説明

布帛、布帛を備える装置、および布帛の製造方法

【課題】金属のコーティングが施されたスレッドまたは中実金属スレッドを織組織に挿入しなくとも導電性が確保されている布帛、当該布帛を備える装置、および当該布帛の製造方法を提供する。
【解決手段】本発明の布帛は、少なくとも外表面がプラスチックで構成されたスレッド2から織編されており、かつ、布帛1の少なくとも一方の表面7に金属のコーティングが部分的に施されていることを特徴とする。前記コーティングは、導電路構造体12として形成されていてもよい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、少なくとも外表面がプラスチックで構成されたスレッド(糸)から織編された布帛に関する。さらに、本発明は、この種の布帛を少なくとも1つ備える装置、様々な用途でのこのような布帛の使用、および布帛の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
今日、大規模スケールでのスクリーン印刷において実用されている布帛の大半が、PETやPAなどのプラスチック製のスレッドから織編されたものである。スクリーン印刷用の既知の布帛は、取扱い時(特に、製造時)またはスクリーン印刷用のフレーム(版枠)に取り付ける際(特に、接着剤で取り付ける際)に、さらには、実際のスクリーン印刷過程中に、静電気で帯電する。静電気の帯電は、特に、布帛をローラから巻き出す際、スクリーン印刷用の布帛を接着剤で取り付ける過程中、スクリーン印刷用の布帛にコーティングを施す過程中、および印刷過程中にスキージがスクリーン印刷用の布帛と摩擦接触することにより、強くなる。実際問題として、静電気は深刻な問題を招く。例えば、スクリーン印刷用の布帛が帯電すると、布帛は被印刷物や作業者に引き寄せられて「付着」してしまい、取扱いが困難になる。また、スクリーン印刷用の布帛が帯電すると、周囲の環境からほこりやちりの粒子が吸い寄せられて感光乳剤の塗布時に混入してしまい、その結果、露光が上手くいかなかったり、メッシュが目詰まりしてしまい、スクリーンの性能が低下するという問題がある。さらに、ほこりやちりの粒子は、色素の最適な流動を邪魔したり、色素と共に被印刷物に定着したりすることによって、印刷の出来を大幅に低下させてしまう場合もある。また、静電気が、色素の流動や発色性、特に、メタリック色(金属色)や、電荷に吸い寄せられ易い色素の流動や発色性を妨げてしまうことも分かっている。
【0003】
なお、当該技術分野において、篩い分け機械の篩い分け用布帛としてプラスチック製の布帛を使用することは知られている。摩耗によって生じたプラスチック製の篩い分け用布帛の亀裂または破損は、特に、小麦粉をふるいにかけた際に、粗い粒子がスクリーンを通過して製品に混入することのないように、早い段階で検出しなければならない。
【0004】
特許文献1には、スクリーンの摩耗を非接触・非破壊で測定する方法が提案されている。この方法では、篩い分け用布帛を照射し、反射成分を測定する。測定値は、スクリーンの残りの厚さの関数である。限界値に達すると、適切な警告信号がトリガされる。
【0005】
特許文献2には、プラスチック製のスレッドからなる既知の篩い分け用布帛が記載されており、この布帛には、カーボン繊維の導電性のスレッドが追加で一方向に織り込まれている。その導電性を測定することにより、信頼性の高い欠陥モニタリングが可能となる。
【0006】
特許文献3および特許文献4には、プラスチック製の布帛に対して完全に金属のコーティングを施すことによって強度および剛性を向上させる既知の構成が記載されている。特許文献5には、スクリーンに対して絶縁性のスレッドを接着結合させる構成が記載されている。特許文献6には、導通モニタリング用のスレッドを布帛ウェブに組み込む構成が記載されているが、前述の特許文献2には、この種のスレッドが組み込まれた布帛は堅くなるので、破損の可能性が高まると記載されている。
【0007】
特許文献7には、スクリーン印刷用のテンプレートとして使用される布帛が記載されている。この布帛には、まず、蒸着によってコーティングの層が適用された後、さらなるコーティングが機械的に適用される。この方法により、印刷の出来が向上する。
【0008】
特許文献8には、衣類品用の布帛、およびこの種の布帛から製作された衣類品が記載されている。この布帛は、それぞれ絶縁性材料によって取り囲まれた2種類の導電性のスレッドを有し、これらのスレッドは、布帛の電気特性を監視する中央ユニットに接続されている。この手段により、布帛のいかなる損傷も検出することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】西独国特許出願公開第1648368号明細書
