説明

帯電部材の製造方法

【課題】長時間安定した帯電が行える帯電部材を提供する。
【解決手段】導電性支持体と、該導電性支持体上に設けられた導電性弾性体基層と、該導電性弾性体基層上に設けられた少なくとも1層の微粒子含有層とを有する帯電部材を製造する方法において、該微粒子含有層の形成に備えて微粒子を分散させる微粒子分散工程を有し、該微粒子分散工程には第1処理リングと、該第1処理リングに対して接近離反可能な第2処理リングを具備し、該第1処理用リングを該第2処理用リングに対して相対的に回転させる回転駆動機構とを具備し、該第1処理リングが静止の状態において、該第2処理リングは該第1処理リングを押圧しており、該第1処理リングと該第2処理リングとの間に少なくとも該微粒子を含む被処理液を導入することにより該第2処理リングを該第1処理リングから離間させ、該第1処理リングの回転により、該被処理液中に該微粒子を分散させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は帯電部材の製造方法に関し、詳しくは、電圧を印加して被帯電体である電子写真感光体表面を所定の電位に帯電処理するための帯電部材の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電子写真画像形成装置の一次帯電の方法として、接触帯電方法が実用化されている。これは、導電性支持体(芯金)の外周に導電性弾性層を設け、該導電性弾性層の外周に抵抗層を被覆して設けた帯電ローラを用い、芯金に電圧を印加し、帯電ローラと感光体の当接ニップの近傍で微小な放電をさせて感光体の表面を帯電する方法である。
【0003】
実際に普及している方法としては、直流電圧に交流電圧を重畳した電圧を印加するAC+DC帯電方式で、この場合、帯電の均一性を得るために重畳する交流電圧には、直流電圧印加時の帯電開始電圧の2倍以上のピーク間電圧Vppを持つ電圧が使用されている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
AC+DC帯電方式は、交流電圧を印加することにより安定した帯電を行える方法であるが、交流の電圧源を使用する分、帯電部材に直流電圧のみを印加するDC帯電方式に比較して、画像形成装置のコストが高くなってしまう。そこで、DC帯電方式についての提案がなされている(例えば、特許文献2参照)。
【0005】
このDC帯電方式では、一般的にAC帯電方式と比較して画像形成装置のコストが低減できる。しかし、AC+DC帯電のようにAC電流の均し効果が無いため、帯電の均一性が、AC+DC帯電方式に比較して劣ると言う問題がある。また、均し効果が無いため、帯電部材(ローラ)表面に付着した汚れや、帯電ローラ自身の電気抵抗の不均一性が画像に出易いという問題もある。例えばこの帯電ローラ構成の場合、導電性弾性体基層の電気抵抗が大き過ぎて、特に15℃/10%RHの様な低温低湿の環境中では感光体を帯電する能力が不充分となる。つまり低温低湿の環境中において600dpiの中間調画像の様な高精細画像を出力したい場合、細かい白スジが発生する。
【0006】
これらの問題を解決するため、帯電ローラの抵抗を小さくすることを目的として導電性弾性体に電子導電性の導電剤を添加する方法が提案されている(例えば、特許文献3参照)。
【0007】
この方法にはカーボンブラックで抵抗を調整したNBRゴムにポリオレフィン系ポリオールを2種類以上のイソシアネートで架橋した表層をコートした事務機器用部材が記載されている。しかしこの帯電部材(ローラ)を使用するとローラの部位による電気抵抗のムラが画像上に現れてしまい、満足し得る均一な帯電が不可能となる。特にこのような構成の帯電部材(ローラ)を抵抗の均一性の要求特性が厳しいDC帯電用帯電部材として用いた場合には良好な帯電特性を得ることは困難である。
【0008】
また、近年、ユーザーによるニーズの多様化により電子写真画像形成装置は、多種の印刷メディアへの対応が必要である。例えば厚さの異なる印刷メディアに対応する場合、メディアへ画像を定着するために必要な熱量が異なる。そこで電子写真装置を異なる2つ以上のプロセススピードで駆動しなければならない。このような場合には、DC帯電方式は、AC帯電方式に比較して良好な帯電特性を発揮する適正プロセススピードの範囲が狭いという問題点がある。つまり、印刷メディアの熱容量に応じ、メディアの厚みが厚い印刷メディアの場合にプロセススピードを遅くして定着部分を通過する時間を長くしたい場合や、あるいは、トランスペアレンシーシートに印刷する場合の様に、光の散乱を極力抑え、光の透過性の良い画像を得るために定着部でトナーを充分に溶融、混合させる為やはり定着部分を通過する時間を長くしたい場合等の場面で、DC帯電方式は、AC帯電方式に比較して良好な帯電を行うことがより困難であるという課題がある。
【0009】
そこでこれらの問題を解決するために導電性支持体と、該導電性支持体上に設けられた導電性弾性体基層と、該導電性弾性体基層上に設けられた少なくとも1層の微粒子含有層(表層)とを有する帯電部材が提案されている。この帯電部材は微粒子が該表層中に均一分散されており、その微粒子による凹凸効果が適正な帯電を可能とする他、微粒子に例えば無機微粒子を使用した場合、帯電能力が増加して帯電の安定化が図れる。このような帯電部材は非常に性能が良く、高精細画像をこの帯電部材を使用した画像形成装置で得た場合においても所望の画像が得られる。しかしながら前記した微粒子の均一な分散には多くの時間と設備を要しており、帯電部材製造コストを押し上げる原因となっていた。
【特許文献1】特開平01−204081号公報
【特許文献2】特開平05−341627号公報
【特許文献3】特開平11−100549号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の目的は、このような課題に対処してなされたもので、DC帯電法によって、例えば600dpiの中間調画像の様な高精細画像を出力した場合においても、良好な帯電特性により、異なるプロセススピードで使用しても長期間安定した帯電が行える帯電部材を低コストで効率良く製造する製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、上記した従来技術の課題を解決すべく鋭意検討の結果、異なるプロセススピードで使用しても長期間安定した帯電が行えるDC帯電用帯電部材を効率良く製造する製造方法を見出した。
【0012】
すなわち、導電性支持体と、該導電性支持体上に設けられた導電性弾性体基層と、その基層上に設けられた少なくとも1層の微粒子含有層とを有する帯電部材を製造する方法において、該帯電部材中において微粒子を均一に分散させるために、該微粒子を効率良くかつ低コストで分散する方法を見出した。
【0013】
その製造方法は従来から使用されているペイントシェーカー等の分散機を使用して分散を行うのではなく、少なくとも2枚の対向して配置されたリング状ディスクを持ちその間隙を通過させて微分散する装置を使用した帯電部材の製造方法である。
【0014】
詳しくは、本発明は、
導電性支持体と、該導電性支持体上に設けられた導電性弾性体基層と、該導電性弾性体基層上に設けられた少なくとも1層の微粒子含有層とを有する帯電部材を製造する方法において、
該微粒子含有層の形成に備えて微粒子を分散させる微粒子分散工程を有し、
該微粒子分散工程において分散機が使用され、
該分散機は、
第1処理リングと、該第1処理リングに対して接近離反可能な第2処理リングとを具備し、
該第1処理用リングを該第2処理用リングに対して相対的に回転させる回転駆動機構とを具備し、
該第1処理リングが静止の状態において、該第2処理リングは該第1処理リングを押圧しており、該第1処理リングと該第2処理リングとの間に少なくとも該微粒子を含む被処理液を導入することにより該第2処理リングを該第1処理リングから離間させ、該第1処理リングの回転により、該被処理液中に該微粒子を分散させる
ことを特徴とする帯電部材の製造方法である。
【0015】
更には前記微粒子は少なくとも無機微粒子を含むことを特徴とする帯電部材の製造方法である。
【0016】
更には前記微粒子はシランカップリング剤又はシリコーンオイル、もしくはシランカンプリング剤とシリコーンオイルの両方で表面処理された無機微粒子を含むことを特徴とする帯電部材の製造方法である。
【0017】
更には前記無機微粒子がシリカ粒子又は酸化スズ又はその双方であることを特徴とする帯電部材の製造方法である。
【0018】
更には前記酸化スズはアンチモンをドープした導電性酸化スズであることを特徴とする帯電部材の製造方法である。
【0019】
更には前記微粒子は無機微粒子と有機微粒子とを含有することを特徴とする帯電部材の製造方法である。
【0020】
更には前記導電性弾性体基層の主成分がエピクロルヒドリンゴムであることを特徴とする帯電部材の製造方法である。
【0021】
更には前記導電性支持体が炭素鋼合金製であることを特徴とする帯電部材の製造方法である。
【0022】
更には前記分散機には、該第1処理リング及び該第2処理リングの少なくとも一方の微振動やアライメントを緩衝する緩衝機構が備えられていることを特徴とする帯電部材の製造方法である。
【0023】
更には前記分散機に、該第1処理リングと該第2処理リングとの間の最大間隔を規定し、該最大間隔より大きい両処理リングの離反を抑止する離反抑止部が備えられていることを特徴とする帯電部材の製造方法である。
【0024】
更には前記分散機に、該第1処理リングと該第2処理リングとの間の最小間隔を規定し、該最小間隔より小さい両処理リングの近接を抑制する近接抑止部が備えられていることを特徴とする帯電部材の製造方法である。
【0025】
更には前記第1処理リングの最外周辺部の周速が10m/s〜100m/sであることを特徴とする帯電部材の製造方法である。
【0026】
更には前記第1処理リング及び前記第2処理リングの一方或いは双方に凹部を備えたものであり、前記第1処理リングの回転によって前記第2処理リングを前記第1処理リングから離間させることを特徴とする帯電部材の製造方法である。
【0027】
更には前記微粒子分散工程中の前記第1処理リングと前記第2処理リングとの間隙を調整するために前記第2処理リングに加える背圧Pが
1kPa < P < 800kPa
の範囲内にあることを特徴とする帯電部材の製造方法である。
