説明

巻回体収容箱及び巻回体入り収容箱

【課題】角部付近のつぶれを抑制することができる巻回体収容箱及び巻回体入り収容箱を提供する。
【解決手段】巻回体収容箱1は、巻回体91rを収容する本体部10と、後板端辺18に回動可能に連接されて開口面10hを覆う蓋部20とを備える。側蓋片25は、接合片22jの外側に設けられることにより、天側辺25qと接合片22jとの間に凹部25dが形成されている。凹部25dは、蓋部20を閉じたときに凸部15pが嵌る。接合片22jは、凹部25dに隣接する隣接辺22jaが、折曲辺21fと天側辺25qとの交点に、又は交点から3mmの範囲内の天側辺25q若しくは前辺25pに至るように曲がっている。而して、天板21と掩蓋片22と側蓋片25とが交わる角部付近を接合片22jで補強することができ、この角部付近のつぶれを抑制することができる。巻回体入り収容箱100は、巻回体91rと、巻回体収容箱1とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は巻回体収容箱及び巻回体入り収容箱に関し、特に角部付近のつぶれを抑制することができる巻回体収容箱及び巻回体入り収容箱に関する。
【背景技術】
【0002】
食材や料理あるいは皿などの食器を料理ごと包む食品用ラップフィルムが広く用いられている。食品用ラップフィルムは、ロール状に巻かれた長尺のプラスチックフィルム(巻回体)が、長い直方体の容器(収容箱)に収容されて販売されるのが一般的である。収容箱として、巻回体を収容する一面が開口された箱本体と、箱本体の後壁に回動可能に連接されて開口された一面を塞ぐ天板と、天板に連接されて天板を閉じたときに後壁に対向する箱本体の前壁の上部を覆う蓋前壁と、天板に連接されて天板を閉じたときに後壁及び前壁に直交する箱本体の底壁フラップの上部を覆う天板フラップとを備え、天板フラップは蓋前壁に直交して連接する蓋前壁フラップの上に重ねられて接合され、底壁フラップはその上端辺に連接されて箱本体の外側下方に向けて折り曲げられた延長部を有しており、蓋体を閉じたときに延長部が蓋前壁フラップと係合してクリック音が発生するように構成されたものがある(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−176599号公報(段落0023、図5等)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述の箱体では、蓋前壁フラップと天板との間が狭くなるように天板フラップが折れ曲がり、蓋体の角部付近がつぶれることがあった。
【0005】
本発明は上述の課題に鑑み、角部付近のつぶれを抑制することができる巻回体収容箱及び巻回体入り収容箱を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明の第1の態様に係る巻回体収容箱は、例えば図1に示すように、長尺物91fが巻かれた巻回体91rを収容する直方体状に形成された本体部10であって、巻回体91rが収容されたときに巻回体91rの軸線91aと平行になる4つの長方形面のうちの1つが開口した開口面10hに形成されると共に、開口面10hに直交する2つの長方形面のうちの一方を構成する後板14と、後板14に対向する長方形面を構成する前板12と、4つの長方形面に直角で直方体状の端面を構成する脇板15と、を有する本体部10と;後板14の開口面10hと交わる端辺である後板端辺18に回動可能に連接された蓋部20であって、蓋部20を閉じたときに、開口面10hを覆う天板21と、天板21に連接されて前板12の一部を覆う掩蓋片22と、天板21に連接された側蓋片25であって掩蓋片22に連接された接合片22jに重なって接着されて脇板15の一部を覆う側蓋片25と、を有する蓋部20とを備え;脇板15は、脇板15の開口面10hと交わる端辺である脇板端辺15sに、本体部10の外側に突き出た凸部15pが設けられており;側蓋片25は、接合片22jの外側に設けられることにより、天板21と側蓋片25との交線である天側辺25qと、接合片22jとの間に、蓋部20を閉じたときに凸部15pが嵌る凹部25dが形成されており;接合片22jは、凹部25dに隣接する隣接辺22ja(例えば図1(B)参照)が、天板21と掩蓋片22との交線である折曲辺21fと、天側辺25qとの交点に至るように、又は隣接辺22jが、交点から3mmの範囲内で天側辺25q若しくは掩蓋片22と側蓋片25との交線である前辺25pに至るように構成されている。
