説明

帯域制御システム、帯域制限値予約装置及び帯域制御装置

【課題】本発明は、広域イーサネット(登録商標)サービスにおいて時刻予約による帯域変更をコスト効率よくまた円滑に運用するために、多数のトラヒックシェーパの帯域制限値変更を指定時刻に変更できる同時性を精度よく確保できる技術、つまりユーザや拠点数が増加しても同時刻に設定変更が可能となる技術を提供することを目的とする。
【解決手段】本発明は、スイッチSW1、SW2、SW4のトラヒックシェーパが、スイッチSW1、SW2、SW4における通信での帯域制御を行い、時間帯帯域変更オペレーションシステムBOが、ユーザの要求に応じて、スイッチSW1、SW2、SW4のトラヒックシェーパでの帯域制限値及びその設定時刻を、スイッチSW1、SW2、SW4のトラヒックシェーパに対して予約する帯域制御システムである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、予約により指定時刻に帯域制限値を変更するための帯域制御システム、帯域制限値予約装置及び帯域制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
高品質なネットワークを提供する通信サービスとして、帯域を保証するVPN(Virtual Private Network)サービスが挙げられる。VPNサービスはユーザが要求する帯域を保証し、その帯域の大きさに応じた料金が定められる。ユーザは対価としてサービスを提供する通信事業者に一定期間毎に料金を支払う。社内情報システムのセキュリティ向上等、高信頼性を求める企業は、このVPNサービスを用いて遠隔拠点間を接続する企業内通信ネットワークを構成している。
【0003】
一方、社内情報システムの高度化に伴い、企業内通信ネットワークでやりとりされる情報や蓄積される情報が飛躍的に増加している。また、情報システムや通信ネットワークの帯域を効率的に利用するために、システムのバッチ処理、バックアップ作業等を夜間帯に実施するなど、ネットワークのトラヒック特性が時間帯に応じて大きく変化する。特に、情報システムが扱う情報量が増大するに伴い、バックアップ作業やバッチ処理など特定の時間帯内で処理すべき情報も大量になり、通信ネットワークに一時的な大きな帯域が必要となっている。
【0004】
従来、前述した特定の期間においてトラヒックが大きく変動してもネットワークの運用を円滑に行うために、VPNにて保証すべき帯域を発生しうる最大トラヒックに設定する必要があった。この場合、ユーザは最大トラヒックが発生しない時間帯においても最大トラヒックで契約した帯域の使用料を支払う必要があり、コスト高の要因になる。これに対し、必要な都度保証する帯域を増減させることにより、通信ネットワークの使用料を増減させることによって最適化する仕組みが提案されている。
【0005】
たとえば、帯域を制御する専用の装置を配置し、通信サービスを利用するユーザの帯域変更要求に対して即時に帯域を変更、または予約した時間帯に、指定された帯域へ変更する方法が提案されている。これは、ユーザからの帯域変更要求が帯域制御サービス管理装置によって受け付けられ、帯域制御サービス管理装置が即時または指定された時間にネットワーク管理部へ変更指示を行うことで実現される。
【0006】
また、実際の帯域の変更の手続きには、RSVPなどの帯域確保技術を用いることが提案されている。また、特許文献1、非特許文献1にも、ATM伝送技術を用いた同様の帯域変更を実施する装置の提案がなされている。特許文献1、非特許文献1では予約ベース帯域変更サービス専用オペレーションセンタにおいて、バーチャルパス(VP)の空き帯域を管理し、ユーザからの帯域変更要求を受け付けて、変更設定指示をATM専用線オペレーションシステムへ依頼し、ATM専用線網の当該ユーザのVPにおけるUPCパラメータを変更することにより帯域変更を実現する。
【0007】
また、オペレーションシステムが行う帯域変更手順をより高速に、確実に行うために、予約処理と実行処理を分離し、それぞれの分散処理化を行う構成も提案されている。分散処理化を行うために、予約登録データベースを分割し、受付補助テーブルを用いてデータベース更新時における排他制御を行い、網状態の確認を頻繁に行う機能を実現している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2000−69039号公報
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】松永治彦、船木光明、名城肇、佐橋直樹、“予約ベースVP帯域変更サービスにおける予約管理方式の検討”、B−7−133、電子情報通信学会ソサイエティ大会、1998年.
【非特許文献2】“IEEE Std 802.3:Carrier sense multiple access with Collision Detection (CSMA/CD) Access Method and Physical Layer Specifications”, LAN/MAN Standards Committee of the IEEE Computer Society.
