説明

巻線部品およびそれを備えた電源装置

【課題】第1および第2の回路の各々に用いられながらも従来よりも小型化が可能な巻線部品およびそれを備えた電源装置を提供する。
【解決手段】それぞれ独立して動作する第1および第2の回路を備えた装置に共用される巻線部品1は、第1の回路に用いられる第1の巻線N1と、第1の巻線N1が巻装され第1の巻線N1の通電時に生じる磁束が通る環状の磁路を形成する共通コア2と、共通コア2に巻装されインダクタンスの大きさおよび巻数が同一である一対の分割巻線5a,5bからなる第2の巻線5とを備える。両分割巻線5a,5bは、第1の巻線N1の通電時に共通コア2を通る磁束の変化により生じる起電力が互いに打ち消し合う逆直列に接続されている。第2の巻線5への通電時に生じる漏れ磁束φ1がある場合には、この漏れ磁束φ1によって発生するリーケージインダクタンスLeが第2の回路に用いられる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コアに巻線を巻装してなる巻線部品およびそれを備えた電源装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、電源装置として、2種類の入力に応じて2種類の出力を行うようにそれぞれ独立して動作する第1および第2の回路を備えたものがある。
【0003】
この種の電源装置は、たとえば、水が供給される放電電極とこれに対向配置された対向電極とを備え、放電電極と対向電極との間に高電圧を印加して放電させることで放電電極に供給される水にレイリー分裂を生じさせて霧化させ、ナノメータサイズの帯電微粒子水(ナノサイズミスト)を生成する静電霧化装置に用いられる。上記帯電微粒子水は、消臭、除菌により空気を浄化する機能を有する(たとえば特許文献1参照)。
【0004】
特許文献1に記載の静電霧化装置においては、放電電極に水を供給する手間を不要とするために、放電電極を冷却して空気中の水分を放電電極上に結露させる冷却手段を採用しており、通電時に放電電極を冷却するペルチェ素子を冷却手段として有している。そのため、特許文献1に記載の静電霧化装置は、水を霧化させるための高電圧を印加する第1の回路と、ペルチェ素子に電力供給するための第2の回路とが必要になる。
【0005】
ここで、第2の回路においては入力電圧の多少の変化は許容できるのに対し、第1の回路においては、高電圧を出力するから入力電圧が多少変化するだけでも出力電圧が大きく変化してしまうことがあり、電圧の安定した入力を必要とする。
【特許文献1】特開2006−122819号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、上述した種の電源装置においては、一般に第1および第2の回路の構成要素としてコアに巻線を巻装してなる巻線部品(トランス、チョークコイルなど)を用いる場合に、第1の回路と第2の回路との間での干渉の発生を避けるため、第1の回路と第2の回路とに個別に巻線部品が設けられる。このように個別に巻線部品を設けることが、電源装置全体の小型化の妨げとなっている。
【0007】
本発明は上記事由に鑑みて為されたものであって、第1および第2の回路の各々に用いられながらも従来よりも小型化が可能な巻線部品およびそれを備えた電源装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1の発明は、それぞれ独立して動作する第1および第2の回路を備えた装置に共用される巻線部品であって、第1の回路に用いられる第1の巻線と、第1の巻線が巻装され第1の巻線の通電時に生じる磁束が通る環状の磁路を形成する共通コアと、共通コアに巻装されインダクタンスの大きさおよび巻数が同一である一対の分割巻線からなる第2の巻線とを備え、両分割巻線が、第2の回路に用いられ、第1の巻線の通電時に共通コアを通る磁束の変化により生じる起電力が互いに打ち消し合う逆直列に接続されていることを特徴とする。
【0009】
この構成によれば、第1および第2の回路の各々に用いられながらも、第1および第2の両回路の巻線で1つの共通コアを共用しているから、各巻線に個別にコアを設けた従来構成に比べて巻線部品を小型化することができる。しかも、両分割巻線が、第1の巻線の通電時に共通コアを通る磁束の変化により生じる起電力が互いに打ち消し合う逆直列に接続されているので、第1の巻線への通電により共通コアを通る磁束が生じても、一対の分割巻線においては実質起電力は生じない。したがって、第1の巻線の通電時に生じる磁束が第2の巻線の動作に影響を及ぼすことはない。また、共通コアのうち第1の巻線が巻装された部位には、両分割巻線への通電時に実質磁束は生じず、第2の巻線の通電時に生じる磁束が第1の巻線の動作に影響を及ぼすこともない。ここにおいて、第2の巻線への通電時に生じる磁束がたとえば共通コアの周囲の空気中を通る漏れ磁束である場合には、この漏れ磁束によって発生するリーケージインダクタンスが第2の回路に用いられる。
【0010】
請求項2の発明は、請求項1の発明において、前記共通コアには、前記第1の巻線を1次巻線として第1の巻線と共に前記第1の回路においてトランスを構成する2次巻線が巻装されており、前記両分割巻線が、2次巻線の通電時に共通コアを通る磁束の変化により生じる起電力が互いに打ち消し合う逆直列に接続されていることを特徴とする。
【0011】
この構成によれば、両分割巻線が、2次巻線の通電時に共通コアを通る磁束の変化により生じる起電力が互いに打ち消し合う逆直列に接続されているので、共通コアのうち2次巻線が巻装された部位には、両分割巻線への通電時に実質磁束は生じず、第2の巻線の通電時に生じる磁束が2次巻線の動作に影響を及ぼすことはない。
【0012】
