説明

帯電防止フィルム

【課題】帯電防止剤がフィルム表面層に添加されていないものであっても電気特性に優れ、粘着剤への汚染性が無く、かつ柔軟性に富み、製膜性のよい帯電防止フィルムを提供すること。
【解決手段】エチレン系共重合体樹脂を主成分とする樹脂組成物100重量部に対して、ポリエーテル系高分子型帯電防止剤を1〜50重量部、無水マレイン酸をグラフト重合した樹脂組成物を2〜100重量部添加してなるMFRが5以下である樹脂組成物を中心層とし、その両面にMFRが5〜12のポリオレフィン系樹脂層を積層させたことを特徴とする帯電防止フィルムである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、各種精密電子部品或いは半導体デバイスを製造する工程において使用する帯電防止フィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年精密電子部品或いは半導体デバイスの高集積化に伴い回路が高詳細化しており、精密電子部品や半導体デバイスの製造工程で使用されるプラスチック製品については、帯電による製品破壊、静電気防止の観点から、帯電防止性能が求められている。
例えば、製造工程中に懸念される帯電が発生する作業としては、シート(基材フィルム)をセパレータから剥離する際の剥離による帯電、ダイシング時のブレードとシートの摩擦による帯電、ダイシング後にシートを粘着テープから取り外す際の剥離帯電、洗浄時に高圧吐出される洗浄液とシートの摩擦による帯電、チップおよびパッケージをピックアップする際の剥離による帯電等があげられる。
【0003】
したがって、これらの帯電により、半導体デバイスの破壊や性能劣化が生じたり、それ以降の作業に不具合を生じたりするのを防ぐために、基材フィルムに帯電防止機能を持たせることが行われている。
また、精密電子部品や半導体関連部品では、その製品の性能を保つためにクリーンルームで製造されているが、これは一般環境に存在する埃やヒトの髪の毛等がコンタミネート(付着・混入)することを防止するためである。更にイオンによる汚染(イオンコンタミ)を防止するためにクリーンルーム内で使用する製品についても、帯電防止策について相当の管理を要している。
【0004】
このように、電子部品関係や、半導体関連部品分野では製品保護のため、静電気防止(帯電防止)は不可欠とされている。そのために使用されるプラスチック製品の帯電防止化は不可欠であり、それを如何に不純物が製品に付着しないように実現化するかが問題であった。
【0005】
ところで、電子部品或いは半導体関連分野の製造工程のなかで使用されるプラスチック製品としてはフィルムが多く使用されている。例えば、保護テープやダイシングテープ・バックグラインドテープといった粘着テープ等が幅広く使用されている。このようなフィルムに帯電防止機能を付与する際には、通常、帯電防止塗料を塗工するという手段が採用されていた。しかしながらこの方法では、樹脂組成物をフィルム状に製膜した後、帯電防止剤を塗工し、そのうえでさらに粘着剤を塗工するという3工程を踏まなければならない問題があった。
【0006】
そのため、樹脂組成物自体に高分子型帯電防止剤を添加してフィルム状に製膜して、得られたフィルム面に粘着剤を塗布することによる半導体製造用の粘着シートが提案されている(特許文献1)。この特許文献1で提案されている基材フィルムは、樹脂組成物中に高分子耐電防止剤を含有させていることから、フィルム状に製膜した基材フィルムに改めて帯電防止剤を塗工する必要がない点で優れたものであるが、フィルムの表面層に帯電防止剤を添加させたことからブリードしてしまい、製品の汚染源になってしまうおそれがあった。
【0007】
また最近、帯電防止剤がブリードアウトしない改良を施した、樹脂組成物中に高分子耐電防止剤を含有させた基材フィルムも提案されているが(特許文献2)、帯電防止剤のブリードを完全に制御することはできていない。
このように、フィルムの表面層は常にクリーンな状態で無ければならないものであるために、フィルムの表面層に帯電防止剤を添加することは極力回避すべきものであるといえる。
そのような観点から、例えば、ポリオキシエチレン鎖を有する帯電防止剤、或いは該帯電防止剤を熱可塑性樹脂に含有させた帯電防止性樹脂組成物からなる基層の片面若しくは両面に帯電防止剤を含有しない表層を積層させた帯電防止性多層フィルムが提案されている(特許文献3)。
【特許文献1】特開2003−064328号公報
【特許文献2】特開2006−165071号公報
