説明

帯電ロール、プロセスカートリッジ及び電子写真装置

【課題】抵抗値の経時変化、環境変化を低減し、安定かつ良好な均一帯電特性と出力画像品質が得られる帯電ロール、該帯電ロールを有するプロセスカートリッジ及び電子写真装置を提供する。
【解決手段】少なくとも支持部材と、該支持部材の外周を被覆する導電性被覆部材とで構成された帯電ロールであり、該導電性被覆部材が少なくとも熱可塑性樹脂とカーボンブラックとで構成された帯電ロールにおいて、該導電性被覆部材は、動的粘弾性による貯蔵弾性率と損失弾性率との比で表されるtanδのピーク温度が10Hzで0℃以上40℃以下の範囲にありかつ25℃におけるtanδ値が1.0以上であり、かつ25℃における緩和時間τが300秒以下であることを特徴とする帯電ロール、該帯電ロールを有するプロセスカートリッジ及び電子写真装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、導電ロール及び該帯電ロールを有するプロセスカートリッジ及び電子写真装置に関する。詳しくは、電子写真感光体に接触配置された帯電ロールに電圧を印加することで電子写真感光体表面を所定の電位に帯電する帯電ロール、及び該帯電ロールを有するプロセスカートリッジ及び電子写真装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電子写真法としては多数の方法が知られている。一般には光導電性物質を利用し、種々の手段により電子写真感光体上に電気的潜像を形成し、次いで該潜像をトナーで現像を行って可視像とし、紙等の転写材にトナー画像を転写した後、熱・圧力等により転写材上にトナー画像を定着して複写物を得るものである。また、転写材上に転写されずに電子写真感光体上に残ったトナー粒子は、クリーニング工程により電子写真感光体上より除去される。
【0003】
従来、電子写真の帯電装置としては、コロナ帯電器が使用されてきた。近年、これに代って、接触帯電装置が実用化されてきている。これは、低オゾン・低消費電力を目的としており、この中でも特に帯電部材として導電ロールを用いたロール帯電方式が、帯電の安定性という点から好ましく用いられている。
【0004】
帯電用の導電性部材としては、導電性支持部材上に導電性シームレスチューブにより表面層を形成した例がある(特許文献1参照)。更には、フッ素樹脂からなるシームレスチューブが開示され、導電性の異なる層構成よりなる多層チューブも開示されている。帯電部材としての製造にかかる方法としては、前記従来技術として、挿入により形成する方法が挙げられている。また、クロスヘッド押し出し機を用いた表面形成方法も提案されている。
【0005】
このような、シームレスチューブにより帯電ロールを形成する方法は、基体上の弾性層として発泡体を用いても、非発泡体(ソリッド)を用いても、シームレスチューブによって被覆することにより、均一な面を形成することができる。また、より均一な帯電ができ易く、かつ幅広い機種、製品に対応できる応用性を持っている。
【0006】
支持部材にシームレスチューブを被覆するには、シームレスチューブ内径を被覆すべき支持部材の外径よりも大とし、物理的あるいは化学的手段、例えば熱によりチューブを収縮させ嵌合させる手段がとられる。または、シームレスチューブ内径を被覆すべき支持部材の外径よりも小とし、物理あるいは化学的手段、例えば空気圧によりチューブを押し広げ嵌合させる手段がとられる。また、多層同時成形チューブとすることも可能である(特許文献2参照)。
【0007】
チューブの締め付け力によってのみ導電性被覆部材であるシームレスチューブを固定させる場合、チューブの内径に対して、支持部材の外径をより大きくすることで、非接着、未反応であっても、チューブを支持部材に固定することができる。
【0008】
しかしながら、チューブの締め付け力によってのみ導電性被覆部材であるシームレスチューブを固定させた場合、常にチューブに応力がかかった状態となり、経時、環境により応力変化が起こる。それに伴い、抵抗値の変化が起こることにより、帯電の不均一、帯電不良による画像不良が発生するという問題点があった。
【0009】
一方、シームレスチューブに導電性を持たせる手法としては、一般的に塩を導電剤として用いるイオン伝導法とカーボンブラック、導電性金属酸化物及び金属粉末等を導電剤として用いる電子伝導法とが挙げられる。イオン伝導により導電性を持たせた場合、抵抗値の環境変動が大きくなり易く、また、電子写真感光体と当接するため塩が電子写真感光体を汚染し易いといった問題がある。