請求項3の発明は、請求項1の発明において、前記第1の巻線が、前記第1の回路においてコイルを構成することを特徴とする。
【0013】
この構成によれば、第1の巻線を第1の回路でコイルとして用いるので、共通コアに巻装される巻線の個数を少なく抑えることができ、巻線部品を小型化することができる。
【0014】
請求項4の発明は、請求項1ないし請求項3のいずれかの発明において、前記共通コアが、それぞれ柱状の結合片の両端部から一方向に柱状の側脚片が突出した形状の一対のU型コアを、各側脚片の先端同士を突き合わせる形で結合することで形成されるUU型のコアであって、前記各分割巻線がそれぞれ異なるU型コアに巻装されていることを特徴とする。
【0015】
この構成によれば、各分割巻線がそれぞれ異なるU型コアに巻装されているので、両分割巻線間の結合度が低くなり、各分割巻線への通電時に漏れ磁束が生じやすくなる。したがって、漏れ磁束によって発生するリーケージインダクタンスが第2の回路に用いられる場合に、第2の回路に用いられるインダクタンスを大きくすることができる。
【0016】
請求項5の発明は、請求項1ないし請求項3のいずれかの発明において、前記共通コアが連続する環状に形成された非分割型のリングコアであることを特徴とする。
【0017】
この構成によれば、共通コアとしてたとえばUU型コアを用いる場合に比べて、少ない巻数であっても第1の巻線のインダクタンスを大きくすることができるという利点がある。
【0018】
請求項6の発明は、請求項1ないし請求項3のいずれかの発明において、前記共通コアが、それぞれ柱状の結合片の両端部から一方向に柱状の側脚片が突出し且つ結合片の中央部から前記一方向に柱状の中脚片が突出した形状の一対のE型コアを、各側脚片および中脚片の先端同士を突き合わせる形で結合することで形成されるEE型のコアであって、前記各分割巻線がそれぞれ異なるE型コアに巻装されていることを特徴とする。
【0019】
この構成によれば、共通コアとしてたとえばUU型コアを用いる場合に比べて、少ない巻数であっても第1の巻線のインダクタンスを大きくすることができるという利点がある。また、各分割巻線がそれぞれ異なるE型コアに巻装されているので、両分割巻線間の結合度が低くなり、各分割巻線への通電時に漏れ磁束が生じやすくなる。したがって、漏れ磁束によって発生するリーケージインダクタンスが第2の回路に用いられる場合に、第2の回路に用いられるインダクタンスを大きくすることができる。
【0020】
請求項7の発明は、請求項1ないし請求項3のいずれかの発明において、前記共通コアが、互いに対向配置される一対の結合片と、両結合片の各一端部間をそれぞれ連結する一対の側脚片と、両結合片の中央部間を連結する中脚片とを有し、前記第1の巻線が中脚部に巻装され、前記各分割巻線がそれぞれ異なる側脚片に巻装されていることを特徴とする。
【0021】
この構成によれば、第2の巻線への通電時に生じる磁束は共通コアのうち側脚片および結合片で構成される磁路を通ることとなる。したがって、第2の巻線のインダクタンスを比較的大きく確保することができる。
【0022】
請求項8の発明は、請求項1ないし請求項7のいずれかの発明において、前記第1の巻線および前記第2の巻線が、一方の前記分割巻線と第1の巻線との間の結合度と、他方の分割巻線と第1の巻線との間の結合度とが同じになるように前記共通コアに巻装されていることを特徴とする。
【0023】
この構成によれば、第1の巻線への通電時に、各分割巻線に生じる起電力の大きさに差が生じることを確実に防止でき、第1の巻線の通電時に生じる磁束が第2の巻線の動作に影響することを確実に防止できる。
【0024】
請求項9の発明は、請求項1ないし請求項8のいずれかの発明において、前記共通コアが、前記分割巻線が巻装される巻装部が他の部位に比べて磁気抵抗を小さくするように磁路の断面積が大きく形成されていることを特徴とする。
【0025】
この構成によれば、各分割巻線への通電時に漏れ磁束が生じやすくなるので、漏れ磁束によって発生するリーケージインダクタンスが第2の回路に用いられる場合に、第2の回路に用いられるインダクタンスを大きくすることができる。
【0026】
請求項10の発明は、請求項1ないし請求項9のいずれか1項に記載の巻線部品を備え、前記第1の回路と前記第2の回路との各々が電源回路であって、自己の出力電圧を監視してフィードバック制御により出力電圧を安定させる制御手段を個別に有することを特徴とする。
【0027】
この構成によれば、第1および第2の回路の各々が制御手段を個別に有するので、第1の回路と第2の回路のいずれか一方の出力電圧が変動した場合に、この出力変動を他方の出力電圧に影響を与えることなく補正することができる。
【発明の効果】
【0028】
本発明は、第1および第2の回路の各々に用いられながらも、第1および第2の両回路の巻線で1つの共通コアを共用しているから、各巻線に個別にコアを設けた従来構成に比べて巻線部品を小型化することができる。しかも、第1の巻線の通電時に生じる磁束が、第2の巻線の動作に影響を及ぼすことはなく、また、第2の巻線の通電時に生じる磁束が、第1の巻線の動作に影響を及ぼすこともない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0029】
(実施形態1)
本実施形態の巻線部品1(図3参照)は、図2に示すように、直流電源E1からの第1の入力電圧Vin1に応じて第1の出力電圧Vout1を出力する第1の回路Cir1と、直流電源E2からの第2の入力電圧Vin2に応じて第2の出力電圧Vout2を出力する第2の回路Cir2とを備えた電源装置に用いられる。以下に、この電源装置の基本構成について図2を参照して説明する。
【0030】
