説明

帯電防止塗料およびその塗装品

【課題】 導電性金属酸化物を一切配合することなく帯電防止機能を発揮すると共に、耐水性も備えた帯電防止塗料を提供し、該塗料を塗布することにより帯電防止機能を発揮する塗装品を提供することである。
【解決手段】 スルホン酸基がグラフト重合されたポリ4フッ化エチレン樹脂を、塗料を構成する全樹脂成分中10質量%以上配合した帯電防止塗料とし、該塗料を基材に塗布して表面抵抗値が1×109Ω/□以下の帯電防止塗料塗装品とした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、塗料および塗装品に関し、特に帯電防止機能と耐水性を有する帯電防止塗料およびその塗装品に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に塗料の組成は,皮膜形成材の有機樹脂,加色材の顔料(有機,無機),材料に流動性を与える有機溶剤,塗料・塗膜を調整する添加剤よりなっている。この際に有機樹脂は一般に電気抵抗が高いので、有機塗料からなる塗膜の電気抵抗も高いものとなっている。そのために、塗料塗膜の電気抵抗を下げるには、導電性を有する顔料を添加するか、水溶性の樹脂を混合するかしなければならない。
【0003】
しかし、特定の顔料を添加する方法では、特定の色彩に限定されるほか、水溶性の樹脂を混合する方法では、塗膜の耐水性が劣るという問題がある。
【0004】
また、塗膜の電気抵抗値が高くなると、塗膜表面に静電気が溜まりやすくなるため、静電気によって塵埃を吸着するという問題が生じるうえに、塵埃が塗膜表面に付着すると、塗膜の透明性が低下する。
【0005】
一方、塗膜表面において帯電防止機能を発揮させるには、その表面抵抗値を1×109Ω/□以下にするというのが一般常識となっている。
【0006】
そこで、この種の帯電防止塗料に関する先行技術として、表面抵抗値を1×104〜1×109Ω/□とする帯電防止塗料が特許出願され、既に出願されている(例えば、特許文献1参照)。
【0007】
また、この種の帯電防止塗料が塗布される塗装品については、帯電防止機能だけでなく、耐候性や抗菌性にも優れていることが望まれている。特に、建築物外壁や車体鋼板やテント地等の屋外で使用される塗装品については、外観が良好で、水垢や雨水跡等の汚れが付着し難い性質、例えば耐汚染性(耐環境汚染)を有していることが望まれている。
【特許文献1】特開2005−22155号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1に記載の帯電防止塗料は、導電性金属酸化物を含有する帯電防止塗料で、帯電防止効果を奏するが、塗膜の透明性を維持するためには、配合する導電性金属酸化物の粒子径を小さくすると共に、導電性金属酸化物の配合割合を所定範囲内とする工夫が必要であり、容易ではない。
【0009】
また、帯電防止塗料が塗布された塗装品の塗膜は、下地の色合いや模様を容易に現出可能な程度に透明性を備えているだけでなく、耐水性を備えていることが望ましい。
【0010】
本発明は上記問題点を解消するために、導電性金属酸化物を一切配合することなく帯電防止機能を発揮すると共に、耐水性も備えた帯電防止塗料を提供することを目的とし、該塗料を塗布することにより帯電防止機能を発揮する塗装品を提供することをも目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記の目的を達成するために請求項1に係る発明の帯電防止塗料は、スルホン酸基がグラフト重合されたポリ4フッ化エチレン樹脂を、塗料を構成する全樹脂成分中10質量%以上配合したことを特徴としている。
【0012】
上記の構成を有する請求項1に係る発明によれば、親水基となるスルホン酸基を側鎖に備える樹脂を10質量%以上配合しているので、樹脂自体が陽イオンを呼び込むカチオン交換樹脂機能を発揮し、水素イオンが自由に透過して、イオン伝導性を発揮し、樹脂自体が帯電防止機能を発揮する。
【0013】
請求項2に記載のように、さらに光触媒機能を有する多孔質の酸化チタンを配合することができる。
