説明

帯電防止剤組成物及びその製造方法並びに帯電防止剤組成物を用いたマスターバッチ及び樹脂成形品

【課題】使用前にべた付きがなく、次工程での操作性のよい帯電防止剤組成物及びその製造方法並びに帯電防止剤組成物を用いたマスターバッチ及び樹脂成形品を提供する。
【解決手段】帯電防止剤と第1の珪素化合物と第2の珪素化合物を含む、珪素化合物含有帯電防止剤であって、前記第2の珪素化合物は、前記第1の珪素化合物の粒径の84%以下であり、且つ、前記帯電防止剤に含まれる第1の珪素化合物の配合量の4〜100重量%である帯電防止剤組成物である。また、当該帯電防止剤組成物を樹脂に混合させて成るマスターバッチ、さらに当該帯電防止組成物又はマスターバッチを基材である樹脂に練り込んで成る樹脂成形品とした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、べた付きがなく、その後の処理における操作性のよい、帯電防止剤組成物及びその製造方法並びに帯電防止剤組成物を用いたマスターバッチ及び樹脂成形品に関するものである。
【背景技術】
【0002】
合成樹脂成形品に帯電防止効果を付与するための帯電防止剤には、塗布型と樹脂練り込み型がある。練り込み型の帯電防止剤は、成形加工の際、原料樹脂に添加して混合することによって、成形加工後、樹脂成形品の表面に帯電防止剤がブリードアウトして被膜を形成し、被膜表面の親水基によって空気中の水分を吸収して当該成形品の表面の静電気の発生を防止するものである。
【0003】
しかしながら、前記ブリードアウトは、界面活性剤等の帯電防止剤の分子の大きさ、親水基と親油基とのバランス、マトリックスを構成するポリマーのガラス転移点と結晶性、季節、温度、湿度、成形条件等によって、ブリードアウトする速度や量が異なる。
【0004】
この練り込み型帯電防止剤として界面活性剤が使用されている。また、この界面活性剤に、帯電防止性能、耐水洗性、耐磨耗性、非湿度依存性に優れている粉末状珪素化合物を混合させた練り込み型の帯電防止剤がある。
【0005】
例えば、特許文献1に示すように、炭素数10〜14の脂肪酸のジエタノールアミドを花弁状ケイ酸カルシウム粉末に吸収させた粉末の造粒物と、炭素数10〜14の脂肪酸のモノグリセライドを花弁状ケイ酸カルシウム粉末に吸収させた粉末の造粒物との混合物を含有するポリオレフィン樹脂用粒状帯電防止剤、また、特許文献2に示すように、二酸化珪素の微粉末と帯電防止剤としての界面活性剤、分散剤としての他の界面活性剤及び導電体の微粒子が配合されてなる帯電防止剤等がある。
【0006】
【特許文献1】特開2000−313875号公報
【特許文献2】特開2005−139269号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、これらの帯電防止剤と粉末状珪素化合物を先に混合させてより高い帯電防止性能を持たせた帯電防止剤は、樹脂に練り込んで樹脂成形品を作る前に、混合させた粉末状珪素化合物含有帯電防止剤が、経時変化や季節変化によりべたつくため、樹脂と混合させるための搬送の際、経路にくっつく等、次工程での操作性が悪い欠点があった。
【0008】
そこで、この発明は、使用前にべた付きがなく、次工程での操作性のよい帯電防止剤組成物及びその製造方法並びに帯電防止剤組成物を用いたマスターバッチ及び樹脂成形品を提供することを目的としたものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
請求項1の発明は、帯電防止剤と第1の珪素化合物と第2の珪素化合物を含む、珪素化合物含有帯電防止剤であって、前記第2の珪素化合物は、前記第1の珪素化合物の粒径の84%以下であり、且つ、前記帯電防止剤に含まれる第1の珪素化合物の配合量の4〜100重量%である、帯電防止剤組成物とした。
【0010】
また、請求項2の発明は、前記請求項1の帯電防止剤組成物を樹脂に混合させて成る、マスターバッチとした。
【0011】
また、請求項3の発明は、前記請求項1又は2の帯電防止剤組成物又はマスターバッチを基材である樹脂に練り込んで成る、樹脂成形品とした。
【0012】