第1の回路Cir1は、RCC(リンギング・チョーク・コンバータ)方式により自励発振し、1次側に第1の巻線N1が設けられたトランスTrによって入力側と出力側とが絶縁されたフライバック型の回路である。この回路Cir1は、第1の入力電圧Vin1が印加される入力端間にトランスTrの1次巻線としての第1の巻線N1とスイッチング素子Q1(FET)と抵抗R1との直列回路が接続されるとともに、トランスTrの2次側に設けられた2次巻線としての出力巻線N2にダイオードD1を介してコンデンサC1が接続された構成を有し、コンデンサC1の両端に第1の出力電圧Vout1を生じる。ここにおいて、トランスTrの2次側には2次巻線としてさらに帰還巻線N3が設けられており、帰還巻線N3は、第1の巻線N1に流れる電流の増加に伴い抵抗R2およびコンデンサC2を介してスイッチング素子Q1のゲートに電圧を印加するように接続される。
【0031】
また、入力端間には、抵抗R3とトランジスタQ2のコレクタ−エミッタとの直列回路がトランジスタQ2のエミッタを負極に接続する形で接続されており、抵抗R3とトランジスタQ2のコレクタとの接続点はスイッチング素子Q1のゲートに接続されている。トランジスタQ2のベース−エミッタ間にはコンデンサC3が接続され、トランジスタQ2のベースは、スイッチング素子Q1と抵抗R1との接続点に抵抗R4を介して接続されている。
【0032】
上述した構成の第1の回路Cir1の動作を簡単に説明する。入力端間に入力電圧Vin1が印加されると、抵抗R3を介してスイッチング素子Q1のゲートに電圧が印加され、トランスTrの第1の巻線N1に電流が流れ始める。これにより帰還巻線N3に生じる起電力によって、スイッチング素子Q1はオンし、スイッチング素子Q1がオンの期間にトランスTrの第1の巻線N1にエネルギが蓄積される。これと同時に、抵抗R4を介してコンデンサC3が充電され、コンデンサC3の両端電圧がトランジスタQ2のベース−エミッタ間に印加されることにより、スイッチング素子Q1のゲート電圧が減少する。そのため、帰還巻線N3に生じる起電力の極性が反転し、スイッチング素子Q1はオフし、スイッチング素子Q1がオフの期間にトランスTrの出力巻線N2から出力を行う。この動作を繰り返すことにより、第1の入力電圧Vin1に応じて第1の出力電圧Vout1が得られることとなる。
【0033】
また、ここでは第1の出力電圧Vout1の大きさを監視してフィードバック制御により第1の出力電圧Vout1を安定させる制御手段として、第1の出力電圧Vout1の大きさに応じてトランジスタQ2のベースに印加する電圧を制御するフィードバック回路f1が設けられている。フィードバック回路f1は、第1の出力電圧Vout1が大きくなると、トランジスタQ2のベースに印加する電圧を高くすることでスイッチング素子Q1のオンデューティを小さくし第1の出力電圧Vout1を低下させる機能を有する。
【0034】
一方、第2の回路Cir2は、チョッパ型の降圧DC−DCコンバータであって、第2の入力電圧Vin2が印加される入力端間にスイッチング素子Q3(FET)とダイオードD2との直列回路がダイオードD2のアノードを負極に接続する形で接続されている。ダイオードD2の両端間には、チョークコイルL1と平滑コンデンサC4との直列回路がチョークコイルL1をダイオードD2のカソードに接続する形で接続されている。さらに、スイッチング素子Q3のゲートにスイッチング素子Q3を繰り返しオンオフすると共にスイッチング素子Q3のオンデューティを制御するPWM制御回路Con1が接続された構成を有し、スイッチング素子Q3のオンオフに伴って平滑コンデンサC4の両端に第2の出力電圧Vout2を生じる。
【0035】
上述した構成の第2の回路Cir2の動作を簡単に説明する。入力端間に入力電圧Vin2が印加された状態でスイッチング素子Q3がオンすると、チョークコイルL1にエネルギが蓄積される。スイッチング素子Q3がオフすると、チョークコイルL1に蓄積されたエネルギが出力される。この動作を繰り返すことにより、第2の入力電圧Vin2に応じて第2の出力電圧Vout2が得られることとなる。
【0036】
また、ここでは第2の出力電圧Vout2の大きさを監視してフィードバック制御により第2の出力電圧Vout2を安定させる制御手段として、第2の出力電圧Vout2の大きさに応じてPWM制御回路Con1を制御するフィードバック回路f2が設けられている。フィードバック回路f2は、第2の出力電圧Vout2が大きくなると、PWM制御回路Con1によるスイッチング素子Q3のオンデューティを小さくし第2の出力電圧Vout2を低下させる。
【0037】
ところで、上述の電源装置では巻線部品1として、第1の回路Cir1にトランスTrが用いられており、第2の回路Cir2にチョークコイルL1が用いられている。以下では、本実施形態の巻線部品1の構成について説明する。
【0038】
第1の回路Cir1のトランスTrを構成する第1の巻線N1と出力巻線N2と帰還巻線N3とは、1つの共通コア2に対して巻装されている。本実施形態の共通コア2は、図3に示すようにそれぞれ角柱状の結合片3aの両端部から一方向に角柱状の側脚片3bが突出した形状の一対のU型コア3を、各側脚片3aの先端同士を突き合わせる形で結合することで矩形枠状に形成されるUU型のコアである。巻線部品1を構成する各巻線は、筒状に形成され共通コア2の一部が挿通される合成樹脂製のコイルボビン4の外周に巻回されることで共通コア2に巻装されることになる。
【0039】
