説明

帯電防止性を有するガスバリア性フィルムおよびそれからなる袋

【課題】 ガスバリア性が湿度に影響されることが少なく、且つ耐酷使性を有するガスバリア材を用い、帯電防止性の優れたガスバリア性フィルムを提供することを目的とする。
【解決手段】ポリオレフィン系樹脂100重量部に対し、帯電防止剤を0.05〜0.8重量部含有したポリオレフィン系基材層(A)の一方の面に、接着剤層(B)を介してポリカルボン酸およびその部分中和物からなる群から選ばれた少なくとも一種のポリカルボン酸系重合体層(C)および、金属化合物微粒子含有層(D)が、この順序で配置されたことを特徴とする帯電防止性を有するガスバリア性フィルム、およびそれからなる袋。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、帯電防止剤を含有したポリオレフィン系基材層に、ポリカルボン酸系重合体からなる層および金属化合物微粒子を含む層を配置してなる帯電防止性を有するガスバリア性フィルムに関する。更には、帯電防止性を付与したポリオレフィン系基材層と特定樹脂からなる層および金属化合物微粒子を含む層からなる耐酷使性及び湿度変化による影響の少ないガスバリア性を有する、帯電防止性のガスバリア性フィルム及びそれからなる袋に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリオレフィンフィルムを用いた袋は、食品包装材料として多く用いられている。しかし、疎水性のポリオレフィンの場合は、静電気の発生が著しく、問題を生じることがある。例えば、内容物を充填する工程で、砂糖、米、鰹節等を充填するときに、帯電による袋の開口性不良が生じたり、充填機へのパウチの自動供給時、束から1枚ずつ供給する工程で、パウチが静電気により付着するため、2枚が付いたまま取り出されてしまったり、また、特に粉体食品の場合は、充填口近辺への充填物の帯電による付着が発生したり、ヒートシール層へ、充填物が付着することにより、内容物がシール部に食い込み熱シール不良を生じる等の問題が起こる。これらの問題を解決するために、種々の提案がなされている。特許文献1は、ポリプロピレンに対し、高級アミンの酸化エチレン付加体の単独または混合物と、脂肪族モノグリセリドの単独または混合物を配合し押し出した後、二軸延伸して得られたフィルムをコロナ放電してなる帯電防止された二軸延伸ポリプロピレンフィルムを記載している。特許文献2は、無機化合物蒸着層を設けてある透明高分子基材の該透明高分子基材上に塗布型帯電防止剤層を形成し、該無機化合物蒸着層に対して直接または間接的に、厚さが50〜200μmの範囲の練込み型帯電防止剤を含有する帯電防止シーラント層を積層したものを基本層構成とする透明高ガスバリア帯電防止性積層体を記載している。
これらの発明では、各々目的とする効果を発揮してはいるが、それのみで総てを解決するものとは云えない。更に、他の改善が提案される余地を残すものである。
【0003】
【特許文献1】特開昭48−54155号公報(請求項1)
【特許文献2】特開平11−179834号公報(請求項1)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来、削り節等の粉状食品の包装には、エチレン−ビニルアルコール共重合体(EVOH)やポリビニルアルコール(PVA)等のガスバリア材を含むフィルムが用いられてきたが、これらのガスバリア材料は、ガスバリア性能の湿度依存性が大きいため、補助層を必要とし、層構成が増え、経済面、環境面で好ましくない。また、粉状食品のあるものは、静電気が発生し易く、充填時に前記のような問題を生じることもある。本発明は、ガスバリア性が湿度に影響されることが少なく、且つ耐酷使性を有するガスバリア材を用い、帯電防止性の優れたガスバリア性フィルムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、前記課題を解決するために鋭意検討した結果、帯電防止性を付与したポリオレフィン系基材層、接着剤層を介しポリカルボン酸系重合体層および金属化合物微粒子含有層とからなる積層フィルムが前記課題を解決し、帯電防止性に優れた、湿度依存性が少なく、且つ耐酷使性のあるガスバリア性フィルムを与えることを見い出し、本発明を完成するに至った。
即ち、本発明の第1は、ポリオレフィン系樹脂100重量部に対し、帯電防止剤を0.05〜0.8重量部含有したポリオレフィン系基材層(A)の一方の面に、接着剤層(B)を介してポリカルボン酸およびその部分中和物からなる群から選ばれた少なくとも一種のポリカルボン酸系重合体層(C)および、金属化合物微粒子含有層(D)が、この順序で配置された帯電防止性を有するガスバリア性フィルムを提供する。
本発明の第2は、第1の発明の金属化合物微粒子含有層(D)の上に、接着剤層(E)を介して、ヒートシール性樹脂100重量部に対し、帯電防止剤を0.05〜0.8重量部含有するヒートシール性樹脂層(F)が配置され、フィルムのループスティフネス値が2.0〜5.0gf(23℃、相対湿度60%、幅20mm、周長100mm)である帯電防止性を有するガスバリア性フィルムを提供する。
本発明の第3は、粉末食品包装用である前記第1又は第2の発明の帯電防止性を有するガスバリア性フィルムを提供する。
本発明の第4は、前記第1〜第3のいずれかの発明のガスバリア性フィルムからなる袋を提供する。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、ガスバリア性が湿度により変化し難く、帯電防止性を有し、機械適性、充填性に優れ、帯電しやすい薬品包装、金属粉末、ICチップ、IC基板などの精密材料、産業材料の包装、半導体包装をはじめとして、特に、帯電し易い粉体食品の包装に適したガスバリア性フィルムが提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