【0028】
本発明は、従来、DC帯電方式では低温低湿環境下で安定な帯電を得ることが難しく、また、印刷メディアの厚さ等の理由により、ひとつの電子写真装置を異なる2つ以上のプロセススピードで使用するような場合には、DC帯電方式は、AC帯電方式に比較して良好な帯電特性を発揮するプロセススピードの範囲が狭いという問題点を、コストをかけず解決し得る製造方法である。
【0029】
本発明は、第1処理リング1と第2処理リング2の間隔を、機械的に一定に保つという従来の方式とは全く異なる発想により、所定の微小間隔に設定するようにした分散機を帯電部材の製造に使用する帯電部材の製造方法である。
【0030】
すなわち、この異なる発想とは、メカニカルシールに用いられている原理を利用して、第1処理リングを第2処理リングが押圧するように該第1処理リングと該第2処理リング間の受圧面を設定した後、微粒子を含む被処理液にポンプ等により掛けられた所定の圧力を利用して、該第1処理リング及び該第2処理リングを離反させる。この結果、該第1処理リングと該第2処理リングとの間に微小な膜厚の流体膜を形成することができる。そして、別に設けられた回転駆動機構により、該第1処理リングを該第2処理リングに対して相対的に回転させることにより、両処理リング間の微小間隔内で大きなせん断力を、微粒子を含む被処理液に付与することができる。その結果、従来得ることのできなかった精度の高い(均質な)分散、或いは、従来得ることができなかった微小なオーダーに調整された分散を、実現することが可能になる。即ち、この大きなせん断力により、二次凝集又は多次凝集した微粒子を一次粒子に解砕し、また大きな粒子を微細化又は破砕することが達成できる。よって、従来のペイントシェーカー等では不可能か又は長い分散時間を要していた微粒子を含む分散液を効率良く得ることも可能になった。
【0031】
しかも、従来のペイントシェーカーのように分散媒体(ガラスビーズ等)によるコンタミの可能性もなくなった。
【0032】
又、前記第1処理リング及び前記第2処理リングの少なくとも一方の微振動やアライメントを緩衝する緩衝機構が備えられていることが好ましい。このように、緩衝機構を備えたフローティング構造を用いることにより、芯振れなどのアライメントを吸収し、接触による磨耗などを原因とする事故の危険性を排除することができる。
【0033】
又、前記第1処理リングと前記第2処理リングとの間の最大間隔を規定し、該最大間隔より大きい両処理リングの離反を抑止する離反抑止部が備えられていることが好ましい。このため、該第1処理リングと該第2処理リングとの間の間隙が必要以上に広がることを防止し、均一な分散処理を確実且つ円滑に行うことを可能にした。
【0034】
又、前記第1処理リングと前記第2処理リングとの間の最小間隔を規定し、該最小間隔より小さい両処理リングの近接を抑制する近接抑止部が備えられていることが好ましい。これによって、第1処理用面と第2処理用面との間の隙間が必要以上に狭まることを防止し、均一な分散処理を確実且つ円滑に行うことを可能とした。
【0035】
又、前記第2処理リングの最外周辺部周速が10m/s〜100m/sであることが好ましい。
【0036】
10m/sより小さいと必要なせん断力が得られず、また100m/sより大きいと過剰な遠心力が生じて装置安定性に問題が生じる。
【0037】
又、前記第1処理リング及び前記第2処理リングの一方或いは双方に凹部を備えたものであり、該第1処理リングの回転によって該第2処理リングを該第1処理リングから離間させることが好ましい。
【0038】
このように該第1処理リング又は該第2処理リング或いはその双方に凹部を形成することにより、回転時凹部に動圧が発生することにより、両処理用面に離反力が作用して非接触で回転しながら確実に流体膜を形成することが可能となる。また攪拌能力を高めて、より効率的な分散処理を可能とする。
【0039】
又、分散工程中の第1処理リングと第2処理リングとの間隙を調整するために第2処理リングに加える背圧Pは
1kPa < P < 800kPa
の範囲内にあることが好ましい。1kPaより小さいと分散工程中、回転する第1処理リングにより生じた遠心力により、装置から過剰に被分散液が排出されるため、所定の分散を得られず好ましくない。また800kPaより大きいと被分散液が過剰に発熱して被処理液に悪影響を及ぼすため好ましくない。このように上記範囲内で背圧を負荷することにより被分散液の排出量と分散度合いを適正にすることができる。
【0040】
また本発明は、
帯電部材の製造方法において使用される分散機であって、
該分散機は、
第1処理リングと、該第1処理リングに対して接近離反可能な第2処理リングを少なくとも具備し、
該第1処理用リングを該第2処理用リングに対して相対的に回転させる回転駆動機構とを具備し、
該第1処理リングが静止の状態において、該第2の処理リングは該第1処理リングを押圧しており、該第1処理リングと該第2処理リングとの間に少なくとも該微粒子を含む被処理液を導入することにより該第2処理リングを該第1処理リングから離間させ、該第1処理リングの回転により、被処理液中に該微粒子を分散させる
ことを特徴とする分散機である。
【発明の効果】
【0041】
DC帯電法によって、例えば600dpiの中間調画像の様な高精細画像を出力した場合においても、良好な帯電特性により、異なるプロセススピードで使用しても長期間安定した帯電が行える帯電部材を効率良く、かつ低コストで製造することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0042】
本発明の製造方法により製造される帯電部材は、導電性支持体と、該導電性支持体上に設けられた導電性弾性体基層と、少なくとも微粒子を含有する表層とを有する。この帯電部材の具体的な構成を図1に示す。図1(a)は、帯電部材の横断面を示し、図1の(b)は、縦断面を示したものである。
【0043】
本発明により製造される帯電部材は、導電性支持体1とその外周に形成された導電性弾性体基層2と、該導電性弾性体基層2の外周を被覆する表層(微粒子含有層)3とを有する帯電部材である。
【0044】
図1に示す導電性支持体1は、炭素鋼合金製であることが強度、コストの面から好ましく、さらに炭素鋼合金表面に5μmの厚さのニッケルメッキを施した円柱であることが更に好ましい。導電性支持体を構成する材料として他にも、例えば鉄、アルミニウム、チタン、銅及びニッケル等の金属やこれらの金属を含むステンレススチール、ジュラルミン、真鍮及び青銅等の合金、更にカーボンブラックや炭素繊維をプラスチックで固めた複合材料等の、剛直で導電性を示す公知の材料を使用することもできる。また、形状としては円柱形状の他に、中心部分を空洞とした円筒形状とすることもできる。
【0045】
又図1に示すように本発明で製造する帯電部材は、導電性支持体1の外周に導電性弾性体基層2を成形しており導電性弾性体基層2は導電性弾性体からなっている。
【0046】
導電性弾性体は、導電剤と高分子弾性体とを混合して成形されており、導電剤は少なくともイオン導電剤が含有されている。高分子弾性体としては特にエピクロルヒドリンゴムが好ましい。エピクロルヒドリンゴムは、ゴム自体に若干の導電性があり、導電剤の添加量が少なくても良好な導電性を発揮することが出来、また、環境や位置による電気抵抗のバラツキも小さくすることが出来るので、高分子弾性体として好ましい。
【0047】
エピクロルヒドリンゴムは、エピクロルヒドリンを中心とする環状のエーテルの開環重合体であり、ゴムを構成する主な単量体には、エピクロルヒドリン、エチレンオキシド及びアクリルグリシジルエーテル等が挙げられる。
【0048】
重合体であるエピクロルヒドリンゴムとしては、エピクロルヒドリン単独重合体、エピクロルヒドリン−エチレンオキサイド共重合体、エピクロルヒドリン−アリルグリシジルエーテル共重合体及びエピクロルヒドリン−エチレンオキサイド−アリルグリシジルエーテル三元共重合体等が挙げられる。この中でも安定した中抵抗領域の導電性を示すことから、エピクロルヒドリン−エチレンオキサイド−アリルグリシジルエーテル三元共重合体が特に好適に用いられる。エピクロルヒドリン−エチレンオキサイド−アリルグリシジルエーテル三元共重合体は、重合度や組成比を任意に調整することで導電性や加工性を制御できる。
【0049】
高分子弾性体はエピクロルヒドリンゴムを主成分とするが、必要に応じてその他の一般的なゴムを含有されてもよい。
【0050】
その他の一般的なゴムとしては、例えばEPM(エチレン・プロピレンゴム)、EPDM(エチレン・プロピレンゴム)、ノルボーネンゴム、NBR(ニトリルゴム)、クロロプレンゴム、天然ゴム、イソプレンゴム、ブタジエンゴム、スチレン−ブタジエンゴム、クロロスルフォン化ポリエチレン、ウレタンゴム、SBS(スチレン・ブタジエン・スチレン−ブロックコポリマー)、SEBS(スチレン・エチレンブチレン・スチレン−ブロックコポリマー)等のスチレン系ブロックコポリマー及びシリコーンゴム等が挙げられる。
【0051】
上記の一般的なゴムを含有する場合、その含有量は、高分子弾性体全量に対し1〜50質量%であるのが好ましい。
【0052】
導電剤としては、導電性弾性体基層2の電気抵抗率のムラを小さくするという目的により、イオン導電剤を含有することが必要である。イオン導電剤が高分子弾性体の中に均一に分散し、導電性弾性体の電子抵抗率を均一化することにより、帯電ローラを直流電圧のみの電圧印加で使用したときでも均一な帯電を得ることができる。
【0053】
イオン導電剤としては、例えば、LiClOやNaClO等の過塩素酸塩、4級アンモニウム塩等が挙げられ、これらを単独又は2種類以上組み合わせて用いることができる。イオン導電剤の中でも、環境変化に対して抵抗が安定なことから特に過塩素酸4級アンモニウム塩が好適に用いられる。
【0054】
