説明

左官用セメントモルタル

【課題】 製造時に於けるモルタル容積の減少が起き難く、鏝塗り等の左官施工に適したセメント系の軽量モルタルであって、収縮に伴うひび割れが発生し難く、且つ軽量モルタルとしては強度発現性が高い左官用セメントモルタルの提供を課題とする。
【解決手段】 粒径2.1mm以下の無機系軽量骨材(A)100容積部と粒径2mm以上の有機系軽量骨材(B)42〜234容積部を含有し、且つ(C)ポリマーディスパージョン又は再乳化型粉末樹脂、(D)保水剤及び(E)ガラス繊維を含有してなり、且つ単位容積質量が1.1〜1.4Kg/Lである左官用セメントモルタル。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、軽量で左官施工に適したセメント系のモルタルに関する。
【背景技術】
【0002】
住宅の外壁などに使用するモルタルで、セメントを結合成分とし、骨材に無機質発泡状粒子のような細骨材を用い、断熱・耐火性と軽量化による施工性の向上を図った軽量モルタルがある。細骨材としての無機質発泡状粒子は、圧壊強度が低いため、鏝塗り施工時に適度な潰れを起こし、モルタルの左官施工性を高めることができる。その反面、モルタル製造工程中の粉粒体混合時や注水後のモルタル混練時にも破損し易いため、一定のモルタル容積が維持することが甚だ困難となる。また、脆弱な骨材使用によるモルタル強度低下を補填する上で、結合成分のセメント配合量を多くすると、凝結時や乾燥時のモルタル収縮が大きくなり、ひび割れ発生の原因になる。発泡状の無機質軽量骨材に有機樹脂系軽量骨材を併用すると、軽量性を保ったまま発泡状無機質骨材の破損によるモルタルの減容化を抑制できることが知られている。(例えば、特許文献1参照。)しかし、このモルタルでは強度的な弱さの改善や乾燥収縮に伴うひび割れ抑制は殆ど対応できていない。この他にも、鏝塗りに適したセメント系の軽量モルタルとして、無機質発泡状粒子、有機系難燃性樹脂発泡体の粉砕粒、増粘性水溶性高分子、ポリマー及び繊維を含む組成物からなる壁塗用モルタル(例えば、特許文献2参照。)や、無機質発泡状粒子に無機粉体と増粘性水溶性高分子を特定割合で含有した左官施工用の軽量モルタルも知られている。(例えば、特許文献3参照。)何れも左官施工性の向上を図ったモルタルであり、またポリマー成分や水溶性高分子のひび割れ抑制作用はある程度認められるものの、ポリマー成分や水溶性高分子は主に結合相周囲に存在するため、強度向上と収縮変形に伴うひび割れを防ぐにはポリマー等を大量使用しなければ十分な効果が得られない。ポリマー類の大量使用は、粘性を増大させ、左官施工性も悪化する。また、水配合割合を低下させる強度向上方策は、モルタルの製造作業性や左官施工性を確保する上で限界がある。モルタル中のセメント配合割合の増大化による強度向上策は、凝結・乾燥硬化時の収縮による寸法変化が大きくなり、ひび割れが発生し易いといった問題がある。膨張材を加えると大規模な収縮が起きないため、該収縮による亀裂は防ぐことができるが、比較的微細な乾燥ひび割れ防止には十分な硬化が得られない。
【特許文献1】特開平7−315955号公報
【特許文献2】特開平11−116311号公報
【特許文献3】特開2006−96631号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明は、製造時に於けるモルタル容積の減少が起き難く、鏝塗り等の左官施工に適したセメント系の軽量モルタルであって、収縮に伴うひび割れが発生し難く、且つ軽量モルタルとしては強度発現性が高い左官用セメントモルタルの提供を課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明者らは、課題解決のため鋭意検討を重ねた結果、軽量骨材を用いたセメント系モルタルに於いて、軽量骨材として粒径2.1mm以下の主に内部が空洞な無機系軽量骨材と粒径2mm以上の有機系軽量骨材を粒径差による最密化した配置構造を形成し易いような特定割合で含有させることで、破損し易い無機系軽量骨材を、破損し難い有機系軽量骨材で保護できる。