【0007】
このように構成すると、隣接辺が折曲辺と天側辺との交点又は交点から3mmの範囲内の天側辺若しくは前辺に至るように構成されているので、天板と掩蓋片と側蓋片とが交わる角部付近を接合片で補強することができ、この角部付近のつぶれを抑制することができる。また、掩蓋片と接合片とが連接する罫線の長さを比較的大きくすることができ、接合片を掩蓋片に対して直角に折りこんだときの成形精度を向上させることができる。
【0008】
また、本発明の第2の態様に係る巻回体収容箱は、例えば図1(B)に示すように、上記本発明の第1の態様に係る巻回体収容箱1において、凸部15pが嵌る部分の天側辺25qと接合片22jとの距離が7mm以下に形成されている。
【0009】
このように構成すると、側蓋片が天側辺から離れるにつれて外側に開き気味となっている場合でも、蓋部を閉じる際に凸部が接合片上から凹部に落ちるポイントが天側辺に比較的近くなるため、凸部に蓄えられる弾性ひずみエネルギーが比較的大きくなって、凸部が凹部に落ちたときの感覚が得られやすくなる。
【0010】
また、本発明の第3の態様に係る巻回体入り収容箱は、例えば図1(A)に示すように、長尺物が巻かれた巻回体91rと;上記本発明の第1の態様又は第2の態様に係る巻回体収容箱1とを備える。
【0011】
このように構成すると、角部付近のつぶれを抑制できる巻回体入り収容箱となる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、隣接辺が折曲辺と天側辺との交点又は交点から3mmの範囲内の天側辺若しくは前辺に至るように構成されているので、天板と掩蓋片と側蓋片とが交わる角部付近を接合片で補強することができ、この角部付近のつぶれを抑制することができる。また、掩蓋片と接合片とが連接する罫線の長さを比較的大きくすることができ、接合片を掩蓋片に対して直角に折りこんだときの成形精度を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】(A)は本発明の実施の形態に係るラップカートンを含むラップ入りカートンの斜視図、(B)は本発明の実施の形態に係るラップカートンの側面図である。
【図2】本発明の実施の形態に係るラップ入りカートンの開封状況を示す斜視図である。
【図3】各実施例及び比較例で用いたラップカートンの接合片まわりを示す部分側面図である。(A)〜(C)は実施例に係る部分側面図、(D)及び(E)は比較例に係る部分側面図である。
【図4】各実施例及び比較例に係る成形性の結果をまとめた表を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。なお、各図において互いに同一又は相当する部材には同一あるいは類似の符号を付し、重複した説明は省略する。
【0015】
まず図1を参照して、本発明の実施の形態に係る、巻回体収容箱としてのラップカートン1、及びラップカートン1に巻回体としてのラップロール91rが収容された巻回体入り収容箱としてのラップ入りカートン100を説明する。図1(A)は、ラップ入りカートン100の斜視図、図1(B)はラップカートン1の側面図である。図1(A)は、開蓋状態を示している。ラップロール91rは、薄膜状の長尺物としてのラップフィルム91fが円筒状の巻芯に軸線91aまわりに巻かれてロール状に形成されたものである。以下の説明において、ラップロール91rとラップフィルム91fとの外観形状の区別をしない場合は、「ラップ91」と総称する。ラップフィルム91fは、本実施の形態では、ポリ塩化ビニリデンを原料として厚さが5〜20μmに形成されている。ラップカートン1は、ラップロール91rを収容する本体部10と、本体部10に連接された蓋部20とを備えている。
【0016】
本体部10は、未使用のラップロール91rを収容できる大きさの直方体に対して、細長い面の1つが開口面10hとなっている箱である。本体部10の大きさは、収容した未使用のラップロール91rを軸線91a回りに回転させるのを妨げない隙間が形成される一方で、できるだけ小さく形成されており、幅及び高さは各々概ね30〜60mm、長さは概ね200〜400mmの範囲内で形成されているとよく、本実施の形態では幅44mm、高さ44mm、長さ310mmの大きさに形成されている。本体部10は、開口面10hと協働して直方体の側面を構成する前板12、底板13、後板14と、直方体の端面を構成する2つの脇板15とを有している。底板13は、開口面10hに対向している。前板12及び後板14は、開口面10h及び底板13に直交している。脇板15は、前板12、底板13、後板14の各々よりも面積が小さく、典型的には正方形に形成されているが、縦横の長さが異なる矩形であってもよい。以下の説明においては、水平な面に底板13が載置された状態を基準として、底板13側を下、開口面10h側を上として説明する場合もある。