イオン導電剤に加えて、導電性弾性体の電気抵抗にムラを生じさせない範囲で、電子導電性の導電剤を添加することができる。電子導電性の導電剤は、電子導電性の導電剤の担う導電性が、イオン導電剤の担う導電性よりも小さい範囲で使用することができる。すなわち、電子導電性の導電剤は、高分子弾性体にイオン導電剤のみを添加した場合の体積抵抗率に対して、電子導電性の導電剤を加えて添加した場合の体積抵抗率が1/2以上であるような配合割合で使用することができる。電子導電性の導電剤としては、例えば、アルミニウム、パラジウム、鉄、銅、銀等の金属系の粉体や繊維、カーボンブラック、金属粉や酸化チタン、酸化錫、酸化亜鉛等の金属酸化物、硫化銅、硫化亜鉛等の金属化合物粉、又は適当な粒子の表面を酸化スズ、酸化アンチモン、酸化インジウム、酸化モリブデン、亜鉛、アルミニウム、金、銀、銅、クロム、コバルト、鉄、鉛、白金、ロジウムを電解処理、スプレー塗工、混合振とうにより付着させた粉体、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、PAN(ポリアクリロニトリル)系カーボン、ピッチ系カーボン等のカーボン粉がある。これらを単独で又は2種以上組み合わせて用いることができる。
【0055】
本発明において、これらの導電剤の配合量は導電性弾性体の体積抵抗率が、低温低湿環境(L/L:15℃/10%RH)、常温常湿環境(N/N:23℃/55%RH)、高温高湿環境(H/H:30℃/80%RH)で、中抵抗領域(体積抵抗率が1×10〜1×10Ω・cm)になるような量が好ましい。
【0056】
導電性弾性体の体積抵抗は、厚さ1mmのシートに成型した後、両面に金属を蒸着して電極とガード電極とを作製し、微小電流計(ADVANTEST R8340A ULTRA HIGH RESISTANCE METER (株)アドバンテスト社製)を用いて200Vの電圧を印加して30秒後の電流を測定し、膜厚と電極面積とから計算して求める。
【0057】
導電性弾性体の体積抵抗率がこれよりも小さいと、像担持体である感光体にピンホールがあった場合に大電流がピンホールに一気に集中してしまい、穴をより大きくしてしまったり、穴以外の場所に電流が流れなくなって高精細なハーフトーン画像上に黒い帯となって帯電電位が不足した部分が現れてしまったりといった不具合が発生する恐れがある。逆に体積抵抗率が大き過ぎると、導電性弾性層中で印加電圧が降下してしまい、必要な放電電流が得られずに感光体を所望する電位に均一に帯電させることができなくなることがある。
【0058】
この他にも導電性弾性体には必要に応じて、可塑剤、充填剤、加硫剤、加硫促進剤、老化防止剤、スコーチ防止剤、分散剤及び離型剤等の配合剤を加えることも好ましい。
【0059】
導電性弾性体の成形方法としては、上記の導電性弾性体の原料を混合して、例えば、押し出し成形や射出成形、圧縮成形等の公知の方法が挙げられる。また、導電性弾性体基層は、導電性支持体の上に直接導電性弾性体を成形して作製してもよいし、チューブ形状に成形した導電性弾性体を導電性支持体に被覆させてもよい。なお、導電性弾性体基層の作製後に表面を研磨して形状を整えてもよい。
【0060】
導電性弾性体基層の形状は、出来上がった帯電ローラと感光体との当接ニップ幅がローラの長手方向の分布でできるだけ均一になるよう、導電性弾性体基層ローラの中央部の直径が端部の直径よりも大きいクラウン形状となっていることが好ましい。また、出来上がったローラの当接ニップ幅が均一となるために、導電性弾性体基層ローラの振れが小さい方が好ましい。
【0061】
振れの測定値は、図2のように、導電性基体を回転軸として導電性弾性体基層ローラを回転させ、回転軸と垂直に非接触レーザー測長器(本発明においては、(株)キーエンス製 LS−5000)で測定した導電性弾性体基層の半径の最大値と最小値の差を値として求める。導電性弾性体基層の軸方向に1cmピッチで前記半径の最大値と最小値の差を求め、その値の中で最大の値を導電性弾性体基層ローラの振れの値とする。
【0062】
また、ローラの直径とは、同様に導電性基体を回転軸として導電性弾性体基層ローラを回転させ、回転軸と垂直に非接触レーザー測長器で測定した導電性弾性体基層の直径の最大値と最小値の平均とする。
【0063】
導電性弾性体基層ローラの軸方向中央部の直径と、弾性体の両端部から10mm中央側の部分の直径の値2つの平均との差を、クラウン量の値として求める。
【0064】
導電性弾性体基層ローラの振れの好ましい値は、ローラ中央部の直径の0.5%以下、より好ましくは0.25%以下である。本発明のローラの直径は12mm程度が好ましいので、振れの値は具体的には60μm以下が好ましく、より好ましくは30μm以下とする。
【0065】
クラウン量の値は出来上がったローラのニップ幅が均一になるように決めるが、好ましくはローラ直径の0.1〜5.0%、具体的には12μm〜600μmが好ましい。
【0066】
導電性弾性体のアスカーC硬度は、85°以下が好ましく、より好ましくは80°以下である。アスカーC硬度が85°を超えると、帯電部材と感光体との間のニップ幅が小さくなり、帯電部材と感光体との間の当接力が狭い面積に集中し、当接圧力が大きくなる。これによって帯電が安定しなくなったり、あるいは感光体や帯電部材の表面に現像剤その他が付着し易くなったりする等の弊害が顕著になる。
【0067】
なお、「アスカーC硬度」とは、日本ゴム協会標準規格SRIS0101に準拠したアスカーC型スプリング式ゴム硬度計(高分子計器株式会社製)を用いて測定した帯電部材の硬度であり、常温常湿(23℃/55%RH)の環境中に12時間以上放置した帯電部材に対して該硬度計を10Nの力で当接させてから30秒後に測定した値とする。
【0068】
アスカーC硬度を小さくするため、導電性弾性体に可塑剤を配合する。配合量は、好ましくは1質量部以上、より好ましくは3質量部以上である。可塑剤としては、例えばセバシン酸とプロピレングリコールの共重合体のような、エステル系の高分子可塑剤を用いることができる。このようなエステル系の可塑剤はエピクロルヒドリンゴムとの極性が近く、比較的大量に配合することが可能であり、基層の硬度を小さく制御できるメリットがある。高分子可塑剤の分子量は、好ましくは2000以上、より好ましくは4000以上である。分子量が2000より小さいと可塑剤がローラの表面に染み出してきて感光体を汚染する可能性がある。
【0069】
導電性弾性体基層2は、必要に応じて導電性支持体と接着剤を介して接着される。この場合、接着剤は導電性であることが好ましい。導電性とするため、接着剤には公知の導電剤を有することができる。
【0070】
接着剤のバインダーとしては、熱硬化性樹脂、熱可塑性樹脂等の樹脂が挙げられ、ウレタン系、アクリル系、ポリエステル系、ポリエーテル系、エポキシ系、等の公知の接着剤を用いることができる。
【0071】
導電剤としては、例えば、LiClOやNaClO等の過塩素酸塩、4級アンモニウム塩等のイオン導電剤、アルミニウム、パラジウム、鉄、銅、銀等の金属系の粉体や繊維、カーボンブラック、金属粉や酸化チタン、酸化錫、酸化亜鉛等の金属酸化物、硫化銅、硫化亜鉛等の金属化合物粉、又は適当な粒子の表面を酸化スズ、酸化アンチモン、酸化インジウム、酸化モリブデン、亜鉛、アルミニウム、金、銀、銅、クロム、コバルト、鉄、鉛、白金、ロジウムを電解処理、スプレー塗工、混合振とうにより付着させた粉体、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、PAN(ポリアクリロニトリル)系カーボン、ピッチ系カーボン等のカーボン粉がある。これらを単独で又は2種以上組み合わせて用いることができる。
【0072】
導電性弾性体基層の被覆層として図1に示すように表層(微粒子含有層)3を設ける。本発明により製造される帯電部材の表層は、少なくとも微粒子とを含有する。
【0073】
該微粒子が例えば無機粒子の場合、シリカ粉体を含有することが好ましい。シリカを含有すると、高抵抗な帯電ローラを使用しても帯電電位の絶対値が大きくなり、かつ安定するので、DC帯電ローラ用として特に好ましい。
【0074】
本発明で用いることのできるシリカ微粉体としては、ケイ素ハロゲン化合物の蒸気相酸化により生成された乾式法又はヒュームドシリカと称される乾式シリカ及び水ガラス等から製造される湿式シリカの両方が使用可能であるが、表面及び内部にあるシラノール基が少なく、製造残渣のない乾式シリカの方が好ましい。シリカの一次粒子径は0.5μm以下程度の微粒子であることが好ましい。
【0075】
更に、本発明においては、疎水化処理されているシリカ微粉体を用いることで高分散が得られ好ましい。疎水化処理するには、シリカ微粉体と反応あるいは物理吸着する有機ケイ素化合物で化学的に処理することによって付与される。好ましい方法としては、ケイ素ハロゲン化合物の蒸気相酸化により生成された乾式シリカ微粉体をシランカップリング剤で処理する方法、あるいはシリコーンオイルの如き有機ケイ素化合物で処理する方法、あるいはシランカップリング剤で処理した後、或いはシランカップリング剤で処理すると同時にシリコーンオイルの如き有機ケイ素化合物で処理する方法等が挙げられる。
【0076】
疎水化処理に使用されるシランカップリング剤としては、例えば、ヘキサメチルジシラザン、トリメチルシラン、トリメチルクロルシラン、トリメチルエトキシシラン、ジメチルジクロルシラン、メチルトリクロルシラン、アリルジメチルクロルシラン、アリルフェニルジクロルシラン、ベンジルジメチルクロルシラン、ブロムメチルジメチルクロルシラン、α−クロルエチルトリクロルシラン、β−クロルエチルトリクロルシラン、クロルメチルジメチルクロルシラン、トリオルガノシランメルカプタン、トリメチルシリルメルカプタン、トリオルガノシリルアクリレート、ビニルジメチルアセトキシシラン、ジメチルエトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、ジフェニルジエトキシシラン、ヘキサメチルジシロキサン、1,3−ジビニルテトラメチルジシロキサン及び1,3−ジフェニルテトラメチルジシロキサンが挙げられる。
【0077】
疎水化処理に使用される有機ケイ素化合物としては、シリコーンオイルが挙げられ、好ましいシリコーンオイルとしては、25℃における粘度がおよそ30〜1,000センチストークスのものが用いられる。例えば、ジメチルシリコーンオイル、メチルフェニルシリコーンオイル、α−メチルスチレン変性シリコーンオイル、クロルフェニルシリコーンオイル又はフッ素変性シリコーンオイルを用いることが好ましい。
【0078】
シリコーンオイルによる疎水化処理の方法としては、例えば、シランカップリング剤で処理されたシリカ微粉体とシリコーンオイルとをヘンシェルミキサーの如き混合機を用いて直接混合してもよいし、ベースとなるシリカヘシリコーンオイルを噴射する方法によってもよい。あるいは、適当な溶剤にシリコーンオイルを溶解あるいは分散せしめた後、ベースのシリカ微粉体と混合し、溶剤を除去することによって疎水化処理してもよい。
