説明

帯電防止性粘着型光学フィルムおよび画像表示装置

【課題】帯電防止層が薄層の場合にも、安定して十分な帯電防止性能を維持することができ、かつ、耐久性および光学特性を満足することができる帯電防止性粘着型光学フィルムを提供すること。
【解決手段】光学フィルムの少なくとも片面に帯電防止層および粘着剤層がこの順に積層されている帯電防止性粘着型光学フィルムにおいて、前記帯電防止層の厚みが10〜100nmであり、前記粘着剤層は、少なくとも(メタ)アクリル系ポリマーが水中に分散含有されているアクリル系水分散液およびイオン性液体を含有する水分散型アクリル系粘着剤により形成されたものであり、かつ、前記アクリル系水分散液の固形分100重量部に対して、イオン性液体0.1〜10重量部を含有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学フィルムの少なくとも片面に帯電防止層および帯電防止機能を有する粘着剤層が積層されている帯電防止性粘着型光学フィルムに関する。さらには、本発明は前記帯電防止性粘着型光学フィルムを用いた液晶表示装置(LCD)、有機EL表示装置、PDP等の画像表示装置に関する。前記光学フィルムとしては、偏光板、位相差板、光学補償フィルム、輝度向上フィルム、さらにはこれらが積層されているものなどが挙げられる。
【背景技術】
【0002】
液晶表示装置等は、その画像形成方式から液晶セルの両側に偏光素子を配置することが必要不可欠であり、一般的には偏光板が貼着されている。また液晶パネルには偏光板の他に、ディスプレイの表示品位を向上させるために様々な光学素子が用いられるようになってきている。例えば、着色防止としての位相差板、液晶ディスプレイの視野角を改善するための視野角拡大フィルム、さらにはディスプレイのコントラストを高めるための輝度向上フィルム等が用いられる。これらのフィルムは総称して光学フィルムと呼ばれる。
【0003】
これらの光学フィルムは、通常、消費者に届けられるまでの間は輸送や製造工程において光学フィルムの表面に傷や汚れがつかないように、その表面に表面保護フィルムが貼り合わされている。当該表面保護フィルムは、LCD等に光学フィルムを貼り付けられた後に剥離される。また、一度、光学フィルムから剥離した後に同じ又は別の表面保護フィルムを再度貼り合せる場合もある。そして、当該表面保護フィルムを剥離する際に静電気が発生し、この静電気によってLCDパネル等の回路が破壊されるという問題があった。また表面保護フィルムによる静電気の発生は、剥離する際のみならず、製造工程や消費者の使用方法に際しての光学フィルム同士の摩擦によっても生じる。
【0004】
前記問題を解決するために、偏光板等の光学フィルムの表面に帯電防止性を付与することが提案されている(特許文献1乃至4)。特許文献1乃至3では、光学フィルムに粘着剤層を設けた粘着型光学フィルムにおいて、粘着剤層を形成する粘着剤に帯電防止剤を配合したものが用いられている。特許文献4では、光学フィルムと粘着剤層の間に導電性ポリマーにより形成された帯電防止層を設けることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2004−053940号公報
【特許文献2】特開2009−024157号公報
【特許文献3】特開2006−011365号公報
【特許文献4】特開2004−338379号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、特許文献1乃至3のように、粘着剤に帯電防止剤を配合する場合には、帯電防止効果を十分に発現するために、多量の帯電防止剤を粘着剤に混合する必要がある。そのため、帯電防止剤を含有する粘着剤組成物により形成された粘着剤層は、加熱、加湿条件下において耐久性の低下や、着色などを引き起こし、光学特性の低下を招く問題がある。また、特許文献4のように、光学フィルムと粘着剤層の間に帯電防止層を設けた場合には、粘着剤層の耐久性を維持することが可能であるが、安定して十分な帯電防止性を付与するには、帯電防止層の厚さを厚くする必要がある。そのため、光学フィルムと粘着剤層の間に帯電防止層を設けた場合には、粘着型光学フィルムの透過率の低下を招き、最終的にはLCD等の輝度低下を招いていた。
【0007】
本発明は、光学フィルムの少なくとも片面に帯電防止層および粘着剤層がこの順に積層されている帯電防止性粘着型光学フィルムであって、帯電防止層が薄層の場合にも、安定して十分な帯電防止性能を維持することができ、かつ、耐久性および光学特性を満足することができる帯電防止性粘着型光学フィルムを提供することを目的とする。また本発明は、当該帯電防止性粘着型光学フィルムを用いた画像表示装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、前記課題を解決すべく鋭意研究したところ、下記帯電防止性粘着型光学フィルムにより上記目的を達成できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
即ち本発明は、光学フィルムの少なくとも片面に帯電防止層および粘着剤層がこの順に積層されている帯電防止性粘着型光学フィルムにおいて、
前記帯電防止層の厚みが10〜100nmであり、
前記粘着剤層は、少なくとも(メタ)アクリル系ポリマーが水中に分散含有されているアクリル系水分散液およびイオン性液体を含有する水分散型アクリル系粘着剤により形成されたものであり、かつ、
前記アクリル系水分散液の固形分100重量部に対して、イオン性液体0.1〜10重量部を含有することを特徴とする帯電防止性粘着型光学フィルム、に関する。
【0010】
前記帯電防止性粘着型光学フィルムにおいて、イオン性液体としては、含窒素オニウム塩が好適である。
【0011】
前記帯電防止性粘着型光学フィルムにおいて、帯電防止層が、導電ポリマーを含有することが好ましい。
【0012】
また本発明は、前記帯電防止性粘着型光学フィルムを少なくとも1枚用いた画像表示装置、に関する。
【発明の効果】
【0013】
本発明の帯電防止性粘着型光学フィルムは、光学フィルムの少なくとも片面に帯電防止層を有し、かつイオン性液体を含有する水分散型アクリル系粘着剤により形成された粘着剤層が、帯電防止層に積層されている。このように、本発明の帯電防止性粘着型光学フィルムは、帯電防止層および粘着剤層のいずれもが導電に寄与しており、安定して十分な帯電防止性能を維持することができ、光学フィルムまたはLCDパネルで発生した静電気を効果的に除電することができる。
【0014】
前記粘着剤層の形成に用いられる水分散型アクリル系粘着剤に帯電防止剤として配合されるイオン性液体は、水分散型アクリル系粘着剤との組み合わせにおいて、優れた帯電防止効果を奏する。その理由は明らかではないが、イオン性液体の多くは水に溶解性または良好な分散性を示すため、イオン性液体は、水分散型アクリル系粘着剤において存在する、ベースポリマーであるアクリル系ポリマーの粘着剤粒子の界面に、皮膜化の際に局在化して、導電材料からなる薄い導電パスを形成する。特に、イオン性液体は、このような形態を取り得るものと考えられる。そのため、粘着剤層において、イオン性液体を水分散型アクリル系粘着剤(アクリル系水分散液)と組み合わせることで、イオン性液体の配合割合が少量である場合にも優れた帯電防止効果(表面抵抗の低下)が得られるものと考えられる。このように本発明の帯電防止性粘着型光学フィルムは、帯電防止性を有する粘着剤層の形成に、水分散型アクリル系粘着剤とイオン性液体を組み合わせて用いることで、イオン性液体の配合を少量に抑えることができるため、耐久性の低下を招くことなく、帯電防止性を付与することができる。
【0015】
このような微視的なモルホルジーについては、染色させた粘着剤層を透過型電子顕微鏡などで観察することにより確認することができる。また、本発明では、帯電防止層と上述の導電パスが積層により接触していることで、液晶パネル部材の何れかで発生した静電気を効果的に除電する効果があるものと考えられる。上記のように、本発明の帯電防止性粘着型光学フィルムは、帯電防止層とともに、上記帯電防止性を有する粘着剤層の作用による、相乗効果によって十分な帯電防止効果が発現する。そのため、帯電防止層が薄い場合にも、十分な帯電防止効果を奏することができ、帯電防止層の薄型化によって、光学特性の低下を招くことなく、帯電防止性を付与することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の帯電防止性粘着型光学フィルムの一例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の帯電防止性粘着型光学フィルムは、図1に示すように光学フィルム1に、帯電防止層2、粘着剤層3がこの順で設けられている。図1では、光学フィルム1の片面に、帯電防止層2、粘着剤層3が設けられているが、光学フィルムのもう一方の片面にも、帯電防止層2および/または粘着剤層3を設けることができる。図1では、粘着剤層3には離型シート4を設けた場合が例示されている。
【0018】
本発明の帯電防止性粘着型光学フィルムの帯電防止層を形成する材料としては、イオン性界面活性剤、導電性ポリマー、金属酸化物などの帯電防止性を付与できる各種の導電材料を用いることができる。
【0019】
例えば、イオン性界面活性剤としては、カチオン系(例えば、4級アンモニウム塩型、ホスホニウム塩型、スルホニウム塩型、ポリエチレンイミン形等)、アニオン系(カルボン酸型、スルホネート型、サルフェート型、ホスフェート型、ホスファイト型等)、両性イオン系(スルホベタイン型、アルキルベタイン型、アルキルイミダゾリウムベタイン型等)またはノニオン系(多価アルコール誘導体、β−シクロデキストリン包接化合物、ソルビタン脂肪酸モノエステル・ジエステル、ポリアルキレンオキシド誘導体、アミンオキシド等)の各種界面活性剤が挙げられる。
【0020】
導電性ポリマーとしては、ポリアニリン系、ポリチオフェン系、ポリピロール系、ポリキノキサリン系等のポリマーが挙げられる。
【0021】
また金属酸化物としては、酸化スズ系、酸化アンチモン系、酸化インジウム系、酸化亜鉛系などが挙げられる。これらのなかでも酸化スズ系が好ましい。酸化スズ系のものとしては、例えば、酸化スズの他、アンチモンドープ酸化スズ、インジウムドープ酸化スズ、アルミニウムドープ酸化スズ、タングステンドープ酸化スズ、酸化チタン−酸化セリウム−酸化スズの複合体、酸化チタン−酸化スズの複合体等が挙げられる。
