説明

帯電防止性に優れたラミネートフィルムの製造方法及び帯電防止性に優れた袋体の製造方法

【課題】クリーン性が良好で、十分に除電されていると共に、帯電防止性の持続性に優れていて時間が経過しても帯電し難いラミネートフィルムを効率良く、低コストで製造する方法を提供する。
【解決手段】この発明に係る帯電防止性に優れたラミネートフィルムの製造方法は、重ね合わせ前の少なくとも2枚のフィルム2、3の重ね合わせ面に対して除電装置21、22を用いて除電処理を行う第1除電処理工程と、前記第1除電処理工程を経たフィルム同士を重ね合わせて積層一体化フィルム4を得る積層工程と、前記積層一体化フィルム4の両方の外面に対して除電装置23、24を用いて除電処理を行う第2除電処理工程とを包含することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、十分に除電されていると共に時間が経過しても帯電し難いラミネートフィルム及び袋体を製造する方法に関する。
【0002】
なお、この明細書及び特許請求の範囲において、「フィルム」の語は、フィルム及びシートを含む意味で用いる。
【背景技術】
【0003】
シリコンウエハー、化合物半導体ウエハー、ハードディスク等の電子材料を包装する包装材や包装袋としては、電子材料に電気的な悪影響が及ぶのを防ぐために、帯電していないことが要求される。また、食品や医薬品等を包装する包装材も、帯電していると、塵や埃等が付着して製造時においてライントラブル発生の要因になることがありこの場合には製造効率が低下するし、また塵や埃等が付着すると包装材としてのクリーン性が低下するので、帯電していないことが要求される。このように、電子材料、食品、医薬品などを包装する包装材や包装袋としては、帯電防止性に優れていることが強く求められている。
【0004】
従来、帯電防止性に優れた包装用フィルムとしては、帯電防止剤を練り込み加工したものが公知である(特許文献1、2参照)。即ち、特許文献1には、帯電防止剤を含有したポリオレフィン系フィルムに基材層が積層されてなるラミネートフィルムが記載され、特許文献2には、帯電防止性を付与した基材層と、該基材層に積層される金属バリアー箔層と、該金属バリアー箔層に積層される帯電防止剤を含有したポリオレフィン層とからなる包装用フィルムが記載されている。
【特許文献1】特開2004−339398号公報
【特許文献2】特開2005−28808号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記特許文献1、2に記載のフィルムでは、帯電防止剤を練り込んでいるので、時間の経過とともに帯電防止剤が表面にブリードアウトすることは避けられず、このためにクリーン性が低下するという問題があった。また、十分な帯電防止効果を得るためには帯電防止剤の練り込み量を多くしなければならず、このためにコストが増大するという問題もあった。また、帯電防止剤を添加混合するものであるので、その分作業性が低下するという問題もあった。
【0006】
この発明は、かかる技術的背景に鑑みてなされたものであって、クリーン性が良好で、十分に除電されていると共に、帯電防止性の持続性に優れていて時間が経過しても帯電し難いラミネートフィルム及び袋体を効率良く、低コストで製造する方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記目的を達成するために、本発明は以下の手段を提供する。
【0008】
[1]重ね合わせ前の少なくとも2枚のフィルムの重ね合わせ面に対して除電装置を用いて除電処理を行う第1除電処理工程と、
前記第1除電処理工程を経たフィルム同士を重ね合わせて積層一体化フィルムを得る積層工程と、
前記積層一体化フィルムの両方の外面に対して除電装置を用いて除電処理を行う第2除電処理工程とを包含することを特徴とする帯電防止性に優れたラミネートフィルムの製造方法。
【0009】
[2]前記第1除電処理工程の除電処理及び前記第2除電処理工程の除電処理を、イオン供給式除電装置を用いて行う前項1に記載の帯電防止性に優れたラミネートフィルムの製造方法。