これによって比較的緻密な骨材配列構造をとるため、ポリマー併用によりポリマーが連続した状態で骨材に付着し、ポリマーフィルム連続相が個々の骨材を取り囲むように形成されることから、左官施工性を減退させずにモルタルの強度や変形追従性を飛躍的に向上できる。加えて保水剤とガラス繊維の含むことで乾燥ひび割れ抵抗性がより高いモルタルが得られる。また、このように骨材配置がより最密化された構造の軽量モルタルでは、収縮低減剤や膨張材を配合した場合の作用がより発揮され易くなる。以上のような知見が得られ、本発明を完成するに至った。
【0005】
即ち、本発明は、粒径2.1mm以下の無機系軽量骨材(A)100容積部と粒径2mm以上の有機系軽量骨材(B)42〜234容積部を含有し、且つ(C)ポリマーディスパージョン又は再乳化型粉末樹脂、(D)保水剤及び(E)ガラス繊維を含有してなる単位容積質量が1.1〜1.4Kg/Lの左官用セメントモルタルである。
【0006】
また、本発明は、収縮低減剤、消泡剤、膨張材又は減水剤の何れか1種又は2種以上を含有する前記の左官用セメントモルタルである。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、製造中での骨材破損による減容が起き難く、強度や変形追従性も高く、ひび割れも起き難い、左官施工に適した軽量のセメント系モルタルが得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
本発明の左官用セメントモルタルは、セメントを主要結合成分とし、骨材に軽量骨材を使用した単位容積質量が1.1〜1.4Kg/Lの軽量モルタルである。使用するセメントは何れのセメントでも良く、例えば普通、早強、超早強、中庸熱、低熱等の各種ポルトランドセメント、また高炉セメント、フライアッシュセメントやシリカセメント等の各種混合セメント、またさらにエコセメントや白色セメント等の特殊セメント、アルミナセメント等を挙げられる他、これら何れか2種以上を混合させたものでも良い。
【0009】
また、本発明の左官用セメントモルタルは、粒径2.1mm以下の無機系軽量骨材(A)100容積部と粒径2mm以上の有機系軽量骨材(B)42〜234容積部を骨材として含有する。無機系軽量骨材は、無機系材質からなる骨材で、内部に空隙が存在することで軽量化された骨材を使用することができる。好ましくは、卵殻のような構造の骨材である。具体的には、例えば、真珠岩、黒曜石等の鉱物粉砕物を原料とし、必要に応じて発泡助剤等を加え、加熱発泡して得られるパーライト粒が挙げられ、また他の原料を加熱発泡させたものとして、例えば抗火石やシラス等の火山灰を原料とするバルーン、ガラスを原料とするガラスバルーン、石炭灰等を原料とするフライアッシュバルーン等が挙げられる。無機系軽量骨材の使用によりモルタルの軽量化が達成できて左官施工性が向上する他、断熱・耐火性も付与される。無機系中空状軽量骨材は粒径2.1mm以下のものとし、粒径0.6mm以上のものが好ましい。粒径2.1mmを超えると、有機系軽量骨材による保護作用が効き難く、モルタル混練時に潰れ易いので好ましくない。また、粒径0.6mm未満ではモルタル中で骨材として機能し難くなるので適当ではない。
【0010】
また、本発明の左官用セメントモルタルに使用する有機系軽量骨材は、粒径2mm以上であって、モルタルに使用可能なものなら特に限定されず、例えば発泡させた高分子樹脂やゴム類を裁断したチップ等を挙げられる。好ましくは発泡させた高分子系樹脂がより軽量であることから良い。発泡させた高分子系樹脂として具体的には、発泡ポリスチレン、発泡エチレン酢酸ビニル、発泡ポリウレタン等が例示される。有機系軽量骨材を無機系中空状軽量骨材と併用することで、無機系中空状軽量骨材がそれより一回り大きな有機系軽量骨材の間に入り込み易くなり、脆弱な無機系中空状軽量骨材を外圧から保護し、潰れないようにすることができる。有機系軽量骨材の粒径が2mm未満では無機系中空状軽量骨材の保護機能が不十分となり潰れを防げないので好ましくない。好ましくは粒径2mm以上で3mm以下の有機系軽量骨材を使用する。粒径3mmを超えると鏝塗りでの平滑面の形成が困難になるので適当ではない。
