説明

帯電ロール、プロセスカートリッジ及び画像形成装置

【課題】 弾性層と該弾性層上に形成される機能層との間の接着不良及び密着不良による剥がれの発生が抑制され、長期間にわたって帯電ムラが抑制された良好な帯電特性を維持することが可能な帯電ロールを提供すること。
【解決手段】 導電性支持体1と、該導電性支持体1上に形成された弾性層2と、該弾性層2上に形成された機能層4と、を有し、上記弾性層2と上記機能層4とは、上記弾性層2上に部分的に形成された接着層3を介して接着されており、上記接着層3は、帯電ロールの軸方向又は周方向に沿って上記接着層3を2回以上通るように引いた線上において、隣り合う上記接着層3同士の間隔Dが0.1〜5.0mmとなるように形成されていることを特徴とする帯電ロール。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、帯電ロール、プロセスカートリッジ及び画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電子写真方式を利用した画像形成装置では、像担持体である電子写真感光体(以下、場合により「感光体」と略す)上に一様な電荷を形成し、画像信号を変調したレーザー光等により静電潜像を形成した後、帯電したトナーで上記静電潜像を現像して可視化したトナー像とする。そして、このトナー像を、中間転写体を介して、或いは直接記録媒体に静電的に転写することにより、所望の転写画像を得ることができる。
【0003】
このように電子写真方式を利用した画像形成装置では、感光体上に一様な電荷を形成する帯電処理が行われている。この帯電処理を行う帯電部材の一つとして、接触式帯電ロールがあり、広く用いられている。接触式帯電ロールは、一般的に印加する電流が小さく、非接触式帯電部材であるコロトロンあるいはスコロトロンに比べ、オゾン発生量が非常に少ないという利点がある。
【0004】
帯電ロールとしては、ステンレス鋼等の金属または合金;クロム、ニッケル等で鍍金処理を施した鉄等で構成された導電性支持体上に、ゴムやエラストマーで構成された弾性層が少なくとも形成されてなるものが広く用いられている。また、弾性層上には、必要に応じて抵抗層や表面層等の機能層が形成されている。
【0005】
こうした帯電ロールでは、各層間に接着性や密着性が求められる。層間の接着不良や密着不良があると、帯電ロールの抵抗ムラや変形を発生させてしまう。そこで、層間の接着性を向上させるために、層間に接着層を形成して接着性及び密着性を向上させる方法が提案されている(例えば、特許文献1参照)。しかし、層間に接着層を形成した場合、この接着層に導電性が付与されていないと、抵抗ムラや抵抗上昇を引き起こすこととなる。
【0006】
層間の接着不良や密着不良により層間に空隙が生じていたり、形成した接着層に抵抗ムラがあると、感光体の帯電時に帯電ムラを発生させる。また、層間に空隙が生じていたり、接着層に高抵抗部分がある場合、初期には帯電ムラが発生しなかったとしても、帯電ロールへの通電により局所的なチャージアップが生じ、経時的に帯電ムラが発生することがある。そこで、これらの問題を改善するために、カーボンブラック等の導電性付与剤を添加して接着層へ導電性を付与させ、接着層の抵抗ムラを低減することが行われている(例えば、特許文献2及び3参照)。
【特許文献1】特開平8−123139号公報
【特許文献2】特開昭58−202468号公報
【特許文献3】特開平2−310566号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記特許文献2及び3に記載された接着層では、導電性付与剤を含有することで接着層の接着力の低下が生じてしまう。特に近年、画像形成装置においては、高画質化、長寿命化に対する要求が高まりつつあり、帯電ロールには、従来よりも層間の接着不良や密着不良による空隙、及び、接着層を形成した際の接着層の抵抗ムラや高抵抗部分の存在による帯電ムラが、経時的に発生しやすくなっている。特に、接触式の帯電ロールは使用時に弾性層が変形するため、弾性層とその上層との層間に十分な接着性及び密着性が求められる。
【0008】
本発明は、上記従来技術の有する課題に鑑みてなされたものであり、弾性層と該弾性層上に形成される機能層との間の接着不良及び密着不良による剥がれの発生が十分に抑制され、長期間にわたって帯電ムラが抑制された良好な帯電特性を維持することが可能な帯電ロール、並びに、それを用いたプロセスカートリッジ及び画像形成装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、本発明は、導電性支持体と、該導電性支持体上に形成された弾性層と、該弾性層上に形成された機能層と、を有し、上記弾性層と上記機能層とは、上記弾性層上に部分的に形成された接着層を介して接着されており、上記接着層は、帯電ロールの軸方向又は周方向に沿って上記接着層を2回以上通るように引いた線上において、隣り合う上記接着層同士の間隔が0.1〜5.0mmとなるように形成されていることを特徴とする帯電ロールを提供する。
【0010】
弾性層表面の全面に接着層を形成した従来の帯電ロールを長期間使用した場合、接着層に抵抗ムラがあると抵抗の高い部分に電荷が溜まり、チャージアップを引き起こしやすい。これに対し、本発明の帯電ロールによれば、接着層が部分的に且つ上述した隣り合う接着層同士の間隔が上記範囲となるように弾性層上に形成されていることにより、接着層の周囲で弾性層と機能層とが直接接している部分が十分に形成され、その部分が電荷の逃げ道となって、接着層での電荷の蓄積が十分に低減されることとなる。そのため、帯電ロールを長期間使用した際のチャージアップを抑制することができ、帯電ムラの発生を十分に抑制することができる。また、上記のように接着層での電荷の蓄積が十分に低減されるため、接着層の抵抗ムラを改善するために導電剤を多量に接着層に添加する必要がなく、接着層に十分な接着力を与えることができる。そして、本発明の帯電ロールにおいては、接着層が、上述した隣り合う接着層同士の間隔が上記範囲となるように弾性層上に形成されていることにより、弾性層と機能層との間の剥がれの発生を十分に抑制することができ、長期間にわたって帯電ムラが抑制された良好な帯電特性を維持することができる。
【0011】
ここで、上記接着層は、点状又は線状に形成されていることが好ましい。これにより、接着層の周囲での電荷の逃げ道をより十分に確保することができ、帯電ムラの発生をより十分に抑制することができるとともに、弾性層と機能層との間の剥離をより十分に抑制して、より長期間にわたって安定した帯電特性を維持することができる。
【0012】
また、上記接着層は、幅0.2〜1.0mmの線状に形成されていることが好ましい。これにより、接着層への電荷の蓄積をより十分に抑制して、帯電ムラの発生をより十分に抑制しつつ、弾性層と機能層との間の剥離をより十分に抑制して、より長期間にわたって安定した帯電特性を維持することができる。
【0013】
また、本発明の帯電ロールは、上記弾性層表面の任意の10mm×10mmの領域内で、上記接着層が形成されている領域の面積の割合が20〜80%であることが好ましい。かかる条件を満たして接着層が形成されていることにより、帯電ムラの発生の抑制と、弾性層と機能層との間の剥離の抑制との双方をより高水準で達成することができる。
【0014】
更に、上記接着層の体積抵抗率は、1×1010Ω・cm以上であることが好ましい。接着層の体積抵抗率を上記範囲に設定することで、接着層中の導電剤の含有量を十分に低くすることができ、接着層の接着力を十分なものとすることができる。これにより、弾性層と機能層との間の剥離を長期間にわたってより十分に抑制することができる。
【0015】
また、上記弾性層は、シリコーンゴムを含有してなる層であることが好ましい。シリコーンゴムはタック性に優れるため、接着層が形成されていない領域において弾性層と機能層との密着性を良好なものとすることができ、弾性層と機能層との間の剥離を長期間にわたってより十分に抑制することができる。
【0016】
更に、上記弾性層の体積抵抗率は、1×10Ω・cm以下であることが好ましい。これにより、接着層が形成されている部分も接着層が形成されていない部分と同様に十分な電流が流れ、接着層形成部分の抵抗ムラをより十分に抑制することが可能となる。
【0017】
本発明はまた、電子写真感光体を接触帯電方式により帯電させるための帯電ロールを有する帯電手段と、上記電子写真感光体、上記電子写真感光体に形成された静電潜像をトナーにより現像してトナー像を形成するための現像手段、及び、上記電子写真感光体の表面に残存したトナーを除去するためのクリーニング手段からなる群より選ばれる少なくとも一種と、を備え、上記帯電ロールは、導電性支持体と、該導電性支持体上に形成された弾性層と、該弾性層上に形成された機能層と、を有するものであり、上記弾性層と上記機能層とは、上記弾性層上に部分的に形成された接着層を介して接着されており、上記接着層は、帯電ロールの軸方向又は周方向に沿って上記接着層を2回以上通るように引いた線上において、隣り合う上記接着層同士の間隔が0.1〜5.0mmとなるように形成されていることを特徴とするプロセスカートリッジを提供する。
【0018】
本発明は更に、電子写真感光体と、上記電子写真感光体を接触帯電方式により帯電させるための帯電ロールを有する帯電手段と、帯電した上記電子写真感光体に静電潜像を形成するための露光手段と、上記静電潜像をトナーにより現像してトナー像を形成するための現像手段と、上記トナー像を上記電子写真感光体から被転写体に転写するための転写手段と、を備え、上記帯電ロールは、導電性支持体と、該導電性支持体上に形成された弾性層と、該弾性層上に形成された機能層と、を有するものであり、上記弾性層と上記機能層とは、上記弾性層上に部分的に形成された接着層を介して接着されており、上記接着層は、帯電ロールの軸方向又は周方向に沿って上記接着層を2回以上通るように引いた線上において、隣り合う上記接着層同士の間隔が0.1〜5.0mmとなるように形成されていることを特徴とする画像形成装置を提供する。
【0019】
本発明のプロセスカートリッジ及び画像形成装置によれば、上述した本発明の帯電ロールを用いているため、長期間にわたって良好な帯電特性が維持され、良好な画質の画像を安定して形成することができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、弾性層と機能層との間の接着不良及び密着不良による剥がれの発生が十分に抑制され、長期間にわたって帯電ムラが抑制された良好な帯電特性を維持することが可能な帯電ロール、並びに、それを用いたプロセスカートリッジ及び画像形成装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。なお、図面中、同一又は相当部分には同一符号を付し、重複する説明は省略する。
【0022】
(帯電ロール)
本発明の帯電ロールは、導電性支持体と、該導電性支持体上に形成された弾性層と、該弾性層上に形成された機能層と、を有し、上記弾性層と上記機能層とは、上記弾性層上に部分的に形成された接着層を介して接着されており、上記接着層は、帯電ロールの軸方向又は周方向に沿って上記接着層を2回以上通るように引いた線上において、隣り合う上記接着層同士の間隔が0.1〜5.0mmとなるように形成されていることを特徴とするものである。
【0023】
ここで、図1は本発明の帯電ロールの好適な一実施形態を示す模式断面図である。図1に示す帯電ロール10は、導電性支持体1と、該導電性支持体1上に形成された弾性層2と、該弾性層2上に形成された機能層としての抵抗層4と、該抵抗層4上に形成された表面層5と、を有し、弾性層2と抵抗層4とは、弾性層2上に部分的に形成された接着層3を介して接着されており、接着層3は、帯電ロール10の軸方向又は周方向に沿って接着層3を2回以上(周方向においては1周当たり)通るように引いた任意の線上において、隣り合う接着層3同士の間隔が0.1〜5.0mmとなるように形成されている。また、図2は、図1に示した帯電ロール10において、導電性支持体1、弾性層2及び接着層3のみの構成を模式的に示す正面図である。図2に示すように、接着層3は、帯電ロール10の周方向に沿って線状に形成されている。
【0024】
また、図3〜6はそれぞれ本発明の帯電ロールの他の好適な実施形態における、導電性支持体1、弾性層2及び接着層3のみの構成を模式的に示す正面図である。図3に示す帯電ロールにおいて、接着層3は、帯電ロールの軸方向に等間隔に且つ周方向に等間隔に、点状に形成されている。図4に示す帯電ロールにおいて、接着層3は、帯電ロールの軸方向に沿って線状に形成されている。図5に示す帯電ロールにおいて、接着層3は、帯電ロールの軸方向に垂直な面に対して所定の角度を成す面と弾性層2表面との交線に沿って、線状に形成されている。図6に示す帯電ロールにおいて、接着層3は、帯電ロールの軸方向に螺旋を描く線状に形成されている。以下、本発明の帯電ロールを構成する各要素について説明する。
【0025】
導電性支持体1は、帯電ロールの電極及び支持部材として機能するものであり、例えば、アルミニウム、銅合金、ステンレス鋼等の金属または合金;クロム、ニッケル等で鍍金処理を施した鉄;導電性の樹脂;などの導電性の材質で構成される。これらの中でも、特に金属、合金が好ましい。導電性支持体1の直径は特に制限されないが、5〜9mmであることが好ましく、6〜8mmであることがより好ましい。
【0026】
弾性層2は、例えば、ゴム材中に必要に応じて導電剤を分散させることによって形成される。ゴム材としては、イソプレンゴム、クロロプレンゴム、エピクロルヒドリンゴム、ブチルゴム、ポリウレタンゴム、フッ素ゴム、スチレン−ブタジエンゴム、ブタジエンゴム、ニトリルゴム、エチレンプロピレンゴム、エピクロルヒドリン−エチレンオキシド共重合ゴム、エピクロルヒドリン−エチレンオキシド−アリルグリシジルエーテル共重合ゴム、エチレン−プロピレン−ジエン3元共重合ゴム(EPDM)、アクリロニトリル−ブタジエン共重合ゴム(NBR)、天然ゴム等、及びこれらのブレンドゴムが挙げられる。これらの中でも、タック性を有するシリコーンゴムは、近年望まれる低硬度の弾性層2としたときに、接着層3が形成されていない部分においても機能層との密着性が良好であるため好ましい。これらのゴム材は発泡したものであっても無発泡のものであってもよい。
【0027】
導電剤としては、電子導電剤やイオン導電剤が用いられる。電子導電剤の例としては、ケッチェンブラック、アセチレンブラック等のカーボンブラック;熱分解カーボン、グラファイト;アルミニウム、銅、ニッケル、ステンレス鋼等の各種導電性金属または合金;酸化スズ、酸化インジウム、酸化チタン、酸化スズ−酸化アンチモン固溶体、酸化スズ−酸化インジウム固溶体等の各種導電性金属酸化物;絶縁物質の表面を導電化処理したもの;などの微粉末等を挙げることができる。また、イオン導電剤の例としては、テトラエチルアンモニウム、ラウリルトリメチルアンモニウム等の過塩素酸塩、塩素酸塩等;リチウム、マグネシウム等のアルカリ金属、アルカリ土類金属の過塩素酸塩、塩素酸塩等;を挙げることができる。これらの導電剤は、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0028】