【0017】
脇板15の上端の辺である脇板端辺15sの中央部分には、3mm程度上方に延びた小片が外側に折り返されて形成された凸部としての突起15pが設けられている。突起15pは、2つあるそれぞれの脇板15の上端に設けられている。また、本体部10は、前板端辺19で前板12と連続する副板16を有している。前板端辺19は、前板12と開口面10hとが交わる部分の前板12の端辺である。副板16は、前板12と略同じ大きさであるが底板13とは接しておらず、前板12よりも本体部10の内側に設けられている。副板16は、底板13側の端辺が、長手方向に沿って前板12に接着されている。
【0018】
蓋部20は、本体部10の開口面10hを塞ぐ部材である。蓋部20は、天板としての蓋板21と、掩蓋片22と、切断刃23と、側蓋片25とを有している。蓋板21は、開口面10hと略同じ大きさの矩形平板状部材であり、蓋板21を開口面10hに合わせることで本体部10を閉塞した直方体とすることができるようになっている。蓋板21が開口面10hと略同じ大きさとは、蓋板21が、掩蓋片22の厚さ及び側蓋片25の厚さの分大きく、蓋部20の開閉を妨げない隙間が形成される程度大きい場合を含むことを意味している。蓋板21は、長手方向の一辺が、本体部10の後板端辺18で連接している。換言すれば、本体部10と蓋板21とは、後板端辺18を介して連接している。後板端辺18は、後板14と開口面10hとが交わる部分の後板14の端辺である。蓋板21は、後板端辺18を回転軸線として、本体部10に対して回動することができるように構成されている。
【0019】
掩蓋片22は、折曲辺21fを介して蓋板21と直交し、蓋部20を閉じたときに底板13に向かって延びるように設けられている。掩蓋片22は、ラップロール91rの軸線91aが延びる方向(以下「軸線方向D」という。)の両端における高さ(長方形の前板12の短辺方向の長さ)が、前板12の短辺方向の長さの約1/2で、軸線方向Dの中央部の高さが、前板12の短辺方向の長さの約3/4となっている。折曲辺21fに対向する先端辺22tは、軸線方向Dにおける中央からそれぞれの端部に移動するに連れて、軸線方向Dに直交する方向における折曲辺21fと先端辺22tとの距離が小さくなるように形成されている。このような構成により、先端辺22tがV字状に形成されることとなる。掩蓋片22は、蓋部20が閉じられたときに、前板12に沿って前板12の外側に重なり、前板12の上部を五角形状に覆うこととなる。掩蓋片22の先端辺22tには、ラップフィルム91fを切断するための切断刃23が取り付けられている。切断刃23は、刃先が先端辺22tから出るように、先端辺22tに沿ってV字状に設けられている。
【0020】
側蓋片25は、蓋板21及び掩蓋片22の双方に直交して設けられている。側蓋片25は、蓋板21(掩蓋片22)の両端に合計2つ設けられている。側蓋片25は、基本形状が、長辺が蓋板21の短辺と同じ長さで、短辺が掩蓋片22の中央部における高さ(V字状の先端から折曲辺21fまでの最短距離)と略同じ長さの長方形に形成されている。この基本形状を基に、側蓋片25は、底板13側の辺である下辺25sと後板14側の辺である後辺25rとが交わる角部が、丸みを帯びている。
【0021】
側蓋片25は、掩蓋片22に連接された接合片22jに接着剤で固定されている。接合片22jは、側蓋片25よりも小さく、側蓋片25に包含される大きさに形成されている。接合片22jは、概ね長方形に形成されており、蓋板21と側蓋片25との交線である天側辺25qに対して、隙間を空けて略平行になるように配設されている。これにより、側蓋片25の内側には、接合片22jと蓋板21(天側辺25q)との間に、凹部25dが形成されている。凹部25dには、蓋部20を閉じたときに、脇板15の上端に設けられた突起15pが嵌ることとなる。つまり、この突起15pが嵌る部分の凹部25dは、天側辺25qに接合片22jが接しないように側蓋片25が接合片22jの外側に設けられることにより形成されている。