【特許文献3】特開2006−015741号公報
【0008】
上記特許文献3で提案されている帯電防止性多層フィルムは、帯電防止剤がフィルム表面層に添加されていない点でブリードの問題が無く優れた帯電防止フィルムであるが、更なる電気特性に優れ、粘着剤への汚染性がなく、かつ柔軟性があり、製膜性のよい帯電防止フィルムの開発が望まれているのが現状である。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
したがって本発明は、かかる現状に鑑み、帯電防止剤がフィルム表面層に添加されていないものであっても電気特性に優れ、粘着剤への汚染性が無く、かつ柔軟性に富み、製膜性のよい帯電防止フィルムを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
かかる課題を解決するための本発明は、基本的態様として、エチレン系共重合体樹脂を主成分とする樹脂組成物100重量部に対して、ポリエーテル系高分子型帯電防止剤を1〜50重量部、無水マレイン酸をグラフト重合した樹脂組成物を2〜100重量部添加してなるMFRが5以下である樹脂組成物を中心層とし、その両面にMFRが5〜12のポリオレフィン系樹脂層を積層させたことを特徴とする帯電防止フィルムである。
【0011】
具体的には、本発明は、両面のポリオレフィン系樹脂のMFRが、中心層の樹脂組成物のMFRの1.5倍以上であることを特徴とする帯電防止フィルムである。
【0012】
より好ましい本発明は、電子線照射したことにより帯電防止性能を更に向上させた上記の帯電防止フィルムであって、具体的には、帯電防止フィルムに照射量50〜200KGyで電子照射を行ったことを特徴とする帯電防止フィルムである。
【0013】
かかる帯電防止性能として、本発明は、耐電圧・半減期が5秒以下である上記の帯電防止フィルムである。
【0014】
最も具体的な本発明は、上記帯電防止フィルムにおいて、両面層と中心層の層厚比が1/4/1〜1/16/1である帯電防止フィルムである。
【発明の効果】
【0015】
本発明により、優れた帯電防止性能を保持しながら、柔軟性に富み、かつ不純物の発生の少ない製膜性に優れた帯電防止フィルムが提供される。本発明が提供する帯電防止フィルムは、機械特性にも優れることから、精密電子部品の保護や、半導体関連部品の製造工程で使用される粘着テープなどの基材フィルム等に使用することができる点で特に優れたものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
本発明が提供する帯電防止フィルムは、上記したように、中心層(内層)としてエチレン系共重合体樹脂を主成分とする樹脂組成物100重量部に対して、ポリエーテル系高分子型帯電防止剤を1〜50重量部、無水マレイン酸をグラフト重合した樹脂組成物を2〜100重量部添加してなる樹脂組成物を使用し、その両面に外層として、ポリオレフィン系樹脂層を積層させたことを特徴とする帯電防止フィルムである。
【0017】
中心層を構成するエチレン系共重合体樹脂を主成分とする樹脂組成物としては、例えば、エチレン−酢酸ビニル共重合体樹脂(EVA)、エチレン−エチルアクリレート共重合体樹脂、エチレン−メチルアクリレート共重合体樹脂、エチレン−メチルメタクリレート共重合体樹脂(EMMA)、エチレン−メタクリル酸共重合体樹脂(EMAA)、エチレン−アクリル酸共重合体樹脂、エチレン−ブテン共重合体樹脂、エチレン−ペンテン共重合体樹脂、エチレン−ヘキセン共重合体樹脂、エチレン−オクテン共重合体樹脂等のエチレン系共重合体をあげることができる。これらの樹脂はそれぞれ単独でも、また複数種を混合して使用することもできる。
【0018】
本発明にあっては、かかる中心層に使用するエチレン系共重合体樹脂を主成分とする樹脂組成物のMFRが5以下であることが好ましい。MFRが5を超える場合には、製膜性が悪くなり好ましいものではない。
【0019】
なお、上記のエチレン系共重合体樹脂に加えて、エチレン−プロピレン共重合体を添加することもできる。そのようなエチレン−プロピレン共重合体としては、エチレン−α−オレフィン共重合体であり、具体的には、エチレン−プロピレン共重合体(EPM)、エチレン−プロピレン−ジエン3元共重合体(EPDM)、ポリプロピレンまたはポリエチレンとEPDMの混合物からなるオレフィン系熱可塑性エラストマー(TPO)等をあげることができる。
【0020】