弾性層2に導電剤を含有させる際に、その含有量は特に制限されないが、上記電子導電剤の場合は、ゴム材100質量部に対して1〜30質量部の範囲であることが好ましく、5〜25質量部の範囲であることがより好ましい。一方、上記イオン導電剤の場合は、ゴム材100質量部に対して0.1〜5.0質量部の範囲であることが好ましく、0.5〜3.0質量部の範囲であることがより好ましい。
【0029】
なお、弾性層2には、ゴム材や導電剤の他に、加硫に必要となる材料や各種充填剤等を添加してもよい。
【0030】
また、弾性層2の体積抵抗率は、1×10Ω・cm以下であることが好ましく、1×10Ω・cm以下であることがより好ましい。
【0031】
弾性層2は、例えば、接着剤を塗布した導電性支持体1上に、上述した各成分を含む組成物を用いた、射出成形法、プレス成形法、押出し成形等の方法により形成することができる。接着剤としては、例えば、ポリオレフィン系、塩素ゴム系、エポキシ系、フェノール系、シリコーン系等の樹脂又はゴム等の他、シランカップリング剤等を用いることができる。
【0032】
弾性層の厚さは、1.0〜4.0mmであることが好ましく、2.0〜3.0mmであることがより好ましい。
【0033】
接着層3は、弾性層2とその上層である機能層とを接着可能な層であれば特に限定されない。接着層3を構成する接着剤成分としては、例えば、ポリオレフィン系、塩素ゴム系、エポキシ系、フェノール系、シリコーン系等の樹脂又はゴム等が挙げられる。弾性層2にシリコーンゴムを用いた場合、このシリコーンゴムとの接着性や抵抗ムラ、膜厚ムラを考慮すると、シリコーン系の樹脂又はゴムを用いることが好ましく、シランカップリング剤を用いることが特に好ましい。
【0034】
また、接着層3に導電性を付与するために、導電性付与剤(導電剤)を添加することもできる。導電性付与剤としては、弾性層2に用いられる導電剤と同様のものを用いることができる。なお、接着層3の体積抵抗率を1×1010Ω・cm未満に調整しようとすると、導電性付与剤の添加量が増大して接着性が低下するため、接着層の体積抵抗率は1×1010Ω・cm以上に調整することが好ましく、1×1013Ω・cm以上に調整することがより好ましい。また、接着層3の接着性を良好なものとする観点から、導電性付与剤の含有量は、接着層3全量を基準として10質量%以下とすることが好ましく、5質量%以下とすることがより好ましい。
【0035】
接着層3は、例えば、接着剤成分と必要に応じて用いられる導電性付与剤等とを含む接着層形成用塗布液を、ハケ塗り、スプレー塗布、ロールコート、ディップ塗布、フローコート等の方法により上記弾性層2上の所定の箇所に塗布することで形成することができる。
【0036】
接着層3の厚さは、それよりも外側に形成される層の抵抗ムラ、膜厚ムラに影響しない範囲であれば特に限定されないが、100μm以下であることが好ましく、50μm以下であることがより好ましい。
【0037】
接着層3は、帯電ロールの軸方向又は周方向に沿って接着層3を2回以上通るように引いた線上において、隣り合う接着層3同士の間隔が0.1〜5.0mmとなるように、弾性層2上に部分的に形成する。接着層3の形状は特に限定されないが、図2〜6に示したように平面形状が点状又は線状であることが好ましく、図2及び図4〜6に示したように平面形状が線状であることがより好ましい。また、接着層3の配置は特に制限されず、規則的な配置であっても不規則な配置であってもよいが、図2〜6に示したように規則的な配置であることが好ましい。図2〜6に示した接着層3の配置の中でも、接着層3は、その形成が容易であり、且つ、本発明の効果が十分に得られることから、図2に示したように帯電ロールの周方向に沿って線状に形成するか、又は、図6に示したように帯電ロールの軸方向に螺旋を描く線状に形成することが好ましい。また、図2〜6に示した配置以外に、接着層3は、例えば格子状の配置であってもよく、複数の規則的な配置を組み合わせた配置であってもよい。
【0038】
図2及び図4〜6に示したように接着層3を線状に形成した場合、その線幅Wは0.2〜1.0mmであることが好ましく、0.2〜0.5mmであることがより好ましい。線幅Wが0.2mm未満であると、線幅Wが上記範囲内である場合と比較して弾性層2と抵抗層4との間の接着性が低下する傾向にあり、1.0mmを超えると、線幅Wが上記範囲内である場合と比較して接着層2への電荷の蓄積が生じやすくなる傾向にある。また、図3に示したように接着層3を点状に形成した場合、その直径Lは0.2〜1.0mmであることが好ましく、0.2〜0.5mmであることがより好ましい。直径Lが0.2mm未満であると、直径Lが上記範囲内である場合と比較して弾性層2と抵抗層4との間の接着性が低下する傾向にあり、1.0mmを超えると、直径Lが上記範囲内である場合と比較して接着層2への電荷の蓄積が生じやすくなる傾向にある。
【0039】
また、接着層3は、帯電ロールの軸方向又は周方向に沿って接着層3を2回以上通る線が引けるように形成されており、且つ、その線上において、隣り合う接着層3同士の間隔が0.1〜5.0mmとなるように形成されていることが必要であるが、本発明の効果をより十分に得る観点から、上記の隣り合う接着層3同士の間隔は0.5〜3.0mmであることが好ましい。具体的には、図2及び図4〜6に示したような線状の接着層3を有する帯電ロールにおいては、帯電ロールの軸方向又は周方向に沿った線上における接着層3同士の間隔Dが、0.1〜5.0mmであることが必要であり、0.5〜3.0mmであることがより好ましい。また、図3に示したような点状の接着層3を有する帯電ロールにおいては、点状の接着層3を通る帯電ロールの軸方向又は周方向に沿った線上において、接着層3同士の間隔が上述した範囲であることが必要であるが、点状の接着層3の直径を通る帯電ロールの軸方向又は周方向に沿った線上における接着層3同士の間隔D又はDが0.1〜5.0mmであることが好ましく、0.2〜2.0mmであることがより好ましい。なお、本発明において、帯電ロールの周方向の接着層3の幅、及び、帯電ロールの周方向の接着層3同士の間隔は、帯電ロールにおける弾性層2表面の該当する箇所の弧の長さを示す。
【0040】
また、弾性層2表面の任意の10mm×10mmの領域内で、接着層3が形成されている領域の面積の割合は、20〜80%であることが好ましく、30〜60%であることがより好ましい。この面積の割合が20%未満である領域があると、その領域において弾性層2と抵抗層4との間の剥離が発生しやすくなる傾向にある。一方、この面積の割合が80%を超える領域があると、その領域において接着層3への電荷の蓄積が発生しやすくなる傾向にある。
【0041】
なお、図2〜6に示したそれぞれの帯電ロール中で、W、L、D、D又はDの値は必ずしも一定でなくてもよい。また、図3に示したような点状の接着層3は、必ずしも平面形状が円形状でなくてもよく、楕円形状や矩形状等であってもよい。更に、図2〜6に示したそれぞれの帯電ロールにおいて、接着層3は帯電ロールの端に接していても接していなくてもよいが、弾性層2と抵抗層4との間の剥離の発生をより十分に抑制する観点から、接着層3は帯電ロールの端に接していることが好ましい。
【0042】
抵抗層4は、接着層3を介して弾性層2に接着される機能層である。また、表面層5は、抵抗層4上に更に形成される層である。
【0043】
抵抗層4及び表面層5は、例えば、高分子材料中に導電剤を分散させることによって形成される。上記高分子材料としては特に制限されないが、例えば、ポリアミド樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリフッ化ビニリデン樹脂、4フッ化エチレン共重合体、ポリエステル樹脂、ポリイミド樹脂、シリコーン樹脂、アクリル樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、エチレンテトラフルオロエチレン共重合体、メラミン樹脂、フッ素樹脂、エポキシ樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、セルロース樹脂、ポリ塩化ビニリデン樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリエチレン樹脂、エチレン酢酸ビニル共重合体等の樹脂材料や、弾性層2に用いたゴム材料等が挙げられる。これらの高分子材料は1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
【0044】
導電剤としては、弾性層2に用いられる導電剤と同様のものを用いることができる。抵抗層4における導電剤の含有量は特に制限されないが、導電剤として上記電子導電剤を用いる場合、高分子材料100質量部に対して1〜30質量部の範囲であることが好ましく、5〜25質量部の範囲であることがより好ましい。一方、上記イオン導電剤を用いる場合は、高分子材料100質量部に対して0.1〜5.0質量部の範囲であることが好ましく、0.5〜3.0質量部の範囲であることがより好ましい。また、表面層5における導電剤の含有量は特に制限されないが、高分子材料100質量部に対して1〜50質量部の範囲であることが好ましく、5〜20質量部の範囲であることがより好ましい。
【0045】
また、表面層5には、酸化ケイ素、酸化アルミニウム、チタン酸バリウム等の金属酸化物及び複合金属酸化物、テトラフルオロエチレン、フッ化ビニリデン等の高分子微粉体を単独で又は混合して添加することもできる。
【0046】
抵抗層4は、例えば、上述した各成分を有機溶剤や水に溶解あるいは分散してなる抵抗層形成用塗布液を、弾性層2及び接着層3上に塗布することにより形成することができる。また、表面層5は、例えば、上述した各成分を有機溶剤や水に溶解あるいは分散してなる表面層形成用塗布液を、抵抗層4上に塗布することにより形成することができる。
【0047】
特に、弾性層2及び接着層3上に形成される機能層(抵抗層4)は、上記塗布液を用いて塗布により形成されることが好ましい。抵抗層4が塗布により形成されることにより、弾性層2と抵抗層4との層間に空隙が形成され難く密着性が高まり、接着層3の未形成部分(弾性層2と抵抗層4とが直接接している部分)でも十分な密着性が確保できる。
【0048】
塗布により層を形成する場合、塗布液の塗布方法としては特に限定されず、塗布技術として広く行われているディップ(浸漬)コート、スプレーコート、ロールコート、突き上げコート、フローコート等の方法を用いることができる。
【0049】
抵抗層4の厚さは特に限定されないが、200〜1000μmであることが好ましく、300〜600μmであることがより好ましい。
【0050】
また、表面層5の厚さは特に限定されないが、1〜50μmであることが好ましく、3〜20μmであることがより好ましい。
【0051】
以上、本発明の帯電ロールの好適な一実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。例えば、図1に示した帯電ロール10では、弾性層2及び接着層3上に抵抗層4及び表面層5を有する場合について説明したが、本発明の帯電ロールは、弾性層2及び接着層3上に少なくとも1層の機能層を有していればよく、例えば、帯電ロール10において抵抗層4又は表面層5を有しない構成であってもよい。帯電ロール10において抵抗層4を有しない場合、表面層5が弾性層2及び接着層3上に形成される機能層となる。この場合、表面層5の厚さは、1〜100μmであることが好ましく、3〜20μmであることがより好ましい。また、本発明の帯電ロールは、弾性層2及び接着層3上に、抵抗層4及び表面層5以外の他の層を更に有していてもよい。更に、本発明の帯電ロールにおいて、機能層上に形成される層は、例えば、樹脂チューブ等により形成されていてもかまわない。
【0052】
次に、帯電ロール10を構成する各層の体積抵抗率の測定方法について説明する。本発明における体積抵抗率の測定は、各層の体積抵抗率が別々に測定できるように、測定対象物としての各層それぞれのシートサンプルを用いて行う。図7に示すように、シートサンプル11の両面には電極(アドバンテスト社製、R12702A/Bレジスティビィティ・チェンバ)14、15を取り付け、シートサンプル11の片面には電極14と同軸上にリング状のアース電極16を更に取り付け、電極14、15、16に電流計21及び電源22を有する高抵抗測定器(アドバンテスト社製、R8340Aデジタル高抵抗/微小電流計)13を接続する。
【0053】
体積抵抗率(Ω・cm)は、電場(印加電圧/シートサンプル厚)が1000V/cmになるよう調節した電圧を電極14、15に印加し、10秒間充電した後の電流値より下記式(1)を用いて算出する。測定は23℃、55%RHの環境下で実施する。
体積抵抗率(Ω・cm)={19.63×印加電圧(V)×シートサンプル厚(cm)}/電流値(A) ・・・(1)
【0054】
また、帯電ロール抵抗は、特開平6−118105号公報に記載された方法により計測される。本発明では、幅5mmの円筒状のSUS製ベアリングからなる電極を25gの重りで帯電ロール表面に接触させ、帯電ロールを5.5rpmで回転させながら電極と導電性支持体との間の抵抗を計測する。電源および電流計には、高抵抗測定器(アドバンテスト社製、R8340Aデジタル高抵抗/微小電流計)を用いる。印加電圧は100Vとし、帯電ロール抵抗は下記式(2)を用いて算出する。
帯電ロール抵抗(logΩ)=log10{印加電圧(V)/電流(A)} ・・・(2)
【0055】
(画像形成装置及びプロセスカートリッジ)
次に、本発明の帯電ロールを搭載した画像形成装置及びプロセスカートリッジについて説明する。
【0056】
本発明の画像形成装置は、被帯電体である電子写真感光体と、該電子写真感光体を接触帯電方式により帯電させるための上記本発明の帯電ロールを有する帯電手段と、帯電した上記電子写真感光体に静電潜像を形成するための露光手段と、上記静電潜像をトナーにより現像してトナー像を形成するための現像手段と、上記トナー像を上記電子写真感光体から被転写体に転写するための転写手段と、を備えることを特徴とするものである。
【0057】
まず、本発明の画像形成装置に用いられる電子写真感光体について説明する。図8〜12は、それぞれ電子写真感光体の好適な一例を示す模式断面図であり、電子写真感光体を基体及び感光層の積層方向に対して垂直な平面で切断したものである。図8〜11に示した電子写真感光体はいずれも機能分離型感光体であり、各感光体が備える感光層36には、電荷発生材料を含有する電荷発生層31と電荷輸送材料を含有する電荷輸送層32とが別個に設けられている。一方、図12に示した電子写真感光体は単層型感光体であり、電荷発生材料及び電荷輸送材料の双方を含有する単層型感光層38が設けられている。
【0058】
より詳しくは、図8に示した電子写真感光体100においては、導電性基体33上に電荷発生層31及び電荷輸送層32がこの順で積層されてなる感光層36が形成されている。図9に示した電子写真感光体110においては、導電性基体33上に下引層34と、電荷発生層31及び電荷輸送層32がこの順で積層されてなる感光層36とが順次形成されている。図10に示した電子写真感光体120においては、導電性基体33上に下引層34と、電荷発生層31及び電荷輸送層32がこの順で積層されてなる感光層36と、保護層35とが順次形成されている。図11に示した電子写真感光体130においては、導電性基体33上に下引層34と、中間層7と、電荷発生層31及び電荷輸送層32がこの順で積層されてなる感光層36と、保護層35とが順次形成されている。図12に示した電子写真感光体140においては、導電性基体33上に単層型感光層38が形成されている。以下、電子写真感光体を構成する各層について、主に図11に示した電子写真感光体130に基づいて説明する。