【0022】
接合片22jの、凹部25dに隣接する辺(最も蓋板21に近い辺)である隣接辺22jaは、掩蓋片22と側蓋片25との交線である前辺25pの近辺で、折曲辺21fと前辺25pと天側辺25qとの交点に接続するように曲がっている。隣接辺22jaの曲がった部分と天側辺25qとのなす角αは、好ましくは25〜75°、より好ましくは30〜50°、さらに好ましくは35〜40°に形成されている。突起15pは、蓋部20を閉じたときに、隣接辺22jaの曲がった部分以外の部分と天側辺25qとの間の凹部25dに嵌るように形成されている。突起15pが嵌る部分の凹部25dの幅(天側辺25qと隣接辺22jaとの距離)は、ラップカートン1の成形性(特に、意図した罫線で折り曲げることができること)を向上させる観点からは広い方が好ましく、突起15pが凹部25dに嵌ったときの感触を得やすくする観点からは狭い方が好ましいところ、3〜7mmとするのが好ましく、4〜6mmとするのがより好ましく、本実施の形態では5mmとしている。上述のように構成された蓋部20は、閉じたときに、本体部10の開口10hに覆い被さり、掩蓋片22が前板12の上部を覆うようになっている。
【0023】
本体部10及び蓋部20は、本実施の形態では、約0.45〜0.7mm厚のコートボール紙が加工されて形成されている。本実施の形態では、説明の便宜上、本体部10と蓋部20とを機能の観点から区別しているが、本体部10及び蓋部20は、1枚の原紙を切り出して組み立てられて一体に形成されている。ラップカートン1の組み立て、及びラップ入りカートン100の製造は、典型的にはカートニングマシンによって自動で行われる。本体部10を構成する脇板15等や、蓋部20を構成する側蓋片25等の形成は、切り出された原紙が適時にプロペラによって折り曲げられることにより行われる。本体部10及び蓋部20の表面は、消費者の購買意欲を惹起するようなデザインが印刷されたうえで、全体に表面処理が施されている。このとき、表面処理としてOP(オーバープリント)ニスを塗布してもよい。OPニスを塗布すると、すべり性が向上するため、カートニングマシンにおける成形の際の生産性を向上させることができる。
【0024】
ラップカートン1は、前板12の上部中央に、フラップ12fが形成されている。フラップ12fは、本実施の形態では、軸線方向Dの長さが前板12(以下、単に前板12というときは、フラップ12f等を含めた長方形の前板12全体をいう。)の長さの約1/3、高さ方向の長さが前板12の長さの約1/2に形成されている。フラップ12fは、輪郭が、前板端辺19を概ね3等分する点の一方から、底板13側かつ遠い方の脇板15側に進みつつ、上記概ね3等分する点の他方に至るように、前板12の面内が切断されることで形成されている。フラップ12fの下側の辺は、3つの凸部ができるような波形に形成されている。フラップ12fは、前板端辺19で副板16と連接しており、前板端辺19を回転軸線として回動することができるように構成されている。フラップ12fの概ね図心部分には、保持部12fsが設けられている。保持部12fsは、UVニスが塗布されることで形成されている。保持部12fsを形成するUVニスは、ラップフィルム91fに対して付着するが、紙や埃等は付着しない特性を有している。フラップ12fは、蓋部20を閉じたときに掩蓋片22に覆われて外面に表れない大きさに形成されている。なお、蓋部20を閉じたときに掩蓋片22に覆われる前板12の部分に、適宜UVニスを塗布することとして、ラップフィルム91fの巻き戻り防止効果を向上させてもよい。
【0025】
図2に示すように、使用前のラップ入りカートン100には、先端辺22tを介して掩蓋片22に連接する態様で、切取片29が設けられている。切取片29は、掩蓋片22とミシン目29cで接続されていると共に、前板12と複数の接着エリア34で接着されている。接着エリア34は、従来多く用いられていた直径7mmの円を6箇所等間隔に配列したものとは異なり、直径5〜7mmの円を6〜8箇所に適宜配列した態様となっている。また、半切り線(接着エリア34の外縁を囲むように連続的に切り込みが入れられた線)を使用しない態様となっている。このように構成されていることにより、切取片29を剥がしたときに、前板12の接着エリア34に古紙層の跡が残りにくいため、使用時の接着エリア34の外観が向上する。ラップ入りカートン100は、切取片29が付いている状態でも、後辺25r及び下辺25sが本体部10に付着しておらず、側蓋片25と脇板15との間が開き気味になっている。