本発明に係わるポリオレフィン系基材層(A)(以後、層(A)、又は表面層と云うこともある)を構成する樹脂としては、公知のポリオレフィン樹脂が用いられる。例えば、エチレン、プロピレン、ブテン、ペンテン、ヘキセン、4−メチル−1−ペンテン、オクテン等の単独重合体又はこれらの2種以上の共重合体を挙げることができる。上記ポリオレフィン樹脂の中でも、好ましくは、エチレン又はプロピレンの単独重合体、エチレンと、プロピレン、ブテン、ペンテン、ヘキセン、4−メチル−1−ペンテン、又はオクテンとのエチレン系共重合体、プロピレンと、ブテン、ペンテン、ヘキセン、4−メチル−1−ペンテン、又はオクテンとのプロピレン系共重合体が好ましく用いられる。特に好ましくは、プロピレンの単独重合体、エチレンとプロピレンの共重合体、プロピレンとブテンの共重合体、プロピレンとペンテンの共重合体が用いられる。
ポリオレフィン系基材層(A)は、延伸されていることが好ましく、剛性、強度、伸び、耐衝撃性の観点から縦横方向にそれぞれ2倍〜5倍程度延伸されていることが好ましい。延伸は、テンター法やインフレーション法等の公知の方法により行われる。
【0008】
ポリオレフィン系基材層(A)は、帯電防止性を有する。帯電防止性は、帯電防止剤を層(A)を構成する樹脂に、必要に応じて用いられる他の添加剤と共に添加し、練り込むことにより付与される。帯電防止剤としては、アニオン系、カチオン系、非イオン系及び両性の界面活性剤のいずれでも用いられる。アニオン系界面活性剤としては、例えば、アルキルスルホン酸塩、アルキルベンゼンスルフォン酸塩、アルキルリン酸エステル等が挙げられる。カチオン系活性剤としては、テトラアルキルアンモニウム塩、トリアルキルベンジルアンモニウム塩等、アミド型カチオン系界面活性剤としては、例えば、アシロイルアミドプロピルトリメチルアンモニウムメトサルフェート等が挙げられる。例えば、非イオン系界面活性剤としては、例えば、グリセリンモノアルキレート、アルキルジエタノールアミン、ポリオキシエチレンアルキルアミン、アルキルジエタノールアミド、ポリオキシエチレンアルキルアミド、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル等が挙げられる。両性界面活性剤としては、アルキルベタイン型、イミダゾリン型等が挙げられる。
【0009】
上記、界面活性剤は、単独で用いられてもよく、二種以上が併用されてもよい。
なかでも、高級アミンの酸化エチレン付加体、脂肪酸モノグリセリド、ベタイン型両性界面活性剤の各々単独またはこれらの混合物が用いられ、より好ましくは高級アミンの酸化エチレン付加物と脂肪酸モノグリセリドの混合物、ベタイン型両性界面活性剤と脂肪酸モノグリセリドの混合物が用いられる。
帯電防止剤の配合量は、少なくなると良好な帯電防止性能を得ることができず、多くなると積層フィルム表面へのブリード量が多くなり、透明性が悪化するので、ポリオレフィン樹脂100重量部に対して0.05〜0.8重量部、好ましくは0.1〜0.6重量部である。添加量が少なすぎると、十分な帯電防止性が得られず、また、多すぎるとブロッキングが生じるほか、フィルム成形性が阻害される。尚、上記ポリオレフィン樹脂には、通常用いられている安定剤、酸化防止剤、スリップ剤、アンチブロッキング剤が配合されてもよい。また、コロナ放電処理などの表面処理がなされていることが好ましい。
ポリオレフィン系基材層(A)の厚さは、全層の硬さ、内容物の充填性等の観点から、好ましくは10〜100μm、更に好ましくは10〜50μm、特に好ましくは20〜50μmである。
【0010】
本発明に係わるポリカルボン酸系重合体層(C)(以後、層(C)と云うこともある)を構成するポリカルボン酸系重合体は、ポリカルボン酸およびその部分中和物からなる群から選ばれた少なくとも一種であり、既存のポリカルボン酸を用いることができる。既存のポリカルボン酸とは、分子内に2個以上のカルボキシル基を有する重合体の総称である。具体的には、重合性単量体として、α,β-モノエチレン性不飽和カルボン酸を用いた単独重合体、単量体成分として、α,β-モノエチレン性不飽和カルボン酸のみからなり、それらの少なくとも2種の共重合体、またα,β-モノエチレン性不飽和カルボン酸と他のエチレン性不飽和単量体との共重合体、さらにアルギン酸、カルボキシメチルセルロース、ペクチンなどの分子内にカルボキシ基を有する酸性多糖類を例示することができる。これらのポリカルボン酸系重合体は、それぞれ単独で、または少なくとも2種のポリカルボン酸を混合して用いることができる。
【0011】
ここでα,β-モノエチレン性不飽和カルボン酸としては、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、マレイン酸、フマール酸、クロトン酸等が代表的なものである。またそれらと共重合可能なエチレン性不飽和単量体としては、エチレン、プロピレン、酢酸ビニル等の飽和カルボン酸ビニルエステル類、アルキルアクリレート類、アルキルメタクリレート類、アルキルイタコネート類、アクリロニトリル、塩化ビニル、塩化ビニリデン、フッ化ビニル、フッ化ビニリデン、スチレン等が代表的なものである。ポリカルボン酸系重合体がα,β-モノエチレン性不飽和カルボン酸と酢酸ビニル等の飽和カルボン酸ビニルエステル類との共重合体の場合には、さらにケン化することにより、飽和カルボン酸ビニルエステル部分をビニルアルコールに変換して使用することができる。
【0012】