【0059】
導電性基体33は特に限定されるものはなく、例えば、アルミニウム、銅、鉄、亜鉛、ニッケル等の金属製ドラム;ポリマー製シート、紙、プラスチック、又はガラス上に、アルミニウム、銅、金、銀、白金、パラジウム、チタン、ニッケル−クロム、ステンレス鋼、銅−インジウム等の金属を蒸着することによって導電処理したドラム状、シート状又はプレート状の基体;ポリマー製シート、紙、プラスチック又はガラス上に、酸化インジウム、酸化錫などの導電性金属化合物を蒸着するか、又は金属箔をラミネートすることによって導電処理したドラム状、シート状又はプレート状の基体;カーボンブラック、酸化インジウム、酸化錫−酸化アンチモン粉、金属粉、沃化銅等をバインダー樹脂に分散し、ポリマー製シート、紙、プラスチック、又はガラス上に塗布することによって導電処理したドラム状、シート状、プレート状の基体などが挙げられる。
【0060】
ここで、金属製ドラムを導電性基体33として用いる場合、その外周面(感光層36が形成される側の面)は素管のままであってもよいが、予め鏡面切削、エッチング、陽極酸化、粗切削、センタレス研削、サンドブラスト、ウエットホーニング、着色処理などの処理を行うことが好ましい。感光層36が形成される側の面を表面処理により粗面化することで、レーザービームのような可干渉光源を用いた場合に発生しうる感光体内での干渉光による木目状の濃度斑を防止することができる。
【0061】
下引層34は、感光層36の帯電時において、導電性基体33から感光層36への電荷の注入を阻止する機能を有する。また、この下引層34は、感光層36を導電性支持体層3に対して一体的に接着保持せしめる接着層としても機能する。更に、この下引層34は、導電性基体33の光反射を防止する機能を有する。
【0062】
下引層34に用いられる材料としては、ジルコニウムキレート化合物、ジルコニウムアルコキシド化合物、ジルコニウムカップリング剤等の有機ジルコニウム化合物;チタンキレート化合物、チタンアルコキシド化合物、チタネートカップリング剤等の有機チタン化合物;アルミニウムキレート化合物、アルミニウムカップリング剤などの有機アルミニウム化合物;アンチモンアルコキシド化合物;ゲルマニウムアルコキシド化合物;インジウムアルコキシド化合物、インジウムキレート化合物等の有機インジウム化合物;マンガンアルコキシド化合物、マンガンキレート化合物等の有機マンガン化合物;スズアルコキシド化合物、スズキレート化合物等の有機スズ化合物;アルミニウムシリコンアルコキシド化合物;アルミニウムチタンアルコキシド化合物;アルミニウムジルコニウムアルコキシド化合物、などの有機金属化合物が挙げられる。これらの中でも、有機ジルコニウム化合物、有機チタン化合物、有機アルミニウム化合物は、残留電位が低く良好な電子写真特性を示すため、好ましく使用される。
【0063】
また、下引層34には、ビニルトリクロロシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリス−2−メトキシエトキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−クロロプロピルトリメトキシシラン、γ−2−アミノエチルアミノプロピルトリメトキシシラン、γ−メルカプロプロピルトリメトキシシラン、γ−ウレイドプロピルトリエトキシシラン、β−3,4−エポキシシクロヘキシルトリメトキシシラン等のシランカップリング剤を含有させて使用することができる。さらに、ポリビニルアルコール、ポリビニルメチルエーテル、ポリ−N−ビニルイミダゾール、ポリエチレノキシド、エチルセルロース、メチルセルロース、エチレン−アクリル酸共重合体、ポリアミド、ポリイミド、カゼイン、ゼラチン、ポリエチレン、ポリエステル、フェノール樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、エポキシ樹脂、ポリビニルピロリドン、ポリビニルピリジン、ポリウレタン、ポリグルタミン酸、ポリアクリル酸等の公知の結着樹脂を用いることもできる。これらの混合割合は、必要に応じて適宜設定することができる。
【0064】
下引層34中には、金属酸化物微粒子を添加することができる。金属酸化物微粒子としては、所望の電子写真感光体特性が得られるものであれば、公知の金属酸化物より任意に選択できるが、酸化スズ、酸化チタン、酸化亜鉛から選ばれる1種以上の金属酸化物の微粒子が好ましく用いられる。また、これらの金属酸化物微粒子は、少なくとも1種以上のカップリング剤で被覆されていることがより好ましく、カップリング剤としてはシランカップリング剤が好ましい。
【0065】
また、下引層34中には、電子輸送性顔料を混合/分散して使用することもできる。電子輸送性顔料としては、ペリレン顔料、ビスベンズイミダゾールペリレン顔料、多環キノン顔料、インジゴ顔料、キナクリドン顔料等の有機顔料、また、シアノ基、ニトロ基、ニトロソ基、ハロゲン原子等の電子吸引性の置換基を有するビスアゾ顔料やフタロシアニン顔料等の有機顔料、酸化亜鉛、酸化チタン等の無機顔料が挙げられる。これらの顔料の中ではペリレン顔料、ビスベンズイミダゾールペリレン顔料と多環キノン顔料、酸化亜鉛、酸化チタンが、電子移動性が高いので好ましく使用される。また、これらの顔料の表面は、分散性、電荷輸送性を制御する目的で上記カップリング剤や、バインダーなどで表面処理しても良い。電子輸送性顔料は多すぎると下引層34の強度が低下し、塗膜欠陥を生じるため、下引層34全量を基準として95質量%以下、好ましくは90質量%以下で使用される。
【0066】
下引層34は、アクセプター性化合物を付与した金属酸化物微粒子を含有させて形成することもできる。アクセプター性化合物としては所望の特性が得られるものならばいかなるものでも使用可能であるが、特にキノン基を有する化合物が好ましく用いられる。更に、アントラキノン構造を有するアクセプター性化合物がより好ましく用いられる。アントラキノン構造を有するアクセプター性化合物としては、アントラキノンのほか、ヒドロキシアントラキノン系化合物、アミノアントラキノン系化合物、アミノヒドロキシアントラキノン系化合物などが挙げられ、いずれも好ましく用いることができる。より具体的には、アントラキノン、アリザリン、キニザリン、アントラルフィン、プルプリンなどが特に好ましく用いられる。
【0067】
これらのアクセプター性化合物の付与量は所望の特性が得られる範囲であれば任意に設定できるが、好ましくは金属酸化物100質量部に対して0.01〜20質量部、より好ましくは0.05〜10質量部付与される。付与量が0.01質量部未満では下引層34内の電荷蓄積改善に寄与するだけの十分なアクセプター性を付与できないため、繰り返し使用時に残留電位の上昇など維持性の悪化を招きやすい傾向がある。また、20質量部を超えると金属酸化物同士の凝集を引き起こしやすく、下引層34の形成時に下引層34内で金属酸化物が良好な導電路を形成することが困難となり、繰り返し使用時に残留電位の上昇など維持性の悪化を招きやすくなるだけでなく、黒点などの画質欠陥も引き起こしやすくなる傾向がある。
【0068】
金属酸化物微粒子へのアクセプター性化合物の付与方法としては、金属酸化物微粒子をせん断力の大きなミキサ等で攪拌しながら、有機溶媒に溶解させたアクセプター化合物を滴下、乾燥空気や窒素ガスとともに噴霧させることによって金属酸化物微粒子へアクセプター化合物を均一に付与する方法が挙げられる。アクセプター化合物を添加あるいは噴霧する際には溶剤の沸点以下の温度で行われることが好ましく、溶剤の沸点以上の温度で噴霧すると、均一に攪拌される前に溶剤が蒸発し、アクセプター化合物が局部的にかたまってしまい均一な処理ができにくい欠点があるため好ましくない。添加あるいは噴霧した後、さらに溶剤の沸点温度以上で乾燥を行うことができる。また、金属酸化物微粒子を溶剤中で攪拌、超音波、サンドミルやアトライター、ボールミルなどを用いて分散し、アクセプター化合物の有機溶剤溶液を添加し、還流あるいは有機溶剤の沸点以下で攪拌あるいは分散したのち、溶剤除去することで均一に付与される。また、溶剤除去方法はろ過あるいは蒸留、加熱乾燥により留去される。
【0069】
アクセプター化合物を付与される金属酸化物微粒子としては、1×10〜1×1011Ω・cm程度の粉体抵抗(体積抵抗率)を有するものが好ましい。これにより、下引層34はリーク耐性獲得のために適切な抵抗を得ることが可能となる。
【0070】
下引層34は、上述の下引層34を構成する各成分を有機溶媒に混合/分散させて得られる下引層形成用塗布液を導電性基体33上に塗布し、乾燥により溶剤を除去することにより形成される。
【0071】
下引層形成用塗布液を調製する際の混合/分散方法は、ボールミル、ロールミル、サンドミル、アトライター、超音波等を用いる常法が適用される。混合/分散は有機溶剤中で行われるが、有機溶剤としては、有機金属化合物や樹脂を溶解し、また、電子輸送性顔料を混合/分散したときにゲル化や凝集を起こさないものであれば如何なるものでも使用できる。具体的には、メタノール、エタノール、n−プロパノール、n−ブタノール、ベンジルアルコール、メチルセルソルブ、エチルセルソルブ、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、酢酸メチル、酢酸n−ブチル、ジオキサン、テトラヒドロフラン、メチレンクロライド、クロロホルム、クロルベンゼン、トルエン等の通常の有機溶剤を単独あるいは2種以上混合して用いることができる。
【0072】
下引層形成用塗布液の塗布方法としては、ブレードコーティング法、ワイヤーバーコーティング法、スプレーコーティング法、浸漬コーティング法、ビードコーティング法、エアーナイフコーティング法、カーテンコーティング法等の通常の方法を用いることができる。このように塗布したものを乾燥させて下引層34を得るが、通常、乾燥は溶剤を蒸発させ、製膜可能な温度で行われる。特に、酸性溶液処理、ベーマイト処理を行った導電性基体33は、導電性基体33の欠陥隠蔽力が不十分となりやすいため、下引層34を形成することが好ましい。
【0073】
このようにして形成される下引層34の厚さは、金属酸化物微粒子を含有しない場合は、0.1〜10μmであることが好ましく、0.5〜5.0μmであることがより好ましい。また、金属酸化物微粒子を含有する場合は、15μm以上であることが好ましく、15〜50μmであることがより好ましい。下引層34の厚さが上記条件を満たすことにより、電子写真感光体における局所的な絶縁破壊(感光体リーク)をより確実に防止することができる。また、長期連続使用においても、安定した特性を得ることができる。
【0074】
中間層37は、電気特性向上、画質向上、画質維持性向上、感光層接着性向上などのために、下引層34と感光層36との間に設けられる層である。
【0075】
中間層37に用いられる材料としては、上記下引層34に用いられる材料と同様に、ジルコニウムキレート化合物、ジルコニウムアルコキシド化合物、ジルコニウムカップリング剤等の有機ジルコニウム化合物;チタンキレート化合物、チタンアルコキシド化合物、チタネートカップリング剤等の有機チタン化合物;アルミニウムキレート化合物、アルミニウムカップリング剤などの有機アルミニウム化合物;アンチモンアルコキシド化合物;ゲルマニウムアルコキシド化合物;インジウムアルコキシド化合物、インジウムキレート化合物等の有機インジウム化合物;マンガンアルコキシド化合物、マンガンキレート化合物等の有機マンガン化合物;スズアルコキシド化合物、スズキレート化合物等の有機スズ化合物;アルミニウムシリコンアルコキシド化合物;アルミニウムチタンアルコキシド化合物;アルミニウムジルコニウムアルコキシド化合物、などの有機金属化合物が挙げられる。これらの中でも、有機ジルコニウム化合物、有機チタン化合物、有機アルミニウム化合物は、残留電位が低く良好な電子写真特性を示すため、好ましく使用される。
【0076】
また、中間層37には、上記下引層34と同様に、ビニルトリクロロシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリス−2−メトキシエトキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−クロロプロピルトリメトキシシラン、γ−2−アミノエチルアミノプロピルトリメトキシシラン、γ−メルカプロプロピルトリメトキシシラン、γ−ウレイドプロピルトリエトキシシラン、β−3,4−エポキシシクロヘキシルトリメトキシシラン等のシランカップリング剤を含有させて使用することができる。さらに、ポリビニルアルコール、ポリビニルメチルエーテル、ポリ−N−ビニルイミダゾール、ポリエチレノキシド、エチルセルロース、メチルセルロース、エチレン−アクリル酸共重合体、ポリアミド、ポリイミド、カゼイン、ゼラチン、ポリエチレン、ポリエステル、フェノール樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、エポキシ樹脂、ポリビニルピロリドン、ポリビニルピリジン、ポリウレタン、ポリグルタミン酸、ポリアクリル酸等の公知の結着樹脂を用いることもできる。これらの混合割合は、必要に応じて適宜設定することができる。
【0077】
また、中間層37中には、上記下引層34と同様に、電子輸送性顔料を混合/分散して使用することもできる。電子輸送性顔料としては、ペリレン顔料、ビスベンズイミダゾールペリレン顔料、多環キノン顔料、インジゴ顔料、キナクリドン顔料等の有機顔料、また、シアノ基、ニトロ基、ニトロソ基、ハロゲン原子等の電子吸引性の置換基を有するビスアゾ顔料やフタロシアニン顔料等の有機顔料、酸化亜鉛、酸化チタン等の無機顔料が挙げられる。これらの顔料の中ではペリレン顔料、ビスベンズイミダゾールペリレン顔料と多環キノン顔料、酸化亜鉛、酸化チタンが、電子移動性が高いので好ましく使用される。また、これらの顔料の表面は、分散性、電荷輸送性を制御する目的で上記カップリング剤や、バインダーなどで表面処理しても良い。電子輸送性顔料は多すぎると中間層37の強度が低下し、塗膜欠陥を生じるため、中間層37全量を基準として95質量%以下、好ましくは90質量%以下で使用される。
【0078】
中間層37は、上記下引層34と同様に、上述の中間層37を構成する各成分を有機溶媒に混合/分散させて得られる中間層形成用塗布液を下引層34上に塗布し、乾燥により溶剤を除去することにより形成される。
【0079】
中間層形成用塗布液を調製する際の混合/分散方法は、ボールミル、ロールミル、サンドミル、アトライター、超音波等を用いる常法が適用される。混合/分散は有機溶剤中で行われるが、有機溶剤としては、有機金属化合物や樹脂を溶解し、また、電子輸送性顔料を混合/分散したときにゲル化や凝集を起こさないものであれば如何なるものでも使用できる。具体的には、メタノール、エタノール、n−プロパノール、n−ブタノール、ベンジルアルコール、メチルセルソルブ、エチルセルソルブ、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、酢酸メチル、酢酸n−ブチル、ジオキサン、テトラヒドロフラン、メチレンクロライド、クロロホルム、クロルベンゼン、トルエン等の通常の有機溶剤を単独あるいは2種以上混合して用いることができる。