【特許文献1】米国特許4,967,231号明細書
【特許文献2】特開平11−125952公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の目的は、抵抗値の経時変化、環境変化を低減し、安定かつ良好な均一帯電特性と出力画像品質が得られる帯電ロール、及び該帯電ロールを有するプロセスカートリッジ及び電子写真装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明に従って、被帯電体に接触し電圧を印加して帯電を行う帯電ロールであって、少なくとも支持部材と、該支持部材の外周を被覆する導電性被覆部材とで構成された帯電ロールであり、該導電性被覆部材が少なくとも熱可塑性樹脂とカーボンブラックとで構成された帯電ロールにおいて、該導電性被覆部材は、動的粘弾性による貯蔵弾性率と損失弾性率との比で表されるtanδのピーク温度が10Hzで0℃以上40℃以下の範囲にありかつ25℃におけるtanδ値が1.0以上であり、かつ25℃における緩和時間τが300秒以下であることを特徴とする帯電ロールが提供される。
【0012】
また、本発明に従って、該導電性被覆部材がシームレスチューブであり、該支持部材の外径を該導電性被覆部材の内径よりも大きくすることにより、該導電性被覆部材の締め付け力により該支持部材が被覆されていることを特徴とする上記記載の帯電ロールが提供される。
【0013】
また、本発明に従って、少なくとも電子写真感光体及び該電子写真装置を帯電する帯電部材を一体に支持し、電子写真装置本体に着脱自在であるプロセスカートリッジにおいて、該帯電部材が、該電子写真感光体に接触配置され、交流成分を含む電圧を印加されることにより該電子写真感光体を帯電する帯電部材であって、上記記載の帯電ロールを用いたことを特徴とするプロセスカートリッジが提供される。
【0014】
また、本発明に従って、電子写真感光体、該電子写真装置を帯電する帯電部材、該電子写真装置の表面に静電潜像を形成する露光手段、該電子写真装置の表面に形成された静電潜像をトナー現像する現像手段及び該トナー現像により形成されたトナー像を転写材に転写する転写手段を有する電子写真装置において、該帯電部材が、該電子写真感光体に接触配置され、交流成分を含む電圧を印加されることにより該電子写真感光体を帯電する帯電部材であって、上記記載の帯電ロールを用いたことを特徴とする電子写真装置が提供される。
【発明の効果】
【0015】
本発明により、抵抗値の経時変化、環境変化を低減し、安定かつ良好な均一帯電特性と出力画像品質が得られる帯電ロール、及び該帯電ロールを有するプロセスカートリッジ及び電子写真装置を提供することが可能となった。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、更に詳細に本発明について説明する。
【0017】
本発明者が鋭意検討を行った結果、熱可塑性樹脂とカーボンブラックを配合させて得られた導電性被覆部材は、その応力に伴い抵抗値が変化し、経時、環境とともに起こる応力緩和に追従して抵抗値が変化することが分かった。そこで、そのことに着目し、応力緩和が起こらない樹脂配合物であることよりも、応力緩和時間の短い樹脂配合物を用いて導電性被覆部材を形成することとした。そうすることで、製造直後のごく短い時間にのみ応力緩和つまり抵抗変動はおこるものの、その後の抵抗変化を小さくし、結果として安定した抵抗値を持つ帯電ロールを製造することが可能となった。
【0018】
本発明の帯電ロール11の構成の例を図1に示す。図1は、導電性被覆層が2層の場合であり、図中、1は導電性基体、2は弾性層、3は導電性被覆層であり、3(i)が内部層、3(o)が表面層である。なお、この帯電ロール11では、導電性基体1の外周に弾性層2が形成された部分が支持部材に相当し、その外周に形成されている導電性被覆層3は導電性被覆部材で形成されている。支持部材としては、この他に、導電性基体1自体を用いることもでき、また、導電性基体1上に弾性層2を設け、更に導電層及び/又は抵抗層を設けたもの等を用いることもできる。
【0019】
