差圧成形装置、及び、差圧成形シート製造方法
【課題】差圧成形のサイクルタイムを短縮することを課題とする。
【解決手段】シートS1をシート保持部21で保持するシート保持手段20と、シート保持部21で保持されたシートS1の一面S1aに対向した凹部32を有する閉空間形成体30と、シート保持部21で保持されたシートS1の他面S1b側に配置されて凹部32に対向した成形型40と、を用い、凹部32内に負圧を作用させながら閉空間形成体30をシートS1の方へ移動させてシートS1の一面S1aと凹部32とで囲まれた成形前空間SP1を形成し、成形前空間SP1の圧力よりもシートS1の他面S1b側の圧力が低くなる差圧を設けてシートS1を成形型40に密接させて成形する。
【解決手段】シートS1をシート保持部21で保持するシート保持手段20と、シート保持部21で保持されたシートS1の一面S1aに対向した凹部32を有する閉空間形成体30と、シート保持部21で保持されたシートS1の他面S1b側に配置されて凹部32に対向した成形型40と、を用い、凹部32内に負圧を作用させながら閉空間形成体30をシートS1の方へ移動させてシートS1の一面S1aと凹部32とで囲まれた成形前空間SP1を形成し、成形前空間SP1の圧力よりもシートS1の他面S1b側の圧力が低くなる差圧を設けてシートS1を成形型40に密接させて成形する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、成形可能なシートを差圧成形する差圧成形装置、及び、差圧成形シート製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
圧空成形や真空成形等の差圧成形は、加熱された被成形シートの一面側と他面側の圧力に差を設ける熱成形として知られている。被成形シートの差圧成形装置として、被成形シートの加熱装置、被成形シートの搬送装置、成形位置上方の圧空ボックス、成形位置下方の成形型、及び、圧空ボックス内への圧空供給エア回路を備える圧空成形装置が知られている。この圧空成形装置の搬送装置は、被成形シートの縁部を把持するクランプ手段を有し、このクランプ手段で保持された被成形シートを加熱装置から成形位置へ搬送する。圧空成形装置は、圧空ボックスを下降させて加熱後の被成形シートに接触させ、成形型を上昇させ、圧空ボックス内へ圧空を供給して被成形シートを成形型に密接させて成形する。
【0003】
特許文献1に記載の圧空成形装置は、圧空ボックス内に熱風を供給する熱風供給装置を備えている。この圧空成形装置は、下型と圧空ボックスとが離間している時から圧空ボックス内に熱風を供給しており、圧空ボックス内から下方へ熱風が吹き出されている。従って、シートクランプによって四辺が固定された成形用シートが下型と圧空ボックスとの間に搬入された時から、圧空ボックス内からの熱風により成形用シートが加熱される。その後、下型と圧空ボックスとが近接すると、圧空ボックス内に供給される熱風により成形用シートが下型に密接して賦形される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−178961号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
図24(a),(b)に示すように、圧空ボックス940が下降して加熱後の被成形シート991に接触するとき、圧空ボックス下側の空気が下降流となり、クランプ手段920に把持された被成形シート991が下方へ膨らんでしまう。成形のサイクルタイムを短縮しようとして圧空ボックス940の下降速度を上げると、軟化した被成形シート991の下方への膨らみが大きくなってしまい、図24(c)に示すように、成形型930を上昇させた時に被成形シート991の余りが多くなり、圧空供給時にシート余りが皺となったりエア溜まりが残ったりしてしまう。このエア溜まりとは、圧空成形時に成形型930と成形シート992との間にエアが残る現象である。圧空ボックス940の下降速度を下げるとシート余りが少なくなるものの、成形のサイクルタイムが長くなってしまう。すると、圧空を供給するまでに被成形シート991の温度低下が大きくなり、この温度低下を小さくするために加熱装置の温度を上げると、被成形シート991の下方への膨らみが大きくなってしまう。被成形シート991が薄いと、このような現象が顕著となってくる。被成形シート991が印刷シートであると、シート余りによる成形品の印刷位置のずれとなってしまう。
【0006】
特に特許文献1記載の圧空成形装置は、下型と圧空ボックスとが近接する前に圧空ボックス内から下方へ熱風が吹き出されているため、軟化する成形用シートが下方へ膨らみ易い。従って、シート余りを少なくするために圧空ボックスの下降速度をさらに下げる必要があり、成形のサイクルタイムがさらに長くなってしまう。
【0007】
以上を鑑み、本発明は、差圧成形のサイクルタイムを短縮することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、本発明の差圧成形装置は、成形可能なシートをシート保持部で保持するシート保持手段と、
前記シート保持部で保持されたシートの一面に対向した凹部を有する閉空間形成体と、
前記シート保持部で保持されたシートの他面側に配置され、前記凹部に対向した成形型と、
前記凹部内に負圧を作用させながら前記閉空間形成体を前記シートの方へ移動させて前記シートの一面と前記凹部とで囲まれた成形前空間を形成し、該成形前空間の圧力よりも前記シートの他面側の圧力が低くなる差圧を設けて前記シートを前記成形型に密接させて成形する差圧成形手段とを備えることを特徴とする。
【0009】
また、本発明は、成形可能なシートを差圧成形して成形シートを製造する差圧成形シート製造方法であって、
前記シートをシート保持部で保持するシート保持手段と、
前記シート保持部で保持されたシートの一面に対向した凹部を有する閉空間形成体と、
前記シート保持部で保持されたシートの他面側に配置され、前記凹部に対向した成形型と、を用い、
前記凹部内に負圧を作用させながら前記閉空間形成体を前記シートの方へ移動させて前記シートの一面と前記凹部とで囲まれた成形前空間を形成し、該成形前空間の圧力よりも前記シートの他面側の圧力が低くなる差圧を設けて前記シートを前記成形型に密接させて成形することを特徴とする。
【0010】
すなわち、閉空間形成体の凹部内に負圧が作用した状態で閉空間形成体がシートの方へ移動するので、閉空間形成体の移動による空気の流れが弱くなり、シートの成形型側への膨らみが減る。これにより、差圧供給時のシート余りが少なくなり、閉空間形成体の移動速度を上げることができ、差圧成形のサイクルタイムを短縮することができる。
【0011】
ここで、上記差圧成形には、圧空成形、真空成形、圧空と真空を併用する圧空真空成形、が含まれる。
上記シート保持手段には、シートの縁部を把持して保持するクランプ手段、シートの縁部を突き刺して保持する突き刺し手段、等が含まれる。
上記圧力は、絶対圧とする。上記負圧は、大気圧よりも低いエア圧(絶対圧)であればよく、いわゆる真空圧のみならず、いわゆる減圧のエア圧も含まれる。従って、上記凹部内に負圧を作用させることには、凹部内を負圧源に接続することのみならず、凹部内の空気を外部へ吸引することも含まれる。
上記閉空間形成体で形成される成形前空間は、常時密閉された空間ではなく、圧力を変えるためのエア経路が接続された空間を意味する。従って、上記閉空間形成体で形成される成形前空間は、減圧経路、圧空経路、大気への開放と大気からの遮断とを切り替える経路、等が接続されてもよい。
上記閉空間形成体と上記成形型との間にクランプ部材等の部材が設けられてもよい。
上述した、成形前空間の圧力よりもシートの他面側の圧力が低くなる差圧を設けることには、成形前空間に圧空を供給すること、シートの他面側を減圧すること、成形前空間に圧空を供給しながらシートの他面側を減圧すること、のいずれも含まれる。
【発明の効果】
【0012】
請求項1に係る発明によれば、成形のサイクルタイムを短縮することが可能な差圧成形装置を提供することができる。
請求項2に係る発明では、閉空間形成体を近付けた時のシートの平たさを容易に調節することができる。
請求項3に係る発明では、閉空間形成体を近付けたときのシートの平たさを調節する作業を軽減することができる。
請求項4に係る発明では、連続成形に好適な差圧成形装置を提供することができる。
請求項5に係る発明では、成形のサイクルタイムを短縮するのに好適な差圧成形装置を提供することができる。
請求項6に係る発明では、成形のサイクルタイムを短縮することが可能な差圧成形シート製造方法を提供することができる。
請求項7に係る発明では、成形のサイクルタイムを短縮するのに好適な差圧成形シート製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の一実施形態に係る差圧成形装置2を有する差圧成形品製造システム1を例示する正面図である。
【図2】本発明の一実施形態に係る差圧成形装置2を例示する正面図である。
【図3】差圧成形装置2の要部を例示する平面図である。
【図4】シート保持部21を取り付けたクランプチェーン24の要部を例示する斜視図である。
【図5】成形部3を例示する垂直断面図である。
【図6】上テーブル38とともに閉空間形成体30を例示する底面図である。
【図7】下テーブル48とともに成形型40を例示する平面図である。
【図8】差圧成形装置2の電気回路構成の概略を例示するブロック図である。
【図9】差圧成形装置2の動作を例示するタイミングチャートである。
【図10】シートS1の一面S1aと凹部32とで囲まれた成形前空間SP1を形成した状態の成形部3を例示する垂直断面図である。
【図11】閉空間形成体30と成形型40とを近接させてシートS1を差圧成形した状態の成形部3を例示する垂直断面図である。
【図12】閉空間形成体30と成形型40とを離間させた状態の成形部3を例示する垂直断面図である。
【図13】製品S3の外観を例示する斜視図である。
【図14】変形例に係る差圧成形品製造システム1Aを示す正面図である。
【図15】シートS1の膨らみの検出手段66を設けた変形例の成形部3を示す垂直断面図である。
【図16】変形例に係る差圧成形装置の電気回路構成の概略を示すブロック図である。
【図17】変形例に係る差圧成形装置が行う負圧調整処理を示すフローチャートである。
【図18】変形例に係る差圧成形装置が行う負圧調整処理を示すフローチャートである。
【図19】上側のテーブルに成形型40Aを設けた変形例の成形部3を示す垂直断面図である。
【図20】変形例に係る差圧成形装置の電気回路構成の概略を示すブロック図である。
【図21】変形例に係る差圧成形装置の動作を示すタイミングチャートである。
【図22】変形例に係る差圧成形装置の動作を模式的に示す図である。
【図23】変形例に係る差圧成形装置の動作を示すタイミングチャートである。
【図24】比較例に係る差圧成形装置の動作を模式的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
(1)差圧成形品製造システムの説明:
図1は、本発明の一実施形態に係る差圧成形装置2を有する差圧成形品製造システム1を例示する正面図である。図2は、差圧成形品製造システム1に含まれる差圧成形装置2を例示する正面図である。図3は、差圧成形装置2の要部を例示する平面図である。ここで、図1〜3の左から右へ向かう方向がシートS1,S2,S4の搬送方向D1であり、左側がシートS1,S2,S4の上流側、右側がシートS1,S2,S4の下流側である。
差圧成形品製造システム1は、シート供給装置4、シート保持手段20、シート加熱装置10、成形部3、トリミング装置5、製品搬送装置6、スクラップ回収装置7、を備え、制御盤80の制御に従って動作する。
【0015】
シート供給装置4は、被成形シートS1を巻いたロールS0をほどき、連続して繋がった連続シートS1を所定のシート供給位置L1へ向かう所定の搬送方向D1へ搬送する。シート保持手段20は、シート供給装置4で搬送されたシートS1をシート供給位置L1で保持し、所定の差圧成形位置L2まで搬送方向D1へ搬送する。シート加熱装置10は、シート供給位置L1と差圧成形位置L2との間に設置され、搬送中のシートS1を加熱する。成形部3は、加熱されたシートS1を差圧成形し、差圧成形シートS2(図11参照)を離型してトリミング装置5へ送り出す。トリミング装置5は、差圧成形シートS2の縁部を所定の大きさに切断するトリミングを行い、図13に示すような差圧成形品(製品S3)を製品搬送装置6の方へ送り出す。製品搬送装置6は、製品S3を所定の取出位置へ搬送する。スクラップ回収装置7は、製品S3の周囲にある差圧成形シートS2から生じるスクラップシートS4をシートS1に繋がった状態で搬送方向D1に移送して回収する。図1に示すスクラップ回収装置7は、回転モーター等で構成され、制御盤80の制御に従ってスクラップシートS4の巻取軸を回転駆動してスクラップシートS4を所定の回転方向に巻き取る。シート供給装置4のシート供給動作、シート保持手段20のシートを保持して搬送する動作、成形部3の成形動作、トリミング装置5のトリミング動作、製品搬送装置6の製品搬送動作、及び、スクラップ回収装置7の巻き取り動作は、同期して間欠的に行われる。
【0016】
(2)差圧成形装置の説明:
差圧成形装置2は、成形可能なシートS1を差圧成形する。図2〜12に示す差圧成形装置2は、シートS1に対していわゆる圧空真空成形、すなわち、真空と圧空を併用する差圧成形を行う。むろん、差圧成形装置2は、シートS1に対して真空成形のみ行ってもよいし、シートS1に対して圧空成形のみを行ってもよい。
差圧成形装置2の基本部分は、シート保持手段20、閉空間形成体30、成形型40、差圧成形手段60、からなる。図1,2に例示した差圧成形装置2は、閉空間形成体30及び成形型40が成形部3に含まれるとともに、差圧成形手段60が成形部3と制御盤80とで構成されている。
【0017】
シート保持手段20は、シートS1をシート保持部21で保持する。閉空間形成体30は、シート保持部21で保持されたシートS1の一面S1aに対向した凹部32を有する。成形型40は、シート保持部21で保持されたシートS1の他面S1b側に配置され、凹部32に対向している。差圧成形手段60は、凹部32内に負圧を作用させながら閉空間形成体30をシートS1の方へ移動させてシートS1の一面S1aと凹部32とで囲まれた成形前空間SP1を形成し、成形前空間SP1の圧力よりもシートS1の他面S1b側の圧力が低くなる差圧を設けてシートS1を成形型40に密接させて成形する。凹部32内に負圧が作用した状態で閉空間形成体30がシートS1の方へ移動するので、シートS1の膨らみが減り、差圧成形のサイクルタイムを短縮するために閉空間形成体30の移動速度を上げることができる。
【0018】