【0080】
中間層形成用塗布液の塗布方法としては、ブレードコーティング法、ワイヤーバーコーティング法、スプレーコーティング法、浸漬コーティング法、ビードコーティング法、エアーナイフコーティング法、カーテンコーティング法等の通常の方法を用いることができる。このように塗布したものを乾燥させて中間層37を得るが、通常、乾燥は溶剤を蒸発させ、製膜可能な温度で行われる。
【0081】
このようにして形成される中間層37の厚さは、0.1〜10μmであることが好ましく、0.5〜5.0μmであることがより好ましい。中間層37の厚さが上記条件を満たすことにより、電子写真感光体を長期連続使用した場合においても、安定した特性を得ることができる。
【0082】
電荷発生層31は、電荷発生材料を真空蒸着により形成するか、又は、電荷発生材料を有機溶剤及び結着樹脂とともに分散し塗布することにより形成される。
【0083】
分散塗布により電荷発生層31を形成する場合、電荷発生材料を有機溶剤、結着樹脂、及び、添加剤等とともに分散して電荷発生層形成用塗布液を調製し、得られた塗布液を中間層37上に塗布し乾燥することにより形成することができる。
【0084】
電荷発生材料としては、公知の電荷発生物質を特に制限なく使用することができる。赤外光用の電荷発生材料としては、フタロシアニン顔料、スクアリリウム、ビスアゾ、トリスアゾ、ペリレン、ジチオケトピロロピロール等が用いられ、可視光用の電荷発生材料としては、縮合多環顔料、ビスアゾ、ペリレン、トリゴナルセレン、色素増感した酸化亜鉛微粒子等が用いられる。これらの中でも特に優れた性能が得られ、好ましく使用される電荷発生材料は、フタロシアニン系顔料、アゾ系顔料である。これらの電荷発生材料を用いることにより、特に高感度で、繰り返し安定性の優れる電子写真感光体を得ることができる。また、フタロシアニン系顔料やアゾ系顔料は一般に数種の結晶型を有しており、目的にあった電子写真特性が得られる結晶型であるならば、これらのいずれの結晶型でも用いることができる。特に好ましく用いられる電荷発生材料としては、クロロガリウムフタロシアニン、ジクロロススフタロシアニン、ヒドロキシガリウムフタロシアニン、無金属フタロシアニン、オキシチタニルフタロシアニン、クロロインジウムフタロシアニン等が挙げられる。
【0085】
電荷発生層31は、特にヒドロキシガリウムフタロシアニン顔料を含有することが、均一帯電性を得る観点から好ましい。ヒドロキシガリウムフタロシアニン顔料は所望の特性を得られるものであればいかなるものでも使用できるが、特にCuKα特性X線を用いたX線回折スペクトルにおいて、ブラッグ角度(2θ±0.2°)の7.5°及び28.3°に回折ピークを有するものが好ましく用いられる。
【0086】
電荷発生層31に用いられる結着樹脂としては、広範な絶縁性樹脂から選択することができる。好ましい結着樹脂としては、ポリビニルアセタール樹脂、ポリアリレート樹脂(ビスフェノールAとフタル酸の重縮合体等)、ポリカーボネート樹脂、ポリエステル樹脂、フェノキシ樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、ポリアミド樹脂、アクリル樹脂、ポリアクリルアミド樹脂、ポリビニルピリジン樹脂、セルロース樹脂、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂、カゼイン、ポリビニルアルコール樹脂、ポリビニルピロリドン樹脂等の絶縁性樹脂や、ポリ−N−ビニルカルバゾール、ポリビニルアントラセン、ポリビニルピレン、ポリシラン等の有機光導電性ポリマーが挙げられる。これらの中でも、ポリビニルアセタール樹脂及び塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体が好ましく用いられる。これらの結着樹脂は1種を単独であるいは2種以上を混合して用いることができる。
【0087】
電荷発生層31は、電荷発生材料の真空蒸着、あるいは電荷発生材料及び結着樹脂を含む電荷発生層形成用塗布液の塗布により形成される。電荷発生層形成用塗布液において、電荷発生材料と結着樹脂との配合比(質量比)は、10:1〜1:10の範囲が好ましく、8:2〜3:7の範囲がより好ましい。塗布液を調整するための溶媒としては公知の有機溶剤、例えばアルコール系、芳香族系、ハロゲン化炭化水素系、ケトン系、ケトンアルコール系、エーテル系、エステル系等から任意に選択することができる。溶媒としてより具体的には、例えば、メタノール、エタノール、n−プロパノール、iso−プロパノール、n−ブタノール、ベンジルアルコール、メチルセルソルブ、エチルセルソルブ、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸n−ブチル、ジオキサン、テトラヒドロフラン、メチレンクロライド、クロロホルム、クロルベンゼン、トルエン等の通常の有機溶剤を用いることができる。これらの溶剤は単独であるいは2種以上混合して用いることができる。2種以上混合する際、使用される溶剤としては、混合溶剤として結着樹脂を溶かす事ができる溶剤であれば、いかなるものでも使用することが可能である。
【0088】
電荷発生物質及び結着樹脂を溶媒に分散させる方法としては、ロールミル、ボールミル、振動ボールミル、アトライター、サンドミル、コロイドミル、ペイントシェーカー等の方法を用いることができる。
【0089】
さらに、電荷発生層31を形成する際に用いる塗布方法としては、ブレードコーティング法、ワイヤーバーコーティング法、スプレーコーティング法、浸漬コーティング法、ビードコーティング法、エアーナイフコーティング法、カーテンコーティング法等の通常の方法を用いることができる。
【0090】
このようにして形成される電荷発生層31の厚さは、良好な電気特性と画質を与えるために、0.05〜5.0μmであることが好ましく、0.1〜1.0μmであることがより好ましい。電荷発生層31の厚さが0.05μm未満であると、感度が不十分となる傾向がある。一方、電荷発生層31の厚さが5.0μmを超えると、帯電性の不良などの弊害を生じさせやすくなる傾向がある。
【0091】
また、電荷発生層31に用いられる電荷発生材料には、電気特性の安定性向上、画質欠陥防止などのために表面処理を施すことができる。表面処理剤としてはカップリング剤、有機ジルコニウム化合物、有機チタン化合物、有機アルミニウム化合物などを用いることができるが、これらに限定されるものではない。
【0092】
表面処理に用いるカップリング剤の例としては、ビニルトリメトキシシラン、γ−メタクリルオキシプロピル−トリス(β−メトキシエトキシ)シラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−β−(アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−β−(アミノエチル)−γ−アミノプロピルメチルメトキシシラン、N,N−ビス(β−ヒドロキシエチル)−γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−クロルプロピルトリメトキシシラン等のシランカップリング剤が挙げられる。特に好ましく用いられるシランカップリング剤としては、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリス(2−メトキシエトキシシラン)、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、N−2−(アミノエチル)3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−2−(アミノエチル)3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−フェニル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3−クロロプロピルトリメトキシシラン等のシランカップリング剤が挙げられる。
【0093】
また、有機ジルコニウム化合物としては、ジルコニウムブトキシド、ジルコニウムアセト酢酸エチル、ジルコニウムトリエタノールアミン、アセチルアセトネートジルコニウムブトキシド、アセト酢酸エチルジルコニウムブトキシド、ジルコニウムアセテート、ジルコニウムオキサレート、ジルコニウムラクテート、ジルコニウムホスホネート、オクタン酸ジルコニウム、ナフテン酸ジルコニウム、ラウリン酸ジルコニウム、ステアリン酸ジルコニウム、イソステアリン酸ジルコニウム、メタクリレートジルコニウムブトキシド、ステアレートジルコニウムブトキシド、イソステアレートジルコニウムブトキシド等が挙げられる。
【0094】
また、有機チタン化合物としては、テトライソプロピルチタネート、テトラノルマルブチルチタネート、ブチルチタネートダイマー、テトラ(2−エチルヘキシル)チタネート、チタンアセチルアセトネート、ポリチタンアセチルアセトネート、チタンオクチレングリコレート、チタンラクテートアンモニウム塩、チタンラクテート、チタンラクテートエチルエステル、チタントリエタノールアミネート、ポリヒドロキシチタンステアレート等が挙げられる。
【0095】
また、有機アルミニウム化合物としては、アルミニウムイソプロピレート、モノブトキシアルミニウムジイソプロピレート、アルミニウムブチレート、ジエチルアセトアセテートアルミニウムジイソプロピレート、アルミニウムトリス(エチルアセトアセテート)等が挙げられる。
【0096】
電荷輸送層32は、例えば電荷輸送材料及び結着樹脂を含んで構成される。電荷輸送層32に含有される電荷輸送材料としては、公知のものならいかなるものでも使用可能であり、例えば、2,5−ビス(p−ジエチルアミノフェニル)−1,3,4−オキサジアゾール等のオキサジアゾール誘導体、1,3,5−トリフェニル−ピラゾリン、1−[ピリジル−(2)]−3−(p−ジエチルアミノスチリル)−5−(p−ジエチルアミノスチリル)ピラゾリン等のピラゾリン誘導体、トリフェニルアミン、トリ(P−メチル)フェニルアミン、N,N’−ビス(3,4−ジメチルフェニル)ビフェニル−4−アミン、ジベンジルアニリン、9,9−ジメチル−N,N’−ジ(p−トリル)フルオレノン−2−アミン等の芳香族第3級アミノ化合物、N,N’−ジフェニル−N,N’−ビス(3−メチルフェニル)−[1,1−ビフェニル]−4,4’−ジアミン等の芳香族第3級ジアミノ化合物、3−(4’ジメチルアミノフェニル)−5,6−ジ−(4’−メトキシフェニル)−1,2,4−トリアジン等の1,2,4−トリアジン誘導体、4−ジエチルアミノベンズアルデヒド−1,1−ジフェニルヒドラゾン、4−ジフェニルアミノベンズアルデヒド−1,1−ジフェニルヒドラゾン、[p−(ジエチルアミノ)フェニル](1−ナフチル)フェニルヒドラゾン等のヒドラゾン誘導体、2−フェニル−4−スチリル−キナゾリン等のキナゾリン誘導体、6−ヒドロキシ−2,3−ジ(p−メトキシフェニル)−ベンゾフラン等のベンゾフラン誘導体、p−(2,2−ジフェニルビニル)−N,N’−ジフェニルアニリン等のα−スチルベン誘導体、エナミン誘導体、N−エチルカルバゾール等のカルバゾール誘導体、ポリ−N−ビニルカルバゾールおよびその誘導体等の正孔輸送物質、クロラニル、ブロモアニル、アントラキノン等のキノン系化合物、テトラシアノキノジメタン系化合物、2,4,7−トリニトロフルオレノン、2,4,5,7−テトラニトロ−9−フルオレノン等のフルオレノン化合物、2−(4−ビフェニル)−5−(4−t−ブチルフェニル)−1,3,4−オキサジアゾールや2,5−ビス(4−ナフチル)−1,3,4−オキサジアゾール、2,5−ビス(4−ジエチルアミノフェニル)1,3,4オキサジアゾール等のオキサジアゾール系化合物、キサントン系化合物、チオフェン化合物、3,3’,5,5’テトラ−t−ブチルジフェノキノン等のジフェノキノン化合物等の電子輸送物質、あるいは以上に示した化合物からなる基を主鎖又は側鎖に有する重合体等が挙げられる。これらの電荷輸送材料は、1種を単独で又は2種以上を組み合せて使用できる。
【0097】
電荷輸送層32に用いられる結着樹脂としては、公知のものであればいかなるものでも使用することができるが、電気絶縁性のフィルムを形成可能な樹脂が好ましい。結着樹脂としては、例えば、ポリカーボネート樹脂、ポリエステル樹脂、メタクリル樹脂、アクリル樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリ塩化ビニリデン樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリビニルアセテート樹脂、スチレン−ブタジエン共重合体、塩化ビニリデン−アクリロニトリル共重合体、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、塩化ビニル−酢酸ビニル−無水マレイン酸共重合体、シリコーン樹脂、シリコーン−アルキッド樹脂、フェノール−ホルムアルデヒド樹脂、スチレン−アルキッド樹脂や、ポリ−N−ビニルカルバゾール、ポリシラン、特開平8−176293号公報や特開平8−208820号公報に示されているポリエステル系高分子電荷輸送材等高分子電荷輸送材を用いることもできる。これらの中でも、ポリカーボネート樹脂、ポリエステル樹脂、メタクリル樹脂、アクリル樹脂は、電荷輸送材料との相溶性、溶剤への溶解性、強度の点で優れるため、好ましく用いられる。これらの結着樹脂は、1種を単独で又は2種以上を混合して用いることができる。また、結着樹脂と電荷輸送材料との配合比(質量比)はいずれの場合も任意に設定することができるが、電気特性低下、膜強度低下に注意しなくてはならない。
【0098】
また、高分子電荷輸送材を単独で用いることもできる。高分子電荷輸送材としては、ポリ−N−ビニルカルバゾール、ポリシラン等の電荷輸送性を有する公知のものを用いることができる。特に、特開平8−176293号公報や特開平8−208820号公報に示されているポリエステル系高分子電荷輸送材は、高い電荷輸送性を有しており、とくに好ましいものである。高分子電荷輸送材はそれだけでも電荷輸送層として使用可能であるが、上記結着樹脂と混合して成膜してもよい。
【0099】
電荷輸送層32は、電荷輸送物質及び結着樹脂、並びにその他の材料を適当な溶媒に溶解させた電荷輸送層形成用塗布液を電荷輸送層31上に塗布し、乾燥することによって形成することができる。電荷輸送層形成用塗布液に用いる溶剤としては、例えば、トルエン、クロロベンゼン等の芳香族炭化水素系溶剤、メタノール、エタノール、n−ブタノール等の脂肪族アルコール系溶剤、アセトン、シクロヘキサノン、2−ブタノン等のケトン系溶剤、塩化メチレン、クロロホルム、塩化エチレン等のハロゲン化脂肪族炭化水素溶剤、テトラヒドロフラン、ジオキサン、エチレングリコール、ジエチルエーテル等の環状或いは直鎖状エーテル系溶剤、或いはこれらの混合溶剤等を用いることができる。
【0100】