ここにおいて、第1の巻線N1と出力巻線N2と帰還巻線N3とは、共通コア2のうち一対の側脚片3bが突き合わされて成る一辺に対して、出力巻線N2と帰還巻線N3との間に第1の巻線N1が配置されるように互いに隣接する形で巻装される。これにより、共通コア2が第1の巻線N1への通電時に生じる磁束を通す環状の磁路を形成し、第1の巻線N1と出力巻線N2および帰還巻線N3とが磁気的に結合されることになるので、出力巻線N2および帰還巻線N3には第1の巻線N1への通電に伴って起電力が生じることとなる。
【0040】
ところで、共通コア2には、上述した第1の巻線N1と出力巻線N2と帰還巻線N3との他に、互いに巻数および線径が同一である一対の分割巻線5a,5bからなる第2の巻線5が巻装されている。ここでは、一対の分割巻線5a,5bは、共通コア2のうち第1の巻線N1が巻装された一辺とは別の一対の側脚片3bが突き合わされて構成された一辺に対して、互いに離間する形で巻装されており、図1(a)に示すように、第1の巻線N1への通電により共通コア2を通る磁束が生じた際に前記磁束の変化に伴って発生する起電力が互いに打ち消し合うように、逆直列に接続されている。さらに、各分割巻線5a,5bのインダクタンスが同一となるように、共通コア2のうち少なくとも各分割巻線5a,5bが巻装された巻装部2a(図12(c)参照)は磁路の断面積が同一に設定されている。
【0041】
この構成により、第1の巻線N1への通電により共通コア2を通る磁束が生じても、一対の分割巻線5a,5bにおいては、前記磁束の変化に伴って発生する起電力が互いに打ち消す合うことによって実質起電力は生じない。したがって、第1の巻線N1の通電時に生じる磁束が、第2の巻線5の動作に影響を及ぼすことはない。
【0042】
また、上述の構成によれば、各分割巻線5a,5bに個別に通電した場合に共通コア2には同じ数の磁束が逆向きに生じることになるから、共通コア2のうち第1の巻線N1と出力巻線N2と帰還巻線N3とが巻装された部位には、直列接続された両分割巻線5a,5bへの通電時に実質磁束は生じない。したがって、第2の巻線5の通電時に生じる磁束が、第1の巻線N1と出力巻線N2と帰還巻線N3とで構成されるトランスTrの動作に影響を及ぼすことはない。
【0043】
ここにおいて、上述したように第2の巻線5への通電時に生じる磁束は共通コア2を通ることができないから、図1(b)に示すように共通コア2の周囲の空気中を通る漏れ磁束φ1となる。各分割巻線5a,5bへの通電により生じる漏れ磁束φ1はそれぞれ個別の磁路を通るから互いに打ち消し合うことはなく、この漏れ磁束φ1によって発生するリーケージインダクタンスが第2の巻線5のインダクタンスとして利用される。つまり、第2の巻線5は、図1(c)に示すように各分割巻線5a,5bのリーケージインダクタンスLeを合計したインダクタンスを持つ巻線部品1として用いることができ、ここでは、図4に示すように第2の回路CirのチョークコイルL1として第2の巻線5が用いられる。
【0044】
上述のように、第1の巻線N1が巻装されている共通コア2に対して一対の分割巻線5a,5bからなる第2の巻線5を設けることにより、第1の回路Cir1のトランスTrと第2の回路Cir2のチョークコイルL1とで、1つの共通コア2を共用することができるから、各巻線に個別にコアを設ける場合に比べて、第1および第2の回路Cir1,Cir2に用いられる巻線部品1を小型化することができる。しかも、第1の回路Cir1の巻線と第2の回路Cir2の巻線とで1つの共通コア2を共用しているにもかかわらず、第1の回路Cir1のトランスTrへの通電により生じる磁束が第2の回路Cir2のチョークコイルL1の動作に影響を及ぼすことはなく、また、第2の回路Cir2のチョークコイルL1への通電により生じる磁束が第1の回路Cir1のトランスTrの動作に影響を及ぼすこともない。
【0045】
さらに、本実施形態では、第1の巻線N1に対して両分割巻線5a,5bが共通コア2の周方向に対称に配置されるように、各分割巻線5a,5bから第1の巻線N1までの距離が同一に設定されている。これにより、一方の分割巻線5aと第1の巻線N1との間の結合度と、他方の分割巻線5bと第1の巻線N1との間の結合度とが同一になる。そのため、第1の巻線N1への通電時に、各分割巻線5a,5bに生じる起電力の大きさに差が生じることを確実に防止でき、第1の巻線N1の通電時に生じる磁束が第2の巻線5の動作に影響することを確実に防止できるという利点がある。
【0046】
また、一対の分割巻線5a,5bは別々のU型コア3に巻装されているので、両分割巻線5a,5bの間には、側脚片3bと側脚片3bとの間のギャップが介在し、このギャップによって漏れ磁束φ1が生じやすくなるので、各分割巻線5a,5bにおけるリーケージインダクタンスLeを比較的大きくすることができ、第2の巻線5のインダクタンスを大きくすることができる。
【0047】
ところで、一対の分割巻線5a,5bに関しては、上述したように巻数が同一に設定されているものの、巻数が少ない場合(たとえば巻数が各10ターンの場合)などに、共通コア2に対する各分割巻線5a,5bの巻き始め位置や巻き終わり位置、各分割巻線5a,5bの構造等の若干の違いにより、第1の巻線N1への通電時に一対の分割巻線5a,5b間で鎖交磁束数に差を生じることがある。この場合に、一対の分割巻線5a,5b間で発生する起電力の大きさに差を生じることで、第1の巻線N1の通電時に生じる磁束が第2の巻線5の動作に影響し、第2の回路Cir2の出力電圧Vout2が変動する可能性があるが、本実施形態では第1および第2の回路Cir1,Cir2のそれぞれに制御手段としてのフィードバック回路f1,f2を設けてあるので、この出力変動を補正することができる。
【0048】