【特許文献2】独国特許出願公開第4324066号明細書
【特許文献3】西独国実用新案出願公開第6751332号明細書
【特許文献4】西独国特許出願公開第2326306号明細書
【特許文献5】西独国特許第3227020号明細書
【特許文献6】西独国特許出願公開第2443548号明細書
【特許文献7】独国特許出願公開第19738872号明細書
【特許文献8】独国特許出願公開第10338029号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
以上の先行技術を開始点としたうえで、本発明の目的は、これら先行技術に取って代わる布帛を提案することである。本発明にかかる布帛は数多くの用途に適している。最も好適な特徴は、金属のコーティングが施されたスレッドまたは中実金属スレッド(全体が金属からなるスレッド)を織組織に挿入しなくとも、布帛に導電性を付与できる点である。さらなる目的は、この種の布帛を備える装置、およびこの種の布帛の製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的は、汎用的な型の布帛において、その少なくとも一方の表面に金属のコーティングを部分的に施すことで達成される。好ましくは、前記金属のコーティングの外側には、導電体として、さらなるコーティングが施されてはいない。
【0012】
上記装置に関する目的は、本発明の思想に基づいて製作された少なくとも1つの布帛の使用によって達成することができる。
【0013】
上記製造方法に関する目的は、以下の工程によって達成される:
少なくとも外表面がプラスチックで構成されたスレッドから織編された布帛を用意する工程、および
前記布帛の少なくとも一方の表面に金属のコーティングを部分的に施す工程。
【0014】
本発明の好ましい他の実施形態は、従属請求項に記載されている。本発明の枠組みには、明細書および/または特許請求の範囲および/または図面に開示された少なくとも2つの構成のあらゆる組合せが包含される。冗長な記載を避けるために、方法に関して開示された構成は、装置に関する構成としても開示されたものとし、かつ、装置に関する請求項に記載できるものとする。同じく、装置に関して開示された構成は、方法に関する構成としても開示されたものとし、かつ、方法に関する請求項に記載できるものとする。
【0015】
本発明の基礎をなす思想は、プラスチック製のスレッド、好ましくは中実材料(全体が同一の素材からなる材料)、例えば、PET製スレッドまたはPA製スレッドから製作された布帛を用意する織編工程の後、導電性のコーティングを部分的にのみ施す、つまり、表面全体ではなくて部分的に施す、というものである。言い換えると、布帛、好ましくはプラスチックのみで構成された布帛にコーティングを施すことによって、少なくとも1つの導電体(平形導体)を得ることができる。このような方法により、布帛基材に、プリント回路、特に、フレキシブルプリント回路を形成することができ、そのような布帛は、幅広い様々な目的に利用可能である。さらに言い換えると、スレッド自体に対してではなく、布帛に対して金属のコーティングを施すことにより、少なくとも1つの導電体、好ましくは迷路状の抵抗または網目状の導電体を得ることができる。原則的には、金属製の外表面を有する少なくとも1つの導体を布帛に挿入してもよいが、好ましい一実施形態では、布帛は、外表面がプラスチックで構成されたスレッドのみで構成されており、さらに好ましくは、スレッドは、中実プラスチック材料(全体がプラスチック素材からなる材料)で構成されている。本発明の思想に基づいて製作された布帛をスクリーン印刷用の布帛として使用する場合、コーティングによって形成された導体は、静電気を放電するのに利用することができ、つまり、当該スクリーン印刷用の布帛を接地するのに利用することができるので、このスクリーン印刷用の布帛が被印刷物に「付着」するのを防ぐことができる。また、この方法により、ほこりやちりの粒子が吸い寄せられるのを防ぐことができる。最も好ましくは、スクリーン印刷用の布帛は、部分的に金属製のフレーム(版枠)、特に、部分的にアルミニウム製のフレームを介して間接的に接地され、その際に、スクリーン印刷用の布帛と接地ケーブルとを直接接触させてもよい。
【0016】
しかしながら、本発明の思想に基づいて製作された布帛は、上述のスクリーン印刷用途に限定されない。すなわち、この布帛を、例えば、篩い分け機械の篩い分け用布帛として使用したり、少なくとも1つの導体(好ましくは単一の導体)、特に、コーティングによって迷路状の抵抗として形成された導体を、監視装置(特に、導通試験ユニット)と電気的に接続することにより、篩い分け布帛の損傷の有無を監視したりすることも可能である。