また、請求項4の発明は、帯電防止剤と第1の珪素化合物を混合して成る珪素化合物含有帯電防止剤を作り、当該珪素化合物含有帯電防止剤に、前記第1の珪素化合物の粒径の84%以下の粒径から成り、且つ、前記第1の珪素化合物の前記珪素化合物含有帯電防止剤における含有量の4〜100重量%となるように配合される第2の珪素化合物を混合する、帯電防止剤組成物の製造方法とした。
【発明の効果】
【0013】
請求項1乃至3の発明によれば、帯電防止剤組成物、マスターバッチ及び樹脂成形品の帯電防止剤のブリードアウト量が少なく、それ故、べたつきがなく、取り扱いが容易である。従って、帯電防止剤組成物及びマスターバッチにおいては、次工程での操作性が良くなった。また、さらに、最終製品の樹脂成形品での表面抵抗率が改善され、帯電防止性能が良くなった。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
この発明は、帯電防止剤と第1の珪素化合物と第2の珪素化合物を含む、珪素化合物含有帯電防止剤であって、まず、帯電防止剤と第1の珪素化合物とを混合させて珪素化合物含有帯電防止剤をつくり、その後、この珪素化合物含有帯電防止剤の外周に、第2の珪素化合物をまぶしたものである。そして、この第2の珪素化合物は、前記第1の珪素化合物の粒径の84%以下であり、且つ、前記珪素化合物含有帯電防止剤に含まれる第1の珪素化合物の配合量の4〜100重量%である、帯電防止剤組成物である。
【0015】
また、帯電防止剤組成物と樹脂を、5:95の重量比で190°Cに加熱した二軸押出機を用いてペレタイズし、帯電防止マスターバッチを得る。さらに、この帯電防止マスターバッチと樹脂を1:9の重量比でドライブレンド後、230°Cに加熱した射出成形機にてテストピースを得る。
【0016】
この発明の帯電防止剤の対象樹脂は、熱可塑性樹脂であり、この中で特に限定されるものではない。例えば、PE(ポリエチレン)、ポリプロピレン、PVC(ポリ塩化ビニール)、PS(ポリスチレン)、PVAc(ポリビニールアルコール)、ABS、AS、PMMA(ポリメタクリル酸メチル)、PET(ポリエチレンテレフタラート)、PC(ポリカーボネート)、POM(ポリアセタール)、PPE(ポリフェニレンエーテル)等が挙げられる。
【0017】
前記第1の珪素化合物と第2の珪素化合物の区別は混合の時期や混合の態様を異にしたものである。具体的には粉末状珪素化合物であるが、ここで示す珪素化合物とは、二酸化珪素(シリカ)、若しくは、二酸化珪素によって構成される物質を示しており、珪酸カルシウム、アルミノ珪酸ナトリウムなどの単体又は混合物を含む。そして、粉末状珪素化合物の粒子の形状からは、ヒュームド、多孔質、繊維状多孔質、短冊状多孔質、花弁状多孔質、繊維状等が挙げられる。前記第1の珪素化合物と第2の珪素化合物は、これらのうちの粒子の構成が同じものでもよく、異なる形状のものでもよい。また、当該粉末状珪素化合物の一次粒子の平均粒径は50μm以下であることが好ましいが、特に限定するものではない。
【0018】
また、この発明で用いる帯電防止剤は、特に制約されず、一般的な練り込み型帯電防止剤として知られているものであれば、いずれのものでも使用することができるが、中でも界面活性剤が好ましい。
【0019】
非イオン系界面活性剤では、例えば、高級アルコールエチレンオキサイド付加物、脂肪酸エチレンオキサイド付加物、高級アルキルアミンエチレンオキサイド付加物、ポリプロピレングリコールエチレンオキサイド付加物等のポリエチレングリコール型非イオン界面活性剤、ポリエチレンオキサイド、グリセリンの脂肪酸エステル、ペンタエリスリットの脂肪酸エステル、ソルビット及びソルビタンの脂肪酸エステル、多価アルコールのアルキルエーテル、アルカノールアミン類の脂肪族アミド等の多価アルコール型非イオン界面活性剤が挙げられる。
【0020】