【非特許文献3】阿留多伎明良編著、“広域イーサネット(登録商標)技術概論”、電気情報通信学会、ISBN:978−4−88552−211−6.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
ここで、イーサネット(登録商標)伝送方式をベースとした広域イーサネット(登録商標)サービスに、前述した従来技術を適用する場合を想定する。広域イーサネット(登録商標)サービスは、ユーザの端末より送出されるイーサネット(登録商標)形式のフレームを送信先の端末へ伝送し、多くは複数の拠点を面的に収容するマルチポイント型の通信網を提供するサービスである。広域イーサネット(登録商標)サービスは、ユーザの拠点と接続するスイッチ、あるいはフレームを中継するスイッチで構成される。各スイッチは、受信したイーサネット(登録商標)形式のフレームで指示される宛先MACアドレスを参照して転送するポートを選択し、中継を行う。
【0011】
図1に広域イーサネット(登録商標)サービスのネットワーク構成を示す。通信事業者網DNはイーサネット(登録商標)形式のフレームを中継するスイッチSW1、SW2、SW3、SW4で構成される。端末T1、T2、T3は同一ユーザの拠点に配置される端末である。端末T1、T2、T3やスイッチSW1、SW2、SW3、SW4を接続するポートには、10Mbpsの10BASE−T、100Mbpsの100BASE−TXなど非特許文献2に規定された物理インタフェースを用いることが一般的である。
【0012】
また、それぞれのポートにおいて、非特許文献3の2章の第29−30頁にあるようなトラヒックシェーパ、トラヒックポリサ等に代表される帯域制限機能を用いることで、インタフェース速度以下の中間速度を提供するなどきめ細かい品目を提供することができる。それらトラヒックシェーパは、加入者拠点と網との接続点となるポートと、各網との接続境界となるスイッチのポートにおいて、入力方向、出力方向に設定される。
【0013】
例えば、図1においては、スイッチSW1、SW2、SW4それぞれの、端末T1、T2、T3と接続するポートに2つの三角形でトラヒックシェーパを示している。端末T1の拠点において20Mbpsの一つのアクセス回線として加入契約を行えば、スイッチSW1の端末と接続する物理インタフェースに100BASE−TXを用い、端末T1と接続するポートにおいて入出力方向に20Mbpsでトラヒックシェーピングを行うようオペレーションシステムOPより監視制御用ネットワークCNを介して設定する。これらの回線設定は端末T2と接続されるスイッチSW2のポート、端末T3と接続されるスイッチSW4のポートにおいても同様に行われている。
【0014】
したがって、ユーザの要望によって帯域変更を行う際は、ユーザより指定された回線に関わるすべてのトラヒックシェーパの帯域制限値をオペレーションシステムOPからの指示により変更する。さらに、ユーザが時間帯を指定して帯域変更を要望した場合は、対象となるすべての又は一部の回線のトラヒックシェーパの帯域制限値を同時刻に変更する必要がある。ここで、帯域変更を行う手段として従来技術を前述した広域イーサネット(登録商標)サービスに適用するには以下に挙げる課題を解決する必要がある。
【0015】
指定時刻に同時に帯域変更を実施するためにはオペレーションシステムOPの処理性能により大きなスケーラビリティが要求される。前述した従来技術、特許文献1、非特許文献1は、変更指示を1か所のオペレーションシステムOPから実施する構成である。収容するユーザ数や、変更対象となる回線のトラヒックシェーパ数が増えても、同時刻に帯域制限値を変更実施できるオペレーションシステムOPの性能を確保する必要がある。
【0016】
しかし、特許文献1では、予約管理を行うタイマ部や記憶部を帯域制御サービス管理装置に配備して集中管理、制御を行い、指定された時刻に帯域制御サービス管理装置から変更指示を発行する構成である。したがって、前述したように多数のトラヒックシェーパを同時刻に変更するような場合は、帯域制御サービス管理装置に高い処理性能が求められる。また、非特許文献1では、ATM伝送技術をベースとした変更手順が明記されている。ATM伝送技術はポイント−ポイント接続のコネクション型通信であり、帯域制限機能は網内の入り口に配備されるUPCパラメータを変更する。したがって、1つのコネクションに対し2か所のUPCパラメータを変更するだけでよい。しかし、広域イーサネット(登録商標)サービスは、1ユーザが複数の拠点を結んだマルチポイント接続構成となっており、帯域制限機能を用いる箇所が複数に及ぶ。ユーザの拠点が増加すれば、ある時刻に設定変更する必要のあるトラヒックシェーパの数はユーザの拠点数に比例して増加する。その結果、帯域変更を指示するオペレーションシステムOPに要求される処理性能が特許文献1、非特許文献1に比べてさらに増大することになる。
【0017】
そこで、前記課題を解決するために、本発明は、広域イーサネット(登録商標)サービスにおいて時刻予約による帯域変更をコスト効率よくまた円滑に運用するために、多数のトラヒックシェーパの帯域制限値変更を指定時刻に変更できる同時性を精度よく確保できる技術、つまりユーザや拠点数が増加しても同時刻に設定変更が可能となる技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0018】
上記目的を達成するために、帯域制御装置が、通信端末における通信での帯域制御を行い、帯域制限値予約装置が、ユーザの要求に応じて、帯域制御装置での帯域制限値及びその設定時刻を帯域制御装置に対して予約することとした。
【0019】