【0017】
他にも、本発明にかかる布帛のさらなる用途として、センサ構成品、電極、電気回路、反射層、光半透明層、導電性接着層、加熱要素、照明装置構成品、プリント回路基板、特に、フレキシブルプリント回路基板、アンテナ、特に、RFID用のアンテナ、太陽電池構成品、燃料電池構成品、プラズマディスプレイ構成品、液晶ディスプレイ構成品、OLED構成品、フレキシブルディスプレイ構成品、または有機薄膜トランジスタ構成品などが考えられる。これらの他にもさらなる用途が考えられる。
【0018】
コーティングの構成としては、様々な選択肢がある。例えば、コーティングを放電手段として機能させたい場合、原則的には、スクリーン印刷用の布帛の一方の表面にコーティングを設けるだけで十分である。誤配置のリスクを回避するために、両側にコーティングを施すことも考えられる。最も好適な構成は、1つの側にのみ導電路を設ける構成であり、これにより、布帛の両側の導電路間において短絡回路が形成されるのを防ぐことができる。
【0019】
原則的に、部分的に施される金属のコーティングは、単一種の金属の層で構成されたものでもよい。変形例として、少なくとも1つの層が金属層として形成された、好ましくは全ての層が金属層として形成された、多層構造(ハイブリッドコーティング)であってもよい。特に好ましくは、多層のコーティングにおける最外層が、耐薬品性材料、特に、クロムから構成されており、これは、布帛をスクリーン印刷用途に使用する場合になおいっそう好ましい。この場合、最外層は、侵食性溶剤、および/またはコーティングの剥離、および/または色素の剥離、および/または色素、および/または洗浄剤に対して耐性を有するように形成されているのが望ましい。さらに好ましくは、最外層の下に、安価な金属の層、特に、アルミニウム、アルミニウム系合金、銅、または銅系合金の層が設けられており、なおいっそう好ましくは、このような層が基層として設けられている。必要に応じて、少なくとも1つの層、または2つの層間の移行部が、グラジエント層として形成されていてもよい。
【0020】
冒頭で述べたように、好ましくは、部分的に施される金属のコーティングは、導電路構造体として形成されており、互いに別体の、互いに接続した、または互いに接続可能な、少なくとも1つの導電路を形成している。特に好ましくは、複雑な用途にも利用できるように、分岐した導電路が設けられている。また、導電路は、布帛の損傷の有無を監視できるように、少なくとも表面の実質的に全体にわたって曲がりくねった迷路状に形成されていてもよい。
【0021】
布帛の損傷の監視機能を実行するために、好ましくは、前記少なくとも1つの導電路、より好ましくは単一の導電路が、監視装置と接触するようにされている。最も好ましくは、前記少なくとも1つの導電路は、電気部品および/または電子部品、好ましくは、布帛に設けられた電気部品および/または電子部品と、例えばリフロー半田を介した接続によって、接触するように形成されている。
【0022】
好ましくは、コーティングは、銀、銅、アルミニウム、ニッケル、モリブデン、金、チタン、およびクロムのうちの少なくとも1種の金属を含むか、またはこれらのうちの1種の金属で構成される。また、コーティングは、これらのうちの少なくとも1種の金属の合金を含んでいてもよいし、これらのうちの少なくとも1種の金属を有する合金で構成されていてもよい。原則的には、他種の金属が使用されてもよい。
【0023】
冒頭で述べたように、布帛は、中実金属で構成されたスレッド、および/または金属の芯部もしくは金属のコーティング(鞘部)を有するスレッドを含むものであってもよい。しかしながら、最も好ましくは、布帛は、ポリマー材、特に、PETまたはPAで構成されたスレッドのみから織編された布帛である。
【0024】
特に好ましくは、コーティングの厚さは、その時々の用途に応じて最低限必要な厚さに選択される。布帛をスクリーン印刷用の布帛として使用する場合、コーティングの厚さを最小限に抑えることにより、印刷の出来に悪影響が生じるのを防ぐことができる。コーティングが電荷の放電目的に使用される場合、好ましくは、単層または多層のコーティングの厚さは約10nmから約1,000nmの範囲で選択される。より好ましくは、コーティングの厚さは約20nmから約500nmの範囲で選択される。また、好ましくは、コーティングが施される前のプラスチック製のスレッドの直径は、約10μmから約1,000μmの範囲で選択され、より好ましくは、約24μmから約200μmの範囲で選択される。
【0025】