成形可能なシートS1は、熱可塑性シートなど差圧成形可能な種々の被成形シートを用いることができ、熱可塑性樹脂等の樹脂のみからなる樹脂シートでも、樹脂に充てん材等の添加剤が添加された材質からなるシートでもよく、単層シートでも、異なる材質をラミネートした積層シートでもよい。シートS1の素材には、ポリエチレン(Polyethylene)、ポリプロピレン(Polypropylene)、ポリスチレン(Polystyrene)、ポリ塩化ビニル(Poly (vinyl chloride))、ABS樹脂(Acrylonitrile-butadiene-styrene resin)、ポリエチレンテレフタレート(Poly (ethylene terephthalate))、ポリカーボネート(Polycarbonate)、ポリアミド(Polyamide)、アクリル樹脂(Acrylic resin)、これらの組み合わせ、等を利用可能である。
以下、シートS1に熱可塑性シートを用いるものとして説明する。
【0019】
本実施形態の差圧成形品製造システム1は、製品S3として電化製品の操作パネルなど表面に文字や絵等の絵柄を有する薄物の差圧成形品を製造するのに好適な構成を有している。印刷や蒸着等により絵柄を表面に設けた被成形シート(「絵柄シート」と呼ぶことにする)は、絵柄の位置に合わせて差圧成形する必要があるため、成形の位置ずれを少なくする必要がある。差圧成形装置2は、精度良く差圧成形をする必要がある印刷シート等の絵柄シートを短いサイクルタイムで差圧成形するのに好適である。
図3には、シートS1として模様が印刷された印刷シートが例示されている。この印刷シートは、搬送方向D1の位置を合わせるための目印S11が各模様に合わせた位置に印刷され、印刷面を上側に向けて搬送される。制御盤80のI/O(入出力)回路82zには、目印S11を検出するための位置検出センサー26が接続されている。目印S11を有する絵柄シートが用いられる場合、制御盤80は、位置検出センサー26の検出信号を入力し、目印S11の位置に合わせてシートS1,S2を間欠的に移動させることが可能である。
【0020】
また、薄物シートは、加熱後に温度が低下し易い。従って、薄物シートを加熱して差圧成形位置へ搬入して差圧成形する場合、絵柄が無くても短いサイクルタイムで差圧成形するのが好ましい。本差圧成形装置2は、薄物シートを短いサイクルタイムで差圧成形するのに好適である。被成形シートS1は、シート状ないしフィルム状になっていればよく、1〜2mm程度、0.25〜1mm程度、等、様々な厚みとすることが可能であり、0.25mm程度以下のフィルムでもよい。むろん、2mm程度よりも厚い厚物シートの差圧成形にも、本発明を適用可能である。
本実施形態の差圧成形装置2は、ロール状シート(連続シート)に対して繰り返し差圧成形する。むろん、1回の差圧成形に必要な長さに切断されたカットシートの差圧成形にも、本発明を適用可能である。
【0021】
本実施形態の差圧成形手段60は、離型手段70を有する。離型手段70は、成形型40に密接した成形シートS2の他面S2b側を大気圧以上とし、閉空間形成体30と成形型40とを離間させて成形シートS2を離型する。ここで、閉空間形成体30と成形型40とを近接又は離間させることには、閉空間形成体30のみを移動させること、成形型40のみを移動させること、閉空間形成体30と成形型40の両方を移動させること、のいずれも含まれる。
本実施形態の差圧成形装置2は、さらに、シート加熱装置10を備える。シート加熱装置10は、シート供給位置L1から差圧成形位置L2へ搬送される途中のシートS1を加熱して軟化させる。
【0022】
次に、本実施形態の差圧成形装置2をより具体的に説明する。
シート加熱装置10は、ヒーター11を有し、搬送中の熱可塑性のシートS1を溶融しない範囲で軟化する温度以上に輻射加熱する。ヒーター11は、シートS1を加熱軟化させることができる加熱能力があればよく、シートS1の性質に応じて加熱能力を設定すればよい。
【0023】
シート保持手段20は、シート供給位置L1でシート保持部21によりシートS1を保持してシート加熱装置10へ搬送し、加熱されたシートS1をさらに閉空間形成体30と成形型40との間の差圧成形位置L2へ搬送する。
【0024】
図3は、シート保持手段20の例を上から見て示している。このシート保持手段20は、シートS1,S2の幅方向D2の両縁部S1c,S1cに沿って設置された一対のクランプチェーン(搬送手段)24,24のそれぞれにシート保持部21が取り付けられて構成されている。各クランプチェーン24は、無端チェーン24bの外リンク24cのアタッチメント部にシート保持部21が取り付けられている。無端チェーン24bは、搬送用モーター24aで周回駆動される。搬送用モーター24aは、サーボモーターとされ、制御盤80の制御に従って無端チェーン24bを断続的に周回駆動する。
【0025】
図4は、シート保持部21の例を示す斜視図である。このシート保持部21は、台座21a、傾動部材21b、円柱状の支軸部材21c、ローラ21d、引張コイルばね21e,21e、を備えている。アタッチメント部に固定された台座21aは、シートS1,S2の縁部S1cを載置する。傾動部材21bは、台座21aの上面21a1に対向する突部21b1を有し、台座21aの軸21a2に対して傾動可能に取り付けられている。支軸部材21cは、傾動部材21bの上面から上方へ突出している。ローラ21dは、支軸部材21cの先端部に対して回転可能に取り付けられている。ばね21e,21eは、弾性力に抗して引っ張った状態で一端を台座21aに取り付け他端を傾動部材21bに取り付けたコイルばねであり、傾動部材21bを起立させる向きに付勢する。
【0026】
ローラが何も接触していない場合、シート縁部S1cを載置した台座の上面21a1に傾動部材の突部21b1が突き立てられ、シート縁部S1cがシート保持部21に挟持される。一方、シートS1がクランプチェーン24に搬入されるシート供給位置L1、及び、成形シートS2がクランプチェーン24から解放される位置には、ローラ21dを押して傾動部材21bを傾けさせる壁部21zが設けられている。これにより、クランプチェーン24に搬入される位置でシートの両縁部S1c,S1cが保持され、クランプチェーン24から解放される位置でスクラップシートの両縁部S1c,S1cが解放される。
【0027】
以上より、本差圧成形装置2は、連続成形に好適である。
むろん、シート保持手段20は、上述したクランプ手段の他、シートの縁部を突き刺して保持する突き刺し手段等でもよい。
【0028】
シートS1,S2の搬送方向D1は、水平方向としてシートS1,S2が安定して搬送されるようにしているが、水平方向から上方向や下方向へずれた方向でも、鉛直上方向でも、鉛直下方向でもよい。
【0029】
閉空間形成体30は、図2,5,6に示すように、差圧成形位置L2にあるときのシートS1の一面S1aに対向する凹部32を有し、該シートの一面S1a側に配置されている。閉空間形成体30は、いわゆる圧空ボックスであり、下面に凹部32の開口32aを有する箱状に形成され、凹部32の周囲33となる下面が成形型40とでシートS1を挟む挟持面33aとされている。雄型を含む様々な成形型を用いて圧空成形(圧空真空成形を含む)をするため、閉空間形成体30と成形型40とが近接したときに凹部32の内面と成形型40の成形面42aとの間に空間が生じるようにされている。すなわち、凹部32の内面形状は成形面42aの形状とは異なっており、凹部32の内面が間隔を空けて成形面42aを覆うようにされている。
閉空間形成体30の上部には、凹部32から上負圧供給エア回路61及び上圧空供給エア回路62に繋がる差圧供給エア経路34と、凹部32から上開放エア回路63に繋がる開放エア経路35とが形成されている。
【0030】
閉空間形成体30は、閉空間形成体側テーブルとなる上テーブル38の下面に取り付けられて固定されている。上テーブル38は、上下双方向へ移動可能に設けられ、閉空間形成体駆動装置39に駆動される。閉空間形成体駆動装置39は、差圧成形位置L2にあるシート保持部21に対して上テーブル38を近接及び離間させる。
【0031】
成形型40は、図2,5,7に示すように、凹部32に対向した凸部42を有する雄型とされ、差圧成形位置L2にあるときのシートS1の他面S1b側に配置されている。成形型の凸部42の表面は、シートS1を密接させる成形面42aとされている。成形面42aには、下負圧供給エア回路64、下開放エア回路65、及び、離型エア供給回路71に繋がるエア経路44の孔44aが形成されている。成形型40は、凸部42を有する型本体が基部材に取り付けられて固定されたものでもよいし、型側テーブルに直接取り付けられる型のみで構成されてもよい。
【0032】
成形型40は、型側テーブルとなる下テーブル48の上面に取り付けられて固定されている。下テーブル48は、上下双方向へ移動可能に設けられ、成形型駆動装置49に駆動される。成形型駆動装置49は、閉空間形成体30に対して下テーブル48を近接及び離間させる。
【0033】
なお、テーブル38,48を上下方向へ移動させる機構には、リンク機構、クランク機構、ボールねじ機構、ラックとピニオンを組み合わせた機構、油圧シリンダのようなシリンダを用いた機構、等を用いることができる。
また、シート保持部21、閉空間形成体30、及び、成形型40の主要部分は、金属等で形成することができる。
【0034】
差圧成形手段60は、各種駆動装置39,49、各種エア回路61〜65、制御盤80、等で構成される。上負圧供給エア回路61は、閉空間形成体の凹部32に繋がるエア経路34に接続され、成形前空間SP1や成形後空間SP2を減圧することが可能である。
上負圧供給エア回路61は、単に真空圧を供給するのみならず、例えばインバータ制御により凹部32内に供給する負圧(真空圧を含む)を調整する圧力調整手段61aを有している。この圧力調整手段61aを操作して凹部32内に供給する負圧を調整することにより、閉空間形成体30を近付けた時のシートS1の平たさを容易に調節することができる。上負圧供給エア回路61から閉空間形成体の差圧供給エア経路34に至る負圧経路には、例えば負圧経路の断面積を変更して流れるエアの流量を調整する負圧流量調整手段61bが設けられている。この負圧流量調整手段61bを操作して負圧経路のエアの流量を調整することにより、閉空間形成体30を近付けた時のシートS1の平たさを容易に調節することができる。すなわち、圧力調整手段61aや負圧流量調整手段61bは、凹部32内に作用させる負圧を調整するための負圧調整手段を構成する。
【0035】
上圧空供給エア回路62は、閉空間形成体の差圧供給エア経路34に接続され、成形前空間SP1に圧空を供給することが可能である。
上開放エア回路63は、閉空間形成体の凹部32に繋がるエア経路35に接続され、大気への開放と大気からの遮断とを切り替えることが可能である。
【0036】
下負圧供給エア回路64は、成形面42aに繋がるエア経路44に接続され、シートS1の他面S1b側を減圧することが可能である。下負圧供給エア回路64は、単に真空圧を供給するのみならず、インバータ制御によりシートの他面S1b側に供給する負圧を調整可能である。
下開放エア回路65は、エア経路44に接続され、大気への開放と大気からの遮断とを切り替えることが可能である。
【0037】
差圧成形手段60は、まず、閉空間形成体30をシートS1の方へ移動させるが、その際、図5に示すように凹部32内に負圧を作用させる。これにより、図10に示すように、シートS1の膨らみを減らした状態でシートS1の一面S1aと凹部32とで囲まれた成形前空間SP1を形成する。ここで、成形前空間SP1は、常時密閉された空間ではなく、エア経路34,35が接続された空間を意味する。
【0038】
さらに、差圧成形手段60は、図11に示すように、閉空間形成体30と成形型40とを近接させてシートS1の他面S1bに凸部42を挿入させ、シートS1の他面S1b側を減圧するとともに成形前空間SP1に圧空PA1を供給し、成形前空間SP1の圧力よりもシートS1の他面S1b側の圧力が低くなる差圧を設ける。シートの他面S1b側に供給する負圧は、大気圧(約0.1MPa)よりも低くされ、絶対圧で、例えば、0.05MPa以下、0.04MPa以下、0.03MPa以下、0.02MPa以下、0.01MPa以下、とされる。成形前空間SP1に供給する圧空PA1の圧力は、大気圧よりも高くされ、絶対圧で、例えば、0.2〜2MPa程度とされる。
以上により、シートS1は、成形型の成形面42aに密接し、差圧成形される。シートS1の差圧成形は、圧空真空成形のみならず、シートの他面S1b側を減圧する真空成形のみでもよいし、成形前空間SP1に圧空PA1を供給する圧空成形のみでもよい。成形前空間SP1に圧空PA1が供給されることにより、高品質の差圧成形シートS2が得られる。
【0039】
離型手段70は、各種駆動装置39,49、上開放エア回路63、離型エア供給回路71、制御盤80、等で構成される。離型エア供給回路71は、成形面42aに繋がるエア経路44に接続され、成形シートS2の他面S2b側に圧空を供給することが可能である。離型手段70は、成形型40から圧空(図11に示す離型エアRA1)を供給し、閉空間形成体30と成形型40とを離間させて成形シートS2を離型する。離型エアRA1の圧力は、大気圧よりも高くされ、絶対圧で、例えば、0.2〜2MPa程度とされる。
【0040】
差圧成形シートS2は、離型後、シート保持部21の保持から解放され、差圧成形位置L2からトリミング装置5へ搬送されて、所定の大きさに打ち抜かれる。得られる製品S3は、製品搬送装置6へ搬送され、さらに所定の取出位置へ搬送される。スクラップシートS4は、スクラップ回収装置7で回収される。成形シートS2を解放したシート保持部21は、差圧成形位置L2からシート供給位置L1に戻される。
【0041】
なお、シート保持部21と閉空間形成体30とを近接及び離間させる際には、閉空間形成体30のみを移動させているが、シート保持部21と閉空間形成体30の両方を移動させてもよいし、シート保持部21のみを移動させてもよい。
成形型40と閉空間形成体30とを近接及び離間させる際には、成形型40と閉空間形成体30の両方を移動させているが、成形型40のみを移動させてもよいし、閉空間形成体30のみを移動させてもよい。
【0042】
図8は、制御盤80を中心とした差圧成形装置2の電気回路構成を示している。制御盤80には、シート加熱装置10、搬送用モーター24a、各種駆動装置39,49、各種エア回路61,62,63,64,65,71、位置検出センサー26、等が電気的に接続されている。制御盤80は、該制御盤全体の動作を制御する中央制御回路81、シート加熱装置10の温度を制御するシート加熱制御部82a、搬送用モーター24aの動作を制御する搬送用モーター駆動制御部82b、閉空間形成体駆動装置39の動作を制御する閉空間形成体駆動制御部82c、成形型駆動装置49の動作を制御する成形型駆動制御部82d、上負圧供給エア回路61の動作を制御する上負圧供給制御部82e、上圧空供給エア回路62の動作を制御する上圧空供給制御部82f、上開放エア回路63の動作を制御する上開放制御部82g、下負圧供給エア回路64の動作を制御する下負圧供給制御部82h、下開放エア回路65の動作を制御する下開放制御部82i、離型エア供給回路71の動作を制御する離型エア供給制御部82j、位置検出センサー26から検出信号を入力するI/O回路82z、情報出力部84、操作部85、等を備えている。