【0010】
[3]前記第1除電処理工程を経たフィルム同士を接着剤を介して重ね合わせて積層一体化フィルムを得る前項1または2に記載の帯電防止性に優れたラミネートフィルムの製造方法。
【0011】
[4]重ね合わせ前の少なくとも2枚のフィルムの重ね合わせ面に対して除電装置を用いて除電処理を行う第1除電処理工程と、
前記第1除電処理工程を経たフィルム同士を重ね合わせてその周縁部の少なくとも一部をシール接合して袋体を得るシール工程と、
前記シール接合された袋体の外面に対して除電装置を用いて除電処理を行う第2除電処理工程とを包含することを特徴とする帯電防止性に優れた袋体の製造方法。
【0012】
[5]前記第1除電処理工程の除電処理及び前記第2除電処理工程の除電処理を、イオン供給式除電装置を用いて行う前項4に記載の帯電防止性に優れた袋体の製造方法。
【0013】
[6]重ね合わせ前の少なくとも2枚のフィルムの重ね合わせ面に対して除電装置を用いて除電処理を行う第1除電処理工程と、
前記第1除電処理工程を経たフィルム同士を重ね合わせて積層一体化フィルムを得る積層工程と、
前記積層一体化フィルムの両方の外面に対して除電装置を用いて除電処理を行ってラミネートフィルムを得る第2除電処理工程と、
重ね合わせ前の少なくとも2枚の前記ラミネートフィルムの重ね合わせ面に対して除電装置を用いて除電処理を行う第3除電処理工程と、
前記第3除電処理工程を経たラミネートフィルム同士を重ね合わせてその周縁部の少なくとも一部をシール接合して袋体を得るシール工程と、
前記シール接合された袋体の外面に対して除電装置を用いて除電処理を行う第4除電処理工程とを包含することを特徴とする帯電防止性に優れた袋体の製造方法。
【0014】
[7]前記第1〜4除電処理工程の除電処理をイオン供給式除電装置を用いて行う前項6に記載の帯電防止性に優れた袋体の製造方法。
【発明の効果】
【0015】
[1]の発明では、重ね合わせ前のフィルムの重ね合わせ面に対して除電装置を用いて除電処理を行うと共に、積層一体化したフィルムの両方の外面に対して除電装置を用いて除電処理を行うので、得られたラミネートフィルムは、十分に除電されていると共に、帯電防止性の持続性に優れていて時間が経過しても帯電し難い。即ち、ラミネートフィルムの製造に際し、十分に効果的で且つ持続性のある除電を施すことができる。また、帯電防止剤を練り込んで除電するものではないから、クリーン性が良好であると共に、製造効率が良くて低コストで製造することができる。
【0016】
[2]の発明では、イオン供給式除電装置を用いて除電処理を行うから、より一層十分に除電できるし、帯電防止性の持続性もより向上させることができる。
【0017】
[3]の発明では、フィルム同士を接着剤を介して重ね合わせて積層一体化するものであるが、このような接着剤で接着する場合でも問題なく十分に除電することができる。
【0018】
[4]の発明では、重ね合わせ前のフィルムの重ね合わせ面に対して除電装置を用いて除電処理を行うと共に、シール接合された袋体の外面に対して除電装置を用いて除電処理を行うので、得られた袋体は、十分に除電されていると共に、帯電防止性の持続性に優れていて時間が経過しても帯電し難い。即ち、袋体の製造に際し、十分に効果的で且つ持続性のある除電を施すことができる。また、帯電防止剤を練り込んで除電するものではないから、クリーン性が良好であると共に、製造効率が良くて低コストで製造することができる。
【0019】
[5]の発明では、イオン供給式除電装置を用いて除電処理を行うから、より一層十分に除電できるし、帯電防止性の持続性もより向上させることができる。
【0020】
[6]の発明では、重ね合わせ前のフィルムの重ね合わせ面に対して除電装置を用いて除電処理を行うと共に、積層一体化したフィルムの両方の外面に対して除電装置を用いて除電処理を行い、更に重ね合わせ前のラミネートフィルムの重ね合わせ面に対して除電装置を用いて除電処理を行うと共に、シール接合された袋体の外面に対して除電装置を用いて除電処理を行うので、得られた袋体は、十分に除電されていると共に、帯電防止性の持続性に優れていて時間が経過しても帯電し難い。即ち、袋体の製造に際し、十分に効果的で且つ持続性のある除電を施すことができる。また、帯電防止剤を練り込んで除電するものではないから、クリーン性が良好であると共に、製造効率が良くて低コストで袋体を製造することができる。