好ましくは、布帛は、平織物または綾織物である。また、好ましくは、布帛は、モノフィラメント布帛の形態、より好ましくは、モノフィラメントのみから織編された布帛の形態を取る。
【0026】
既述したように、本発明にかかる布帛は、スクリーン印刷用布帛の用途のみに適しているではなく、例えば、フィルター用布帛または篩い分け用布帛としても使用可能である。また、好ましくは、このような布帛は、布帛の損傷の有無、特に、布帛が破損または亀裂するのを監視するために、監視装置と接続されている。好ましくは、監視装置は、導電性のコーティング、好ましくは、線状に適用されたコーティング、特に、迷路状に適用されたコーティングの導電率を利用する。監視装置の構成に関する特に好ましい選択肢は、当該監視装置を、損傷が検出された場合に、装置、特に、印刷装置、クランプ装置(挟持装置)、篩い分け機械などに、例えば、警告信号または制御信号(特に、停止信号)を出力する、既知の導通試験ユニット、より好ましくは、抵抗測定装置をベースとする導通試験ユニットとして形成することである。
【0027】
監視装置を導通試験ユニットとして形成した場合、好ましくは、当該監視装置は、パターンの形態、より好ましくは線状の導体の形態で適用されたコーティングにおける2つの互いに離間した端部と接続される。
【0028】
本発明は、さらに、本発明の思想に基づいて製作された布帛を少なくとも1つ備える装置に関する。装置は、例えば、スクリーン印刷装置、または篩い分け装置(篩い分け機械)の形態を取る。装置は、センサとして形成されてもよいし、センサを含むものであってもよいし、あるいは、ケーブルとして形成されてもよいし、ケーブルを含むものであってもよいし、加熱装置、照明装置、プリント回路基板、特に、フレキシブルプリント回路基板、太陽電池、燃料電池、ディスプレイ、特に、フレキシブルディスプレイ、OLED、トランジスタ、電子部品などに形成されてもよい。
【0029】
本発明は、さらに、上述の構成を有する布帛の製造方法に関する。この製造方法は、一般的に、以下の工程によって特徴付けられる:
少なくとも外表面がプラスチックで構成されたスレッドから織編された布帛を用意する工程、および
前記布帛の少なくとも一方の表面に金属のコーティングを部分的に施す工程。
【0030】
コーティングが設けられていない両面、好ましくは、少なくとも導電性のコーティングが設けられていない両面に対し、金属のコーティングを部分的に施す構成、すなわち、少なくとも1つの導電路を作製する構成は、極めて幅広い様々な方法によって実現することができる。すなわち、コーティングを特定の領域のみに施してもよいし、あるいは、まず表面全体にコーティングを適用してから、金属のコーティングを設けたくない領域のみに対し、当該金属のコーティングの除去工程を実行するようにしてもよい。
【0031】
金属のコーティングを部分的に施す第1の選択肢として、まず布帛にマスク(マスクコーティング)を設ける構成がある。言い換えると、まず、導電性のコーティングが布帛に付着しないようにする保護層、特に、保護ラッカー、例えば、ポリマーを部分的に設ける。すなわち、まず布帛を、このような保護層で部分的に覆う。その後、金属のコーティングを、好ましくは表面全体に、特に、スパッタリング、蒸着、または電解めっき法によって適用する金属被覆工程を実行してから、前記保護層を、当該保護層の上に適用された金属と共に、除去、好ましくは、洗浄する。
【0032】
マスク、すなわち、マスキング材(好ましくは、少なくとも最初は流動状態である)を適用する方法に関しては、様々な選択肢がある。すなわち、マスクは、例えば、スクリーン印刷またはインクジェット印刷で適用されてもよく、実際に、好ましくは、金属製のコーティングを付着させたくない領域のみに適用してもよい。つまり、マスクは、布帛に対して部分的に設けられる。
【0033】
好ましくは、マスキング材は水溶性である。これにより、マスクを、当該マスクの上に位置する金属と共に、蒸気(steam)および/または水(water)、好ましくは、蒸気のジェット噴射および/または水のジェット噴射によって除去することができる。好ましくは、布帛は、その後の工程において乾燥され、特に、通風によって、特に、熱風の通風によって乾燥される。
【0034】
金属のコーティングを部分的に施す他の選択肢として、まず布帛に、好ましくは布帛の表面全体に、例えば、スパッタリング、電解めっき、化学めっき(すなわち、電流を全く使用しないめっき法)、または蒸着によって、金属のコーティングを適用してから、金属のコーティングを設けたくない領域に相当する、部分的なコーティングのみを除去する構成が考えられる。エッチング剤、例えば酸、特に、ペースト、溶液、またはインクの形態のエッチング剤などを、例えば、スクリーン印刷法またはインクジェット印刷法で適用してもよい。