目印S11を有する絵柄シートが用いられる場合、制御盤80は、位置検出センサー26からの入力信号に基づいてシートS1,S2を目印S11の位置に合わせて間欠的に移動させる。絵柄の無い被成形シートが用いられる場合、制御盤80は、シートS1,S2を所定の間隔で間欠的に移動させる。
【0043】
中央制御回路81は、内部のバスに、CPU(Central Processing Unit)81a、半導体メモリ81b,81c、タイマ回路81d、不揮発性メモリ81e、等が接続された回路とされている。CPU81aは、ROM(Read Only Memory)81bや不揮発性メモリ81eに記録された制御プログラムに基づいてRAM(Random Access Memory)81cをワークエリアとして利用しながら差圧成形装置2の各部を制御する。
情報出力部84は、例えばディスプレイや音声出力器やプリンタで構成され、利用者から操作入力を受け付けた各種設定の内容や差圧成形装置2の運転状況を表す各種情報を表示等により出力する。操作部85は、例えば複数のボタンで構成され、利用者から操作入力を受け付ける。
【0044】
(3)差圧成形装置の動作、並びに、作用及び効果:
本実施形態の制御盤80は、図9に示すタイミングチャートに従って製品S3を製造する処理を行う。以下、差圧成形装置2の動作、並びに、作用及び効果を説明する。
なお、図5に示すように、閉空間形成体30は所定の離間位置L11にあり、成形型40は所定の離間位置L12にあり、エア回路61,62,64,71は動作しておらず、開放エア回路63,65は遮断状態であるものとする。
【0045】
まず、制御盤80は、シート加熱装置10でシートS1の加熱が完了するタイミングで搬送用モーター24aを駆動させ、シート保持部21によりシートS1を保持した状態で加熱軟化したシートS1を差圧成形位置L2へ搬送させる(タイミングt1〜t2)。このとき、シート供給位置L1でシート保持部21により保持されたシートS1は、シート加熱装置10の方へ搬送される。
【0046】
その後、制御盤80は、閉空間形成体駆動装置39を駆動させて上テーブル38を所定の近接位置L13まで下降させるとともに、上テーブル38の下降中に上負圧供給エア回路61で凹部32内に負圧を供給する(タイミングt3〜t5)。このようにして、本差圧成形装置2は、凹部32内に負圧を作用させながら閉空間形成体30をシートS1の方へ移動させる。図5には、上テーブル38の下降を開始させるタイミングt3における成形部3の様子が示されている。
むろん、上テーブル38の下降タイミングと凹部32内への負圧の供給タイミングは、ずれていてもよい。
【0047】
閉空間形成体30を下降させている途中から、制御盤80は、成形型駆動装置49を駆動させて下テーブル48を所定の近接位置L14まで上昇させる(タイミングt4〜t6)。下テーブル48の上昇中にタイミングt5で閉空間形成体30が近接位置L13となり、図10に示すように、シートS1の一面S1aと凹部32とで囲まれた成形前空間SP1が形成される。図10に示す例では、閉空間形成体30の下面(挟持面33a)が近接位置L13でシート保持部21よりも下側とされている。むろん、閉空間形成体30の近接位置L13は、シートS1の性質等に応じて設定すればよい。
【0048】
図5で示したように、閉空間形成体30の凹部32内に負圧が作用した状態で閉空間形成体30がシートS1の方へ移動するので、閉空間形成体30の下側にある空気の下降流が弱くなる。これにより、図10に示すように、軟化したシートS1の下方への膨らみが少ない。
なお、閉空間形成体よりも先に成形型をシートに近付けると、シートが閉空間形成体側へ膨らむことになる。しかし、成形型をシートに近づける時にはシートの成形部分の周囲を押さえることができないので、成形面に負圧を作用させてもシートの閉空間形成体側への膨らみを解消することができない。
【0049】
下テーブル48が近接位置L14となるタイミングt6において、制御盤80は、下負圧供給エア回路64で成形面42aに負圧を供給させ、シートの他面S1b側の減圧を開始させる。このとき、成形面42aに比較的弱い負圧を作用させる副真空引きを行った後、成形面42aに強い負圧を作用させる本真空引きを行ってもよい。
以上によりシートS1が成形型40の成形面42aに密接することになるが、制御盤80は、上圧空供給エア回路62で凹部32内に圧空PA1(図11参照)を供給してさらにシートS1を成形面42aに密接させる(タイミングt7〜t8)。圧空PA1の供給時には閉空間形成体30と成形型40とを離間させる向きの強い力が生じるため、タイミングt7の時点かタイミングt7の前に閉空間形成体30と成形型40とを型締めし、タイミングt8の後に閉空間形成体30と成形型40とを型締めから解放してもよい。このようにして、シートS1が差圧成形され、成形型40上に成形シートS2が形成される。
【0050】
図10で示したように、閉空間形成体30をシートS1に近付けた際にシートS1の下方への膨らみが少なくなっているので、成形型40を上昇させた時のシートS1の余りが少なくなる。シート余りが少なくなれば、成形前空間SP1に圧空を供給した時に成形シートS2の皺やエア溜まりが生じ難くなり、絵柄シートの場合には差圧成形品の絵柄位置のずれが生じ難くなる。従って、本差圧成形装置2は、シートS1の方へ移動する閉空間形成体30の速度を上げることができ、差圧成形のサイクルタイムを短縮することができる。
【0051】
圧空PA1の供給を停止するタイミングt8において、制御盤80は、上開放エア回路63を開放状態に切り替えて成形後空間SP2を大気に開放させる。むろん、圧空PA1の供給の停止タイミングと成形後空間SP2の大気への開放タイミングは、ずれていてもよい。その後、制御盤80は、上開放エア回路63を遮断状態に切り替え、下負圧供給エア回路64からの負圧の供給を停止させ、離型エア供給回路71で成形型40から離型エアRA1(図11参照)を供給させ、閉空間形成体駆動装置39で上テーブル38の上昇を開始させる(タイミングt9)。むろん、上開放エア回路63の遮断タイミングと、成形型40の負圧供給の停止タイミングと、離型エア供給の開始タイミングと、上テーブル38の上昇の開始タイミングとは、ずれていてもよい。離型エアRA1の供給の際には、比較的弱い離型エアを供給した後、比較的強い離型エアを供給してもよい。
【0052】
タイミングt9〜t10において、制御盤80は、閉空間形成体駆動装置39で上テーブル38を所定の離間位置L11まで上昇させる。これにより、成形シートS2と閉空間形成体30とが離間する。その後、図12に示すように、制御盤80は、成形型駆動装置49で下テーブル48を所定の離間位置L12まで下降させる(タイミングt11〜t1)。すると、図12に示すように、閉空間形成体30と成形型40とが離間し、一面S2a側を閉空間形成体30に向けて他面S2b側を成形型40に向けた成形シートS2が離型する。
【0053】
下テーブル48の下降が停止するタイミングt1において、制御盤80は、離型エア供給回路71からの離型エアRA1の供給を停止させ、差圧成形位置L2の成形シートS2の搬出を開始させる。差圧成形装置2は、シート保持部21による成形シートS2の保持を解放し、図示しない搬送装置で該成形シートS2をトリミング装置5へ送り出す。トリミング装置5は、搬入された成形シートS2を所定の大きさにトリミングし、図13に示すような製品S3を製品搬送装置6へ送り出す。製品搬送装置6は、搬入された製品S3を所定の取出位置へ搬送する。
以上で製造の1サイクルが終了し、以下、タイミングt1〜t11が繰り返されることにより、連続してシートS1から差圧成形シートS2が形成され、連続して製品S3が製造される。
【0054】
以上説明したように、本実施形態の差圧成形装置2及び差圧成形シート製造方法は、閉空間形成体30が近付くことによるシートS1の成形型40側への膨らみが減るので、差圧供給時のシート余りが少なくなる。従って、本技術は、閉空間形成体30の移動速度を上げることができ、差圧成形のサイクルタイムを短縮することができる。本技術は、成形のサイクルタイム短縮により加熱後のシートの温度低下が少なくなるので、薄い被成形シートの差圧成形に好適である。本技術は、閉空間形成体を近付けたときのシートの平たさが維持されるので、印刷など絵柄の位置合わせのために高精度の成形が求められる製品に有効である。
【0055】
なお、差圧成形時のシート余りを少なくするためには対向するシート保持部の間隔を拡げることが考えられるものの、間隔を拡げるための機構が複雑となって高価となるうえ、シートを均質に拡げるのは困難である。従って、意匠のある絵柄シートの場合には、成形の位置ずれが問題となる。
本実施形態の差圧成形装置2は、閉空間形成体30に接続されるエア回路を利用することができるので、簡素な構成でシート余りによる皺やエア溜まりを抑制することができる。絵柄シートの場合には、シート余りによる絵柄のずれを抑制することができ、精度良く差圧成形することができる。また、エア溜まりを抑制することができるので、ショットブラストやサンドペーパー等による表面加工を施していない金型を成形型40として用いることができる。
【0056】
(4)変形例:
本発明は、種々の変形例が考えられる。
上述した動作の各タイミングの順番は、適宜、変更可能である。例えば、シート搬送終了のタイミングt2以前にタイミングt3の上テーブル38の下降を開始してもよい。上テーブル38の下降終了のタイミングt5以降にタイミングt4の下テーブル48の上昇を開始してもよい。上テーブル38の上昇終了のタイミングt10以前にタイミングt11の下テーブル48の下降を開始してもよい。
上述した各部材は、複数の部材が組み合わされて構成されてもよい。
シートを間欠的にではなく連続して移動させる場合、閉空間形成体や成形型を搬送方向及びその反対方向に往復移動させることにより、本発明を適用することができる。
【0057】
図14は、被成形シートS1にカットシートを用いる変形例の差圧成形品製造システム1Aの正面を示している。本システム1Aのシート供給装置4は、所定のシートストック位置LS1に積み重ねられた被成形シートS1を一枚ずつ所定のシート供給位置L1へ搬送する。シート保持手段20は、シート供給装置4で搬送されたシートS1をシート供給位置L1で保持し、所定の差圧成形位置L2まで所定の搬送方向D1へ搬送する。例えば、シート保持手段20は、シート供給位置L1で下保持部材(シート保持部)と上保持部材(シート保持部)とを近接させてシートS1の両縁部を突き刺して保持し、この状態の上下の保持部材をシート加熱装置10に通して差圧成形位置L2へ水平移動させる。また、シート保持手段20は、差圧成形シートS2の離型後に下保持部材と上保持部材とを離間させ、この状態の上下の保持部材をシート供給位置L1に戻す。成形部3は、加熱されたシートS1を差圧成形し、差圧成形シートS2を離型してトリミング装置5へ送り出す。このとき、図5,10で示したように、成形部3は、凹部32内に負圧を作用させながら閉空間形成体30をシートS1の方へ移動させてシートの一面S1aと凹部32とで囲まれた成形前空間SP1を形成する。これにより、閉空間形成体30が近付くことによるシートS1の成形型40側への膨らみが減り、差圧成形のサイクルタイムを短縮する効果が得られる。
なお、1枚のカットシートから形成する製品は、一つのみならず、複数でもよい。
【0058】
また、シート保持部21で保持されたシートS1における一面S1a側への膨らみと他面S1b側への膨らみの少なくとも一方を検出する検出手段66を差圧成形手段60に設けてもよい。
図15は、シートS1の膨らみの検出手段66を設けた変形例の成形部3を示す垂直断面図である。本成形部3の閉空間形成体30における凹部32の内側面には、シートS1の一面S1a側への膨らみが二点鎖線で示される上限位置LU1を超えているか否かを表す検出信号を生成する上限検出センサー66a(検出手段66)が設けられている。また、成形部3においてシートS1の幅方向D2の外側となる壁部の内側面には、シートS1の他面S1b側への膨らみが二点鎖線で示される下限位置LD1を超えているか否かを表す検出信号を生成する下限検出センサー66b(検出手段66)が設けられている。これらのセンサー66a,66bには、例えば光電式センサーを用いることができる。シートS1の一面S1a側への膨らみが上限位置LU1を超えると、上限位置LU1に沿った光軸が遮断され、上限検出センサー66aが光軸遮断を表す検出信号を生成する。シートS1の他面S1b側への膨らみが下限位置LD1を超えると、下限位置LD1に沿った光軸が遮断され、下限検出センサー66bが光軸遮断を表す検出信号を生成する。
【0059】
図16は、本変形例の制御盤80を中心とした差圧成形装置2の電気回路構成を示している。制御盤80には、図8で示した各部が電気的に接続されている他、上限検出センサー66a、下限検出センサー66b、圧力調整手段(負圧調整手段)61a、負圧流量調整手段(負圧調整手段)61b、が電気的に接続されている。制御盤80は、上限検出センサー66aから検出信号を入力するI/O回路82ya、下限検出センサー66bから検出信号を入力するI/O回路82yb、圧力調整手段61aの調整量を制御する圧力制御部82k、負圧流量調整手段61bの調整量を制御する負圧流量制御部82l、を備えている。
【0060】
図17は、負圧流量調整手段(負圧調整手段)61bを利用する負圧調整処理をフローチャートにより示している。本処理は、製品S3の製造を行っているときに繰り返し行われ、時分割処理により他の処理と並列して行われる。本変形例の差圧成形手段60には、圧力調整手段61aが設けられていなくてもよい。
負圧調整処理を開始すると、制御盤80は、いわゆる圧空ボックスである閉空間形成体30がシートS1に近付いているか否かを判断する(ステップS102。以下、「ステップ」の記載を省略)。例えば、制御盤80は、上テーブル38が下降中であれば条件成立と判断してS104に処理を進め、上テーブル38が下降中でなければ条件不成立と判断して負圧調整処理を終了する。
【0061】
S104では、上限位置センサー66aからの検出信号に基づいて、シートS1の一面S1a側への膨らみが上限位置LU1に到達しているか否かを判断する。シートS1の一面S1a側への膨らみが上限位置LU1を超えていないことを表す検出信号が入力されている場合、制御盤80は、処理をS108に進める。シートS1の一面S1a側への膨らみが上限位置LU1を超えていることを表す検出信号が入力されている場合、制御盤80は、シートS1の一面S1a側への膨らみを減らすように負圧流量調整手段61bの調整量を変更して凹部32内に作用させる負圧の流量を減少させる(S106)。これにより、凹部32内に作用する負圧が弱くなる。