【0079】
無機粒子の添加量は塗工後の表層中の質量割合として、0.1〜10%が好ましい。少なすぎると無機粒子を添加して帯電が安定する効果が得られないし、多すぎると表層塗料の粘度の制御が難しくなり、均一に塗工することが難しくなるので、好ましくない。
【0080】
又、表層に例えば有機粒子を含有した場合、架橋した高分子微粒子を用いることが好ましい。架橋していないと表層塗工用の塗料としたときに溶解する恐れがあるので好ましくない。架橋した高分子微粒子を作るモノマーとしては、特には限定しないが、重合の容易さ等から、ビニル系のモノマーが好適に用いられる。
【0081】
本発明に用いるビニル系モノマーは、例えば、アクリル酸メチル、アクリル酸ブチル、アクリル酸2−エチルへキシル等のアクリル酸エステル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸へキシル等のメタクリル酸エステル、スチレン、pーメチルスチレン、α−メチルスチレン等の芳香族系ビニル単量体、酢酸ビニル、アクリロニトリル等が挙げられる。
【0082】
樹脂粒子が架橋された高分子微粒子となるために、本発明においては、上記のビニル系モノマー以外に、分子内にビニル基を2つ以上有する架橋性のビニル系モノマーを使用する。このような架橋性のビニル系モノマーとしては、例えば、エチレングリコールジアクリレート、エチレングリコールジメタアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、トリメチロールプロパントリメタアクリレート、等が挙げられる。これら架橋性のビニル系モノマーの添加量は、非架橋性のビニルモノマーに対して0.5〜30質量部が好ましい。
【0083】
これらの架橋された高分子微粒子は、シード乳化重合、分散重合、懸濁重合等により重合されるが、低分子の界面活性剤等の残留が少ないので、懸濁重合によって重合されることが好ましい。重合開始剤は、特に限定されないが、過酸化ベンゾイル、過酸化ラウロイル等の過酸化物系触媒、アゾビスイソブチロニトリルのようなアゾ系触媒が挙げられる。
【0084】
本発明で使用される架橋された高分子微粒子は、形状がより真球形状に近いことがより好ましい。
【0085】
具体的には、平均円形度が0.95以上で、円形度標準偏差が0.040未満となるように高分子微粒子の粒子形状を精密に制御することにより、帯電ローラの表面粗さが均一になり、異なるプロセススピードで使用してもより均一な帯電特性を得ることが出来る。
【0086】
本発明における円形度は、粒子の形状を定量的に表現する簡便な方法として用いたものであり、本発明では東亜医用電子社製フロー式粒子像分析装置FPIA−1000を用いて粒子形状の測定を行い、円形度を下式により求める。更に下式で示すように、測定された全粒子の円形度の総和を全粒子数で除した値を平均円形度と定義する。
【0087】
【数1】

【0088】
ここで、「粒子投影面積」とは二値化されたトナー粒子像の面積であり、「粒子投影像の周囲長」とは該トナー粒子像のエッジ点を結んで得られる輪郭線の長さと定義する。
【0089】
なお、本発明で用いている測定装置である「FPIA−1000」は、各粒子の円形度を算出後、平均円形度及び円形度標準偏差の算出に当たって、粒子を得られた円形度によって、円形度0.400〜1.000を0.010間隔で、0.400以上0.410未満、0.410以上0.420未満…0.990以上1.000未満及び1.000の如くに61分割した分割範囲に分け、分割点の中心値と頻度を用いて平均円形度及び円形度標準偏差の算出を行う算出法を用いている。
【0090】
この算出法で算出される平均円形度及び円形度標準偏差の各値と、上述した各粒子の円形度を直接用いる算出式によって算出される平均円形度及び円形度標準偏差の各値との誤差は、非常に少なく、実質的には無視できる程度であるため、本発明においては、算出時間の短絡化や算出演算式の簡略化の如きデータの取扱上の理由で、上述した各粒子の円形度を直接用いる算出式の概念を利用し、一部変更したこの様な算出法を用いている。
【0091】
本発明における円形度は、粒子の凹凸の度合いを示す指標であり、粒子が完全な球形の場合に1.000を示し、表面形状が複雑になる程、円形度は小さな値となる。
【0092】
具体的な測定方法としては、容器中に予め不純固形物などを除去したイオン交換水10mlを用意し、その中に分散剤として界面活性剤、好ましくはアルキルベンゼンスルホン酸塩を加えた後、更に測定試料を0.02g加え、均一に分散させる。分散させる手段としては、超音波分散機「UH−50型」(エスエムテー社製)に振動子として5φのチタン合金チップを装着したものを用い、5分間分散処理を用い、測定用の分散液とする。その際、該分散液の温度が40℃以上とならない様に適宜冷却する。
【0093】
樹脂粒子の形状測定には、前記フロー式粒子像測定装置を用い、測定時のトナー粒子濃度が3000〜1万個/μlとなる様に該分散液濃度を再調整し、トナー粒子を1000個以上計測する。
【0094】
樹脂粒子の平均粒径は、100μm以下であることが好ましい。より好ましくは、0.5〜50μmであることが好ましい。さらに好ましくは、1〜25μmであることが好ましい。また、質量平均粒径の3倍以上の粒径を有す樹脂粒子が実質的に皆無であることが好ましい。粒径が大きすぎると帯電ローラ表面が粗れ過ぎて帯電が不均一になってしまうという弊害がある。また、小さすぎると樹脂粒子を添加して低プロセススピードの領域での帯電を安定化させる効果が現れないので好ましくない。
【0095】
以下に、本発明における樹脂粒子の粒径測定の具体例を示す。
【0096】
電解質溶液100〜150mlに界面活性剤(アルキルベンゼンスルホン酸塩)を0.1〜5ml添加し、これに測定試料を2〜20mg添加する。試料を懸濁した電解液を超音波分散器で1〜3分間分散処理して、前述したコールターカウンターマルチサイザーにより17μmまたは100μm等の適宜樹脂粒子サイズに合わせたアパチャーを用いて体積を基準として0.3〜40μmの粒度分布等を測定するものとする。
【0097】
樹脂粒子の添加量は塗工後の表層中の質量割合として、1〜80質量%が好ましい。少なすぎると樹脂粒子を添加して帯電が安定する効果が得られないし、多すぎると表層塗料の粘度の制御が難しくなり、均一に塗工することが難しくなるので、好ましくない。
【0098】
表層のバインダーとしては、熱硬化性樹脂、熱可塑性樹脂等の樹脂が用いられる。
【0099】
本発明の帯電部材表層のバインダーとしては、ラクトン変性アクリルポリオールを、イソホロンジイソシアネートとヘキサメチレンジイソシアネートとで架橋したウレタン樹脂が特に好適に用いられる。
【0100】
表層のポリオールを架橋させるイソシアネートとしてヘキサメチレンジイソシアネートを単独で用いた場合、表層が柔軟でローラの塗工後の表面が均一に仕上がるというメリットがある反面、苛酷な高温高湿環境では出来上がった表層が基層中の未加硫成分(例えば、イオン導電剤や可塑剤)がローラ表面へ染み出してくることを充分に阻止できない可能性がある。このような染み出し物質が存在すると、感光体を汚染する可能性がある。
【0101】
一方、表層のポリオールを架橋させるイソシアネートとしてイソホロンジイソシアネートを単独で用いた場合、表層が基層からの染み出し物質の染み出しを防止する効果は大きいが、表層が固くなり過ぎて基層ゴムの熱収縮に追従できず、出来上がったローラの表面にシワが発生し、ローラの表面粗さや形状の面で望みのローラを得ることができないという弊害がある。
【0102】
本発明のローラの表層は、イソホロンジイソシアネートの染み出し物質ブロック性とヘキサメチレンジイソシアネートの柔軟性とを併せ持った良好な特性をもつ表層樹脂を提供し、イオン性の基層からの染み出し物質がローラ表面に染み出してくることを防止しつつ、良好な表面形状を有する帯電ローラを得ることができる。
【0103】
すなわち、本発明において表層に用いる樹脂は、ラクトン変性アクリルポリオールとイソホロンジイソシアネートとヘキサメチレンジイソシアネートとをブレンドし硬化させることにより、ラクトン変性アクリルポリオールに対してイソホロンジイソシアネートとヘキサメチレンジイソシアネートとがランダムに反応して、架橋構造が形成されたものである。
【0104】
本発明に用いるイソシアネートは、イソシアヌレート型の3量体とすることがより好ましい。分子の剛直な3量体が架橋点となり、表層がより密に架橋することができ、イオン性の基層からの染み出し物質がローラ表面に染み出してくることをより一層効果的に防止することができる。
【0105】
また、本発明に用いるイソシアネートは、イソシアネート基がブロック剤によりブロックされたブロックイソシアネートとすることがより好ましい。この理由としては、上記イソシアネート基は反応し易く、表層塗料を常温に長時間放置しておくと徐々に反応が進み、塗料の特性が変化してしまう恐れがあるからである。これに対してブロックイソシアネートは、活性なイソシアネート基がブロックされ、ブロック剤の解離温度までは反応しないので、塗料の取扱が容易になるというメリットがある。マスキングを行うブロック剤には、フェノール、クレゾール等のフェノール類、ε−カプロラクタムのラクタム類及びメチルエチルケトオキシム等のオキシム類等が挙げられるが、本発明の場合、解離温度が比較的低温のオキシム類が好ましい。
【0106】
本発明の表層樹脂を構成するラクトン変性アクリルポリオールとブロックイソシアネートの3量体を図示する。
【0107】
【化1】


【0108】
【化2】


【0109】
【化3】


【0110】
一方、ラクトン変性アクリルポリオールのOH価は80KOHmg/g程度であることが好ましい。OH価が少ないと、イソシアネートで架橋されにくくなり、それによって樹脂が柔らかくなり過ぎて感光体に貼り付き易くなる。OH基が大き過ぎると塗膜が硬くなり過ぎて割れ易くなる。
【0111】
本発明のラクトン変性アクリルポリオールは、分子鎖骨格がスチレンとアクリルの共重合体であり、適度な硬度と非汚染性を有する。また、末端に水酸基を有する変性したラクトン基が多数の架橋点となり、イソシアネートで密に架橋することが可能であり、基層からの未加硫成分の染み出しを防止することができる。このようなラクトン変性アクリルポリオールとしては、例えば、プラクセルDC2009(ダイセル化学工業株式会社製)が挙げられる。