電荷輸送層形成用塗布液を電荷発生層31上に塗布する際の塗布方法としては、浸漬塗布法、突き上げ塗布法、スプレー塗布法、ロールコータ塗布法、ワイヤーバーコーティング法、グラビアコータ塗布法、ビードコーティング法、カーテンコーティング法、ブレードコーティング法、エアーナイフコーティング法等を用いることができる。
【0101】
電荷輸送層32の厚さは、5〜50μmであることが好ましく、10〜40μmであることがより好ましい。
【0102】
電子写真感光体においては、画像形成装置中で発生するオゾンや酸化性ガス、あるいは光や熱による電子写真感光体の劣化を防止する目的で、感光層3中に酸化防止剤や光安定剤などの添加剤を添加することができる。
【0103】
酸化防止剤としては、例えば、ヒンダードフェノール、ヒンダードアミン、パラフェニレンジアミン、アリールアルカン、ハイドロキノン、スピロクロマン、スピロインダノン及びそれらの誘導体、有機硫黄化合物、有機燐化合物等が挙げられる。
【0104】
酸化防止剤の具体的な化合物例として、フェノール系酸化防止剤としては、2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノール、スチレン化フェノール、n−オクタデシル−3−(3’,5’−ジ−t−ブチル−4’−ヒドロキシフェニル)−プロピオネート、2,2’−メチレン−ビス−(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)、2−t−ブチル−6−(3’−t−ブチル−5’−メチル−2’−ヒドロキシベンジル)−4−メチルフェニルアクリレート、4,4’−ブチリデン−ビス−(3−メチル−6−t−ブチル−フェノール)、4,4’−チオ−ビス−(3−メチル−6−t−ブチルフェノール)、1,3,5−トリス(4−t−ブチル−3−ヒドロキシ−2,6−ジメチルベンジル)イソシアヌレート、テトラキス−[メチレン−3−(3’,5’−ジ−t−ブチル−4’−ヒドロキシ−フェニル)プロピオネート]−メタン、3,9−ビス[2−[3−(3−t−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオニルオキシ]−1,1−ジメチルエチル]−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5,5]ウンデカン等が挙げられる。
【0105】
ヒンダードアミン系化合物としては、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)セバケート、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)セバケート、1−[2−[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシ]エチル]−4−[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシ]−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、8−ベンジル−7,7,9,9−テトラメチル−3−オクチル−1,3,8−トリアザスピロ[4,5]ウンデカン−2,4−ジオン、4−ベンゾイルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、コハク酸ジメチル−1−(2−ヒドロキシエチル)−4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン重縮合物、ポリ[{6−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)イミノ−1,3,5−トリアジン−2,4−ジイミル}{(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ}ヘキサメチレン{(2,3,6,6,−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ}]、2−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−2−n−ブチルマロン酸ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)、N,N’−ビス(3−アミノプロピル)エチレンジアミン−2,4−ビス[N−ブチル−N−(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4ピペリジル)アミノ]−6−クロロ−1,3,5−トリアジン縮合物等が挙げられる。
【0106】
有機イオウ系酸化防止剤としては、ジラウリル−3,3’−チオジプロピオネート、ジミリスチル−3,3’−チオジプロピオネート、ジステアリル−3,3’−チオジプロピオネート、ペンタエリスリトール−テトラキス−(β−ラウリル−チオプロピオネート)、ジトリデシル−3,3’−チオジプロピオネート、2−メルカプトベンズイミダゾール等が挙げられる。
【0107】
有機燐系酸化防止剤としては、トリスノニルフェニルフォスフィート、トリフェニルフォスフィート、トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)−フォスフィート等が挙げられる。
【0108】
有機硫黄系および有機燐系酸化防止剤は2次酸化防止剤と言われ、フェノール系あるいはアミン系などの1次酸化防止剤と併用することにより相乗効果を得ることができる。
【0109】
光安定剤としては、ベンゾフェノン系、ベンゾトリアゾール系、ジチオカルバメート系、テトラメチルピペリジン系などの誘導体が挙げられる。
【0110】
ベンゾフェノン系光安定剤としては、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−オクトキシベンゾフェノン、2,2’−ジ−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン等が挙げられる。ベンゾトリアゾール系光安定剤として2−(2’−ヒドロキシ−5’メチルフェニル)−ベンゾトリアゾール、2−[2’−ヒドロキシ−3’−(3’’,4’’,5’’,6’’−テトラヒドロフタルイミドメチル)−5’−メチルフェニル]−ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’−t−ブチル5’−メチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’−t−ブチル−5’−メチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’,5’−t−ブチルフェニル)−ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−5’−t−オクチルフェニル)−ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’,5’−ジ−t−アミルフェニル)−ベンゾトリアゾール等が挙げられる。
【0111】
その他の化合物として、2,4−ジ−t−ブチルフェニル−3’,5’−ジ−t−ブチル−4’−ヒドロキシベンゾエート、ニッケルジブチル−ジチオカルバメート等を用いてもよい。
【0112】
また、感度の向上、残留電位の低減、繰り返し使用時の疲労低減等を目的として、少なくとも1種の電子受容性物質を含有せしめることができる。
【0113】
電子受容性物質としては、例えば、無水琥珀酸、無水マレイン酸、ジブロム無水マレイン酸、無水フタル酸、テトラブロム無水フタル酸、テトラシアノエチレン、テトラシアノキノジメタン、o−ジニトロベンゼン、m−ジニトロベンゼン、クロラニル、ジニトロアントラキノン、トリニトロフルオレノン、ピクリン酸、o−ニトロ安息香酸、p−ニトロ安息香酸、フタル酸等が挙げられる。これらのうち、フルオレノン系、キノン系や、Cl、CN、NO等の電子吸引性置換基を有するベンゼン誘導体が特に好ましい。
【0114】
また、特に図8及び9に示すように電荷輸送層32が最表面層である場合、電荷輸送層32には、摩耗を低減する目的で、固形潤滑剤や金属酸化物を分散させることが好ましい。固形潤滑剤としては、フッ素含有樹脂粒子(四フッ化エチレン、三フッ化塩化エチレン、四フッ化エチレン六フッ化プロピレン樹脂、フッ化ビニル樹脂、フッ化ビニリデン樹脂、二フッ化二塩化エチレンおよびそれらの共重合等)、ケイ素含有樹脂粒子等を挙げることができる。また、金属酸化物としては、シリカ、アルミナ、酸化チタン、酸化スズ等を挙げることができる。固形潤滑剤を分散すると、電荷輸送層表面の摩擦係数が減少するため、摩耗を抑制することができる。また、金属酸化物を分散すると、電荷輸送層32の機械的硬度が上昇するため、摩耗を抑制することができる。また、フッ素含有樹脂粒子は難分散粒子のためフッ素含有高分子系分散助剤を用いると分散性が向上される。上記固形潤滑剤や金属酸化物を分散させる方法としては、ロールミル、ボールミル、振動ボールミル、アトライター、サンドミル、コロイドミル、ペイントシェーカー、ホモジナイザー、高圧処理式ホモジナイザー等の方法を用いることができる。この分散の際、分散粒子を1.0μm以下、好ましくは0.5μm以下にすることが有効である。
【0115】
また、電荷輸送層32には、塗膜の平滑性向上のためのレベリング剤としてシリコーンオイルを微量添加することもできる。
【0116】
保護層35は、帯電時の電荷輸送層32の化学的変化を防止したり、感光層36の機械的強度を向上させ、表面層の磨耗、傷などへの耐性をさらに改善する為に用いられる。
【0117】
保護層35の形態としては、硬化性樹脂や電荷輸送性化合物を含む樹脂硬化膜、導電性材料を適当な結着樹脂中に含有させて形成された膜等があるが、電荷輸送性化合物を含有するものが好ましく用いられる。硬化性樹脂としては公知の樹脂であれば特に制限なく使用できるが、特に強度、電気特性及び画質維持性などの観点から、架橋構造を有するものが好ましく、例えばフェノール樹脂、ウレタン樹脂、メラミン樹脂、ジアリルフタレート樹脂、シロキサン系樹脂等が挙げられる。
【0118】
保護層35に用いられる電荷輸送性化合物としては、反応性官能基を有するものであって、使用する硬化性樹脂と相溶するものが好ましく、更に、使用する硬化性樹脂と化学結合を形成するものがより好ましい。反応性官能基を有する電荷輸送化合物としては、下記一般式(I)で表される化合物が好ましい。
【0119】
F[−D−Si(R(3-a) (I)
[式(I)中、Fは正孔輸送能を有する化合物から誘導される有機基を示し、Dは可とう性を有する2価の基を示し、Rは水素原子、置換若しくは未置換のアルキル基又は置換若しくは未置換のアリール基を示し、Qは加水分解性基を示し、aは1〜3の整数を示し、bは1〜4の整数を示す。]
【0120】
上記一般式(I)中、Fは、光電特性、具体的には特に光キャリア輸送特性を有するユニットであり、従来、電荷輸送物質として知られている構造をそのまま用いることができる。具体的には、トリアリールアミン系化合物、ベンジジン系化合物、アリールアルカン系化合物、アリール置換エチレン系化合物、スチルベン系化合物、アントラセン系化合物、ヒドラゾン系化合物等の正孔輸送性を有する化合物骨格、およびキノン系化合物、フルオレノン化合物、キサントン系化合物、ベンゾフェノン系化合物、シアノビニル系化合物、エチレン系化合物等の電子輸送性を有する化合物骨格を用いることができる。
【0121】
上記一般式(I)中、−Si(R(3-a)は、加水分解性基を有する置換ケイ素基であるが、この置換ケイ素は、Si基により互いに架橋反応を起こして、3次元的なSi−O−Si結合を形成する。即ち、この置換ケイ素基は、保護層35中にいわゆる無機ガラス質ネットワークを形成する役割を担う。
【0122】
上記一般式(I)中、Dは可とう性を有する2価の基を示すが、具体的には、光電特性を付与するためのF部位と、3次元的な無機ガラス質ネットワークに直接結合で結びつく置換ケイ素基とを結びつける働きを担い、かつ、堅さの反面もろさも有する無機ガラス質ネットワークに適度な可とう性を付与し、膜としての強靱さを向上させるという働きを担う有機基を表す。Dとして具体的には、−C2n−、−C(2n−2)−、−C(2n−4)−で表わされる2価の炭化水素基(ここで、nは1〜15の整数を表す)、−COO−、−S−、−O−、−CH−C−、−N=CH−、−(C)−(C)−、及び、これらを任意に組み合わせた特性基、更にはこれらの特性基の構造原子を他の置換基と置換したもの等が挙げられる。
【0123】
上記一般式(I)中、bは2以上であることが好ましい。bが2以上であると、上記一般式(I)で表される光機能性有機ケイ素化合物中にSi原子を2つ以上含むことになり、無機ガラス質ネットワークを形成し易くなり、機械的強度が向上する。
【0124】
また、上記一般式(I)で表わされる化合物における上記Fは、下記一般式(II)で表される基であることが好ましい。下記一般式(II)で表わされる基は、正孔輸送能を有する基であり、これを保護層35に含有させることは、特に保護層35における光電特性と機械特性を向上の観点から好ましい。
【0125】
【化1】



[式(II)中、Ar、Ar、Ar及びArはそれぞれ独立に置換又は未置換のアリール基を示し、Arは置換若しくは未置換のアリール基又はアリーレン基を示し、且つAr〜Arのうち1〜4個は、上記一般式(I)で表わされる化合物における−D−Si(R(3-a)で示される部位と結合するための結合手を有し、kは0又は1を示す。]
【0126】
また、上記一般式(II)中のAr〜Arで示される置換又は未置換のアリール基としては、具体的には、下記一般式(1)〜(7)に示されるアリール基が好ましい。
【0127】
【表1】



【0128】
上記式(1)〜(7)中、R11は水素原子、炭素数1〜4のアルキル基、炭素数1〜4のアルキル基、炭素数1〜4のアルコキシ基、それらで置換されたフェニル基若しくは未置換のフェニル基、又は炭素数7〜10のアラルキル基を示し、R12〜R14はそれぞれ水素原子、炭素数1〜4のアルキル基、炭素数1〜4のアルコキシ基、炭素数1〜4のアルコキシ基、それらで置換されたフェニル基若しくは未置換のフェニル基、炭素数7〜10のアラルキル基又はハロゲン原子を示し、Arは置換又は未置換のアリーレン基を示し、Xは上記一般式(I)で表わされる化合物における−D−Si(R(3-a)で示される構造を示し、c及びsはそれぞれ0又は1を示し、tは1〜3の整数を示す。
【0129】
また、上記式(7)で示されるアリール基におけるArとしては、下記式(8)又は(9)で示されるアリーレン基が好ましい。
【0130】
【表2】



【0131】
上記式(8)、(9)中、R15及びR16はそれぞれ水素原子、炭素数1〜4のアルキル基、炭素数1〜4のアルコキシ基、炭素数1〜4のアルコキシ基で置換されたフェニル基、または未置換のフェニル基、炭素数7〜10のアラルキル基、又は、ハロゲン原子を示し、tは1〜3の整数を示す。
【0132】
また、上記式(7)で示されるアリール基におけるZ’としては、下記式(10)〜(17)で示される2価の基が好ましい。
【0133】
【表3】



【0134】