また、本発明で用いるポリカルボン酸系重合体が、α,β-モノエチレン性不飽和カルボン酸とその他のエチレン性不飽和単量体との共重合体である場合には、得られるフィルムのガスバリア性、及び高温水蒸気や熱水に対する耐性の観点から、その共重合組成は、α,β-モノエチレン性不飽和カルボン酸単量体組成が60モル%以上であることが好ましい。より好ましくは80モル%以上、さらに好ましくは90モル%以上、最も好ましくは100モル%、即ち、ポリカルボン酸系重合体がα,β-モノエチレン性不飽和カルボン酸のみからなる重合体であることが好ましい。さらにポリカルボン酸系重合体がα,β-モノエチレン性不飽和カルボン酸のみからなる重合体の場合には、その好適な具体例は、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、マレイン酸、フマール酸、クロトン酸からなる群から選ばれる少なくとも1種の重合性単量体の重合によって得られる重合体、及びそれらの混合物が挙げられる。好ましくは、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸から選ばれる少なくとも1種の重合性単量体の重合によって得られる重合体、共重合体、及び/またはそれらの混合物を用いることができる。より好ましくは、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、ポリマレイン酸、及びそれらの混合物を用いることができる。ポリカルボン酸系重合体がα,β-モノエチレン性不飽和カルボン酸単量体の重合体以外の例えば、酸性多糖類の場合には、アルギン酸を好ましく用いることができる。
【0013】
本発明のポリカルボン酸系重合体の定義に含まれるポリカルボン酸の部分中和物は、ポリカルボン酸のカルボキシル基をアルカリで部分的に中和して、カルボン酸塩とすることにより得られる。アルカリとしては、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化リチウム、水酸化カリウム、アンモニア(アンモニア水を含む)などが挙げられる。ポリカルボン酸とアルカリの量比を調節することにより、所望の中和度とすることができる。中和度の選択により、未中和カルボン酸を用いた場合と比して、酸素ガスバリア性を更に向上させることができる。中和度は、0%を越え20%以下、更には0%を越え18%以下、特に0%を越え15%の範囲であることが好ましい。中和度は、下記式により求めることができる。
中和度=(A/B)×100(%)
(A:部分中和されたポリカルボン酸1g中の中和されたカルボキシル基のモル数である。B:部分中和する前のポリカルボン酸1g中のカルボキシル基のモル数である。)
【0014】
ポリカルボン酸系重合体の数平均分子量については、特に限定されないが、フィルム形成性の観点で2,000〜10,000,000の範囲であることが好ましく、さらには5,000〜1,000,000であることが好ましい。
層(C)を構成するポリカルボン酸系重合体にポリカルボン酸系重合体以外にガスバリア性、高温水蒸気や熱水に対する耐性を損なわない範囲で他の重合体を混合して用いることが可能であるが、ポリカルボン酸系重合体のみを単独で用いることが好ましい。ポリカルボン酸系重合体は、その単独のフィルム状成形物について、乾燥条件下(30℃、相対湿度0%)で測定した酸素透過係数が、好ましくは1000cm3(STP)・μm/(m2・day・MPa)以下、更に好ましくは500cm3(STP)・μm/(m2・day・MPa)以下であり、特に好ましくは100cm3(STP)・μm/(m2・day・MPa)以下のものを使用する。ここで(STP)は酸素の体積を規定するための標準条件(0℃、1気圧)を意味する。
ポリカルボン酸系重合体層(C)の厚さは、好ましくは0.1〜3μm、更に好ましくは0.1〜1μm、特に好ましくは0.1〜0.9μm、最も好ましくは0.55〜0.85μmである。厚さが0.1〜3μmの範囲にあることにより、強度及びガスバリア性が確保されるので好ましい。
【0015】
本発明で用いる金属化合物微粒子含有層(D)(以下、層(D)と云うこともある)を構成する金属化合物とは、金属イオンの価数が2以上の多価金属原子単体、及びその化合物である。多価金属の具体例としては、ベリリウム、マグネシウム、カルシウムなどのアルカリ土類金属、チタン、ジルコニウム、クロム、マンガン、鉄、コバルト、ニッケル、銅、亜鉛などの遷移金属、アルミニウム等を挙げることができる。金属化合物の具体例としては、前記、多価金属の酸化物、水酸化物、炭酸塩、有機酸塩、無機酸塩、その他、多価金属のアンモニウム錯体や多価金属の2〜4級アミン錯体とそれら錯体の炭酸塩や有機酸塩等が挙げられる。有機酸塩としては、酢酸塩、シュウ酸塩、クエン酸塩、乳酸塩、リン酸塩、亜リン酸塩、次亜リン酸塩、ステアリン酸塩、モノエチレン性不飽和カルボン酸塩等が挙げられる。無機酸塩としては、塩化物、硫酸塩、硝酸塩等を挙げることができる。それ以外には多価金属のアルキルアルコキシド等を挙げることができる。
【0016】
これらの金属化合物はそれぞれ単独で、また少なくとも2種の金属化合物を混合して用いることができる。それらの中でも、本発明で用いる金属化合物としては、本発明のフィルムのガスバリア性、及び高温水蒸気や熱水に対する耐性、及び製造性の観点で2価の金属化合物が好ましく用いられる。更に好ましくは、アルカリ土類金属、及びコバルト、ニッケル、銅、亜鉛の酸化物、水酸化物、炭酸塩やコバルト、ニッケル、銅、亜鉛のアンモニウム錯体とその錯体の炭酸塩を用いることができる。最も好ましくは、マグネシウム、カルシウム、銅、亜鉛の各酸化物、水酸化物、炭酸塩、及び銅もしくは亜鉛のアンモニウム錯体とその錯体の炭酸塩を用いることができる。
また、本発明のフィルムのガスバリア性、及び高温水蒸気や熱水に対する耐性を損なわない範囲で、一価の金属からなる金属化合物、例えばポリカルボン酸系重合体の一価金属塩を混合して、又は含まれたまま用いることができる。一価の金属化合物の好ましい添加量は、前記本発明のフィルムのガスバリア性、及び高温水蒸気や熱水に対する耐性の観点で、ポリカルボン酸系重合体の、カルボキシ基に対して、0.2化学当量以下である。一価の金属化合物は、部分的にポリカルボン酸系重合体の多価金属塩の分子中に含まれていてもよい。
【0017】
金属化合物微粒子の形態は、特別限定されない。しかし後述するように、本発明のフィルムでは、ポリカルボン酸系重合体層(C)と接する金属化合物微粒子含有層(D)の間で金属化合物の一部、または全部がポリカルボン酸系重合体のカルボキシ基と塩を形成している。