【0026】
引き続き図1及び図2を参照して、ラップ入りカートン100の作用を説明する。ラップカートン1の作用は、ラップ入りカートン100の作用の一環として説明する。工場で製造されたラップ入りカートン100を構成するラップカートン1は、組み立てられる際の原紙が折り曲げられた後の復元力、及び/又は、脇板端辺15sに設けられた突起15pが外側に開こうとする力により、側蓋片25が脇板15から開き気味になり、特に、構造上本体部10に付着していない後辺25r及び下辺25sの部分の開きが大きくなりがちである。
【0027】
消費者の手に渡った未開封のラップ入りカートン100は、切取片29が付いている。ラップフィルム91fを初めて使用する際は、切取片29を、前板12から剥がしつつミシン目29cで切断して掩蓋片22から分離する。このようにラップカートン1を開封することで、蓋部20が本体部10に対して後板端辺18まわりに回動可能な状態となる。開封されたラップ入りカートン100は、蓋部20を開けると、本体部10の中にラップロール91rが入っている。ラップロール91rには、ラップフィルム91fの先端に引出シール(不図示)が貼り付けられており、引出シール(不図示)を摘んで引き出すことでラップフィルム91fの先端がラップロール91rから剥離し、容易にラップフィルム91fを引き出すことができる。
【0028】
ラップフィルム91fを使用する際は、ラップカートン1を片手で持ち、もう一方の手でラップフィルム91fの先端を摘み、ラップロール91rからラップフィルム91fを必要な長さ分引き出して切断刃23で切断する。このとき、ラップフィルム91fを必要な長さ分引き出した状態で蓋部20を閉じ、ラップフィルム91fを前板12と掩蓋片22とで挟み、掩蓋片22の図心を親指で押さえ、切断刃23の中央を引き出されたラップフィルム91fに食い込ませるようにラップ入りカートン100を軸線91aまわりにひねると、ラップフィルム91fがよじれることなくきれいに切断することができ、好適である。
【0029】
蓋部20を閉じる際は、脇板端辺15sに設けられた突起15pが凹部25dに落ちたときに「カチッ」というスナップ音が生じるので、蓋部20が閉じたことが分かる。ラップカートン1では、隣接辺22jaが、前辺25pの近辺で天側辺25qに対して傾斜して、折曲辺21fと前辺25pと天側辺25qとの交点に接続しているので、前辺25pの上部が接合片22jに支えられることとなって、蓋部20の掩蓋片22側の角のつぶれを抑制することができる。また、ラップカートン1では、凹部25dの幅が比較的狭めの5mmに形成されているので、蓋部20を閉じる際に突起15pが接合片22j上から凹部25dに落ちるポイントが天側辺25qに比較的近くなる。このため、下辺25s側が開き気味の側蓋片25にあって、突起15pがより脇板15に近づいた後に凹部25dに落ちるため、凹部25dに落ちる直前に突起15pに蓄えられる弾性ひずみエネルギーが比較的大きくなって、突起15pが凹部25dに落ちたときの感覚が得られやすくなる。
【0030】
切断された後に前板12と掩蓋片22との間に挟まれているラップフィルム91fは、保持部12fsに付着しているため、ラップロール91rへの巻き戻りが防止される。なお、蓋部20を閉じたときに掩蓋片22に覆われる前板12の部分全体又は適宜箇所にUVニスが塗布されている場合は、ラップフィルム91fの巻き戻り防止効果が一層高まることとなる。また、次回ラップフィルム91fを使用する際に、蓋部20を開けると、フラップ12fが前板12から浮いているので、保持部12fsに付着しているラップフィルム91fの先端も前板12から浮くこととなり、摘みやすい。
【0031】
以上の説明では、突起15pが、脇板端辺15sから3mm程度上方に延びた小片が外側に折り返されて形成された凸部として設けられているとしたが、凹部25dに嵌る形状であればその形態は問わない。
【実施例】
【0032】
以下、図3を主に参照して、隣接辺22jaが掩蓋片22に接する位置を変更した際の蓋部20の成形性について検討する。図3は、ラップカートンの接合片まわりを示す部分側面図であり、蓋部20を内側から見た状態を表している。以下の説明において、図3に示されている部分以外のラップカートン1の構成に言及しているときは、適宜図1を参照することとする。
【0033】
