉の典型的な実施例が以下の図面の記述によって、より詳細に説明されている。
【0072】
ここで、図面はかなり概略的に示されている。
【0073】
図1において、全体として参照符号1が付された炉は、長円状の断面形状を有する略筒状の外形を備えており、この筒軸は、炉1の回動軸Dと同軸を為している。
【0074】
図1において、炉1は溶融位置にある。
【0075】
炉1は、内部自由空間Iを囲繞している内周面に酸化マグネシウム−クロム材料の耐火ライニング5が形成された外側の鋼ジャケット3を備えている。
【0076】
内部自由空間Iも長円状の断面形状を有する略筒状の形状とされており、これにより、内部自由空間Iの筒軸は、炉1の回動軸Dと同軸を為している。
【0077】
側壁の2つのバーナー9,11(図1においては、バーナー11のみ示されている)は、軸方向の2つの端面7r(図1右側)のうちの1つで内部自由空間Iに開口している。 反対側の請求項工面7lでは、開口部13が内部空間Iに開口しており、この開口部13を通じて、燃焼排ガス、浮遊ダストのような反応生成物及び工程の排ガスが内部空間Iから除去される。
【0078】
内部空間Iは低位側で、銅の溶融物15が位置され、斜線で示されたチャネルを形成している。
【0079】
炉1の外側面(lateral surface)には、複数の開口部17l,17r,19が形成されており、各々の開口部は鋼ジャケット3及びライニング5を貫通して内部空間Iに開口している。
【0080】
図1の溶融位置においては、開口部13,17l,17r,19及びバーナー9,11は、溶融浴15の面15oの上で内部空間I内に開口している。
【0081】
開口部17l,17rを通じて、炉1に銅溶融物及び/若しくは銅スクラップをチャージすることができる。 開口部17l,17rは、外側面の外側領域に形成されている。
【0082】
開口部19は、炉1の内部空間Iから銅溶融物15を導くように作用する。 開口部19は外側面の上側領域に形成されている。
【0083】
図2は、図1の炉1を上から見た図であって、すなわち、図1をB−B線に沿って切断した図である
【0084】
2つのバーナー9,11が回動軸Dの側で横方向にオフセットして内部空間Iに開口していることが理解できるであろう。
【0085】
図3は、図1において、炉をA−A線に沿って切断した図であって、内部空間Iの長円状の断面領域を示している。
【0086】
内部空間Iの当該断面領域の短い主軸(最小直径)には参照符号dminが付されており、長い主軸(最大直径)には参照符号dmaxが付されている。 長い主軸dmaxと短い主軸dminは互いに90°を為している。
【0087】
炉1の回動軸Dは図の平面に対して直立していると共に、断面領域の2つの主軸dmin、dmaxが交差する点で当該平面と交差している。
【0088】
前述のように、図3における炉1は溶融位置にある。 従って、内部空間Iの断面の長い主軸dmaxは水平方向に延在し、短い主軸dminは上下方向に延在している。
【0089】
ノズル23,25の形態のいくつかの溶融位置のガス供給装置が内部空間Iに開口している領域Sは、短い主軸dminと、耐火ライニング5及び内部空間Iにより形成された内部空間Iの壁部との低位の交差点21で形成されている。
【0090】
溶融位置のガス供給装置23,25は、いくつかの供給装置が第1のパスに沿ったオリフィスポイント(orifice points)23mで内部空間Iに開口しており、他の供給装置が第2のパスに沿った開口点(opening points)25mで内部空間Iに開口するように配置されている。 オリフィスポイント23m,25mは、一のパスから次のパスまで、互いにオフセットするように配置されている。 2つのパスはそれぞれ、図3における図中の平面に対して直交して延在しており、それぞれ、オリフィスポイント23m,25mを通過している。
【0091】
これにより、双方のパスは回動軸Dに対して平行に延在している。 図示目的のために、オリフィスポイント23m,25mのパスが図2に示されており、ここで、図2におけるオリフィスポイントは図中の平面の下方に設けられている。
【0092】
内部空間Iに面しており、長い主軸dmaxが内部空間Iの壁部と横方向(ここでは左側)で交差する交差点27に隣接して、ノズル29,31の形態のいくつかのガス処理位置のガス供給装置が、溶融位置のガス供給装置23,25と同様に対応して内部空間Iに開口している領域Rが形成されている。
【0093】
2つのパス、ガス処理位置のガス供給装置29,31のオリフィスポイント29m,31mがこれらパスに沿って配置されているのであるが、従って、これらのパスも回動軸Dに対して平行に延在している。
【0094】