【0035】
上述の化学的コーティングにより、銀塩を減らすことができる。
【0036】
エッチング剤は、その時々に用いるエッチング剤に特有の反応時間、特に、約5分間から約30分間、より特には、約10分間から約20分間の後、エッチング剤で適用されたコーティング、好ましくは化学的に改質されたコーティング、特に、酸化されたコーティングと共に、例えば、水および/または蒸気によって、特に、水のジェット噴射および/または蒸気のジェット噴射によって除去され、さらに好ましくは、布帛は乾燥され、電気回路が設けられた状態になる。
【0037】
金属のコーティングを部分的に施すさらなる他の選択肢として、まず布帛に、好ましくは布帛の表面全体に、少なくとも1種の金属を含むコーティングを適用した後、当該コーティングを、高エネルギー照射、特に、レーザー照射によって部分的に除去する構成が考えられる。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】金属のコーティングを部分的に施す方法において、最終的にコーティングが残らない布帛の領域に対してマスキング材を印刷することによってマスクを適用する第1工程を示す図である。
【図2】マスクで被覆された布帛の乾燥工程後に、その表面全体に金属被覆を適用する様子を示す図である。
【図3】金属のコーティングによって被覆されたマスキングを除去する、さらなる工程を示す図である。
【図4】金属のコーティングが部分的に施された布帛と、金属のコーティングが施されてスクリーン印刷用の布帛として形成された布帛とを示す図であって、後者は、スクリーン印刷用のフレームと組み合わされることで、スクリーン印刷装置またはスクリーン印刷構造体を形成しており、当該印刷装置または印刷構造体は、前記フレームを介して間接的に接地されているか、布帛の導電路を介して直接接地されていることを示す図である。
【図5】金属のコーティングを部分的に施す他の方法において、表面全体に金属のコーティングが適用された布帛に対して、エッチング剤を部分的に塗布する工程を示す図である。
【図6】図5の方法において、エッチング剤を、化学的に改質された金属と共に除去するさらなる工程を示す図である。
【図7】図5および図6の方法によって得られた、金属のコーティングが部分的に施された布帛ウェブを示す図である。
【図8】製造方法の一変形例において、コーティングが表面全体に適用された布帛をレーザービームで部分的に処理することにより、金属のコーティングを部分的に除去し、金属のコーティングを部分的に残す工程を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0039】
本発明のさらなる利点、特徴および詳細は、好ましい実施形態についての以下の説明および図面から明らかになる。
【0040】
図面において、同一の構成要素同士、および同一の機能を有する構成要素同士は、互いに同じ符号によって特定する。
【0041】
図1に、金属のコーティングが部分的に施された布帛1(前述の図4)の製造方法の一実施形態における、一工程を示す。
【0042】
この方法では、まず、コーティングの施されていない布帛1’が布帛ウェブとして用意される。このコーティングの施されていない布帛1’は、少なくとも外表面がポリマー材(プラスチック)から構成されたスレッド2(横糸および縦糸)を含む。好ましくは、布帛1’は、そのようなスレッド2からなる。
【0043】
図1には、マスク4、すなわち、マスキング材を、最終製品(図4)においてコーティングが残らない布帛の領域、または最終製品において少なくとも金属のコーティングが施されていない領域に、スクリーン印刷法(変形例として、例えば、インクジェット印刷法)によって、布帛ウェブの長手方向を横切る印刷方向3に適用(図1ではスキージを用いて適用)する様子が示されている。
【0044】
この後の工程において、マスク4は、例えば通風および/または乾燥オーブンによって、乾燥されてから、図2に示すような、金属被覆工程、すなわち、金属のコーティング5を矢印6のように表面全体に適用する工程が行われる。金属の層の適用(本実施形態では、一方の表面7のみに適用する)は、例えば、蒸着やスパッタリングによって行われてもよい。表面全体にコーティングが適用された布帛1’’が得られる。
【0045】
上記金属被覆工程の後には、図3に示す洗浄工程が行われる。本工程では、マスク4と、その上に位置する金属のコーティングとが、水のジェット噴射および/または蒸気のジェット噴射8によってプラスチック製の布帛から除去される。
【0046】
