説明

左右連動操作装置

【課題】左右グリップの間に操作ガタを生じ難くすることができる左右連動操作を提供する。
【解決手段】左右のグリップ3a,3bは、ユニバーサルジョイント4と4本のワイヤーケーブル2a〜2dとを介して連結される。グリップ3a,3bは、一方の操作がワイヤーケーブル2a〜2dを介して他方に伝達されることにより、左右のグリップ3a,3bが連動する。左グリップ3bのユニバーサルジョイント4において、その出力軸に一対の磁力クラッチ部34,35からなる磁気式のクラッチ機構33を設ける。そして、グリップ3a,3bが過荷重操作されたときには、クラッチ機構33により左グリップ3bを空転させ、過荷重をグリップ3a,3bから逃がすようにする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、左右のグリップが連動して動く左右連動操作装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車両等の乗り物の入力操作装置として、例えば図15に示す左右連動操作装置81(特許文献1,2等参照)が考案されている。左右連動操作装置81には、左右に一対のグリップ82,82が設けられている。グリップ82,82は、それぞれのグリップ支持部83にユニバーサルジョイント84を介して連結されている。このため、グリップ82,82は、左右方向の回動操作と、上下方向の傾倒操作とが可能である。本例の場合、グリップ82,82の左右回動操作が操舵操作に、グリップ82,82の上下傾倒操作が加減速操作に割り当てられている。
【0003】
左右のグリップ82,82は、4本のワイヤーケーブル85a〜85dによって連結されている。これら4本のワイヤーケーブル85a〜85dのうち、一対の85a,85bが操舵伝達用であり、一対の85c,85dが加減速伝達用となっている。例えば、右グリップ82aが中立位置から右操舵されると、一対のケーブル85a,85bのうち一方が引き込まれるとともに他方が押し出されることにより、右方向の回転力が左グリップ82bに伝達される。よって、左グリップ82bが右グリップ82aに追従して右回転する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−93415号公報
【特許文献2】特開2009−93416号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、左右連動操作装置81では、グリップ82a,82bの回動操作のとき、例えば図16(a)に示すように、グリップ82a,82bを互いに逆方向に操作したり、或いは図16(b)に示すように、グリップ82a,82bの一方を固定した状態で他方を操作したりすると、グリップ82a,82bに過荷重が加わってしまう。この過荷重は、部品として耐久性の高くないユニバーサルジョイント84に集中するため、ユニバーサルジョイント84が変形する可能性がある。こうなると、ユニバーサルジョイント84にガタが発生し、左右のグリップ82a,82bが連動しない問題に繋がる。
【0006】
なお、この問題は、左右のグリップ82a,82bが4本のワイヤーケーブル85a〜85dで繋がる型に限らず、種々の型のものにも同様に言えることである。
本発明の目的は、左右グリップの間に操作ガタを生じ難くすることができる左右連動操作を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記問題点を解決するために、左右のグリップの一方が操作されたとき、他方のグリップが一方の前記グリップの動きに追従することにより、左右の前記グリップが連動する左右連動操作装置において、前記グリップが通常荷重で軸回りに回動操作されたとき、その操作力の伝達経路上に位置する一対のクラッチ部材を連れ動きさせることにより、左右の前記グリップを連動させ、前記グリップが過荷重で前記回動操作されたとき、一対の前記クラッチ部材を機械的に切り離すことにより、前記過荷重を当該グリップから逃がすクラッチ機構を備えたことを要旨とする。
【0008】
この構成によれば、グリップが過荷重操作されたときには、グリップに設けられた一対のクラッチ部材が切れることにより、左右のグリップの一方が他方に対して空転するので、グリップに加わった過荷重がグリップから逃がされる。よって、グリップの各部品に過荷重が加わり難くなるので、過荷重を要因とする部品変形がグリップに生じ難くなる。このため、左右のグリップの間に操作ガタを生じ難くすることが可能となる。
【0009】
本発明では、前記クラッチ機構は、磁石の磁気的な吸着力を利用した磁気式クラッチ機構であることを要旨とする。
この構成によれば、クラッチ機構の構造を、磁石を使用した簡素な構造とすることが可能となる。
【0010】
本発明では、左右の前記グリップの一方が操作されたとき、その操作力がケーブル線を介して他方の前記グリップに伝達されて、当該他方のグリップが前記一方のグリップに追従する動きをとることを要旨とする。
【0011】
この構成によれば、一方のグリップの操作力をケーブル線にて機械的に他方のグリップに伝達するので、複雑な機構を用いることなく、左右のグリップを連動させることが可能となる。
【0012】