【0021】
[7]の発明では、イオン供給式除電装置を用いて除電処理を行うから、より一層十分に除電できるし、帯電防止性の持続性もより向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
この発明に係る帯電防止性に優れたラミネートフィルム(1)の製造方法について説明する。
【0023】
まず、図1に示すように、重ね合わせ前(積層前)の各フィルム(2)(3)の重ね合わせ面に対して除電装置(21)(22)を用いて除電処理を行う(第1除電処理工程)。即ち、一方のフィルム(2)の重ね合わせ面に対して除電装置(21)を用いて除電処理を行うと共に、他方のフィルム(3)の重ね合わせ面に対しても除電装置(22)を用いて除電処理を行う。
【0024】
しかる後、直ちに前記第1除電処理工程を経たフィルム(2)(3)同士を重ね合わせて積層一体化して積層一体化フィルム(4)を得る(積層工程)。例えば、図1に示すように、前記第1除電処理工程を経たフィルム(2)(3)を一対の加熱加圧ロール(11)(12)間で加熱加圧することによって積層一体化フィルム(4)を得る。或いは、前記第1除電処理工程を経たフィルム(2)(3)のいずれか一方又は両方の重ね合わせ面に接着剤を塗布した後、フィルム(2)(3)を重ね合わせて一対の加熱加圧ロール(11)(12)間に挿通してフィルム(2)(3)を加熱加圧することによって接着一体化せしめて積層一体化フィルム(4)を得る。或いはまた、前記第1除電処理工程を経たフィルム(2)(3)の間に押出機から押し出された合成樹脂押出フィルム(接着層)を配置してこれらを一対の加熱加圧ロール(11)(12)間に挿通してフィルム(2)(3)を加熱加圧することによって積層一体化フィルム(4)を得る。
【0025】
前記接着剤としては、特に限定されないが、例えばポリエステル系接着剤、エーテル系接着剤、アクリル系接着剤、ウレタン系接着剤等が挙げられる。また、接着のための合成樹脂押出フィルムとしては、ポリエステル系フィルム、エーテル系フィルム、アクリル系フィルム、ポリエチレン系フィルム等が挙げられる。
【0026】
次に、前記積層一体化フィルム(4)の両方の外面(図1では上下両面)に対して除電装置(23)(24)を用いて除電処理を行う(第2除電処理工程)。即ち、前記積層一体化フィルム(4)の一方の外面に対して除電装置(23)を用いて除電処理を行うと共に、該積層一体化フィルム(4)の他方の外面に対して除電装置(24)を用いて除電処理を行う。こうして製造されたラミネートフィルム(1)は、例えば巻き取りロール(13)に巻き取られる。
【0027】
この発明のラミネートフィルム(1)の製造方法によれば、重ね合わせ前のフィルム(2)(3)の重ね合わせ面に対して除電装置(21)(22)を用いて除電処理を行うと共に、積層一体化したフィルム(4)の両方の外面に対して除電装置(23)(24)を用いて除電処理を行うので、得られたラミネートフィルム(1)は、十分に除電されていると共に、帯電防止性の持続性に優れていて時間が経過しても帯電し難い。即ち、ラミネートフィルム(1)の製造に際し、十分に効果的で且つ長期持続性のある除電を施すことができる。また、帯電防止剤を練り込んで除電するものではないから、クリーン性が良好であると共に、製造効率が良くて低コストで製造することができる。本発明の製造方法により十分な除電ができる理由は定かではないが、フィルムの重ね合わせ面に対して除電装置で除電を行うことで、ラミネートの際にフィルム同士の積層界面に静電気が蓄積されるのを十分に抑制できることによる効果があるものと推定される。なお、外面の除電を行う第2除電処理工程を省略した場合には、積層後のラミネートフィルムをロールに巻き取る時などラミネートフィルム同士を重ね合わせて配置する際にラミネートフィルムの表面に静電気を帯びてしまい、十分な除電を行うことができない。