また、巻線部品1の具体的構造としては上述した実施形態に限るものではなく、たとえば、図5に示すように、共通コア2を構成する一対のU型コア3の各結合片3aにそれぞれ分割巻線5a,5bを巻装することも考えられる。図5の構成では両分割巻線5a,5b間の距離が遠くなり、分割巻線5a,5bへの通電時に生じる漏れ磁束を大きくすることができるので、リーケージインダクタンスLeを大きくすることができる。
【0049】
さらにまた、上述の実施形態では、第1の回路Cir1としてトランスTrの2次側に帰還巻線N3を設けた自励式のものを例示したが、スイッチング素子Q1のオンオフ制御を行うPWM制御回路(図示せず)を設けて第1の回路Cir1を他励式としてもよく、この場合には帰還巻線N3が不要になるから、第1の回路Cir1のトランスTrは第1の巻線N1および出力巻線N2で構成される。図6に、第1の巻線N1および出力巻線N2と、第2の巻線5(一対の分割巻線5a,5b)とを共通コア2に巻装した巻線部品1の例を示す。図6では、共通コア2として連続した環状のリングコアを用いることにより、共通コア2の形成する磁路の磁気抵抗を低く抑えているので、第1の巻線N1と出力巻線N2との間の結合度が向上し第1の回路Cir1を高効率で動作させることができる。
【0050】
なお、上述の実施形態では、それぞれ個別の入力に応じて個別の出力を行う第1および第2の回路Cir1,Cir2を備えた電源装置に本発明の巻線部品1を用いた例を示したが、この例に限らず、それぞれ独立して動作する第1および第2の回路Cir1,Cir2を備えた種々の装置に、本発明の巻線部品1を適用することができる。
【0051】
(実施形態2)
本実施形態では、実施形態1の巻線部品1を、背景技術の欄で説明した静電霧化装置の電源装置に適用した例を示す。ここにおいて、第1の回路Cir1は、直流電源E1からの入力電圧Vin1を水を霧化させるための高電圧である第1の出力電圧Vout1に変換して出力し、第2の回路Cir2は、直流電源E2からの入力電圧Vin2をペルチェ素子P1に電力供給するための直流電圧である第2の出力電圧Vout2に変換して出力する。つまり、第1の回路Cir1の出力端は放電電極(図示せず)および対向電極(図示せず)にそれぞれ接続され、第2の回路Cir2の出力端間には通電により放電電極を冷却するペルチェ素子P1が負荷として接続される。
【0052】
本実施形態の電源装置は、実施形態1で説明した図4の電源装置と比較すると以下の点で相違する。すなわち、本実施形態の電源装置は、第1の回路Cir1が第1の出力電圧Vout1として高電圧を出力するために、図7に示すように、出力端間に接続されたダイオードD1の向きと出力巻線N2の向きとがそれぞれ逆向きになり、さらにダイオードD1のアノードと出力端との間に抵抗R5が挿入されている。ここで、出力巻線N2におけるダイオードD1と反対側の一端に接続された出力端には直流電源E1の負極が接続されており、直流電源E1の負極の電位を第1の回路Cir1の基準電位としている。
【0053】
また、図7では第1の回路Cir1におけるフィードバック回路f1の構成も例示している。ここに示すフィードバック回路f1は、出力端間に直列に接続された検出用抵抗R6,R7を備え、検出用抵抗R6,R7の接続点をトランジスタQ2のベースに接続した構成を有し、検出用抵抗R6,R7で分圧した出力電圧Vout1をトランジスタQ2のベースに印加することにより、出力電圧Vout1の大きさに応じてスイッチング素子Q1のオンデューティを変化させる。
【0054】
この構成によれば、第1の回路Cir1は入力電圧Vin1を昇圧して高電圧を出力し、第2の回路Cirは入力電圧Vin2を降圧して直流電圧を出力する。第2の回路Cir2の出力により、ペルチェ素子P1が放電電極を冷却して空気中の水分を放電電極上に結露させ、第1の回路Cir1の出力により、放電電極と対向電極との間に高電圧を印加して放電電極上の水分を霧化させる。なお、ここでは放電電極を低電位側に接続することで、帯電微粒子水に負の電荷を帯電させマイナスイオンを生成している。
【0055】
また、この静電霧化装置では、常にペルチェ素子P1への電力供給と同時に、放電電極と対向電極との間に高電圧を印加しており、そのため、第1および第2の回路Cir1,Cir2を常に同時に動作させている。したがって、第2の回路Cir2を停止しているにもかかわらず、第1の巻線N1への通電により生じた磁束が第2の巻線5に鎖交して第2の回路Cir2の出力電圧Vout2を生じるといった不具合を回避できる。
【0056】
次に、供給電圧が12Vを基準として±10%の範囲(10.8〜13.2V)で変動する車載用バッテリー(図示せず)を用いて静電霧化装置を動作させる例について説明する。
【0057】
第1の回路Cir1においては、昇圧比が大きく、入力電圧が多少変化するだけでも出力電圧が大きく変化してしまうことがあり、安定した入力電圧Vin1を必要とするので、第1の回路Cir1に接続する直流電源E1としては車載用バッテリーの出力を図示しない安定化回路で9Vに安定させた直流電源を用いる。このとき、第1の出力電圧Vout1を−5kVの直流電圧とする。ただし、第1の回路Cir1の出力は10μA以下とし、その電力を0.05W以下とすることで、共通コア2に生じる磁束密度を小さく抑え、第2の回路Cir2への影響を抑制している。一方、第2の回路Cir2においては入力電圧Vin2の多少の変化は許容できるので、第2の回路Cir2に接続する直流電源E2としては車載用バッテリーを直接用いる。このとき、第2の回路Cir2から出力される電力は2W程度とする。
【0058】
その他の構成および機能は実施形態1と同様である。
【0059】
なお、上述の実施形態では、静電霧化装置の電源装置に本発明の巻線部品1を用いた例を示したが、この例に限らず、それぞれ個別の入力に応じて個別の出力を行う第1および第2の回路Cir1,Cir2を備えた電源装置であれば、本発明の巻線部品1を適用することができる。