S108では、下限位置センサー66bからの検出信号に基づいて、シートS1の他面S1b側への膨らみが下限位置LD1に到達しているか否かを判断する。シートS1の他面S1b側への膨らみが下限位置LD1を超えていないことを表す検出信号が入力されている場合、制御盤80は、負圧調整処理を終了する。シートS1の他面S1b側への膨らみが下限位置LD1を超えていることを表す検出信号が入力されている場合、制御盤80は、シートS1の他面S1b側への膨らみを減らすように負圧流量調整手段61bの調整量を変更して凹部32内に作用させる負圧の流量を増加させ(S110)、S102に戻る。これにより、凹部32内に作用する負圧が強くなる。
【0062】
閉空間形成体30が所定の離間位置L11から所定の近接位置L13まで移動している間、S102〜S110の処理が繰り返し行われる。これにより、シートS1の膨らみが下限位置LD1から上限位置LU1までの間に収まるように負圧流量調整手段61bの調整量が自動的に変更され、凹部32内に作用する負圧が調整される。これにより、負圧流量調整手段61bの調整量を手動で変更して閉空間形成体30を近付けたときのシートS1の平たさを調節する必要が無くなり、閉空間形成体30を近付けたときのシートS1の平たさを調節する作業を軽減することができる。
【0063】
また、図18に示すように、圧力調整手段61aを利用してS106,S110の代わりにS122,S124の処理を行ってもよい。本変形例の差圧成形手段60には、負圧流量調整手段61bが設けられていなくてもよい。
本変形例の制御盤80は、シートS1の一面S1a側への膨らみが上限位置LU1を超えていることを表す検出信号が入力されている場合、シートS1の一面S1a側への膨らみを減らすように圧力調整手段61aの調整量を変更して凹部32内に作用させる負圧の絶対圧を増加させる(S122)。これにより、凹部32内に作用する負圧が弱くなる。また、制御盤80は、シートS1の他面S1b側への膨らみが下限位置LD1を超えていることを表す検出信号が入力されている場合、シートS1の他面S1b側への膨らみを減らすように圧力調整手段61aの調整量を変更して凹部32内に作用させる負圧の絶対圧を減少させる(S124)。これにより、凹部32内に作用する負圧が強くなる。
【0064】
むろん、シートS1の一面S1a側への膨らみが上限位置LU1を超えていることを表す検出信号が入力されている場合、シートS1の一面S1a側への膨らみを減らすように圧力調整手段61aと負圧流量調整手段61bの両方の調整量を変更してもよい。シートS1の他面S1b側への膨らみが下限位置LD1を超えていることを表す検出信号が入力されている場合、シートS1の他面S1b側への膨らみを減らすように圧力調整手段61aと負圧流量調整手段61bの両方の調整量を変更してもよい。
また、先にS108,S110,S124の処理を行った後にS104,S106,S122の処理を行ってもよい。
さらに、下限検出センサー66bが無くS108,S110,S124の処理が無くても、シートS1の一面S1a側への膨らみが上限位置LU1を超えないように凹部32内に作用する負圧が調整される。上限検出センサー66aが無くS104,S106,S122の処理が無くても、シートS1の他面S1b側への膨らみが下限位置LD1を超えないように凹部32内に作用する負圧が調整される。
【0065】
さらに、閉空間形成体30と成形型40の位置関係を逆にすることも可能である。
図19は、閉空間形成体30をシートS1の下側に配置し成形型40をシートS1の上側に配置した変形例の差圧成形装置において成形部3を例示する垂直断面図である。本変形例では、閉空間形成体30を固定したテーブル38が下テーブルとされ、成形型40を固定したテーブル48が上テーブルとされている。また、雌型とされた成形型40Aが上側のテーブル48の下面に取り付けられて固定されている。
【0066】
図20は、図19に示す成形部3を有する差圧成形装置の電気回路構成の一例を示している。本変形例では、上負圧供給エア回路61の代わりに下負圧供給エア回路161が設けられ、上負圧供給制御部82eの代わりに下負圧供給制御部182eが設けられ、上圧空供給エア回路62の代わりに下圧空供給エア回路162が設けられ、上圧空供給制御部82fの代わりに下圧空供給制御部182fが設けられ、上開放エア回路63の代わりに下開放エア回路163が設けられ、上開放制御部82gの代わりに下開放制御部182gが設けられている。
【0067】
また、本変形例では、図8の下負圧供給エア回路64に相当する上負圧供給エア回路が設けられておらず、図8の下開放エア回路65に相当する上開放エア回路が設けられていない。これらの回路が無くても、シートS1を差圧成形することが可能である。
【0068】
図21は、図20に示す差圧成形装置の動作の一例を示すタイミングチャートである。本変形例の制御盤80は、まず、搬送用モーター24aでシートS1を差圧成形位置L2へ搬送させ(タイミングt1〜t2)、下負圧供給エア回路161で凹部32内に負圧を供給するとともに閉空間形成体30を固定した下側のテーブル38を所定の近接位置まで上昇させてシートS1の一面S1aと凹部32とで囲まれた成形前空間を形成させる(タイミングt3〜t5)。これにより、閉空間形成体30を近付けることによるシートS1の膨らみが抑制される。
また、制御盤80は、成形型40を固定した上側のテーブル48を所定の近接位置まで下降させ(タイミングt4〜t6)、凹部32内に圧空を供給してシートS1を成形面42aに密接させる(タイミングt7〜t8)。さらに、制御盤80は、上開放エア回路63を開放状態として成形後空間SP2を大気に開放させ(タイミングt8〜t9)、離型エア供給回路71で成形型40から離型エアの供給を開始させ(タイミングt9)、下側のテーブル38を所定の離間位置まで下降させる(タイミングt10〜t11)。そして、制御盤80は、上側のテーブル48を所定の離間位置まで上昇させ(タイミングt11〜t1)、離型エアの供給を停止させる。
【0069】
本変形例でも、閉空間形成体30を近付けることによるシートS1の膨らみが減るので、差圧供給時のシート余りが少なくなり、閉空間形成体30の移動速度を上げることができ、差圧成形のサイクルタイムを短縮することができる。
【0070】
また、図22,23に示すように、成形型駆動装置49が無く成形型40,40Aが移動しなくても、シートS1を差圧成形することが可能である。本変形例の差圧成形装置は、図22(a)に示すようにシートS1を差圧成形位置L2へ搬送し(タイミングt1〜t2)、図22(a),(b)に示すように凹部32内に負圧を供給するとともに閉空間形成体30を固定した下側のテーブルを成形型40Aに近接させてシートS1の一面と凹部32とで囲まれた成形前空間を形成させる(タイミングt3〜t5)。これにより、閉空間形成体30を近付けることによるシートS1の膨らみが抑制された状態で、シートS1が閉空間形成体30と成形型40Aとで挟まれる。
また、差圧成形装置は、図22(b),(c)に示すように凹部32内に圧空PA1を供給してシートS1を成形面42aに密接させ(タイミングt7〜t8)、成形後空間を大気に開放させる(タイミングt8〜t9)。そして、差圧成形装置は、図22(c),(d)に示すように成形型40Aから離型エアRA1を供給するとともに下側のテーブルを所定の離間位置まで下降させる(タイミングt9〜t1)。
【0071】
本変形例でも、閉空間形成体30を近付けることによるシートS1の膨らみが減るので、差圧供給時のシート余りが少なくなり、閉空間形成体30の移動速度を上げることができ、差圧成形のサイクルタイムを短縮することができる。
むろん、閉空間形成体30をシートS1の上側に配置し成形型40AをシートS1の下側に配置しても同様にしてシートS1を差圧成形することができる。
【0072】
むろん、差圧成形装置に検出手段66や負圧調整手段61a,61bが設けられていなくても、上述した基本的な作用、効果が得られる。
【0073】
また、成形可能なシートをシート保持部で保持するシート保持手段と、該シート保持部で保持されたシートの一面に対向した凹部を有する閉空間形成体と、前記シート保持部で保持されたシートの他面側に配置され、前記凹部に対向した成形型と、を用い、前記凹部内に負圧を作用させながら前記閉空間形成体を前記シートの方へ移動させて前記シートの一面と前記凹部とで囲まれた成形前空間を形成し、該成形前空間の圧力よりも前記シートの他面側の圧力が低くなる差圧を設けて前記シートを前記成形型に密接させて成形する基本構成のみでも、成形のサイクルタイムを短縮する効果が得られる。
すなわち、独立請求項に係る構成要件のみからなる差圧成形装置及び差圧成形シート製造方法でも、上述した基本的な作用、効果が得られる。
【0074】
以上説明したように、本発明によると、種々の態様により、差圧成形のサイクルタイムを短縮することが可能な技術を提供することができる。
また、上述した実施形態及び変形例の中で開示した各構成を相互に置換したり組み合わせを変更したりして本発明を実施することも可能であり、公知技術並びに上述した実施形態及び変形例の中で開示した各構成を相互に置換したり組み合わせを変更したりして本発明を実施することも可能である。従って、本発明は、上述した実施形態や変形例に限られず、公知技術並びに上述した実施形態及び変形例の中で開示した各構成を相互に置換したり組み合わせを変更したりした構成等も含まれる。
【符号の説明】
【0075】
1,1A…差圧成形品製造システム、2…差圧成形装置、
3…成形部、4…シート供給装置、
10…シート加熱装置、11…ヒーター、
20…シート保持手段、21…シート保持部、
30…閉空間形成体、32…凹部、32a…開口、
33…凹部の周囲、33a…挟持面、
34,35…エア経路、
38…テーブル、
39…閉空間形成体駆動装置、
40,40A…成形型、42…凸部、42a…成形面、
44…エア経路、44a…孔、
48…テーブル、
49…成形型駆動装置、
60…差圧成形手段、
61…上負圧供給エア回路、
61a…圧力調整手段(負圧調整手段)、61b…負圧流量調整手段(負圧調整手段)、
62…上圧空供給エア回路、63…上開放エア回路、
64…下負圧供給エア回路、65…下開放エア回路、
66…検出手段、66a…上限検出センサー、66b…下限検出センサー、
70…離型手段、71…離型エア供給回路、
80…制御盤、
D1…搬送方向、D2…幅方向、
L1…シート供給位置、L2…差圧成形位置、
L11,L12…離間位置、L13,L14…近接位置、
LU1…上限位置、LD1…下限位置、
PA1…圧空、RA1…離型エア、
S1…シート、S1a…シートの一面、S1b…シートの他面、S1c…縁部、
S2…成形シート、S2a…成形シートの一面、S2b…成形シートの他面、
S3…製品、S4…スクラップシート、
SP1…成形前空間、SP2…成形後空間。
【技術分野】
【0001】
本発明は、成形可能なシートを差圧成形する差圧成形装置、及び、差圧成形シート製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
圧空成形や真空成形等の差圧成形は、加熱された被成形シートの一面側と他面側の圧力に差を設ける熱成形として知られている。被成形シートの差圧成形装置として、被成形シートの加熱装置、被成形シートの搬送装置、成形位置上方の圧空ボックス、成形位置下方の成形型、及び、圧空ボックス内への圧空供給エア回路を備える圧空成形装置が知られている。この圧空成形装置の搬送装置は、被成形シートの縁部を把持するクランプ手段を有し、このクランプ手段で保持された被成形シートを加熱装置から成形位置へ搬送する。圧空成形装置は、圧空ボックスを下降させて加熱後の被成形シートに接触させ、成形型を上昇させ、圧空ボックス内へ圧空を供給して被成形シートを成形型に密接させて成形する。
【0003】
特許文献1に記載の圧空成形装置は、圧空ボックス内に熱風を供給する熱風供給装置を備えている。この圧空成形装置は、下型と圧空ボックスとが離間している時から圧空ボックス内に熱風を供給しており、圧空ボックス内から下方へ熱風が吹き出されている。従って、シートクランプによって四辺が固定された成形用シートが下型と圧空ボックスとの間に搬入された時から、圧空ボックス内からの熱風により成形用シートが加熱される。その後、下型と圧空ボックスとが近接すると、圧空ボックス内に供給される熱風により成形用シートが下型に密接して賦形される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−178961号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
図24(a),(b)に示すように、圧空ボックス940が下降して加熱後の被成形シート991に接触するとき、圧空ボックス下側の空気が下降流となり、クランプ手段920に把持された被成形シート991が下方へ膨らんでしまう。成形のサイクルタイムを短縮しようとして圧空ボックス940の下降速度を上げると、軟化した被成形シート991の下方への膨らみが大きくなってしまい、図24(c)に示すように、成形型930を上昇させた時に被成形シート991の余りが多くなり、圧空供給時にシート余りが皺となったりエア溜まりが残ったりしてしまう。このエア溜まりとは、圧空成形時に成形型930と成形シート992との間にエアが残る現象である。圧空ボックス940の下降速度を下げるとシート余りが少なくなるものの、成形のサイクルタイムが長くなってしまう。すると、圧空を供給するまでに被成形シート991の温度低下が大きくなり、この温度低下を小さくするために加熱装置の温度を上げると、被成形シート991の下方への膨らみが大きくなってしまう。被成形シート991が薄いと、このような現象が顕著となってくる。被成形シート991が印刷シートであると、シート余りによる成形品の印刷位置のずれとなってしまう。
【0006】
特に特許文献1記載の圧空成形装置は、下型と圧空ボックスとが近接する前に圧空ボックス内から下方へ熱風が吹き出されているため、軟化する成形用シートが下方へ膨らみ易い。従って、シート余りを少なくするために圧空ボックスの下降速度をさらに下げる必要があり、成形のサイクルタイムがさらに長くなってしまう。
【0007】
以上を鑑み、本発明は、差圧成形のサイクルタイムを短縮することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、本発明の差圧成形装置は、成形可能なシートをシート保持部で保持するシート保持手段と、
前記シート保持部で保持されたシートの一面に対向した凹部を有する閉空間形成体と、
前記シート保持部で保持されたシートの他面側に配置され、前記凹部に対向した成形型と、
前記凹部内に負圧を作用させながら前記閉空間形成体を前記シートの方へ移動させて前記シートの一面と前記凹部とで囲まれた成形前空間を形成し、該成形前空間の圧力よりも前記シートの他面側の圧力が低くなる差圧を設けて前記シートを前記成形型に密接させて成形する差圧成形手段とを備えることを特徴とする。