具体的には、本発明は、データを送信する送信端末から前記データを中継する送信側中継装置と、前記データを受信する受信端末へ前記データを中継する受信側中継装置と、前記送信側中継装置での中継における帯域制御を行なう送信側帯域制御装置と、前記受信側中継装置での中継における帯域制御を行なう受信側帯域制御装置と、ユーザの要求に応じて、前記送信側帯域制御装置での帯域制限値及びその設定時刻を前記送信側帯域制御装置に対して予約し、前記受信側帯域制御装置での帯域制限値及びその設定時刻を前記受信側帯域制御装置に対して予約する帯域制限値予約装置と、を備えることを特徴とする帯域制御システムである。
【0020】
この構成によれば、多数の帯域制御装置の帯域制限値変更を指定時刻に変更できる同時性を精度よく確保できる技術、つまりユーザや拠点数が増加しても同時刻に設定変更が可能となる技術を提供することができる。
【0021】
また、本発明は、前記送信側帯域制御装置及び前記受信側帯域制御装置は、同一のクロックに基づいて同期して動作することを特徴とする帯域制御システムである。
【0022】
この構成によれば、多数の帯域制御装置の帯域制限値変更を指定時刻に変更できる同時性をより精度よく確保できる技術、つまりユーザや拠点数が増加しても同時刻に設定変更がより可能となる技術を提供することができる。
【0023】
また、本発明は、前記送信端末から前記受信端末への通信における帯域制限値が増加されるにあたり、前記受信側帯域制御装置での帯域制限値が増加された後に、前記送信側帯域制御装置での帯域制限値が増加されるように、前記帯域制限値予約装置は、前記送信側帯域制御装置での帯域制限値及びその設定時刻を前記送信側帯域制御装置に対して予約し、前記受信側帯域制御装置での帯域制限値及びその設定時刻を前記受信側帯域制御装置に対して予約することを特徴とする帯域制御システムである。
【0024】
この構成によれば、送信端末から受信端末への通信における帯域制限値を増加させるにあたり、送信側中継装置においてフレームが通過したが受信側中継装置においてフレームが破棄されたという、不適切なフレーム廃棄を防止することができる。
【0025】
また、本発明は、前記送信端末から前記受信端末への通信における帯域制限値が減少されるにあたり、前記送信側帯域制御装置での帯域制限値が減少された後に、前記受信側帯域制御装置での帯域制限値が減少されるように、前記帯域制限値予約装置は、前記送信側帯域制御装置での帯域制限値及びその設定時刻を前記送信側帯域制御装置に対して予約し、前記受信側帯域制御装置での帯域制限値及びその設定時刻を前記受信側帯域制御装置に対して予約することを特徴とする帯域制御システムである。
【0026】
この構成によれば、送信端末から受信端末への通信における帯域制限値を減少させるにあたり、送信側中継装置においてフレームが通過したが受信側中継装置においてフレームが破棄されたという、不適切なフレーム廃棄を防止することができる。
【0027】
また、本発明は、データを送信する送信端末から前記データを受信する受信端末への通信における帯域制限値及びその設定時刻について、ユーザの要求を受け付けるユーザ要求受付部と、前記ユーザの要求に応じて、前記送信端末から前記データを中継する送信側中継装置での中継における帯域制御を行なう送信側帯域制御装置に対して、前記送信側帯域制御装置での帯域制限値及びその設定時刻を予約し、前記受信端末へ前記データを中継する受信側中継装置での中継における帯域制御を行なう受信側帯域制御装置に対して、前記受信側帯域制御装置での帯域制限値及びその設定時刻を予約する帯域制限値予約部と、を備えることを特徴とする帯域制限値予約装置である。
【0028】
この構成によれば、多数の帯域制御装置の帯域制限値変更を指定時刻に変更できる同時性を精度よく確保できる技術、つまりユーザや拠点数が増加しても同時刻に設定変更が可能となる技術を提供することができる。
【0029】
また、本発明は、前記送信端末から前記受信端末への通信における帯域制限値が増加されるにあたり、前記受信側帯域制御装置での帯域制限値が増加された後に、前記送信側帯域制御装置での帯域制限値が増加されるように、前記帯域制限値予約部は、前記送信側帯域制御装置での帯域制限値及びその設定時刻を前記送信側帯域制御装置に対して予約し、前記受信側帯域制御装置での帯域制限値及びその設定時刻を前記受信側帯域制御装置に対して予約することを特徴とする帯域制限値予約装置である。
【0030】
この構成によれば、送信端末から受信端末への通信における帯域制限値を増加させるにあたり、送信側中継装置においてフレームが通過したが受信側中継装置においてフレームが破棄されたという、不適切なフレーム廃棄を防止することができる。
【0031】
また、本発明は、前記送信端末から前記受信端末への通信における帯域制限値が減少されるにあたり、前記送信側帯域制御装置での帯域制限値が減少された後に、前記受信側帯域制御装置での帯域制限値が減少されるように、前記帯域制限値予約部は、前記送信側帯域制御装置での帯域制限値及びその設定時刻を前記送信側帯域制御装置に対して予約し、前記受信側帯域制御装置での帯域制限値及びその設定時刻を前記受信側帯域制御装置に対して予約することを特徴とする帯域制御値予約装置である。
【0032】
この構成によれば、送信端末から受信端末への通信における帯域制限値を減少させるにあたり、送信側中継装置においてフレームが通過したが受信側中継装置においてフレームが破棄されたという、不適切なフレーム廃棄を防止することができる。
【0033】
また、本発明は、通信端末での通信における帯域制御を行なう帯域制御部と、前記帯域制御部での帯域制限値及びその設定時刻を記憶している帯域制限値記憶部と、を備えることを特徴とする帯域制御装置である。
【0034】
この構成によれば、多数の帯域制御装置の帯域制限値変更を指定時刻に変更できる同時性を精度よく確保できる技術、つまりユーザや拠点数が増加しても同時刻に設定変更が可能となる技術を提供することができる。
【0035】
また、本発明は、前記帯域制御部は、他の帯域制御装置の帯域制御部と、同一のクロックに基づいて同期して動作することを特徴とする帯域制御装置である。
【0036】