本発明では、左右の前記グリップは、軸回りの回動操作と軸交差方向への傾倒操作とが可能であり、操作力の伝達時において互いに逆方向に動く2本のケーブル線を、前記回動操作と前記傾倒操作との各々に設けることにより、合計4本の前記ケーブル線にて連結されていることを要旨とする。
【0013】
この構成によれば、一方のグリップに加えられた操作力を、2本(一対)のケーブル線の一方の引き動作と他方の押し動作とによって他方のグリップに伝達することにより、左右のグリップの一方を他方に追従させるので、応答性よく左右のグリップを連動させることが可能となる。
【0014】
本発明では、前記クラッチ機構によって左右のグリップが機械的に切り離されたとき、前記グリップを操作する際に必要な操作力を左右の前記グリップで異ならせることにより、前記クラッチ機構が機能していることを操作者に通知する操作感切換機構を備えたことを要旨とする。
【0015】
この構成によれば、クラッチ機構が機能すると、操作感切換機構が機能して左右のグリップで操作感が異なる状態となる。よって、左右のグリップがクラッチ機構によって機械的に切り離されたことを、操作者に通知することが可能となるので、装置として機能性の高いものとすることが可能となる。
【0016】
本発明では、前記クラッチ機構が機能しているか否かを検出する検出手段と、前記検出手段の検出結果を基に、前記クラッチ機構が機能していると判断したとき、その旨を視覚的又は聴覚的に操作者に報知する報知手段とを備えたことを要旨とする。
【0017】
この構成によれば、クラッチ機構が機能したときには、その旨が報知手段によって視覚的又は聴覚的に操作者に報知されるので、クラッチ機構が機能していることを、より明確に操作者に通知することが可能となる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、左右のグリップが連動する左右連動操作装置において、左右グリップの間に操作ガタを生じ難くすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】第1実施形態の左右連動操作装置の斜視図。
【図2】左グリップを斜め前方から見た拡大斜視図。
【図3】左グリップの斜め後方から見た拡大斜視図。
【図4】グリップのかさ歯車付近の拡大斜視図。
【図5】グリップ回転操作時の左右連動操作装置の動作状態を示し、(a)は右グリップの側面図、(b)は左グリップの側面図。
【図6】グリップ傾倒操作時の左右連動操作装置の動作状態を示し、(a)は右グリップの側面図、(b)は左グリップの側面図。
【図7】傾倒操作戻し機構の構成を示し、(a)はグリップが中立位置のときの側面図、(b)はグリップを下方向に倒し操作したときの側面図。
【図8】クラッチ機構の概略構成を示す模式図。
【図9】操作感切換機構の構成図。
【図10】左右連動操作装置の電気的構成を示すブロック図。
【図11】(a)は2つの磁力クラッチ部が連れ回りしたときの状態図、(b)は第1磁力クラッチ部が空転したときの状態図。
【図12】第2実施形態のクラッチ機構の概略構成を示す斜視図。
【図13】(a)は2つの磁力クラッチ部が連れ回りしたときの状態図、(b)は第1磁力クラッチ部が空転したときの状態図。
【図14】別例のクラッチ機構の構成図。
【図15】従来の左右連動操作装置の斜視図。
【図16】(a)はグリップが逆操作されたときの状態を示す背面図、(b)はグリップが片側操作されたときの状態を示す背面図。
【発明を実施するための形態】
【0020】
(第1実施形態)
以下、本発明を車両に具体化した左右連動操作装置の第1実施形態を図1〜図11に従って説明する。
【0021】
図1〜図3に示すように、左右連動操作装置1には、ワイヤーケーブル2(本例は4本の2a〜2d)の両先端にグリップ3,3が取り付けられている。本例の場合、2つのグリップ3,3の一方を右グリップ3aと称し、他方を左グリップ3bと称する。なお、左右のグリップ3a,3bの構造は部品配置が左右対称をとるものの、基本的な構造は同じであるので、ここでは左右をまとめて説明する。また、ワイヤーケーブル2がケーブル線に相当する。
【0022】
図2及び図3に示すように、グリップ3は、ユニバーサルジョイント4を介してグリップ支持部5のジョイント連結部6に回動自在に連結されている。ユニバーサルジョイント4は、2部品がある角度で交わっていても一方から他方に動力を伝達可能な継ぎ手、いわゆる自在継ぎ手の一種である。ユニバーサルジョイント4には、略カップ状のヨーク本体7に可動ヨーク8が回動可能に取り付けられている。本例のグリップ3は、ヨーク本体7における出力軸7aの軸心L1回り(左右方向)の回動操作と、可動ヨーク8における連結軸8aの軸心L2回り(上下方向)の傾倒操作が可能となっている。なお、軸心L1回りが軸回りに相当し、これと交わる方向が軸交差方向に相当する。
【0023】
本例の場合、グリップ3を中立位置から右に回動操作すると、車両が右旋回し、グリップ3を中立位置から左に回動操作すると、車両が左旋回する。また、グリップ3を中立位置から下方に傾倒操作すると、車両が加速し、下方に倒し込んだグリップ3を上方に傾倒操作すると、車両が減速する。
【0024】