また、アニオン界面活性剤としては、例えば、高級脂肪酸のアルカリ金属塩等のカルボン酸塩類、高級アルコール硫酸エステル塩、高級アルキルエーテル硫酸エステル塩等の硫酸エステル塩類、アルキルベンゼンスルホン酸塩、パラフィンスルホン酸塩等のスルホン酸塩類、高級アルコールリン酸エステル塩等のリン酸エステル塩類が挙げられる。また、カチオン界面活性剤としては、アルキルトリメチルアンモニウム塩等の第4級アンモニウム塩類が挙げられる。また、両性界面活性剤としては高級アルキルアミノプロピオン酸塩等のアミノ酸型両性界面活性剤、高級アルキルジメチルベタイン、高級アルキルジヒドロキシエチルベタイン等のベタイン型両性界面活性剤が挙げられる。
【0021】
さらに、この発明で使用する帯電防止剤は、以下の(A)から(C)の3成分を含むものが特に好ましい。
【0022】
(A)脂肪酸エステル型非イオン性帯電防止剤
(B)下式(1)にて表されるアルキルアミン誘導体、又は、下式(2)にて表されるポリオキシエチレン脂肪酸アミド
式(1)
(CHCHO)mH

R-N−(CHCHO)nH
R:C8〜22 m+n=1〜10
式(2)
/(CHCHO)mH
R−C−N
‖ \(CHCHO)nH

R:C8〜22 m+n=1〜10
(C)親水基を有する高級アルコール、多価アルコール、エーテル類、グリシジルエーテル類、高級カルボン酸、ポリアルキレンオキサイドのうちの少なくとも一つ
【0023】
前記(A)の脂肪酸エステル型非イオン性界面活性剤としては、例えば、グリセリンモノステアレート、グリセリンモノラウレート、ジグリセリンモノステアレート、ジグリセリンモノラウレート、テトラグリセリンモノステアレート、デカグリセリンモノステアレート、ソルビタンモノステアレート、ソルビタンモノラウレート、ポリオキシエチレンソルビタンモノステアレート、ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート、ジヒドロキシエチルステアリルアミンモノステアレート、ポリオキシエチレンモノステアレート、ポリオキシエチレンジステアレート、ポリオキシプロピレンモノステアレート、ポリオキシプロピレンジステアレート等が挙げられる。
【0024】
前記(B)のアルキルアミン誘導体としては、例えば、デシルジエタノールアミン、ポリオキシエチレンアルキルアミン、ドデシルジエタノールアミン、テトラデシルジエタノールアミン、ヘキサデシルジエタノールアミン、オクタデシルジエタノールアミン、ドコシルジエタノールアミン等が挙げられる。これらのアルキルアミン誘導体は、単独(1種)で用いてもよいし、2種類以上組み合わせて使用することもできる。また、ポリオキシエチレン脂肪酸アミドとしては、例えば、N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)ラウリルアミド、N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)ミリスチルアミド、N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)パルミチルアミド、N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)ステアロアミド、N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)オレオアミド等のN,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)脂肪族アミド、ラウリルジエタノールアミドが挙げられる。
【0025】
前記(C)の高級アルコール類としては、例えば、ラウリルアルコール、ミリスチルアルコール、セチルアルコール、ステアリルアルコール、セトステアリルアルコール、イソステアリルアルコール等があげられる。また、多価アルコールとしては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリブチレングリコール、グリセリン、ソルビトール、マルチトール等が挙げられる。また、エーテル類としては、例えば、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンセチルエーテル、ポリキシエチレンオレイルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、ジメチルエーテル、フェノールメチルエーテル、エチルメチルエーテル、ジエチルエーテル、イソプロピルエーテル、フラン、ジベンゾフラン、テトラヒドロフラン等があげられる。