その後に、図示しない乾燥工程が行われて、図4の上半分に示すような、コーティングが部分的に施された布帛が得られる。部分的に施される金属のコーティング9は、例えば、半田、特に、リフロー半田によって、電気的な接触、特に、少なくとも1つの電子部品との間で接触可能な、導電路構造体として形成されてもよい。
【0047】
図4の下半分には、コーティングが部分的に施され、特に、導電路12が設けられた布帛と、さらに、金属製、特に、アルミニウム製のスクリーン印刷用のフレーム11とを備えた、スクリーン印刷構造体10が示されている。導電路12(すなわち、導電路構造体12)は、スクリーン印刷用のフレーム11と電気的接触し、当該フレーム11を介して間接的に接地(符号13を参照)されている。変形例として、またはこの構成に加えて、導電路構造体12は、直接接地されてもよい。
【0048】
図5に、製造方法の一変形例における製造工程を示す。図5の工程に先立って、コーティングの施されていない布帛の表面全体を金属のコーティングで覆う金属被覆工程がまず行われる。その後の図5に示す工程では、コーティングが表面全体に適用された布帛1’’に対し、エッチング剤14が、スクリーン印刷、または変形例として、例えば、インクジェット印刷によって、布帛ウェブの長手方向を横切る印刷方向3に適用される。エッチング剤は、金属のコーティングの一部の領域を化学的に変性させ、その後の図6に示す工程において、エッチング剤14と、溶解した金属とが、蒸気のジェット噴射および/または水のジェット噴射によって洗い流されることにより、布帛ウェブの形態の、図7に示すような、コーティングが部分的に施された布帛1が得られる。布帛1は、コーティングが施されていない領域15(図4)および導電路構造体12を特徴とする。領域15は、エッチング剤14が適用された領域に相当する。布帛1を洗浄する図6に示す工程の後に、乾燥工程が行われる。
【0049】
図8に、製造方法のさらなる変形例における一工程を示す。図8に示す処理工程に先立って、コーティングの施されていない布帛の表面全体を金属のコーティングで覆う被覆工程がまず行われる。
【0050】
図8には、金属のコーティングを部分的に除去することによって導電路構造体12を得る様子が示されている。この除去は、高エネルギー照射16(本実施形態では、レーザー照射)によって行われる。
【符号の説明】
【0051】
1,1’ 布帛
2 スレッド
7 布帛の少なくとも一方の表面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも外表面がプラスチックで構成されたスレッド(2)から織編された布帛(1)において、
布帛(1)の少なくとも一方の表面(7)に金属のコーティングが部分的に施されていることを特徴とする、布帛。
【請求項2】
請求項1において、前記コーティング(9)が、導電路構造体(12)として形成されていることを特徴とする、布帛。
【請求項3】
請求項2において、前記導電路構造体(12)が、分岐しており、および/または迷路状に形成されていることを特徴とする、布帛。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか一項において、少なくとも1つの電気部品および/または電子部品と接触しており、好ましくは、当該布帛(1)に設けられた少なくとも1つの電気部品および/または電子部品と接触しており、特に、前記導電路構造体(12)の損傷の有無を監視する監視装置と接触していることを特徴とする、布帛。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか一項において、前記コーティング(9)が、銀、銅、アルミニウム、ニッケル、金、チタン、およびクロムのうちの少なくとも1種の金属を含み、および/またはこれらのうちの少なくとも1種の金属から形成され;あるいは、これらのうちの少なくとも1種の金属を有する合金を少なくとも含み、および/またはこの種の合金から形成されていることを特徴とする、布帛。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか一項において、前記スレッド(2)が、ポリマー材のみで構成されていることを特徴とする、布帛。
【請求項7】
請求項1から6のいずれか一項において、前記コーティング(5)の厚さが、約10nmから約1,000nmであり、好ましくは約20nmから約500nmであることを特徴とする、布帛。
【請求項8】
請求項1から7のいずれか一項において、前記スレッド(2)の直径が、約10μmから約1,000μmの範囲、好ましくは約24μmから約200μmの範囲から選択されることを特徴とする、布帛。
【請求項9】