導電性基体1の材質としては、鉄、銅及びステンレス等の金属、カーボン分散樹脂、金属あるいは金属酸化物分散樹脂等が用いられ、その形態としては、円柱状軸等が使用できる。弾性層2は、クロロプレンゴム、イソプレンゴム、EPDMゴム、ポリウレタンゴム、エポキシゴム及びブチルゴム等のゴム又はスポンジや、スチレンブタジエン、ポリウレタン、ポリエステル及びエチレン−酢酸ビニル等の熱可塑性樹脂で形成することができる。これらのゴムや樹脂にカーボンブラック、金属及び金属酸化物粒子等の導電剤を含有させてもよい。
【0020】
導電性被覆層3を形成する導電性被覆部材は、動的粘弾性による貯蔵弾性率と損失弾性率との比で表されるtanδのピーク温度が10Hzで0℃以上40℃以下の範囲にある必要がある。さらに、導電性被覆層3を形成する導電性被覆部材は、25℃におけるtanδ値が1.0以上である必要がある。また、導電性被覆層3を形成する導電性被覆部材は、25℃における緩和時間τが300秒以下である必要がある。
【0021】
導電性被覆層3を形成する導電性被覆部材の形態は特に制限されるものではないが、製造安定性に優れ、従来安定生産が難しいとされた中抵抗領域を安定して生産できるという観点からシームレスチューブが好ましい。
【0022】
導電性被覆層3を形成する導電性被覆部材に用いられる熱可塑性樹脂及びカーボンブラックとしては、本発明のtanδの範囲、緩和時間の範囲に調整されていれば、その種類、配合比等特に制限されることはない。導電性被覆層3は、熱可塑性エラストマーを含むシームレスチューブであることがより好ましい。
【0023】
本発明のtanδの範囲、緩和時間の範囲に調整するためには、次のような方法が挙げられる。例えば、熱可塑性エラストマーのガラス転移温度を0〜40℃の材料やガラス転移温度が0〜40℃の構造を含む共重合ポリマーを用いる方法や、導電顔料として補強性の弱いストラクチャーの小さなカーボンブラックを用いる方法等がある。
【0024】
熱可塑性エラストマーとして具体的には、オレフィン系(TPO)、スチレン系(TPS)、ウレタン系(TPU)、エステル系(TPEE)、アミド系(TPA)、塩化ビニル(PVC)系、フッ素系などが挙げられる。これらの熱可塑性エラストマーに配合されるカーボンブラックとしては特に制限されることはなく、さらに抵抗値を制御等のために金属及び金属酸化物粒子等の導電剤を含有させてもよい。
【0025】
また、上記熱可塑性エラストマーのほかに、さらに熱可塑性樹脂、無機顔料等添加することは何ら問題ない。
【0026】
本発明の導電性被覆層3を形成するシームレスチューブの製造方法としては、まず熱可塑性エラストマーに、カーボンブラック等の導電顔料を必要な添加剤とともに混練し、続いてペレット化する。次に得られたペレットを押出し成形機によりシームレスチューブとする。そして、成形加工されたシームレスチューブを支持部材に被覆し、導電性被覆層3とする。
【0027】
本発明におけるシームレスチューブの厚みには特に制限はないが、好ましくは100〜600μmである。また、多層同時成形チューブとすることもなんら制限されるものではない。
【0028】
多層同時成形チューブとした際、各層各々が本発明のtanδの範囲、緩和時間の範囲に調整される必要はないが、帯電ロールの抵抗値に支配的な層、つまり抵抗値の一番高い層が少なくとも本発明のtanδの範囲、緩和時間の範囲に調整される必要がある。
【0029】
ここで、導電性被覆層を形成する導電性被覆部材の内径は、支持部材の外径よりも大きくすることが好ましい。こうすることにより、導電性被覆部材の締め付け力により支持部材を被覆することができ、支持部材と導電性被覆部材を接着、架橋等する必要がなくなる。例えば、空気圧によりシームレスチューブ状の導電性被覆部材を押し広げ、支持部材と嵌合することで、本発明の帯電ロールを製造できる。締め付け力と製造の容易さのバランスから、導電性被覆部材の内径は、支持部材の外径より150〜300μm大きくすることがより好ましい。
【0030】