【0026】
また、グリシジルエーテル類としては、例えば、メチルグリシジルエーテル、エチルグリシジルエーテル、ブチルグリシジルエーテル、2−エチルヘキシルグリシジルエーテル、デシルグリシジルエーテル、ネオンペンチルグリコールグリシジルエーテル、p-(sec-ブチル)フェニルグリシジルエーテル、p-(tert-ブチル)フェニルグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、トリメチロールプロパンポリグリシジルエーテル等があげられる。
【0027】
また、高級カルボン酸としては、例えば、ステアリン酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ベヘニン酸等の高級脂肪酸が挙げられる。また、高級カルボン酸の金属塩としては、ステアリン酸バリウム、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸アルミニウム、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸リチウム、12-ヒドロキシステアリン酸リチウム、12-ヒドロキシステアリン酸亜鉛、12-ヒドロキシステアリン酸カルシウム、12-ヒドロキシステアリン酸マグネシウムなどが挙げられる。
【0028】
また、ポリアルキレンオキサイドとしては、例えば、ポリエチレンオキサイド、ポリプロピレンオキサイド、ポリテトラメチレンオキサイド等が挙げられる。好ましくは数平均分子量が1万以上70万以下のものが用いられる。
【実施例】
【0029】
次に実施例によりこの発明をさらに詳しく説明するが、この発明はこれによって限定されるものではない。実施例及び比較例で行った試験は以下の方法による。
【0030】
当該実施例及び比較例に使用される帯電防止剤及び珪素化合物の詳細を表1に示す。
【0031】
【表1】

【0032】
実施例1:
(製造方法)
前記(A)成分、(B)成分、(C)成分を融点以上に加熱し、液体状態にする。(A)成分、(B)成分、(C)成分を(D)先成分へ添加し、事前に混合させ、三本ロールにかけて混練する。この混練物をヘンシェルミキサーに入れ、攪拌しながら初めに添加した(D)先成分よりも粒径の小さな(D)後成分を添加し、ヘンシェルミキサーで混合し、帯電防止剤を得た。なお、粒径については表1に示す各方法によって測定された平均粒子径を表している。
【0033】
また、この様にしてできた帯電防止剤と樹脂(ポリプロピレン:プライムポリプロJ105G プライムポリマー製)を、5:95の重量比で190°Cに加熱した二軸押出機を用いてペレタイズし、帯電防止マスターバッチを得た。
【0034】
またさらに、この帯電防止マスターバッチと樹脂(ポリプロピレン:プライムポリプロJ2023GR プライムポリマー製)を、1:9の重量比でドライブレンド後、230°Cに加熱した射出成形機にてテストピースを得た。
【0035】
(性能評価方法)
べた付き:テストピースを60°Cで1週間暴露し、触手で官能評価によりべた付きを確認した。
評価→○;べた付きがない。
×;べた付きがある。
【0036】
表面抵抗率;テストピース成形後7日間、23°C、50%RH下に暴露し、抵抗測定器ハイレスターUP(商標名、株式会社三菱化学アナリテック製)を用い、表面抵抗率を測定した。
評価→○;1.E+11未満
△;1.E+11以上1.E+12未満
×;1.E+12以上
【0037】
落下実験:内径20mm、長さ1.5mのアクリル製パイプを30度に傾斜させ、上から下まで流動する時間を記録し、それを流動性の評価指標とした。
評価→○;全て落下。(今回の実験では、1.9秒以下)
△;ほとんど落下するが、一部アクリル製パイプに付着。(2秒以上)
×;ほとんどアクリル製パイプに付着し、落下しない。(NG)
【0038】
(総合的な評価基準)
落下実験、べた付き、表面抵抗率の3つの評価に一つでも×があれば、総合評価は×となり、×がなければ○とした。
【0039】
実施例1:
表1に示す(A)〜(C1)の成分、(D先)の成分として(D1)成分を使用し、また、(D後)の成分として(D8)を使用して、表2に示す配合重量比で、前記製造方法により帯電防止剤を製造した。また、表2に示すように、この帯電防止剤の落下速度を測定したところ、1.5秒であり、評価は○となった。
実施例6:
実施例1の帯電防止剤を用いて樹脂製成形品(テストピース)を作製したところ、表3に示すように、べた付きの評価は○、表面抵抗率は3×1010Ω/□で、評価は○であった。
【0040】
実施例2:
表1に示す(A)〜(C1)の成分、(D先)の成分として(D2)成分を使用し、また、(D後)の成分として(D3)を使用して、表2に示す配合重量比で、前記製造方法により帯電防止剤を製造した。また、表2に示すように、この帯電防止剤の落下速度を測定したところ、0.9秒であり、評価は○となった。
実施例7
実施例2の帯電防止剤を用いて樹脂製成形品(テストピース)を作製したところ、表3に示すように、べた付きの評価は○、表面抵抗率は8×1010Ω/□で、評価は○であった。
【0041】
実施例3:
表1に示す(A)〜(C1)の成分、(D先)の成分として(D2)成分を使用し、また、(D後)の成分として(D7)を使用して、表2に示す配合重量比で、前記製造方法により帯電防止剤を製造した。また、表2に示すように、この帯電防止剤の落下速度を測定したところ、0.8秒であり、評価は○となった。
実施例8:
実施例3の帯電防止剤を用いて樹脂製成形品(テストピース)を作製したところ、表3に示すように、べた付きの評価は○、表面抵抗率は2×1011Ω/□で、評価は△であった。
【0042】
実施例4:
表1に示す(A)〜(C2)の成分、(D先)の成分として(D5)成分を使用し、また、(D後)の成分として(D9)を使用して、表2に示す配合重量比で、前記製造方法により帯電防止剤を製造した。また、表2に示すように、この帯電防止剤の落下速度を測定したところ、1.2秒であり、評価は○となった。
実施例9:
実施例4の帯電防止剤を用いて樹脂製成形品(テストピース)を作製したところ、表3に示すように、べた付きの評価は○、表面抵抗率は8×1010Ω/□で、評価は○であった。
【0043】
実施例5:
表1に示す(A)〜(C1)の成分、(D先)の成分として(D2)成分を使用し、また、(D後)の成分として(D7)を使用して、表2に示す配合重量比で、前記製造方法により帯電防止剤を製造した。また、表2に示すように、この帯電防止剤の落下速度を測定したところ、0.9秒であり、評価は○となった。
実施例10:
実施例5の帯電防止剤を用いて樹脂製成形品(テストピース)を作製したところ、表3に示すように、べた付きの評価は○、表面抵抗率は8×1010Ω/□で、評価は○であった。
【0044】
比較例1:
表1に示す(A)〜(C1)の成分、(D先)の成分として(D1)成分を使用し、また、(D後)の成分として(D1)を使用して、表2に示す配合重量比で、前記製造方法により帯電防止剤を製造した。また、表2に示すように、この帯電防止剤の落下速度を測定したところ、2.5秒であり、評価は△となった。この比較例の場合、(D先)と(D後)の珪素化合物の粒径が同じである。
比較例6:
比較例1の帯電防止剤を用いて樹脂製成形品(テストピース)を作製したところ、表3に示すように、べた付きの評価は×、表面抵抗率は3×1010Ω/□で、評価は○であった。
【0045】
比較例2:
表1に示す(A)〜(C2)の成分、(D先)の成分として(D9)成分を使用し、また、(D後)の成分として(D5)を使用して、表2に示す配合重量比で、前記製造方法により帯電防止剤を製造した。また、表2に示すように、この帯電防止剤の落下速度を測定したところ、2.0秒であり、評価は△となった。この比較例の場合、(D先)より(D後)の珪素化合物の粒径が大きい。
比較例7:
比較例2の帯電防止剤を用いて樹脂製成形品(テストピース)を作製したところ、表3に示すように、べた付きの評価は×、表面抵抗率は1×1011Ω/□で、評価は△であった。
【0046】
比較例3:
表1に示す(A)〜(C1)の成分、(D先)の成分として(D2)成分を使用し、また、(D後)の成分として(D2)を使用して、表2に示す配合重量比で、前記製造方法により帯電防止剤を製造した。また、表2に示すように、この帯電防止剤の落下速度を測定したところ、2.0秒であり、評価は△となった。この比較例の場合、(D先)と(D後)の珪素化合物の粒径が同じである。
比較例8:
比較例3の帯電防止剤を用いて樹脂製成形品(テストピース)を作製したところ、表3に示すように、べた付きの評価は×、表面抵抗率は8×1010Ω/□で、評価は○であった。
【0047】
比較例4:
表1に示す(A)〜(C1)の成分、(D先)の成分として(D2)成分を使用し、また、(D後)の成分として(D7)を使用して、表2に示す配合重量比で、前記製造方法により帯電防止剤を製造した。また、表2に示すように、この帯電防止剤の落下速度を測定したところ、0.8秒であり、評価は○となった。この比較例の場合、(D後)の珪素化合物は(D先)の珪素化合物の配合比の150重量%となっている。
比較例9:
比較例3の帯電防止剤を用いて樹脂製成形品(テストピース)を作製したところ、表3に示すように、べた付きの評価は×、表面抵抗率は1×1012Ω/□で、評価は×であった。
【0048】
比較例5:
表1に示す(A)〜(C1)の成分、(D先)の成分として(D1)成分を使用し、また、(D後)の成分として(D8)を使用して、表2に示す配合重量比で、前記製造方法により帯電防止剤を製造した。また、表2に示すように、この帯電防止剤の落下速度を測定したところ、2.0秒であり、評価は△となった。この比較例の場合、(D後)の珪素化合物は(D先)の珪素化合物の配合比の2重量%となっている。
比較例10:
比較例3の帯電防止剤を用いて樹脂製成形品(テストピース)を作製したところ、表3に示すように、べた付きの評価は×、表面抵抗率は3×1010Ω/□で、評価は○であった。
【0049】
これらの実施例1〜5及び比較例1〜5の帯電防止剤の成分配合重量比、珪素化合物の粒径及び測定評価結果を表2に示す。
【0050】
【表2】

【0051】
また、前記実施例6〜10及び比較例6〜10の樹脂成形品の測定又は評価結果を表3に示す。
【0052】
【表3】

【0053】
これらの表2及び表3の結果から、実施例1と6、実施例2と7、実施例3と8、実施例4と9及び実施例5と10につきましては表2及び3を通じて×がなく、総合評価が○となった。一方、比較例1と6、比較例2と7、比較例3と8、比較例4と9及び比較例5と10は、表2及び3を通じて一個以上の×があり、総合評価は×となった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
帯電防止剤と第1の珪素化合物と第2の珪素化合物を含む、珪素化合物含有帯電防止剤であって、前記第2の珪素化合物は、前記第1の珪素化合物の粒径の84%以下であり、且つ、前記帯電防止剤に含まれる第1の珪素化合物の配合量の4〜100重量%であることを特徴とする、帯電防止剤組成物。
【請求項2】
前記請求項1の帯電防止剤組成物を樹脂に混合させて成ることを特徴とする、マスターバッチ。
【請求項3】
前記請求項1又は2の帯電防止剤組成物又はマスターバッチを基材である樹脂に練り込んで成ることを特徴とする、樹脂成形品。
【請求項4】
帯電防止剤と第1の珪素化合物を混合して成る珪素化合物含有帯電防止剤を作る工程と、当該珪素化合物含有帯電防止剤に、前記第1の珪素化合物の粒径の84%以下の粒径から成り、且つ、前記第1の珪素化合物の前記珪素化合物含有帯電防止剤における含有量の4〜100重量%となるように配合される第2の珪素化合物を混合する工程を有することを特徴とする、帯電防止剤組成物の製造方法。

【公開番号】特開2012−158675(P2012−158675A)
【公開日】平成24年8月23日(2012.8.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−18814(P2011−18814)
【出願日】平成23年1月31日(2011.1.31)
【出願人】(000110217)トッパン・フォームズ株式会社 (989)
【出願人】(508234729)理究株式会社 (8)
【Fターム(参考)】