ワイヤーケーブル2a〜2dは、一方のグリップ3が中立位置から回動操作(操舵操作)されたとき、その操舵操作力を他方のグリップ3に伝達する操舵操作力伝達用の2a,2bと、一方のグリップ3が中立位置から傾倒操作(加減速操作)されたとき、その加減速操作力を他方のグリップ3に伝達する加減速操作力伝達用の2c,2dとからなる。ワイヤーケーブル2a〜2dには、1本のケーブル線で操作側の引き動作及び押し動作の両方を相手側に伝達することが可能なプッシュプルケーブルが使用されている。
【0025】
グリップ支持部5の先端には、グリップ3と一体に上下方向に傾倒するアーム9が枢支されている。アーム9には、ユニバーサルジョイント4の軸方向に孔の開いた貫通孔10(図3参照)が形成され、この貫通孔10にユニバーサルジョイント4の可動ヨーク8が軸支されている。
【0026】
図4に示すように、ユニバーサルジョイント4の基端には、かさ歯車11を介して略円板状の可動片12が連結されている。可動片12は、中心軸13がグリップ3の幅方向(図2のX軸方向)を向き、中心軸13回りに回動可能である。また、かさ歯車11は、ユニバーサルジョイント4の出力軸7aの端部に形成された駆動歯車14が、可動片12に形成された従動歯車15に噛合されている。かさ歯車11は、ユニバーサルジョイント4の図4における矢印A方向の回転力を、略90度向きが異なる可動片12の同図の矢印B方向の回転力に変換して可動片12に伝達する。
【0027】
図5及び図6に示すように、操舵操作伝達用ワイヤーケーブル2aの一端は、右グリップ3aの可動片12の上部に連結された回動継ぎ手16に連結され、左グリップ3bの可動片12の上部に連結された回動継ぎ手16に他端が連結されている。操舵操作伝達用ワイヤーケーブル2bの一端は、右グリップ3aの可動片12の下部に連結された回動継ぎ手17に一端が連結され、左グリップ3bの可動片12の下部に連結された回動継ぎ手17に他端が連結されている。
【0028】
また、加減速操作伝達用ワイヤーケーブル2cの一端は、右グリップ3aのアーム9の上部に連結された回動継ぎ手18に連結され、左グリップ3bのアーム9の下部に連結された回動継ぎ手19に他端が連結されている。加減速操作伝達用ワイヤーケーブル2dの一端は、右グリップ3aのアーム9の下部に連結された回動継ぎ手19に連結され、左グリップ3bのアーム9の上部に連結された回動継ぎ手18に他端が連結されている。つまり、加減速操作伝達用ワイヤーケーブル2c,2dは、左右のグリップ3a,3bに上下が入れ換えて接続されている。
【0029】
図5(a)に示すように、右グリップ3aが例えば右に回転操作されると、ユニバーサルジョイント4が同図の矢印C1方向に回転するとともに、可動片12が同図の矢印D1方向に回転する。よって、右グリップ3aでは、操舵操作伝達用ワイヤーケーブル2aが奥に押されるとともに、操舵操作伝達用ワイヤーケーブル2bが手前に引き込まれる。このため、左グリップ3bでは、操舵操作伝達用ワイヤーケーブル2aが手前に引き込まれるとともに、操舵操作伝達用ワイヤーケーブル2bが奥に押される。従って、可動片12が図5(b)の矢印D2方向に回転するため、左グリップ3bのユニバーサルジョイント4が右グリップ3aと同じ矢印C1方向に回転し、左グリップ3bが右グリップ3aに追従して右回転する。
【0030】
また、図6(a)に示すように、右グリップ3aが例えば下方向に傾倒操作されると、グリップ3a及びアーム9が一体となって同図の矢印C2方向に傾倒する。このとき、右グリップ3aでは、上の加減速操作伝達用ワイヤーケーブル2cが手前に引き込まれ、下の加減速操作伝達用ワイヤーケーブル2dが奥に押し込まれる。よって、図6(b)に示すように、左グリップ3bでは、加減速操作伝達用ワイヤーケーブル2dによって上部が押されるとともに、加減速操作伝達用ワイヤーケーブル2cによって下部が引き込まれる。このため、左グリップ3bが右グリップ3aに追従して下方に傾倒する。
【0031】
図2及び図3に示すように、グリップ3とアーム9との間には、グリップ3の回転量を規制するストッパ部20が形成されている。グリップ3が中立位置から目一杯回動操作されると、ストッパ部20がアーム9の規制片21に当接して、それ以上の回動操作が不可となる。なお、規制片21は、右回動操作時及び左回動操作時の一対ある。
【0032】
図3及び図5(b)に示すように、グリップ3とアーム9との間には、左右方向に回動操作されたグリップ3を元の中立位置に復帰させる戻し付勢部材22が設けられている。戻し付勢部材22は、例えばトーションばね等が使用され、両端がアーム9とストッパ部20に引っ掛かった状態にある。
【0033】
図7(a),(b)に示すように、グリップ3には、上下方向に傾倒操作されたグリップ3を元の中立位置に復帰させる傾倒操作戻し機構23が設けられている。この場合、グリップ支持部5とアーム9との間には、一対の戻しアーム部材24,25が枢支されている。第1戻しアーム部材24は、中立位置から下方向に傾倒操作されたグリップ3を中立位置に戻すものであり、グリップ幅方向に延びる軸24a回りに回動可能である。第1戻しアーム部材24の下端には、第1戻しアーム部材24に復帰力を付与する戻し付勢部材26が取り付けられている。戻し付勢部材26は、例えばコイルばねが使用される。
【0034】