【0028】
前記除電装置(21)(22)(23)(24)としては、特に限定されるものではないが、イオン供給式除電装置、ローラ式除電装置、除電ブラシ装置、除電布装置等が挙げられる。これらの中でも、イオン供給式除電装置を用いるのが好ましい。前記イオン供給式除電装置としては、特に限定されるものではないが、例えばコロナ放電式除電装置、軟X線式除電装置、電圧印加によりイオンを生成する除電電極を備えた除電装置などが挙げられる。
【0029】
次に、この発明に係る帯電防止性に優れた袋体(31)の製造方法について説明する。まず、図2に示すように、重ね合わせ前の各フィルム(2)(3)の重ね合わせ面に対して除電装置(41)(42)を用いて除電処理を行う(第1除電処理工程)。即ち、一方のフィルム(2)の重ね合わせ面に対して除電装置(41)を用いて除電処理を行うと共に、他方のフィルム(3)の重ね合わせ面に対しても除電装置(42)を用いて除電処理を行う。前記一方のフィルム(2)としては、単層のフィルムを用いても良いし、或いは前記製造方法で製造されたラミネートフィルム(1)を用いるようにしても良い。また、前記他方のフィルム(3)としては、単層のフィルムを用いても良いし、或いは前記製造方法で製造されたラミネートフィルム(1)を用いるようにしても良い。
【0030】
しかる後、直ちに前記第1除電処理工程を経たフィルム(2)(3)同士を重ね合わせてその周縁部の少なくとも一部をシール接合することによって袋体(31)を得る(シール工程)。例えば、図2に示すように、ヒートシール装置(45)を用いてフィルム(2)(3)の周縁部の一部(4辺の周縁部のうちの3辺の周縁部)を加熱加圧することによってシール接合して、袋体(31)を得る。
【0031】
前記シール接合された袋体(31)の両方の外面(図2では上下両面)に対して除電装置(43)(44)を用いて除電処理を行う(第2除電処理工程)。即ち、前記シール接合された袋体(31)の一方の外面に対して除電装置(43)を用いて除電処理を行うと共に、該袋体(31)の他方の外面に対して除電装置(44)を用いて除電処理を行う。次いで、裁断機(46)を用いて所定の大きさに裁断することによって袋体(31)を得る。
【0032】
この発明の袋体(31)の製造方法によれば、重ね合わせ前のフィルム(2)(3)の重ね合わせ面に対して除電装置(41)(42)を用いて除電処理を行うと共に、シール接合された袋体(31)の外面に対して除電装置(43)(44)を用いて除電処理を行うので、得られた袋体(31)は、十分に除電されていると共に、帯電防止性の持続性に優れていて時間が経過しても帯電し難い。即ち、袋体(31)の製造に際し、十分に効果的で且つ長期持続性のある除電を施すことができる。また、帯電防止剤を練り込んで除電するものではないから、クリーン性が良好であると共に、製造効率が良くて低コストで製造することができる。本発明の製造方法により十分な除電ができる理由は定かではないが、フィルムの重ね合わせ面に対して除電装置で除電を行うことで、シール接合時に重ね合わせた際にフィルム同士の積層界面に静電気が蓄積されるのを十分に抑制できることによる効果があるものと推定される。
【0033】
前記除電装置(41)(42)(43)(44)としては、特に限定されるものではないが、イオン供給式除電装置、ローラ式除電装置、除電ブラシ装置、除電布装置等が挙げられる。これらの中でも、イオン供給式除電装置を用いるのが好ましい。前記イオン供給式除電装置としては、特に限定されるものではないが、例えばコロナ放電式除電装置、電圧印加によりイオンを生成する除電電極を備えた除電装置などが挙げられる。
【0034】
前記フィルム(2)(3)としては、特に限定されるものではないが、例えば合成樹脂フィルム、アルミニウム箔等が挙げられる。前記合成樹脂フィルムとしては、特に限定されるものではないが、例えば、