【0014】
請求項2に記載の発明によれば、光触媒機能により耐汚染性を発揮すると共に、多孔質の酸化チタンを配合しているので、消臭機能も十分に発揮する。
【0015】
請求項3に記載の発明は、請求項1または2に記載の帯電防止塗料を基材に塗布し、表面抵抗値が1×109Ω/□以下の塗装品としたことを特徴としている。
【0016】
上記の構成を有する請求項3に係る発明によれば、帯電防止機能を発揮する。
【0017】
請求項4に記載のように、前記帯電防止塗料の塗膜厚みが1μmで、可視光透過率が90%で表面抵抗値が108Ω/□レベル以下であることが好ましい。
【0018】
上記の構成を有する請求項4に係る発明によれば、可視光透過率が90%と高く、優れた透明性を有しているので、塗膜の透明性を長期間安定して維持することができる。また塗膜厚みが1μmと薄くても、表面抵抗値を十分に低く抑えることができ、帯電防止機能を発揮する。
【0019】
請求項5に記載のように、前記基材をフッ素樹脂塗装パネルにすることができる。
【0020】
上記の構成を有する請求項5に係る発明によれば、基材がフッ素樹脂塗装パネルであるので耐候性を備えており、帯電防止塗料を塗布することで帯電防止機能を発揮し、さらに酸化チタンを配合することで光触媒機能を発揮するパネルを得ることができる。
【発明の効果】
【0021】
上記したように本発明によれば、親水基となるスルホン酸基を側鎖に備える樹脂を樹脂成分中10質量%以上配合することにより、導電性金属酸化物を一切配合しなくても、樹脂自体が帯電防止機能を発揮すると共に耐水性を有する帯電防止塗料を得ることができる。さらに、酸化チタンを配合した帯電防止塗料を塗布することで、帯電防止機能だけでなく、耐汚染性や耐候性や抗菌性に優れた塗装品を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、本発明に係る帯電防止塗料およびその塗装品の実施の形態について詳細に説明する。
【0023】
本発明に係る帯電防止塗料は、皮膜を形成する樹脂成分として、スルホン酸基がグラフト重合されたポリ4フッ化エチレン樹脂を配合した塗料であって、前記樹脂として例えば、ナフィオン(Nafion:デュポン社の登録商標)が該当する。また、このポリ4フッ化エチレン樹脂の配合割合は、塗料を構成する全樹脂成分中10質量%以上であることが望ましい。
【0024】
これは、ポリ4フッ化エチレン樹脂が、親水基となるスルホン酸基を側鎖に備える樹脂であるので、樹脂自体が陽イオンを呼び込むカチオン交換樹脂となっており、水素イオンが自由に透過して、イオン伝導性を発揮するので、樹脂中に所定割合以上配合することで、樹脂自体が帯電防止機能を発揮するようになるからである。
【0025】
さらに、樹脂中に光触媒機能を有する多孔質の酸化チタンを配合して、光触媒機能を発揮する帯電防止塗料とすることも可能である。
【0026】
例えば、ポリ4フッ化エチレン樹脂に加えてその他のフッ素樹脂を配合した樹脂バインダとして、このバインダ中に酸化チタンを添加して光触媒塗料とすることができる。配合するフッ素樹脂としては、PVDF、PVF、PTFE、ETFE、PVDF−HFP、PCTFE、3フッ化塩化エチレンーアルキルビニルエーテル共重合体、4フッ化エチレンーアルキルビニルエーテル共重合体、3フッ化塩化エチレンーアルキルビニルエーテルーアルキルビニルエステル共重合体の少なくとも1種を用いることができる。また、2種以上のフッ素樹脂を配合することも可能である。
【0027】
これらの公知のフッ素樹脂を配合した光触媒塗料とすることで、金属や無機系下地に対する接着性が向上し、塗膜の耐摩耗性が向上する。
【0028】
次に、ポリ4フッ化エチレン樹脂として使用したナフィオン(デュポン社の登録商標)について説明する。
【0029】
ナフィオン(登録商標)は、スルホン酸基がグラフト重合されたポリ4フッ化エチレンであって、高分子固体型燃料電池の固体電解質として一般的に使用されている有機ポリマーであり、下記に示す化学式で表される。
【0030】
【化1】

【0031】