ガス処理位置のガス供給装置29,31のオリフィスポイント29m,31mが、図3によれば溶融位置にある場合は、ガス供給装置29,31は溶融浴15の表面15oよりも上方で内部空間Iに開口するが、溶融位置のガス供給装置23,25のオリフィスポイント23m,25mが、図3によれば溶融位置にある場合は、ガス供給装置29,31は当然に溶融浴15の表面15oよりも下方で内部空間Iに開口する。
【0095】
溶融位置のガス供給装置23,25が内部空間Iに開口する領域、及びガス処理位置のガス供給装置29,31が内部空間Iに開口する領域は、図3においては、130°の回動角αによって互いにオフセットされている。
【0096】
図示目的のために、ガス処理位置のガス供給装置29,31が図2に示されている。 参照符号29が付されたガス処理位置のガス供給装置の第1の部分が、図中の平面よりも僅かに上の平面に位置している一方で、参照符号31が付されたガス処理位置のガス供給装置の別の部分が、前述した平面よりも上の別の平面において、前者に対してオフセットされている。
【0097】
バーナー9,11及び開口部13の位置は、図3においてサークルで示されている。
【0098】
金属溶融物15が、内部空間Iに面している大きな浴表面15oを有していると同時に低い浴深さしか有していないことが、図3から良く理解されるであろう。 それゆえに、内部空間Iのフリー部分に存在している燃焼ガスは金属溶融物15の浴表面15oと直接的に接触しており、前記表面は溶融位置にある場合は比較的おおきくなっている。 従って、金属溶融物15は非常に速やか且つ効果的に加熱され得ると共に、これにより、銅スクラップは速やか且つ効果的に溶融され得る。
【0099】
同時に、ガスは溶融位置のガス供給装置23,25を通じて金属溶融物15に供給され、金属浴の処理が可能となる。 しかしながら、金属溶融物は比較的小さな浴高さしか有していないので、金属溶融物内に噴射されるガスは金属溶融物15の表面15oへと比較的迅速に流れ、それゆえに、ガスは比較的短時間しか金属溶融物15内に残存せず、従って、金属溶融物15を効果的に処理することとはなり得ない。
【0100】
金属溶融物15を効率的に処理することができるように、炉1はガス処理位置へと移動される。 そうするためには、炉1を、図4に示されるガス処理位置に到達するまで、図3に示される溶融位置から回動軸D周りに反時計方向に90°回動させる。
【0101】
図4に示されるガス処理位置においては、短い主軸dminは水平方向に延在していると共に、ガス処理位置のガス供給装置29,31のオリフィスポイント29m,31mは浴表面15oの下方に位置しており、その一方で、溶融位置のガス供給装置23,25のオリフィスポイント23m,25mは浴表面15oの上方に位置している。
【0102】
ガス処理位置においては、処理ガスを直ちにガス処理位置のガス供給装置29,31を通じて金属溶融物15へと供給することができ、これにより、浴高さが比較的高くなり、ガスが、噴射のオリフィスポイント29m,31mから浴表面15oへと金属溶融物を通過して比較的長い距離を移動し、それゆえに、ガスが比較的長時間に亘って金属溶融物15を効果的に処理するので、効果的な精製及び/若しくは均質な混合が生ぜしめられる。
【0103】
炉1を、回動軸周りに更に57°(すなわち溶融位置に対して合計147°の回動角)反時計方向に回動させると、炉1は図5に示されるような鋳造位置にある。 この位置においては、金属溶融物を内部空間I及び出口から送出するための開口部19のオリフィスポイント19mは、金属溶融物の浴表面の下方で炉1の外側に位置しており、金属溶融物が炉1の内部空間Iから送出され得る。
【図面の簡単な説明】
【0104】
【図1】回動軸に対して平行な切断線に沿った炉の側面図である。
【図2】図1において、炉を回動軸に対して平行なB−B線に沿って切断した平面図である。
【図3】図1において、炉を回動軸に対して垂直なA−A線に沿って切断した側面図である。
【図4】図3において、炉を90°回動させた図である。
【図5】図3において、炉を147°回動させた図である。
【符号の説明】
【0105】
1 炉
3 鋼ジャケット
5 耐火ライニング
7l,7r 軸方向の端面
9,11 バーナー
13,17l,17r,19 開口部
15 溶融浴(銅溶融物)
15o 溶融浴15の面
21 交差点
23,25 溶融位置のガス供給装置
29,31 ガス処理位置のガス供給装置
23m,25m,29m,31m オリフィスポイント
D 回動軸
I 内部自由空間
max 長い主軸(最大直径)
min 短い主軸(最小直径)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