【0060】
(実施形態3)
本実施形態の巻線部品1は、図8に示すように第1および第2の回路Cir1,Cir2の両方をチョッパ型の降圧DC−DCコンバータとした電源装置に用いられるものであって、第1の巻線N1が第1の回路Cir1においてチョークコイルL2を構成する点が実施形態1の巻線部品1と相違する。
【0061】
すなわち、図8の電源装置は、第1の回路Cir1が第2の回路Cir2と同様の構成を有している。第1の回路Cir1は、第1の入力電圧Vin1が印加される入力端間にスイッチング素子Q4(FET)とダイオードD3との直列回路がダイオードD3のアノードを負極に接続する形で接続されている。ダイオードD3の両端間には、チョークコイルL2と平滑コンデンサC5との直列回路がチョークコイルL2をダイオードD3のカソードに接続する形で接続されている。さらに、スイッチング素子Q4のゲートにスイッチング素子Q4を繰り返しオンオフすると共にスイッチング素子Q4のオンデューティを制御するPWM制御回路Con2が接続された構成を有し、スイッチング素子Q4のオンオフに伴って平滑コンデンサC5の両端に第1の出力電圧Vout1を生じる。
【0062】
上述した構成の第1の回路Cir1の動作を簡単に説明する。入力端間に入力電圧Vin1が印加された状態でスイッチング素子Q4がオンすると、チョークコイルL2にエネルギが蓄積される。スイッチング素子Q4がオフすると、チョークコイルL2に蓄積されたエネルギが出力される。この動作を繰り返すことにより、第1の入力電圧Vin1に応じて第1の出力電圧Vout1が得られることとなる。
【0063】
ここでは、第1の回路Cir1に実施形態1で説明したトランスTrに代えてチョークコイルL2が用いられており、第1の巻線N1がチョークコイルL2を構成する。具体的には、図9に示すように連続した環状のリングコアからなる共通コア2に対して、第1の巻線N1と一対の分割巻線5a,5bとを巻装することで巻線部品1が構成される。図9の例では、第1の巻線N1に対して両分割巻線5a,5bが共通コア2の周方向に対称に配置されるように、第1の巻線N1の両側に各分割巻線5a,5bが設けられている。これにより、一方の分割巻線5aと第1の巻線N1との間の結合度と、他方の分割巻線5bと第1の巻線N1との間の結合度とは同じになる。
【0064】
また、UU型のコアを共通コア2として用い、図10に示すように各U型コア3の側脚片3bの継目上に第1の巻線N1を巻装し、各分割巻線5a,5bをそれぞれ個別のU型コア3の結合片3aに巻装するようにしてもよい。
【0065】
その他の構成および機能は実施形態1と同様である。
【0066】
(実施形態4)
本実施形態の巻線部品1は、図11に示すように、共通コア2として、それぞれ角柱状の結合片6aの両端部から一方向に角柱状の側脚片6bが突出し且つ結合片6aの中央部から前記一方向に角柱状の中脚片6cが突出した形状の一対のE型コア6を、各側脚片6bおよび中脚片6cの先端同士を突き合わせる形で結合することで形成されるEE型のコアを用いている点が実施形態1の巻線部品1と相違する。
【0067】
ここでは、トランスTrを構成する第1の巻線N1と出力巻線N2と帰還巻線N3、およびチョークコイルL1を構成する第2の巻線5(一対の分割巻線5a,5b)の両方が互いに突き合わされた一対の中脚片6cに巻装されている。図11に示す例では、中脚片6cの長手方向において第1の巻線N1の両側に出力巻線N2と帰還巻線N3とが配置され、さらにその両側に一対の分割巻線5a,5bが配置されている。これにより、両分割巻線5a,5bは第1の巻線N1に対して対称に配置され、一方の分割巻線5aと第1の巻線N1との間の結合度と、他方の分割巻線5bと第1の巻線N1との間の結合度とは同じになる。
【0068】
ここにおいて、共通コア2は、各E型コア6における両方の側脚片6bが、結合片6aおよび中脚片6cと共に第1の巻線N1への通電時に生じる磁束を通す磁路を形成するので、UU型の共通コア2に比べて磁路の磁気抵抗を低く抑えることができ、第1の巻線N1と出力巻線N2との間の結合度が向上し第1の回路Cir1を高効率で動作させることができる。
【0069】
本実施形態の巻線部品1では、各分割巻線5a,5bに個別に通電した場合に、図11(c)に示すように同じ数の磁束φa,φbが共通コア2における中脚片6cと結合片6aと各側脚片6bとの全域において逆向きに生じることになるから、直列接続された両分割巻線5a,5bへの通電時に共通コア2には実質磁束は生じない。なお、図11(c)では、第1の巻線N1と出力巻線N2と帰還巻線N3との図示を省略している。
【0070】
本実施形態では、共通コア2としてEE型のコアを用いた例を示したが、中脚片6cが円柱状のEER型のコアを共通コア2としてもよく、また、柱状のI型コアをE型コア6の各側脚片6bおよび中脚片6cの先端に突き合わせる形で結合することで形成されるEI型のコアを共通コア2として用いてもよい。
【0071】
その他の構成および機能は実施形態1と同様である。
【0072】
(実施形態5)
本実施形態の巻線部品1は、図12に示すように共通コア2において分割巻線5a,5bを巻装した巻装部2aが共通コア2における他の部位に比べて磁気抵抗を小さくするように断面積が大きく形成されている点が実施形態1の巻線部品1と相違する。
【0073】
すなわち、本実施形態では、図12(c)に示すように各U型コア3の一方の側脚片3bの一部に他の部位よりも太い巻装部2aをそれぞれ形成した共通コア2を用い、各巻装部2aにそれぞれ分割巻線5a,5bを巻装する。このように巻装部2aを太くしたことにより、分割巻線5a,5bへの通電時に各分割巻線5a,5bで生じる磁束数が増え、また、側脚片3bの長手方向における巻装部2aの端面から漏れ磁束φ1が生じやすくなるので、結果的に、第2の巻線5のリーケージインダクタンスLeを大きくすることができる。