【0022】
さらに前記以外の帯電防止剤として、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、天然グラファイト、人造グラファイト、チタンブラックや、カチオン型(4級アンモニウム塩等)、両性イオン型(ベタイン化合物等)、アニオン型(スルホン酸塩等)またはノニオン型(グリセリン等)のイオン導電性基を有する単量体の単独重合体若しくは当該単量体と他の単量体との共重合体、4級アンモニウム塩基を有するアクリレートまたはメタクリレート由来の部位を有する重合体等のイオン導電性を有する重合体;ポリエチレンメタクリレート共重合体等の親水性ポリマーをアクリル系樹脂等にアロイ化させたタイプの永久帯電防止剤を例示できる。
【0023】
これら帯電防止剤のなかでも光学特性、外観、後述の帯電防止機能を有するアクリル系粘着剤層との積層による帯電防止効果および帯電防止効果の熱時、加湿時での安定性という観点から、導電性ポリマーが好ましく使用される。特に、ポリアニリン、ポリチオフェンなどの水溶性導電性ポリマーまたは水分散性導電性ポリマーが好ましく使用される。水溶性導電性ポリマーや水分散性導電性ポリマーは帯電防止層を形成する際の塗布液を水溶液または水分散液として調製でき、当該塗布液は非水系の有機溶剤を用いる必要がなく、当該有機溶剤による光学フィルム基材の変質を抑えることができるためである。
【0024】
なお、前記水溶液または水分散液は、水のほかに水系の溶媒を含有できる。例えば、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール、イソブタノール、sec−ブタノール、tert−ブタノール、n−アミルアルコール、イソアミルアルコール、sec−アミルアルコール、tert−アミルアルコール、1−エチル−1−プロパノール、2−メチル−1−ブタノール、n−ヘキサノール、シクロヘキサノール等のアルコール類が挙げられる。
【0025】
前記水溶性または水分散性のポリアニリンのポリスチレン換算による重量平均分子量は500000以下であることが好ましく、さらに好ましくは300000以下である。水溶性または水分散性のポリチオフェンのポリスチレン換算による重量平均分子量は400000以下であることが好ましく、さらに好ましくは300000以下である。重量平均分子量が前記値を超える場合には前記水溶性または水分散性を満たさなくなる傾向にあり、そのようなポリマーを用いて塗布液(水溶液または水分散液)を調製した場合には、当該塗布液中にポリマーの固形分が残存し、あるいは高粘度化して膜厚の均一な帯耐電防止層を形成することが困難になる傾向にある。
【0026】
水溶性導電ポリマーの水溶性とは、水100gに対する溶解度が5g以上の場合をいう。前記水溶性導電ポリマーの水100gに対する溶解度は20〜30gであることが好ましい。水分散性導電性ポリマーとは、ポリアニリン、ポリチオフェン等の導電性ポリマーが微粒子状で水中に分散しているものであり、水分散液は液粘度が小さく薄膜塗工が容易であるばかりか、塗布層の均一性に優れている。ここで微粒子のサイズとしては1μm以下のものが帯電防止層の均一性という点から好ましい。
【0027】
また、前記ポリアニリン、ポリチオフェン等の水溶性導電性ポリマーまたは水分散性導電性ポリマーは、分子中に親水性官能基を有することが好ましい。親水性官能基としては、例えばスルホン基、アミノ基、アミド基、イミノ基、四級アンモニウム塩基、ヒドロキシル基、メルカプト基、ヒドラジノ基、カルボキシル基、硫酸エステル基、リン酸エステル基、またはそれらの塩などが挙げられる。分子内に親水性官能基を有することにより水に溶けやすくなったり、水に微粒子状で分散しやすくなり、前記水溶性導電性ポリマーまたは水分散性導電性ポリマーを容易に調製することができる。
【0028】
水溶性導電ポリマーの市販品の例としては、ポリアニリンスルホン酸(三菱レーヨン(株)製,ポリスチレン換算による重量平均分子量150000)などが挙げられる。水分散性導電ポリマーの市販品の例としては、ポリチオフェン系導電性ポリマー(ナガセケムテック(株)製、商品名,デナトロンシリーズ)、ポリチオフェン系導電性ポリマーの水分散液(AGFA社製,商品名オルガコンLBS)などが挙げられる。
【0029】
また帯電防止層の形成材料としては、前記帯電防止剤とともに、帯電防止剤の皮膜形成性、光学フィルムへの密着性の向上などを目的に、バインダー成分を添加することもできる。帯電防止剤が水溶性導電性ポリマーまたは水分散性導電性ポリマーの水系材料の場合には、水溶性もしくは水分散性のバインダー成分を用いる。バインダーの例としては、ポリウレタン系樹脂、ポリエステル系樹脂、アクリル系樹脂、ポリオキサゾリン系樹脂、ポリエーテル系樹脂、セルロース系樹脂、ポリビニルアルコール系樹脂、エポキシ樹脂、ポリビニルピロリドン、ポリスチレン系樹脂、ポリエチレングリコール、ペンタエリスリトールなどが挙げられる。特にポリウレタン系樹脂、ポリエステル系樹脂、アクリル系樹脂、ポリオキサゾリン系樹脂が好ましく、特にポリオキサゾリン系樹脂が好ましい。ポリオキサゾリン系樹脂の市販品の例としては、(株)日本触媒製のWSシリーズ等が挙げられる。オキサゾリン基は、粘着剤層を形成するアクルル系粘着剤層に含まれるアクリル系ポリマーが、カルボキシル基などの官能基を有する場合には、当該官能基と化学結合を容易に形成するため、特に優れた密着性を付与することができる。これらバインダーは1種または2種以上を適宜その用途に合わせて用いることができる。バインダーの使用量は、帯電防止剤の種類にもよるが、通常、帯電防止剤100重量部に対して200重量部以下、さらには5〜100重量部であるのが好ましい。
【0030】
本発明の帯電防止性粘着型光学フィルムの粘着剤層を形成する粘着剤としては、光学的透明性に優れ、適宜な濡れ性と凝集性と接着性の粘着特性を示して、耐候性や耐熱性などに優れる点から水分散型のアクリル系粘着剤が好ましく使用される。
【0031】
水分散型アクリル系粘着剤のベースポリマーである(メタ)アクリル系ポリマーは、例えば、(メタ)アクリル酸アルキルエステルを主成分とするモノマー成分を、乳化剤、ラジカル重合開始剤の存在下に乳化重合することにより共重合体エマルションとして得られる。なお、(メタ)アクリル酸アルキルエステルはアクリル酸アルキルエステルおよび/またはメタクリル酸アルキルエステルをいい、本発明の(メタ)とは同様の意味である。
【0032】
(メタ)アクリル系ポリマーの主骨格を構成する、(メタ)アクリル酸アルキルエステルとしては、直鎖状または分岐鎖状のアルキル基の炭素数1〜20のものを例示できる。例えば、前記アルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、t−ブチル基、ペンチル基、ネオペンチル基、イソアミル基、ヘキシル基、ヘプチル基、2−エチルヘキシル基、イソオクチル基、ノニル基、イソノニル基、デシル基、イソデシル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、ヘキサデシル基、ヘプタデシル基、オクタデシル基、ナノデシル基、エイコシル基等を例示できる。これらは単独であるいは組み合わせて使用することができる。これらアルキル基の平均炭素数は3〜9であるのが好ましい。特に、本発明においては、上記(メタ)アクリル酸アルキルエステルとして、アクリル酸ブチルのような、水よりも沸点が高いモノマーが特に好適に使用される。
【0033】
前記(メタ)アクリル系ポリマー中には、(メタ)アクリル酸アルキルエステル以外に、水分散液の安定化、粘着剤層の光学フィルム等の基材に対する密着性の向上、さらには、被着体に対する初期接着性の向上などを目的として、(メタ)アクリロイル基またはビニル基等の不飽和二重結合に係る重合性の官能基を有する、1種類以上の共重合モノマーを共重合により導入することができる。
【0034】
前記共重合モノマーの具体例としては、特に制限されず、例えば、(メタ)アクリル酸、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸、クロトン酸、カルボキシエチルアクリレート、カルボキシペンチルアクリレートなどのカルボキシル基含有モノマー;例えば、無水マレイン酸、無水イタコン酸などの酸無水物基含有モノマー;例えば、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸ボルニル、(メタ)アクリル酸イソボルニルなどの(メタ)アクリル酸脂環式炭化水素エステル;例えば、(メタ)アクリル酸フェニルなどの(メタ)アクリル酸アリールエステル、例えば、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニルなどのビニルエステル類;例えば、スチレンなどのスチレン系モノマー;例えば、(メタ)アクリル酸グリシジル、(メタ)アクリル酸メチルグリシジルなどのエポキシ基含有モノマー;例えば、アクリル酸2−ヒドロキシエチル、アクリル酸2−ヒドロキシプロピルなどのヒドロキシル基含有モノマー;例えば、(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジエチル(メタ)アクリルアミド、N−イソプロピル(メタ)アクリルアミド、N−ブチル(メタ)アクリルアミド、N−メチロール(メタ)アクリルアミド、N−メチロールプロパン(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリロイルモルホリン、(メタ)アクリル酸アミノエチル、(メタ)アクリル酸N,N−ジメチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸t−ブチルアミノエチルなどの窒素原子含有モノマー;例えば、(メタ)アクリル酸メトキシエチル、(メタ)アクリル酸エトキシエチルなどのアルコキシ基含有モノマー;例えば、アクリロニトリル、メタクリロニトリルなどのシアノ基含有モノマー;例えば、2−メタクリロイルオキシエチルイソシアネートなどの官能性モノマー;例えば、エチレン、プロピレン、イソプレン、ブタジエン、イソブチレンなどのオレフィン系モノマー;例えば、ビニルエーテルなどのビニルエーテル系モノマー;例えば、塩化ビニルなどのハロゲン原子含有モノマー;その他、例えば、N−ビニルピロリドン、N−(1−メチルビニル)ピロリドン、N−ビニルピリジン、N−ビニルピペリドン、N−ビニルピリミジン、N−ビニルピペラジン、N−ビニルピラジン、N−ビニルピロール、N−ビニルイミダゾール、N−ビニルオキサゾール、N−ビニルモルホリンなどのビニル基含有複素環化合物や、N−ビニルカルボン酸アミド類などが挙げられる。