従って、ポリカルボン酸系重合体層(C)と金属化合物微粒子含有層(D)が隣接した層構成をとる本発明においては、フィルムの透明性の観点で金属化合物微粒子は、粒状で、その粒径が小さい方が好ましい。また、後述する本発明のフィルムを作製するためのコーティング混合物を調製する上でも、調製時の効率化、及びより均一なコーティング混合物を得る観点で金属化合物は微粒子状であり、その粒径は小さい方が好ましい。金属化合物の平均粒径としては、好ましくは5μm以下、更に好ましくは1μm以下、特に好ましくは0.1μm以下である。
【0018】
金属化合物微粒子含有層(D)を構成する金属化合物微粒子は、その塗工時の溶媒以外に、樹脂、分散剤、界面活性剤、柔軟剤、安定剤、膜形成剤、アンチブロッキング剤、粘着剤等を適宜添加することができる。特に多価金属化合物の分散性、塗工性、被塗工物との接着性を向上させる目的で、用いた溶媒系に可溶な樹脂を混合して用いることが好ましい。樹脂の好適な例としては、アルキッド樹脂、メラミン樹脂、アクリル樹脂、硝化綿、ウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、フェノール樹脂、アミノ樹脂、フッ素樹脂、エポキシ樹脂などの塗料用に用いる樹脂を挙げることができる。これらのうち、ポリエステル樹脂、ウレタン樹脂、アクリル樹脂が好ましく用いられる。また、コーティング液中の多価金属化合物(B)と樹脂の構成比は適宜選択可能であるが、コーティング液中の多価金属化合物、樹脂、その他の添加剤の総量は、コーティング適性の観点から、好ましくは1重量%〜50重量%、更に好ましくは1〜30重量%の範囲である。
【0019】
本発明のフィルムにおいて、ポリカルボン酸系重合体の量に対する金属化合物微粒子の量は、フィルムのガスバリア性、及び高温水蒸気や熱水に対する耐性の観点で、フィルムがポリカルボン酸系重合体層(C)と金属化合物微粒子含有層(D)の隣接した層構成の層(C)中に含まれるカルボキシ基の量に対する金属化合物微粒子が0.2化学当量以上であることが好ましい。金属化合物微粒子の量は、更に好ましくは0.5化学当量以上、上記観点に加え、フィルムの成形性や透明性の観点から、特に好ましくは、0.8化学当量以上、10化学当量以下の範囲である。
【0020】
また、本発明の好ましい実施態様として、金属化合物微粒子含有層(D)の上に接着剤層(E)を介して、更に帯電防止剤を含有するヒートシール性樹脂層(F)(以下、層(F)と云うこともある)を有する層構成、即ち、ポリオレフィン系基材層(A)/接着剤層(B)/ポリカルボン酸系重合体層(C)/金属化合物微粒子含有層(D)/接着剤層(E)/ヒートシール性樹脂層(F)のガスバリア性フィルムがある。このヒートシール性樹脂層(F)を構成する樹脂は、ヒートシール性を有する樹脂であれば、特に制限はない。低密度ポリエチレン(LDPE)、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)、高密度ポリエチレン(HDPE)、エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)などのポリエチレン樹脂、メタロセン触媒を使用して得られたエチレン共重合体、メタロセン触媒を使用して得られたプロピレン共重合体、未延伸ポリプロピレン、エチレン−アクリル酸共重合体、エチレン−エチルアクリレート共重合体等のポリオレフィンを挙げることができる。これらの中、LLDPE、LDPE、HDPEは、ヒートシール強度の観点から好ましい。
【0021】
ヒートシール性樹脂層(F)の厚さは、特に制限はないが、シール端面のガスバリア性の点で好ましくは10〜200μm、更に好ましくは10〜100μm、特に好ましくは20〜70μmである。ヒートシール性樹脂層(F)を構成する樹脂に用いる帯電防止剤としては、前記の界面活性剤が用いられる。帯電防止剤の配合量は、ヒートシール性を有する樹脂100重量部に対して、0.05〜0.8重量部、好ましくは0.1〜0.6重量部、更に好ましくは0.1〜0.5重量部である。他の必要に応じて用いられる添加剤と共に上記帯電防止剤を練り込んでもよい。ヒートシール性樹脂層(F)は、ヒートシール時の接着の観点から、未延伸であることが好ましい。
【0022】
ポリオレフィン系基材層(A)の一方の面に、接着剤層(B)を介してポリカルボン酸系重合体層(C)及び金属化合物微粒子含有層(D)及び好ましい実施態様として、更に層(D)の上に接着剤層(E)を介して、帯電防止性を有するヒートシール性樹脂層(F)を配置してなる本発明のガスバリア性フィルムにおいて、接着剤層(B)及び(E)は、各層間の接着性を向上させる目的で用いられる。接着剤の種類は特に限定されないが、具体的な例としては、ドライラミネート用やアンカーコート用、プライマー用として用いられている溶媒に可溶な、アルキッド樹脂、メラミン樹脂、アクリル樹脂、硝化綿、ウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、フェノール樹脂、アミノ樹脂、フッ素樹脂、エポキシ樹脂などを例示することができる。接着剤層(B)及び(E)は、同じものでもよいし、異なるものを用いてもよい。
【0023】
以下、本発明のガスバリア性フィルムの製造例を説明する。ポリオレフィン系基材層(A)上に、予め前記接着剤を塗布し、溶媒を蒸発乾燥し接着剤層(B)とする。この上にポリカルボン酸系重合体と溶媒からなる塗工液を塗布し、溶媒を蒸発させ、乾燥しポリカルボン酸系重合体層(C)とする。さらに、金属化合物微粒子と溶媒、或いは前記樹脂を加えた金属化合物微粒子溶液又は分散液(塗工液)を塗工し溶媒を蒸発させることにより、層(A)/接着剤層(B)/ポリカルボン酸系重合体層(C)/金属化合物微粒子含有層(D)のガスバリア性フィルムを得ることができる。
【0024】