上記式(10)〜(17)中、R17及びR18はそれぞれ水素原子、炭素数1〜4のアルキル基、炭素数1〜4のアルコキシ基、炭素数1〜4のアルコキシ基で置換されたフェニル基、または未置換のフェニル基、炭素数7〜10のアラルキル基、又は、ハロゲン原子を示し、Wは2価の基を示し、q及びrはそれぞれ1〜10の整数を示し、tはそれぞれ1〜3の整数を示す。
【0135】
また、上記式(16)〜(17)中、Wは下記式(18)〜(26)で示される2価の基を示す。なお、式(25)中、uは0〜3の整数を示す。
【0136】
【表4】



【0137】
また、上記一般式(II)におけるArの具体的構造としては、kが0の時は上記Ar〜Arの具体的構造として例示したアリール基が挙げられ、kが1の時はかかるアリール基から所定の水素原子を除いたアリーレン基が挙げられる。
【0138】
上記一般式(I)で表される電荷輸送性化合物は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上併用してもよい。
【0139】
また、保護層35には、上記一般式(I)で表される電荷輸送性化合物とともに、硬化膜の機械的強度を更に向上させる目的で、下記一般式(III)で表されるような2つ以上のケイ素原子を有する化合物を用いることも好ましい。
【0140】
B(−Si(R40(3−a) (III)
[式(III)中、Bは2価以上の有機基を示し、R40は水素原子、アルキル基又は置換若しくは未置換のアリール基を示し、Qは加水分解性基を示し、aは1〜3の整数を示し、dは2以上の整数を示す。]
【0141】
上記一般式(III)で表わされる化合物は、−Si(R40(3−a)で表される加水分解性基を有する置換ケイ素基を有している化合物である。この上記一般式(III)で表わされる化合物は、上記一般式(I)で表される化合物との反応又は上記一般式(III)で表わされる化合物同士の反応により、Si−O−Si結合を形成して3次元的な架橋硬化膜を与える。上記一般式(III)で表わされる化合物と上記一般式(I)で表わされる化合物を併用すると、硬化膜の架橋構造が3次元的になりやすく、また、硬化膜に適度な可とう性が付与されるため、より強い機械強度が得られる。上記一般式(III)で表わされる化合物の好ましい例として、下記化合物(III−1)〜(III−19)が挙げられる。なお、下記表中、Meはメチル基を示し、Etはエチル基を示し、Prはプロピル基を示す。
【0142】
【表5】



【0143】
また、上記一般式(I)で表される化合物と共に、更に架橋反応可能な他の化合物を併用してもよい。このような化合物として、各種シランカップリング剤、および市販のシリコーン系ハードコート剤等を用いることができる。
【0144】
シランカップリング剤としては、例えば、ビニルトリクロロシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−β(アミノエチル)γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、テトラメトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン等が挙げられる。
【0145】
市販のハードコート剤としては、KP−85、CR−39、X−12−2208、X−40−9740、X−41−1007、KNS−5300、X−40−2239(以上、信越シリコーン社製)、および、AY42−440、AY42−441、AY49−208(以上、東レダウコーニング社製)、などが挙げられる。
【0146】
また、保護層35には、表面潤滑性を付与する目的でフッ素原子含有化合物を添加できる。表面潤滑性を向上させることによりクリーニング部材との摩擦係数が低下し、耐摩耗性を向上させることができる。また、電子写真感光体表面に対する放電生成物、現像剤および紙粉などの付着を防止する効果も有し、電子写真感光体の寿命向上に役立つ。
【0147】
フッ素含有化合物は、ポリテトラフルオロエチレンなどのフッ素原子含有ポリマーをそのまま添加するか、あるいはそれらポリマーの微粒子を添加することができる。また、保護層35が上記一般式(I)で表される化合物により形成される硬化膜の場合、フッ素含有化合物としては、アルコキシシランと反応できるものを添加し、架橋膜の一部として構成するのが望ましい。そのようなフッ素原子含有化合物の具体例としては、(トリデカフルオロ−1,1,2,2−テトラヒドロオクチル)トリエトキシシラン、(3,3,3−トリフルオロプロピル)トリメトキシシラン、3−(ヘプタフルオロイソプロポキシ)プロピルトリエトキシシラン、1H,1H,2H,2H−パーフルオロアルキルトリエトキシシラン、1H,1H,2H,2H−パーフルオロデシルトリエトキシシラン、1H,1H,2H,2H−パーフルオロオクチルトリエトキシシラン、などが挙げられる。
【0148】
上記フッ素含有化合物の含有量は、保護層35全量を基準として20質量%以下とすることが好ましい。含有量が20質量%を越えると、架橋硬化膜の成膜性に問題が生じる場合がある。
【0149】
保護層35は十分な耐酸化性を有しているが、さらに強い耐酸化性を付与する目的で、酸化防止剤を添加してもよい。酸化防止剤としては、ヒンダードフェノール系あるいはヒンダードアミン系が望ましく、有機イオウ系酸化防止剤、フォスファイト系酸化防止剤、ジチオカルバミン酸塩系酸化防止剤、チオウレア系酸化防止剤、ベンズイミダゾール系酸化防止剤等の公知の酸化防止剤を用いてもよい。酸化防止剤の添加量としては、保護層35全量を基準として15質量%以下が好ましく、10質量%以下がさらに好ましい。
【0150】
ヒンダードフェノール系酸化防止剤としては、2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノール、2,5−ジ−t−ブチルヒドロキノン、N,N’−ヘキサメチレンビス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシヒドロシンナマイド、3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシ−ベンジルフォスフォネート−ジエチルエステル、2,4−ビス[(オクチルチオ)メチル]−o−クレゾール、2,6−ジ−t−ブチル−4−エチルフェノール、2,2’−メチレンビス(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)、2,2’−メチレンビス(4−エチル−6−t−ブチルフェノール)、4,4’−ブチリデンビス(3−メチル−6−t−ブチルフェノール)、2,5−ジ−t−アミルヒドロキノン、2−t−ブチル−6−(3−ブチル−2−ヒドロキシ−5−メチルベンジル)−4−メチルフェニルアクリレート、4,4’−ブチリデンビス(3−メチル−6−t−ブチルフェノール)等が挙げられる。
【0151】
また、保護層35には公知の塗膜形成に用いられるその他の添加剤を添加することも可能であり、レベリング剤、紫外線吸収剤、光安定化剤、界面活性剤、等公知のものを用いることができる。
【0152】
保護層35は、上述した各種材料及び各種添加剤を含有する保護層形成用塗布液を感光層36上に塗布し、加熱処理することで形成することができる。これにより、上記一般式(I)で表される化合物等が3次元的に架橋硬化反応を起こし、強固な硬化膜が形成される。加熱処理の温度は、下層である感光層36に影響しなければ特に制限はないが、好ましくは室温〜200℃、より好ましくは100〜160℃である。
【0153】
保護層35の形成において、架橋硬化反応は、無触媒で行なってもよく、適切な触媒を用いてもよい。触媒としては、塩酸、硫酸、燐酸、蟻酸、酢酸、トリフルオロ酢酸等の酸触媒、アンモニア、トリエチルアミン等の塩基、ジブチルスズジアセテート、ジブチルスズジオクトエート、オクエ酸第一スズ等の有機スズ化合物、テトラ−n−ブチルチタネート、テトライソプロピルチタネート等の有機チタン化合物、有機カルボン酸の鉄塩、マンガン塩、コバルト塩、亜鉛塩、ジルコニウム塩、アルミニウムキレート化合物等が挙げられる。
【0154】
保護層形成用塗布液には、塗布を容易にするために、必要に応じて溶剤を添加することができる。溶剤として具体的には、水、メタノール、エタノール、n−プロパノール、i−プロパノール、n−ブタノール、ベンジルアルコール、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、酢酸メチル、酢酸n−ブチル、ジオキサン、テトラヒドロフラン、メチレンクロライド、クロロホルム、ジメチルエーテル、ジブチルエーテル等の通常の有機溶剤が挙げられる。これらは、1種を単独で、又は2種以上混合して用いることができる。
【0155】
保護層35の形成において、保護層形成用塗布液の塗布方法としては、ブレードコーティング法、ワイヤーバーコーティング法、スプレーコーティング法、浸漬コーティング法、ビードコーティング法、エアーナイフコーティング法、カーテンコーティング法等の通常の方法を用いることができる。
【0156】
こうして形成される保護層35の厚さは、0.5〜20μmであることが好ましく、2〜10μmであることがより好ましい。
【0157】
また、図12に示したように、感光層が単層型感光層38である場合、単層型感光層38は、電荷発生材料、電荷輸送材料及び結着樹脂を含有して形成される。電荷発生材料としては機能分離型感光層における電荷発生層31に使用されるものと同様のものを、電荷輸送材料としては機能分離型感光層における電荷輸送層32に使用されるものと同様のものを、結着樹脂としては機能分離型感光層における電荷発生層31及び電荷輸送層32に用いられる結着樹脂と同様のものを用いることができる。また、塗布に用いる溶剤や塗布方法は、上記各層と同様のものを用いることができる。単層型感光層38の厚さは、5〜50μm程度が好ましく、10〜40μmとすることがさらに好ましい。
【0158】
次に、本発明の画像形成装置を図面に基づき説明する。図13は、本発明の画像形成装置の好適な一実施形態の基本構成を概略的に示す断面図である。図13に示す画像形成装置200は、先に説明した電子写真感光体207と、電子写真感光体207を帯電させる帯電装置208と、帯電装置208に接続された電源209と、帯電装置208により帯電される電子写真感光体207を露光して静電潜像を形成する露光装置210と、露光装置210により形成された静電潜像をトナーにより現像してトナー像を形成する現像装置211と、現像装置211により形成されたトナー像を被転写媒体(画像出力媒体)500に転写する転写装置212と、クリーニング装置213と、除電器214と、定着装置215とを備える。なお、この場合には、除電器214が設けられていないものもある。
【0159】
ここで、帯電装置208は、電子写真感光体207の表面に、導電性部材としての上述した本発明の帯電ロールを接触させて、感光体207の表面を帯電させる方式(接触帯電方式)のものである。
【0160】
本発明の帯電ロールを用いて感光体を帯電させる際には、帯電ロールに電圧が印加されるが、かかる印加電圧は直流電圧、直流電圧に交流電圧を重畳したもののいずれでもよい。
【0161】
露光装置210としては、電子写真感光体表面に、半導体レーザー、LED(light emitting diode)、液晶シャッター等の光源を所望の像様に露光できる光学系装置等を用いることができる。
【0162】
現像装置211としては、一成分系、二成分系などの正規又は反転現像剤を用いた従来公知の現像装置を用いることができる。
【0163】
現像装置211に使用されるトナーは、例えば結着樹脂と着色剤とを含んで構成される。結着樹脂としては、スチレン類、モノオレフィン類、ビニルエステル類、α−メチレン脂肪族モノカルボン酸エステル類、ビニルエーテル類、ビニルケトン類等の単独重合体および共重合体を例示することができ、特に代表的な結着樹脂としては、ポリスチレン、スチレン−アクリル酸アルキル共重合体、スチレン−メタクリル酸アルキル共重合体、スチレン−アクリロニトリル共重合体、スチレン−ブタジエン共重合体、スチレン−無水マレイン酸共重合体、ポリエチレン、ポリプロピレン等が挙げられる。さらに、ポリエステル、ポリウレタン、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、ポリアミド、変性ロジン、パラフィンワックス等も挙げられる。
【0164】
着色剤としては、マグネタイト、フェライト等の磁性粉、カーボンブラック、アニリンブルー、カルコイルブルー、クロムイエロー、ウルトラマリンブルー、デュポンオイルレッド、キノリンイエロー、メチレンブルークロリド、フタロシアニンブルー、マラカイトグリーンオキサレート、ランプブラック、ローズベンガル、C.I.ピグメント・レッド48:1、C.I.ピグメント・レッド122、C.I.ピグメント・レッド57:1、C.I.ピグメント・イエロー97、C.I.ピグメント・イエロー17、C.I.ピグメント・ブルー15:1、C.I.ピグメント・ブルー15:3等が代表的なものとして挙げられる。
【0165】
トナーには、帯電制御剤、離型剤、他の無機微粒子等の公知の添加剤を内添加処理や外添加処理してもよい。
【0166】
離型剤としては低分子ポリエチレン、低分子ポリプロピレン、フィッシャートロプシュワックス、モンタンワックス、カルナバワックス、ライスワックス、キャンデリラワックス等を代表的なものとして挙げられる。
【0167】
帯電制御剤としては、公知のものを使用することができるが、アゾ系金属錯化合物、サリチル酸の金属錯化合物、極性基を含有するレジンタイプ等の帯電制御剤を用いることができる。
【0168】
他の無機微粒子としては、粉体流動性、帯電制御等の目的で、平均1次粒径が40nm以下の小径無機微粒子を用い、更に必要に応じて、付着力低減の為、それより大径の無機あるいは有機微粒子を併用してもよい。これらの他の無機微粒子は公知のものを使用できる。
【0169】
また、小径無機微粒子については、表面処理を施すことにより分散性が高くなり、粉体流動性を上げる効果が大きくなるため有効である。
【0170】
本発明で用いられるトナーの製造方法としては、高い形状制御性を得られることから、乳化重合凝集法や溶解懸濁法等などの重合法が好ましく用いられる。また上記方法で得られたトナーをコアにして、さらに凝集粒子を付着、加熱融合してコアシェル構造をもたせる製造方法を行ってもよい。外添剤を添加する場合、トナー及び外添剤をヘンシェルミキサーあるいはVブレンダー等で混合することによって製造することができる。また、トナーを湿式にて製造する場合は、湿式にて外添することも可能である。
【0171】
転写装置212としては、ローラー状の接触帯電部材の他、ベルト、フィルム、ゴムブレード等を用いた接触型転写帯電器、あるいはコロナ放電を利用したスコロトロン転写帯電器やコロトロン転写帯電器等、が挙げられる。
【0172】
転写装置212としては、電子写真感光体207上に形成されたトナー像を被転写媒体500に転写する際に、電子写真感光体に向けて所定の電流密度の電流を供給可能なものであることが好ましい。
【0173】
クリーニング装置213は、転写工程後の電子写真感光体の表面に付着する残存トナーを除去するためのもので、これにより清浄面化された電子写真感光体は上記の画像形成プロセスに繰り返し供される。クリーニング装置としては、クリーニングブレードの他、ブラシクリーニング、ロールクリーニング等を用いることができるが、これらの中でもクリーニングブレードを用いることが好ましい。また、クリーニングブレードの材質としてはウレタンゴム、ネオプレンゴム、シリコーンゴム等が挙げられる。