【0074】
また、図13に示すように、コイルボビン4に高透磁率材料からなる部分コア7を設け、コイルボビン4を共通コア2に装着した状態で部分コア7を共通コア2の一部として利用することにより、共通コア2のうち巻装部2aとなる部位の断面積を部分コア7の分だけ広げるようにしてもよい。この構成では、共通コア2の形状に変更を加えることなく、上述したように第2の巻線5のリーケージインダクタンスLeを大きくできるという効果を奏する。
【0075】
さらに、図14に示すように、コイルボビン4の外側を通して部分コア7の両端間を連結することにより部分コア7と共に分割巻線5a,5bの一部を包囲する追加コア8を付加してもよく、この場合には、分割巻線5a,5bへの通電時に追加コア8を通して漏れ磁束φ1が一層生じやすくなるので、結果的に、第2の巻線5のリーケージインダクタンスLeをより大きくすることができる。
【0076】
その他の構成および機能は実施形態1と同様である。
【0077】
(実施形態6)
本実施形態の巻線部品1は、図15に示すように、第1の巻線N1と出力巻線N2と帰還巻線N3とが互いに突き合わされた一対の中脚片6cに巻装され、第2の巻線5となる各分割巻線5a,5bが一方のE型コア6の各側脚片6bにそれぞれ巻装されている点が実施形態4の巻線部品1と相違する。その他の構成および機能は、共通コア2としてEE型のコアを用いた実施形態4の巻線部品1と同様である。
【0078】
ここに、一対の分割巻線5a,5bは、第1の巻線N1への通電により共通コア2を通る磁束が生じた際に前記磁束の変化に伴って発生する起電力が互いに打ち消し合うように、逆直列に接続されている。この構成により、第1の巻線N1への通電により共通コア2を通る磁束が生じても、一対の分割巻線5a,5bにおいては、前記磁束の変化に伴って発生する起電力が互いに打ち消す合うことによって実質起電力は生じない。したがって、第1の巻線N1の通電時に生じる磁束が、第2の巻線5の動作に影響を及ぼすことはない。
【0079】
また、上述の構成によれば、各分割巻線5a,5bに個別に通電した場合に、図15(c)に示すように共通コア2のうち中脚片6cには同じ数の磁束が逆向きに生じることになるから、第1の巻線N1と出力巻線N2と帰還巻線N3とが巻装された部位には、直列接続された両分割巻線5a,5bへの通電時に実質磁束は生じない。したがって、第2の巻線5の通電時に生じる磁束が、第1の巻線N1と出力巻線N2と帰還巻線N3とで構成されるトランスTrの動作に影響を及ぼすことはない。なお、図15(c)では、第1の巻線N1と出力巻線N2と帰還巻線N3との図示を省略している。
【0080】
ここにおいて、上述したように第2の巻線5への通電時に生じる磁束φa,φbは中脚片6cを通ることができないから、図15(c)に示すように共通コア2のうち側脚片6bおよび結合片6aで構成される磁路を通ることとなる。各分割巻線5a,5bへの通電により生じる磁束φa,φbは、同じ向きの磁束であるから互いに打ち消し合うことはなく、互いに強め合うこととなる。そのため、本実施形態の構成によれば、図11(c)に示す実施形態4の構成に比べて、第2の巻線5のインダクタンスを大きく確保することができる。なお、実施形態4と同じインダクタンスとする場合には、各分割巻線5a,5bの線径を太くすることができ、第2の巻線5での銅損を低減し第2の回路Cir2の効率を向上させることができる。
【0081】
すなわち、実施形態4の構成では、図4に示すように各分割巻線5a,5bのリーケージインダクタンスLeを第2の巻線5のインダクタンスとして第2の回路Cir2に用いているのに対して、本実施形態では、図16に示すように各分割巻線5a,5bのリーケージインダクタンスLeと、共通コア2の中脚部6cを除く部位を磁路とする磁束φa,φbによって発生する各分割巻線5a,5bのインダクタンスとを合計したものを第2の巻線5のインダクタンスとして第2の回路Cir2に用いている。なお、各分割巻線5a,5bのインダクタンスの大きさはリーケージインダクタンスLeに比べると大きくなっているので、本実施形態の巻線部品1は大きなインダクタンスを必要とする回路に特に有用である。
【0082】
ところで、巻線部品1を構成する各巻線を高圧側と低圧側とで分類すると、出力巻線N2が高圧側となり、第1の巻線N1と帰還巻線N3と両分割巻線5a,5bとが低圧側となる。本実施形態では、中脚片6cの長手方向において第1の巻線N1、帰還巻線N3、出力巻線N2の順に並設されているので、たとえば一方のE型コア6に高圧側の出力巻線N2を巻装し、他方のE型コア6に低圧側の第1の巻線N1と帰還巻線N3と両分割巻線5a,5bとを巻装することにより高圧側と低圧側とを分離することができる。なお、出力巻線N2の両端間には高電圧が発生するから、図17に示すように、中脚片6cの長手方向においてコイルボビン4で絶縁された複数個(ここでは3個)の小巻線9を直列接続して出力巻線N2とすることで、出力巻線N2の両端間の絶縁距離を大きく確保することが望ましい。
【図面の簡単な説明】
【0083】
【図1】本発明の実施形態1の巻線部品を示し、(a)は第2の巻線の概略構成図、(b)は正面図、(c)は第2の巻線の等価回路図である。
【図2】同上の電源装置の基本構成を示す概略回路図である。
【図3】同上の巻線部品を示し、(a)は上面図、(b)は正面図である。
【図4】同上の電源装置を示す概略回路図である。
【図5】同上の巻線部品の他の例を示し、(a)は上面図、(b)は正面図である。