ポリカルボン酸系重合体と溶媒からなる塗工液は、ポリカルボン酸系重合体を溶媒に溶解、または分散させることにより調製することができる。ここで用いる溶媒は、ポリカルボン酸系重合体を均一に溶解、または分散できるものであれば特に限定はされない。溶媒の具体例としては、水、メチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、ジメチルスルフォキシド、ジメチルフォルムアミド、ジメチルアセトアミドなどを挙げることができる。ポリカルボン酸系重合体は、水溶液中では、容易に金属化合物微粒子と反応し、不均一な沈殿を生成することがある。従って、ポリカルボン酸系重合体の塗工液を塗布した後、ポリカルボン酸系重合体層(C)を十分乾燥した後、金属化合物微粒子の塗工液を塗布することが好ましい。
【0025】
ポリカルボン酸系重合体と溶媒からなる塗工液中のポリカルボン酸系重合体の含有量は特に限定されないが、コーティング適性の観点では、0.1〜30重量%の範囲であることが好ましい。またポリカルボン酸系重合体と溶媒以外にも、本発明のフィルムのガスバリア性を損なわない範囲で、他の重合体、柔軟剤、安定剤、アンチブロッキング剤、粘着剤やモンモリロナイト等に代表される無機層状化合物等を適宜添加することができる。その添加量は添加剤の総量として、ポリカルボン酸系重合体の1重量%以下であることが好ましい。
また、最終的に得られる本発明のガスバリア性フィルムのガスバリア性を損なわない範囲で一価の金属化合物を塗工液に添加して用いることができる。また、一価の金属化合物が塗工液に含まれていてもよい。
【0026】
金属化合物微粒子と溶媒からなる塗工液は、金属化合物微粒子を溶媒に溶解、または分散させることにより調製することができる。ここで用いる溶媒は、金属化合物微粒子を均一に溶解、または分散できるものであれば特に限定はされない。溶媒の具体例としては、水、メチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、n−プロピルアルコール、n−ブチルアルコール、n−ペンチルアルコール、ジメチルスルフォキシド、ジメチルフォルムアミド、ジメチルアセトアミド、トルエン、ヘキサン、ヘプタン、シクロヘキサン、アセトン、メチルエチルケトン、ジエチルエーテル、ジオキサン、テトラヒドロフラン、酢酸エチル、酢酸ブチル等を用いることができる。前記のようにポリカルボン系重合体は、水溶液中では、容易に金属化合物微粒子と反応し、不均一な沈殿を生成することがある。
【0027】
従って、ポリカルボン酸系重合体層(C)上に金属化合物微粒子と溶媒或いは溶媒と樹脂を含む溶液からなる塗工液を塗布するような場合には、溶媒が水であると塗工時にポリカルボン系重合体が金属化合物微粒子と反応し、不均一な沈殿を生成することがある。そこで溶媒は水以外の非水系溶媒、または非水系溶媒と水との混合溶媒を用いることが好ましい。ここで非水系溶媒とは水以外の溶媒を意味する。また、前記のようにポリカルボン酸系重合体層(C)を十分乾燥してから金属化合物微粒子を含有する塗工液を塗布することが好ましい。
【0028】
ポリカルボン酸系重合体、及び/又は金属化合物微粒子の塗工液を塗布する場合には、ディッピング法やスプレー、及びコーター、印刷機を用いる。コーター、印刷機の種類、塗工方式としては、ダイレクトグラビア方式、リバースグラビア方式、キスリバースグラビア方式、オフセットグラビア方式などのグラビアコーター、リバースロールコーター、マイクログラビアコーター、エアナイフコーター、デイップコーター、バーコーター、コンマコーター、ダイコーター等を用いることができる。
【0029】
ポリカルボン酸系重合体と溶媒からなる溶液又は分散液、または金属化合物微粒子と溶媒、或いは溶媒と前記の樹脂からなる溶液又は分散液からなる塗工液を塗工対象物に塗布後、溶媒を蒸発、乾燥させる方法は特に限定されない。自然乾燥による方法や、所定の温度に設定したオーブン中で乾燥させる方法、前記コーター付属の乾燥機、例えばアーチドライアー、フローティングドライアー、ドラムドライアー、赤外線ドライアーなどを用いることができる。乾燥の条件は、ポリオレフィン基材層(A)、及びポリカルボン酸系重合体層(C)、及び金属化合物微粒子含有層(D)が熱による損傷を受けない範囲で任意に選択できる。
基材フィルム上に形成された層(C)、及び層(D)の厚さは、特に限定されないが、0.001μmから1mmの範囲であることが好ましい、より好ましくは、0.01μm〜100μm、さらに好ましくは、0.1μm〜10μmの範囲である。
【0030】
このようにして得られる帯電防止剤を含有するポリオレフィン系基材からなる層(A)/接着剤層(B)/ポリカルボン酸系重合体層(C)/金属化合物微粒子含有層(D)のガスバリア性フィルムは、層(A)を表面にして巻き取られ、表面の層(A)の面と金属化合物微粒子含有層(D)の面が接した状態で、ヒートシール性樹脂層(F)が積層されるまで保管される。場合により前記保管をされないで、ヒートシール性樹脂層(F)は層(D)の上に接着剤層(E)を介して連続工程で積層される。表面の層(A)と金属化合物微粒子含有層(D)とが接した状態で保管され、ヒートシール性樹脂層(F)を後で積層する場合には、巻き取られたロールから前記4層のフィルムを再び巻き出すことが必要となる。このとき表面の層(A)への帯電防止剤の添加量が多いと、金属化合物微粒子含有層(D)が層(A)と面接触した状態で保管されているため帯電防止剤の表面へのブリードにより層(D)と層(A)の層間でブロッキングが発生し、ガスバリア性層の層(D)、場合によっては層(C)の破損が生じることがある。この現象を防止するためには表面の層(A)に添加する帯電防止剤の量をできるだけ少なくし、過剰の帯電防止剤が表面に存在しないようにすることが必要となる。帯電防止剤の添加量をポリオレフィン系基材層を構成する樹脂100重量部に対し、0.05〜0.8重量部の範囲にすることによりロール巻き出し時の層(D)の破損を防ぐことができる。
【0031】