この構成によれば、多数の帯域制御装置の帯域制限値変更を指定時刻に変更できる同時性をより精度よく確保できる技術、つまりユーザや拠点数が増加しても同時刻に設定変更がより可能となる技術を提供することができる。
【発明の効果】
【0037】
本発明は、広域イーサネット(登録商標)サービスにおいて時刻予約による帯域変更をコスト効率よくまた円滑に運用するために、多数のトラヒックシェーパの帯域制限値変更を指定時刻に変更できる同時性を精度よく確保できる技術、つまりユーザや拠点数が増加しても同時刻に設定変更が可能となる技術を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】広域イーサネット(登録商標)サービスのネットワーク構成を示す図である。
【図2】本実施形態における全体構成を示す図である。
【図3】時間帯帯域変更オペレーションシステム及び網管理オペレーションシステムの構成を示す図である。
【図4】スイッチの構成を示す図である。
【図5】本実施形態における帯域の変更概要を示す図である。
【図6】本実施形態における変更予約テーブルを示す図である。
【図7】本実施形態における網管理テーブルを示す図である。
【図8】本実施形態における予約管理テーブルを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0039】
添付の図面を参照して本発明の実施形態を説明する。以下に説明する実施形態は本発明の実施の例であり、本発明は以下の実施形態に制限されるものではない。なお、本明細書及び図面において符号が同じ構成要素は、相互に同一のものを示すものとする。
【0040】
図2に本発明の実施形態における全体構成を示す。ユーザの端末T1、T2、T3間をスイッチSW1、SW2、SW3、SW4で接続する広域イーサネット(登録商標)サービスを想定する。指定された時間帯に帯域変更を行うサービス全体を監視、制御する時間帯帯域変更オペレーションシステムBO、各ユーザのネットワーク構成や経路、設定された帯域制限値など網構成を管理する網管理オペレーションシステムNOを設置し、ユーザ間が行う主信号フレームが通過する通信事業者網DNとは物理的もしくは論理的に分離した経路を有する監視制御用ネットワークCNを介して接続する。
【0041】
本実施形態においては時間帯帯域変更オペレーションシステムBOと網管理オペレーションシステムNOは監視制御用ネットワークCを介して接続されているが、これら2つをまとめて時間帯帯域変更オペレーションシステムBOとしてもよい。ここで、スイッチSW1、SW2、SW4が帯域制御機能を有する中継装置に対応し、時間帯帯域変更オペレーションシステムBOが帯域制限値予約装置に対応する。
【0042】
また、時刻同期を行うための基準時刻を有し、時刻問い合わせに応答するマスタクロック装置MCを設置し、これも監視制御用ネットワークCNに接続する。監視制御用ネットワークCNはユーザの通信が疎通する主信号通信路とは別に、スイッチSW1、SW2、SW3、SW4、時間帯帯域変更オペレーションシステムBO、網管理オペレーションシステムNO及びマスタクロック装置MCを接続するためのネットワークである。ネットワーク監視やスイッチSW1、SW2、SW3、SW4への設定情報、スイッチSW1、SW2、SW3、SW4の状態を収集したデータやクロック情報など監視制御に必要な情報をこの監視制御用ネットワークCNで流通させる。
【0043】
マスタクロック装置MCは、スイッチSW1、SW2、SW3、SW4、時間帯帯域変更オペレーションシステムBO及び網管理オペレーションシステムNOの時刻同期を取るために、基準となる時刻を保持している。スイッチSW1、SW2、SW3、SW4、時間帯帯域変更オペレーションシステムBO及び網管理オペレーションシステムNOは一定期間内にマスタクロック装置MCへ時刻情報を問い合わせする。マスタクロック装置MCは現在時刻情報を問合わせ元へ返信し、スイッチSW1、SW2、SW3、SW4、時間帯帯域変更オペレーションシステムBO及び網管理オペレーションシステムNOは時刻精度を保つよう自装置の時計を修正する。
【0044】
マスタクロック装置MCの配備は、スイッチSW1、SW2、SW3、SW4、時間帯帯域変更オペレーションシステムBO及び網管理オペレーションシステムNOの正確な時刻同期をとるために用いられる手段の一つである。したがって、スイッチSW1、SW2、SW3、SW4、時間帯帯域変更オペレーションシステムBO及び網管理オペレーションシステムNOが独立して正確な時刻情報を保持可能な場合は、このマスタクロック装置MCは必須構成要素ではない。
【0045】
図3に時間帯帯域変更オペレーションシステム及び網管理オペレーションシステムの構成を示す。図3(a)では、時間帯帯域変更オペレーションシステムBOと網管理オペレーションシステムNOは監視制御用ネットワークCNを介して接続されており、図3(b)では、これら2つをまとめて時間帯帯域変更オペレーションシステムBOとしている。
【0046】
時間帯帯域変更オペレーションシステムBOは、受付処理部1、実行可否判定部2、予約管理テーブル3及び実行指示部4から構成される。受付処理部1は、ユーザ予約端末UTからの帯域予約、変更を受付け、受付結果をユーザ端末UTへ返信する。実行可否判定部2は、受付処理部1からの指示に応じて、帯域の予約可否を判断し、判断結果を受付処理部1に返す。予約管理テーブル3は、ユーザ毎、設定されたスイッチSW1、SW2、SW4毎に変更前、変更後の帯域、予約内容を一意に示すID等、予約設定状況を管理する。実行指示部4は、予約情報を通信事業者網DN内のスイッチSW1、SW2、SW4それぞれへ設定する。ここで、受付処理部1がユーザ要求受付部に対応し、実行指示部4が帯域制限値予約部に対応する。
【0047】