【0009】
また、本発明は、成形可能なシートを差圧成形して成形シートを製造する差圧成形シート製造方法であって、
前記シートをシート保持部で保持するシート保持手段と、
前記シート保持部で保持されたシートの一面に対向した凹部を有する閉空間形成体と、
前記シート保持部で保持されたシートの他面側に配置され、前記凹部に対向した成形型と、を用い、
前記凹部内に負圧を作用させながら前記閉空間形成体を前記シートの方へ移動させて前記シートの一面と前記凹部とで囲まれた成形前空間を形成し、該成形前空間の圧力よりも前記シートの他面側の圧力が低くなる差圧を設けて前記シートを前記成形型に密接させて成形することを特徴とする。
【0010】
すなわち、閉空間形成体の凹部内に負圧が作用した状態で閉空間形成体がシートの方へ移動するので、閉空間形成体の移動による空気の流れが弱くなり、シートの成形型側への膨らみが減る。これにより、差圧供給時のシート余りが少なくなり、閉空間形成体の移動速度を上げることができ、差圧成形のサイクルタイムを短縮することができる。
【0011】
ここで、上記差圧成形には、圧空成形、真空成形、圧空と真空を併用する圧空真空成形、が含まれる。
上記シート保持手段には、シートの縁部を把持して保持するクランプ手段、シートの縁部を突き刺して保持する突き刺し手段、等が含まれる。
上記圧力は、絶対圧とする。上記負圧は、大気圧よりも低いエア圧(絶対圧)であればよく、いわゆる真空圧のみならず、いわゆる減圧のエア圧も含まれる。従って、上記凹部内に負圧を作用させることには、凹部内を負圧源に接続することのみならず、凹部内の空気を外部へ吸引することも含まれる。
上記閉空間形成体で形成される成形前空間は、常時密閉された空間ではなく、圧力を変えるためのエア経路が接続された空間を意味する。従って、上記閉空間形成体で形成される成形前空間は、減圧経路、圧空経路、大気への開放と大気からの遮断とを切り替える経路、等が接続されてもよい。
上記閉空間形成体と上記成形型との間にクランプ部材等の部材が設けられてもよい。
上述した、成形前空間の圧力よりもシートの他面側の圧力が低くなる差圧を設けることには、成形前空間に圧空を供給すること、シートの他面側を減圧すること、成形前空間に圧空を供給しながらシートの他面側を減圧すること、のいずれも含まれる。
【発明の効果】
【0012】
請求項1に係る発明によれば、成形のサイクルタイムを短縮することが可能な差圧成形装置を提供することができる。
請求項2に係る発明では、閉空間形成体を近付けた時のシートの平たさを容易に調節することができる。
請求項3に係る発明では、閉空間形成体を近付けたときのシートの平たさを調節する作業を軽減することができる。
請求項4に係る発明では、連続成形に好適な差圧成形装置を提供することができる。
請求項5に係る発明では、成形のサイクルタイムを短縮するのに好適な差圧成形装置を提供することができる。
請求項6に係る発明では、成形のサイクルタイムを短縮することが可能な差圧成形シート製造方法を提供することができる。
請求項7に係る発明では、成形のサイクルタイムを短縮するのに好適な差圧成形シート製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の一実施形態に係る差圧成形装置2を有する差圧成形品製造システム1を例示する正面図である。
【図2】本発明の一実施形態に係る差圧成形装置2を例示する正面図である。
【図3】差圧成形装置2の要部を例示する平面図である。
【図4】シート保持部21を取り付けたクランプチェーン24の要部を例示する斜視図である。
【図5】成形部3を例示する垂直断面図である。
【図6】上テーブル38とともに閉空間形成体30を例示する底面図である。
【図7】下テーブル48とともに成形型40を例示する平面図である。
【図8】差圧成形装置2の電気回路構成の概略を例示するブロック図である。
【図9】差圧成形装置2の動作を例示するタイミングチャートである。
【図10】シートS1の一面S1aと凹部32とで囲まれた成形前空間SP1を形成した状態の成形部3を例示する垂直断面図である。
【図11】閉空間形成体30と成形型40とを近接させてシートS1を差圧成形した状態の成形部3を例示する垂直断面図である。
【図12】閉空間形成体30と成形型40とを離間させた状態の成形部3を例示する垂直断面図である。
【図13】製品S3の外観を例示する斜視図である。
【図14】変形例に係る差圧成形品製造システム1Aを示す正面図である。
【図15】シートS1の膨らみの検出手段66を設けた変形例の成形部3を示す垂直断面図である。
【図16】変形例に係る差圧成形装置の電気回路構成の概略を示すブロック図である。
【図17】変形例に係る差圧成形装置が行う負圧調整処理を示すフローチャートである。
【図18】変形例に係る差圧成形装置が行う負圧調整処理を示すフローチャートである。
【図19】上側のテーブルに成形型40Aを設けた変形例の成形部3を示す垂直断面図である。
【図20】変形例に係る差圧成形装置の電気回路構成の概略を示すブロック図である。
【図21】変形例に係る差圧成形装置の動作を示すタイミングチャートである。
【図22】変形例に係る差圧成形装置の動作を模式的に示す図である。
【図23】変形例に係る差圧成形装置の動作を示すタイミングチャートである。
【図24】比較例に係る差圧成形装置の動作を模式的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
(1)差圧成形品製造システムの説明:
図1は、本発明の一実施形態に係る差圧成形装置2を有する差圧成形品製造システム1を例示する正面図である。図2は、差圧成形品製造システム1に含まれる差圧成形装置2を例示する正面図である。図3は、差圧成形装置2の要部を例示する平面図である。ここで、図1〜3の左から右へ向かう方向がシートS1,S2,S4の搬送方向D1であり、左側がシートS1,S2,S4の上流側、右側がシートS1,S2,S4の下流側である。
差圧成形品製造システム1は、シート供給装置4、シート保持手段20、シート加熱装置10、成形部3、トリミング装置5、製品搬送装置6、スクラップ回収装置7、を備え、制御盤80の制御に従って動作する。
【0015】
シート供給装置4は、被成形シートS1を巻いたロールS0をほどき、連続して繋がった連続シートS1を所定のシート供給位置L1へ向かう所定の搬送方向D1へ搬送する。シート保持手段20は、シート供給装置4で搬送されたシートS1をシート供給位置L1で保持し、所定の差圧成形位置L2まで搬送方向D1へ搬送する。シート加熱装置10は、シート供給位置L1と差圧成形位置L2との間に設置され、搬送中のシートS1を加熱する。成形部3は、加熱されたシートS1を差圧成形し、差圧成形シートS2(図11参照)を離型してトリミング装置5へ送り出す。トリミング装置5は、差圧成形シートS2の縁部を所定の大きさに切断するトリミングを行い、図13に示すような差圧成形品(製品S3)を製品搬送装置6の方へ送り出す。製品搬送装置6は、製品S3を所定の取出位置へ搬送する。スクラップ回収装置7は、製品S3の周囲にある差圧成形シートS2から生じるスクラップシートS4をシートS1に繋がった状態で搬送方向D1に移送して回収する。図1に示すスクラップ回収装置7は、回転モーター等で構成され、制御盤80の制御に従ってスクラップシートS4の巻取軸を回転駆動してスクラップシートS4を所定の回転方向に巻き取る。シート供給装置4のシート供給動作、シート保持手段20のシートを保持して搬送する動作、成形部3の成形動作、トリミング装置5のトリミング動作、製品搬送装置6の製品搬送動作、及び、スクラップ回収装置7の巻き取り動作は、同期して間欠的に行われる。
【0016】
(2)差圧成形装置の説明:
差圧成形装置2は、成形可能なシートS1を差圧成形する。図2〜12に示す差圧成形装置2は、シートS1に対していわゆる圧空真空成形、すなわち、真空と圧空を併用する差圧成形を行う。むろん、差圧成形装置2は、シートS1に対して真空成形のみ行ってもよいし、シートS1に対して圧空成形のみを行ってもよい。
差圧成形装置2の基本部分は、シート保持手段20、閉空間形成体30、成形型40、差圧成形手段60、からなる。図1,2に例示した差圧成形装置2は、閉空間形成体30及び成形型40が成形部3に含まれるとともに、差圧成形手段60が成形部3と制御盤80とで構成されている。
【0017】
シート保持手段20は、シートS1をシート保持部21で保持する。閉空間形成体30は、シート保持部21で保持されたシートS1の一面S1aに対向した凹部32を有する。成形型40は、シート保持部21で保持されたシートS1の他面S1b側に配置され、凹部32に対向している。差圧成形手段60は、凹部32内に負圧を作用させながら閉空間形成体30をシートS1の方へ移動させてシートS1の一面S1aと凹部32とで囲まれた成形前空間SP1を形成し、成形前空間SP1の圧力よりもシートS1の他面S1b側の圧力が低くなる差圧を設けてシートS1を成形型40に密接させて成形する。凹部32内に負圧が作用した状態で閉空間形成体30がシートS1の方へ移動するので、シートS1の膨らみが減り、差圧成形のサイクルタイムを短縮するために閉空間形成体30の移動速度を上げることができる。
【0018】
成形可能なシートS1は、熱可塑性シートなど差圧成形可能な種々の被成形シートを用いることができ、熱可塑性樹脂等の樹脂のみからなる樹脂シートでも、樹脂に充てん材等の添加剤が添加された材質からなるシートでもよく、単層シートでも、異なる材質をラミネートした積層シートでもよい。シートS1の素材には、ポリエチレン(Polyethylene)、ポリプロピレン(Polypropylene)、ポリスチレン(Polystyrene)、ポリ塩化ビニル(Poly (vinyl chloride))、ABS樹脂(Acrylonitrile-butadiene-styrene resin)、ポリエチレンテレフタレート(Poly (ethylene terephthalate))、ポリカーボネート(Polycarbonate)、ポリアミド(Polyamide)、アクリル樹脂(Acrylic resin)、これらの組み合わせ、等を利用可能である。
以下、シートS1に熱可塑性シートを用いるものとして説明する。
【0019】
本実施形態の差圧成形品製造システム1は、製品S3として電化製品の操作パネルなど表面に文字や絵等の絵柄を有する薄物の差圧成形品を製造するのに好適な構成を有している。印刷や蒸着等により絵柄を表面に設けた被成形シート(「絵柄シート」と呼ぶことにする)は、絵柄の位置に合わせて差圧成形する必要があるため、成形の位置ずれを少なくする必要がある。差圧成形装置2は、精度良く差圧成形をする必要がある印刷シート等の絵柄シートを短いサイクルタイムで差圧成形するのに好適である。
図3には、シートS1として模様が印刷された印刷シートが例示されている。この印刷シートは、搬送方向D1の位置を合わせるための目印S11が各模様に合わせた位置に印刷され、印刷面を上側に向けて搬送される。制御盤80のI/O(入出力)回路82zには、目印S11を検出するための位置検出センサー26が接続されている。目印S11を有する絵柄シートが用いられる場合、制御盤80は、位置検出センサー26の検出信号を入力し、目印S11の位置に合わせてシートS1,S2を間欠的に移動させることが可能である。
【0020】
また、薄物シートは、加熱後に温度が低下し易い。従って、薄物シートを加熱して差圧成形位置へ搬入して差圧成形する場合、絵柄が無くても短いサイクルタイムで差圧成形するのが好ましい。本差圧成形装置2は、薄物シートを短いサイクルタイムで差圧成形するのに好適である。被成形シートS1は、シート状ないしフィルム状になっていればよく、1〜2mm程度、0.25〜1mm程度、等、様々な厚みとすることが可能であり、0.25mm程度以下のフィルムでもよい。むろん、2mm程度よりも厚い厚物シートの差圧成形にも、本発明を適用可能である。
本実施形態の差圧成形装置2は、ロール状シート(連続シート)に対して繰り返し差圧成形する。むろん、1回の差圧成形に必要な長さに切断されたカットシートの差圧成形にも、本発明を適用可能である。
【0021】
本実施形態の差圧成形手段60は、離型手段70を有する。離型手段70は、成形型40に密接した成形シートS2の他面S2b側を大気圧以上とし、閉空間形成体30と成形型40とを離間させて成形シートS2を離型する。ここで、閉空間形成体30と成形型40とを近接又は離間させることには、閉空間形成体30のみを移動させること、成形型40のみを移動させること、閉空間形成体30と成形型40の両方を移動させること、のいずれも含まれる。
本実施形態の差圧成形装置2は、さらに、シート加熱装置10を備える。シート加熱装置10は、シート供給位置L1から差圧成形位置L2へ搬送される途中のシートS1を加熱して軟化させる。
【0022】
次に、本実施形態の差圧成形装置2をより具体的に説明する。
シート加熱装置10は、ヒーター11を有し、搬送中の熱可塑性のシートS1を溶融しない範囲で軟化する温度以上に輻射加熱する。ヒーター11は、シートS1を加熱軟化させることができる加熱能力があればよく、シートS1の性質に応じて加熱能力を設定すればよい。
【0023】
シート保持手段20は、シート供給位置L1でシート保持部21によりシートS1を保持してシート加熱装置10へ搬送し、加熱されたシートS1をさらに閉空間形成体30と成形型40との間の差圧成形位置L2へ搬送する。
【0024】
図3は、シート保持手段20の例を上から見て示している。このシート保持手段20は、シートS1,S2の幅方向D2の両縁部S1c,S1cに沿って設置された一対のクランプチェーン(搬送手段)24,24のそれぞれにシート保持部21が取り付けられて構成されている。各クランプチェーン24は、無端チェーン24bの外リンク24cのアタッチメント部にシート保持部21が取り付けられている。無端チェーン24bは、搬送用モーター24aで周回駆動される。搬送用モーター24aは、サーボモーターとされ、制御盤80の制御に従って無端チェーン24bを断続的に周回駆動する。
【0025】
図4は、シート保持部21の例を示す斜視図である。このシート保持部21は、台座21a、傾動部材21b、円柱状の支軸部材21c、ローラ21d、引張コイルばね21e,21e、を備えている。アタッチメント部に固定された台座21aは、シートS1,S2の縁部S1cを載置する。傾動部材21bは、台座21aの上面21a1に対向する突部21b1を有し、台座21aの軸21a2に対して傾動可能に取り付けられている。支軸部材21cは、傾動部材21bの上面から上方へ突出している。ローラ21dは、支軸部材21cの先端部に対して回転可能に取り付けられている。ばね21e,21eは、弾性力に抗して引っ張った状態で一端を台座21aに取り付け他端を傾動部材21bに取り付けたコイルばねであり、傾動部材21bを起立させる向きに付勢する。
【0026】