更に、本発明の好ましい実施態様として、金属化合物微粒子含有層(D)の上に、接着剤層(E)(接着剤は接着剤層(B)と同じものでもよい)を塗工し、この接着剤層(E)を介して公知の方法により帯電防止剤を含有したヒートシール性樹脂層(F)を積層する。このとき帯電防止剤の量は、層(F)を構成するヒートシール性を有する樹脂100重量部に対して0.05〜0.8重量部の範囲にすることにより、帯電防止剤のヒートシール性樹脂層(F)の表面へのブリードアウトによるシール強度の低下現象を防止できる。帯電防止剤を含有したヒートシール性樹脂層(F)は、予め帯電防止剤を添加し、製膜したフィルムを接着剤層(E)を介して積層してもよいし、帯電防止剤を含有した溶融樹脂を接着層(E)を介して、または直接押出コーティングにより接着剤層(E)上に積層してもよい。また、このヒートシール性樹脂層(F)は、単層でなく、帯電防止剤を含有した層と含有しない層とを共押出したものを用いてもよい。
【0032】
このようにして得られるポリオレフィン系基材層(A)/接着剤層(B)/ポリカルボン酸系重合体層(C)/金属化合物微粒子含有層(D)の4層構成のガスバリア性フィルムおよびポリオレフィン系基材層(A)/接着剤層(B)/ポリカルボン酸系重合体層(C)/金属化合物微粒子含有層(D)/接着剤層(E)/ヒートシール性樹脂層(F)の6層構成(以下、ヒートシール性樹脂層が複数層からなる場合も1層と数える)のガスバリア性フィルムは、フィルムの厚さが、好ましくは30〜200μm、更に好ましくは50〜150μm、特に好ましくは50〜100μmである。積層フィルムの厚さがこの範囲にあることにより経済性、触感、その他、ハンドリング性の観点で好ましい。
また、上記6層構成のフィルムは、高速充填機により削り節等の粉体食品を充填するためには剛性が重要となる。この目安としてループスティフネス値を導入した。ループスティフネス値は、23℃、60%相対湿度(RH)の条件で測定した幅20mm、周長100mmのループスティフネス値が2.0〜5.0gf、好ましくは2.5〜4.5gf、更に好ましくは2.8〜4.0gfである。ループスティフネス値がこの範囲に入るように層(A)及び層(F)の厚さを調整することが好ましい。この値が小さい場合は、剛性がなく、充填機が安定に作動しない。一方、この値が高い場合はフィルムの感触が悪化する。
【0033】
本発明の帯電防止性を有するガスバリア性フィルム及びそれからなる袋は、削り節、のり、菓子、ふりかけ等の静電気の発生し易い粉体食品の包装、薬品の包装、金属粉末、ICチップ、IC基板などの精密材料、産業材料の包装、半導体の包装等に用いられる。
【0034】
(実施例)
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。以下評価方法について説明する。
1.表面固有抵抗
帯電防止性能はJIS K−6911に準拠し、表面固有抵抗測定装置(ADVANTEST社製、TR8601)を用いて試料フィルム表面を測定した。
この値が1×1013Ω以下であれば、前述の帯電防止効果は十分である。単位はΩである。
2.ガスバリア性
酸素透過度は、JIS K−7126に従い、酸素透過試験器(Modern Control社製、OX−TRAN 2/20型)を用いて、特別な断りがない限り20℃、80%相対湿度(RH)の条件で測定した。さらに、ASTM F−392に準拠したフィルムの虐待試験を5℃の雰囲気中で行いフィルムの屈曲を50回繰り返した後の試料について、酸素透過度を測定した。単位は、cm3/m2・day・atmである。
水蒸気透過度は、JIS K−7129に従い、水蒸気透過度試験器(Modern Control社製、PERMATRAN−W 3/31型)を用い、40℃、90%(RH)の条件で測定した。単位は、g/m2・dayである。
3.ブロッキング剪断力
ポリオレフィン系基材層(A)と金属化合物微粒子含有層(D)が接するように重ね合わされた2枚の試料フィルムの幅3cm、長さ4cmの重ね合わせ部分に500gの重りを乗せ、40℃、84%RHの雰囲気中に24時間放置した後、フィルムの剪断剥離力を引張試験機(テスター産業(株)製、ショッパー型引張試験機I型)で測定した。この剪断剥離力が1000gf以下であれば実用的に問題がない。好ましくは500gf以下である。単位はgfである。
【0035】
4.シール強度
試料フィルムのヒートシール性樹脂層同士を内面側としてヒートシーラーでシール圧力2kg/cm2、シール時間1秒、シール幅15mmでシールして包装袋に成形した試料を用いて、シール直後のシール強度を測定した。
シール部分がフィルムのMDに対して垂直で、幅が15mmになるように、長さ(長さ方向に)60mmのサンプルを切り出し、試験片とした。引張試験機(東洋精機製作所製、テンシロン RTM100)を用いチャック間距離50mm、引張速度300m/分で引っ張り、シール部で破断したときの最大荷重をシール強度とした。単位はkgf/15mmである。
5.ループスティフネス値
フィルムを幅20mm、長さ200mm切り出して試料を調製し、ループスティフネステスタ(東洋精機(株)製)を用いて、温度23℃、相対湿度60%の条件で、ループ周長100mmでのループスティフネス値を測定した。この値が2.0〜5.0gfであれば、実用的であると云うことができる。単位はgfである。
【0036】
6.機械適性及び充填性
フィルムを製袋し、外寸90mm×120mmのパウチを得た。これに、削り節を温度25℃、相対湿度60%の雰囲気で高速充填機(ゼネラルパッカー(株)製、GP−G53H)を用いて毎分55袋の速度で充填し、充填機に対するパウチの機械適性(静電気、その他の原因により充填機への袋の送り込みが1枚毎スムースに行われるか)、及び充填性(静電気により充填物が袋内部で飛散し、シール部に噛み込むことがないか)を観察した。
機械適性:
○は、高速充填機を25分間運転して停止せずに安定した運転ができた。
×は、高速充填機を25分間運転してトラブルのために1回以上停止した。
充填性:
○は、上記条件で1500袋充填して、総ての充填パウチが綺麗に仕上がった。
×は、上記条件で1500袋充填して、充填パウチのシール部に充填物の噛み込みが10袋以上発生した。
【0037】
(実施例1)