図3(A)は、上述したラップカートン1の接合片22jまわりを示しており、前辺25p側の隣接辺22jaの端点22jeが、折曲辺21f(図1参照)と天側辺25qとの交点(以下、「頂部22c」という。)に交わっている。頂部22cには、前辺25pも交わっている。図3(A)に示す、端点22jeが頂部22cに交わっている態様の蓋部20を、以下に述べる別の態様の蓋部20と区別するために、「蓋部20A」ということとする。蓋部20Aは、隣接辺22jaが、変換点22jcを境に角度が変わる2つの直線から形成されている。変換点22jcから前辺25pまでの最短の距離である変換点距離Wpは、8mmとなっている。変換点22jcから天側辺25qまでの最短の距離である前間隔Gp、及び、最も後辺25r寄りの隣接辺22jaの端部から天側辺25qまでの最短の距離である後間隔Grは、設計上(切り出された1枚の原紙を理想的に折り曲げ加工した場合)では、成形時の変形を見越して、前間隔Gpが6.0mm、後間隔Grが7.7mmとなっている。つまり、設計上は、凹部25dの間隔が、後辺25r側から前辺25p側に行くに連れて狭くなるようになっている。蓋部20Aは、幅44mm、高さ44mm、長さ310mmの本体部10(図1参照)に好適に連接する大きさに形成されており、上記以外の構成は図1に示すラップカートン1の蓋部20と同様である。
【0034】
図3(B)に示す蓋部20Bは、隣接辺22jaの端点22jeが、頂部22cから前辺25pに沿って2mm離れた前辺25p上に位置するように形成されている。その他の構成は、変換点距離Wp、前間隔Gp、後間隔Grを含めて、蓋部20Aと同様である。図3(C)に示す蓋部20Cは、隣接辺22jaの端点22jeが、頂部22cから天側辺25qに沿って2mm離れた天側辺25q上に位置するように形成されている。その他の構成は、変換点距離Wp、前間隔Gp、後間隔Grを含めて、蓋部20Aと同様である。蓋部20B及び蓋部20Cは、共に、端点22jeが頂部22cから3mmの範囲内にある。
【0035】
図3(D)に示す蓋部20Dは、隣接辺22jaが折れ曲がっておらず一直線に形成されている。蓋部20Dは、端点22jeが頂部22cから前辺25pに沿って6mm離れた前辺25p上に位置するように形成されており、後間隔Grが7.7mmとなっている。蓋部20Dについては、変換点22jcがないため、端点22jeと頂部22cとの距離を前間隔Gpということとする。その他の構成は、蓋部20Aと同様である。図3(E)に示す蓋部20Eは、隣接辺22jaの端点22jeが、頂部22cから天側辺25qに沿って5mm離れた天側辺25q上に位置するように形成されている。その他の構成は、変換点距離Wp、前間隔Gp、後間隔Grを含めて、蓋部20Aと同様である。蓋部20D及び蓋部20Eは、共に、端点22jeが頂部22cから3mmの範囲内になく、比較例として示したものである。
【0036】
図4(A)に、上述した各蓋部20A〜20Eを有するラップカートンについて、カートニングマシンを用いて成形し、成形後の各蓋部20A〜20Eの前間隔Gp及び後間隔Grを計測した結果(単位はmm)を示す。図4(A)に示す各数値は、各蓋部20A〜20Eを5個ずつ成形してそれぞれ計測したものを平均したものである。また、「右側」とあるのは、ラップカートン1(図1参照)を前板12に正対して見たときに右側にある側蓋片25におけるものであり、「左側」とあるのは、前板12に正対して見たときに左側にある側蓋片25におけるものである。「Gp−Gr」は、前間隔Gpの計測値から後間隔Grの計測値を差し引いたものであり、0に近いほど隣接辺22jaが天側辺25qに対して平行に近づくことになる。
【0037】
図4(B)は、図4(A)に示す結果を編集したものであり、「平均」とあるのは各蓋部20A〜20Eの左右の計測値を平均したもの、「右側−左側」とあるのは右側の計測値から左側の計測値を差し引いたものである。「右側−左側」の欄の各数値は左右の成形性のばらつきを示しており、0に近いほど左右のばらつきが小さいこととなる。図4(B)に示す「平均」の欄の「Gp」の項目に着目すると、成形後の頂部22cのつぶれ具合が分かる。接合片22jが天側辺25qに接する距離が長いほど前間隔Gpが大きく(頂部22cがつぶれにくく)、接合片22jが天側辺25qに接する距離が短くなるに連れて、また、接合片22jと天側辺25qとの接点がなく端点22jeが前辺25p上にある場合はさらに端点22jeが頂部22cから離れるほど成形後の前間隔Gpが狭く(頂部22cがつぶれやすく)なっている。なお、蓋部20C及び蓋部20Eの前間隔Gpが、それぞれ設計上の数値(6.0mm)よりも大きくなっているのは、折り曲げ加工に伴う誤差であると考えられる。