また、第2戻しアーム部材25は、中立位置から上方向に傾倒操作されたグリップ3を中立位置に戻すものであり、グリップ幅方向に延びる軸25a回りに回動可能である。第2戻しアーム部材25の上端には、第2戻しアーム部材25に復帰力を付与する戻し付勢部材27が取り付けられている。戻し付勢部材27は、例えばコイルばねが使用される。
【0035】
一方、アーム9には、グリップ3の加減速操作時に戻しアーム部材24,25を押し込む係止ピン29が突設されている。係止ピン29は、グリップ3が中立位置のとき、一対の戻しアーム部材24,25に挟まれるように配置される。
【0036】
図7(a)に示す状態のとき、例えばグリップ3が下方に傾倒操作されると、係止ピン29が第1戻しアーム部材24を上方に押し上げることにより、第1戻しアーム部材24が同図の矢印E1方向に回動する。そして、図7(b)に示す下方向の傾倒操作後、グリップ3から手が離されると、第1戻しアーム部材24が戻し付勢部材26の付勢力によって同図の矢印E2方向に回動することにより、第1戻しアーム部材24が係止ピン29を下に押し、グリップ3が元の中立位置に復帰する。
【0037】
図4に示すように、ユニバーサルジョイント4の出力軸7aには、ジョイント連結部6の内部において操舵側ポテンショメータ30が接続されている。操舵側ポテンショメータ30は、ユニバーサルジョイント4の出力軸7aの回転量を検出することにより、グリップ3の操舵量を検出する。また、アーム9には、複数のギヤからなるギヤ機構31を介して加減速側ポテンショメータ32が接続されている。加減速側ポテンショメータ32は、グリップ加減速時におけるギヤ機構31のギヤ回転量を検出することにより、グリップ3の加減速操作量を検出する。
【0038】
図2〜図4及び図8に示すように、左右のグリップ3a,3bのうち、例えば利き手で操作されない従グリップ(本例は左グリップ3b)には、グリップ回動操作時においてグリップ3に過荷重が加わったとき、左右のグリップ3a,3bを機械的に切り離すクラッチ機構33が設けられている。過荷重操作には、背景技術で述べたような左右のグリップ3a,3bを互いに逆方向に操作する逆操作や、グリップ3a,3bの一方に力を入れて固定した状態で他方を操作する片側操作などがある。
【0039】
この場合、左グリップ3bにおいてユニバーサルジョイント4の出力軸7aが2分割されるとともに、この分割部分に一対の磁力クラッチ部34,35が取り付けられている。磁力クラッチ部34,35は、いわゆる磁石の磁力によって結合可能なクラッチの一種であって、略円板状に形成されている。本例においては、図8に示すように、2分割した出力軸7aのうち、グリップ3側を駆動軸36とし、ワイヤーケーブル2側を従動軸37とすると、駆動軸36に第1磁力クラッチ部34が取り付けられ、従動軸37に第2磁力クラッチ部35が取り付けられている。なお、磁力クラッチ部34,35がクラッチ部材を構成する。
【0040】
図8に示すように、一対の磁力クラッチ部34,35には、互いに対向する位置に異なる磁極が配置された着磁パターンが形成されている。本例の場合、各クラッチ部34,35には、N極及びS極が各々1つずつ形成され、これら磁極がクラッチ部34,35で互い違いに配置されている。つまり、第1磁力クラッチ部34は、上部がN極に着磁され、下部がS極に着磁されている。また、第2磁力クラッチ部35は、上部がS極に着磁され、下部がN極に着磁されている。
【0041】
クラッチ機構33は、互いに向き合うN極及びS極の磁気的な吸着力により、駆動軸36及び従動軸37を機械的に連結する。そして、グリップ回動操作時においてグリップ3に過荷重が加わったとき、過荷重が磁石吸着力を超えると、第1磁力クラッチ部34が第2磁力クラッチ部35に対して空転(相対回転)することにより、駆動軸36と従動軸37とが機械的に分離する。よって、左右のグリップ3a,3bが互いに独立して動くようになるので、過荷重がグリップ3から逃がされる。
【0042】
グリップ3a,3bは、中立位置を基点に左右に略±40度まで操舵操作が可能である。磁力クラッチ部34,35のN極及びS極の着磁パターンは、左グリップ3bの空転時において左グリップ3bがフル操作されても、左グリップ3bから手を離すと、磁力クラッチ部34,35の間に働く斥力によって左グリップ3bが元の中立位置に戻るパターンに形成されている。つまり、左グリップ3bの空転時、磁力クラッチ部34,35のN極とS極とが対面するため、その斥力によって左グリップ3bが中立位置に戻る。
【0043】
図9に示すように、左右連動操作装置1には、クラッチ機構33が機能したことをグリップ3の操作感覚によって操作者に通知する操作感切換機構38が設けられている。この場合、左グリップ3bの従動軸37には、回動操作された左グリップ3bに戻し力を付与する副戻し付勢部材39が設けられている。副戻し付勢部材39は、例えばトーションばね等が使用され、一端が従動軸37に取り付けられ、他端がジョイント連結部6に取り付けられている。副戻し付勢部材39は、左グリップ3bの根元の戻し付勢部材22bと協同して、左グリップ3bに戻し力を付与する。
【0044】
本例の場合、右グリップ3a(主グリップ)の戻し付勢部材22aの付勢力をF1とし、左グリップ3b(従グリップ)の戻し付勢部材22bの付勢力をF2とし、副戻し付勢部材39の付勢力をF3とすると、「F1=F2+F3」の関係を満たす力バランスに設定されている。