【0112】
表層に用いる樹脂のガラス転移温度Tgは粘弾性測定法で、ピーク温度は45℃以上が好ましく、特には50℃以上あることが好ましい。45℃未満であると、感光体と当接したまま長期間放置した場合に感光体に貼り付いてしまったり、あるいは帯電ローラ表面がトナー等によって汚れ易くなったりするという弊害があるので、好ましくない。
【0113】
本発明におけるガラス転移温度Tgの測定方法は以下のようにする。まず、測定用の表層サンプルは、ローラ状態から表層を剥がし、5mm×40mm程度の短冊形に切り出す。測定装置は、動的粘弾性測定装置RSA−II(レオメトリックス・サイエンティフィック・エフ・イー(株)製)を用い、また治具としてフィルムテンションフィクスチャーを用いる。測定は、−50℃〜150℃の温度範囲において測定周波数6.28rad/sec、昇温速度5℃/min.、初期歪0.07〜0.25%のオートテンションモードで行う。損失正接tanδの温度分散を測定し、ピーク温度をTgとする。
【0114】
また特に限定はしないが、あまりTgが高過ぎても樹脂の可撓性がなくなり、塗膜が割れ易くなるので好ましくない。Tgは、架橋させるイソシアネートの比率又は量によって調節する。
【0115】
ラクトン変性アクリルポリオール樹脂とイソシアネートとの配合比は、配合した塗料中のイソシアネートの中のNCO基の数(A)と、ラクトン変性アクリルポリオール樹脂中のOH基の数(B)との比、NCO/OH比=A/Bは0.1〜2.0が好ましく、特に好ましくは0.3〜1.5の範囲になるように調整する。
【0116】
ラクトン変性アクリルポリオールをイソシアネートで架橋することにより、導電性弾性体基層からの低分子成分の染み出しを防止するとともに、帯電ローラ自体がトナー等に対して汚れにくく、かつ感光体を汚染しない表層を形成することができる。
【0117】
表層を形成する樹脂塗料には、各種の導電剤やレべリング剤を混合することも好ましい。レべリング剤としては、例えばシリコーンオイルが挙げられる。
【0118】
表層に用いる導電剤としては、例えばアルミニウム、パラジウム、鉄、銅、銀等の金属系の粉体や繊維、カーボンブラック、金属粉や酸化チタン、酸化錫、酸化亜鉛等の金属酸化物、硫化銅や硫化亜鉛等の金属化合物、酸化スズ、酸化アンチモン、酸化インジウム、酸化モリブデン、亜鉛、アルミニウム、金、銀、銅、クロム、コバルト、鉄、鉛、白金、ロジウム等を電解処理、スプレー塗工、混合振とうにより表面に付着させた粉体、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、PAN系カーボン、ピッチ系カーボン等のカーボン粉が挙げられる。
【0119】
本発明の帯電部材表層における導電剤としては、アンチモンをドープした導電性酸化スズが特に好適に用いられる。その理由は、アンチモンをドープした導電性酸化スズは、導電剤自体の体積抵抗率が比較的大きく、導電剤を分散する樹脂の体積抵抗率との差が他の導電剤に比較して小さいので、導電剤を分散して中抵抗の表層材料としたときに、導電剤の分布の僅かな差が表層材料の抵抗の差を生じにくく、抵抗の位置によるばらつきを比較的小さく抑制することができることが、本発明の表層材料の導電剤として好適であるからである。
【0120】
表層の樹脂に加えるこれらの導電剤の配合量は、表層の樹脂の体積抵抗率が低温低湿環境(L/L:15℃/10%RH)、常温常湿環境(N/N:23℃/55%RH)、高温高湿環境(H/H:30℃/80%RH)で、中抵抗領域(体積抵抗率が1×10〜1×1015Ω・cm)になるように決める。
【0121】
表層の体積抵抗率がこれよりも小さいと、帯電ローラとして使用した場合、感光体にピンホールがある時にピンホールに過大な電流が流れてリークしてしまい、リークした跡が画像に表れてしまうので好ましくない。逆に体積抵抗率が大き過ぎると、帯電ローラに電流が流れず、感光体を所定の電位に帯電することができず画像が所望する濃度にならないという弊害がある。また、ある程度の電位に帯電したとしても帯電が不均一になり画像上に表れてしまうので好ましくない。
【0122】
表層の体積抵抗は、ローラ状態から表層を剥がし、5mm×5mm程度の短冊形に切り出す。両面に金属を蒸着して電極とガード電極とを作製し、微小電流計(ADVANTEST R8340A ULTRA HIGH RESISTANCE METER (株)アドバンテスト社製)を用いて200Vの電圧を印加して30秒後の電流を測定し、膜厚と電極面積とから計算して求める。
【0123】
導電性酸化スズの配合量としては、塗工後の表層に対して10〜80質量%が好ましく、特に好ましくは20〜60質量%である。導電性酸化スズの一次粒径は、示差走査型電子顕微鏡観察で0.1μm以下が好ましい。表層塗料中で二次粒子が小さくなるまで公知の方法で分散する。二次粒子径は、遠心沈降式粒度分布計(CAPA700:堀場製作所製)による体積平均粒径MEDIANの値で、1.0μm以下が好ましく、特に好ましくは0.5μm以下に分散する。二次粒子径が大きいと表層材料の抵抗の位置によるばらつきが大きくなり、帯電ムラの原因となるので好ましくない。
【0124】
本発明に用いられる導電性酸化スズは、表面がカップリング剤で表面処理されていることが好ましい。上記カップリング剤は、同一分子内に加水分解可能な基と疎水基を有し、珪素、アルミニウム、チタン又はジルコニウム等の中心元素に結合している化合物で、この疎水基部分に長鎖アルキル基を有するものである。
【0125】
加水分解基としては、例えば比較的親水性の高い、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基及びブトキシ基等のアルコキシ基等が用いられる。その他、アクリロキシ基、メタクリロキシ基、これらの変性体及びハロゲン等も用いられる。また疎水基としては、その構造中に炭素原子が6個以上直鎖状に連なる構成を含むものであればよく、中心元素との結合形態においては、カルボン酸エステル、アルコキシ、スルホン酸エステル又は燐酸エステルを介して、あるいはダイレクトに結合していてもよい。更に、疎水基の構造中に、エーテル結合、エポキシ基及びアミノ基等の官能基を含んでもよい。カップリング剤処理することで酸化スズ表面への水分の吸着を抑え、より環境変動の小さい表層材料を得ることができる。本発明に用いるカップリング剤としては、反応性が高いシランカップリング剤が好ましい。
【0126】
シランカップリング剤としては、例えば、ヘキサメチルジシラザン、トリメチルシラン、トリメチルクロルシラン、トリメチルエトキシシラン、ジメチルジクロルシラン、メチルトリクロルシラン、アリルジメチルクロルシラン、アリルフェニルジクロルシラン、トリフルオロプロピルトリメトキシシラン及びヘキシルトリメトキシシラン等が挙げられるが、特に導電剤の体積抵抗率の環境変動を小さく抑えることができるので、トリフルオロプロピルトリメトキシシランが特に好ましい。
【0127】
まず、本発明の帯電部材製造方法で用いる分散機の一例を図3及至図4に示す。これらは、一例を示したものであり、限定するものではない。
【0128】
図3は、本発明に係る装置の一部切欠縦断面図である。図4は、図3に示す分散機の要部略縦断面図である。図3及至図4に示すようにこの分散機は、第1ホルダ111と、第1ホルダ111の前方(上方)に配置された第2ホルダ121と、第2ホルダ121と共に第1ホルダ111を覆うケース103と、被分散液を本装置に供給するポンプ等の供給機構Pと、接面圧付与機構104とを備える。
【0129】
第1ホルダ111には、第1処理リング110と、回転軸150が設けられている。第1処理リング110は、メイティングリングと呼ばれる金属製の環状体(図5に示す)であり、鏡面加工された第1処理面101を備える。回転軸150は、第1ホルダ111の中心にボルトなどの固定具151にて固定されたものであり、その端部が電動機などの回転駆動装置105(回転駆動機構)と接続され、回転駆動装置105の駆動力を第1ホルダ111に伝えて、当該第1ホルダ111を回転させる。第1処理リング110は、回転軸150と同心に第1ホルダ111前部(上部)へ取り付けられ、回転軸150の回転にて、上記第1ホルダ111と一体となって回転する。上記の第1処理面101は、第1ホルダ111から露出して、第2ホルダ121側を臨む。この第1処理面101は、研磨やラッピング、ポリッシングなどの鏡面加工を施すのが好ましい。第1処理リング110の材質は、セラミックや焼結金属、耐磨耗鋼、その他金属に硬化処理を施したものや、硬質材をライニングやコーティング、メッキなどを施工したものを採用する。特に回転するため、軽量な素材にて第1処理リング110を形成するのが望ましい。上記のケース103は、排出部132を備えた有底の容器であり、その内部空間130に、上記の第1ホルダ111を収容する。
【0130】
第2ホルダ121には、第2処理リング120と、被分散液導入部122と、接面圧力付与機構104とが設けられている。
【0131】
第2処理リング120は、コンプレッションリングと呼ばれる金属製の環状体(図5に示す)であり、鏡面加工された第2処理面102と、第2処理面102の内側に位置して当該第2処理面102に隣接する受圧面123(以下離反用調整面123と呼ぶ。)とを備える。図示の通り、この離反用調整面123は、傾斜面である。第2処理面102に施す鏡面加工は、第1処理面101と同様の方法が採用される。また、第2処理リング120の素材についても、第1処理リング110と同様のものが採用される。離反用調整面123は、環状の第2処理リング120の内周面と隣接する。
【0132】
接面圧力付与機構104は、第1処理面101に対して第2処理面102を、圧接又は近接した状態に押圧するものであり、流体圧力(ポンプ等の供給機構により生じる被分散液の圧力)等により、両処理面101,102間を離反させる力との均衡によって、上記の微小流体膜を発生させる(言い換えれば、両処理用面101,102の間隔を微小間隔に保つ)。
【0133】
具体的には、この実施の形態において接面圧力付与機構104は、収容部141と、収容部141の奥(最深部)に設けられたスプリング受用部142と、スプリング143と、エアー導入部144とにて構成されている。