【0038】
図4(B)に示す「平均」の欄の「Gr」の項目に着目すると、設計上の数値(7.7mm)に比べて、蓋部20Dの後間隔Grは大幅に小さく、蓋部20Eの後間隔Grは大幅に大きくなっている。蓋部20Eの後間隔Grが大きいのは、接合片22jが天側辺25qと接する距離が比較的大きいため、折り曲げ加工を行った際に、天側辺25qに接する部分の接合片22jが蓋板21に押されて後間隔Grが広がってしまうものと推察される。また、図4(B)に示す「平均」の欄の「Gp−Gr」の項目に着目すると、蓋部20A〜20Cは±0.5mmの範囲に収まっているのに対し、蓋部20D、20Eは絶対値が1mm以上となっている。このことは、蓋部20D、20Eが、成形後に天側辺25qに対する隣接辺22jaの傾きが大きくなって凹部25dの形状が安定しないことを示している。さらに、図4(B)に示す「右側−左側」の欄の「Gp−Gr」の項目を見ると、蓋部20D、20Eの数値が大きくなっている。このことは、蓋部20D、20Eでは、成形後の天側辺25qに対する隣接辺22jaの平行度の左右のばらつきが大きいことを示している。
【0039】
上述の結果を考慮すると、頂部22cのつぶれ抑制及び成形の安定性の観点から、蓋部20A〜20Cの構成が適切であり、蓋部20D、20Eの構成は不適切であることが確認できた。
【符号の説明】
【0040】
1 ラップカートン
10 本体部
10h 開口面
12 前板
13 底板
14 後板
15 脇板
15p 突起
15s 脇板端辺
18 後板端辺
20 蓋部
21 蓋板
21f 折曲辺
22 掩蓋片
22t 先端辺
22j 接合片
22ja 隣接辺
25 側蓋片
25d 凹部
25p 前辺
25q 天側辺
25r 後辺
25s 下辺
91a 軸線
91f 長尺物
91r 巻回体
100 ラップ入りカートン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
長尺物が巻かれた巻回体を収容する直方体状に形成された本体部であって、前記巻回体が収容されたときに前記巻回体の軸線と平行になる4つの長方形面のうちの1つが開口した開口面に形成されると共に、前記開口面に直交する2つの前記長方形面のうちの一方を構成する後板と、前記後板に対向する前記長方形面を構成する前板と、前記4つの長方形面に直角で前記直方体状の端面を構成する脇板と、を有する本体部と;
前記後板の前記開口面と交わる端辺である後板端辺に回動可能に連接された蓋部であって、前記蓋部を閉じたときに、前記開口面を覆う天板と、前記天板に連接されて前記前板の一部を覆う掩蓋片と、前記天板に連接された側蓋片であって前記掩蓋片に連接された接合片に重なって接着されて前記脇板の一部を覆う側蓋片と、を有する蓋部とを備え;
前記脇板は、前記脇板の前記開口面と交わる端辺である脇板端辺に、前記本体部の外側に突き出た凸部が設けられており;
前記側蓋片は、前記接合片の外側に設けられることにより、前記天板と前記側蓋片との交線である天側辺と、前記接合片との間に、前記蓋部を閉じたときに前記凸部が嵌る凹部が形成されており;
前記接合片は、前記凹部に隣接する隣接辺が、前記天板と前記掩蓋片との交線である折曲辺と、前記天側辺との交点に至るように、又は前記隣接辺が、前記交点から3mmの範囲内で前記天側辺若しくは前記掩蓋片と前記側蓋片との交線である前辺に至るように構成された;
巻回体収容箱。
【請求項2】
前記凸部が嵌る部分の前記天側辺と前記接合片との距離が7mm以下に形成された;
請求項1に記載の巻回体収容箱。
【請求項3】
長尺物が巻かれた巻回体と;
請求項1に記載の巻回体収容箱とを備える;
巻回体入り収容箱。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公開番号】特開2013−63802(P2013−63802A)
【公開日】平成25年4月11日(2013.4.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−150257(P2012−150257)
【出願日】平成24年7月4日(2012.7.4)
【出願人】(000001100)株式会社クレハ (477)
【Fターム(参考)】