上記の化学式で表されるように、前記ナフィオン(Nafion:デュポン社の登録商標)は、パーフルオロスルホン酸を側鎖に有する高分子4フッ化エチレンの繰り返し単位からなるグラフトポリマー(スルホン酸基がグラフト重合されたポリ4フッ化エチレン)であり、C−H結合は有しておらず、電気化学反応に対して高度に安定なC−F結合であるので、光触媒作用を受け難い構造であるといえる。
【0032】
C−F結合の結合エネルギーは、大きくて非常に緻密で安定した分子鎖を形成しているために、結晶化度が高く、耐薬品性、耐候性を示し、電気化学反応に対して高度に安定であり、さらには、F原子のもつ小さな原子半径と低い分極性から、分子間凝集力が低くなり、低表面張力、低摩擦係数という性質を示し外からの力に変形しやすくなるためと考えられる。(プラスチック・機能性高分子材料事典:産業調査会事典出版センター発行(2004年)の306ページ目参照)。
【0033】
塗料の樹脂バインダとしてナフィオン(登録商標)を用いているので、光触媒機能を有する金属酸化物を配合しても、バインダが光触媒作用を受け難く、自己崩壊も生じない。また、配合する光触媒金属酸化物の配合量を大きくしても、バインダが劣化しない。そのために、塗料として塗布可能な範囲まで金属酸化物の濃度を大きくすることが可能である。
【0034】
光触媒金属酸化物を含む塗料であれば、超親水性を発揮して環境汚染を受け難くなる。さらに、その他の光触媒機能である消臭機能や抗菌機能を発揮することも可能である。
【0035】
前述した消臭機能や抗菌機能を十分発揮するには、塗膜自体に十分なガス吸着能力が必要であるが、そのためには塗膜の吸着表面積を大きくしてやればよい。また、塗膜の吸着表面積を大きくするには、塗料に配合する酸化チタン等の金属酸化物の比表面積が大きなものを採用すればよく、例えば、石原産業(株)製の多孔質な酸化チタンST−01を用いることができる。
【0036】
光触媒機能を有する金属酸化物としては、酸化チタンや酸化亜鉛や酸化錫等が存在しているが、特に光触媒機能が安定し、さらに、簡単に入手可能な酸化チタンが好適に使用される。前記酸化チタンは微細な粒子状のものが市販されており、これを適当な樹脂バインダと有機溶剤や水などに所定量配合し攪拌混合して、所定の光触媒塗料を製造する。
【0037】
次に、塗膜の表面抵抗値を実測(絶縁抵抗試験器SM−8220(日置電機社製)を用いて測定)した例について説明する。
【0038】
試料:スルホン酸基がグラフト重合されたポリ4フッ化エチレン樹脂として5%ナフィオン溶液「DE520」(デュポン社製品)を用いたA溶液と、架橋型フッ素樹脂「ルミフロン710F」(旭硝子社製品)8.0質量部とメチル化メラミン樹脂「スーパーベッカミンL―105−60」(大日本インキ化学工業社製品)3.5質量部と溶剤としてのメチルエチルケトン88.5質量部を混合攪拌したB溶液とを所定割合混合して帯電防止塗料を調合した。
【0039】
上記のA溶液の樹脂成分は、100質量部に対して5質量%となる。また、B溶液の樹脂成分は、架橋型フッ素樹脂「ルミフロン710F」(旭硝子社製品)が不揮発分100質量%の固体であり、メチル化メラミン樹脂「スーパーベッカミンL―105−60」(大日本インキ化学工業社製品)が不揮発分60質量%の粘度の高い液体であるから、B溶液全体としてはB溶液100質量部に対して10質量%となる。
【0040】
そのために、A溶液100%の実施例1(帯電防止塗料1)は、ポリ4フッ化エチレン樹脂の配合割合が100質量%であり、A溶液100質量部に対してB溶液50質量部を混合した実施例2(帯電防止塗料2)とすると、その樹脂成分中のポリ4フッ化エチレン樹脂の配合割合は50質量%となる。さらに、A溶液50質量部とB溶液100質量部とを混合した実施例3(帯電防止塗料3)では、その樹脂成分中のポリ4フッ化エチレン樹脂の配合割合は20質量%となる。また、A溶液50質量部とB溶液220質量部とを混合した実施例4(帯電防止塗料4)では、その樹脂成分中のポリ4フッ化エチレン樹脂の配合割合は10質量%となり、A溶液10質量部とB溶液90質量部とを混合した実施例5では、その樹脂成分中のポリ4フッ化エチレン樹脂の配合割合は5質量%となる。さらに、B溶液のみ(比較例1)では、その樹脂成分中のポリ4フッ化エチレン樹脂の配合割合は0質量%であることは明らかである。