【0174】
また、本発明の画像形成装置は、図13に示したように、イレース光照射装置214をさらに備えていてもよい。これにより、電子写真感光体が繰り返し使用される場合に、電子写真感光体の残留電位が次のサイクルに持ち込まれる現象が防止されるので、画像品質をより高めることができる。
【0175】
図14は本発明の画像形成装置の他の好適な一実施形態の基本構成を概略的に示す断面図である。図14に示した画像形成装置210は、電子写真感光体207に形成されたトナー像を、1次転写部材212aに転写した後、1次転写部材212aと2次転写部材212bとの間に供給される被転写媒体(画像出力媒体)500に転写する中間転写方式の転写装置を備えるもので、かかる転写の際には1次転写部材212aから電子写真感光体に向けて所定の電流密度の電流が供給可能となっている。なお、図14中には示していないが、画像形成装置210は、図13に示した画像形成装置200と同様に除電器を更に備えていてもよい。また、画像形成装置210の他の構成は画像形成装置200の構成と同様である。
【0176】
かかる画像形成装置210においては、電子写真感光体207に形成されたトナー像が1次転写部材212aに転写される際に、1次転写部材212aから電子写真感光体207に向けて所定の電流密度の電流を供給することで、被転写媒体500の種類・材質等による転写電流の変動を抑制することができるため、電子写真感光体207に流入する電荷量を精度よく制御することができるようになる。その結果、高画質化及び環境に対する負荷の低減を一層高水準で達成することが可能となる。
【0177】
図15は本発明の画像形成装置の他の好適な一実施形態の基本構成を概略的に示す断面図である。図15に示す画像形成装置220は中間転写方式の画像形成装置であり、ハウジング400内において4つの電子写真感光体401a〜401d(例えば、電子写真感光体401aがイエロー、電子写真感光体401bがマゼンタ、電子写真感光体401cがシアン、電子写真感光体401dがブラックの色からなる画像をそれぞれ形成可能である)が中間転写ベルト409に沿って相互に並列に配置されている。ここで、画像形成装置220に搭載されている電子写真感光体401a〜401dは、それぞれ先に説明した電子写真感光体である。
【0178】
電子写真感光体401a〜401dのそれぞれは所定の方向(紙面上は反時計回り)に回転可能であり、その回転方向に沿って帯電ロール402a〜402d、現像装置404a〜404d、1次転写ロール410a〜410d、クリーニングブレード415a〜415dが配置されている。現像装置404a〜404dのそれぞれにはトナーカートリッジ405a〜405dに収容されたブラック、イエロー、マゼンタ、シアンの4色のトナーが供給可能である。これらのトナーは平均形状係数が100〜140という条件を満たすものである。また、1次転写ロール410a〜410dはそれぞれ中間転写ベルト409を介して電子写真感光体401a〜401dに当接している。ここで、画像形成装置220に搭載されている帯電ロール402a〜402dは、それぞれ上述した本発明の帯電ロールである。
【0179】
さらに、ハウジング400内の所定の位置にはレーザー光源(露光装置)403が配置されており、レーザー光源403から出射されたレーザー光を帯電後の電子写真感光体401a〜401dの表面に照射することが可能となっている。これにより、電子写真感光体401a〜401dの回転工程において帯電、露光、現像、1次転写、クリーニングの各工程が順次行われ、各色のトナー像が中間転写ベルト409上に重ねて転写される。
【0180】
中間転写ベルト409は駆動ロール406、バックアップロール408及びテンションロール407により所定の張力をもって支持されており、これらのロールの回転によりたわみを生じることなく回転可能となっている。また、2次転写ロール413は、中間転写ベルト409を介してバックアップロール408と当接するように配置されている。バックアップロール408と2次転写ロール413との間を通った中間転写ベルト409は、例えば駆動ロール406の近傍に配置されたクリーニングブレード416により清浄面化された後、次の画像形成プロセスに繰り返し供される。
【0181】
また、ハウジング400内の所定の位置にはトレイ(被転写媒体トレイ)411が設けられており、トレイ411内の紙などの被転写媒体500が移送ロール412により中間転写ベルト409と2次転写ロール413との間、さらには相互に当接する2個の定着ロール414の間に順次移送された後、ハウジング400の外部に排紙される。
【0182】
なお、上述の説明においては中間転写体として中間転写ベルト409を使用する場合について説明したが、中間転写体は、上記中間転写ベルト409のようにベルト状であってもよく、又は、ドラム状であってもよい。ベルト状とする場合の中間転写体の基材として用いる樹脂材料としては、従来公知の樹脂を用いることができる。例えば、ポリイミド樹脂、ポリカーボネート樹脂(PC)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリアルキレンテレフタレート(PAT)、エチレンテトラフルオロエチレン共重合体(ETFE)/PC、ETFE/PAT、PC/PATのブレンド材料、ポリエステル、ポリエーテルエーテルケトン、ポリアミド等の樹脂材料及びこれらを主原料としてなる樹脂材料が挙げられる。さらに、樹脂材料と弾性材料をブレンドして用いることができる。
【0183】
弾性材料としては、ポリウレタン、塩素化ポリイソプレン、NBR、クロロピレンゴム、EPDM、水素添加ポリブタジエン、ブチルゴム、シリコーンゴム等を1種類、又は2種類以上をブレンドしてなる材料を用いることができる。これらの基材に用いる樹脂材料及び弾性材料に、必要に応じて、電子伝導性を付与する導電剤やイオン伝導性を有する導電剤を1種類又は2種類以上を組み合わせて添加する。この中でも、機械強度に優れる点で、導電剤を分散させたポリイミド樹脂を用いることが好ましい。上記の導電剤としては、カーボンブラック、金属酸化物、ポリアニリン等の導電性ポリマーを用いることができる。
【0184】
中間転写体として中間転写ベルト409のようなベルトの形状の構成を採用する場合、一般にベルトの厚さは50〜500μmが好ましく、60〜150μmがより好ましいが、材料の硬度に応じて適宜選択することができる。
【0185】
例えば、導電剤を分散させたポリイミド樹脂からなるベルトは、特開昭63−311263号公報に記載されているように、ポリイミド前駆体であるポリアミド酸の溶液中に導電剤として5〜20質量%のカーボンブラックを分散させ、分散液を金属ドラム上に流延して乾燥した後、ドラムから剥離したフィルムを高温下に延伸してポリイミドフィルムを形成し、さらに適当な大きさに切り出してエンドレスベルトとすることにより製造することができる。
【0186】
上記フィルム成形は、一般には、導電剤を分散したポリアミド酸溶液の成膜用原液を円筒金型に注入して、例えば、100〜200℃に加熱しつつ500〜2000rpmの回転数で円筒金型を回転させながら、遠心成形法によりフィルム状に成膜し、次いで、得られたフィルムを半硬化した状態で脱型して鉄芯に被せ、300℃以上の高温でポリイミド化反応(ポリアミド酸の閉環反応)を進行させて本硬化させることにより行うことができる。また、成膜原液を金属シート上に均一な厚みに流延して、上記と同様に100〜200℃に加熱して溶媒の大半を除去し、その後300℃以上の高温に段階的に昇温してポリイミドフィルムを形成する方法もある。また、中間転写体は表面層を有していても良い。
【0187】
また、中間転写体としてドラム形状を有する構成を採用する場合、基材としては、アルミニウム、ステンレス鋼(SUS)、銅等で形成された円筒状基材を用いることが好ましい。この円筒状基材上に、必要に応じて弾性層を被覆し、該弾性層上に表面層を形成することができる。
【0188】
図16は本発明のプロセスカートリッジの好適な一実施形態を概略的に示す断面図である。プロセスカートリッジ300は、上述した本発明の帯電ロールを有する帯電装置208とともに、電子写真感光体207、現像装置211、クリーニング装置(クリーニング手段)213、露光のための開口部218、及び、除電露光のための開口部217を取り付けレール216を用いて組み合わせ、そして一体化したものである。
【0189】
そして、このプロセスカートリッジ300は、転写装置212と、定着装置215と、図示しない他の構成部分とからなる画像形成装置本体に対して着脱自在としたものであり、画像形成装置本体とともに画像形成装置を構成するものである。
【0190】
以上説明した本発明の画像形成装置及びプロセスカートリッジにおいては、本発明の帯電ロールを用いているため、長期間にわたって良好な帯電特性が維持され、良好な画質の画像を安定して形成することができる。
【実施例】
【0191】
以下、実施例及び比較例に基づいて本発明をより具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0192】
<実施例1>
SUM材(快削鋼材)にニッケルメッキ及びクロメート処理を施した直径8mmの円柱状の導電性支持体上に、接着剤(KBE−903、信越化学工業社製)をハケにより塗布し、風乾させた。次に、ゴム材として、カーボンブラックを含有させた液状シリコーンゴム(LSR)(信越化学工業社製、ASKER−C硬度:30)を用い、射出成形法により、上記接着剤が塗布された導電性支持体上に弾性層を形成し、導電性弾性ロールA1を得た。このとき、弾性層は、導電性弾性ロールA1が直径14mm、ゴム長320mmのA3サイズのロールとなるように金型を用いて形成した。
【0193】
次に、導電性弾性ロールA1における弾性層上に、接着剤(DY39−067、東レ・ダウコーニング社製)を、図3に示すように、直径L=1mmの点状(円形状)に、各点がロールの軸方向及び周方向に等間隔となるように点状に穴を開けたポリイミドシートでマスキングをし、接着剤をスプレー塗布により塗布し、風乾させて接着層を形成した。ここで、隣り合う接着層同士の間隔D(=D)は0.5mmとし、且つ、ロールの端では一部接着層がロール端に接するようにした。これにより、導電性弾性ロールA2を得た。
【0194】
次に、ポリウレタン樹脂溶液(ニッポラン3113、日本ポリウレタン工業社製)100質量部、硬化剤としてのイソシアネート溶液(コロネート2507、日本ポリウレタン工業社製)10質量部、及び、導電剤としてのカーボンブラック(MONARCH1000、キャボット社製)27質量部をビーズミルにて分散してなる分散液に、MEK50質量部を加えて希釈し、抵抗層形成用塗布液を得た。得られた塗布液を、導電性弾性ロールA2の表面に浸漬塗布した後、180℃で60分間加熱乾燥し、厚さ300μmの抵抗層を形成して、導電性弾性ロールA3を得た。
【0195】
次に、高分子材料としての共重合ナイロン(アラミンCM8000、東レ社製)100質量部、導電剤としてのアンチモンドープ酸化スズ(SN−100P、石原産業社製)30質量部、メタノール500質量部及びブタノール240質量部をビーズミルにて分散してなる分散液に、メタノール750質量部を加えて希釈し、表面層形成用塗布液を得た。得られた塗布液を、導電性弾性ロールA3の表面に浸漬塗布した後、140℃で15分間加熱乾燥し、厚さ5μmの表面層を形成して、帯電ロールを得た。
【0196】
<実施例2>
実施例1と同様にして導電性支持体上に弾性層を形成し、導電性弾性ロールB1を得た。次に、導電性弾性ロールB1における弾性層上に、接着剤(DY39−067、東レ・ダウコーニング社製)を、図2に示すように、ロール周方向に沿った線状に、線幅W=1mm、間隔D=1mmで、ロールを回転させながら、ロール端より接着剤を含浸させたポリウレタンパッドを接触させて接着剤を塗布し、風乾させて接着層を形成した。ここで、ロールの端に最も近い接着層とロールの端との間隔は0.5mmとした。これにより、導電性弾性ロールB2を得た。
【0197】
次に、導電性弾性ロールB2上に実施例1と同様にして抵抗層を形成し、導電性弾性ロールB3を得た。更に、導電性弾性ロールB3上に実施例1と同様にして表面層を形成し、帯電ロールを得た。
【0198】
<実施例3>
実施例1と同様にして導電性支持体上に弾性層を形成し、導電性弾性ロールC1を得た。次に、導電性弾性ロールC1における弾性層上に、接着剤(DY39−067、東レ・ダウコーニング社製)を、図4に示すように、ロール軸方向に沿った線状に、線幅W=1mm、間隔D=1mmで、接着剤を含浸させたポリウレタンパッドを軸方向に移動させて接着剤を塗布し、風乾させて接着層を形成した。これにより、導電性弾性ロールC2を得た。
【0199】
次に、導電性弾性ロールC2上に実施例1と同様にして抵抗層を形成し、導電性弾性ロールC3を得た。更に、導電性弾性ロールC3上に実施例1と同様にして表面層を形成し、帯電ロールを得た。
【0200】
<実施例4>
実施例1と同様にして導電性支持体上に弾性層を形成し、導電性弾性ロールD1を得た。次に、導電性弾性ロールD1における弾性層上に、接着剤(DY39−067、東レ・ダウコーニング社製)を、図5に示すように、ロール軸方向に垂直な面に対して45°の角度を成す面と導電性弾性ロールD1表面との交線に沿って、線幅W=1mm、間隔D=1mmの線状に、ロールを回転させながら、ロール端より接着剤を含浸させたポリウレタンパッドを接触させて塗布し、風乾させて接着層を形成した。これにより、導電性弾性ロールD2を得た。
【0201】
次に、導電性弾性ロールD2上に実施例1と同様にして抵抗層を形成し、導電性弾性ロールD3を得た。更に、導電性弾性ロールD3上に実施例1と同様にして表面層を形成し、帯電ロールを得た。
【0202】
<実施例5>
実施例1と同様にして導電性支持体上に弾性層を形成し、導電性弾性ロールE1を得た。次に、導電性弾性ロールE1における弾性層上に、接着剤(DY39−067、東レ・ダウコーニング社製)を、図6に示すように、線幅W=1mm、間隔D=1mmの螺旋状に、ロールを回転させながら、ロール端より接着剤を含浸させたポリウレタンパッドを接触させて塗布し、風乾させて接着層を形成した。これにより、導電性弾性ロールE2を得た。
【0203】
次に、導電性弾性ロールE2上に実施例1と同様にして抵抗層を形成し、導電性弾性ロールE3を得た。更に、導電性弾性ロールE3上に実施例1と同様にして表面層を形成し、帯電ロールを得た。
【0204】
<実施例6>
実施例1と同様にして導電性支持体上に弾性層を形成し、導電性弾性ロールF1を得た。次に、接着剤(DY39−067、東レ・ダウコーニング社製)100質量部と導電剤(ケッチェンブラックEC、ライオン社製)1質量部とをボールミルにより分散し、接着層形成用塗布液を得た。この接着層形成用塗布液を用いて接着層を形成したこと以外は実施例1と同様にして、導電性弾性ロールF2を得た。
【0205】
次に、導電性弾性ロールF2上に実施例1と同様にして抵抗層を形成し、導電性弾性ロールF3を得た。更に、導電性弾性ロールF3上に実施例1と同様にして表面層を形成し、帯電ロールを得た。
【0206】
<実施例7>