【0045】
よって、クラッチ機構33が機能せず、クラッチ部34,35が機械的に連結しているときには、上式が成立するので、左右のグリップ3a,3bには同じ操作負荷がかかる。一方、クラッチ機構33が機能して、左グリップ3bがワイヤーケーブル2a,2bから切り離されると、左グリップ3bには戻し付勢部材22bの付勢力F2しか利かず、左グリップ3bには軽い操作力しか発生しなくなる。よって、左右のグリップ3a,3bで操作荷重が異なるため、クラッチ機構33が利いていることが操作者に通知される。
【0046】
図10に示すように、左右連動操作装置1には、クラッチ機構33が機能していることを操作者に視覚的又は聴覚的に報知する報知機構40が設けられている。この場合、図8に示すように、クラッチ部34,35には、クラッチ機構33が機能したか否かを検出するクラッチ動作検出部41が設けられている。クラッチ動作検出部41は、例えば光センサが使用され、クラッチ部34,35の一方に投光部41aが取り付けられ、他方に受光部41bが取り付けられている。また、視覚的又は聴覚的な報知をする報知機器42には、例えば車内のディスプレイやスピーカなどがある。なお、クラッチ動作検出部41が検出手段に相当し、報知機器42が報知手段を構成する。
【0047】
一対のクラッチ部34,35が通常位置で吸着しているとき、投光部41aと受光部41bとが向き合う位置に配置される。そして、クラッチ機構33が機能すると、投光部41aと受光部41bとの位置関係がずれて光を受光できなくなるので、これによりクラッチ機構33の動作を検出する。クラッチ機構33の動作がクラッチ動作検出部41により検出されると、報知機器42によりその旨が通知される。
【0048】
図10に示すように、左右連動操作装置1には、左右連動操作装置1を統括制御するコントローラ43が設けられている。コントローラ43には、ポテンショメータ30,32、クラッチ動作検出部41、報知機器42が接続されている。コントローラ43は、ポテンショメータ30,32から出力される検出信号を基に左右のグリップ3a,3bの操舵量及び加減速操作量を演算し、これら情報を必要とする他のECUに操舵量及び加減速操作量の情報を出力する。
【0049】
また、コントローラ43は、ポテンショメータ30,32から入力する検出信号を基に、左右のグリップ3a,3bが正しく連動しているか否かを常時監視する。さらに、コントローラ43は、クラッチ動作検出部41からの検出信号を基に、クラッチ機構33が機能しているか否かを監視し、クラッチ機構33が機能した際、報知機器42を動作させることにより、グリップ3に付与された過荷重がクラッチ機構33により逃がされていることを操作者に通知する。なお、コントローラ43が報知手段を構成する。
【0050】
次に、本例の左右連動操作装置1の作用/効果を説明する。
例えば、グリップ3a,3bが通常荷重で回動操作(操舵操作)されたときは、2枚の磁力クラッチ部34,35の吸着力よりも、グリップ3に加わる操作荷重の方が小さくなる。このため、図11(a)に示すように、2枚のクラッチ部34,35が磁力により吸着した状態をとり、駆動軸36と従動軸37とが一体回動する。よって、右グリップ3aの回動に左グリップ3bも追従して動き、これらが同じ方向に回動する。
【0051】
一方、左右のグリップ3a,3bが逆操作又は片側操作されると、2枚の磁力クラッチ部34,35の吸着力よりも、グリップ3に加わる操作荷重の方が大きくなる。このため、図11(b)に示すように、2枚のクラッチ部34,35の結合が外れ、左グリップ3bが右グリップ3aに対して空転する。よって、右グリップ3aと左グリップ3bとが機械的に切り離されるため、グリップ3に発生する過荷重がクラッチ機構33によって逃がされる。
【0052】
また、左右のグリップ3a,3bが機械的に切り離されると、左グリップ3bには、戻し付勢部材22bのみの付勢力F2しか発生しなくなる。つまり、それまで右グリップ3aと左グリップ3bとでF1=F2+F3の関係により力バランスがとれていたものが、左グリップ3bではF2のみの操作荷重しか働かなくなるため、左グリップ3bの操作荷重が右グリップ3aより小さくなったような感覚を受ける。よって、右グリップ3aよりも左グリップ3bの操作感が軽くなることにより、クラッチ機構33が機能していることが操作者に通知される。
【0053】
さらに、クラッチ機構33が機能すると、第1磁力クラッチ部34が第2磁力クラッチ部35に対して多く回動するため、クラッチ動作検出部41の投光部41aと受光部41bとの位置関係がずれる。このため、クラッチ動作検出部41は、クラッチ機構33が機能していることを検出し、例えばオン信号をコントローラ43に出力する。コントローラ43は、クラッチ動作検出部41からオン信号を入力すると、報知機器42を動作させ、クラッチ機構33が機能していることを操作者に通知する。
【0054】
報知機器42は、左グリップ3bが空転していることを、例えばディスプレイによる文字表示や、スピーカによる音声出力により実行する。この報知例としては、例えば「グリップに過荷重発生。右グリップを意図する操作と判断します。」などがある。
【0055】