非鉄金属を溶解し、ガス処理するための以下の特徴を備えた工業用炉であって、
a) 鋼ジャケット(3)と、
b) 内部自由空間(I)を囲繞し、前記鋼ジャケット(3)の内側に設けられた耐火ライニング(5)と、
c) 前記内部空間(I)にガスを供給するための少なくとも1つの装置(23,25,29,31)と、
d) 前記内部空間(I)を加熱するための少なくとも1つのバーナー(9,11)と、
を備えてなり、
e) 炉(1)が水平方向の回動軸(D)周りに少なくとも40°回動するように取り付けられており、
f) 前記内部空間(I)が非円形断面を備えている、
ことを特徴とする工業用炉。
【請求項2】
楕円状、長円状、西洋ナシ状、菱面体晶状、若しくは多角形状の断面形状を備えていることを特徴とする請求項1に記載の工業用炉。
【請求項3】
楕円状若しくは長円状の断面形状を備え、該楕円若しくは長円の2つの主軸のうち、長い方の主軸の長さが、短い方の主軸の長さの1.2倍〜3倍であることを特徴とする請求項1に記載の工業用炉。
【請求項4】
前記内部空間(I)が、楕円状若しくは長円状の断面形状を有する筒形状を為していることを特徴とする請求項1に記載の工業用炉。
【請求項5】
前記筒形状の軸線が、前記回動軸(D)に対して平行に延在していることを特徴とする請求項4に記載の工業用炉。
【請求項6】
前記回動軸(D)が、前記内部空間(I)を通過していることを特徴とする請求項1に記載の工業用炉。
【請求項7】
前記回動軸(D)が、前記筒形状の軸線上にあることを特徴とする請求項4に記載の工業用炉。
【請求項8】
前記回動軸(D)が、前記筒形状の軸線からオフセットしていることを特徴とする請求項4に記載の工業用炉。
【請求項9】
少なくとも1つの前記バーナー(9,11)が、例えばルーフバーナーとしても、前記内部空間(I)の軸方向の端面のうちの1つ(7r)の上で、若しくは、前記鋼ジャケット(3)の軸方向の一の端部領域上で、前記内部空間(I)に開口していることを特徴とする請求項1に記載の工業用炉。
【請求項10】
前記内部空間(I)から排ガスを放出するための装置(13)が、前記内部空間(I)の軸方向の端面のうちの他の1つ(7l)の上に、若しくは、前記鋼ジャケット(3)の軸方向の他の端部領域上に、配置されていることを特徴とする請求項9に記載の工業用炉。
【請求項11】
ガスを前記内部空間(I)に供給するための装置(23,25,29,31)が、前記回動軸(D)に関して、互いに所定の回動角だけオフセットしている関係にある2つの領域(S,R)で、前記内部空間(I)に開口していることを特徴とする請求項1に記載の工業用炉。
【請求項12】
前記2つの領域(S,R)が、互いに回動角で5°〜180°オフセットしている関係にあることを特徴とする請求項11に記載の工業用炉。
【請求項13】
前記2つの領域(S,R)が、互いに回動角で30°〜170°オフセットしている関係にあることを特徴とする請求項11に記載の工業用炉。
【請求項14】
非鉄金属を前記内部空間(I)に供給するために、前記内部空間(I)に開口している少なくとも1つの開口部(17l,17r)を備えていることを特徴とする請求項1に記載の工業用炉。
【請求項15】
溶融非鉄金属を前記内部空間(I)から外部に送出するために、前記内部空間(I)に開口している少なくとも1つの開口部(19)を備えていることを特徴とする請求項1に記載の工業用炉。
【請求項16】
前記鋼ジャケット(3)の外表面が、略円筒状、略楕円断面を有する筒状、若しくは略長円断面を有する筒状を為していることを特徴とする請求項1に記載の工業用炉。
【請求項17】
前記耐火ライニング(5)が、前記鋼ジャケット(3)内で自立するように設けられていることを特徴とする請求項1に記載の工業用炉。
【請求項18】
前記回動軸(D)周りに、回動角で少なくとも50°若しくは少なくとも70°回動可能とされていることを特徴とする請求項1に記載の工業用炉。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公表番号】特表2007−503567(P2007−503567A)
【公表日】平成19年2月22日(2007.2.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−524235(P2006−524235)
【出願日】平成16年7月8日(2004.7.8)
【国際出願番号】PCT/EP2004/007452
【国際公開番号】WO2005/031234
【国際公開日】平成17年4月7日(2005.4.7)
【出願人】(506063293)メルツ−ガウチ・インダストリオフェナンラーゲン・ゲーエムベーハー (2)
【Fターム(参考)】