【0011】
本発明の左官用セメントモルタルに骨材として使用する無機系軽量骨材(A)と有機系軽量骨材(B)の含有割合は、無機系中空状軽量骨材(A)100容積部に対し有機系軽量骨材(B)42〜234容積部とする。無機系軽量骨材(A)100容積部に対し有機系軽量骨材が42容積部未満では無機系軽量骨材を保護する有機系軽量骨材が不足し、無機系軽量骨材が潰れ易くなるので好ましくない。また、同様に有機系軽量骨材が234容積部を超えると粗粒分が多くなってモルタルで細密充填構造が得難くなり、例えば強度や収縮抵抗等の向上しないので好ましくない。また、骨材としての本左官用セメントモルタル中の含有量は、左官用セメントモルタル中に含まれるセメント100質量部に対し、20〜100質量部が好ましい。20質量部未満では単位体積あたりのセメント量が多くなって収縮変形も大きくなり、収縮亀裂が生じ易くなるので適当ではない。また100質量部を超えると単位体積あたりのセメント量が少なくなり、圧縮や曲げ強度が低くなるので適当ではない。
【0012】
本発明の左官用セメントモルタルは、ポリマーディスパージョン(ポリマーエマルション)又は再乳化型粉末樹脂を含有する。ポリマーディスパージョン又は再乳化型粉末樹脂の含有で曲げ強度向上及び施工時の変形に対する追従性が得易くなり、ひび割れ抑制作用が付与される。特に本発明では、前記のような粒度構成の骨材を使用するためモルタル内で最密充填構造化されてポリマーフィルムが連続して骨材に付着形成されることで、これらの作用が従前の左官用ポリマーモルタルでは発現困難なレベルまで高めることが可能となる。ポリマーディスパージョン又は再乳化型粉末樹脂の含有量は、セメント100質量部に対し、固形分換算で1〜10質量部が好ましい。1質量部未満では乾燥ひび割れや軽量骨材に基因する強度低下を抑制できないことがあり、また、10質量部を超えるとモルタルの粘度が高くなり過ぎて施工性が低下するので適当ではない。
【0013】
本発明の左官用セメントモルタルで使用するポリマーディスパージョン又は再乳化形粉末樹脂は、セメント、モルタル又はコンクリートで使用できるものなら何れのものでも良く、例えばJIS A6203で規定されたポリマーディスパージョンや再乳化形粉末樹脂が使用できる。より具体的にはポリマーディスパージョンとして、ポリアクリル酸エステル、スチレンブタジエン共重合体、アクリロニトリル・ブタジエン共重合体、メチルメタクリレートブタジエン共重合体、クロロプレンゴム、ポリクロロピレン、ポリ酢酸ビニル、ポリアクリル酸エステル、エチレン・酢酸ビニル・塩化ビニル共重合体、酢酸ビニルビニルバーサテート共重合体、不飽和ポリエステル樹脂、アルキド樹脂及びエポキシ樹脂等の合成樹脂、アスファルト、ゴムアスファルト及びパラフィン等の瀝青質等のエマルジョンが挙げられ、これらの2種以上を混合して用いることができる。また、再乳化形粉末樹脂として、エチレン/酢酸ビニル、酢酸ビニル/バーサチック酸ビニルエステル、酢酸ビニル/バーサチック酸ビニル/アクリル酸エステル等を例示できる。
【0014】
また、本発明の左官用セメントモルタルは保水剤を含有する。保水剤はモルタルやコンクリートで使用できるものなら何れのものでも良い。好ましくは適度な増粘性を有する保水剤を使用する。具体的には、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシエチルメチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、セルロース硫酸エステル等の水溶性セルロース誘導体を例示できる。保水剤の配合でモルタル中の水分の急速な散免を抑制でき、乾燥ひび割れの発生や剥離等を防ぐことができる。またモルタルのしまりが早くなり過ぎないため仕上げ調整作業も十分行うことができる。さらに水溶性セルロース等の適度な増粘作用を有する保水剤を使用すれば、塗り付け施工性も大きく向上する。本左官用セメントモルタルの保水剤の含有量は、セメント100質量部に対し、0.1〜0.5質量部が好ましい。0.1質量部未満ではドライアウトが起こることがあるので適当ではなく、また0.5質量部を超えると凝結が遅延したり、粘性が高くなって配合時の混合抵抗が増し、作業性が悪化することがあるので抵当ではない。