このエチレン−プロピレン共重合体の添加は必須のものではなく、例えば本発明の帯電防止フィルムをダイシング工程に用いられるダイシングフィルムとして使用する場合には、その性能としては、均一な延伸性を有すると共に、その延伸性が優れていることが要求されることから、その所望の性能に合わせ、添加することができるものである。
【0021】
本発明が提供する電防止フィルムの中心層を構成する樹脂組成物であるエチレン系共重合体を主成分とする樹脂には、その帯電防止機能を確保するために、高分子型帯電防止剤が添加される。かかる高分子型帯電防止剤としては、ポリエーテル系、4級アンモニウム塩系、スルホン酸塩系、ボロン系の高分子型帯電防止剤などが挙げられる。本発明で使用する高分子型帯電防止剤としてはポリエーテル系高分子型帯電防止剤が良好なものであり、そのようなポリエーテル系高分子型帯電防止剤としては、ポリエチレンオキシド、ポリエーテルアミド、ポリエーテルエステルアミド、ポリエーテルアミドイミド、エチレンオキシド−エピハロヒドリン共重合体、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート共重合体などであり、例えば、日本ゼオン(株)のゼオスパンや、三洋化成(株)のペレスタットなどがある。
【0022】
なお、本発明で使用するポリエーテル系高分子型帯電防止剤は、半導体製造テープ用帯電防止基材フィルムのベース樹脂であるエチレン系共重合体を主成分とする樹脂とは相溶性が悪く、樹脂中に均一に分散させることは困難なものであった。
しかしながら、本発明にあっては、エチレン系共重合体を主成分とする樹脂と共に、無水マレイン酸をグラフト重合した樹脂組成物を一緒に添加することにより、ポリエーテル系高分子型帯電防止剤の樹脂に対する相溶性が良好となり、極めて均一に樹脂成分中に分散し、優れた電気特性を発揮することが判明した。
【0023】
このような無水マレイン酸をグラフト重合した樹脂組成物としては、接着性樹脂であるエチレン・アクリル酸エステルおよび/またはメタクリル酸エステル・不飽和結合を有するカルボン酸無水物の多元共重合体や、エチレン・アクリル酸エステルおよび/またはメタクリル酸エステルの共重合体の不飽和結合を有するカルボン酸無水物によるグラフト変性物としては、例えば、エチレン・エチルアクリレート・無水マレイン酸三元共重合体である三菱化学社製の共重合体(商品名:モディック)、あるいは三井石油化学社製の共重合体(商品名:アドマー)を挙げることができる。
【0024】
本発明においては、ポリエーテル系高分子型帯電防止剤の配合量は、使用するポリエーテル系高分子型帯電防止剤により異なるが、エチレン系共重合体を主成分とする樹脂組成物100重量部に対して1〜50重量部添加するのがよい。また、無水マレイン酸をグラフト重合した樹脂組成物の添加量は、ポリエーテル系高分子型帯電防止剤の配合量に対して少なくとも2倍の配合量であるの良いことが判明した。したがって、無水マレイン酸をグラフト重合した樹脂組成物の添加量は、エチレン系共重合体を主成分とする樹脂組成物100重量部に対して2〜100重量部添加するのがよい。
【0025】
ポリエーテル系高分子型帯電防止剤の配合量が1重量部未満であると所望の帯電防止効果を確保することができず、また50重量部を超えて添加しても、それ以上の帯電防止効果が得られず、かえってコスト高となる。
【0026】
さらに、無水マレイン酸をグラフト重合した樹脂の添加量が2重量部未満であると、帯電防止剤の樹脂組成物中への分散性が悪く、逆に100重量部を超える場合には、溶融張力が低下し、ロールした後にフィルムの幅が狭くなる、いわゆるネックインが発生する。
【0027】
本発明にあっては、ポリエーテル系高分子型帯電防止剤の添加量は、使用する帯電防止剤の種類によって異なるが、上記したように、樹脂組成物として配合する無水マレイン酸をグラフト重合した樹脂の添加量と関係付けられることが判明した。すなわち、無水マレイン酸をグラフト重合した樹脂をポリエーテル系高分子型帯電防止剤に対し2倍等量以上添加するのがよい。2倍等量未満であると、帯電防止剤の樹脂組成物中への分散性が悪く、電気特性が劣り、表面層へのブリードが発生し易く、汚染性の面でも好ましくない。
【0028】
本発明の帯電防止フィルムは、ポリエーテル系高分子型帯電防止剤を含有する上記の中心層の両面にポリオレフィン系樹脂を積層させ、中心層からの帯電防止剤のブリードを抑制することに特徴がある。