【図6】同上の巻線部品のさらに他の例を示し、(a)は上面図、(b)は正面図である。
【図7】本発明の実施形態2の電源装置を示す概略回路図である。
【図8】本発明の実施形態3の電源装置を示す概略回路図である。
【図9】同上の巻線部品を示し、(a)は上面図、(b)は正面図である。
【図10】同上の巻線部品の他の例を示す正面図である。
【図11】本発明の実施形態4の巻線部品を示し、(a)は上面図、(b)は正面図、(c)は第2の巻線で生じる磁束の説明図である。
【図12】本発明の実施形態5の巻線部品を示し、(a)は上面図、(b)は正面図、(c)は共通コアの正面図である。
【図13】同上の巻線部品の他の例を示す要部の断面図である。
【図14】同上の巻線部品のさらに他の例を示し、(a)は正面図、(b)は要部の断面図である。
【図15】本発明の実施形態6の巻線部品を示し、(a)は上面図、(b)は正面図、(c)は第2の巻線で生じる磁束の説明図である。
【図16】同上の電源装置を示す概略回路図である。
【図17】同上の巻線部品の他の例を示す正面図である。
【符号の説明】
【0084】
1 巻線部品
2 共通コア
2a 巻装部
3 U型コア
3a 結合片
3b 側脚片
5 第2の巻線
5a,5b 分割巻線
6 E型コア
6a 結合片
6b 側脚片
6c 中脚片
Cir1 第1の回路
Cir2 第2の回路
f1,f2 フィードバック回路(制御手段)
L2 チョークコイル
Le リーケージインダクタンス
N1 第1の巻線
N2 出力巻線(2次巻線)
N3 帰還巻線(2次巻線)
Tr トランス
φ1 漏れ磁束
φa,φb 磁束


【特許請求の範囲】
【請求項1】
それぞれ独立して動作する第1および第2の回路を備えた装置に共用される巻線部品であって、第1の回路に用いられる第1の巻線と、第1の巻線が巻装され第1の巻線の通電時に生じる磁束が通る環状の磁路を形成する共通コアと、共通コアに巻装されインダクタンスの大きさおよび巻数が同一である一対の分割巻線からなる第2の巻線とを備え、両分割巻線は、第2の回路に用いられ、第1の巻線の通電時に共通コアを通る磁束の変化により生じる起電力が互いに打ち消し合う逆直列に接続されていることを特徴とする巻線部品。
【請求項2】
前記共通コアには、前記第1の巻線を1次巻線として第1の巻線と共に前記第1の回路においてトランスを構成する2次巻線が巻装されており、前記両分割巻線は、2次巻線の通電時に共通コアを通る磁束の変化により生じる起電力が互いに打ち消し合う逆直列に接続されていることを特徴とする請求項1記載の巻線部品。
【請求項3】
前記第1の巻線は、前記第1の回路においてコイルを構成することを特徴とする請求項1記載の巻線部品。
【請求項4】
前記共通コアは、それぞれ柱状の結合片の両端部から一方向に柱状の側脚片が突出した形状の一対のU型コアを、各側脚片の先端同士を突き合わせる形で結合することで形成されるUU型のコアであって、前記各分割巻線はそれぞれ異なるU型コアに巻装されていることを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載の巻線部品。
【請求項5】
前記共通コアは連続する環状に形成された非分割型のリングコアであることを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載の巻線部品。
【請求項6】
前記共通コアは、それぞれ柱状の結合片の両端部から一方向に柱状の側脚片が突出し且つ結合片の中央部から前記一方向に柱状の中脚片が突出した形状の一対のE型コアを、各側脚片および中脚片の先端同士を突き合わせる形で結合することで形成されるEE型のコアであって、前記各分割巻線はそれぞれ異なるE型コアに巻装されていることを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載の巻線部品。
【請求項7】
前記共通コアは、互いに対向配置される一対の結合片と、両結合片の各一端部間をそれぞれ連結する一対の側脚片と、両結合片の中央部間を連結する中脚片とを有し、前記第1の巻線は中脚部に巻装され、前記各分割巻線はそれぞれ異なる側脚片に巻装されていることを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載の巻線部品。
【請求項8】
前記第1の巻線および前記第2の巻線は、一方の前記分割巻線と第1の巻線との間の結合度と、他方の分割巻線と第1の巻線との間の結合度とが同じになるように前記共通コアに巻装されていることを特徴とする請求項1ないし請求項7のいずれか1項に記載の巻線部品。
【請求項9】
前記共通コアは、前記分割巻線が巻装される巻装部が他の部位に比べて磁気抵抗を小さくするように磁路の断面積が大きく形成されていることを特徴とする請求項1ないし請求項8のいずれか1項に記載の巻線部品。
【請求項10】
請求項1ないし請求項9のいずれか1項に記載の巻線部品を備え、前記第1の回路と前記第2の回路との各々が電源回路であって、自己の出力電圧を監視してフィードバック制御により出力電圧を安定させる制御手段を個別に有することを特徴とする電源装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公開番号】特開2008−172982(P2008−172982A)
【公開日】平成20年7月24日(2008.7.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−6240(P2007−6240)
【出願日】平成19年1月15日(2007.1.15)
【出願人】(000005832)松下電工株式会社 (17,916)
【Fターム(参考)】