1)アルミニウム箔が貼着された二軸延伸ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム、二軸延伸ポリプロピレン(PP)フィルム
2)金属アルミニウムが蒸着された二軸延伸PETフィルム、二軸延伸PPフィルム
3)酸化ケイ素や金属酸化物が蒸着された二軸延伸PETフィルム、二軸延伸PPフィルム、二軸延伸ポリアミドフィルム
4)ポリ塩化ビニリデンやポリビニルアルコールをコーティングした二軸延伸PETフィルム、二軸延伸PPフィルム
5)エチレン−酢酸ビニル共重合体鹸化物のフィルム
6)ポリビニルアルコールフィルム
7)ポリカーボネートフィルム
8)ポリプロピレンフィルム
9)ポリエチレンテレフタレートフィルム
10)ポリアミド(ナイロン−6、ナイロン−6,6等)
11)セルロースアセテートフィルム
等が挙げられる。
【実施例】
【0035】
次に、この発明の具体的実施例について説明するが、本発明はこれら実施例のものに特に限定されるものではない。
【0036】
<実施例1>
厚さ12μmのポリエチレンテレフタレートフィルム、厚さ15μmの二軸延伸ナイロンフィルム、厚さ50μmの低密度ポリエチレンフィルムをこの順に重ね合わせる前にこれら各フィルムの重ね合わせ面に対してイオン供給式除電装置(電圧印加型)を用いて第1除電処理を行った後、直ちにこれら3種のフィルムの間に接着剤(主剤:ポリエステル系接着剤、硬化剤:ポリイソシアネート系接着剤)をそれぞれ3.0g/m2(2つの接着層の合算で6.0g/m2)で塗布してこれら3種のフィルムを一対の加熱加圧ロール(温度60℃)間で挟み込んで圧着することによって積層一体化フィルムを得、次いで積層一体化フィルムの両方の外面に対してイオン供給式除電装置(電圧印加型)を用いて第2除電処理を行うことによって、ラミネートフィルムを製造した。
【0037】
<比較例1>
第1除電処理及び第2除電処理を省略した以外は、実施例1と同様にしてラミネートフィルムを製造した。
【0038】
<比較例2>
第2除電処理を省略した以外は、実施例1と同様にしてラミネートフィルムを製造した。
【0039】
<比較例3>
第1除電処理を省略した以外は、実施例1と同様にしてラミネートフィルムを製造した。
【0040】
<実施例2>
厚さ12μmのポリエチレンテレフタレートフィルム、厚さ15μmの二軸延伸ナイロンフィルム、厚さ50μmの低密度ポリエチレンフィルムをこの順に重ね合わせる前にこれら各フィルムの重ね合わせ面に対してイオン供給式除電装置(電圧印加型)を用いて第1除電処理を行った後、直ちにこれら3種のフィルムの間に接着剤(主剤:ポリエステル系接着剤、硬化剤:ポリイソシアネート系接着剤)をそれぞれ3.0g/m2(2つの接着層の合算で6.0g/m2)で塗布してこれら3種のフィルムを一対の加熱加圧ロール(温度60℃)間で挟み込んで圧着することによって積層一体化フィルムを得、次いで積層一体化フィルムの両方の外面に対してイオン供給式除電装置(電圧印加型)を用いて第2除電処理を行うことによって、ラミネートフィルムを製造した。
【0041】
次に、前記製造したラミネートフィルム2枚を重ね合わせる前にこれら各ラミネートフィルムの重ね合わせ面に対してイオン供給式除電装置(電圧印加型)を用いて第3除電処理を行った後、直ちにラミネートフィルム同士を重ね合わせてその周縁部の一部(4辺の周縁部のうちの3辺の周縁部)をヒートシール装置でシール接合し、このシール接合された袋体の両方の外面に対してイオン供給式除電装置(電圧印加型)を用いて第4除電処理を行うことによって、電子材料製品包装用袋体を製造した。
【0042】
<実施例3>
第3除電処理及び第4除電処理を省略した以外は、実施例2と同様にして電子材料製品包装用袋体を製造した。
【0043】
<実施例4>
第1除電処理及び第2除電処理を省略した以外は、実施例2と同様にして電子材料製品包装用袋体を製造した。
【0044】
<比較例4>
第2除電処理、第3除電処理及び第4除電処理を省略した以外は、実施例2と同様にして電子材料製品包装用袋体を製造した。
【0045】
<比較例5>