かかるポリオレフィン系樹脂としては、例えば、低密度ポリエチレン樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合体樹脂(EVA)、エチレン−アルキルアルキレート共重合体樹脂、エチレン−メチルアクリレート共重合体樹脂、エチレン−メチルメタクリレート共重合体樹脂(EMMA)、エチレン−メタクリル酸共重合体樹脂(EMAA)、エチレン−アクリル酸共重合体樹脂、エチレン−ブテン共重合体樹脂、エチレン−ペンテン共重合体樹脂、エチレン−ヘキセン共重合体樹脂、エチレン−オクテン共重合体樹脂等のエチレン系共重合体を挙げることができる。
【0029】
なお、この場合の外層となるポリオレフィン系樹脂にあっては、樹脂組成物のMFRが5〜12であることが好ましい。MFRが5未満の場合は、製膜性が悪くなり好ましいものではなく、MFRが12を超える場合も製膜性が悪くなり好ましいものではない。また、中心層の樹脂組成物のMFRに対して1.5倍以上であることにより、製膜性を向上させることができる。
【0030】
本発明が提供する帯電防止フィルムの層厚としては、使用用途により適宜選択され、特に限定されるものではないが、0.05〜0.5mm程度のものであればよい。
【0031】
フィルムの厚さが薄すぎると、フィルム物性が低下して破れやすくなる傾向になり、厚すぎると柔軟性が低下して使用し難いものとなる傾向になる。
【0032】
本発明の帯電防止フィルムとしては、使用用途に応じて所望する帯電防止性能であればよく、例えば、耐電圧・半減期について、スタティックディケイメーターで5kV印可時の半減期が5秒以下の電気特性を発揮するものであることが好ましい。
層厚比としては、外層/中心層/外層が、1/4/1〜1/16/1の範囲内のあることが好ましく、外層が中心層に対して厚くなると帯電防止性が十分に発揮されなかったり、外層と中心層の接着不良となったりする傾向があり好ましくない。また、外層が中心層に対して薄くなると、外層の表面に帯電防止剤がブリードする可能性があると共に、均一な外層が得られ難くなり、また好ましいものではない。
【0033】
本発明が提供する帯電防止フィルムの製造は、一般的な樹脂組成物を用いた製膜形成に使用される製造方法により製造することができる。具体的には、押出法や、インフレーション法、カレンダー法等の手段によって成形することができる。
【0034】
本発明が提供する帯電防止フィルムは、中心層の樹脂組成物に無水マレイン酸をグラフト重合した樹脂が配合されている。この樹脂は粘着性を有するものであることから、外層との接着性を向上させることにより、外層と中心層の間に接着層を設ける必要がない。したがって、2種3層の共押出による押出成形やインフレーション成形によるものが好ましい。
【0035】
また、成形された帯電防止フィルムに電子線照射を行うことにより、帯電防止性能を向上させたり、定荷重伸び試験における機械特性を向上させたりすることが可能となる。電子照射としては、加速電圧150〜300mV、電子流450〜500mAにおいて、照射線量50〜200KGyであることが好ましい。照射量が50KGy未満であると、照射効果が得られず、照射量が200KGyを超えると、フィルムの柔軟性が低下すると共に、フィルム自体が劣化してしまい好ましくない。
【実施例】
【0036】
以下に本発明を実施例、比較例により詳細に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0037】
実施例1〜7/比較例1〜7:
下記表1に記載の処方(重量部)により、東芝機械社製の押出機(2種3層押出機又は単層押出機)により、電子線照射をしたフィルム、または電子線照射をしないフィルムに製膜して、得られたフィルムについて製膜時の製膜性の評価を実施し、また電気特性(半減期及)、不純物発生度合い並びにフィルムの風合い(柔軟性)等を評価し、併せてその結果を表中に示した。
【0038】
なお、製造した3層フィルムにあっては、いずれのフィルムもその層厚を0.1mmとし、外層/中層/外層の層厚比は1/8/1に固定したフィルムとし、単層フィルムにあってはその層厚を0.1mmとした。
【0039】
【表1】

【0040】
*1:エチレン系共重合体:三井デュポンポリケミカル社製 ニュクレル
MFR 3;融点 98℃
*2:エチレン系共重合体:三井デュポンポリケミカル社製 ニュクレル
MFR 9;融点 98℃
*3:ポリプロピレン:住友化学社製 ノーブレン
MFR 1.2
*4:高分子型耐電防止剤A:三洋化成社製 ペレスタット
淡黄色ペレット;ポリエーテル系