ローラが何も接触していない場合、シート縁部S1cを載置した台座の上面21a1に傾動部材の突部21b1が突き立てられ、シート縁部S1cがシート保持部21に挟持される。一方、シートS1がクランプチェーン24に搬入されるシート供給位置L1、及び、成形シートS2がクランプチェーン24から解放される位置には、ローラ21dを押して傾動部材21bを傾けさせる壁部21zが設けられている。これにより、クランプチェーン24に搬入される位置でシートの両縁部S1c,S1cが保持され、クランプチェーン24から解放される位置でスクラップシートの両縁部S1c,S1cが解放される。
【0027】
以上より、本差圧成形装置2は、連続成形に好適である。
むろん、シート保持手段20は、上述したクランプ手段の他、シートの縁部を突き刺して保持する突き刺し手段等でもよい。
【0028】
シートS1,S2の搬送方向D1は、水平方向としてシートS1,S2が安定して搬送されるようにしているが、水平方向から上方向や下方向へずれた方向でも、鉛直上方向でも、鉛直下方向でもよい。
【0029】
閉空間形成体30は、図2,5,6に示すように、差圧成形位置L2にあるときのシートS1の一面S1aに対向する凹部32を有し、該シートの一面S1a側に配置されている。閉空間形成体30は、いわゆる圧空ボックスであり、下面に凹部32の開口32aを有する箱状に形成され、凹部32の周囲33となる下面が成形型40とでシートS1を挟む挟持面33aとされている。雄型を含む様々な成形型を用いて圧空成形(圧空真空成形を含む)をするため、閉空間形成体30と成形型40とが近接したときに凹部32の内面と成形型40の成形面42aとの間に空間が生じるようにされている。すなわち、凹部32の内面形状は成形面42aの形状とは異なっており、凹部32の内面が間隔を空けて成形面42aを覆うようにされている。
閉空間形成体30の上部には、凹部32から上負圧供給エア回路61及び上圧空供給エア回路62に繋がる差圧供給エア経路34と、凹部32から上開放エア回路63に繋がる開放エア経路35とが形成されている。
【0030】
閉空間形成体30は、閉空間形成体側テーブルとなる上テーブル38の下面に取り付けられて固定されている。上テーブル38は、上下双方向へ移動可能に設けられ、閉空間形成体駆動装置39に駆動される。閉空間形成体駆動装置39は、差圧成形位置L2にあるシート保持部21に対して上テーブル38を近接及び離間させる。
【0031】
成形型40は、図2,5,7に示すように、凹部32に対向した凸部42を有する雄型とされ、差圧成形位置L2にあるときのシートS1の他面S1b側に配置されている。成形型の凸部42の表面は、シートS1を密接させる成形面42aとされている。成形面42aには、下負圧供給エア回路64、下開放エア回路65、及び、離型エア供給回路71に繋がるエア経路44の孔44aが形成されている。成形型40は、凸部42を有する型本体が基部材に取り付けられて固定されたものでもよいし、型側テーブルに直接取り付けられる型のみで構成されてもよい。
【0032】
成形型40は、型側テーブルとなる下テーブル48の上面に取り付けられて固定されている。下テーブル48は、上下双方向へ移動可能に設けられ、成形型駆動装置49に駆動される。成形型駆動装置49は、閉空間形成体30に対して下テーブル48を近接及び離間させる。
【0033】
なお、テーブル38,48を上下方向へ移動させる機構には、リンク機構、クランク機構、ボールねじ機構、ラックとピニオンを組み合わせた機構、油圧シリンダのようなシリンダを用いた機構、等を用いることができる。
また、シート保持部21、閉空間形成体30、及び、成形型40の主要部分は、金属等で形成することができる。
【0034】
差圧成形手段60は、各種駆動装置39,49、各種エア回路61〜65、制御盤80、等で構成される。上負圧供給エア回路61は、閉空間形成体の凹部32に繋がるエア経路34に接続され、成形前空間SP1や成形後空間SP2を減圧することが可能である。
上負圧供給エア回路61は、単に真空圧を供給するのみならず、例えばインバータ制御により凹部32内に供給する負圧(真空圧を含む)を調整する圧力調整手段61aを有している。この圧力調整手段61aを操作して凹部32内に供給する負圧を調整することにより、閉空間形成体30を近付けた時のシートS1の平たさを容易に調節することができる。上負圧供給エア回路61から閉空間形成体の差圧供給エア経路34に至る負圧経路には、例えば負圧経路の断面積を変更して流れるエアの流量を調整する負圧流量調整手段61bが設けられている。この負圧流量調整手段61bを操作して負圧経路のエアの流量を調整することにより、閉空間形成体30を近付けた時のシートS1の平たさを容易に調節することができる。すなわち、圧力調整手段61aや負圧流量調整手段61bは、凹部32内に作用させる負圧を調整するための負圧調整手段を構成する。
【0035】
上圧空供給エア回路62は、閉空間形成体の差圧供給エア経路34に接続され、成形前空間SP1に圧空を供給することが可能である。
上開放エア回路63は、閉空間形成体の凹部32に繋がるエア経路35に接続され、大気への開放と大気からの遮断とを切り替えることが可能である。
【0036】
下負圧供給エア回路64は、成形面42aに繋がるエア経路44に接続され、シートS1の他面S1b側を減圧することが可能である。下負圧供給エア回路64は、単に真空圧を供給するのみならず、インバータ制御によりシートの他面S1b側に供給する負圧を調整可能である。
下開放エア回路65は、エア経路44に接続され、大気への開放と大気からの遮断とを切り替えることが可能である。
【0037】
差圧成形手段60は、まず、閉空間形成体30をシートS1の方へ移動させるが、その際、図5に示すように凹部32内に負圧を作用させる。これにより、図10に示すように、シートS1の膨らみを減らした状態でシートS1の一面S1aと凹部32とで囲まれた成形前空間SP1を形成する。ここで、成形前空間SP1は、常時密閉された空間ではなく、エア経路34,35が接続された空間を意味する。
【0038】
さらに、差圧成形手段60は、図11に示すように、閉空間形成体30と成形型40とを近接させてシートS1の他面S1bに凸部42を挿入させ、シートS1の他面S1b側を減圧するとともに成形前空間SP1に圧空PA1を供給し、成形前空間SP1の圧力よりもシートS1の他面S1b側の圧力が低くなる差圧を設ける。シートの他面S1b側に供給する負圧は、大気圧(約0.1MPa)よりも低くされ、絶対圧で、例えば、0.05MPa以下、0.04MPa以下、0.03MPa以下、0.02MPa以下、0.01MPa以下、とされる。成形前空間SP1に供給する圧空PA1の圧力は、大気圧よりも高くされ、絶対圧で、例えば、0.2〜2MPa程度とされる。
以上により、シートS1は、成形型の成形面42aに密接し、差圧成形される。シートS1の差圧成形は、圧空真空成形のみならず、シートの他面S1b側を減圧する真空成形のみでもよいし、成形前空間SP1に圧空PA1を供給する圧空成形のみでもよい。成形前空間SP1に圧空PA1が供給されることにより、高品質の差圧成形シートS2が得られる。
【0039】
離型手段70は、各種駆動装置39,49、上開放エア回路63、離型エア供給回路71、制御盤80、等で構成される。離型エア供給回路71は、成形面42aに繋がるエア経路44に接続され、成形シートS2の他面S2b側に圧空を供給することが可能である。離型手段70は、成形型40から圧空(図11に示す離型エアRA1)を供給し、閉空間形成体30と成形型40とを離間させて成形シートS2を離型する。離型エアRA1の圧力は、大気圧よりも高くされ、絶対圧で、例えば、0.2〜2MPa程度とされる。
【0040】
差圧成形シートS2は、離型後、シート保持部21の保持から解放され、差圧成形位置L2からトリミング装置5へ搬送されて、所定の大きさに打ち抜かれる。得られる製品S3は、製品搬送装置6へ搬送され、さらに所定の取出位置へ搬送される。スクラップシートS4は、スクラップ回収装置7で回収される。成形シートS2を解放したシート保持部21は、差圧成形位置L2からシート供給位置L1に戻される。
【0041】
なお、シート保持部21と閉空間形成体30とを近接及び離間させる際には、閉空間形成体30のみを移動させているが、シート保持部21と閉空間形成体30の両方を移動させてもよいし、シート保持部21のみを移動させてもよい。
成形型40と閉空間形成体30とを近接及び離間させる際には、成形型40と閉空間形成体30の両方を移動させているが、成形型40のみを移動させてもよいし、閉空間形成体30のみを移動させてもよい。
【0042】
図8は、制御盤80を中心とした差圧成形装置2の電気回路構成を示している。制御盤80には、シート加熱装置10、搬送用モーター24a、各種駆動装置39,49、各種エア回路61,62,63,64,65,71、位置検出センサー26、等が電気的に接続されている。制御盤80は、該制御盤全体の動作を制御する中央制御回路81、シート加熱装置10の温度を制御するシート加熱制御部82a、搬送用モーター24aの動作を制御する搬送用モーター駆動制御部82b、閉空間形成体駆動装置39の動作を制御する閉空間形成体駆動制御部82c、成形型駆動装置49の動作を制御する成形型駆動制御部82d、上負圧供給エア回路61の動作を制御する上負圧供給制御部82e、上圧空供給エア回路62の動作を制御する上圧空供給制御部82f、上開放エア回路63の動作を制御する上開放制御部82g、下負圧供給エア回路64の動作を制御する下負圧供給制御部82h、下開放エア回路65の動作を制御する下開放制御部82i、離型エア供給回路71の動作を制御する離型エア供給制御部82j、位置検出センサー26から検出信号を入力するI/O回路82z、情報出力部84、操作部85、等を備えている。
目印S11を有する絵柄シートが用いられる場合、制御盤80は、位置検出センサー26からの入力信号に基づいてシートS1,S2を目印S11の位置に合わせて間欠的に移動させる。絵柄の無い被成形シートが用いられる場合、制御盤80は、シートS1,S2を所定の間隔で間欠的に移動させる。
【0043】
中央制御回路81は、内部のバスに、CPU(Central Processing Unit)81a、半導体メモリ81b,81c、タイマ回路81d、不揮発性メモリ81e、等が接続された回路とされている。CPU81aは、ROM(Read Only Memory)81bや不揮発性メモリ81eに記録された制御プログラムに基づいてRAM(Random Access Memory)81cをワークエリアとして利用しながら差圧成形装置2の各部を制御する。
情報出力部84は、例えばディスプレイや音声出力器やプリンタで構成され、利用者から操作入力を受け付けた各種設定の内容や差圧成形装置2の運転状況を表す各種情報を表示等により出力する。操作部85は、例えば複数のボタンで構成され、利用者から操作入力を受け付ける。
【0044】
(3)差圧成形装置の動作、並びに、作用及び効果:
本実施形態の制御盤80は、図9に示すタイミングチャートに従って製品S3を製造する処理を行う。以下、差圧成形装置2の動作、並びに、作用及び効果を説明する。
なお、図5に示すように、閉空間形成体30は所定の離間位置L11にあり、成形型40は所定の離間位置L12にあり、エア回路61,62,64,71は動作しておらず、開放エア回路63,65は遮断状態であるものとする。
【0045】
まず、制御盤80は、シート加熱装置10でシートS1の加熱が完了するタイミングで搬送用モーター24aを駆動させ、シート保持部21によりシートS1を保持した状態で加熱軟化したシートS1を差圧成形位置L2へ搬送させる(タイミングt1〜t2)。このとき、シート供給位置L1でシート保持部21により保持されたシートS1は、シート加熱装置10の方へ搬送される。
【0046】
その後、制御盤80は、閉空間形成体駆動装置39を駆動させて上テーブル38を所定の近接位置L13まで下降させるとともに、上テーブル38の下降中に上負圧供給エア回路61で凹部32内に負圧を供給する(タイミングt3〜t5)。このようにして、本差圧成形装置2は、凹部32内に負圧を作用させながら閉空間形成体30をシートS1の方へ移動させる。図5には、上テーブル38の下降を開始させるタイミングt3における成形部3の様子が示されている。
むろん、上テーブル38の下降タイミングと凹部32内への負圧の供給タイミングは、ずれていてもよい。
【0047】
閉空間形成体30を下降させている途中から、制御盤80は、成形型駆動装置49を駆動させて下テーブル48を所定の近接位置L14まで上昇させる(タイミングt4〜t6)。下テーブル48の上昇中にタイミングt5で閉空間形成体30が近接位置L13となり、図10に示すように、シートS1の一面S1aと凹部32とで囲まれた成形前空間SP1が形成される。図10に示す例では、閉空間形成体30の下面(挟持面33a)が近接位置L13でシート保持部21よりも下側とされている。むろん、閉空間形成体30の近接位置L13は、シートS1の性質等に応じて設定すればよい。
【0048】
図5で示したように、閉空間形成体30の凹部32内に負圧が作用した状態で閉空間形成体30がシートS1の方へ移動するので、閉空間形成体30の下側にある空気の下降流が弱くなる。これにより、図10に示すように、軟化したシートS1の下方への膨らみが少ない。
なお、閉空間形成体よりも先に成形型をシートに近付けると、シートが閉空間形成体側へ膨らむことになる。しかし、成形型をシートに近づける時にはシートの成形部分の周囲を押さえることができないので、成形面に負圧を作用させてもシートの閉空間形成体側への膨らみを解消することができない。
【0049】
下テーブル48が近接位置L14となるタイミングt6において、制御盤80は、下負圧供給エア回路64で成形面42aに負圧を供給させ、シートの他面S1b側の減圧を開始させる。このとき、成形面42aに比較的弱い負圧を作用させる副真空引きを行った後、成形面42aに強い負圧を作用させる本真空引きを行ってもよい。
以上によりシートS1が成形型40の成形面42aに密接することになるが、制御盤80は、上圧空供給エア回路62で凹部32内に圧空PA1(図11参照)を供給してさらにシートS1を成形面42aに密接させる(タイミングt7〜t8)。圧空PA1の供給時には閉空間形成体30と成形型40とを離間させる向きの強い力が生じるため、タイミングt7の時点かタイミングt7の前に閉空間形成体30と成形型40とを型締めし、タイミングt8の後に閉空間形成体30と成形型40とを型締めから解放してもよい。このようにして、シートS1が差圧成形され、成形型40上に成形シートS2が形成される。
【0050】
図10で示したように、閉空間形成体30をシートS1に近付けた際にシートS1の下方への膨らみが少なくなっているので、成形型40を上昇させた時のシートS1の余りが少なくなる。シート余りが少なくなれば、成形前空間SP1に圧空を供給した時に成形シートS2の皺やエア溜まりが生じ難くなり、絵柄シートの場合には差圧成形品の絵柄位置のずれが生じ難くなる。従って、本差圧成形装置2は、シートS1の方へ移動する閉空間形成体30の速度を上げることができ、差圧成形のサイクルタイムを短縮することができる。