網管理オペレーションシステムNOは、各ユーザの網構成情報を管理し現行化し、網管理テーブル5及び状態監視部6から構成される。網管理テーブル5は、通信事業者網DNの構成や物理帯域、すべてのユーザの帯域使用状況、障害情報や工事状況など通信事業者網DNの現在情報を格納する。状態監視部6は、通信事業者網DN内のスイッチSW1、SW2、SW3、SW4へ監視制御用ネットワークCNを介して情報収集し、その結果を網管理テーブル5に反映させて最新状況に維持、管理する。
【0048】
網管理オペレーションシステムNOは通常広域イーサネット(登録商標)を提供する際に通信事業者が設備情報や工事情報を管理するオペレーションシステムを想定している。仮に網管理オペレーションシステムNOが存在しない場合は、時間帯帯域変更オペレーションシステムBOと網管理オペレーションシステムNOは前述したとおり一つのオペレーションシステムとして一体化して配備してもよい。その場合は監視制御用ネットワークCNのインタフェースが一つになり、図3(b)に示す構成となる。
【0049】
また、図4にスイッチの構成を示す。スイッチSWは、スイッチ部11、ポート12−1、12−2、12−3、12−4、変更予約テーブル13、時刻同期制御部14、時計15、タイマ部16、設定実行部17及び監視制御部18から構成される。
【0050】
スイッチ部11は、方路別に接続するポート12−1、12−2、12−3、12−4を有する。スイッチ部11は、イーサネット(登録商標)フレーム伝送方式に従い、ポート12−1、12−2、12−3、12−4から入力されたイーサネット(登録商標)フレームのあて先MACアドレスを判定し、対応する出力ポート12−1、12−2、12−3、12−4へ転送する。中継する経路によっては、1つの物理ポートに複数のユーザを多重する。このため、ポート12−1、12−2、12−3、12−4には複数のトラヒックシェーパが配置される。トラヒックシェーパはポート12−1、12−2、12−3、12−4の入出力方向に帯域制限機能を有し、定められた帯域制限値にトラヒックを制限する。トラヒックシェーパの実現方法は、たとえば非特許文献3の2章の第30頁にあるような構成が挙げられるが、本出願においては定められた帯域制限値にトラヒックを制限する帯域制限機能が必要要件であり、その実現方法に依存しない。ここで、トラヒックシェーパが帯域制御部に対応する。
【0051】
変更予約テーブル13は、自スイッチSWのトラヒックシェーピング機能の帯域制限機能をどの時刻にどの値に変更するべきかを格納している。時刻同期制御部14は、マスタクロック装置MCへ監視制御用ネットワークCNを介して現在時刻の問い合わせを行い、マスタクロック装置MCからの時刻情報と自スイッチSWの時計15を比較して、マスタクロック装置MCへ時刻を同期させる。時計15は、自スイッチSWの動作基準時刻を保持する。タイマ部16は、自スイッチSWの時計15の現在時刻が変更予約テーブル13の変更時刻かどうかを判定し、帯域制限値の変更動作開始を指示する。設定実行部17は、タイマ部16の指示によって起動し、変更予約テーブル13に記載されたトラヒックシェーパに対して帯域制限値の変更の指示を行い、監視制御部18に設定結果を通知する。監視制御部18は、監視制御用ネットワークCNを介し、時間帯帯域変更オペレーションシステムBOからの予約要求に応じて変更予約テーブル13を書き換え、マスタクロック装置MCからの応答を時刻同期制御部14へ伝達し、設定実行部17からの設定結果を時間帯帯域変更オペレーションシステムBOへ送信する。ここで、変更予約テーブル13が帯域制限値記憶部に対応する。
【0052】
次にユーザから帯域変更予約を受け付ける場合の動作を示す。図5に本実施形態における帯域の変更概要を示す。端末T1の拠点は5Mbpsの回線を契約することで、端末T1がスイッチSW1のポート12−1に接続され、ポート12−1の入出力トラヒックシェーパにて5Mbpsの帯域制限値が設定されている。また、同様に端末T2は5Mbpsの回線としてスイッチSW2のポート12−2、端末T3は5Mbpsの回線としてスイッチSW4のポート12−3に接続され、それぞれのポートの入出力トラヒックシェーパにて5Mbpsの帯域制限値が設定されている。これを、ユーザの情報システムに格納されているデータをバックアップする際に発生する一時的なトラヒックを処理するために、5時にすべての回線の契約帯域を20Mbpsへ増やし、7時に5Mbpsへ戻す場合を想定する。
【0053】
通常、スイッチSW1、SW2、SW3、SW4のそれぞれが内蔵している時計15は、監視制御用ネットワークCNに接続されているマスタクロック装置MCから情報を取得し、常にマスタクロック装置MCと時刻同期がとれているものとする。具体的には、図4における時刻同期制御部14が一定時間ごとに自スイッチSW内の監視制御部18及び監視制御用ネットワークCNを介してマスタクロック装置MCに時刻を問い合わせする。マスタクロック装置MCは保持している時刻を当該スイッチSWに返し、時刻同期制御部14は当該スイッチSWが受信した応答情報を元に自スイッチSWの時計15を修正する。監視制御用ネットワークCNを用いたクロックの同期については公知の技術があり、例えばNTP(RFC1305)、SNTP(RFC2030)等が挙げられる。本実施形態においては、すべてのスイッチSWがマスタクロック装置MCと時刻同期がとれていることが重要であり、別の同期方法やクロック同期用の網を別途構築する方法でもよい。
【0054】
次に、あるユーザ(ユーザIDを第1とする)からの予約時の動作を説明する。ユーザはインターネットまたは閉域網INを介してユーザ予約端末UTから時間帯帯域変更オペレーションシステムBOへ、変更したい契約回線、変更後帯域と変更時刻を申し込む。図5の本実施形態においては、ユーザ予約端末UTを用い、インターネットまたは閉域網INを介して時間帯帯域変更オペレーションシステムBOの受付処理部1と接続する形態を示したが、ユーザが受付処理部1へ予約情報を投入することが本質であり、投入方法によらない。例えば、通信事業者の管理者を介して申し込み、管理者が時間帯帯域変更オペレーションシステムBOの受付処理部1へ予約情報を投入する方法も考えられる。