【0035】
また、共重合性モノマーとして、例えば、N−シクロヘキシルマレイミド、N−イソプロピルマレイミド、N−ラウリルマレイミド、N−フェニルマレイミドなどのマレイミド系モノマー;例えば、N−メチルイタコンイミド、N−エチルイタコンイミド、N−ブチルイタコンイミド、N−オクチルイタコンイミド、N−2−エチルヘキシルイタコンイミド、N−シクロヘキシルイタコンイミド、N−ラウリルイタコンイミドなどのイタコンイミド系モノマー;例えば、N−(メタ)アクリロイルオキシメチレンスクシンイミド、N−(メタ)アクリロイル−6−オキシヘキサメチレンスクシンイミド、N−(メタ)アクリロイル−8−オキシオクタメチレンスクシンイミドなどのスクシンイミド系モノマー;例えば、スチレンスルホン酸、アリルスルホン酸、2−(メタ)アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、(メタ)アクリルアミドプロパンスルホン酸、スルホプロピル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリロイルオキシナフタレンスルホン酸などのスルホン酸基含有モノマーが挙げられる。
【0036】
また、共重合性モノマーとしては、リン酸基含有モノマーが挙げられる。リン酸基含有モノマーとしては、例えば、下記一般式(1):
【化1】


(一般式(1)中、R1は、水素原子またはメチル基を示し、R2は炭素数1〜4のアルキレン基、mは2以上の整数を示し、M1およびM2は、それぞれ独立に、水素原子またはカチオンを示す。)で表されるリン酸基またはその塩を示す。)で表されるリン酸基含有モノマーが挙げられる。
【0037】
なお、一般式(1)中、mは、2以上、好ましくは、4以上、通常40以下であり、mは、オキシアルキレン基の重合度を表す。また、ポリオキシアルキレン基としては、例えば、ポリオキシエチレン基、ポリオキシプロピレン基等が挙げられ、これらポリオキシアルキレン基は、これらのランダム、ブロックまたはグラフトユニットなどであってもよい。また、リン酸基の塩に係る、カチオンは、特に制限されず、例えば、ナトリウム、カリウムなどのアルカリ金属、例えば、カルシウム、マグネシウムなどのアルカリ土類金属などの無機カチオン、例えば、4級アミン類などの有機カチオンなどが挙げられる。
【0038】
また、共重合性モノマーとして、例えば、(メタ)アクリル酸ポリエチレングリコール、(メタ)アクリル酸ポリプロピレングリコール、(メタ)アクリル酸メトキシエチレングリコール、(メタ)アクリル酸メトキシポリプロピレングリコールなどのグリコール系アクリルエステルモノマー;その他、例えば、(メタ)アクリル酸テトラヒドロフルフリルや、フッ素(メタ)アクリレートなどの複素環や、ハロゲン原子を含有するアクリル酸エステル系モノマーなどが挙げられる。
【0039】
さらに共重合性モノマーとして、シリコーン系不飽和モノマーが挙げられる。シリコーン系不飽和モノマーには、シリコーン系(メタ)アクリレートモノマーや、シリコーン系ビニルモノマーなどが含まれる。シリコーン系(メタ)アクリレートモノマーとしては、例えば、(メタ)アクリロイルオキシメチル−トリメトキシシラン、(メタ)アクリロイルオキシメチル−トリエトキシシラン、2−(メタ)アクリロイルオキシエチル−トリメトキシシラン、2−(メタ)アクリロイルオキシエチル−トリエトキシシラン、3−(メタ)アクリロイルオキシプロピル−トリメトキシシラン、3−(メタ)アクリロイルオキシプロピル−トリエトキシシラン、3−(メタ)アクリロイルオキシプロピル−トリプロポキシシラン、3−(メタ)アクリロイルオキシプロピル−トリイソプロポキシシラン、3−(メタ)アクリロイルオキシプロピル−トリブトキシシランなどの(メタ)アクリロイルオキシアルキル−トリアルコキシシラン;例えば、(メタ)アクリロイルオキシメチル−メチルジメトキシシラン、(メタ)アクリロイルオキシメチル−メチルジエトキシシラン、2−(メタ)アクリロイルオキシエチル−メチルジメトキシシラン、2−(メタ)アクリロイルオキシエチル−メチルジエトキシシラン、3−(メタ)アクリロイルオキシプロピル−メチルジメトキシシラン、3−(メタ)アクリロイルオキシプロピル−メチルジエトキシシラン、3−(メタ)アクリロイルオキシプロピル−メチルジプロポキシシラン、3−(メタ)アクリロイルオキシプロピル−メチルジイソプロポキシシラン、3−(メタ)アクリロイルオキシプロピル−メチルジブトキシシラン、3−(メタ)アクリロイルオキシプロピル−エチルジメトキシシラン、3−(メタ)アクリロイルオキシプロピル−エチルジエトキシシラン、3−(メタ)アクリロイルオキシプロピル−エチルジプロポキシシラン、3−(メタ)アクリロイルオキシプロピル−エチルジイソプロポキシシラン、3−(メタ)アクリロイルオキシプロピル−エチルジブトキシシラン、3−(メタ)アクリロイルオキシプロピル−プロピルジメトキシシラン、3−(メタ)アクリロイルオキシプロピル−プロピルジエトキシシランなどの(メタ)アクリロイルオキシアルキル−アルキルジアルコキシシランや、これらに対応する(メタ)アクリロイルオキシアルキル−ジアルキル(モノ)アルコキシシランなどが挙げられる。また、シリコーン系ビニルモノマーとしては、例えば、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリプロポキシシラン、ビニルトリイソプロポキシシラン、ビニルトリブトキシシランなどのビニルトリアルコキシシランの他、これらに対応するビニルアルキルジアルコキシシランや、ビニルジアルキルアルコキシシラン、例えば、ビニルメチルトリメトキシシラン、ビニルメチルトリエトキシシラン、β−ビニルエチルトリメトキシシラン、β−ビニルエチルトリエトキシシラン、γ−ビニルプロピルトリメトキシシラン、γ−ビニルプロピルトリエトキシシラン、γ−ビニルプロピルトリプロポキシシラン、γ−ビニルプロピルトリイソプロポキシシラン、γ−ビニルプロピルトリブトキシシランなどのビニルアルキルトリアルコキシシランの他、これらに対応する(ビニルアルキル)アルキルジアルコキシシランや、(ビニルアルキル)ジアルキル(モノ)アルコキシシランなどが挙げられる。
【0040】
さらに、共重合性モノマーとして、水分散型粘着剤のゲル分率の調整などのために、多官能性モノマーを用いることができる。多官能モノマーとしては、(メタ)アクリロイル基、ビニル基等の不飽和二重結合を2個以上有する化合物などが挙げられる。例えば、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレートなどの(モノまたはポリ)エチレングリコールジ(メタ)アクリレートや、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレートなどの(モノまたはポリ)プロピレングリコールジ(メタ)アクリレートなどの(モノまたはポリ)アルキレングリコールジ(メタ)アクリレートの他、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸と多価アルコールとのエステル化物;ジビニルベンゼン等の多官能ビニル化合物;(メタ)アクリル酸アリル、(メタ)アクリル酸ビニル等の反応性の不飽和二重結合を有する化合物等が挙げられる。また、多官能性モノマーとしては、ポリエステル、エポキシ、ウレタンなどの骨格にモノマー成分と同様の官能基として(メタ)アクリロイル基、ビニル基等の不飽和二重結合を2個以上付加したポリエステル(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレート、ウレタン(メタ)アクリレートなどを用いることもできる。
【0041】
これらの共重合モノマーの中でも、水分散液(エマルション等)の安定化や、当該水分散液から形成される粘着剤層の被着体であるガラスパネルへの密着性の確保の観点から、アクリル酸等のカルボキシル基含有モノマー、リン酸基含有モノマー、シリコーン系不飽和モノマーが好ましく用いられる。
【0042】
(メタ)アクリル系ポリマーは、(メタ)アクリル酸アルキルエステルを主成分とするものであり、その配合割合は、モノマー成分全量に対して、50重量%以上、好ましくは60重量%以上、さらに好ましくは70重量%以上である。また、その上限は、特に制限されず、例えば、100重量%、好ましくは99重量%、さらに好ましくは98重量%である。(メタ)アクリル酸アルキルエステルの配合割合が50重量%未満であると、粘着剤層の接着力などの粘着特性が低下する場合がある。
【0043】
また、共重合性モノマーの配合割合は、モノマー成分全量に対して、例えば、50重量%未満、好ましくは、40重量%未満、さらに好ましくは、30重量%未満である。共重合性モノマーは、各共重合性モノマーの種類に応じて、配合割合を適宜選択することができる。例えば、共重合性モノマーが、カルボキシル基含有モノマーの場合、その割合はモノマー成分全量に対して0.1〜6重量%であるのが好ましく、リン酸基含有モノマーの場合その割合は0.5〜5重量%であるのが好ましく、シリコーン系不飽和モノマーの場合その割合は0.005〜0.2重量%であるのが好ましい。
【0044】
前記モノマー成分の乳化重合は、常法により、モノマー成分を水に乳化させた後に、乳化重合することにより行う。これにより(メタ)アクリル系ポリマー水分散液を調製する。乳化重合では、例えば、上記したモノマー成分とともに、乳化剤、ラジカル重合開始剤、必要に応じて連鎖移動剤などを、水中において適宜配合される。より具体的には、例えば、一括仕込み法(一括重合法)、モノマー滴下法、モノマーエマルション滴下法などの公知の乳化重合法を採用することができる。なお、モノマー滴下法では、連続滴下または分割滴下が適宜選択される。これらの方法は適宜に組み合わせることができる。反応条件などは、適宜選択されるが、重合温度は、例えば、0〜150℃程度であり、重合時間は2〜15時間程度である。
【0045】