ポリプロピレンペレット(三井化学(株)社製、三井ポリプロ TMF122G)100重量部に対し、パルミチルアミンの酸化エチレン2モル付加物0.1重量部、ステアリン酸モノグリセリド0.4重量部添加したものをTダイに連結する口径90mmの押出機で押出し、表面温度が20℃に調節された表面クロムメッキされた回転する金属ドラム上にキャストし、厚さ300μmのシートとし、縦方向に周速の異なるロール間で5倍、引き続き横方向に実質8倍延伸し、厚み30μmのフィルムとした。その後、コロナ放電処理機で20m/分の速度で処理電流0.55Aでコロナ放電処理しポリオレフィン系基材層(A)となる(OPP)フィルムを得た。
層(A)となるフィルムのコロナ処理面にポリウレタン系接着剤(三井武田ケミカル(株)製、A−525及び硬化剤A−52を9:1の割合で混合し、これを酢酸エチル−トルエン混合溶媒で5%に希釈した)をダイレクトグラビア式コーターで塗布し、ドライヤーで乾燥し、厚さ0.1μmのアンカーコート層(接着剤層)(B)とした。
【0038】
ポリアクリル酸(東亞合成(株)製、アロンA−10H、30℃における粘度8,000〜12,000mPa・s(cp)、数平均分子量150,000、25重量%水溶液)を蒸留水で希釈して5重量%の水溶液を調製した。このPAA水溶液に、PAAのカルボキシル基のモル数に対し計算量の水酸化ナトリウム(和光純薬工業(株)製、一級)を添加し、溶解させて中和度10%の部分中和PAA水溶液を得た。この水溶液を、ダイレクトグラビア式コーターを用い、先に層(A)に塗布し、乾燥したアンカーコート層(B)上に塗布し、ドライヤーで水分を蒸発させ、厚さ0.6μmのポリカルボン酸系重合体層(C)とした。このポリカルボン酸系重合体層(C)を単離して、乾燥後、30℃、相対湿度0%の条件で測定した酸素透過係数は、10cm3(STP)・μm/(m2・day・MPa)であった。次いで、酸化マグネシウム(MgO)(和光純薬工業(株)製)をポリエステル系樹脂を含む印刷インキ(大日精化(株)製、NB−300、ポリエステルポリオール、不揮発分の濃度17.5重量%)に分散させ、酸化マグネシウムとNB−300樹脂分の重量比を1.5/1となるように、酢酸エチルで希釈し固形分濃度15重量%の酸化マグネシウム−樹脂液を調製した。さらに、この酢酸エチルで希釈した酸化マグネシウム−樹脂液の樹脂固形分100重量部に対して、硬化剤として、同社製ラミックBハードナー(イソシアネート)を原液のままで5重量部添加した。これを前記層(C)の上にダイレクトグラビヤ式コーターで塗布し、ドライヤーで乾燥させ、厚さ0.7μmの金属化合物微粒子含有層(D)とし、OPP基材層(A)(厚さ30μm)/アンカーコート層(接着剤層)(B)(厚さ0.1μm)/ポリカルボン酸系重合体層(C)(厚さ0.6μm)/金属化合物微粒子含有層(D)(厚さ0.7μm)の層構成の積層フィルムを得た。この積層フィルムを巻取り速度100m/分で、ロール状に巻取り、25℃の雰囲気に10日間保管した後、巻出し速度100m/分で巻出し、20℃、80%(RH)における酸素透過度を測定した(以後、保管テストと略称する)が、1cm3/m2・day・atm以下であり、酸素透過度の低下は殆ど認められなかった。以下、保管テストの評価サンプルは、このようにして採取した。
【0039】
(実施例2)
実施例1と同じ層構成の積層フィルムの金属化合物微粒子含有層(D)の上にポリウレタン系接着剤(東洋モートン(株)製、TM−250HV及び硬化剤CAT−RT86を100:11の割合で混合し、これを酢酸エチル溶媒15%に希釈した)をダイレクトグラビア式コーターで塗布し、乾燥した接着剤層(E)(厚さ3μm)を介して、帯電防止ポリエチレンフィルム(アイセロ化学(株)製、直鎖状低密度ポリエチレン100重量部に非イオン系界面活性剤約0.35重量部練り込んだフィルム、L140−AS、厚さ50μm)をヒートシール性樹脂層(F)として積層し、OPP基材層(A)(厚さ30μm)/アンカーコート層(接着剤層)(B)(厚さ0.1μm)/ポリカルボン酸系重合体層(C)(厚さ0.6μm)/金属化合物微粒子含有層(D)(厚さ0.7μm)/接着剤層(E)(厚さ3μm)/ヒートシール性樹脂層(F)(LLDPE:厚さ50μm)の6層構成の積層フィルムを得た。保管テスト後のサンプルの酸素透過度の低下は殆ど認められなかった。
【0040】
(実施例3)
市販の微粒子酸化亜鉛含有塗料(住友大阪セメント(株)製、ZR−133:酸化亜鉛(ZnO)平均粒径0.02μmを18重量%、ポリエステル系樹脂12重量%を溶剤メチルエチルケトン:トルエン=4:6で希釈した固形分30重量%の溶液)をダイレクトグラビア式コーターで塗布し、乾燥させ厚さ0.7μmの金属化合物微粒子含有層(D)としたこと以外、実施例2と同様にして6層構成の積層フィルムを得た。保管テスト後のサンプルの酸素透過度の低下は殆ど認められなかった。
(実施例4)
OPP基材層(A)の帯電防止剤をポリプロピレン樹脂100重量部に対して、パルミチルアミンの酸化エチレン2付加物0.2重量部、ステアリン酸モノグリセリド0.3重量部添加したこと以外、実施例3と同様にして6層構成の積層フィルムを得た。保管テスト後のサンプルの酸素透過度の低下は殆ど認められなかった。
【0041】
(実施例5)
OPP基材層(A)の帯電防止剤をポリプロピレン樹脂100重量部に対して、パルミチルアミンの酸化エチレン2付加物0.3重量部、ステアリン酸モノグリセリド0.2重量部添加したこと以外、実施例3と同様にして6層構成の積層フィルムを得た。保管テスト後のサンプルの酸素透過度の低下は殆ど認められなかった。
(実施例6)
OPP基材層(A)の帯電防止剤をポリプロピレン樹脂100重量部に対して、ステアリン酸モノグリセリドのみを0.5重量部添加したこと以外、実施例3と同様にして6層構成の積層フィルムを得た。保管テスト後のサンプルの酸素透過度の低下は殆ど認められなかった。
(実施例7)
OPP基材層(A)の帯電防止剤をポリプロピレン樹脂100重量部に対して、ステアリン酸モノグリセリドのみを0.8重量部添加したこと以外、実施例3と同様にして6層構成の積層フィルムを得た。保管テスト後のサンプルの酸素透過度の低下は殆ど認められなかった。
【0042】
(実施例8)