導電性被覆層を形成する導電性被覆部材の動的粘弾性の測定は、JIS K6394の「加硫ゴムの動的性質試験方法」に基づいて行った。まず、熱可塑性樹脂とカーボンブラック等配合された熱可塑性樹脂組成物を加圧プレス機等により、シート状に成型し、厚さ0.40mm、幅6.0mm、長さ26mmに切り出す。その試料に対し、長さ引っ張り方向に、静荷重100mNを加え、動電型加振器によって周波数と振幅が設定された正弦波振動を加え、その時に発生する応力レスポンスを検出する。得られた動的応力波形および動的変位波形より貯蔵弾性率(E’)及び損失弾性率(E”)を算出し、それらの比からtanδを測定した。また、多層同時成形チューブの場合には、チューブを幅6.0mm、長さ26mmに切り出し、多層状態のまま上記と同様に測定した。
【0031】
また、導電性被覆層を形成する導電性被覆部材の応力緩和時間の測定は、次のように行った。上記シートから幅10mm、長さ50mmの短冊状サンプルを作製し、温度25℃下において、1000mm/minの速度で歪み5%を与え、引っ張り試験機のクロスヘッドを停止して応力の変化をモニターした。初期の応力の1/e(e=2.7183)(約37%)に応力が低下する時間を応力緩和時間(τ)として測定した。
【0032】
帯電ロールの抵抗値の測定は、次のように行った。温度25℃/湿度55%RHの環境下において、得られた帯電ロールを片側500g重の荷重をかけてSUSドラム(φ30mm)に当接させ、SUSドラムを30rpmで回転させ、帯電ロールの導電性基体より直流電圧を200V印加した。このときにSUSドラムに流れる電流値を測定し、抵抗値を求めた。
【0033】
図3に本発明の帯電ロールを一次帯電手段として有するプロセスカートリッジを具備する電子写真装置の構成の例を示す。本発明に用いられる電子写真感光体、露光手段、現像手段、転写手段及びクリーニング手段は、特に限定されるものではない。
【0034】
図3において、13は電子写真感光体であり、矢印方向に所定の周速度で回転駆動される。電子写真感光体13は、回転過程において、電源12に接続され、接触配置されている一次帯電手段としての本発明の帯電ロール11によりその周面に交流成分を含む正又は負の所定電位の均一帯電を受ける。次いで、スリット露光やレーザービーム走査露光等の露光手段(不図示)からの露光光14を受け、電子写真感光体13の周面に静電潜像が順次形成されていく。
【0035】
電子写真感光体13の周面に形成された静電潜像は、現像手段15によりトナー現像される。現像されたトナー像は、不図示の給紙部から電子写真感光体13と転写手段16との間に電子写真感光体13の回転と同期取りされて給紙された転写材17に、転写手段16により順次転写されていく。
【0036】
像転写を受けた転写材17は、電子写真感光体面から分離されて定着手段18へ導入されて像定着を受けることにより複写物(コピー)として装置外へプリントアウトされる。
【0037】
像転写後の電子写真感光体13の表面は、クリーニング手段19によって転写残りトナーの除去を受けて清浄面化され、繰り返し像形成に使用される。
【0038】
図3のプロセスカートリッジ21は、電子写真感光体13、本発明の帯電ロール11及び電源12、現像手段15、並びにクリーニング手段19が一体に支持されている。また、電子写真装置本体に設けられているプロセスカートリッジ装着のための装置本体レール20により、プロセスカートリッジ21は電子写真装置本体に着脱自在となっている。なお、本発明のプロセスカートリッジは、少なくとも電子写真感光体13及び本発明の帯電部材を有していればよい。すなわち、現像手段15及び/又はクリーニング手段19はプロセスカートリッジとは別に電子写真装置本体に内蔵されていてもよい。また、転写手段16及び/又は定着手段18を組み込んだプロセスカートリッジでもよい。
【実施例】
【0039】
以下、実施例をあげて説明をするが、本発明は実施例に限定されるものではない。なお本実施例中の「部」は質量部を示す。
【0040】
(発泡弾性層支持部材作製例)
導電性基体として、鉄材を押出し成形により、直径6mmの棒材に押出し、長さ244mmに切断後、化学メッキを厚さ約3μm施したものを用意した。次に、発泡弾性層の材料として、エチレンプロピレンジエンゴム(EPDM)を100部、カーボンブラックを10部と、発泡剤、加硫剤及びその他の添加剤を適量加え2本ロールで混練分散し、ゴムコンパウンドを得た。なお、カーボンブラックとしては、一次粒径30nm、比表面積1200m2/g、DBP吸油量500、pH9.0のものを使用した。得られたゴムコンパウンドを単軸押し出し機でチューブ状に押し出し成型し、160℃、0.7MPaの水蒸気中で30分間発泡と加硫を行い、直径12.5mm、長さ244mm、中心部の穴の直径4mmのチューブ状発泡弾性層を作製した。このチューブ状発泡弾性層を、表面に導電性接着剤を塗布した上記導電性基体上に被覆した。続いて200℃、0.7MPaの水蒸気中で30分間加硫した後、不要な端部のゴムを導電性基体の端面より10mm内側にて両端カットして、導電性スポンジゴム基層を作製した。その後、研磨によって直径11.5mmの発泡弾性層支持部材を得た。