【0041】
これらの実施例1〜5および比較例1との6種の塗料を、それぞれアクリル板に塗布し乾燥させた試料を作成し、表面抵抗値の測定と、耐水性のテストを行った。
【0042】
このときの塗装方法はスプレー塗装とし、140℃で5分間乾燥させて塗膜厚み1μmとしている。ただし、塗装方法と乾燥方法はその他の方法でもよく、特に限定するものではない。
【0043】
実測例1:上記試料を用いて実測した結果を表1に示す。
【0044】
【表1】

【0045】
実測例2:さらに、比較例2の透明な従来型の帯電防止塗料として、ポリメタクリル酸水溶液「ジュリマーSP−50TF」(日本純薬社製品)40質量部とイソプロピルアルコール60質量部を混合して調整したポリメタクリル酸樹脂のアルコール溶液を用いて、上記の比較例1と同じ条件で、表面抵抗値の測定と耐水性のテストを行った。その結果を表2に示す。
【0046】
【表2】

【0047】
実測例3:前述した実施例3(帯電防止塗料3)を異なる種類の基材に塗布(塗膜厚み1μm)し、そのときの表面抵抗値を計測した。その結果を表3に示す。
【0048】
【表3】

【0049】
表1に示すように、本発明に係る実施例1のポリ4フッ化エチレン樹脂の配合割合が樹脂成分中100質量%であれば、その塗膜厚みが1μmと非常に薄い塗膜厚みであっても、105Ωレベルとなって、表面抵抗値が低くなっていることが判る。
【0050】
また、ポリ4フッ化エチレン樹脂の配合割合が樹脂成分中50質量%の実施例2であれば、106Ωレベルとなっており、ポリ4フッ化エチレン樹脂の配合割合が樹脂成分中20質量%の実施例3、もしくは10質量%の実施例4であれば、6.67×107Ωであり、108Ωレベル以下になっているのが判る。
【0051】
一般に、表面抵抗値が108〜109Ω/□レベル以下であれば帯電防止効果があるとされており、本実施の形態に係る実施例1〜4が帯電防止機能を発揮する塗膜を形成することは明らかである。つまり、実施例1〜4は帯電防止塗料となる。
【0052】
しかし、樹脂成分中のポリ4フッ化エチレン樹脂の配合割合が5質量%の実施例5の表面抵抗値は1013Ωレベルであり、帯電防止機能は発揮していない。つまり、樹脂成分中のポリ4フッ化エチレン樹脂の配合割合が10質量%以上であれば、その塗膜は帯電防止機能を発揮するといえる。
【0053】
さらに、実施例1〜4の全ての可視光透過率(紫外・可視分光光度計「ShimadzuUV=3150」(島津製作所社製)を用いて波長550nmでの透過率を測定)は90%であって、透明性に優れた塗膜であることが判る。また、耐水性に関しては、水道水1ヶ月浸漬テストの結果より、透明な従来型の帯電防止塗料である比較例2(ポリメタクリル酸樹脂のアルコール溶液)では溶解現象が見られたが、ポリ4フッ化エチレン樹脂を配合した塗料を塗布した塗膜表面に変化は見られず、耐水性を有する塗膜であることが判る。
【0054】
そのために、ポリ4フッ化エチレン樹脂の配合割合が樹脂成分中10質量%以上の帯電防止塗料であれば、その塗膜厚みが1μmであっても、可視光透過率が90%で表面抵抗値が107Ω/□レベルとなって、透明性の耐水性に優れ帯電防止機能を発揮する塗膜を形成することができる。
【0055】
また、表3に示すようにいずれの基材であっても、塗布前に比べて帯電防止塗料を塗布後の表面抵抗値が大きく低下している。特に焼付けフッ素樹脂鋼板が基材の場合には、塗布前の表面抵抗値1015レベル以上から塗布後には6.71×105まで大きく低下している。
【0056】
また、水性アクリルシリコン塗布アルミ板の場合でも、1012レベルが106レベルまで低下しており、表面抵抗値が帯電防止効果を発揮する程度に十分低くなっていることが明らかとなった。
【0057】
前述したように、表面抵抗値が108〜109Ω/□レベル以下であれば帯電防止効果があるとされており、本発明に係る帯電防止塗料1〜4を塗布した塗装品が帯電防止機能を発揮することは明らかである。