第1除電処理、第3除電処理及び第4除電処理を省略した以外は、実施例2と同様にして電子材料製品包装用袋体を製造した。
【0046】
<比較例6>
第1除電処理、第2除電処理及び第4除電処理を省略した以外は、実施例2と同様にして電子材料製品包装用袋体を製造した。
【0047】
<比較例7>
第1除電処理、第2除電処理及び第3除電処理を省略した以外は、実施例2と同様にして電子材料製品包装用袋体を製造した。
【0048】
<比較例8>
第1除電処理及び第3除電処理を省略した以外は、実施例2と同様にして電子材料製品包装用袋体を製造した。
【0049】
上記のようにして製造された各ラミネートフィルム、各袋体について下記評価法に基づいて除電効果を評価した。これらの結果を表1、2に示す。
【0050】
<除電効果の評価法(帯電防止性能の評価法)>
(ラミネートフィルムの除電効果の評価)
図3(イ)に示すように、製造したラミネートフィルム(1)50枚を順に上下方向に積み重ねていき、この積み重ね状態で10分間放置した後、図3(ロ)に示すように吸盤体(50)を用いてラミネートフィルム(1)の一辺側を引き上げた状態で水平方向に搬送することによってラミネートフィルム(1)を順次1枚ずつ取り出していく。この時、ラミネートフィルムが1枚で良好に取り出された場合を「合格」とし、ラミネートフィルムを取り出す際にその下のラミネートフィルムも一緒に付着して取り出された場合・下のラミネートフィルムが途中まで一緒に引きずられて下のラミネートフィルムの位置にずれを生じたような場合を「吸着による不良発生」とし、この吸着不良の発生率により下記3段階で除電効果を評価した。製造直後のラミネートフィルムについて除電効果を評価すると共に、製造後24時間経過したラミネートフィルムについて除電効果の持続性を評価した。
【0051】
(袋体の除電効果の評価)
図3(イ)に示すように、製造した袋体(31)50枚を順に上下方向に積み重ねていき、この積み重ね状態で10分間放置した後、図3(ロ)に示すように吸盤体(50)を用いて袋体の一辺側を引き上げた状態で水平方向に搬送することによって袋体を順次1枚ずつ取り出していく。この時、袋体が1枚で良好に取り出された場合を「合格」とし、袋体を取り出す際にその下の袋体も一緒に付着して取り出された場合・下の袋体が途中まで一緒に引きずられて下の袋体の位置にずれを生じたような場合を「吸着による不良発生」とし、この吸着不良の発生率により下記3段階で除電効果を評価した。製造直後の袋体について除電効果を評価すると共に、製造後24時間経過した袋体について除電効果の持続性を評価した。
【0052】
(判定基準)
「◎」…吸着不良の発生率が3%未満である
「○」…吸着不良の発生率が3%以上5%以下である
「×」…吸着不良の発生率が6%を超える
「−」…製造直後において×の評価であったので持続性の評価を行わなかった。
【0053】
【表1】

【0054】
【表2】

【0055】
表から明らかなように、この発明の製造方法で製造された実施例1のラミネートフィルムは、十分に除電されていると共に、帯電防止性の長期持続性に優れていて時間が経過しても帯電し難いものであった。
【0056】
これに対し、比較例1及び比較例2のラミネートフィルムは、製造直後の初期段階から除電効果が不十分であった。また、比較例3のラミネートフィルムは、初期の除電は十分であったものの、帯電防止性の長期持続性に劣っていた。
【0057】
また、この発明の製造方法で製造された実施例2、3、4の袋体は、十分に除電されていると共に、帯電防止性の長期持続性に優れていて時間が経過しても帯電し難いものであった。
【0058】
これに対し、比較例4〜6の袋体は、製造直後の初期段階から除電効果が不十分であった。また、比較例7、8の袋体は、初期の除電は十分であったものの、帯電防止性の長期持続性に劣っていた。
【産業上の利用可能性】
【0059】
この発明に係るラミネートフィルムの製造方法によれば、十分に除電されていると共に時間が経過しても帯電し難いラミネートフィルムを製造できるので、該ラミネートフィルムは、例えば電子材料製品の包装材として好適に用いられる。