【0134】
但し、接面圧力付与機構104は、上記収容部141と、上記スプリング受容部142と、スプリング143と、エアー導入部144の少なくとも、いずれか1つを備えるものであればよい。
【0135】
収容部141は、収容部141内の第2処理リング120の位置を深く或いは浅く(上下に)変位することが可能なように、第2処理リング120が設置されている。上記のスプリング143の一端は、スプリング受容部142の奥に当接し、スプリング143の他端は、収容部142内の第2処理リング120の前部(上部)と当接する。図3において、スプリング143は、一つしか描かれていないが、複数のスプリングにて、第2の処理リング120の各部を押圧するものとするのが好ましい。即ち、スプリング143の数を増すことによって、より均等な押圧力を第2処理リング120に与えることができるからである。従って、第2ホルダ121については、スプリング143が数本から数十本取り付けられていることが好ましい。
【0136】
図4において、上記の通りエアー導入部144にて他から、空気等の加圧ガスを収容部141内に導入することを可能としている。このような空気を代表とする加圧ガスの導入により、収容部141と第2処理リング120との間を加圧室として、スプリング143と共に、空気圧を押圧力として第2処理リング120に与えることができる。従って、エアー導入部144から導入する空気圧を調整することにて、運転中においても第1処理面101に対する第2処理面102の接面圧力を調整することが可能である。尚、空気圧を利用するエアー導入部の代わりに、油圧などの他の流体圧を利用してもよく、これらに限定するものではない。
【0137】
接面圧力付与機構104は、上記の押圧力(接面圧力)の一部を供給し調整する他、変位調整機構と、緩衝機構とを兼ねる。詳しくは、接面圧力付与機構104は、変位調整機構として、始動時や運転中の軸方向への伸びや磨耗による軸方向変位にも、空気圧調整によって追従し、当初の押圧力を維持できる。また、接面圧力付与機構104は、上記の通り、第2処理用部120を変位可能に保持するフローティング機構を採用することによって、微振動や回転アライメントの緩衝機構としても機能するのである。
【0138】
また、収容部141内における第2処理リング120の上部と、収容部141の最上部との間に余裕があっても、スプリング143が両処理面101,102間の隙間の幅の上限を規定する。即ち、両処理用面101,102の離反を抑止する離反抑止部として機能する。
【0139】
また、両処理面101,102とが当接していなくても、スプリング143が両処理用面101,102間の隙間の幅の下限を規定する。即ち、両処理面101,102の近接を抑止する近接抑止部として機能する。
【0140】
このような装置としてはクレアエスエスファイブ(エム・テクニック株式会社製)が挙げられる。
【0141】
次に本発明にかかる装置を微粒子含有層(以下、表層という。)に含有される微粒子の分散機として使用した場合について更に詳細に説明する。
【0142】
前記した表層を構成する混合物は供給機構Pから一定の送圧を受けて、密閉されたケース103の内部空間へ、被分散液導入部122を介して導入される。但し、被分散液である上記混合物は複数の経路から導入されてもよく、表層構成材料を材料の特性に応じてそれぞれ別経路で導入してもよい。他方、回転駆動装置105(回転駆動機構)によって、第1処理リング110が回転する。これにより、第1処理面は第2処理面とは微小間隔を保った状態で相対的に回転する。ケース103の内部空間に導入された混合物は、微小間隔を保った両処理面101、102間で、流体膜となり、第1処理面101の回転により第2処理面102との間で強力なせん断を受け、所望の分散を得た表層形成用樹脂塗料となる。得られた表層形成用樹脂塗料は、排出部132から排出される。
【0143】
得られた表層形成用の樹脂塗料を、ディッピング法やスプレーコート法により、帯電部材の表面に塗工する。本発明においては導電性弾性体基層の上に塗工する製造工程であり、表層塗料の利用効率を考慮すると、ディッピング法が好ましい。
【0144】
表層の膜厚は、好ましくは、5〜100μm、より好ましくは、10〜50μmである。表層の膜厚が50μmよりも大きいと、帯電の均一性が損なわれ、画像上ローラの軸方向に細かい白スジが発生するので好ましくない。膜厚は、ローラ断面を鋭利な刃物で切り出して、光学顕微鏡や電子顕微鏡で観察することで測定できる。
【0145】
表層膜厚を調整するために表層塗料の樹脂の固形分と塗工引き上げ速度を制御する。表層塗料中の樹脂の固形分を大きくすると表層の膜厚が大きくなり、固形分を小さくすると膜厚も小さくなる。本発明の表層塗料においては、揮発する溶媒に対する樹脂の固形分を12〜40%に調整する。また、塗工引き上げ速度を大きくすると膜厚が大きくなり、速度を小さくすると膜厚も小さくなるので、本発明においては塗工引き上げ速度を20〜5000mm/min.に調整する。
【0146】
本発明の帯電部材の表面粗さとしては、好ましくはJISB0601−1994による十点平均粗さRzで0.5μm以上40μm以下、Raで0.1μm以上5μm以下、より好ましくは十点平均粗さRzで1μm以上30μm以下、Raで0.4μm以上6μm以下である。表面粗さがあまり大き過ぎると帯電ムラとして出力画像に表れ易いし、表面粗さが小さすぎると樹脂粒子を添加して遅いプロセススピードでの帯電を安定させた効果が現れないので好ましくない。
【0147】
平均粗さ(Ra、Rz)の測定方法としては、JIS B0601の表面粗さに基づき、小坂研究所製サーフコーダーSE3400にて、軸方向3点×周方向2点の計6点について各々測定し、その平均値をとる。本発明においては、接触針は先端半径2μmのダイヤモンドとし、測定スピード0.5mm/s、カットオフλc0.8mm、基準長さ0.8mm、評価長さ8.0mmとした。
【0148】
上記範囲の表面粗さを有する帯電部材とするため、該基層の表面粗さ、該表層の膜厚、樹脂粒子の平均粒径と添加量を調整する。該基層の十点平均粗さはRzで20μm以下、より好ましくは15μm以下とする。
【0149】
また、本発明の帯電部材は、図5の様に、画像形成装置に用いた場合の使用状態と同様の応力で、感光体と同じ曲率の金属円柱に当接させて、使用状態と同様の回転速度で金属円柱を回転させながら(本発明では軸の両端にそれぞれ5Nの力を加えて、直径30mmの金属円柱に当接させ、該金属円柱の周速45mm/sで回転させた)直流電圧−250Vを印加したときの帯電部材の電気抵抗が、30℃/80%RHの高温高湿の環境中では1×10Ω以上であり、15℃/10%の低温低湿の環境中では1×10Ω以下であることが好ましい。より好ましくは、30℃/80%RHの高温高湿の環境中では2×10Ω以上であり、15℃/10%の低温低湿環境中では6×10Ω以下であることが好ましい。
【0150】
低温低湿の環境中の抵抗が上記範囲の下限値より小さいと、帯電ムラによるハーフトーン画像上の細かい横白スジがほとんど発生しないので好ましい。また、高温高湿環境中の抵抗が上記範囲の上限値より大きいと、感光体にピンホールがあったとしても印加電流がリークせず、ハーフトーン画像上に帯電の濃度ムラが現れることがないので好ましい。
【0151】
電気抵抗を上記範囲内とするには、該基層の体積抵抗率を1×10〜1×10Ω・cmに、また該表層の体積抵抗率が1×10〜1×1015Ω・cmでかつ該表層の膜厚が10〜50μmになるように調整すればよい。
【0152】
[実施例]
以下に本発明を、実施例をもって、説明するが、本発明は実施例よって制限されるものではない。
【0153】
(1) 導電性弾性体基層の調製
エピクロルヒドリンゴム(商品名:エピクロマーCG102、ダイソー(株)製)100質量部、充填剤としての炭酸カルシウム30質量部、滑剤としてのステアリン酸亜鉛1質量部、研磨性改善のための補強材としての着色グレードカーボン(商品名:シーストSO、東海カーボン製)4質量部、酸化亜鉛5質量部、可塑剤として、セバシン酸とプロピレングリコールの共重合体(分子量8000)を 5質量部、下記式の過塩素酸4級アンモニウム塩2質量部、
【0154】
【化4】

【0155】
老化防止剤としての2−メルカプトベンズイミダゾール1質量部をオープンロールで20分間混練し、更に、加硫促進剤としてのDM(2−ベンゾチアゾリルジサルファイド)1質量部、加硫促進剤としてのTS(テトラメチルチウラムモノサルファイド)0.5質量部、加硫剤としての硫黄1.2質量部を加えて更に15分間オープンロールで混練した。
【0156】
これを、ゴム押し出し機を使用して、外径15mm、内径5.5mmの円筒形に押し出し、250mmの長さに裁断し、加硫缶中を使用して、160℃の水蒸気中で40分間一次加硫し、導電性弾性体基層ゴム一次加硫チューブを得た。
【0157】
次に、直径6mm、長さ256mmの円柱形の導電性支持体(鋼製、表面はニッケルメッキ)の円柱面の軸方向中央部231mmに金属とゴムとの熱硬化性接着剤(商品名:メタロックU−20)を塗布し、80℃で30分間乾燥した後、120℃で1時間乾燥した。この導電性支持体を、前記導電性弾性体基層ゴム一次加硫チューブに挿入し、その後、電気オーブンの中で、160℃で2時間、二次加硫と接着剤の硬化を行い、未研磨層を得た。
【0158】
この未研磨層のゴム部分の両端部を突っ切り、ゴム部分の長さを231mmとした後、ゴム部分を回転砥石で研磨し、端部直径12.00mm、中央部直径12.10mmのクラウン形状で表面の十点平均粗さRz6μm、振れ25μmの導電性弾性体基層を有するローラ部材を得た。
【0159】
導電性弾性体基層を有するローラ部材をN/N(常温常湿:23℃/55%RH)環境に24時間以上放置した後、導電性弾性体基層を有するローラ部材の抵抗を測定したところ、3.0×10Ωであった。また、ゴム部分のアスカーC硬度は74°であった。
【0160】
(2) 表面処理微粒子作成法
導電性酸化スズ粉体(商品名:SN−100P、石原産業(株)製)50質量部とトリフルオロプロピルトリメトキシシランの1%イソプロピルアルコール溶液500質量部を所定時間混合した後、この溶液をナウターミキサーで攪拌しながら100℃の湯浴で暖めてアルコールを飛ばして乾燥させ、表面にシランカップリング剤を付与し表面処理導電性酸化スズ粉体を得た。
【実施例1】
【0161】