【0055】
時間帯帯域変更オペレーションシステムBOは受付処理部1においてユーザの申し込み内容を受付け、その内容を実行可否判定部2へ送る。実行可否判定部2は、ユーザの申し込みが実行可能かどうかを次の手順で判定する。まず、ユーザを識別し、該当ユーザに関する網構成情報を網管理オペレーションシステムNOへ監視制御用ネットワークCNを介して問い合わせする。ユーザの網構成の問い合わせを受けた網管理オペレーションシステムNOは網管理テーブル5を参照することで申し込んだユーザの網構成及び変更対象スイッチ、ポート、トラヒックシェーパを特定する。
【0056】
図7に本実施形態における網管理テーブルを示す。ユーザ毎に使用するスイッチ及びそのポート、物理ポート種別、対向装置及びそのポート、トラヒックシェーパの有無、シェーパ番号、帯域制限値を管理している。この網管理テーブル5はユーザ網構成の変更や廃止に応じて、追加変更を実施する。予約受付時には、この網管理テーブル5から対象ユーザIDとトラヒックシェーパのON設定されている行を抽出することで、変更対象となるトラヒックシェーパを特定することが出来る。これによって、帯域制限値を変更すべきトラヒックシェーパをスイッチSW1のポート12−1の第1トラヒックシェーパ、スイッチSW2のポート12−2の第1トラヒックシェーパ、スイッチSW4のポート12−3の第1トラヒックシェーパであることを特定し、監視制御用ネットワークCNを介して時間帯帯域変更オペレーションシステムBOの実行可否判定部2へ結果を送信する。
【0057】
次に実行可否判定部2は把握した網構成におけるトラヒックシェーパごとに予約項番を払い出し、スイッチSW1、SW2、SW4に対して、該当トラヒックシェーパの帯域制限値を申し込み時間に変更可能かどうかを予約項番とともに問い合わせるよう実行指示部4に指示する。実行指示部4は、実行可否判定部2の指示を受け、指定された対象スイッチSW1、SW2、SW4にトラヒックシェーパの帯域制限値を申し込み時間に変更可能かどうかを、監視制御用ネットワークCNを介して問い合わせる。
【0058】
スイッチSW1、SW2、SW4は、時間帯帯域変更オペレーションシステムBOの実行指示部4からの問い合わせを受けて、監視制御部18は帯域の変更時間や変更する帯域制限値を有する変更予約テーブル13と問い合わせを受けた時点でのスイッチ内リソースを参照し、指定された時刻に指定されたトラヒックシェーパの帯域制限値を変更することが可能かどうかを判定する。判定は同一ポートの他のトラヒックシェーパの帯域制限値が物理インタフェース速度を超えていないかや、イーサネット(登録商標)フレームを他のポートへ転送するスイッチ部11のスイッチング容量を超えているかどうか等、スイッチSW1、SW2、SW4の資源を総合的に判断し可否が決定される。帯域制限値の予約が完了した場合、スイッチSW1、SW2、SW4の監視制御部18は変更予約テーブル13に指定された予約項番と共に予約情報を追加する。
【0059】
図6に本実施形態における変更予約テーブルを示す。変更対象となるスイッチSW1の変更予約テーブル13は、指示された予約項番毎に行が設定され、ポート12−1の第1トラヒックシェーパにおいて5時付近に5Mbpsから20Mbpsへ変更する項目が2行、7時付近に20Mbpsから5Mbpsへ変更する項目が2行記載される。また、時間帯帯域変更オペレーションシステムBOはスイッチSW2、SW4にも同様に予約可否を問い合わせるため、同様にスイッチSW2、SW4の変更予約テーブル13も図6のように追加される。図6において、項番1001や1004など指定した時間より2分ほど前後して設定変更予約される項目がある。この時間差の理由については後述する。スイッチSW1、SW2、SW4の監視制御部18は、時間帯帯域変更オペレーションシステムBOの指示によって予約に成功した場合、その完了結果を時間帯帯域変更オペレーションシステムBOに返す。予約項番は後述する時間帯帯域変更オペレーションシステムBOの予約管理テーブル3で管理する際に用いる。
【0060】
時間帯帯域変更オペレーションシステムBOの実行指示部4は、実行可否判定部2によって指示したすべての予約設定が成功した時点で、予約設定可能であることを実行可否判定部2へ返す。実行可否判定部2は、予約可否を受付処理部1へ返し、受付処理部1はそれをユーザ予約端末UTへ送信し、ユーザ予約端末UTへその結果を確定させるかどうかをユーザへ問い合わせる。すべての予約設定が成功しない場合、実行指示部4は予約設定不可であることを実行可否判定部2へ返す。実行可否判定部2は受付処理部1へ転送し、ユーザ予約端末UTへ予約設定ができないことを表示させる。
【0061】
次に、ユーザは、予約を確定するかどうかや予約実行不可の確認をユーザ予約端末UTを介して受付処理部1に送信する。予約が確定された場合は、時間帯帯域変更オペレーションシステムBOは予約情報を予約管理テーブル3へ記載し、ユーザの予約情報を管理する。図8に本実施形態における予約管理テーブルを示す。申し込みユーザのID、対象スイッチ及び予約時間、変更前と変更後の帯域制限値、スイッチで管理する予約項番を予約項番毎に作成する。申し込みのユーザIDは網管理テーブル5のユーザIDと同一とする。予約が確定しない場合や予約実行不可を了承する場合は、受付解除を実行可否判定部2へ指示する。実行可否判定部2は予約を行ったすべてのスイッチSW1、SW2、SW4に、予約に用いた項番とともに予約した情報の解除を指示する。たとえば、スイッチSW1に対しては項番1001、1002、1003、1004を、スイッチSW2に対しては項番2001、2002、2003、2004を、スイッチSW4に対しては項番4001、4002、4003、4004を削除するよう指示する。スイッチSW1、SW2、SW4は指示された項番を変更予約テーブル13より削除する。
【0062】