左グリップ3bが空転した後、左グリップ3bから手を離すと、戻し付勢部材22bの付勢力により、左グリップ3bが元の中立位置に戻る動きをとる。また、このとき対向する磁力クラッチ部34,35のN極とS極との斥力によっても、左グリップ3bは中立位置に戻ろうとする。つまり、左グリップ3bは、磁石の斥力を利用して元の中立位置に戻る動きをとる。
【0056】
以上により、本例においては、ユニバーサルジョイント4の出力軸7aに操舵操作用のクラッチ機構33を設け、左右のグリップ3a,3bが過荷重操作された際には、左右のグリップ3a,3bの連結をクラッチ機構33により機械的に切り離す。よって、グリップ3a,3bに加わる過荷重がグリップ3a,3bから逃がされるため、耐荷重がさほどよくないユニバーサルジョイント4やワイヤーケーブル2a,2bに過剰な力が加わらない。従って、これら部品に変形等が生じ難くなるので、左右のグリップ3a,3bに操作ガタを生じ難くすることが可能となる。
【0057】
本実施形態の構成によれば、以下に記載の効果を得ることができる。
(1)ユニバーサルジョイント4の出力軸7aにクラッチ機構33を設けたので、グリップ3が過荷重で回動操作されたときには、過荷重をクラッチ機構33によってグリップ3から逃がすことができる。このため、耐荷重の高くないユニバーサルジョイント4に過負荷が加わり難くなるので、ユニバーサルジョイント4に変形が生じ難くなる。また、ワイヤーケーブル2a,2bにも過荷重が至り難くなるので、ワイヤーケーブル2a,2bに伸びも生じ難くすることができる。よって、左右のグリップ3a,3bに操作ガタを生じ難くすることができ、ひいてはグリップ3a,3bの連動性を確保することができる。
【0058】
(2)左右のグリップ3a,3bの連動性が確保されるので、左右のグリップ3a,3bのポテンショメータ30,32の出力に誤差を生じ難くすることができる。
(3)クラッチ機構33を磁気式としたので、クラッチ機構33の構造を、磁石を使用した簡素な構造とすることができる。
【0059】
(4)左右のグリップ3a,3bの一方の操作力をワイヤーケーブル2にて機械的に他方に伝達するので、複雑な機構を用いることなく、左右のグリップ3a,3bを連動させることができる。また、グリップ3a,3bの一方の回動操作力(操舵操作力)又は傾倒操作力(加減速操作力)を、2本(一対)の組のワイヤーケーブル2a,2b(2c,2d)の一方の引き動作と他方の押し動作とによって他方に伝達することにより、左右のグリップ3a,3bの一方を他方に追従させる。よって、例えば、単に1本のワイヤーケーブルで操作力を伝達するよりも、高い追従性にて相手が連れ動きするので、応答性よく左右のグリップ3a,3bを連動させることができる。
【0060】
(5)クラッチ機構33が機能して左グリップ3bが空転したとき、一対の磁石の磁極は同極が向き合う状態となる。よって、左グリップ3bの空転後、左グリップ3bから手を離したときには、磁石の斥力を、左グリップ3bを元の中立位置に復帰させる力に利用することができる。
【0061】
(6)クラッチ機構33が機能したことを左右のグリップ3a,3bの操作感の違いにより操作者に通知する操作感切換機構38を左右連動操作装置1に設けたので、クラッチ機構33が機能したときには、左グリップ3bの操作感が軽くなることにより、グリップ3が過荷重操作されていることを操作者に通知することができる。従って、過荷重をかけない状態への操作を操作者に促すことが可能となるので、グリップ3が過荷重操作されたままで放置されることを防止することができる。
【0062】
(7)クラッチ機構33が機能したことを視覚的又は聴覚的に報知する報知機構40を左右連動操作装置1に設けたので、クラッチ機構33が機能したことを、より明確に操作者に通知することができる。
【0063】
(8)グリップ3の回動操作を制限するストッパ部20をグリップ3の根元に設けたので、グリップ3の回転を適度な位置でストッパ部20により止めることができる。
(第2実施形態)
次に、第2実施形態を図12及び図13に従って説明する。なお、本例はクラッチ機構33の構造を変更したのみで、他の基本的な構成は第1実施形態と同じである。よって、第1実施形態と同一部分は同一符号を付して詳しい説明を省略し、異なる部分についてのみ詳述する。
【0064】
図12及び図13に示すように、第1磁力クラッチ部34は、円筒形状に形成されるとともに、周方向に沿ってN極及S極が交互に着磁されている。第1磁力クラッチ部34の中央には、駆動軸36が同一軸心位置において取り付け固定されている。よって、駆動軸36が回転すると、第1磁力クラッチ部34が駆動軸36と同期回転する。
【0065】
一方、第2磁力クラッチ部35は、第1磁力クラッチ部34よりも大径の円筒形状に形成されるとともに、周方向に沿ってN極及びS極が交互に着磁されている。また、第2磁力クラッチ部35の中央には、断面円形状の凹部35aが形成され、この凹部35aに第1磁力クラッチ部34が相対回動可能に収納されている。第2磁力クラッチ部35の背面中央には、従動軸37が同一軸心位置において取り付け固定されている。
【0066】