【0051】
圧空PA1の供給を停止するタイミングt8において、制御盤80は、上開放エア回路63を開放状態に切り替えて成形後空間SP2を大気に開放させる。むろん、圧空PA1の供給の停止タイミングと成形後空間SP2の大気への開放タイミングは、ずれていてもよい。その後、制御盤80は、上開放エア回路63を遮断状態に切り替え、下負圧供給エア回路64からの負圧の供給を停止させ、離型エア供給回路71で成形型40から離型エアRA1(図11参照)を供給させ、閉空間形成体駆動装置39で上テーブル38の上昇を開始させる(タイミングt9)。むろん、上開放エア回路63の遮断タイミングと、成形型40の負圧供給の停止タイミングと、離型エア供給の開始タイミングと、上テーブル38の上昇の開始タイミングとは、ずれていてもよい。離型エアRA1の供給の際には、比較的弱い離型エアを供給した後、比較的強い離型エアを供給してもよい。
【0052】
タイミングt9〜t10において、制御盤80は、閉空間形成体駆動装置39で上テーブル38を所定の離間位置L11まで上昇させる。これにより、成形シートS2と閉空間形成体30とが離間する。その後、図12に示すように、制御盤80は、成形型駆動装置49で下テーブル48を所定の離間位置L12まで下降させる(タイミングt11〜t1)。すると、図12に示すように、閉空間形成体30と成形型40とが離間し、一面S2a側を閉空間形成体30に向けて他面S2b側を成形型40に向けた成形シートS2が離型する。
【0053】
下テーブル48の下降が停止するタイミングt1において、制御盤80は、離型エア供給回路71からの離型エアRA1の供給を停止させ、差圧成形位置L2の成形シートS2の搬出を開始させる。差圧成形装置2は、シート保持部21による成形シートS2の保持を解放し、図示しない搬送装置で該成形シートS2をトリミング装置5へ送り出す。トリミング装置5は、搬入された成形シートS2を所定の大きさにトリミングし、図13に示すような製品S3を製品搬送装置6へ送り出す。製品搬送装置6は、搬入された製品S3を所定の取出位置へ搬送する。
以上で製造の1サイクルが終了し、以下、タイミングt1〜t11が繰り返されることにより、連続してシートS1から差圧成形シートS2が形成され、連続して製品S3が製造される。
【0054】
以上説明したように、本実施形態の差圧成形装置2及び差圧成形シート製造方法は、閉空間形成体30が近付くことによるシートS1の成形型40側への膨らみが減るので、差圧供給時のシート余りが少なくなる。従って、本技術は、閉空間形成体30の移動速度を上げることができ、差圧成形のサイクルタイムを短縮することができる。本技術は、成形のサイクルタイム短縮により加熱後のシートの温度低下が少なくなるので、薄い被成形シートの差圧成形に好適である。本技術は、閉空間形成体を近付けたときのシートの平たさが維持されるので、印刷など絵柄の位置合わせのために高精度の成形が求められる製品に有効である。
【0055】
なお、差圧成形時のシート余りを少なくするためには対向するシート保持部の間隔を拡げることが考えられるものの、間隔を拡げるための機構が複雑となって高価となるうえ、シートを均質に拡げるのは困難である。従って、意匠のある絵柄シートの場合には、成形の位置ずれが問題となる。
本実施形態の差圧成形装置2は、閉空間形成体30に接続されるエア回路を利用することができるので、簡素な構成でシート余りによる皺やエア溜まりを抑制することができる。絵柄シートの場合には、シート余りによる絵柄のずれを抑制することができ、精度良く差圧成形することができる。また、エア溜まりを抑制することができるので、ショットブラストやサンドペーパー等による表面加工を施していない金型を成形型40として用いることができる。
【0056】
(4)変形例:
本発明は、種々の変形例が考えられる。
上述した動作の各タイミングの順番は、適宜、変更可能である。例えば、シート搬送終了のタイミングt2以前にタイミングt3の上テーブル38の下降を開始してもよい。上テーブル38の下降終了のタイミングt5以降にタイミングt4の下テーブル48の上昇を開始してもよい。上テーブル38の上昇終了のタイミングt10以前にタイミングt11の下テーブル48の下降を開始してもよい。
上述した各部材は、複数の部材が組み合わされて構成されてもよい。
シートを間欠的にではなく連続して移動させる場合、閉空間形成体や成形型を搬送方向及びその反対方向に往復移動させることにより、本発明を適用することができる。
【0057】
図14は、被成形シートS1にカットシートを用いる変形例の差圧成形品製造システム1Aの正面を示している。本システム1Aのシート供給装置4は、所定のシートストック位置LS1に積み重ねられた被成形シートS1を一枚ずつ所定のシート供給位置L1へ搬送する。シート保持手段20は、シート供給装置4で搬送されたシートS1をシート供給位置L1で保持し、所定の差圧成形位置L2まで所定の搬送方向D1へ搬送する。例えば、シート保持手段20は、シート供給位置L1で下保持部材(シート保持部)と上保持部材(シート保持部)とを近接させてシートS1の両縁部を突き刺して保持し、この状態の上下の保持部材をシート加熱装置10に通して差圧成形位置L2へ水平移動させる。また、シート保持手段20は、差圧成形シートS2の離型後に下保持部材と上保持部材とを離間させ、この状態の上下の保持部材をシート供給位置L1に戻す。成形部3は、加熱されたシートS1を差圧成形し、差圧成形シートS2を離型してトリミング装置5へ送り出す。このとき、図5,10で示したように、成形部3は、凹部32内に負圧を作用させながら閉空間形成体30をシートS1の方へ移動させてシートの一面S1aと凹部32とで囲まれた成形前空間SP1を形成する。これにより、閉空間形成体30が近付くことによるシートS1の成形型40側への膨らみが減り、差圧成形のサイクルタイムを短縮する効果が得られる。
なお、1枚のカットシートから形成する製品は、一つのみならず、複数でもよい。
【0058】
また、シート保持部21で保持されたシートS1における一面S1a側への膨らみと他面S1b側への膨らみの少なくとも一方を検出する検出手段66を差圧成形手段60に設けてもよい。
図15は、シートS1の膨らみの検出手段66を設けた変形例の成形部3を示す垂直断面図である。本成形部3の閉空間形成体30における凹部32の内側面には、シートS1の一面S1a側への膨らみが二点鎖線で示される上限位置LU1を超えているか否かを表す検出信号を生成する上限検出センサー66a(検出手段66)が設けられている。また、成形部3においてシートS1の幅方向D2の外側となる壁部の内側面には、シートS1の他面S1b側への膨らみが二点鎖線で示される下限位置LD1を超えているか否かを表す検出信号を生成する下限検出センサー66b(検出手段66)が設けられている。これらのセンサー66a,66bには、例えば光電式センサーを用いることができる。シートS1の一面S1a側への膨らみが上限位置LU1を超えると、上限位置LU1に沿った光軸が遮断され、上限検出センサー66aが光軸遮断を表す検出信号を生成する。シートS1の他面S1b側への膨らみが下限位置LD1を超えると、下限位置LD1に沿った光軸が遮断され、下限検出センサー66bが光軸遮断を表す検出信号を生成する。
【0059】
図16は、本変形例の制御盤80を中心とした差圧成形装置2の電気回路構成を示している。制御盤80には、図8で示した各部が電気的に接続されている他、上限検出センサー66a、下限検出センサー66b、圧力調整手段(負圧調整手段)61a、負圧流量調整手段(負圧調整手段)61b、が電気的に接続されている。制御盤80は、上限検出センサー66aから検出信号を入力するI/O回路82ya、下限検出センサー66bから検出信号を入力するI/O回路82yb、圧力調整手段61aの調整量を制御する圧力制御部82k、負圧流量調整手段61bの調整量を制御する負圧流量制御部82l、を備えている。
【0060】
図17は、負圧流量調整手段(負圧調整手段)61bを利用する負圧調整処理をフローチャートにより示している。本処理は、製品S3の製造を行っているときに繰り返し行われ、時分割処理により他の処理と並列して行われる。本変形例の差圧成形手段60には、圧力調整手段61aが設けられていなくてもよい。
負圧調整処理を開始すると、制御盤80は、いわゆる圧空ボックスである閉空間形成体30がシートS1に近付いているか否かを判断する(ステップS102。以下、「ステップ」の記載を省略)。例えば、制御盤80は、上テーブル38が下降中であれば条件成立と判断してS104に処理を進め、上テーブル38が下降中でなければ条件不成立と判断して負圧調整処理を終了する。
【0061】
S104では、上限位置センサー66aからの検出信号に基づいて、シートS1の一面S1a側への膨らみが上限位置LU1に到達しているか否かを判断する。シートS1の一面S1a側への膨らみが上限位置LU1を超えていないことを表す検出信号が入力されている場合、制御盤80は、処理をS108に進める。シートS1の一面S1a側への膨らみが上限位置LU1を超えていることを表す検出信号が入力されている場合、制御盤80は、シートS1の一面S1a側への膨らみを減らすように負圧流量調整手段61bの調整量を変更して凹部32内に作用させる負圧の流量を減少させる(S106)。これにより、凹部32内に作用する負圧が弱くなる。
S108では、下限位置センサー66bからの検出信号に基づいて、シートS1の他面S1b側への膨らみが下限位置LD1に到達しているか否かを判断する。シートS1の他面S1b側への膨らみが下限位置LD1を超えていないことを表す検出信号が入力されている場合、制御盤80は、負圧調整処理を終了する。シートS1の他面S1b側への膨らみが下限位置LD1を超えていることを表す検出信号が入力されている場合、制御盤80は、シートS1の他面S1b側への膨らみを減らすように負圧流量調整手段61bの調整量を変更して凹部32内に作用させる負圧の流量を増加させ(S110)、S102に戻る。これにより、凹部32内に作用する負圧が強くなる。
【0062】
閉空間形成体30が所定の離間位置L11から所定の近接位置L13まで移動している間、S102〜S110の処理が繰り返し行われる。これにより、シートS1の膨らみが下限位置LD1から上限位置LU1までの間に収まるように負圧流量調整手段61bの調整量が自動的に変更され、凹部32内に作用する負圧が調整される。これにより、負圧流量調整手段61bの調整量を手動で変更して閉空間形成体30を近付けたときのシートS1の平たさを調節する必要が無くなり、閉空間形成体30を近付けたときのシートS1の平たさを調節する作業を軽減することができる。
【0063】
また、図18に示すように、圧力調整手段61aを利用してS106,S110の代わりにS122,S124の処理を行ってもよい。本変形例の差圧成形手段60には、負圧流量調整手段61bが設けられていなくてもよい。
本変形例の制御盤80は、シートS1の一面S1a側への膨らみが上限位置LU1を超えていることを表す検出信号が入力されている場合、シートS1の一面S1a側への膨らみを減らすように圧力調整手段61aの調整量を変更して凹部32内に作用させる負圧の絶対圧を増加させる(S122)。これにより、凹部32内に作用する負圧が弱くなる。また、制御盤80は、シートS1の他面S1b側への膨らみが下限位置LD1を超えていることを表す検出信号が入力されている場合、シートS1の他面S1b側への膨らみを減らすように圧力調整手段61aの調整量を変更して凹部32内に作用させる負圧の絶対圧を減少させる(S124)。これにより、凹部32内に作用する負圧が強くなる。
【0064】
むろん、シートS1の一面S1a側への膨らみが上限位置LU1を超えていることを表す検出信号が入力されている場合、シートS1の一面S1a側への膨らみを減らすように圧力調整手段61aと負圧流量調整手段61bの両方の調整量を変更してもよい。シートS1の他面S1b側への膨らみが下限位置LD1を超えていることを表す検出信号が入力されている場合、シートS1の他面S1b側への膨らみを減らすように圧力調整手段61aと負圧流量調整手段61bの両方の調整量を変更してもよい。
また、先にS108,S110,S124の処理を行った後にS104,S106,S122の処理を行ってもよい。
さらに、下限検出センサー66bが無くS108,S110,S124の処理が無くても、シートS1の一面S1a側への膨らみが上限位置LU1を超えないように凹部32内に作用する負圧が調整される。上限検出センサー66aが無くS104,S106,S122の処理が無くても、シートS1の他面S1b側への膨らみが下限位置LD1を超えないように凹部32内に作用する負圧が調整される。
【0065】
さらに、閉空間形成体30と成形型40の位置関係を逆にすることも可能である。
図19は、閉空間形成体30をシートS1の下側に配置し成形型40をシートS1の上側に配置した変形例の差圧成形装置において成形部3を例示する垂直断面図である。本変形例では、閉空間形成体30を固定したテーブル38が下テーブルとされ、成形型40を固定したテーブル48が上テーブルとされている。また、雌型とされた成形型40Aが上側のテーブル48の下面に取り付けられて固定されている。
【0066】
図20は、図19に示す成形部3を有する差圧成形装置の電気回路構成の一例を示している。本変形例では、上負圧供給エア回路61の代わりに下負圧供給エア回路161が設けられ、上負圧供給制御部82eの代わりに下負圧供給制御部182eが設けられ、上圧空供給エア回路62の代わりに下圧空供給エア回路162が設けられ、上圧空供給制御部82fの代わりに下圧空供給制御部182fが設けられ、上開放エア回路63の代わりに下開放エア回路163が設けられ、上開放制御部82gの代わりに下開放制御部182gが設けられている。
【0067】
また、本変形例では、図8の下負圧供給エア回路64に相当する上負圧供給エア回路が設けられておらず、図8の下開放エア回路65に相当する上開放エア回路が設けられていない。これらの回路が無くても、シートS1を差圧成形することが可能である。
【0068】
図21は、図20に示す差圧成形装置の動作の一例を示すタイミングチャートである。本変形例の制御盤80は、まず、搬送用モーター24aでシートS1を差圧成形位置L2へ搬送させ(タイミングt1〜t2)、下負圧供給エア回路161で凹部32内に負圧を供給するとともに閉空間形成体30を固定した下側のテーブル38を所定の近接位置まで上昇させてシートS1の一面S1aと凹部32とで囲まれた成形前空間を形成させる(タイミングt3〜t5)。これにより、閉空間形成体30を近付けることによるシートS1の膨らみが抑制される。