図3の網管理オペレーションシステムNOにおける状態監視部6は、監視制御用ネットワークCNを介してユーザのネットワーク構成や障害による変更状況を現行化するために構成情報を収集し、網管理テーブル5へ反映する。たとえば、新規ユーザの加入によるユーザ網設定の追加やスイッチ、ポートの追加によるユーザのネットワーク構成の変化等をチェックし、網管理テーブル5を一定期間ごとに現行化する。状態監視におけるチェック方法は、網状態を常にスイッチSW1、SW2、SW3、SW4へ問い合わせすることでも可能であるが、別途設備管理データベースを設置し、監視制御用ネットワークCNを介して状態監視部6が当該データベースへ問い合わせする形態も可能である。
【0063】
次に、帯域を増やす5時付近の動作について説明する。4時58分になると、スイッチSW1、SW2、SW4の変更予約テーブル13の記載に従ってタイマ部16が作動し、設定実行部17が変更予約テーブル13の内容に従って図5におけるスイッチSW1、SW2、SW4の出力トラヒックシェーパの帯域制限値を20Mbpsへ変更する。これは、スイッチSW1、SW2、SW4が独立して変更を行うため同時刻に変更される。帯域制限値を変更したスイッチSW1、SW2、SW4の設定実行部17は監視制御部18を介して、時間帯帯域変更オペレーションシステムBOへ帯域変更実施結果を予約項番とともに通知する。時間帯帯域変更オペレーションシステムBOの実行可否判定部2はスイッチSW1、SW2、SW4からの変更実施完了結果を、図8に示した予約管理テーブル3の実施完了フラグに予約項番毎に記入する。この時点では各トラフィックシェーパの出力方向の帯域制限値のみ変更される。
【0064】
次に5時になると、スイッチSW1、SW2、SW4の入力トラフィックシェーパの帯域制限値が同様に20Mbpsへ変更される。ここでもスイッチSW1、SW2、SW4のタイマ部16、設定実行部17が独立して変更を行うため同時刻に変更される。帯域制限値を変更したスイッチSW1、SW2、SW4の設定実行部17は、監視制御部18を介して時間帯帯域変更オペレーションシステムBOへ帯域変更実施結果を予約項番とともに通知する。時間帯帯域変更オペレーションシステムBOの実行可否判定部2はスイッチSW1、SW2、SW4からの変更実施完了結果を、予約管理テーブル3の実施完了フラグに予約項番毎に記入する。
【0065】
スイッチSW1、SW2、SW4の出力方向のトラヒックシェーパはすでに帯域が増加している。このため、5時ちょうどに20Mbpsのトラヒックをある端末から流入させても、いずれの出力方向トラヒックシェーパでも輻輳しない。したがって、トラヒックシェーパでのフレーム廃棄を発生させることなく帯域を増やすことができる。
【0066】
ここで示した4時58分と5時の時間差である2分という時間は目安として仮定した値である。予約時刻よりどの程度前もって設定するかは、通信事業者が配備するすべてのスイッチSW1、SW2、SW4にて設定変更の順序性を担保できる時刻誤差の範囲であれば自由に設定できる。このように、本実施形態ではスイッチSW1、SW2、SW4におけるトラヒックシェーパの帯域制限値変更時刻をきめ細かく設定できるため、ユーザトラヒックの影響がなく予約時刻の精度の高い帯域制限値の増加が可能となる。
【0067】
次に、帯域を減らす7時付近の動作について説明する。7時になると、スイッチSW1、SW2、SW4の変更予約テーブル13の記載に従ってタイマ部16が作動し、設定実行部17が変更予約テーブル13の内容に従ってスイッチSW1、SW2、SW4の入力トラヒックシェーパの帯域制限値を5Mbpsへ変更する。これは、スイッチSW1、SW2、SW4が独立して変更を行うため、同時刻に変更される。帯域制限値を変更したスイッチSW1、SW2、SW4の設定実行部17は監視制御部18を介して、時間帯帯域変更オペレーションシステムBOへ帯域変更実施結果を予約項番とともに通知する。時間帯帯域変更オペレーションシステムBOの実行可否判定部2はスイッチSW1、SW2、SW4からの変更実施完了結果を、予約管理テーブル3の実施完了フラグに予約項番毎に記入する。この時点で各トラフィックシェーパの入力方向の帯域制限値が変更されるため、ユーザが網内に入力できる帯域が減少する。
【0068】
次に7時2分になると、スイッチSW1、SW2、SW4の出力トラフィックシェーパの帯域制限値が同様に5Mbpsへ変更される。帯域制限値を変更したスイッチSW1、SW2、SW4の設定実行部17は、監視制御部18を介して、時間帯帯域変更オペレーションシステムBOへ帯域変更実施結果を予約項番とともに通知する。時間帯帯域変更オペレーションシステムBOの実行可否判定部2はスイッチSW1、SW2、SW4からの変更実施完了結果を、予約管理テーブル3の実施完了フラグに予約項番毎に記入する。
【0069】
7時と7時2分の時間差である2分の時間差は、網内に滞留する時間変更前のトラヒックがトラヒックシェーパの出力方向の帯域制限で破棄されることを防ぐためである。たとえば7時ちょうどに入出力方向すべての帯域制限値を5Mbpsへ変更すると、7時以前に入力された帯域制限値変更前の5Mbps以上のトラヒックが、7時以降に出力される際に出力方向のトラヒックシェーパで破棄される可能性がある。したがって、帯域制限値を変更する前に入力されたトラヒックが端末T1、T2、T3へ出力されるに十分な時間を待って、出力トラヒックシェーパの帯域制限値を小さくする必要がある。
【0070】
ここで示した7時と7時2分の時間差である2分という時間は目安として仮定した値である。予約時刻よりどの程度後に設定するかは、設定変更前のトラヒックが網内に滞留し、完全に出力するまでに十分な時間で、かつ通信事業者が配備するすべてのスイッチSW1、SW2、SW4にて設定変更の順序性を担保できる時刻誤差の範囲であれば自由に設定できる。このように、本実施形態ではスイッチSW1、SW2、SW4におけるトラヒックシェーパの帯域制限値変更時刻をきめ細かく設定することが可能であり、ユーザトラヒックの影響が少なく、予約時刻の精度の高い帯域制限値の減少が可能となる。