【0058】
ただし、弾性リシン(シリコン)吹き付けアルミ板では、塗布後の表面抵抗値が109レベルまでしか低下していない。これは、リシン表面が砂状の細かい凹凸面であるので、その実表面積が大きくなっているためだと思われる。
【0059】
上記の結果から、本発明に係る帯電防止塗料を塗布した塗装品は、帯電防止機能を発揮する程度に低い表面抵抗値となる塗膜を有することが判った。また、この塗膜厚みは1μmの薄い塗膜厚みであっても十分低い表面抵抗値を示すことが判り、透明性が求められるクリアコートとしても有効であることが判った。
【0060】
さらに、フッ素樹脂塗装パネルに本発明に係る帯電防止塗料を塗布すると表面抵抗値が大きく低下するので、もともと耐候性を備えているパネルに優れた帯電防止機能を付与することができる。
【0061】
また、光触媒機能を有する酸化チタンを配合した帯電防止塗料を塗布することで、帯電防止機能だけでなく、耐汚染性や耐候性や抗菌性に優れた帯電防止塗料塗装品を得ることができる。
【0062】
例えば、多孔質光触媒酸化チタンST−01(石原産業(株)製:吸着表面積300m2/g)を所定割合(例えば、1〜10質量%)配合することで、帯電防止機能だけでなく、耐汚染性や耐候性や抗菌性に優れた光触媒機能を有する帯電防止塗料塗装品を得ることができる。
【0063】
本発明に係る帯電防止塗料は、その皮膜を形成する樹脂成分として、スルホン酸基がグラフト重合されたポリ4フッ化エチレン樹脂を配合した塗料としているので、結合エネルギーの大きい、非常に緻密で安定した分子鎖を形成するC−F結合の塗膜を形成する。そのために、結晶化度が高く、耐薬品性、耐候性を示し、電気化学反応に対して高度に安定であり、さらには、F原子のもつ小さな原子半径と低い分極性から、分子間凝集力が低くなり、低表面張力、低摩擦係数という性質を示す。また、表面抵抗値が109Ω/□レベル以下となることから、樹脂自体が帯電防止機能を発揮すると共に耐水性を有する帯電防止塗料となる。
【0064】
本発明に係る帯電防止塗料塗装品は、その表面に薄い膜厚の帯電防止皮膜を形成しているので、下地の色合いや模様をクリアに発現可能な透明性に優れた塗膜を形成すると共に、帯電防止機能を発揮して、塵埃が塗膜表面に付着するのを防止して、耐汚染性に優れた塗装品となる。
【0065】
上記したように、本発明によれば、スルホン酸基がグラフト重合されたポリ4フッ化エチレン樹脂を、塗料を構成する全樹脂成分中10質量%以上配合することで、導電性金属酸化物を一切配合しなくても、樹脂自体が帯電防止機能を発揮すると共に耐水性を有する帯電防止塗料を得ることができる。さらに、酸化チタンを配合した帯電防止塗料を塗布することで、帯電防止機能だけでなく、耐汚染性や耐候性や抗菌性に優れた帯電防止塗料塗装品を得ることができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
スルホン酸基がグラフト重合されたポリ4フッ化エチレン樹脂を、塗料を構成する全樹脂成分中10質量%以上配合したことを特徴とする帯電防止塗料。
【請求項2】
さらに光触媒機能を有する多孔質の酸化チタンを配合したことを特徴とする請求項1に記載の帯電防止塗料。
【請求項3】
請求項1または2に記載の帯電防止塗料が基材表面に塗布され、表面抵抗値が1×109Ω/□以下であることを特徴とする塗装品。
【請求項4】
前記帯電防止塗料の塗膜厚みが1μmで、可視光透過率が90%、表面抵抗値が108Ω/□レベル以下であることを特徴とする請求項3に記載の塗装品。
【請求項5】
前記基材が、フッ素樹脂塗装パネルであることを特徴とする請求項3または4に記載の塗装品。

【公開番号】特開2009−67819(P2009−67819A)
【公開日】平成21年4月2日(2009.4.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−234433(P2007−234433)
【出願日】平成19年9月10日(2007.9.10)
【出願人】(591164794)株式会社ピアレックス・テクノロジーズ (25)
【Fターム(参考)】