【0015】
本発明の左官用セメントモルタルは、ガラス繊維を含有する。ガラス繊維の含有で、ひび割れ抵抗性や応力分散性等の力学的耐久性が高まる。ガラス繊維はモルタルやコンクリートに使用できるものなら特に限定されないが、化学的耐久性も考慮すると耐アルカリガラス繊維が好ましく、また施工モルタルの表面仕上げが行い易いことから長さが約8〜20mmのガラス繊維が好ましい。左官用セメントモルタル中のガラス繊維の含有量は、セメント含有量100質量部に対し0.05〜5質量部が好ましい。0.05質量部未満では含有効果が実質得られず、また5質量部を超えると混合性や施工性の低下に繋がるので適当ではない。
【0016】
また、本発明の左官用セメントモルタルは、単位容積質量が1.1〜1.4Kg/Lのモルタルとする。当該単位容積質量は、前記のような軽量骨材の使用により、その使用量を調整することで比較的容易に充当させることができる。単位容積質量が1.1Kg/L未満では低強度となり易いので適当ではない。また、1.4Kg/Lを超えると、施工モルタルの自重による垂れや剥落等が起こり易くなり、施工性が低下するので好ましくない。
【0017】
また、本発明の左官用セメントモルタルは、前記各成分に加えて、収縮低減剤、消泡剤、膨張材又は減水剤の何れか1種か2種以上を含有することが好ましい。本発明で使用する収縮低減剤は、モルタルやコンクリートに使用できるものであれば特に限定されず、例えばポリオキシアルキレン化合物、ポリエーテル系化合物、アルキレンオキシド化合物等の高分子化合物を挙げることができる。収縮低減剤を含有することでモルタルの水分蒸発時に発生する応力が低下し、乾燥収縮量が低減する。本発明のモルタル中の収縮低減剤の含有量は、セメント含有量100質量部に対し0.05〜2質量部が好ましい。0.05質量部未満では含有効果が実質得られず、また2質量部を超えるとモルタル混練時に空気の巻き込み量が増大し、強度低下を起こすので適当ではない。
【0018】
また、本発明の左官用セメントモルタルで使用する消泡剤は、モルタルやコンクリートに使用できるものなら特に限定されず、例えばポリオキシアルキレン化合物、ポリエーテル系化合物、アルキレンオキシド化合物等の高分子化合物を挙げることができる。収縮低減剤を含有することでモルタルの硬化体中の水分蒸発時に発生する応力が低下し、乾燥収縮が低減する。本発明のモルタル中の収縮低減剤の含有量は、セメント含有量100質量部に対し0.05〜2質量部が好ましい。0.05質量部未満では含有効果が実質得られず、また2質量部を超えるとモルタル混練時に空気の巻き込み量が増大し、強度が低下するので適当ではない。
【0019】
また、本発明の左官用セメントモルタルで使用する膨張材は、非発泡性で水和膨張するものが望ましく、具体的には、例えば、エトリンガイト生成物質を有効成分とするものや生石灰を有効成分とするもの等が挙げられる。膨張材の含有により、モルタル施工物の形状寸法変化を抑制することができる。本発明のモルタル中の膨張材の含有量は、セメント含有量100質量部に対し2〜10質量部が好ましい。2質量部未満では含有効果が実質得られず、また10質量部を超えると膨張による施工物の変形や破壊が起こることがあるので適当ではない。
【0020】