【0041】
(シームレスチューブ作製例1/チューブ1)
チューブ表面層用として、以下の成分を加圧式ニーダーを用いて180℃で15分間混練し、冷却粉砕後に造粒用押し出し機によりペレット化した。
・スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体エラストマー(SIS)(スチレン含率20wt%) 80部
・アクリロニトリル−スチレン共重合樹脂(AS) 20部
・カーボンブラック(一次粒径30nm、比表面積800m2/g、DBP吸油量360、pH9.0) 10部
・ステアリン酸カルシウム 1部
チューブ内部層用として、以下の成分を加圧式ニーダーを用いて180℃で15分間混練し、冷却粉砕後に造粒用押し出し機によりペレット化した。
・熱可塑性ポリウレタンエラストマー(TPU) 100部
・カーボンブラック(一次粒径30nm、比表面積800m2/g、DBP吸油量360、pH9.0) 16部
・ステアリン酸カルシウム 1部
上記のペレットを用いて、内径φ18.0mmのダイスと外径φ16.5mmのポイントを備えた二色押し出し機で押し出し成形した。その後、サイジング、冷却工程を経て、内径φ11.0mm、表面層の厚さ100μm、内部層の厚さ200μmのシームレスチューブに成形加工した。
【0042】
(シームレスチューブ作製例2/チューブ2)
チューブ表面層用として、以下の成分を加圧式ニーダーを用いて180℃で15分間混練し、冷却粉砕後に造粒用押し出し機によりペレット化した。
・THV(住友3M製THV−220G、ポリ(テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン−フッ化ビニリデン)共重合体エラストマー) 100部
・カーボンブラック(一次粒径30nm、比表面積800m2/g、DBP吸油量360、pH9.0) 20部
・ステアリン酸カルシウム 1部
チューブ内層用ペレット及びその後の工程はシームレスチューブ作製例1と同様の製造工程を経て、内径φ11.0mm、表面層の厚さ100μm、内部層の厚さ200μmのシームレスチューブに成形加工した。
【0043】
(シームレスチューブ比較例1/チューブ3)
チューブ表面層用として、以下の成分を加圧式ニーダーを用いて180℃で15分間混練し、冷却粉砕後に造粒用押し出し機によりペレット化した。
・スチレン−水添ブタジエン−結晶性オレフィンブロック共重合体エラストマー(SEBC)(スチレン含率20wt%) 60部
・耐衝撃性ポリスチレン(HIPS) 40部
・カーボンブラック(一次粒径30nm、比表面積800m2/g、DBP吸油量360、pH9.0) 10部
・ステアリン酸カルシウム 1部
チューブ内層用ペレット及びその後の工程はシームレスチューブ作製例1と同様の製造工程を経て、内径φ11.0mm、表面層の厚さ100μm、内部層の厚さ200μmのシームレスチューブに成形加工した。
【0044】
(実施例及び比較例)
得られたシームレスチューブを前記発泡弾性層支持部材に被覆し、図1に示すような帯電ロール11を作製した。
【0045】
(tanδの測定)
シームレスチューブ作製例で得られた2層チューブを、長さ26.0mm、幅6.0mmに切り出した試料を作製し、以下の条件下で測定した。
測定装置:EXSTAR6000 DMS(エスアイアイ・ナノテクノロジー株式会社製商品名)
引っ張り刺激:(荷重制御、静荷重約100mN、ひずみ振幅5.0μm、正弦波)
温度:−50〜100℃
周波数:10Hz
上記測定から、貯蔵弾性率と損失弾性率との比で表されるtanδのピーク温度及び25℃におけるtanδ値を読み取った。
【0046】
(緩和時間の測定)
上記tanδの測定で用いられる試料と同様の試料を用いて、温度25℃下において、1000mm/minの速度で歪み5%を与え、引っ張り試験機のクロスヘッドを停止して応力の変化をモニターした。初期の応力の1/e(e=2.7183)(約37%)に応力が低下する時間を応力緩和時間(τ)として測定した。