請求項1から8のいずれか一項において、平織物または綾織物として形成されていることを特徴とする、布帛。
【請求項10】
請求項1から9のいずれか一項において、スクリーン印刷用の布帛、フィルター用布帛、または篩い分け用布帛として形成されていることを特徴とする、布帛。
【請求項11】
請求項1から10のいずれか一項に記載の布帛(1)を少なくとも1つ備える装置。
【請求項12】
請求項11において、スクリーン印刷装置、篩い分け装置、センサ、ケーブル、加熱装置、照明装置、プリント回路基板(特に、フレキシブルプリント回路基板)、太陽電池、燃料電池、ディスプレイ(特に、フレキシブルディスプレイ)、OLED、トランジスタ、または電子部品として形成されていることを特徴とする、装置。
【請求項13】
請求項1から10のいずれか一項に記載の布帛(1)の使用であって、電磁シールド、スクリーン、スクリーン印刷用の布帛、センサ構成品、電極構成品、電気回路構成品、反射層、光半透明層、導電性接着層、加熱要素、照明装置構成品、プリント回路基板(特に、フレキシブルプリント回路基板)、アンテナ(特に、RFID用のアンテナ)、太陽電池構成品、燃料電池構成品、プラズマディスプレイ構成品、液晶ディスプレイ構成品、OLED構成品、フレキシブルディスプレイ構成品、または有機薄膜トランジスタ構成品としての使用。
【請求項14】
請求項1から10のいずれか一項に記載の布帛(1)を製造する方法において、
少なくとも外表面がプラスチックで構成されたスレッド(2)から形成された布帛(1’)を用意する工程と、
前記布帛(1’)の少なくとも一方の表面(7)に金属のコーティング(9)を部分的に施す工程と、
を含むことを特徴とする、布帛の製造方法。
【請求項15】
請求項14において、前記金属のコーティング(9)を部分的に施すにあたって、まず、マスク(4)を前記布帛(1’)に適用し、前記マスク(4)が適用された布帛(1’)にコーティングを、特にスパッタリングまたは蒸着によって適用し、前記マスク(4)とその上に位置する前記コーティング(5)とを除去することを特徴とする、布帛の製造方法。
【請求項16】
請求項15において、前記マスク(4)を、スクリーン印刷またはインクジェット印刷によって適用することを特徴とする、布帛の製造方法。
【請求項17】
請求項15または16において、前記マスク(4)が水溶性であることを特徴とする、布帛の製造方法。
【請求項18】
請求項15から17のいずれか一項において、前記マスク(4)を、蒸気および/または水、好ましくは高圧の蒸気のジェット噴射および/または高圧の水のジェット噴射によって除去することを特徴とする、布帛の製造方法。
【請求項19】
請求項14において、前記金属のコーティング(9)を部分的に施すにあたって、まず、前記布帛(1’)に、好ましくは前記布帛(1’)の表面全体に、金属のコーティングを、特に、スパッタリング、電解めっき、化学めっき、または蒸着によって適用することを特徴とする、布帛の製造方法。
【請求項20】
請求項19において、エッチング剤(14)、好ましくは酸、特に、ペーストおよび/または溶液および/またはインクを、前記コーティングに対して適用すること、好ましくは、エッチング剤(14)をスクリーン印刷またはインクジェット印刷によって適用すること、特に好ましくは、エッチング剤(14)を後でコーティングがなくなる領域のみに適用することを特徴とする、布帛の製造方法。
【請求項21】
請求項20において、前記エッチング剤(14)を、好ましくは反応時間の後、特に、約5分間から約30分間の反応時間の後、所望により酸化された前記領域の前記コーティングと共に、好ましくは水および/または蒸気によって、除去することを特徴とする、布帛の製造方法。
【請求項22】
請求項19において、前記コーティング(5)を、高エネルギー照射、特に、レーザー照射によって、部分的に除去することを特徴とする、布帛の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公表番号】特表2012−508831(P2012−508831A)
【公表日】平成24年4月12日(2012.4.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−535912(P2011−535912)
【出願日】平成21年11月11日(2009.11.11)
【国際出願番号】PCT/EP2009/008038
【国際公開番号】WO2010/054805
【国際公開日】平成22年5月20日(2010.5.20)
【出願人】(502369414)ゼファー・アクチエンゲゼルシャフト (7)
【氏名又は名称原語表記】SEFAR AG
【Fターム(参考)】