説明

差動変圧器

【課題】従来の差動変圧器は、筒状ステータの外周を囲む金属板からなる金属ケースを用いる構造なので、大きな製造コストが必要とされるとともに、軽量化が困難になっている。
【解決手段】本発明による差動変圧器では、筒状ステータ3の外周にシールド体4が設けられるとともに、シールド体4の外周に外皮体5が設けられている。シールド体4は、金属網体により構成されており、外部の磁気環境から巻線体2及び筒状ステータ3を保護している。外皮体5は、筒状ステータ3の外周にシールド体4が巻き付けられた後に、シールド体4の外周に密着するように熱収縮チューブが収縮されることで形成され、塵、埃、及び水分からシールド体4等の内部構成を保護している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、差動変圧器に関し、特に、筒状ステータの外周に金属網体からなるシールド体を設けるとともに、シールド体の外周に熱収縮チューブからなる外皮体を設けることで、製造コストを低減できるとともに、軽量化できるようにするための新規な改良に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来用いられていたこの種の差動変圧器としては、例えば下記の特許文献1等に示されている構造が用いられている。一般的に、この種の差動変圧器は図2に示すように構成されている。すなわち、従来の差動変圧器では、円筒状のボビン1の外周に巻線体2が設けられるとともに、巻線体2の外周に筒状ステータ3が設けられている。筒状ステータ3の外周には、巻線体2及び筒状ステータ3を外部環境から保護するための金属ケース10が設けられている。この金属ケース10は、金属製のパイプ又は棒から加工されるケース体であり、筒状ステータ3の外周を囲む金属板から構成される。
【0003】
周知のように、巻線体2は、一次コイルと第1及び第2の二次コイルとから構成されており、一次コイルに電流が流されることで、第1及び第2の二次コイルがそれぞれ励磁される。ボビン1の内側に設けられた挿通孔1aには、直線的な変位量の監視が必要とされる被検出対象に接続された磁性体コア(図示せず)が挿通され、ボビン1の延在方向1bに沿う磁性体コアの変位に応じて、第1及び第2の二次コイルの変圧比が変化される。すなわち、このような差動変圧器は、磁性体コアの変位に応じて巻線体2からの出力電圧が変化されるように構成されており、出力電圧が監視されることで被検出対象の直線的な変位量が監視される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−172071号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記のような従来の差動変圧器では、筒状ステータの外周を囲む金属板からなる金属ケースを用いる構造なので、金属製のパイプや棒等の素材から金属ケース10を作成するために機械加工が必要となり、大きな製造コストが必要とされる。また、金属ケース10における材料の重量比率が高いため、軽量化が困難である。
【0006】
本発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、その目的は、製造コストを低減できるとともに、軽量化できる差動変圧器を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る差動変圧器は、円筒状のボビンの外周に巻線体が設けられるとともに、前記巻線体の外周に筒状ステータが設けられ、前記ボビンの内側の挿通孔に挿通された磁性体コアが前記ボビンの延在方向に沿って変位されることで前記巻線体からの出力電圧が変化される差動変圧器であって、前記筒状ステータの外周に設けられた金属網体からなるシールド体と、前記シールド体の外周に設けられた熱収縮チューブからなる外皮体とを備える。
【発明の効果】
【0008】
本発明の差動変圧器によれば、筒状ステータの外周に金属網体からなるシールド体を設けるとともに、シールド体の外周に熱収縮チューブからなる外皮体を設けるように構成したので、従来の金属ケースを用いる場合に比べて、製造コストを低減できるとともに、軽量化できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の実施の形態1による差動変圧器の断面図である。
【図2】従来の差動変圧器の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明を実施するための形態について、図面を参照して説明する。
実施の形態1.
図1は、本発明の実施の形態1による差動変圧器の断面図である。なお、従来の差動変圧器と同一又は同等部分については同一の符号を用いて説明する。図において、円筒状のボビン1の外周には巻線体2が設けられており、この巻線体2の外周には金属製薄板が屈曲される等して構成された筒状ステータ3が設けられている。
【0011】
周知のように、巻線体2は、一次コイルと第1及び第2の二次コイルとから構成されており、一次コイルに電流が流されることで、第1及び第2の二次コイルがそれぞれ励磁される。ボビン1の内側に設けられた挿通孔1aには、直線的な変位量の監視が必要とされる被検出対象に接続された磁性体コア(図示せず)が挿通され、ボビン1の延在方向1bに沿う磁性体コアの変位に応じて、第1及び第2の二次コイルの変圧比が変化される。すなわち、このような差動変圧器は、磁性体コアの変位に応じて巻線体2からの出力電圧が変化されるように構成されており、出力電圧が監視されることで被検出対象の直線的な変位量が監視される。
【0012】
筒状ステータ3の外周には、シールド体4が設けられている。このシールド体4は、金属網体により構成されており、巻線を保護するための強度を向上させるとともに、外部の磁気環境から巻線体2及び筒状ステータ3を保護している。シールド体4の外周には、シールド体4の外周面全体を覆うように外皮体5が設けられている。すなわち、外皮体5は、シールド体4と比べて筒状ステータ3の端部により近づく位置まで延在されている。この外皮体5は、例えばポリオレフィン又はポリ塩化ビニル等のプラスチックからなる熱収縮チューブにより構成されている。すなわち、外皮体5は、筒状ステータ3の外周にシールド体4が巻き付けられた後に、シールド体4の外周に密着するように熱収縮チューブが収縮されることで形成される。この外皮体5は、塵、埃、及び水分からシールド体4等の内部構成を保護している。
【0013】
このような差動変圧器では、筒状ステータ3の外周に金属網体からなるシールド体4を設けるとともに、シールド体4の外周に熱収縮チューブからなる外皮体5を設けるように構成したので、従来の金属ケース10(図2参照)を作成するための複雑な機械加工を省略でき、従来の金属ケース10を用いる場合に比べて、製造コストを低減できる。また、金属板から構成される従来の金属ケース10を用いる場合に比べて軽量化できる。
【符号の説明】
【0014】
1 ボビン
1a 挿通孔
1b 延在方向
2 巻線体
3 筒状ステータ
4 シールド体
5 外皮体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
円筒状のボビン(1)の外周に巻線体(2)が設けられるとともに、前記巻線体(2)の外周に筒状ステータ(3)が設けられ、前記ボビン(1)の内側の挿通孔(1a)に挿通された磁性体コアが前記ボビン(1)の延在方向(1b)に沿って変位されることで前記巻線体(2)からの出力電圧が変化される差動変圧器であって、
前記筒状ステータ(3)の外周に設けられた金属網体からなるシールド体(4)と、
前記シールド体(4)の外周に設けられた熱収縮チューブからなる外皮体(5)と
を備えていることを特徴とする差動変圧器。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2011−243623(P2011−243623A)
【公開日】平成23年12月1日(2011.12.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−112018(P2010−112018)
【出願日】平成22年5月14日(2010.5.14)
【出願人】(000203634)多摩川精機株式会社 (669)
【Fターム(参考)】