乳化剤としては、特に制限されず、乳化重合に通常使用される各種の乳化剤が用いられる。例えば、ラウリル硫酸ナトリウム、ラウリル硫酸アンモニウム、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ポリオキシエチレンラウリル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル硫酸アンモニウム、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレンアルキルスルホコハク酸ナトリウムなどのアニオン系乳化剤;例えば、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンブロックポリマーなどのノニオン系乳化剤などが挙げられる。また、これらアニオン系乳化剤やノニオン系乳化剤に、プロペニル基やアリルエーテル基などのラジカル重合性官能基(ラジカル反応性基)が導入されたラジカル重合性乳化剤などが挙げられる。これら乳化剤は、適宜、単独または併用して用いられる。これらの乳化剤の中でも、ラジカル重合性官能基を有したラジカル重合性乳化剤は、水分散液(エマルション)の安定性、粘着剤層の耐久性の観点から、好ましく使用される。
【0046】
前記乳化剤の配合割合は、前記(メタ)アクリル酸アルキルエステルを主成分とするモノマー成分100重量部に対して、例えば、0.1〜5重量部程度、好ましくは0.4〜3重量部である。乳化剤の配合割合が、この範囲であると、耐水性、粘着特性、さらには重合安定性、機械的安定性などの向上を図ることができる。
【0047】
ラジカル重合開始剤としては、特に制限されず、乳化重合に通常使用される公知のラジカル重合開始剤が用いられる。例えば、2,2´−アゾビスイソブチロニトリル、2,2´−アゾビス(2−メチルプロピオンアミジン)二硫酸塩、2,2´−アゾビス(2−メチルプロピオンアミジン)二塩酸塩、2,2´−アゾビス(2−アミジノプロパン)二塩酸塩、2,2'−アゾビス[2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロパン]二塩酸塩などのアゾ系開始剤;例えば、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウムなどの過硫酸塩系開始剤;例えば、ベンゾイルパーオキサイド、t−ブチルハイドロパーオキサイド、過酸化水素などの過酸化物系開始剤;例えば、フェニル置換エタンなどの置換エタン系開始剤;例えば、芳香族カルボニル化合物などのカルボニル系開始剤などが挙げられる。これら重合開始剤は、適宜、単独または併用して用いられる。また、ラジカル重合開始剤の配合割合は、適宜選択されるが、モノマー成分100重量部に対して、例えば、0.02〜0.5重量部程度、好ましくは、0.08〜0.3重量部である。0.02重量部未満であると、ラジカル重合開始剤としての効果が低下する場合があり、0.5重量部を超えると、水分散型の(メタ)アクリル系ポリマーの分子量が低下し、水分散型粘着剤組成物の粘着性が低下する場合がある。
【0048】
連鎖移動剤は、必要により、水分散型の(メタ)アクリル系ポリマーの分子量を調節するものであって、通常、乳化重合に通常使用される連鎖移動剤が用いられる。例えば、1−ドデカンチオール、メルカプト酢酸、2−メルカプトエタノール、チオグリコール酸2−エチルへキシル、2,3−ジメチルカプト−1−プロパノール、メルカプトプロピオン酸エステル類などのメルカプタン類などが挙げられる。これら連鎖移動剤は、適宜、単独または併用して用いられる。また、連鎖移動剤の配合割合は、モノマー成分100重量部に対して、例えば、0.001〜0.3重量部である。
【0049】
このような乳化重合によって、水分散型の(メタ)アクリル系ポリマーを水分散液(エマルション)として調製することができる。このような水分散型の(メタ)アクリル系ポリマーは、その平均粒子径が、例えば、0.05〜3μm、好ましくは、0.05〜1μmに調整される。平均粒子径が0.05μmより小さいと、水分散型粘着剤の粘度が上昇する場合があり、1μmより大きいと、粒子間の融着性が低下して凝集力が低下する場合がある。
【0050】
また、前記水分散液の分散安定性を保つために、前記水分散液に係る(メタ)アクリル系ポリマーが、共重合性モノマーとしてカルボキシル基含有モノマー等を含有する場合には、当該カルボキシル基含有モノマー等を中和することが好ましい。中和は、例えば、アンモニア、水酸化アルカリ金属等により行なうことができる。
【0051】
本発明の水分散型の(メタ)アクリル系ポリマーは、通常、重量平均分子量は100万以上のものが好ましい。特に重量平均分子量で100万〜400万のものが耐熱性、耐湿性の点で好ましい。重量平均分子量が100万未満であると耐熱性、耐湿性が低下し好ましくない。また乳化重合で得られる粘着剤はその重合機構より分子量が非常に高分子量になるので好ましい。ただし、乳化重合で得られる粘着剤は一般にはゲル分が多くGPC(ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー)で測定できないので分子量に関する実測定での裏付けは難しいことが多い。
【0052】
本発明の帯電防止性粘着型光学フィルムの粘着剤層を形成する水分散型アクリル系粘着剤には、導電性成分としてイオン性液体が配合される。イオン性液体は、帯電防止機能、アクリル系水分散液との混合性、形成される粘着剤層の外観、色味、粘着型光学フィルムを液晶パネルに貼り付けた後の耐久性の点から、他の帯電防止剤に比べて、優れた効果を奏する。
【0053】
イオン性液体とは、室温(25℃)で液状を呈する溶融塩(イオン性化合物)を指す。イオン性液体としては、含窒素オニウム塩、含硫黄オニウム塩、または含リンオニウム塩等の各種のものを用いることができるが、含窒素オニウム塩が好ましく、特に優れた帯電防止能が得られる理由から下記一般式(A)〜(D)で表される有機カチオン成分と、アニオン成分からなるものが好ましく用いられる。さらには、一般式(A)のピリジニウム塩、一般式(B)のイミダゾリウム塩が好ましく用いられる。
【化1】



[式(A)中のRaは、炭素数4から20の炭化水素基を表し、ヘテロ原子を含んでも良く、RbおよびRcは、同一又は異なって、水素または炭素数1から16の炭化水素基を表し、ヘテロ原子を含んでも良い。但し、窒素原子が2重結合を含む場合、Rcはない。]
[式(B)中のRdは、炭素数2から20の炭化水素基を表し、ヘテロ原子を含んでも良く、Re、Rf、およびRgは、同一又は異なって、水素または炭素数1から16の炭化水素基を表し、ヘテロ原子を含んでも良い。]
[式(C)中のRhは、炭素数2から20の炭化水素基を表し、ヘテロ原子を含んでも良く、Ri、Rj、およびRkは、同一又は異なって、水素または炭素数1から16の炭化水素基を表し、ヘテロ原子を含んでも良い。]
[式(D)中のZは、窒素、硫黄、又はリン原子を表し、Rl、Rm、Rn、およびRoは、同一又は異なって、炭素数1から20の炭化水素基を表し、ヘテロ原子を含んでも良い。但しZが硫黄原子の場合、Roはない。]
【0054】
式(A)で表されるカチオンとしてはピリジニウムカチオン、ピペリジニウムカチオン、ピロリジニウムカチオン、ピロリン骨格を有するカチオン、ピロール骨格を有するカチオンなどが挙げられる。具体例としては、1−エチルピリジニウムカチオン、1−ブチルピリジニウムカチオン、1−へキシルピリジニウムカチオン、1−ブチル−3−メチルピリジニウムカチオン、1−ブチル−4−メチルピリジニウムカチオン、1−へキシル−3−メチルピリジニウムカチオン、1−ブチル−3,4−ジメチルピリジニウムカチオン、1,1−ジメチルピロリジニウムカチオン、1−エチル−1−メチルピロリジニウムカチオン、1−メチル−1−プロピルピロリジニウムカチオン、2−メチル−1−ピロリンカチオン、1−エチル−2−フェニルインドールカチオン、1,2−ジメチルインドールカチオン、1−エチルカルバゾールカチオンが挙げられる。
【0055】
式(B)で表されるカチオンとしてはイミダゾリウムカチオン、テトラヒドロピリミジニウムカチオン、ジヒドロピリミジニウムカチオンなどが挙げられる。具体例としては、1,3−ジメチルイミダゾリウムカチオン、1,3−ジエチルイミダゾリウムカチオン、1−エチル−3−メチルイミダゾリウムカチオン、1−ブチル−3−メチルイミダゾリウムカチオン、1−へキシル−3−メチルイミダゾリウムカチオン、1−オクチル−3−メチルイミダゾリウムカチオン、1−デシル−3−メチルイミダゾリウムカチオン、1−ドデシル−3−メチルイミダゾリウムカチオン、1−テトラデシル−3−メチルイミダゾリウムカチオン、1,2−ジメチル−3−プロピルイミダゾリウムカチオン、1−エチル−2,3−ジメチルイミダゾリウムカチオン、1−ブチル−2,3−ジメチルイミダゾリウムカチオン、1−へキシル−2,3−ジメチルイミダゾリウムカチオン、1,3−ジメチル−1,4,5,6−テトラヒドロピリミジニウムカチオン、1,2,3−トリメチル−1,4,5,6−テトラヒドロピリミジニウムカチオン、1,2,3,4−テトラメチル−1,4,5,6−テトラヒドロピリミジニウムカチオン、1,2,3,5−テトラメチル−1,4,5,6−テトラヒドロピリミジニウムカチオン、1,3−ジメチル−1,4−ジヒドロピリミジニウムカチオン、1,3−ジメチル−1,6−ジヒドロピリミジニウムカチオン、1,2,3−トリメチル−1,4−ジヒドロピリミジニウムカチオン、1,2,3−トリメチル−1,6−ジヒドロピリミジニウムカチオン、1,2,3,4−テトラメチル−1,4−ジヒドロピリミジニウムカチオン、1,2,3,4−テトラメチル−1,6−ジヒドロピリミジニウムカチオンなどが挙げられる。
【0056】
式(C)で表されるカチオンとしてはピラゾリウムカチオン、ピラゾリニウムカチオンなどが挙げられる。具体例としては、1−メチルピラゾリウムカチオン、3−メチルピラゾリウムカチオン、1−エチル−2−メチルピラゾリニウムカチオンなどが挙げられる。
【0057】
式(D)で表されるカチオンとしてはテトラアルキルアンモニウムカチオン、トリアルキルスルホニウムカチオン、テトラアルキルホスホニウムカチオンや、上記アルキル基の一部がアルケニル基やアルコキシル基、さらにはエポキシ基に置換されたものなどが挙げられる。
【0058】