*5:高分子型帯電防止剤B:ボロンインターナショナル社製 ハイボロン
淡黄色ペレット;有機ホウ素化合物
*6:無水マレイン酸グラフト重合樹脂組成物:三井化学社製 アドマー
【0041】
*7:不純物の評価
純水50mLにフィルムサンプル10gを浸漬し、100℃にて10分間抽出し、純水中に溶出したイオンを分析した。評価は以下のとおりである。
○:Na等のイオンが25ppm以下であった。
×:Na等のイオンが25ppm以上であった。
*8:粘着剤汚染性の評価
テープ化した時に粘着剤を汚染しないことを目途に評価した。
○:粘着剤を汚染しない。
×:粘着剤を汚染する。
*9:電気特性(半減期)
スタティックディケイメーターで5kV印可時の半減期を測定した。
【0042】
*10:定荷重伸び試験
厚み150μm×幅15mm×標線間長さ100mmの短冊状サンプルを、120℃のオーブン中で10gの荷重をかけたときの10分後の伸び率を基準に評価した。
◎:伸び率が50%以下である。
○:伸び率が50〜100%。
×:伸び率が100%を超える。
【0043】
*11:製膜性の評価
製膜性は、ダイスから押し出されてきた樹脂組成物の外観(フローマークの発生、厚みムラ)及びネックイン状況(幅の減少)について評価した。評価は以下のとおりである。
◎:外観及びネックイン状況とも問題なし。
○:外観及び/又はネックイン状況に多少問題があるが使用可能。
△:外観及び/又はネックイン状況に問題がある。
×:外観がフローマーク発生、厚みムラがあり、及び/又はネックイン状況でダイス幅より大幅に狭くなった。
【0044】
*12:風合い(柔軟性)の評価
触感による官能評価を行った。
○:柔軟性良好。
×:柔軟性に問題がある。
【0045】
以上の実施例、比較例の結果からも明らかなように、本発明の帯電防止フィルムは、中心層(内層)に帯電防止剤を含有させ、その両面をポリオレフィン系樹脂層により積層させた2種3層からなる帯電防止フィルムであり、外層を積層させたことによりロール等へのブリードが発生しない製膜性に優れたものである。また、内層に帯電防止剤を含有させたにも拘わらず、その帯電防止性の基準となる電気特性が向上されているものであり、この電気特性は、フィルム製造時に電子線照射することにより、さらに向上していることが理解される。
また、フィルムとしてエチレン系共重合体樹脂を主成分とする樹脂組成物を内層に設けたことより、柔軟性に富む風合いに優れたものであることが判明する。
【産業上の利用可能性】
【0046】
以上記載したように、本発明により、ロール等へのブリードが発生しない帯電防止フィルムが提供することができる。
本発明により提供される帯電防止フィルムは、優れた帯電防止性能を保持しながら、柔軟性に富み、かつ不純物の発生の少ない製膜性に優れたものであり、機械特性にも優れることから、精密電子部品の保護や、半導体関連部品の製造工程で使用される粘着テープなどの基材フィルムとして使用することができる点で産業上の利用性は多大なものである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エチレン系共重合体樹脂を主成分とする樹脂組成物100重量部に対して、ポリエーテル系高分子型帯電防止剤を1〜50重量部、無水マレイン酸をグラフト重合した樹脂組成物を2〜100重量部添加してなるMFRが5以下である樹脂組成物を中心層とし、その両面にMFRが5〜12のポリオレフィン系樹脂層を積層させたことを特徴とする帯電防止フィルム。
【請求項2】
両面のポリオレフィン系樹脂のMFRが中心層の樹脂組成物のMFRの1.5倍以上であることを特徴とする請求項1に記載の帯電防止フィルム。
【請求項3】
帯電防止フィルムに照射量50〜200KGyで電子照射を行ったことを特徴とする請求項1又は2に記載の帯電防止フィルム。
【請求項4】
耐電圧・半減期が5秒以下である請求項1〜3に記載の帯電防止フィルム。
【請求項5】
両面層と中心層の層厚比が1/4/1〜1/16/1である請求項1〜4に記載の帯電防止フィルム。

【公開番号】特開2008−260141(P2008−260141A)
【公開日】平成20年10月30日(2008.10.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−102623(P2007−102623)
【出願日】平成19年4月10日(2007.4.10)
【出願人】(000000077)アキレス株式会社 (402)
【Fターム(参考)】