また、本発明の左官用セメントモルタルで使用する減水剤は、セメントペースト、モルタル又はコンクリートに使用できるものなら何れのものでも良く、分散剤、高性能減水剤、AE減水剤、高性能AE減水剤、流動化剤等と称されているものでも良い。具体的にはポリカルボン酸系、ナフタレンスルホン酸系、メラミンスルホン酸系、リグニンスルホン酸系等の各種減水剤が例示される。本発明のモルタル中の減水剤の含有量は、セメント含有量100質量部に対し固形分換算で0.01〜0.5質量部が好ましい。0.01質量部未満では含有効果が実質得られず、また0.5質量部を超えると材料分離の虞れがあるので適当ではない。減水剤の含有により、単位水量を下げて強度向上を図っても良好な施工性を維持し易く、混練抵抗も減少できることから通常の混練操作でも均質なモルタルが容易に得られる。
【0021】
また、本発明の左官用セメントモルタルは、本発明の効果を実質喪失させない限り、前記以外の成分を含有するものでも良い。このような成分として例えば、凝結調整剤、速硬剤、消泡剤、シリカフゥームやフライアッシュ等のポゾラン反応物質、スラグ粉、粘土鉱物粉、顔料、抗菌剤等を挙げることができる。
【0022】
また、本発明の左官用セメントモルタルの製造方法は、各配合成分を例えばモルタルミキサーなどの混合機に投入し、水を加えて混練すれば良く、配合成分の投入順序や混合・混練方法などは特に限定されない。水の配合量は、粉体成分使用量100質量部に対し、35〜50質量部が好ましい。35質量部未満では配合時の混練抵抗が増すので適当ではなく、また50質量部を超えると強度発現性が低下し、また乾燥ひび割れが発生し易いので適当ではない。本発明の左官用セメントモルタルは左官施工に適した軽量モルタルであるが、左官施工以外の施工方法での使用を制限するものではない。
【実施例】
【0023】
以下、実施例により本発明を具体的に詳しく説明する。
[モルタルの作製] 次に表すA1〜Hから選定される材料と水を、表1に記した配合量となるようモルタルミキサーに入れ、約20℃の温度下で3分間混合し、モルタル(本発明品1〜10、参考品11〜17)を作製した。
A1;無機系軽量骨材(黒曜石を加熱発泡させたパーライト;最大粒径15mm、最小粒径0.5mm、嵩密度0.18Kg/L)
A2;無機系軽量骨材(真珠岩を加熱発泡させたパーライト;最大粒径15mm、最小粒径0.5mm、嵩密度0.2Kg/L)
A3;無機系中空状軽量骨材(成分はA1と同じパーライト;最大粒径3mm、最小粒径1mm、嵩密度0.1Kg/L)
A4;無機系普通骨材(粒径0.5〜1.5mmで粗粒率3.1、嵩密度1.5Kg/Lの山砂)
B1;有機系軽量骨材(発泡エチレン酢酸ビニル;最大粒径2.5mm、最小粒径2mm、嵩密度0.15Kg/L)
B2;有機系軽量骨材(発泡エチレン酢酸ビニル;最大粒径0.5mm、最小粒径0.1mm、比重0.25)
B3;有機系軽量骨材(発泡ポリスチレン;最大粒径2.6mm、最小粒径2.1mm、嵩密度0.014Kg/L)
C1;スチレンブタジエン系ポリマーディスパージョン(商品名「太平洋CXB」、太平洋マテリアル株式会社製)
C2;アクリルスチレン系再乳化粉末樹脂(商品名「LL512」、旭化成ケミカルズ株式会社製)C;普通ポルトランドセメント(太平洋セメント株式会社製)
D;ヒドロキシプロピルメチルセルロース(商品名「90SH−4000」、信越化学工業株式会社製)
E1;ガラス繊維(平均繊維長約12mm)
E2;鋼繊維(平均繊維長約20mm)
F1;収縮低減剤(商品名「太平洋テトラガード」、太平洋マテリアル株式会社製)
F2;消泡剤(商品名「SND−14HP」、サンノプコ株式会社製)
F3;生石灰系膨張材(商品名「太平洋エクスパン」、太平洋マテリアル株式会社製)
F4;メラミンスルホン酸系高性能減水剤(商品名「メルメントF10M」、BASFポゾリス社製)
G1;炭酸カルシウム(市販試薬)
G2;ポリビニルアルコール(平均粒径65μm、日本合成化学工業株式会社製、商品名「ゴーセノールGH−17S」)
H;普通ポルトランドセメント(太平洋セメント株式会社製)
【0024】
【表1】

【0025】
作製したモルタルについて、以下のような評価を行った。各評価結果は纏めて表2に表す。
【0026】