また、制御盤80は、成形型40を固定した上側のテーブル48を所定の近接位置まで下降させ(タイミングt4〜t6)、凹部32内に圧空を供給してシートS1を成形面42aに密接させる(タイミングt7〜t8)。さらに、制御盤80は、上開放エア回路63を開放状態として成形後空間SP2を大気に開放させ(タイミングt8〜t9)、離型エア供給回路71で成形型40から離型エアの供給を開始させ(タイミングt9)、下側のテーブル38を所定の離間位置まで下降させる(タイミングt10〜t11)。そして、制御盤80は、上側のテーブル48を所定の離間位置まで上昇させ(タイミングt11〜t1)、離型エアの供給を停止させる。
【0069】
本変形例でも、閉空間形成体30を近付けることによるシートS1の膨らみが減るので、差圧供給時のシート余りが少なくなり、閉空間形成体30の移動速度を上げることができ、差圧成形のサイクルタイムを短縮することができる。
【0070】
また、図22,23に示すように、成形型駆動装置49が無く成形型40,40Aが移動しなくても、シートS1を差圧成形することが可能である。本変形例の差圧成形装置は、図22(a)に示すようにシートS1を差圧成形位置L2へ搬送し(タイミングt1〜t2)、図22(a),(b)に示すように凹部32内に負圧を供給するとともに閉空間形成体30を固定した下側のテーブルを成形型40Aに近接させてシートS1の一面と凹部32とで囲まれた成形前空間を形成させる(タイミングt3〜t5)。これにより、閉空間形成体30を近付けることによるシートS1の膨らみが抑制された状態で、シートS1が閉空間形成体30と成形型40Aとで挟まれる。
また、差圧成形装置は、図22(b),(c)に示すように凹部32内に圧空PA1を供給してシートS1を成形面42aに密接させ(タイミングt7〜t8)、成形後空間を大気に開放させる(タイミングt8〜t9)。そして、差圧成形装置は、図22(c),(d)に示すように成形型40Aから離型エアRA1を供給するとともに下側のテーブルを所定の離間位置まで下降させる(タイミングt9〜t1)。
【0071】
本変形例でも、閉空間形成体30を近付けることによるシートS1の膨らみが減るので、差圧供給時のシート余りが少なくなり、閉空間形成体30の移動速度を上げることができ、差圧成形のサイクルタイムを短縮することができる。
むろん、閉空間形成体30をシートS1の上側に配置し成形型40AをシートS1の下側に配置しても同様にしてシートS1を差圧成形することができる。
【0072】
むろん、差圧成形装置に検出手段66や負圧調整手段61a,61bが設けられていなくても、上述した基本的な作用、効果が得られる。
【0073】
また、成形可能なシートをシート保持部で保持するシート保持手段と、該シート保持部で保持されたシートの一面に対向した凹部を有する閉空間形成体と、前記シート保持部で保持されたシートの他面側に配置され、前記凹部に対向した成形型と、を用い、前記凹部内に負圧を作用させながら前記閉空間形成体を前記シートの方へ移動させて前記シートの一面と前記凹部とで囲まれた成形前空間を形成し、該成形前空間の圧力よりも前記シートの他面側の圧力が低くなる差圧を設けて前記シートを前記成形型に密接させて成形する基本構成のみでも、成形のサイクルタイムを短縮する効果が得られる。
すなわち、独立請求項に係る構成要件のみからなる差圧成形装置及び差圧成形シート製造方法でも、上述した基本的な作用、効果が得られる。
【0074】
以上説明したように、本発明によると、種々の態様により、差圧成形のサイクルタイムを短縮することが可能な技術を提供することができる。
また、上述した実施形態及び変形例の中で開示した各構成を相互に置換したり組み合わせを変更したりして本発明を実施することも可能であり、公知技術並びに上述した実施形態及び変形例の中で開示した各構成を相互に置換したり組み合わせを変更したりして本発明を実施することも可能である。従って、本発明は、上述した実施形態や変形例に限られず、公知技術並びに上述した実施形態及び変形例の中で開示した各構成を相互に置換したり組み合わせを変更したりした構成等も含まれる。
【符号の説明】
【0075】
1,1A…差圧成形品製造システム、2…差圧成形装置、
3…成形部、4…シート供給装置、
10…シート加熱装置、11…ヒーター、
20…シート保持手段、21…シート保持部、
30…閉空間形成体、32…凹部、32a…開口、
33…凹部の周囲、33a…挟持面、
34,35…エア経路、
38…テーブル、
39…閉空間形成体駆動装置、
40,40A…成形型、42…凸部、42a…成形面、
44…エア経路、44a…孔、
48…テーブル、
49…成形型駆動装置、
60…差圧成形手段、
61…上負圧供給エア回路、
61a…圧力調整手段(負圧調整手段)、61b…負圧流量調整手段(負圧調整手段)、
62…上圧空供給エア回路、63…上開放エア回路、
64…下負圧供給エア回路、65…下開放エア回路、
66…検出手段、66a…上限検出センサー、66b…下限検出センサー、
70…離型手段、71…離型エア供給回路、
80…制御盤、
D1…搬送方向、D2…幅方向、
L1…シート供給位置、L2…差圧成形位置、
L11,L12…離間位置、L13,L14…近接位置、
LU1…上限位置、LD1…下限位置、
PA1…圧空、RA1…離型エア、
S1…シート、S1a…シートの一面、S1b…シートの他面、S1c…縁部、
S2…成形シート、S2a…成形シートの一面、S2b…成形シートの他面、
S3…製品、S4…スクラップシート、
SP1…成形前空間、SP2…成形後空間。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
成形可能なシートをシート保持部で保持するシート保持手段と、
前記シート保持部で保持されたシートの一面に対向した凹部を有する閉空間形成体と、
前記シート保持部で保持されたシートの他面側に配置され、前記凹部に対向した成形型と、
前記凹部内に負圧を作用させながら前記閉空間形成体を前記シートの方へ移動させて前記シートの一面と前記凹部とで囲まれた成形前空間を形成し、該成形前空間の圧力よりも前記シートの他面側の圧力が低くなる差圧を設けて前記シートを前記成形型に密接させて成形する差圧成形手段とを備えることを特徴とする差圧成形装置。
【請求項2】
前記差圧成形手段は、前記凹部内に作用させる負圧を調整するための負圧調整手段を有することを特徴とする請求項1に記載の差圧成形装置。
【請求項3】
前記差圧成形手段は、前記シート保持部で保持されたシートにおける前記一面側への膨らみと前記他面側への膨らみの少なくとも一方を検出する検出手段を有し、該検出した前記一面側への膨らみと前記他面側への膨らみの少なくとも一方を減らすように前記負圧調整手段で前記凹部内に作用させる負圧を調整することを特徴とする請求項2に記載の差圧成形装置。
【請求項4】
前記シートを加熱するためのシート加熱装置が設けられ、
前記シート保持手段は、所定のシート供給位置で前記シート保持部により前記シートを保持して前記シート加熱装置へ搬送し、加熱された前記シートをさらに前記閉空間形成体と前記成形型との間の差圧成形位置へ搬送し、
前記差圧成形手段は、前記差圧成形位置に前記加熱されたシートが搬送されたときに前記凹部内に負圧を作用させながら前記閉空間形成体を前記シートの方へ移動させて前記成形前空間を形成することを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれか一項に記載の差圧成形装置。
【請求項5】
成形可能なシートを加熱するためのシート加熱装置と、
所定のシート供給位置でシート保持部により前記シートを保持して前記シート加熱装置へ搬送し、加熱された前記シートをさらに所定の差圧成形位置へ搬送するシート保持手段と、
前記差圧成形位置にあるときの前記シートの一面に対向する凹部を有し、該シートの一面側に配置された閉空間形成体と、
前記差圧成形位置にあるときの前記シートの他面側に配置され、前記凹部に対向した成形型と、
前記差圧成形位置に前記加熱されたシートが搬送されたときに前記凹部内に負圧を作用させながら前記閉空間形成体を前記シートの方へ移動させて前記シートの一面と前記凹部とで囲まれた成形前空間を形成し、該成形前空間に圧空を供給して前記シートを前記成形型に密接させて成形する差圧成形手段とを備えることを特徴とする差圧成形装置。
【請求項6】
成形可能なシートを差圧成形して成形シートを製造する差圧成形シート製造方法であって、
前記シートをシート保持部で保持するシート保持手段と、
前記シート保持部で保持されたシートの一面に対向した凹部を有する閉空間形成体と、
前記シート保持部で保持されたシートの他面側に配置され、前記凹部に対向した成形型と、を用い、
前記凹部内に負圧を作用させながら前記閉空間形成体を前記シートの方へ移動させて前記シートの一面と前記凹部とで囲まれた成形前空間を形成し、該成形前空間の圧力よりも前記シートの他面側の圧力が低くなる差圧を設けて前記シートを前記成形型に密接させて成形することを特徴とする差圧成形シート製造方法。
【請求項7】
成形可能なシートを差圧成形して成形シートを製造する差圧成形シート製造方法であって、
前記シートを加熱するためのシート加熱装置と、
所定のシート供給位置でシート保持部により前記シートを保持して前記シート加熱装置へ搬送し、加熱された前記シートをさらに所定の差圧成形位置へ搬送するシート保持手段と、
前記差圧成形位置にあるときの前記シートの一面に対向する凹部を有し、該シートの一面側に配置された閉空間形成体と、
前記差圧成形位置にあるときの前記シートの他面側に配置され、前記凹部に対向した成形型と、を用い、
前記差圧成形位置に前記加熱されたシートが搬送されたときに前記凹部内に負圧を作用させながら前記閉空間形成体を前記シートの方へ移動させて前記シートの一面と前記凹部とで囲まれた成形前空間を形成し、該成形前空間に圧空を供給して前記シートを前記成形型に密接させて成形することを特徴とする差圧成形シート製造方法。
【請求項1】
成形可能なシートをシート保持部で保持するシート保持手段と、
前記シート保持部で保持されたシートの一面に対向した凹部を有する閉空間形成体と、
前記シート保持部で保持されたシートの他面側に配置され、前記凹部に対向した成形型と、
前記凹部内に負圧を作用させながら前記閉空間形成体を前記シートの方へ移動させて前記シートの一面と前記凹部とで囲まれた成形前空間を形成し、該成形前空間の圧力よりも前記シートの他面側の圧力が低くなる差圧を設けて前記シートを前記成形型に密接させて成形する差圧成形手段とを備えることを特徴とする差圧成形装置。
【請求項2】
前記差圧成形手段は、前記凹部内に作用させる負圧を調整するための負圧調整手段を有することを特徴とする請求項1に記載の差圧成形装置。
【請求項3】
前記差圧成形手段は、前記シート保持部で保持されたシートにおける前記一面側への膨らみと前記他面側への膨らみの少なくとも一方を検出する検出手段を有し、該検出した前記一面側への膨らみと前記他面側への膨らみの少なくとも一方を減らすように前記負圧調整手段で前記凹部内に作用させる負圧を調整することを特徴とする請求項2に記載の差圧成形装置。
【請求項4】
前記シートを加熱するためのシート加熱装置が設けられ、
前記シート保持手段は、所定のシート供給位置で前記シート保持部により前記シートを保持して前記シート加熱装置へ搬送し、加熱された前記シートをさらに前記閉空間形成体と前記成形型との間の差圧成形位置へ搬送し、
前記差圧成形手段は、前記差圧成形位置に前記加熱されたシートが搬送されたときに前記凹部内に負圧を作用させながら前記閉空間形成体を前記シートの方へ移動させて前記成形前空間を形成することを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれか一項に記載の差圧成形装置。
【請求項5】
成形可能なシートを加熱するためのシート加熱装置と、
所定のシート供給位置でシート保持部により前記シートを保持して前記シート加熱装置へ搬送し、加熱された前記シートをさらに所定の差圧成形位置へ搬送するシート保持手段と、
前記差圧成形位置にあるときの前記シートの一面に対向する凹部を有し、該シートの一面側に配置された閉空間形成体と、
前記差圧成形位置にあるときの前記シートの他面側に配置され、前記凹部に対向した成形型と、
前記差圧成形位置に前記加熱されたシートが搬送されたときに前記凹部内に負圧を作用させながら前記閉空間形成体を前記シートの方へ移動させて前記シートの一面と前記凹部とで囲まれた成形前空間を形成し、該成形前空間に圧空を供給して前記シートを前記成形型に密接させて成形する差圧成形手段とを備えることを特徴とする差圧成形装置。
【請求項6】
成形可能なシートを差圧成形して成形シートを製造する差圧成形シート製造方法であって、
前記シートをシート保持部で保持するシート保持手段と、
前記シート保持部で保持されたシートの一面に対向した凹部を有する閉空間形成体と、
前記シート保持部で保持されたシートの他面側に配置され、前記凹部に対向した成形型と、を用い、
前記凹部内に負圧を作用させながら前記閉空間形成体を前記シートの方へ移動させて前記シートの一面と前記凹部とで囲まれた成形前空間を形成し、該成形前空間の圧力よりも前記シートの他面側の圧力が低くなる差圧を設けて前記シートを前記成形型に密接させて成形することを特徴とする差圧成形シート製造方法。
【請求項7】
成形可能なシートを差圧成形して成形シートを製造する差圧成形シート製造方法であって、
前記シートを加熱するためのシート加熱装置と、
所定のシート供給位置でシート保持部により前記シートを保持して前記シート加熱装置へ搬送し、加熱された前記シートをさらに所定の差圧成形位置へ搬送するシート保持手段と、
前記差圧成形位置にあるときの前記シートの一面に対向する凹部を有し、該シートの一面側に配置された閉空間形成体と、
前記差圧成形位置にあるときの前記シートの他面側に配置され、前記凹部に対向した成形型と、を用い、
前記差圧成形位置に前記加熱されたシートが搬送されたときに前記凹部内に負圧を作用させながら前記閉空間形成体を前記シートの方へ移動させて前記シートの一面と前記凹部とで囲まれた成形前空間を形成し、該成形前空間に圧空を供給して前記シートを前記成形型に密接させて成形することを特徴とする差圧成形シート製造方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【公開番号】特開2011−201267(P2011−201267A)
【公開日】平成23年10月13日(2011.10.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−73294(P2010−73294)
【出願日】平成22年3月26日(2010.3.26)
【出願人】(304050369)株式会社浅野研究所 (44)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年10月13日(2011.10.13)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年3月26日(2010.3.26)
【出願人】(304050369)株式会社浅野研究所 (44)
【Fターム(参考)】
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