ラクトン変性アクリルポリオール(商品名:プラクセルDC2009、ダイセル化学工業(株)製)288質量部を、972質量部のMIBK(メチルイソブチルケトン)に溶解し、固形分16質量%の溶液とした。このアクリルポリオール溶液200質量部に対して前記方法によって得られた表面処理導電性酸化スズ粉体を57質量部、シリコーンオイル(商品名:SH−28PA、東レ・ダウコーニングシリコーン(株)製)を0.05質量部、ヘキサメチレンジシラザンで表面処理した微粒子シリカ(一次粒径0.015μm)1.0質量部、平均粒径18μmの架橋ポリメチルメタクリレート(商品名:MBX−20、積水化成品工業(株)製/粒径分布を図6に示す)16質量部を所定の容器に投入してスリーワンモーターでプレ分散して被分散液を調整した。
【0162】
次に図3、図4に示す第1処理リングの回転数を5000rpmに設定し、エアー導入部144に200kPaの圧縮空気を導入して第1処理リング110と第2処理リング120の間の面圧を調整した。得られた被分散液を前記した容器から被分散液導入部122を介して供給機構Pで400ml/hrの流量で分散機に導入した。導入された被分散液は第1処理面と第2処理面間で生じる強力なせん断を受けた後、内部空間130に放出されて、排出部132より、装置外へ排出された。
【0163】
この得られた分散液370質量部にイソホロンジイソシアネートのブロックタイプのイソシアヌレート型3量体(商品名:ベスタナートB1370、デグサ・ヒュルス製)を25.6質量部とヘキサメチレンジイソシアネートのイソシアヌレート型3量体(商品名:デュラネートTPA−B80E、旭化成工業製)を16.4質量部混合し、ボールミルで1時間攪拌し、最後に200メッシュの網で溶液を濾過して表層塗料を得た。塗料の粘度は23℃の環境下で8.2mPa・sであった。
【0164】
前記表層塗料をディッピンク法により前記導電性弾性体基層を有するローラ部材の表面に塗工した。引き上げ速度400mm/minで塗工し、30分間風乾した後、ローラの塗工時の軸方向を反転してもう一度引き上げ速度400mm/minで塗工し、もう一度30分間風乾した後、160℃で100分間乾燥した。膜厚は25μm、表層の体積抵抗率は1.3×1014Ω・cmであった。こうして完成したローラを実施例1の帯電ローラとした。
【0165】
<帯電ローラの評価>
上記のようにして得られた帯電ローラを用いて、以下に示すようにして帯電ローラの評価を行った。
【0166】
本試験で使用した電子写真式レーザプリンタはA4縦出力用のマシンで、記録メディアの出力スピードは、100mm/secと30mm/secの2種類、画像の解像度は600dpiである。
【0167】
感光体はアルミニウムシリンダーに膜厚18μmのOPC層をコートした反転現像方式の感光ドラムであり、最外層は変性ポリカーボネートをバインダー樹脂とする電荷輸送層である。
【0168】
トナーは、ワックスを中心に荷電制御剤と色素等を含むスチレンとブチルアクリレートのランダムコポリマーを重合させ、更に表面にポリエステル薄層を重合させシリカ微粒子等を外添した、ガラス転移温度63℃、質量平均粒径6μmの懸濁重合トナーである。
【0169】
一次帯電は、上記で得られた実施例1の帯電ローラを用い、直流電圧−1150Vを帯電ローラに印加した。
【0170】
画像の評価は全て、ハーフトーン(感光体の回転方向と垂直方向に幅1ドット、間隔2ドットの横線を描くような画像)画像を出力して行った。
【0171】
<画像評価>
本試験で使用した電子写真式レーザプリンタはA4縦出力用のマシンで、記録メディアの出力スピードは、100mm/secと30mm/secの2種類、画像の解像度は600dpiである。
【0172】
感光体はアルミニウムシリンダーに膜厚16μmのOPC層をコートした反転現像方式の感光ドラムであり、最外層は変性ポリカーボネートをバインダー樹脂とする電荷輸送層である。
【0173】
トナーは、ワックスを中心に荷電制御剤と色素等を含むスチレンとブチルアクリレートのランダムコポリマーを重合させ、更に表面にポリエステル薄層を重合させシリカ微粒子等を外添した、ガラス転移温度63℃、質量平均粒径6μmの懸濁重合トナーである。
【0174】
一次帯電は、上記で得られた実施例1の帯電ローラを用い、直流電圧−1150Vを帯電ローラに印加した。
【0175】
画像の評価は全て、ハーフトーン(感光体の回転方向と垂直方向に幅1ドット、間隔2ドットの横線を描くような画像)画像を出力して行った。
【0176】
低温低湿環境(L/L:15℃/10%RH)、高温高湿環境(H/H:30℃/80%RH)における帯電が原因の初期画像不良としては、細かい横白スジが予想されるので、この横スジが全く発生しなかったものをA、ほんの少し発生したが実用上はほとんど気が付かないレベルのものをB、大量に発生したものをCとした。
【0177】
さらに、各環境で印字濃度4%(感光体の回転方向と垂直方向に幅2ドット、間隔50ドットの横線を描くような画像)を連続でプロセススピード100mm/secで4000枚耐久し、各環境でハーフトーン画像を出力した。この場合、帯電ローラの表面当接力の分布のムラに起因する汚れが帯電ムラとなって発生しないかどうかを見た。帯電ムラが発生しないものをA、少し発生したが実用上は問題無いものをB、非常にムラが大きかったものをCとした。
【0178】
なお、L/LとH/Hでは画出しを行う前に帯電ローラの抵抗を測定した。抵抗の測定方法としては、まず図7(a)の様に、帯電ローラの両端の軸1を荷重のかかった軸受け33aと33bとにより感光体と同じ曲率の金属円柱32に対して帯電ローラが平行になるように当接させる。次に図7(b)の様に、図示しないモータにより金属円柱32を帯電ローラ使用状態と同様の回転速度で回転させ、ローラを金属円柱に当接させたまま従動回転させながら安定化電源34から直流電圧−250Vを印加したときに帯電ローラに流れる電流を電流計35で測定して帯電ローラの抵抗を計算した(本発明では軸の両端にそれぞれ5Nの力を加えて、直径φ30mmの金属円柱に当接させ、該金属円柱の周速45mm/sで回転させた)。
【0179】
実施例1の帯電ローラは良好な表面性で、高温高湿環境でも低温低湿環境でも良好な画像を2種類のプロセススピードで出力し、耐久後も良好な画像を出力した。評価結果を表1に示す。
【実施例2】
【0180】
実施例1と同様にして被分散液を調整した。図3、図4に示す第1処理リングの回転数を8000rpmに設定し、エアー導入部144に400kPaの圧縮空気を導入して第1処理リング110と第2処理リング120の間の面圧を調整した。得られた被分散液を前記した所定の容器から被分散液導入部122を介して供給機構Pで600ml/hrの流量で分散機に導入した。導入された被分散液は第1処理面と第2処理面間で生じる強力なせん断を受けた後、内部空間130に放出されて、排出部132より、装置外へ排出された。
【0181】
このようにして得られた分散液370質量部にイソホロンジイソシアネートのブロックタイプのイソシアヌレート型3量体(商品名:ベスタナートB1370、デグサ・ヒュルス製)を25.6質量部とヘキサメチレンジイソシアネートのイソシアヌレート型3量体(商品名:デュラネートTPA−B80E、旭化成工業製)を16.4質量部混合し、ボールミルで1時間攪拌し、最後に200メッシュの網で溶液を濾過して表層塗料を得た。塗料の粘度は23℃の環境下で8.1mPa・sであった。
【0182】
前記表層塗料をディッピンク法により前記導電性弾性体基層を有するローラ部材の表面に塗工した。引き上げ速度400mm/minで塗工し、30分間風乾した後、ローラの塗工時の軸方向を反転してもう一度引き上げ速度400mm/minで塗工し、もう一度30分間風乾した後、160℃で100分間乾燥した。膜厚は25μm、表層の体積抵抗率は1.29×1014Ω・cmであった。こうして完成したローラを実施例2の帯電ローラとした。この実施例2の帯電ローラを実施例1と同様の方法で評価した。実施例2の帯電ローラは良好な表面性で、高温高湿環境でも低温低湿環境でも良好な画像を2種類のプロセススピードで出力し、耐久後も良好な画像を出力した。評価結果を表1に示す。
【実施例3】
【0183】
実施例1と同様にして被分散液を調整した。図3、図4に示す第1処理リングの回転数を3000rpmに設定し、エアー導入部144に100kPaの圧縮空気を導入して第1処理リング110と第2処理リング120の間の面圧を調整した。得られた被分散液を前記した所定の容器から被分散液導入部122を介して供給機構Pで300ml/hrの流量で分散機に導入した。導入された被分散液は第1処理面と第2処理面間で生じる強力なせん断を受けた後、内部空間130に放出されて、排出部132より、装置外へ排出された。
【0184】
このようにして得られた分散液370質量部にイソホロンジイソシアネートのブロックタイプのイソシアヌレート型3量体(商品名:ベスタナートB1370、デグサ・ヒュルス製)を25.6質量部とヘキサメチレンジイソシアネートのイソシアヌレート型3量体(商品名:デュラネートTPA−B80E、旭化成工業製)を16.4質量部混合し、ボールミルで1時間攪拌し、最後に200メッシュの網で溶液を濾過して表層塗料を得た。塗料の粘度は23℃の環境下で8.3mPa・sであった。
【0185】
前記表層塗料をディッピンク法により前記導電性弾性体基層を有するローラ部材の表面に塗工した。引き上げ速度400mm/minで塗工し、30分間風乾した後、ローラの塗工時の軸方向を反転してもう一度引き上げ速度400mm/minで塗工し、もう一度30分間風乾した後、160℃で100分間乾燥した。膜厚は25μm、表層の体積抵抗率は1.29×1014Ω・cmであった。こうして完成したローラを実施例2の帯電ローラとした。この実施例2の帯電ローラを実施例1と同様の方法で評価した。実施例2の帯電ローラは良好な表面性で、高温高湿環境でも低温低湿環境でも良好な画像を2種類のプロセススピードで出力し、耐久後も良好な画像を出力した。評価結果を表1に示す。
【実施例4】
【0186】
200kPaの圧縮空気を導入して第1処理リング110と第2処理リング120の間の面圧を調整し、得られた被分散液を前記した所定の容器から被分散液導入部122を介して供給機構Pで900ml/hrの流量で分散機に導入した以外は実施例2と同様にして実施例4の帯電ローラを得た。この実施例4の帯電ローラを実施例1と同様の方法で評価した。