[モルタル単位容積質量安定性に関する評価] 表1に表した配合量となるよう各配合材料の混合前の体積をメスシリンダーで測定し、次いで各配合材料をレディゲミキサで3分間混合した後の体積を測定した。混合前から混合後の体積減少率を算出し、この体積減少率の値を以て、単位容積あたりの質量安定性の評価基準とした。
【0027】
[左官施工性の評価] 高さ182cm、幅91cm、厚さ0.9cmのラスカットバネルを91cm×0.9cmの一面を底面として地面に垂直に設置した。該ラスカットパネル垂直面に金鏝でモルタルを約1m2塗り付け、(1)鏝伸び性、(2)鏝切れ性及び(3)施工物の表面平滑性の3項目について次の方法で調べ、その結果を総合して左官施工性が良好であるか否かを評価した。
(1)鏝伸び性;金鏝で塗り付けて、そのまま塗り斑なくモルタルを20cm以上広く伸ばすことができたものを鏝伸び性「良好」と判定し、それ以外の状況となったものを鏝伸び性「不良」と判定した。
(2)鏝切れ性;塗付け後の金鏝に付着残存するモルタルが実質見られなかったものを鏝切れ性「良好」と判定し、モルタルが付着残存していたものを鏝切れ性「不良」と判定した。
(3)施工物の表面平滑性;金鏝でモルタルを塗り付け、塗り付けたモルタルに数回金鏝を当てて整えることによって、概ね平滑な面が得られたものを、施工物の表面平滑性「良好」と判定した。塗り付けたモルタルに数回金鏝を当てて整えようとしても概ね平滑な面が得られなかったものや金鏝での塗り付け自体が困難であったものは、施工物の表面平滑性「不良」と判定した。
【0028】
[ひび割れ抵抗性の評価] モルタルを金鏝でラスカットパネル垂直面に約1m2塗り付け、これを屋外で28日間暴露した。暴露後のモルタル施工物にひび割れが発生しているか否かを目視で観察し、ひび割れ抵抗性の有無を判断した。ひび割れが見られなかったものをひび割れ抵抗性「有」とし、それ以外の状況であったものは全てひび割れ抵抗性「無」とした。
【0029】
[形状寸法安定性の評価] 作製したモルタルを用い、日本建築学会建築工事標準 JASS 15 M−102「既調合セメントモルタルの品質基準」の長さ試験方法により長さ変化率を算出し、長さ変化率が0.12%以下であったものを寸法安定性「良好」と判断し、長さ変化率が0.12%を超えたものを寸法安定性「不良」と判断した。
【0030】
[圧縮強度の評価] モルタルを内径4×4×16cmの型枠に充填し、温度20℃、湿度80%の恒温恒湿槽で24時間養生した後脱型した。得られた供試体を所定材齢まで20℃の気中で養生させた。材齢28日の供試体をJIS R5201に準拠した方法で圧縮強度を測定した。
【0031】
【表2】

【0032】
表2の結果より、本発明のモルタルは何れも良好な左官施工性を示し、ひび割れも見られず、形状寸法の乾燥変化も実用上十分許容できる程度に小さく、また製造時の容積変化も従前のモルタルと比べ概して少ないことがわかる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
粒径2.1mm以下の無機系軽量骨材(A)100容積部と粒径2mm以上の有機系軽量骨材(B)42〜234容積部を含有し、且つ(C)ポリマーディスパージョン又は再乳化型粉末樹脂、(D)保水剤及び(E)ガラス繊維を含有してなり、且つ単位容積質量が1.1〜1.4Kg/Lである左官用セメントモルタル。
【請求項2】
さらに、収縮低減剤、消泡剤、膨張材又は減水剤の何れか1種又は2種以上を含有する請求項1記載の左官用セメントモルタル。

【公開番号】特開2009−96657(P2009−96657A)
【公開日】平成21年5月7日(2009.5.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−268608(P2007−268608)
【出願日】平成19年10月16日(2007.10.16)
【出願人】(501173461)太平洋マテリアル株式会社 (307)
【Fターム(参考)】