説明

平板表示装置の製造方法

【課題】平板表示装置の製造方法を提供する。
【解決手段】第1基板の一方の面に発光素子を備える発光部を複数個形成する段階と、第2基板を準備する段階と、第1基板または第2基板の一方の面にガラスフリットを形成する段階と、第1基板と第2基板との間に、ガラスフリットが介在された状態で、第1基板と第2基板とを対向配置する段階と、第1強度のレーザを照射し、ガラスフリットを溶かし、ガラスフリットにより第1基板と第2基板とを接合する段階と、第1強度のレーザが照射された領域に第2強度のレーザを照射し、第1基板または第2基板をアニーリングする段階とを含む平板表示装置の製造方法である。これにより、レーザでガラスフリットを溶かして基板と密封部材とを接合する平板表示装置の製造方法において、レーザによる切断面不良を最小化できる平板表示装置の製造方法を提供することが可能である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、平板表示装置の製造方法に係り、さらに詳細には、ガラスフリットにより密封された平板表示装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に、有機電界発光表示装置、TFT−LCDのような平板型表示装置は、駆動特性上、超薄型化及びフレキシブル化が可能であり、これに係る多くの研究がなされている。
【0003】
このうち有機電界発光表示装置は、水分の浸透により劣化されてしまうという特性を有している。従って、水分の浸透を防止するための封止構造を必要とする。
【0004】
従来には、金属キャンやガラス基板に溝を有するようにキャップ状に加工して密封部材とし、その溝に水分の吸収のための乾湿剤(Desiccant)をパウダー状に搭載したり、またはフィルム状に製造して両面テープを利用して接着した後、この密封部材をUV硬化有機シーラント(Sealant)や熱硬化有機シーラントを利用し、素子の形成された基板に接合する方法を利用していた。
【0005】
密封部材と基板とを接合させるための有機シーラントの場合、耐圧特性が良好ではなく、経時的に耐透湿性が顕著に低下して密封効果を低減させるという問題があった。
【0006】
かような問題により、近来には、耐圧特性が高く、優秀な密封特性を得ることができるガラスフリットを、前記有機シーラントの代替用に使用しようとする試みがある。ガラスフリットを利用したシーリングにおいて、有機発光素子に及ぶ熱的影響を最小化させつつ、ガラスフリットを溶融させるためにレーザを使用できる。しかし、その場合、複数個の発光素子を1つのガラスに形成した後、各素子別にガラスを切断する量産工程では、レーザ照射により発生した熱的ストレスにより、ガラスの切断面に不良が発生するというような問題があった。
【0007】
すなわち、レーザによりガラスフリットを溶かすときには、500〜600℃ほどの高温で瞬間的な温度上昇が起こるが、ガラスはこれにより、急激な熱衝撃を受けることになる。かような熱衝撃は、ガラスに部分別にストレス偏差を発生させる。このストレス偏差は、ガラスの切断時にクラックの伝播が所望の方向になされなくなるという原因、すなわち切断面に突起やパーティクルが発生してしまう原因になる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、前記のような問題点を解決するためのものであり、レーザでガラスフリットを溶かして基板と密封部材とを接合する平板表示装置の製造方法において、レーザによる切断面不良を最小化できる平板表示装置の製造方法を提供するところにその目的がある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記のような目的を達成するために、本発明は、第1基板の一方の面に発光素子を備える発光部を複数個形成する段階と、第2基板を準備する段階と、前記第1基板または第2基板の一方の面にガラスフリットを形成する段階と、前記第1基板と第2基板との間に、前記ガラスフリットが介在されるように、前記第1基板と第2基板とを対向配置する段階と、第1強度のレーザを照射し、前記ガラスフリットを溶かし、前記ガラスフリットにより前記第1基板と第2基板とを接合する段階と、第1強度のレーザが照射された領域に第2強度のレーザを照射し、前記第1基板または第2基板をアニーリングする段階とを含む平板表示装置の製造方法を提供する。
【0010】
前記第2強度は、前記第1強度より低い強度でありうる。
【0011】
前記第2強度は、前記第1強度の70ないし80%でありうる。
【0012】
前記第2強度のレーザでアニーリングする段階は、前記第1強度のレーザで、前記ガラスフリットを溶かして接合する段階の逆の順序で進められうる。
【0013】