【0060】
また、この発明に係る袋体の製造方法によれば、十分に除電されていると共に時間が経過しても帯電し難い袋体を製造できるので、得られた袋体は、例えば電子材料製品包装用袋体として好適に用いられる。
【図面の簡単な説明】
【0061】
【図1】この発明に係るラミネートフィルムの製造方法の概略説明図である。
【図2】この発明に係る袋体の製造方法の概略説明図である。
【図3】除電効果の評価法の説明図であり、(イ)は製造した袋体(又はラミネートフィルム)を順に上下方向に積み重ねた状態、(ロ)は吸盤を用いて袋体(又はラミネートフィルム)の一辺側を引き上げた状態で水平方向に搬送して取出している状態をそれぞれ示す。
【符号の説明】
【0062】
1…ラミネートフィルム
2…フィルム
3…フィルム
4…積層一体化フィルム
21〜24…除電装置
31…袋体
41〜44…除電装置
45…ヒートシール装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
重ね合わせ前の少なくとも2枚のフィルムの重ね合わせ面に対して除電装置を用いて除電処理を行う第1除電処理工程と、
前記第1除電処理工程を経たフィルム同士を重ね合わせて積層一体化フィルムを得る積層工程と、
前記積層一体化フィルムの両方の外面に対して除電装置を用いて除電処理を行う第2除電処理工程とを包含することを特徴とする帯電防止性に優れたラミネートフィルムの製造方法。
【請求項2】
前記第1除電処理工程の除電処理及び前記第2除電処理工程の除電処理を、イオン供給式除電装置を用いて行う請求項1に記載の帯電防止性に優れたラミネートフィルムの製造方法。
【請求項3】
前記第1除電処理工程を経たフィルム同士を接着剤を介して重ね合わせて積層一体化フィルムを得る請求項1または2に記載の帯電防止性に優れたラミネートフィルムの製造方法。
【請求項4】
重ね合わせ前の少なくとも2枚のフィルムの重ね合わせ面に対して除電装置を用いて除電処理を行う第1除電処理工程と、
前記第1除電処理工程を経たフィルム同士を重ね合わせてその周縁部の少なくとも一部をシール接合して袋体を得るシール工程と、
前記シール接合された袋体の外面に対して除電装置を用いて除電処理を行う第2除電処理工程とを包含することを特徴とする帯電防止性に優れた袋体の製造方法。
【請求項5】
前記第1除電処理工程の除電処理及び前記第2除電処理工程の除電処理を、イオン供給式除電装置を用いて行う請求項4に記載の帯電防止性に優れた袋体の製造方法。
【請求項6】
重ね合わせ前の少なくとも2枚のフィルムの重ね合わせ面に対して除電装置を用いて除電処理を行う第1除電処理工程と、
前記第1除電処理工程を経たフィルム同士を重ね合わせて積層一体化フィルムを得る積層工程と、
前記積層一体化フィルムの両方の外面に対して除電装置を用いて除電処理を行ってラミネートフィルムを得る第2除電処理工程と、
重ね合わせ前の少なくとも2枚の前記ラミネートフィルムの重ね合わせ面に対して除電装置を用いて除電処理を行う第3除電処理工程と、
前記第3除電処理工程を経たラミネートフィルム同士を重ね合わせてその周縁部の少なくとも一部をシール接合して袋体を得るシール工程と、
前記シール接合された袋体の外面に対して除電装置を用いて除電処理を行う第4除電処理工程とを包含することを特徴とする帯電防止性に優れた袋体の製造方法。
【請求項7】
前記第1〜4除電処理工程の除電処理をイオン供給式除電装置を用いて行う請求項6に記載の帯電防止性に優れた袋体の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2007−326260(P2007−326260A)
【公開日】平成19年12月20日(2007.12.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−157986(P2006−157986)
【出願日】平成18年6月7日(2006.6.7)
【出願人】(501428187)昭和電工パッケージング株式会社 (110)
【Fターム(参考)】