SUM材(快削鋼材)にニッケルメッキ及びクロメート処理を施した直径8mmの円柱状の導電性支持体上に、接着剤(KBE−903、信越化学工業社製)をハケにより塗布し、風乾させた。次に、ゴム材として、カーボンブラックを含有させた液状シリコーンゴム(LSR)(信越化学工業社製、ASKER−C硬度:32)を用い、射出成形法により、上記接着剤が塗布された導電性支持体上に弾性層を形成し、導電性弾性ロールG1を得た。このとき、弾性層は、導電性弾性ロールG1が直径14mm、ゴム長320mmのA3サイズのロールとなるように金型を用いて形成した。
【0207】
次に、導電性弾性ロールG1上に実施例1と同様にして接着層を形成し、導電性弾性ロールG2を得た。次に、導電性弾性ロールG2上に実施例1と同様にして抵抗層を形成し、導電性弾性ロールG3を得た。更に、導電性弾性ロールG3上に実施例1と同様にして表面層を形成し、帯電ロールを得た。
【0208】
<実施例8>
実施例3と同様にして導電性支持体上に弾性層を形成し、導電性弾性ロールH1を得た。次に、導電性弾性ロールH1上に実施例2と同様にして接着層を形成し、導電性弾性ロールH2を得た。次に、導電性弾性ロールH2上に実施例1と同様にして抵抗層を形成し、導電性弾性ロールH3を得た。更に、導電性弾性ロールH3上に実施例1と同様にして表面層を形成し、帯電ロールを得た。
【0209】
<実施例9>
SUM材(快削鋼材)にニッケルメッキ及びクロメート処理を施した直径8mmの円柱状の導電性支持体上に、ポリオレフィン系接着剤(Chemlok250X、ロードファーイースト社製)100質量部及び導電剤(ケッチェンブラックEC、ライオン社製)3.0質量部をボールミルで24時間分散させてなる接着剤組成物をハケにより塗布し、風乾させて、厚さ20μmの接着層を形成した。
【0210】
次に、ゴム材としてのエピクロルヒドリン−エチレンオキシド−アリルグリシジルエーテル共重合ゴム(Gechron3106、日本ゼオン社製)100質量部、導電剤としてのカーボンブラック(アサヒサーマル、旭カーボン社製)12質量部、導電剤(ケッチェンブラックEC、ライオン社製)5質量部、イオン導電剤としての過塩素酸リチウム1質量部、加硫剤としての硫黄(200メッシュ、鶴見化学工業社製)1質量部、加硫促進剤(ノクセラーDM、大内新興化学工業社製)2.0質量部、加硫促進剤(ノクセラーTT、大内新興化学工業社製)0.5質量部、ジメチルジチオカルバミン酸亜鉛(ノクセラーPZ、正同化学工業社製)5質量部、及び、ステアリン酸1.5質量部をオープンロールで混練し、弾性層形成用組成物を得た。得られた組成物を用い、プレス成形機により、直径15mm、ゴム長320mmのロールとなるように上記接着剤が塗布された導電性支持体上に弾性層を形成した。その後、弾性層を研磨し、直径14mmの導電性弾性ロールI1を得た。
【0211】
次に、導電性弾性ロールI1における弾性層上に、ポリオレフィン系接着剤(Chemlok250X、ロードファーイースト社製)を、図3に示すように、直径L=1mmの点状(円形状)に、各点がロールの軸方向及び周方向に等間隔となるように点状に穴を開けたポリイミドシートでマスキングをし、接着剤をスプレー塗布により塗布し、風乾させて厚さ20μmの接着層を形成した。ここで、隣り合う接着層同士の間隔D(=D)は0.5mmとし、且つ、ロールの端では一部接着層がロール端に接するようにした。これにより、導電性弾性ロールI2を得た。更に、導電性弾性ロールI2上に実施例1と同様にして表面層を形成し、帯電ロールを得た。
【0212】
<実施例10>
SUM材(快削鋼材)にニッケルメッキ及びクロメート処理を施した直径8mmの円柱状の導電性支持体上に、接着剤(KBE−903、信越化学工業社製)をハケにより塗布し、風乾させた。次に、ゴム材として、カーボンブラックを含有させた液状シリコーンゴム(LSR)(信越化学工業社製、ASKER−C硬度:30)を用い、射出成形法により、上記接着剤が塗布された導電性支持体上に弾性層を形成し、導電性弾性ロールJ1を得た。このとき、弾性層は、導電性弾性ロールJ1が直径14mm、ゴム長320mmのA3サイズのロールとなるように金型を用いて形成した。
【0213】
次に、導電性弾性ロールJ1上に実施例1と同様にして接着層を形成し、導電性弾性ロールJ2を得た。次に、導電性弾性ロールJ2上に実施例1と同様にして抵抗層を形成し、導電性弾性ロールJ3を得た。更に、導電性弾性ロールJ3上に実施例1と同様にして表面層を形成し、帯電ロールを得た。
【0214】
<比較例1>
実施例1と同様にして導電性支持体上に弾性層を形成し、導電性弾性ロールa1を得た。次に、接着層を導電性弾性ロールa1の表面の全面に形成したこと以外は実施例1と同様にして、導電性弾性ロールa2を得た。
【0215】
次に、導電性弾性ロールa2上に実施例1と同様にして抵抗層を形成し、導電性弾性ロールa3を得た。更に、導電性弾性ロールa3上に実施例1と同様にして表面層を形成し、帯電ロールを得た。
【0216】
<比較例2>
実施例1と同様にして導電性支持体上に弾性層を形成し、導電性弾性ロールb1を得た。次に、導電性弾性ロールb1上に実施例1と同様にして抵抗層を形成し、導電性弾性ロールb2を得た。更に、導電性弾性ロールb2上に実施例1と同様にして表面層を形成し、帯電ロールを得た。
【0217】
<比較例3>
実施例1と同様にして導電性支持体上に弾性層を形成し、導電性弾性ロールc1を得た。次に、接着剤(DY39−067、東レ・ダウコーニング社製)100質量部と導電剤(ケッチェンブラックEC、ライオン社製)2.0質量部とをボールミルにより分散し、接着層形成用塗布液を得た。この接着層形成用塗布液を用いて、接着層を導電性弾性ロールc1の表面の全面に形成したこと以外は実施例1と同様にして、導電性弾性ロールc2を得た。
【0218】
次に、導電性弾性ロールc2上に実施例1と同様にして抵抗層を形成し、導電性弾性ロールc3を得た。更に、導電性弾性ロールc3上に実施例1と同様にして表面層を形成し、帯電ロールを得た。
【0219】
[帯電ロールの評価]
実施例1〜10及び比較例1〜3で得られた帯電ロールについて、弾性層及び接着層の体積抵抗率を、図7を用いて先に説明した方法により測定した。また、実施例1〜10及び比較例1〜3で得られた帯電ロールについて、接着層の形状から、弾性層表面の任意の10mm×10mmの領域内で接着層が形成されている領域の面積の割合(接着層形成率)を算出した。それらの結果を表6〜8に示す。
【0220】
また、実施例1〜10及び比較例1〜3で得られた帯電ロールを、それぞれ富士ゼロックス社製のカラー複写機DocuCentre Color a450(ゴム長320mmの帯電ロールを装着可能なように軸受けを改造したもの)のドラムカートリッジに装着し、画像形成装置を作製した。この画像形成装置を用い、画像密度5%のA3サイズの画像を、低温低湿(10℃、20%RH)の環境下にて3万枚の画像形成を行った後、続いて高温高湿(28℃、75%RH)の環境下にて3万枚の画像形成を行った。合計6万枚の画像形成を行った後、高温高湿及び低温低湿のそれぞれの環境下にて白紙及び50%ハーフトーンの画像をA3サイズで印刷し、その画質から帯電ムラの発生の有無を以下の評価基準に従って評価した。形成画像における高濃度領域やかぶりの発生の有無を確認することで、帯電ムラや表面電位低下の発生の有無を判断することができる。その評価結果を表6〜8に示す。
A:帯電ムラ未発生、
B:軽微な帯電ムラ発生、
C:一部帯電ムラ発生、
D:帯電ムラ発生、
E:帯電ムラ及び感光体表面電位低下発生。
【0221】
また、合計6万枚の画像形成後、弾性層とその上層との間の密着性を評価するために、帯電ロール表面を観察し、以下の評価基準に従って評価した。その評価結果を表6〜8に示す。
A:表面にシワの発生なし、
B:一部分に軽微なシワ発生、
C:表面に軽微なシワ発生、
D:一部分にシワ発生、
E:表面にシワ発生。
【0222】
更に、合計6万枚の画像形成後、接着層が形成されている領域内で、帯電ロールの表面から弾性層に達するまでカッターで切り込みを入れ、帯電ロールの弾性層から、それよりも上の層を手で剥離する試験を行った。このときの剥離状態を以下の評価基準に従って評価し、弾性層とその上層との間の接着性を評価した。その評価結果を表6〜8に示す。
A:接着性良好(弾性層とその上層との層間では剥離せずに弾性層が破壊)、
B:接着性良好(弾性層とその上層との層間では殆ど剥離せずに大部分で弾性層が破壊)、
C:接着性良好(弾性層とその上層との層間で一部剥離発生)、
D:接着性不良(弾性層とその上層との層間で容易に剥離可能)。
【0223】
【表6】



【0224】
【表7】



【0225】
【表8】



【0226】
表6〜8に示した結果から明らかなように、本発明の帯電ロール(実施例1〜10)によれば、比較例1〜3の帯電ロールと比較して、弾性層と該弾性層上に形成される機能層との間の接着性及び密着性が良好であり、剥がれの発生が十分に抑制されているとともに、長期間にわたって帯電ムラが抑制され、良好な帯電特性を維持することが可能であることが確認された。
【図面の簡単な説明】
【0227】
【図1】本発明の帯電ロールの好適な一実施形態を示す模式断面図である。
【図2】図1に示した帯電ロール10における導電性支持体1、弾性層2及び接着層3のみの構成を模式的に示す正面図である。
【図3】本発明の帯電ロールの他の好適な実施形態における導電性支持体1、弾性層2及び接着層3のみの構成を模式的に示す正面図である。
【図4】本発明の帯電ロールの他の好適な実施形態における導電性支持体1、弾性層2及び接着層3のみの構成を模式的に示す正面図である。
【図5】本発明の帯電ロールの他の好適な実施形態における導電性支持体1、弾性層2及び接着層3のみの構成を模式的に示す正面図である。
【図6】本発明の帯電ロールの他の好適な実施形態における導電性支持体1、弾性層2及び接着層3のみの構成を模式的に示す正面図である。
【図7】本発明の帯電ロールを構成する各層の体積抵抗率の測定方法を説明するための模式図である。
【図8】本発明の画像形成装置に用いられる電子写真感光体の一例を示す模式断面図である。
【図9】本発明の画像形成装置に用いられる電子写真感光体の他の一例を示す模式断面図である。
【図10】本発明の画像形成装置に用いられる電子写真感光体の他の一例を示す模式断面図である。
【図11】本発明の画像形成装置に用いられる電子写真感光体の他の一例を示す模式断面図である。
【図12】本発明の画像形成装置に用いられる電子写真感光体の他の一例を示す模式断面図である。
【図13】本発明の画像形成装置の好適な一実施形態の基本構成を概略的に示す断面図である。
【図14】本発明の画像形成装置の他の好適な一実施形態の基本構成を概略的に示す断面図である。
【図15】本発明の画像形成装置の他の好適な一実施形態の基本構成を概略的に示す断面図である。
【図16】本発明のプロセスカートリッジの好適な一実施形態を概略的に示す断面図である。
【符号の説明】
【0228】
1…導電性支持体、2…弾性層、3…接着層、4…抵抗層(機能層)、5…表面層、10…帯電ロール、11…シートサンプル、13…高抵抗測定器、14、15、16…電極、21…電流計、22…電源、31…電荷発生層、32…電荷輸送層、33…導電性基体、34…下引層、35…保護層、36…感光層、37…中間層、38…単層型感光層、100、110、120、130、140…電子写真感光体、200、210、220…画像形成装置、207…電子写真感光体、208…帯電装置、209…電源、210…露光装置、211…現像装置、212…転写装置、213…クリーニング装置、214…除電器、215…定着装置、216…取り付けレール、217…除電露光のための開口部、218…露光のための開口部、300…プロセスカートリッジ、400…ハウジング、401a〜401d…電子写真感光体、402a〜402d…帯電ロール、403…レーザー光源(露光装置)、404a〜404d…現像装置、405a〜405d…トナーカートリッジ、406…駆動ロール、407…テンションロール、408…バックアップロール、409…中間転写ベルト、410a〜410d…1次転写ロール、411…トレイ(被転写体トレイ)、412…移送ロール、413…2次転写ロール、414…定着ロール、415a〜415d…クリーニングブレード、416…クリーニングブレード、500…被転写媒体。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
導電性支持体と、該導電性支持体上に形成された弾性層と、該弾性層上に形成された機能層と、を有し、
前記弾性層と前記機能層とは、前記弾性層上に部分的に形成された接着層を介して接着されており、
前記接着層は、帯電ロールの軸方向又は周方向に沿って前記接着層を2回以上通るように引いた線上において、隣り合う前記接着層同士の間隔が0.1〜5.0mmとなるように形成されていることを特徴とする帯電ロール。
【請求項2】
電子写真感光体を接触帯電方式により帯電させるための帯電ロールを有する帯電手段と、
前記電子写真感光体、前記電子写真感光体に形成された静電潜像をトナーにより現像してトナー像を形成するための現像手段、及び、前記電子写真感光体の表面に残存したトナーを除去するためのクリーニング手段からなる群より選ばれる少なくとも一種と、
を備え、
前記帯電ロールは、導電性支持体と、該導電性支持体上に形成された弾性層と、該弾性層上に形成された機能層と、を有するものであり、前記弾性層と前記機能層とは、前記弾性層上に部分的に形成された接着層を介して接着されており、前記接着層は、帯電ロールの軸方向又は周方向に沿って前記接着層を2回以上通るように引いた線上において、隣り合う前記接着層同士の間隔が0.1〜5.0mmとなるように形成されていることを特徴とするプロセスカートリッジ。
【請求項3】
電子写真感光体と、前記電子写真感光体を接触帯電方式により帯電させるための帯電ロールを有する帯電手段と、
帯電した前記電子写真感光体に静電潜像を形成するための露光手段と、
前記静電潜像をトナーにより現像してトナー像を形成するための現像手段と、
前記トナー像を前記電子写真感光体から被転写体に転写するための転写手段と、
を備え、
前記帯電ロールは、導電性支持体と、該導電性支持体上に形成された弾性層と、該弾性層上に形成された機能層と、を有するものであり、前記弾性層と前記機能層とは、前記弾性層上に部分的に形成された接着層を介して接着されており、前記接着層は、帯電ロールの軸方向又は周方向に沿って前記接着層を2回以上通るように引いた線上において、隣り合う前記接着層同士の間隔が0.1〜5.0mmとなるように形成されていることを特徴とする画像形成装置。


【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate

【図16】
image rotate


【公開番号】特開2008−40242(P2008−40242A)
【公開日】平成20年2月21日(2008.2.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−215813(P2006−215813)
【出願日】平成18年8月8日(2006.8.8)
【出願人】(000005496)富士ゼロックス株式会社 (21,908)
【Fターム(参考)】