具体例としては、テトラメチルアンモニウムカチオン、テトラエチルアンモニウムカチオン、テトラブチルアンモニウムカチオン、テトラヘキシルアンモニウムカチオン、トリエチルメチルアンモニウムカチオン、トリブチルエチルアンモニウムカチオン、トリメチルデシルアンモニウムカチオン、N,N―ジエチル―N―メチル―N−(2−メトキシエチル)アンモニウムカチオン、グリシジルトリメチルアンモニウムカチオン、N,N−ジメチル−N,N−ジプロピルアンモニウムカチオン、N,N−ジメチル−N,N−ジヘキシルアンモニウムカチオン、N,N−ジプロピル−N,N−ジヘキシルアンモニウムカチオン、トリメチルスルホニウムカチオン、トリエチルスルホニウムカチオン、トリブチルスルホニウムカチオン、トリヘキシルスルホニウムカチオン、ジエチルメチルスルホニウムカチオン、ジブチルエチルスルホニウムカチオン、ジメチルデシルスルホニウムカチオン、テトラメチルホスホニウムカチオン、テトラエチルホスホニウムカチオン、テトラブチルホスホニウムカチオン、テトラヘキシルホスホニウムカチオン、トリエチルメチルホスホニウムカチオン、トリブチルエチルホスホニウムカチオン、トリメチルデシルホスホニウムカチオン、ジアリルジメチルアンモニウムカチオン、などが挙げられる。
【0059】
中でもトリエチルメチルアンモニウムカチオン、トリブチルエチルアンモニウムカチオン、トリメチルデシルアンモニウムカチオン、N,N―ジエチル―N―メチル―N−(2−メトキシエチル)アンモニウムカチオン、グリシジルトリメチルアンモニウムカチオン、N,N−ジメチル−N−エチル−N−プロピルアンモニウムカチオン、N,N−ジメチル−N−エチル−N−ブチルアンモニウムカチオン、N,N−ジメチル−N−エチル−N−ペンチルアンモニウムカチオン、N,N−ジメチル−N−エチル−N−ヘキシルアンモニウムカチオン、N,N−ジメチル−N−エチル−N−ヘプチルアンモニウムカチオン、N,N−ジメチル−N−エチル−N−ノニルアンモニウムカチオン、N,N−ジメチル−N−プロピル−N−ブチルアンモニウムカチオン、N,N−ジメチル−N−プロピル−N−ペンチルアンモニウムカチオン、N,N−ジメチル−N−プロピル−N−ヘキシルアンモニウムカチオン、N,N−ジメチル−N−プロピル−N−ヘプチルアンモニウムカチオン、N,N−ジメチル−N−ブチル−N−ヘキシルアンモニウムカチオン、N,N−ジメチル−N−ブチル−N−ヘプチルアンモニウムカチオン、N,N−ジメチル−N−ペンチル−N−ヘキシルアンモニウムカチオン、トリメチルヘプチルアンモニウムカチオン、N,N−ジエチル−N−メチル−N−プロピルアンモニウムカチオン、N,N−ジエチル−N−メチル−N−ペンチルアンモニウムカチオン、N,N−ジエチル−N−メチル−N−ヘプチルアンモニウムカチオン、N,N−ジエチル−N−プロピル−N−ペンチルアンモニウムカチオン、トリエチルメチルアンモニウムカチオン、トリエチルプロピルアンモニウムカチオン、トリエチルペンチルアンモニウムカチオン、トリエチルヘプチルアンモニウムカチオン、N,N−ジプロピル−N−メチル−N−エチルアンモニウムカチオン、N,N−ジプロピル−N−メチル−N−ペンチルアンモニウムカチオン、N,N−ジプロピル−N−ブチル−N−ヘキシルアンモニウムカチオン、N,N−ジブチル−N−メチル−N−ペンチルアンモニウムカチオン、N,N−ジブチル−N−メチル−N−ヘキシルアンモニウムカチオン、トリオクチルメチルアンモニウムカチオン、N−メチル−N−エチル−N−プロピル−N−ペンチルアンモニウムカチオンなどの非対称のテトラアルキルアンモニウムカチオン、ジエチルメチルスルホニウムカチオン、ジブチルエチルスルホニウムカチオン、ジメチルデシルスルホニウムカチオンなどのトリアルキルスルホニウムカチオン、トリエチルメチルホスホニウムカチオン、トリブチルエチルホスホニウムカチオン、トリメチルデシルホスホニウムカチオンなどの非対称のテトラアルキルホスホニウムカチオンが好ましく用いられる。
【0060】
一方、アニオン成分としては、イオン性液体になることを満足するものであれば特に限定されず、例えばCl、Br、I、AlCl、AlCl、BF、PF、ClO、NO、CHCOO、CFCOO、CHSO、CFSO、(CFSO、(CFSO、AsF、SbF、NbF、TaF、F(HF)n、(CN)、CSO、(CSO、CCOO、(CFSO)(CFCO)Nなどが用いられる。なかでも特に、フッ素原子を含むアニオン成分は、低融点のイオン性化合物が得られることから好ましく用いられる。
【0061】
本発明に用いられるイオン性液体の具体例としては、上記カチオン成分とアニオン成分の組み合わせから適宜選択して用いられ、1−ブチルピリジニウムテトラフルオロボレート、1−ブチルピリジニウムヘキサフルオロホスフェート、1−ブチル−3−メチルピリジニウムテトラフルオロボレート、1−ブチル−3−メチルピリジニウムトリフルオロメタンスルホネート、1−ブチル−3−メチルピリジニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、1−ブチル−3−メチルピリジニウムビス(ペンタフルオロエタンスルホニル)イミド、1−へキシルピリジニウムテトラフルオロボレート、2−メチル−1−ピロリンテトラフルオロボレート、1−エチル−2−フェニルインドールテトラフルオロボレート、1,2−ジメチルインドールテトラフルオロボレート、1−エチルカルバゾールテトラフルオロボレート、1−エチル−3−メチルイミダゾリウムテトラフルオロボレート、1−エチル−3−メチルイミダゾリウムアセテート、1−エチル−3−メチルイミダゾリウムトリフルオロアセテート、1−エチル−3−メチルイミダゾリウムヘプタフルオロブチレート、1−エチル−3−メチルイミダゾリウムトリフルオロメタンスルホネート、1−エチル−3−メチルイミダゾリウムペルフルオロブタンスルホネート、1−エチル−3−メチルイミダゾリウムジシアナミド、1−エチル−3−メチルイミダゾリウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、1−エチル−3−メチルイミダゾリウムビス(ペンタフルオロエタンスルホニル)イミド、1−エチル−3−メチルイミダゾリウムトリス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、1−ブチル−3−メチルイミダゾリウムテトラフルオロボレート、1−ブチル−3−メチルイミダゾリウムヘキサフルオロホスフェート、1−ブチル−3−メチルイミダゾリウムトリフルオロアセテート、1−ブチル−3−メチルイミダゾリウムヘプタフルオロブチレート、1−ブチル−3−メチルイミダゾリウムトリフルオロメタンスルホネート、1−ブチル−3−メチルイミダゾリウムペルフルオロブタンスルホネート、1−ブチル−3−メチルイミダゾリウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、1−へキシル−3−メチルイミダゾリウムブロミド、1−へキシル−3−メチルイミダゾリウムクロライド、1−へキシル−3−メチルイミダゾリウムテトラフルオロボレート、1−へキシル−3−メチルイミダゾリウムヘキサフルオロホスフェート、1−へキシル−3−メチルイミダゾリウムトリフルオロメタンスルホネート、1−オクチル−3−メチルイミダゾリウムテトラフルオロボレート、1−オクチル−3−メチルイミダゾリウムヘキサフルオロホスフェート、1−へキシル−2,3−ジメチルイミダゾリウムテトラフルオロボレート、1,2−ジメチル−3−プロピルイミダゾリウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、1−メチルピラゾリウムテトラフルオロボレート、3−メチルピラゾリウムテトラフルオロボレート、テトラヘキシルアンモニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、ジアリルジメチルアンモニウムテトラフルオロボレート、ジアリルジメチルアンモニウムトリフルオロメタンスルホネート、ジアリルジメチルアンモニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、ジアリルジメチルアンモニウムビス(ペンタフルオロエタンスルホニル)イミド、N,N―ジエチル―N―メチル―N−(2−メトキシエチル)アンモニウムテトラフルオロボレート、N,N―ジエチル―N―メチル―N−(2−メトキシエチル)アンモニウムトリフルオロメタンスルホネート、N,N―ジエチル―N―メチル―N−(2−メトキシエチル)アンモニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、N,N―ジエチル―N―メチル―N−(2−メトキシエチル)アンモニウムビス(ペンタフルオロエタンスルホニル)イミド、グリシジルトリメチルアンモニウムトリフルオロメタンスルホネート、グリシジルトリメチルアンモニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、グリシジルトリメチルアンモニウムビス(ペンタフルオロエタンスルホニル)イミド、1−ブチルピリジニウム(トリフルオロメタンスルホニル)トリフルオロアセトアミド、1−ブチル−3−メチルピリジニウム(トリフルオロメタンスルホニル)トリフルオロアセトアミド、1−エチル−3−メチルイミダゾリウム(トリフルオロメタンスルホニル)トリフルオロアセトアミド、ジアリルジメチルアンモニウム(トリフルオロメタンスルホニル)トリフルオロアセトアミド、グリシジルトリメチルアンモニウム(トリフルオロメタンスルホニル)トリフルオロアセトアミド、N,N−ジメチル−N−エチル−N−プロピルアンモニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、N,N−ジメチル−N−エチル−N−ブチルアンモニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、N,N−ジメチル−N−エチル−N−ペンチルアンモニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、N,N−ジメチル−N−エチル−N−へキシルアンモニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、N,N−ジメチル−N−エチル−N−ヘプチルアンモニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、N,N−ジメチル−N−エチル−N−ノニルアンモニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、N,N−ジメチル−N,N−ジプロピルアンモニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、N,N−ジメチル−N−プロピル−N−ブチルアンモニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、N,N−ジメチル−N−プロピル−N−ペンチルアンモニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、N,N−ジメチル−N−プロピル−N−ヘキシルアンモニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、N,N−ジメチル−N−プロピル−N−ヘプチルアンモニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、N,N−ジメチル−N−ブチル−N−ヘキシルアンモニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、N,N−ジメチル−N−ブチル−N−ヘプチルアンモニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、N,N−ジメチル−N−ペンチル−N−ヘキシルアンモニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、N,N−ジメチル−N,N−ジヘキシルアンモニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、トリメチルヘプチルアンモニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、N,N−ジエチル−N−メチル−N−プロピルアンモニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、N,N−ジエチル−N−メチル−N−ペンチルアンモニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、N,N−ジエチル−N−メチル−N−ヘプチルアンモニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、N,N−ジエチル−N−プロピル−N−ペンチルアンモニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、トリエチルプロピルアンモニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、トリエチルペンチルアンモニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、トリエチルヘプチルアンモニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、N,N−ジプロピル−N−メチル−N−エチルアンモニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、N,N−ジプロピル−N−メチル−N−ペンチルアンモニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、N,N−ジプロピル−N−ブチル−N−へキシルアンモニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、N,N−ジプロピル−N,N−ジヘキシルアンモニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、N,N−ジブチル−N−メチル−N−ペンチルアンモニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、N,N−ジブチル−N−メチル−N−ヘキシルアンモニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、トリオクチルメチルアンモニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、N−メチル−N−エチル−N−プロピル−N−ペンチルアンモニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドなどが挙げられる。
【0062】
本発明の水分散型アクリル系粘着剤におけるイオン性液体の配合量は、前記アクリル系水分散液の固形分(ベースポリマーである(メタ)アクリル系ポリマーが主成分)100重量部に対して、0.1〜10重量部である。イオン性液体の配合量が0.1重量部よりも小さい場合には、帯電防止機能が低下してしまい、10重量部を超えると耐久性が低下してしまう。イオン性液体の配合量は、0.3〜5重量部であるのが好ましく、さらには0.5〜3重量部であるのが好ましい。
【0063】
本発明の水分散型アクリル系粘着剤は、上記のアクリル系水分散液、イオン性液体に加えて、架橋剤を含有することができる。架橋剤としては、イソシアネート系架橋剤、エポキシ系架橋剤、オキサゾリン系架橋剤、アジリジン系架橋剤、カルボジイミド系架橋剤、金属キレート系架橋剤などの一般に用いられているものを使用できる。これら架橋剤は、官能基含有単量体を用いることにより重合体中に導入した官能基と反応して架橋する効果を有する。
【0064】
ベースポリマーと架橋剤の配合割合は特に限定されないが、通常、ベースポリマー(固形分)100重量部に対して、架橋剤(固形分)10重量部程度以下の割合で配合される。前記架橋剤の配合割合は、0.001〜10重量部が好ましく、さらには0.01〜5重量部程度が好ましい。
【0065】
さらには、本発明の水分散型アクリル系粘着剤には、必要に応じて、粘度調整剤、剥離調整剤、粘着付与剤、可塑剤、軟化剤、ガラス繊維、ガラスビーズ、金属粉、その他の無機粉末等からなる充填剤、顔料、着色剤(顔料、染料など)、pH調整剤(酸または塩基)、酸化防止剤、紫外線吸収剤、シランカップリング剤等を、また本発明の目的を逸脱しない範囲で各種の添加剤を適宜に使用することもできる。また微粒子を含有して光拡散性を示す粘着剤層などとしても良い。これら添加剤もエマルションとして配合することができる。
【0066】
シランカップリング剤としては、粘着剤層と液晶セル基板との密着性を向上させる作用がある。シランカップリング剤としては、シリコーン系不飽和モノマーを例示でき、この他に、エポキシ基、アミノ基、メルカプト基、アセトアセチル基、イソシアネート基、ポリスルフィド基等の官能基を有するものが挙げられる。これらシランカップリング剤の具体的としては、例えば、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシランなどのエポキシ基含有シランカップリング剤;3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、γ−アミノプロピルメトキシシラン、トリエトキシシリル−β−(1,3−ジメチルブチリデン)プロピルアミンなどのアミノ基含有シランカップリング剤;γ−メルカプトプロピルメチルジメトキシシランなどのメルカプト基含有シランカップリング剤;ビス(トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィドなどのスルフィド基含有シランカップリング剤;γ−イソシアネートプロピルトリエトキシシランなどのインシアネート基含有シランカップリング剤などが挙げられる。
【0067】
光学フィルムとしては、液晶表示装置等の画像表示装置の形成に用いられるものが使用され、その種類は特に制限されない。例えば、光学フィルムとしては偏光板が挙げられる。偏光板は偏光子の片面または両面には透明保護フィルムを有するものが一般に用いられる。
【0068】
偏光子は、特に限定されず、各種のものを使用できる。偏光子としては、例えば、ポリビニルアルコール系フィルム、部分ホルマール化ポリビニルアルコール系フィルム、エチレン・酢酸ビニル共重合体系部分ケン化フィルム等の親水性高分子フィルムに、ヨウ素や二色性染料の二色性物質を吸着させて一軸延伸したもの、ポリビニルアルコールの脱水処理物やポリ塩化ビニルの脱塩酸処理物等ポリエン系配向フィルム等が挙げられる。これらの中でも、ポリビニルアルコール系フィルムとヨウ素などの二色性物質からなる偏光子が好適である。これらの偏光子の厚さは特に制限されないが、一般的に5〜80μm程度である。
【0069】
ポリビニルアルコール系フィルムをヨウ素で染色し一軸延伸した偏光子は、例えば、ポリビニルアルコールをヨウ素の水溶液に浸漬することによって染色し、元長の3〜7倍に延伸することで作成することができる。必要に応じてホウ酸や硫酸亜鉛、塩化亜鉛等を含んでいても良いヨウ化カリウムなどの水溶液に浸漬することもできる。さらに必要に応じて染色前にポリビニルアルコール系フィルムを水に浸漬して水洗してもよい。ポリビニルアルコール系フィルムを水洗することでポリビニルアルコール系フィルム表面の汚れやブロッキング防止剤を洗浄することができるほかに、ポリビニルアルコール系フィルムを膨潤させることで染色のムラなどの不均一を防止する効果もある。延伸はヨウ素で染色した後に行っても良いし、染色しながら延伸しても良いし、また延伸してからヨウ素で染色しても良い。ホウ酸やヨウ化カリウムなどの水溶液や水浴中でも延伸することができる。
【0070】
透明保護フィルムを構成する材料としては、例えば透明性、機械的強度、熱安定性、水分遮断性、等方性などに優れる熱可塑性樹脂が用いられる。このような熱可塑性樹脂の具体例としては、トリアセチルセルロース等のセルロース樹脂、ポリエステル樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、ポリスルホン樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、ポリオレフィン樹脂、(メタ)アクリル樹脂、環状ポリオレフィン樹脂(ノルボルネン系樹脂)、ポリアリレート樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、およびこれらの混合物が挙げられる。なお、偏光子の片側には、透明保護フィルムが接着剤層により貼り合わされるが、他の片側には、透明保護フィルムとして、(メタ)アクリル系、ウレタン系、アクリルウレタン系、エポキシ系、シリコーン系等の熱硬化性樹脂または紫外線硬化型樹脂を用いることができる。透明保護フィルム中には任意の適切な添加剤が1種類以上含まれていてもよい。添加剤としては、例えば、紫外線吸収剤、酸化防止剤、滑剤、可塑剤、離型剤、着色防止剤、難燃剤、核剤、帯電防止剤、顔料、着色剤などが挙げられる。透明保護フィルム中の上記熱可塑性樹脂の含有量は、好ましくは50〜100重量%、より好ましくは50〜99重量%、さらに好ましくは60〜98重量%、特に好ましくは70〜97重量%である。透明保護フィルム中の上記熱可塑性樹脂の含有量が50重量%以下の場合、熱可塑性樹脂が本来有する高透明性等が十分に発現できないおそれがある。