さて、例えば右グリップ3aが通常荷重で回動操作されたときは、第1磁力クラッチ部34の外周面と、第2磁力クラッチ部35の内周面との間に発生する磁力によって、これらが吸着した状態をとるため、図13(a)に示すように、駆動軸36及び従動軸37が一体回動する。よって、右グリップ3aが回動操作された際には、右グリップ3aに加えられた操作力をワイヤーケーブル2a,2bが左グリップ3bに伝達し、左グリップ3bが右グリップ3aに追従して同じ方向に回動する。
【0067】
一方、グリップ3a,3bが逆操作や片側操作されたときは、2つの磁力クラッチ部34,35の吸着力よりも、グリップ3a,3bに加わる操作荷重の方が大きくなるため、図13(b)に示すように、2つの磁力クラッチ部34,35の結合が外れ、第1磁力クラッチ部34が第2磁力クラッチ部35の内部で回動する。このため、右グリップ3aと左グリップ3bとが機械的に切り離されて独立して回動する動きをとるため、グリップ3a,3bに発生した過荷重が逃がされる。
【0068】
本実施形態の構成によれば、第1実施形態に記載の(1)〜(8)に加え、以下の効果を得ることができる。
(9)クラッチ機構33の構造を、略円筒状の第2磁力クラッチ部35の内部に略円柱状の第1磁力クラッチ部34を収納する構造とした。このため、クラッチ機構33を軸直交方向(出力軸7aの径方向)に大きくしなくとも、クラッチ機構33を軸方向に長くすることにより、クラッチ機構33の磁極面を広くとることが可能となる。よって、クラッチ機構33の軸直交方向への大型化を防ぎながら、クラッチ機構33の磁石による吸着力を確保することができる。
【0069】
なお、実施形態はこれまでに述べた構成に限らず、以下の態様に変更してもよい。
・第1実施形態において、図14に示すように、第1磁力クラッチ部34(第2磁力クラッチ部35)に、NS極の組を複数(図14の例は2組)設けてもよい。
【0070】
・各実施形態において、クラッチ機構33は、ヨーク本体7から延びる軸(つまり、出力軸7a)に設けられることに限らず、例えば可動ヨーク8から延びる軸に設けてもよい。
【0071】
・各実施形態において、第1磁力クラッチ部34や第2磁力クラッチ部35の形状は、実施形態に述べた以外の形状を適宜使用可能である。なお、磁石の着磁パターン(N極とS極の個数)も同様である。
【0072】
・各実施形態において、左右のグリップ3a,3bが正しく連動していないとき、左右連動操作装置1の動作を停止させてもよい。
・各実施形態において、クラッチ機構33は、グリップ3の回動操作側に設けることに限定されず、例えばグリップ3の傾倒操作側に設けてもよい。
【0073】
・各実施形態において、クラッチ機構33は、左グリップ3bに設けることに限定されず、右グリップ3aに設けてもよいし、左右両方のグリップ3a,3bに設けてもよい。
・第2実施形態において、例えば第1磁力クラッチ部34を大きめの円筒形状とし、第2磁力クラッチ部35がこの第1磁力クラッチ部34の中に入り込む形状としてもよい。
【0074】
・各実施形態において、報知機器42は、車内ディスプレイやスピーカに限定されず、例えばインストルメントパネルでもよい。また、報知の形式は、適宜変更可能であることは言うまでもない。
【0075】
・各実施形態において、グリップ3は、中立位置から下方向(上方向)にのみ傾倒操作可能としてもよい。
・各実施形態において、クラッチ機構33は、磁気式に限定されず、他の構造を採用してもよい。
【0076】
・各実施形態において、グリップ3の操作態様は、左右方向の回動操作や、上下方向の傾倒操作に限定されず、例えば左右方向の傾倒操作など、他の態様を採用することも可能である。
【0077】
・各実施形態において、操作感切換機構38は、戻し付勢部材22a,22b,39の付勢力の力バランスを変更することで、左右のグリップ3a,3bに発生する操作力を変えるものに限定されない。要は、左右のグリップ3a,3bの操作感が切り換わるものであれば、その構造は何でもよい。
【0078】
・各実施形態において、戻し付勢部材22a,22b,39は、トーションばねに限定されず、他のばねが使用可能である。
・各実施形態において、クラッチ動作検出部41は、光センサに限定されず、例えば磁気センサを使用してもよい。また、センサ等の無接点式に限らず、マイクロスイッチ等の有接点式を使用してもよい。
【0079】
・各実施形態において、ケーブル線は、プッシュプル式のワイヤーケーブル2に限定されず、他の素材の線が使用可能である。
・各実施形態において、左右連動操作装置1は、ワイヤーケーブル2が合計4本ある構造のものに限定されず、例えばグリップ3の回動操作及び傾倒操作のそれぞれにワイヤーケーブル2が1本のみ存在する計2本のものでもよい。
【0080】
・各実施形態において、左右連動操作装置1は、グリップ3が回動操作及び傾倒操作の両方が可能なものに限らず、例えば回動操作又は傾倒操作の一方のみが可能なものでもよい。
【0081】
・各実施形態において、左右連動操作装置1は、左右のグリップ3a,3bがワイヤーケーブル2にて機械的に連結されたものに限定されない。例えば、左右のグリップ3a,3bがワイヤーケーブル2では連結されておらず、それぞれがモータを備え、このモータの駆動力にて左右のグリップ3a,3bが連動する動きをとるものでもよい。
【0082】
・各実施形態において、左右連動操作装置1は、車両に適用されることに限定されず、他の乗り物に使用可能である。