OPP基材層(A)の帯電防止剤をポリプロピレン樹脂100重量部に対して、ステアリン酸モノグリセリドのみを0.1重量部添加したこと以外、実施例3と同様にして6層構成の積層フィルムを得た。保管テスト後のサンプルの酸素透過度の低下は殆ど認められなかった。
(実施例9)
ヒートシール性樹脂層(F)をLDPE(三井化学(株)製、スミカセン12)と実施例1と同じ非イオン系界面活性剤を0.3重量部添加したEVA(三井デュポンポリケミカル社製、エバフレックスV527−4)を共押出したフィルム(LDPE/EVAの厚さは25μm/25μm、厚さの合計は50μm)を最外層として積層した以外、実施例3と同様に7層構成の積層フィルムを得た。保管テスト後のサンプルの酸素透過度の低下は殆ど認められなかった。
【0043】
(実施例10)
OPP基材層(A)の厚さを40μm、ヒートシール性樹脂層(F)の厚さを40μmとした以外、実施例3と同様にして6層構成の積層フィルムを得た。保管テスト後のサンプルの酸素透過度の低下は殆ど認められなかった。
(実施例11)
OPP基材層(A)の厚さを20μm、ヒートシール性樹脂層(F)の厚さを60μmとした以外、実施例3と同様にして6層構成の積層フィルムを得た。保管テスト後のサンプルの酸素透過度の低下は殆ど認められなかった。
【0044】
(比較例1)
OPP基材層(A)に帯電防止剤を添加しなかったこと、及びヒートシール性樹脂層(F)に帯電防止剤無添加LLDPEを用いたことを除き、実施例2と同様にして6層構成の積層フィルムを得た。保管テスト後のサンプルの酸素透過度の低下は殆ど認められなかった。
(比較例2)
OPP基材層(A)に帯電防止剤を添加しなかったこと、及びヒートシール性樹脂層(F)に1重量部の非イオン系界面活性剤(脂肪酸モノグリセリド)を添加したことを除き、実施例2と同様にして6層構成の積層フィルムを得た。保管テスト後のサンプルの酸素透過度の低下は殆ど認められなかった。
(比較例3)
OPP基材層(A)を構成するポリプロピレン100重量部にパルミチルアミンの酸化エチレン2モル付加物0.2重量部とステアリン酸モノグリセリド0.8重量部とを添加し、ヒートシール性樹脂層(F)に帯電防止剤無添加LLDPEを用いたことを除き、実施例2と同様にして6層構成の積層フィルムを得た。
ブロッキング剪断力が大きく、保管テスト後のサンプルの20℃、80%(RH)における酸素透過度が20cm3/m2・day・atmであったので、保管中のブロッキングによりガスバリア層が破損されたと考えれる。
(比較例4)
OPP基材層(A)を構成するポリプロピレン100重量部にパルミチルアミンの酸化エチレン2モル付加物0.2重量部とステアリン酸モノグリセリド0.8重量部とを添加したこと、及びヒートシール性樹脂層(F)に1重量部の非イオン系界面活性剤(ステアリン酸モノグリセリド)を添加したことを除き、実施例2と同様にして6層構成の積層フィルムを得た。
ブロッキング剪断力が大きく、保管テスト後のサンプルの20℃、80%RHにおける酸素透過度が20cm3/m2・day・atmであったので、保管中のブロッキングによりガスバリア層が破損されたと考えれる。
【0045】
(比較例5)
実施例2の積層フィルムのOPP基材層(A)の上にポリカルボン酸系重合体層(C)及び金属化合物微粒子含有層(D)の両者の代わりにシリカ蒸着PET(尾池工業(株)製、MOS−TH、12μm)を接着剤層(ポリウレタン系樹脂)(B)を介して蒸着面をOPP基材層(A)側にして積層し、さらにその上にポリウレタン系接着剤層(E)を介し、実施例2と同様に非イオン系界面活性剤(ステアリン酸モノグリセリド)を添加したLLDPEを積層し、5層構成(蒸着PETフィルムは1層と数える)の積層フィルムを得た。保管テスト後のサンプルの酸素透過度の低下は殆ど認められなかった。
(比較例6)
OPP基材層(A)の厚さを20μm、ヒートシール性樹脂層(F)の厚さを40μmとした以外、実施例3と同様にして6層構成の積層フィルムを得た。保管テスト後のサンプルの酸素透過度の低下は殆ど認められなかった。
(比較例7)
OPP基材層(A)の厚さを20μm、ヒートシール性樹脂層(F)の厚さを70μmとした以外、実施例3と同様にして6層構成の積層フィルムを得た。フィルムの感触は悪かった。保管テスト後のサンプルの酸素透過度の低下は殆ど認められなかった。
【0046】
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリオレフィン系樹脂100重量部に対し、帯電防止剤を0.05〜0.8重量部含有したポリオレフィン系基材層(A)の一方の面に、接着剤層(B)を介してポリカルボン酸およびその部分中和物からなる群から選ばれた少なくとも一種のポリカルボン酸系重合体層(C)および、金属化合物微粒子含有層(D)が、この順序で配置されたことを特徴とする帯電防止性を有するガスバリア性フィルム。
【請求項2】
請求項1記載の金属化合物微粒子含有層(D)の上に、接着剤層(E)を介して、ヒートシール性樹脂100重量部に対し、帯電防止剤を0.05〜0.8重量部含有するヒートシール性樹脂層(F)が配置され、フィルムのループスティフネス値が2.0〜5.0gf(23℃、相対湿度60%、幅20mm、周長100mm)であることを特徴とする帯電防止性を有するガスバリア性フィルム。
【請求項3】
粉末食品包装用である請求項1又は2記載の帯電防止性を有するガスバリア性フィルム。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかに記載のガスバリア性フィルムからなる袋。

【公開番号】特開2006−21450(P2006−21450A)
【公開日】平成18年1月26日(2006.1.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−202334(P2004−202334)
【出願日】平成16年7月8日(2004.7.8)
【出願人】(000001100)株式会社クレハ (477)
【Fターム(参考)】