【0187】
初期、耐久後の画像とも実用上は問題なかった。結果を表1にまとめる。
[実施例5〜7]
表層に添加する樹脂微粒子の添加量をそれぞれ8、24、32部に変更した以外は、実施例1の帯電ローラと同様にして実施例5〜7の帯電ローラを得た。この実施例5〜7の帯電ローラを実施例1と同様の方法で評価した。
【0188】
初期、耐久後の画像とも実用上は問題なかった。
[実施例8〜9]
表層に添加するシリカの添加量をそれぞれ0.3、4部に変更した以外は、実施例1の帯電ローラと同様にして実施例8〜9の帯電ローラを得た。この実施例8〜9の帯電ローラを実施例1と同様の方法で評価した。初期、耐久後の画像とも実用上は問題なかった。
[参考例1]
実施例1と同様にして被分散液を調整した。この被分散液2に直径0.8mmのガラスビーズ200質量部を加えて、有効容量450mlのマヨネーズビンに入れてペイントシェーカーを使い6時間分散した(単位時間の処理量75mL/hr)。その後ガラスビーズと分離した分散液、370質量部にイソホロンジイソシアネートのブロックタイプのイソシアヌレート型3量体(商品名:ベスタナートB1370、デグサ・ヒュルス製)を25.6質量部とヘキサメチレンジイソシアネートのイソシアヌレート型3量体(商品名:デュラネートTPA−B80E、旭化成工業製)を16.4質量部混合し、ボールミルで1時間攪拌し、最後に200メッシュの網で溶液を濾過して表層塗料を得た。塗料の粘度は23℃の環境下で7.8mPa・sであった。
【0189】
前記表層塗料をディッピンク法により前記導電性弾性体基層を有するローラ部材の表面に塗工した。引き上げ速度400mm/minで塗工し、30分間風乾した後、ローラの塗工時の軸方向を反転してもう一度引き上げ速度400mm/minで塗工し、もう一度30分間風乾した後、160℃で100分間乾燥した。膜厚は25μm、表層の体積抵抗率は1.30×1014Ω・cmであった。こうして完成したローラを参考例の帯電ローラとした。この参考例の帯電ローラを実施例1と同様の方法で評価した。参考例の帯電ローラは良好な表面性で、高温高湿環境でも低温低湿環境でも良好な画像を2種類のプロセススピードで出力し、耐久後も良好な画像を出力した。評価結果を表1に示す。
[参考例2]
ペイントシェーカーの分散時間を3時間(単位時間の処理量150mL/hr)にした以外は参考例1と同様にして参考例2の帯電ローラを得た。この参考例2の帯電ローラを実施例1と同様の方法で評価した。評価結果を表1に示す。
[参考例3]
ペイントシェーカーの分散時間を1.5時間(単位時間の処理量300mL/hr)にした以外は参考例1と同様にして参考例3の帯電ローラを得た。この参考例2の帯電ローラを実施例1と同様の方法で評価した。評価結果を表1に示す。
[比較例1]
樹脂粒子を添加しなかった以外は、参考例1の帯電ローラと同様にして比較例1の帯電ローラを得た。初期から横スジの帯電不良が発生し、実用に足る帯電部材は得られなかった。
[比較例2]
シリカ粒子を添加しなかった以外は、参考例1の帯電ローラと同様にして比較例2の帯電ローラを得た。初期から横スジの帯電不良が発生し、実用に足る帯電部材は得られなかった。
[比較例3]
表面処理導電性酸化スズ粉体を添加しなかった以外は、参考例1の帯電ローラと同様にして比較例3の帯電ローラを得た。初期から横スジの帯電不良が発生し、実用に足る帯電部材は得られなかった。
【0190】
以上の実施例、参考例、比較例を表1にまとめる
【0191】
【表1】

【0192】
A:良好な画像
B:良好ではないものの実用上問題のないレベル
C:帯電不良が生じて実用不可レベル

表層に無機微粒子と有機微粒子とを含有することで異なるプロセススピードで使用しても長期間安定したDC帯電を行うことが出来る理由については、以下のことが考えられる。すなわち、無機微粒子は微小な放電点となり、帯電を安定化させる作用が、また、有機微粒子は、表層の中で電荷が横に移動することを防止する作用が有り、両者の作用が相乗効果を発揮し、異なるプロセススピードで使用しても長期間安定したDC帯電を行うことが出来るのである。
【産業上の利用可能性】
【0193】
良好な帯電特性により、異なるプロセススピードで使用しても長期間安定した帯電が行えるので、本発明にかかる帯電部材の利用増加が期待できる。
【図面の簡単な説明】
【0194】
【図1】本発明により製造される帯電部材の一つの形態の断面図である。(a)帯電部材の横断図、(b)帯電部材の断面図。
【図2】本発明に使用する測定器具の一例である。
【図3】本発明に用いる装置の一部切欠縦断面図である。
【図4】本発明に用いる要部概略断面図である。
【図5】本発明に用いる装置部品概略図である。
【図6】本発明に用いる樹脂粒子の粒径分布である。
【図7】本発明に使用する測定器具の一例である。
【符号の説明】
【0195】
1 導電性支持体
2 導電性弾性体基層
3、6 微粒子含有層/表層
32 金属円柱
33a,33b 軸受け
34 安定化電源
35 電流計
101 第1処理面
102 第2処理面
103 ケース
104 接面圧付与機構
105 回転駆動装置
110 第1処理リング
111 第1ホルダ
120 第2処理リング
121 第2ホルダ
122 被分散液導入部
123 離反用調整面
130 内部空間
132 排出部
141 収容部
142 スプリング受容部
143 スプリング
144 エアー導入部
150 回転軸
151 固定具
P 供給機構

【特許請求の範囲】
【請求項1】
導電性支持体と、該導電性支持体上に設けられた導電性弾性体基層と、該導電性弾性体基層上に設けられた少なくとも1層の微粒子含有層とを有する帯電部材を製造する方法において、
該微粒子含有層の形成に備えて微粒子を分散させる微粒子分散工程を有し、
該微粒子分散工程において分散機が使用され、
該分散機は、
第1処理リングと、該第1処理リングに対して接近離反可能な第2処理リングとを具備し、
該第1処理用リングを該第2処理用リングに対して相対的に回転させる回転駆動機構とを具備し、
該第1処理リングが静止の状態において、該第2処理リングは該第1処理リングを押圧しており、該第1処理リングと該第2処理リングとの間に少なくとも該微粒子を含む被処理液を導入することにより該第2処理リングを該第1処理リングから離間させ、該第1処理リングの回転により、該被処理液中に該微粒子を分散させる
ことを特徴とする帯電部材の製造方法。
【請求項2】
前記微粒子は少なくとも無機微粒子を含むことを特徴とする請求項1に記載の帯電部材の製造方法。
【請求項3】
前記微粒子はシランカップリング剤又はシリコーンオイル、もしくはシランカンプリング剤とシリコーンオイルの両方で表面処理された無機微粒子を含むことを特徴とする請求項1又は2に記載の帯電部材の製造方法。
【請求項4】
前記無機微粒子がシリカ粒子又は酸化スズ又はその双方であることを特徴とする請求項1及至3のいずれかに記載の帯電部材の製造方法。
【請求項5】
前記酸化スズはアンチモンをドープした導電性酸化スズであることを特徴とする請求項1及至4のいずれかに記載の帯電部材の製造方法。
【請求項6】
前記微粒子は無機微粒子と有機微粒子とを含有することを特徴とする請求項1及至5のいずれかに記載の帯電部材の製造方法。
【請求項7】
前記導電性弾性体基層の主成分がエピクロルヒドリンゴムであることを特徴とする請求項1及至6のいずれかに記載の帯電部材の製造方法。
【請求項8】
前記導電性支持体が炭素鋼合金製であることを特徴とする請求項1及至7のいずれかに記載の帯電部材の製造方法。
【請求項9】
前記分散機には、該第1処理リング及び該第2処理リングの少なくとも一方の微振動やアライメントを緩衝する緩衝機構が備えられていることを特徴とする請求項1及至8のいずれかに記載の帯電部材の製造方法。
【請求項10】
前記分散機に、該第1処理リングと該第2処理リングとの間の最大間隔を規定し、該最大間隔より大きい両処理リングの離反を抑止する離反抑止部が備えられていることを特徴とする請求項1及至9のいずれかに記載の帯電部材の製造方法。
【請求項11】
前記分散機に、該第1処理リングと該第2処理リングとの間の最小間隔を規定し、該最小間隔より小さい両処理リングの近接を抑制する近接抑止部が備えられていることを特徴とする請求項1及至10のいずれかに記載の帯電部材の製造方法。
【請求項12】
前記第1処理リングの最外周辺部の周速が10m/s〜100m/sであることを特徴とする請求項1及至11のいずれかに記載の帯電部材の製造方法。
【請求項13】
前記第1処理リング及び前記第2処理リングの一方或いは双方に凹部を備えたものであり、前記第1処理リングの回転によって前記第2処理リングを前記第1処理リングから離間させることを特徴とする請求項1及至12のいずれかに記載の帯電部材の製造方法。
【請求項14】
前記微粒子分散工程中の前記第1処理リングと前記第2処理リングとの間隙を調整するために前記第2処理リングに加える背圧Pが
1 kPa < P < 800kPa
の範囲内にあることを特徴とする請求項1及至13のいずれかに記載の帯電部材の製造方法。
【請求項15】
帯電部材の製造方法において使用される分散機であって、
該分散機は、
第1処理リングと、該第1処理リングに対して接近離反可能な第2処理リングを少なくとも具備し、
該第1処理用リングを該第2処理用リングに対して相対的に回転させる回転駆動機構とを具備し、
該第1処理リングが静止の状態において、該第2の処理リングは該第1処理リングを押圧しており、該第1処理リングと該第2処理リングとの間に少なくとも該微粒子を含む被処理液を導入することにより該第2処理リングを該第1処理リングから離間させ、該第1処理リングの回転により、被処理液中に該微粒子を分散させる
ことを特徴とする分散機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2006−113120(P2006−113120A)
【公開日】平成18年4月27日(2006.4.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−297654(P2004−297654)
【出願日】平成16年10月12日(2004.10.12)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】