次に、上記実施形態及び別例から把握できる技術的思想について、それらの効果とともに以下に追記する。
【0083】
(イ)請求項1〜6のいずれかにおいて、前記クラッチ機構は、磁石の磁気的な吸着力を利用した磁気式クラッチ機構であって、当該磁気式クラッチ機構の一対の磁力クラッチ部材は、お互いの板状の磁石が対向する形状をとっている。
【0084】
(ロ)請求項1〜6のいずれかにおいて、前記クラッチ機構は、磁石の磁気的な吸着力を利用した磁気式クラッチ機構であって、当該磁気式クラッチ機構の一対の磁力クラッチ部材は、一方が筒状に形成されるとともに他方が柱状に形成され、前記筒状のものの中に、前記柱状が軸回りに相対回動可能に収納されている。
【0085】
(ハ)請求項1〜6、前記技術的思想(イ)又は(ロ)のいずれかにおいて、前記グリップを操作して当該グリップから手を離したとき、当該グリップを元の中立位置に復帰させる復帰機構を備えた。この構成によれば、操作したグリップを元の中立位置に自動で戻すことが可能となる。
【0086】
(二)請求項5又は6、前記技術的思想(イ)〜(ハ)のいずれかにおいて、前記操作感切換機構は、操作した前記グリップから手を離したときに当該グリップを元の中立位置に復帰させる復帰機構を兼ねるとともに、一対の前記クラッチ部材のそれぞれの側に形成された中立位置復帰用の付勢部材から構成されている。
【0087】
(ホ)請求項1〜6、前記技術的思想(イ)〜(二)のいずれかにおいて、前記クラッチ機構は、磁石の磁気的な吸着力を利用した磁気式クラッチ機構であって、当該磁気式クラッチ機構の一対の磁力クラッチ部材の着磁パターンは、前記グリップが過荷重操作されたとき、当該グリップを中立位置側に戻すような斥力が当該グリップに付与されるようなパターンに形成されている。この構成によれば、磁石の同極が対面することにより生じる斥力を、グリップを中立位置に戻すのに必要な力として利用することが可能となる。
【符号の説明】
【0088】
1…左右連動操作装置、
2(2a〜2d)…ケーブル線としてのワイヤーケーブル、3(3a,3b)…グリップ、33…クラッチ機構(磁気式クラッチ機構)、34…クラッチ部材としての第1磁力クラッチ部、35…クラッチ部材としての第2磁力クラッチ部、38…操作感切換機構、41…検出手段としてのクラッチ動作検出部、42…報知手段を構成する報知機器、43…報知手段を構成するコントローラ、L1…軸としての軸心。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
左右のグリップの一方が操作されたとき、他方のグリップが一方の前記グリップの動きに追従することにより、左右の前記グリップが連動する左右連動操作装置において、
前記グリップが通常荷重で軸回りに回動操作されたとき、その操作力の伝達経路上に位置する一対のクラッチ部材を連れ動きさせることにより、左右の前記グリップを連動させ、前記グリップが過荷重で前記回動操作されたとき、一対の前記クラッチ部材を機械的に切り離すことにより、前記過荷重を当該グリップから逃がすクラッチ機構を備えた
ことを特徴とする左右連動操作装置。
【請求項2】
前記クラッチ機構は、磁石の磁気的な吸着力を利用した磁気式クラッチ機構である
ことを特徴とする請求項1に記載の左右連動操作装置。
【請求項3】
左右の前記グリップの一方が操作されたとき、その操作力がケーブル線を介して他方の前記グリップに伝達されて、当該他方のグリップが前記一方のグリップに追従する動きをとる
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の左右連動操作装置。
【請求項4】
左右の前記グリップは、軸回りの回動操作と軸交差方向への傾倒操作とが可能であり、操作力の伝達時において互いに逆方向に動く2本のケーブル線を、前記回動操作と前記傾倒操作との各々に設けることにより、合計4本の前記ケーブル線にて連結されている
ことを特徴とする請求項3に記載の左右連動操作装置。
【請求項5】
前記クラッチ機構によって左右のグリップが機械的に切り離されたとき、前記グリップを操作する際に必要な操作力を左右の前記グリップで異ならせることにより、前記クラッチ機構が機能していることを操作者に通知する操作感切換機構を備えた
ことを特徴とする請求項1〜4のうちいずれか一項に記載の左右連動操作装置。
【請求項6】
前記クラッチ機構が機能しているか否かを検出する検出手段と、
前記検出手段の検出結果を基に、前記クラッチ機構が機能していると判断したとき、その旨を視覚的又は聴覚的に操作者に報知する報知手段と
を備えたことを特徴とする請求項1〜5のうちいずれか一項に記載の左右連動操作装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2012−99037(P2012−99037A)
【公開日】平成24年5月24日(2012.5.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−248125(P2010−248125)
【出願日】平成22年11月5日(2010.11.5)
【出願人】(000003551)株式会社東海理化電機製作所 (3,198)
【Fターム(参考)】