【0047】
(帯電ロール抵抗値の測定)
温度25℃/湿度55%RHの環境下において、得られた帯電ロールを片側500g重の荷重をかけてSUSドラム(φ30mm)に当接させ、SUSドラムを30rpmで回転させ、帯電ロールの導電性基体より直流電圧を200V印加した。このときにSUSドラムに流れる電流値を測定し、帯電ロールの抵抗値を求めた。なお、帯電ロールの抵抗値は、初期及び後述する過酷保管後において測定した。
【0048】
(過酷保管評価)
実施例および比較例で得られた帯電ロールを図2に示す構成のプロセスカートリッジに組み込み、過酷保管環境(40℃、95%RH)にて30日間放置した。その後、プロセスカートリッジをレーザービームプリンターに装着、画像出しし、帯電ロールの高抵抗化に伴う画像不良の有無を確認した。
【0049】
以上の結果を表1にまとめて示す。
【0050】
以上の結果から、抵抗値の経時変化、環境変化を低減し、安定かつ良好な均一帯電特性と出力画像品質が得られる帯電ロール、及び該帯電ロールを有するプロセスカートリッジ及び電子写真装置を提供することが可能となった。
【0051】
【表1】

【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】本発明の帯電ロールの概略断面図である。
【図2】本発明の帯電ロールを有するプロセスカートリッジを具備する電子写真装置の概略構成図である。
【符号の説明】
【0053】
1 導電性基体
2 弾性層
3 導電性被覆層
3(i) 内部層
3(o) 表面層
11 帯電ロール
12 電源
13 電子写真感光体
14 露光光
15 現像手段
16 転写手段
17 転写材
18 定着手段
19 クリーニング手段
20 プロセスカートリッジ装着のための装置本体レール
21 プロセスカートリッジ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも支持部材と、該支持部材の外周を被覆する導電性被覆部材とで構成された帯電ロールであり、該導電性被覆部材が少なくとも熱可塑性樹脂とカーボンブラックとで構成された帯電ロールにおいて、該導電性被覆部材は、動的粘弾性による貯蔵弾性率と損失弾性率との比で表されるtanδのピーク温度が10Hzで0℃以上40℃以下の範囲にありかつ25℃におけるtanδ値が1.0以上であり、かつ25℃における緩和時間τが300秒以下であることを特徴とする帯電ロール。
【請求項2】
該導電性被覆部材がシームレスチューブであり、該支持部材の外径を該導電性被覆部材の内径よりも大きくすることにより、該導電性被覆部材の締め付け力により該支持部材が被覆されていることを特徴とする請求項1記載の帯電ロール。
【請求項3】
少なくとも電子写真感光体及び該電子写真装置を帯電する帯電部材を一体に支持し、電子写真装置本体に着脱自在であるプロセスカートリッジにおいて、該帯電部材が、該電子写真感光体に接触配置され、交流成分を含む電圧を印加されることにより該電子写真感光体を帯電する帯電部材であって、請求項1または2に記載の帯電ロールを用いたことを特徴とするプロセスカートリッジ。
【請求項4】
電子写真感光体、該電子写真装置を帯電する帯電部材、該電子写真装置の表面に静電潜像を形成する露光手段、該電子写真装置の表面に形成された静電潜像をトナー現像する現像手段及び該トナー現像により形成されたトナー像を転写材に転写する転写手段を有する電子写真装置において、該帯電部材が、該電子写真感光体に接触配置され、交流成分を含む電圧を印加されることにより該電子写真感光体を帯電する帯電部材であって、請求項1または2に記載の帯電ロールを用いたことを特徴とする電子写真装置。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2008−51865(P2008−51865A)
【公開日】平成20年3月6日(2008.3.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−225243(P2006−225243)
【出願日】平成18年8月22日(2006.8.22)
【出願人】(393002634)キヤノン化成株式会社 (640)
【Fターム(参考)】