【0071】
前記透明保護フィルムの偏光子を接着させない面には、ハードコート層や反射防止処理、スティッキング防止や、拡散ないしアンチグレアを目的とした処理を施したものであってもよい。
【0072】
また光学フィルムとしては、例えば反射板や反透過板、位相差板(1/2や1/4等の波長板を含む)、視覚補償フィルム、輝度向上フィルムなどの液晶表示装置等の形成に用いられることのある光学層となるものが挙げられる。これらは単独で光学フィルムとして用いることができる他、前記偏光板に、実用に際して積層して、1層または2層以上用いることができる。
【0073】
以下に本発明の帯電防止性粘着型光学フィルムの製造方法について説明する。まず、光学フィルムへ、帯電防止剤により帯電防止層を形成する。帯電防止層の形成は帯電防止剤の材料に応じた方法が採用される。帯電防止剤が、水溶性または水分散性導電ポリマーの場合には、その塗布液(水溶液または水分散液)をリバースコーティング法、グラビアコーティング法等のロールコーティング号、スピンコーティング法、スクリーンコーティング法、ファウンテンコーティング法、ディッピング法、スプレー法などの塗工法を用いて光学フィルム上に塗布し、乾燥する方法等が挙げられる。
【0074】
帯電防止層の形成にあたり、光学フィルムには活性化処理を施すことができる。活性化処理は各種方法を採用でき、例えばコロナ処理、低圧UV処理、プラズマ処理等を採用できる。活性化処理は、帯電防止剤として水溶性または水分散性導電ポリマーを含有する水溶液または水分散液を用いる場合に有効であり、当該水溶液または水分散液のハジキを抑えることができる。また活性化処理は、光学フィルムが、特にポリオレフィン系樹脂、ノルボルネン系樹脂の場合に有効である。
【0075】
帯電防止層の厚みは10〜100nmであり、20〜90nmが好ましく、さらには30〜80nmが好ましい。厚みが10nm未満では、十分な帯電防止効果が得られず、一方、100nmを超えると、得られる粘着型光学フィルムの透過性が低下したり、また、光学フィルムが偏光板の場合には偏光解消を起こすおそれがある。
【0076】
前記帯電防止層の表面抵抗値は、1×1012Ω/□以下であることが好ましく、さらに好ましくは1×1011Ω/□以下である。表面抵抗値が1×1012Ω/□を超える場合には、帯電防止機能が十分でなく、表面保護フィルムの剥離や、光学フィルムの摩擦により静電気が発生・帯電し、液晶セルの回路の破壊や液晶の配向不良を起こす場合がある。
【0077】
次いで、前記帯電防止層に、イオン性液体を含有する水分散型アクリル系粘着剤により粘着剤層を形成する。粘着剤層の形成は、光学フィルムに設けた帯電防止層に、粘着剤層を設けた離型シートから粘着剤層を転写する方法等が挙げられる。粘着剤層を設けた離型シートは、離型シートにイオン性液体を含有する水分散型アクリル系粘着剤を、ナイフコーティング法等の公知のコーティング法により直接コーティングして、これを乾燥することにより調製することができる。また、光学フィルムに設けた帯電防止層に、イオン性液体を含有する水分散型アクリル系粘着剤を、ナイフコーティング法等の公知のコーティング法により直接コーティングして乾燥することにより形成することもできる。
【0078】
上記乾燥温度は80〜170℃である。乾燥温度が80℃未満では、粘着剤層中に水分、残存モノマー、中和等に使用するアンモニア成分が残存し易く、その結果、粘着剤層の塗膜の強度が不十分となって、耐久性の確保が難しい。一方、乾燥温度が170℃を超える場合には、乾燥速度が速すぎるため、突沸による外観悪化、残存するラジカル重合開始剤の影響などで着色が起こったり、光学フィルムや離型フィルムに熱ダメージを与えたりする。(例えば、フィルム系離型フィルムではオリゴマーの析出などが生じる)。前記乾燥温度は、好ましくは100〜140℃である。
【0079】
粘着剤層(乾燥後)の厚さは特に限定されないが、1〜100μmであり、好ましくは5〜50μm、さらに好ましくは10〜40μmである。
【0080】
前記粘着剤層の表面抵抗値は、1×107〜1×1011Ω/□の範囲に設計される。表面抵抗値が、1×107Ω/□よりも低い場合には、現実的には多量の導電物質(イオン性液体)の添加が必要であり、耐久性、光学特性の低下を招く。一方、表面抵抗値が、1×1011Ω/□よりも大きい場合には、帯電防止効果が乏しくなる。表面抵抗値は、導電物質の選択や、添加量によって適宜に調整される。
【0081】
離型シートの構成材料としては、紙、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート等の合成樹脂フィルム、ゴムシート、紙、布、不織布、ネット、発泡シートや金属箔、それらのラミネート体等の適宜な薄葉体等が挙げられる。離型シートの表面には、粘着剤層からの剥離性を高めるため、必要に応じてシリコーン処理、長鎖アルキル処理、フッ素処理などの低接着性の剥離処理が施されていても良い。
【0082】
なお、本発明の帯電防止性粘着型光学フィルムの光学フィルムや粘着剤層などの各層には、例えばサリチル酸エステル系化合物やべンゾフェノール系化合物、ベンゾトリアゾール系化合物やシアノアクリレート系化合物、ニッケル錯塩系化合物等の紫外線吸収剤で処理する方式などの方式により紫外線吸収能をもたせたものなどであってもよい。
【0083】
本発明の帯電防止性粘着型光学フィルムは液晶表示装置等の各種画像表示装置の形成などに好ましく用いることができる。液晶表示装置の形成は、従来に準じて行いうる。すなわち液晶表示装置は一般に、液晶セルと帯電防止性粘着型光学フィルム、及び必要に応じての照明システム等の構成部品を適宜に組立てて駆動回路を組込むことなどにより形成されるが、本発明においては本発明による光学フィルムを用いる点を除いて特に限定はなく、従来に準じうる。液晶セルについても、例えばTN型やSTN型、π型などの任意なタイプのものを用いうる。その他、前述のIPS、VA型のタイプのものが挙げられる。
【0084】
液晶セルの片側又は両側に帯電防止性粘着型光学フィルムを配置した液晶表示装置や、照明システムにバックライトあるいは反射板を用いたものなどの適宜な液晶表示装置を形成することができる。その場合、本発明の帯電防止性粘着型光学フィルムは液晶セルの片側又は両側に設置することができる。両側に該光学フィルムを設ける場合、それらは同じものであってもよいし、異なるものであってもよい。さらに、液晶表示装置の形成に際しては、例えば拡散板、アンチグレア層、反射防止膜、保護板、プリズムアレイ、レンズアレイシート、光拡散板、バックライトなどの適宜な部品を適宜な位置に1層又は2層以上配置することができる。
【実施例】
【0085】
以下に、実施例によって本発明を具体的に説明するが、本発明はこれら実施例によって限定されるものではない。なお、各例中、部および%は重量基準である。
【0086】
実施例1
(帯電防止剤の調製)
ポリチオフェン系導電性ポリマーの水分散液(AGFA社製,商品名オルガコンLBS,固形分12%)を31.3部、バインダー成分としてオキサゾリン基含有ポリマー((株)日本触媒製,商品名WS700,固形分濃度25%)を4.5部、水197.4部、およびイソプロピルアルコール65.8部を混合して、帯電防止性塗布液を調製した。
【0087】
(帯電防止層の形成)
偏光板(日東電工(株)製,商品名VEG−DU)の片面に、マイヤーバーによりメモリ#3で、上記帯電防止性塗布液を塗布した後、40℃で1分間乾燥して、偏光板の片面に帯電防止層を形成した。帯電防止層の厚みは、電子顕微鏡写真の結果から30nmであった。
【0088】
(アクリル系水分散液の調製)
容器に、原料としてアクリル酸ブチル100部、アクリル酸5部、2−ヒドロキシエチルモノ[ポリ(プロピレンオキシド)メタクリレート]リン酸エステル(プロピレンオキシドの平均重合度5.0)30部、および3−メタクリロイルオキシプロピル−トリエトキシシラン(信越化学工業(株)製,KBM−503)0.3部を加えて混合し、モノマー混合物を得た。次いで、上記割合で調製したモノマー混合物600部に対して、反応性乳化剤としてアクアロンHS−10(第一工業製薬(株)製)13部、イオン交換水360部を加え、ホモジナイザー(特殊機化工業(株)製)を用い、3分間、7000rpmで攪拌し、モノマーエマルションを調製した。
【0089】
次に、冷却管、窒素導入管、温度計、滴下ロートおよび攪拌羽根を備えた反応容器に、上記で調製したモノマーエマルションのうちの200部およびイオン交換水350部を仕込み、次いで、反応容器を十分窒素置換した後、過硫酸アンモニウム0.1部を添加して、60℃で1時間重合した(初期重合)。次いで、残りのモノマーエマルションを、反応容器に3時間かけて滴下し、その後、3時間重合した(中間重合)。さらにその後、窒素置換しながら、65℃で5時間重合し(最終重合)、固形分濃度45%のアクリル系水分散液(エマルション)を得た。次いで、上記アクリル系水分散液を室温まで冷却した後、これに、濃度10%のアンモニア水を30部添加し、さらに蒸留水を加えて、固形分38%に調整した。アクリル系水分散液(エマルション)中の(メタ)アクリル系ポリマーの平均粒子径は0.09μmであった。
【0090】
(水分散型アクリル系粘着剤の調製)
上記固形分38%に調整したアクリル系水分散液に、当該水分散液中の(メタ)アクリル系ポリマー(固形分)100部に対して、イオン性液体として、1−エチル−3−メチル−イミダゾリウム−エチルサルフェート(アルドリッチ社製,EMIMETSO)を3部加えて、よく混合して、水分散型アクリル系粘着剤を調製した。
【0091】
(帯電防止性粘着型光学フィルムの作成)
上記水分散型アクリル系粘着剤を、乾燥後の厚みが25μmとなるように、離型フィルム(三菱化学ポリエステル(株)製,ダイアホイルMRF−38,ポリエチレンテレフタレート基材)上にアプリケーターにより塗布した後、熱風循環式オーブンにより120℃で15分間乾燥して、帯電防止性粘着剤層を形成した。当該帯電防止性粘着剤層を、上記帯電防止層を形成した偏光板の帯電防止層に貼り合せて、帯電防止性粘着型偏光板を作成した。