【産業上の利用可能性】
【0071】
本発明に係る帯域制御システム、帯域制限値予約装置及び帯域制御装置は、通信回線の契約帯域を柔軟に増減させる必要性がある、送受信装置間のネットワークや送受信装置間のネットワークの集合体である広域イーサネット(登録商標)ネットワークなどのマルチポイント型のネットワークに適用することができ、特に広域イーサネット(登録商標)ネットワークに有用である。
【符号の説明】
【0072】
T1〜T3:端末
UT:ユーザ予約端末
DN:通信事業者網
SW、SW1、SW2、SW3、SW4:スイッチ
CN:監視制御用ネットワーク
IN:インターネットまたは閉域網
OP:オペレーションシステム
BO:時間帯帯域変更オペレーションシステム
NO:網管理オペレーションシステム
MC:マスタクロック装置
1:受付処理部
2:実行可否判定部
3:予約管理テーブル
4:実行指示部
5:網管理テーブル
6:状態監視部
11:スイッチ部
12、12−1、12−2、12−3、12−4:ポート
13:変更予約テーブル
14:時刻同期制御部
15:時計
16:タイマ部
17:設定実行部
18:監視制御部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
データを送信する送信端末から前記データを中継する送信側中継装置と、
前記データを受信する受信端末へ前記データを中継する受信側中継装置と、
前記送信側中継装置での中継における帯域制御を行なう送信側帯域制御装置と、
前記受信側中継装置での中継における帯域制御を行なう受信側帯域制御装置と、
ユーザの要求に応じて、前記送信側帯域制御装置での帯域制限値及びその設定時刻を前記送信側帯域制御装置に対して予約し、前記受信側帯域制御装置での帯域制限値及びその設定時刻を前記受信側帯域制御装置に対して予約する帯域制限値予約装置と、
を備えることを特徴とする帯域制御システム。
【請求項2】
前記送信側帯域制御装置及び前記受信側帯域制御装置は、同一のクロックに基づいて同期して動作することを特徴とする、請求項1に記載の帯域制御システム。
【請求項3】
前記送信端末から前記受信端末への通信における帯域制限値が増加されるにあたり、前記受信側帯域制御装置での帯域制限値が増加された後に、前記送信側帯域制御装置での帯域制限値が増加されるように、前記帯域制限値予約装置は、前記送信側帯域制御装置での帯域制限値及びその設定時刻を前記送信側帯域制御装置に対して予約し、前記受信側帯域制御装置での帯域制限値及びその設定時刻を前記受信側帯域制御装置に対して予約することを特徴とする、請求項1又は請求項2に記載の帯域制御システム。
【請求項4】
前記送信端末から前記受信端末への通信における帯域制限値が減少されるにあたり、前記送信側帯域制御装置での帯域制限値が減少された後に、前記受信側帯域制御装置での帯域制限値が減少されるように、前記帯域制限値予約装置は、前記送信側帯域制御装置での帯域制限値及びその設定時刻を前記送信側帯域制御装置に対して予約し、前記受信側帯域制御装置での帯域制限値及びその設定時刻を前記受信側帯域制御装置に対して予約することを特徴とする、請求項1又は請求項2に記載の帯域制御システム。
【請求項5】
データを送信する送信端末から前記データを受信する受信端末への通信における帯域制限値及びその設定時刻について、ユーザの要求を受け付けるユーザ要求受付部と、
前記ユーザの要求に応じて、前記送信端末から前記データを中継する送信側中継装置での中継における帯域制御を行なう送信側帯域制御装置に対して、前記送信側帯域制御装置での帯域制限値及びその設定時刻を予約し、前記受信端末へ前記データを中継する受信側中継装置での中継における帯域制御を行なう受信側帯域制御装置に対して、前記受信側帯域制御装置での帯域制限値及びその設定時刻を予約する帯域制限値予約部と、
を備えることを特徴とする帯域制限値予約装置。
【請求項6】
前記送信端末から前記受信端末への通信における帯域制限値が増加されるにあたり、前記受信側帯域制御装置での帯域制限値が増加された後に、前記送信側帯域制御装置での帯域制限値が増加されるように、前記帯域制限値予約部は、前記送信側帯域制御装置での帯域制限値及びその設定時刻を前記送信側帯域制御装置に対して予約し、前記受信側帯域制御装置での帯域制限値及びその設定時刻を前記受信側帯域制御装置に対して予約することを特徴とする、請求項5に記載の帯域制限値予約装置。
【請求項7】
前記送信端末から前記受信端末への通信における帯域制限値が減少されるにあたり、前記送信側帯域制御装置での帯域制限値が減少された後に、前記受信側帯域制御装置での帯域制限値が減少されるように、前記帯域制限値予約部は、前記送信側帯域制御装置での帯域制限値及びその設定時刻を前記送信側帯域制御装置に対して予約し、前記受信側帯域制御装置での帯域制限値及びその設定時刻を前記受信側帯域制御装置に対して予約することを特徴とする、請求項5に記載の帯域制御値予約装置。
【請求項8】
通信端末での通信における帯域制御を行なう帯域制御部と、
前記帯域制御部での帯域制限値及びその設定時刻を記憶している帯域制限値記憶部と、
を備えることを特徴とする帯域制御装置。
【請求項9】
前記帯域制御部は、他の帯域制御装置の帯域制御部と、同一のクロックに基づいて同期して動作することを特徴とする、請求項8に記載の帯域制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−34299(P2012−34299A)
【公開日】平成24年2月16日(2012.2.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−174014(P2010−174014)
【出願日】平成22年8月2日(2010.8.2)
【出願人】(000004226)日本電信電話株式会社 (13,992)
【Fターム(参考)】