【0092】
実施例2
実施例1において、水分散型アクリル系粘着剤の調製にあたり、イオン性液体の配合量を0.3部に変えたこと以外は実施例1と同様にして帯電防止性粘着型偏光板を作成した。
【0093】
実施例3
実施例1において、水分散型アクリル系粘着剤の調製にあたり、イオン性液体の配合量を10部に変えたこと以外は実施例1と同様にして帯電防止性粘着型偏光板を作成した。
【0094】
実施例4
実施例1において、水分散型アクリル系粘着剤の調製にあたり、イオン性液体として、1−エチル−3−メチル−イミダゾリウム−エチルサルフェートの代わりに1−エチル−3−メチル−イミダゾリウムアセテート(アルドリッチ社製,EMIMAcetate)を3部用いたこと以外は実施例1と同様にして帯電防止性粘着型偏光板を作成した。
【0095】
実施例5
実施例1において、水分散型アクリル系粘着剤の調製にあたり、イオン性液体として、1−エチル−3−メチル−イミダゾリウム−エチルサルフェートの代わりにグリシジルトリメチルアンモニウムトリフルオロメタンスルホネートを2部用いたこと以外は実施例1と同様にして帯電防止性粘着型偏光板を作成した。
【0096】
実施例6
(帯電防止剤の調製)
ポリアニリン系チオフェン系導電性ポリマーの水溶液(三菱レーヨン(株)製,商品名アクアPAS,固形分25%)を45部、バインダー成分としてオキサゾリン基含有ポリマー((株)日本触媒製,商品名WS700,固形分濃度25%)を4.5部、水197.4部、およびイソプロピルアルコール65.8部を混合して、帯電防止性塗布液を調製した。
【0097】
(帯電防止層の形成)
偏光板(日東電工(株)製,商品名VEG−DU)の片面に、マイヤーバーによりメモリ#3で、上記帯電防止性塗布液を塗布した後、40℃で1分間乾燥して、偏光板の片面に帯電防止層を形成した。帯電防止層の厚みは、電子顕微鏡写真の結果から40nmであった。
【0098】
(帯電防止性粘着型光学フィルムの作成)
実施例1において、帯電防止層を形成した偏光板として上記作成したものを用いたこと以外は実施例1と同様にして帯電防止性粘着型偏光板を作成した。
【0099】
比較例1
実施例1において、水分散型アクリル系粘着剤の調製にあたり、イオン性液体を配合しなかったこと以外は実施例1と同様にして帯電防止性粘着型偏光板を作成した。
【0100】
比較例2
実施例1において、帯電防止層を形成しなかったこと以外は実施例1と同様にして帯電防止性粘着型偏光板を作成した。
【0101】
比較例3
実施例1において、水分散型アクリル系粘着剤の調製にあたり、イオン性液体の配合量を0.05部に変えたこと以外は実施例1と同様にして帯電防止性粘着型偏光板を作成した。
【0102】
比較例4
実施例1において、水分散型アクリル系粘着剤の調製にあたり、イオン性液体の配合量を12部に変えたこと以外は実施例1と同様にして帯電防止性粘着型偏光板を作成した。
【0103】
比較例5
実施例1において、水分散型アクリル系粘着剤の調製にあたり、イオン性液体である、1−エチル−3−メチル−イミダゾリウム−エチルサルフェートの代わりにグリシジルトリメチルアンモニウムトリフルオロメタンスルホネートの代わりに、ポリチオフェン系導電性ポリマーの水分散液(AGFA社製,商品名オルガコンLBS,固形分12%)を、アクリル系水分散液中の(メタ)アクリル系ポリマー(固形分)100部に対して、3部(固形分)用いたこと以外は実施例1と同様にして帯電防止性粘着型偏光板を作成した。
【0104】
比較例6
(溶剤系アクリル系粘着剤の調製)
容器に、原料としてアクリル酸ブチル100部、アクリル酸50部、アクリル酸2−ヒドロキシエチル0.1部を酢酸エチル300部に溶解し、撹拌下、約60℃で6時間反応させて、重量平均分子量200万のアクリル系ポリマーを含有する溶液(固形分24%)を調製した。当該アクリル系ポリマーを含有する溶液の固形分100部対して、イソシアネート系多官能性化合物(日本ポリウレタン工業(株)製,商品名コロネートL)を3.2部、シランカップリング剤(信越シリコーン(株)製,KBM−403)を0.6部、イオン性液体として、1−ブチル−3−メチルピリジニウムトリフルオロメタンスルホネートを3部、及び酢酸エチルを加えてアクリル系粘着剤溶液(固形分11%)を調製した。
【0105】
(帯電防止性粘着型光学フィルムの作成)
上記アクリル系粘着剤溶液を、乾燥後の厚みが25μmとなるように、離型フィルム(三菱化学ポリエステル(株)製,ダイアホイルMRF−38,ポリエチレンテレフタレート基材)上にリバースロールコート法により塗布した後、熱風循環式オーブンにより120℃で15分間乾燥して、帯電防止性粘着剤層を形成した。当該帯電防止性粘着剤層を、実施例1において作成した、帯電防止層を形成した偏光板の帯電防止層に貼り合せて、帯電防止性粘着型偏光板を作成した。
【0106】
比較例7
実施例1において、帯電防止層の形成にあたりマイヤーバーとしてメモリ#3を使用して、帯電防止層の厚みを110nmとしたこと、水分散型アクリル系粘着剤の調製にあたり、イオン性液体を配合しなかったこと以外は実施例1と同様にして帯電防止性粘着型偏光板を作成した。
【0107】
各例で得られた帯電防止性粘着型光学フィルムについて下記評価を行なった。結果を表1に示す。
【0108】
<帯電防止効果>
各例で得られた帯電防止性粘着型光学フィルムを、100mm×100mmの大きさに切断して、液晶パネルに貼り付けた。その液晶パネルを、10000cdの輝度を持つバックライト上に置き、静電気発生装置であるESDGガン(SANKI社製,ESD−8012A)を用いて5kvの静電気を発生させることで液晶の配向乱れを生じさせた。その配向不良の回復時間(秒)を、瞬間マルチ測光検出器(大塚電子(株)製,MCD−3000)を用いて測定した。静電気の発生は、1回および連続で5回印加後の状態を評価した。
【0109】
<表面抵抗値>
表面抵抗測定器(三菱化学(株)製,Hiresta MCP−HT450)を用いて、印加電圧500Vで、各例で得られた帯電防止性粘着型光学フィルム粘着剤層面の表面抵抗値を測定した。
【0110】
<透過率>
各例で得られた帯電防止性粘着型光学フィルムをスライドガラスに貼り付けて、光透過率を積分球式分光透過率測定器((株)村上色彩技術研究所製,DOT−3)を用いて、単体透過率として評価した。
【0111】
<耐久性>
各例で得られた帯電防止性粘着型光学フィルムを、230mm×310mmの大きさに切断し、これを、無アルカリガラス板(コーニング#1737,コーニング社製)にラミネータで貼着した後、50℃、0.5MPaのオートクレーブ中に20分間放置した。初期状態を確認した後、耐久性試験として、加熱下(80℃)、および、加湿下(60℃/90%RH)に、それぞれ500時間投入した。耐久性試験後の粘着剤層の発泡、剥がれの状態を下記の基準で目視観察により確認した。
○:耐久性試験後に発泡・ハガレなし。
△:耐久性試験後に僅かに発泡、または/およびハガレが生じたがフィルム端部から3mm以内に留まっていた。
△:耐久性試験後に発泡、または/およびハガレが、フィルム端部から3mmを超えて内部に発生していた。
【0112】
<密着性>
各例で得られた帯電防止性粘着型光学フィルムを、25mm幅×50mm長さに切断した。これの粘着剤層面と50μm厚のポリエチレンテレフタレートフィルム表面にインジウム−酸化錫を蒸着ざせた蒸着フィルムの蒸着面とが接するように貼り合わせた後、20分間以上、23℃/60%RHの環境下に放置した。その後、ポリエチレンテレフタレートフィルムの端部を手で剥離し、粘着剤がポリエチレンテレフタレートフィルム側に付着しているのを確認してから、引張試験機((株)島津製作所製,オートグラフAG−1)を用いて、180°剥離、引張速度300mm/minにて室温雰囲気下(25℃)にて、帯電防止層と粘着剤層との密着性(N/25mm)を測定した。かかる密着性(N/25mm)は、15N/25mm以上、さらには18N/25mm以上であるのが好ましい。
【0113】
<粒度分布>
各例の水分散液に係る水分散型アクリル系粘着剤(エマルション)中の(メタ)アクリル系ポリマーの平均粒子径は、ベックマンコールター社製LS13320により測定した。
【0114】
【表1】

【0115】
表1中、
イオン性液体1:1−エチル−3−メチル−イミダゾリウム−エチルサルフェート、
イオン性液体2:1−エチル−3−メチル−イミダゾリウムアセテート、
イオン性液体3:グリシジルトリメチルアンモニウムトリフルオロメタンスルホネート、
イオン性液体4:1−ブチル−3−メチルピリジニウムトリフルオロメタンスルホネート、を示す
【符号の説明】
【0116】
1:光学フィルム
2:帯電防止層
3:粘着剤層
4:離型シート

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光学フィルムの少なくとも片面に帯電防止層および粘着剤層がこの順に積層されている帯電防止性粘着型光学フィルムにおいて、
前記帯電防止層の厚みが10〜100nmであり、
前記粘着剤層は、少なくとも(メタ)アクリル系ポリマーが水中に分散含有されているアクリル系水分散液およびイオン性液体を含有する水分散型アクリル系粘着剤により形成されたものであり、かつ、
前記アクリル系水分散液の固形分100重量部に対して、イオン性液体0.1〜10重量部を含有することを特徴とする帯電防止性粘着型光学フィルム。
【請求項2】
イオン性液体が、含窒素オニウム塩であることを特徴とする請求項1記載の帯電防止性粘着型光学フィルム。
【請求項3】
帯電防止層が、導電ポリマーを含有することを特徴とする請求項1または2記載の帯電防止性粘着型光学フィルム。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかに記載の帯電防止性粘着型光学フィルムを少なくとも1枚用いた画像表示装置。

【図1】
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【公開番号】特開2011−252948(P2011−252948A)
【公開日】平成23年12月15日(2011.12.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−124706(P2010−124706)
【出願日】平成22年5月31日(2010.5.31)
【出願人】(000003964)日東電工株式会社 (5,557)
【Fターム(参考)】