前記発光部は、第1方向にm個、第2方向にn個配列され、前記第1強度のレーザで、前記ガラスフリットを溶かして接合する段階は、第1方向に進められ、前記第2強度のレーザでアニーリングする段階は、第1方向の逆方向に進められる。
【0014】
前記発光部は、第1方向にm個、第2方向にn個配列され、前記第1強度のレーザで前記ガラスフリットを溶かして接合する段階は、第2方向にまず進められた後、第1方向に進められる順序を反復的に行うことであり、前記第2強度のレーザでアニーリングする段階は、第2方向にまず進められた後、第1方向の逆方向に進められる順序を反復的に行うことでありうる。
【0015】
前記第1強度のレーザで前記ガラスフリットを溶かして接合する段階、及び前記第2強度のレーザでアニーリングする段階は、それぞれ一回に二つ以上の発光部に対して進められうる。
【0016】
このとき、前記発光部は、第1方向にm個、第2方向にn個配列され、前記第1強度のレーザで前記ガラスフリットを溶かして接合する段階は、第1方向に沿った1列の発光部に対して進められた後、第2方向に沿って次の1列の発光部に対して進められることであり、前記第2強度のレーザでアニーリングする段階は、前記第2強度のレーザでアニーリングする段階は、前記第1強度のレーザで、前記ガラスフリットを溶かして接合する段階の逆の順序で進められうる。
【0017】
前記第1強度のレーザで接合する段階後に、前記第1基板及び第2基板を180°回転させる段階をさらに含むことができる。
【0018】
前記第1強度のレーザで接合する段階と、前記第2強度のレーザでアニーリングする段階とで、レーザを照射するレーザ照射器の進行方向が同一でありえる。
【0019】
前記第1強度または第2強度のレーザは、前記第1基板側から照射されうる。
【0020】
前記第1強度または第2強度のレーザは、前記第2基板側から照射されうる。
【0021】
前記第1強度または第2強度のレーザは、前記第1基板及び第2基板の両側から照射されうる。
【0022】
前記アニーリング段階後に、前記第1基板または第2基板を、前記各発光部別に切断する段階をさらに含むことができる。
【0023】
前記発光素子は、有機電界発光素子でありうる。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、ガラスフリットをレーザで溶かして基板と基板を接合するディスプレイ装置の製造方法において、簡単に切断品質を向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
以下、添付図面を参照しつつ、本発明の望ましい実施例について詳細に説明すれば、次の通りである。
【0026】
図1は、本発明の望ましい一実施例による平板表示装置の製造方法により製造される平板表示装置用基板の平面図であり、図2は、図1のII−IIの断面図である。
【0027】
図1及び図2から分かるように、互いに対向した第1基板1と第2基板2とを準備し、このうち一方である第1基板1の一方の面に複数個の発光部3を形成する。
【0028】
第1基板1及び第2基板2は、透明なガラス材が使われることができるが、必ずしもそれに限定されるものではない。
【0029】
前記各発光部3は、複数個の発光素子を備えており、本発明の望ましい一実施例によれば、有機発光素子を複数個備える有機発光部となりうる。
【0030】
図4は、発光部3の一例を図示したものであり、能動駆動型有機発光素子を図示している。
【0031】
図4から分かるように、第1基板1の上面には、不純物イオンが広がることを防止し、水分や外気の浸透を防止し、表面を平坦化するためのバリア層及び/またはバッファ層のような絶縁層11が形成されうる。
【0032】
この絶縁層11上に、薄膜トランジスタ(TFT)の活性層12が半導体材料により形成され、これを覆うように、ゲート絶縁膜13が形成される。活性層12は、非晶質シリコンまたはポリシリコンのような無機半導体や、有機半導体が使われうるが、ソース領域12b、ドレイン領域12c、及びそれらの間のチャンネル領域12aを有する。
【0033】
ゲート絶縁膜13上には、ゲート電極14が備わり、これを覆うように、層間絶縁膜15が形成される。そして、層間絶縁膜15上には、ソース電極16a及びドレイン電極16bが備わり、これを覆うように、平坦化膜17及び画素定義膜18が順に備わる。
【0034】
前記ゲート絶縁膜13、層間絶縁膜15、平坦化膜17、及び画素定義膜18は、絶縁体として備わりうるが、単層または複層の構造に形成されており、有機物、無機物、または有機・無機複合物から形成されうる。
【0035】
前述のようなTFTの積層構造は、必ずしもそれらに限定されるものではなく、多様な構造のTFTがいずれも適用可能である。
【0036】
一方、前記平坦化膜17の上部には、有機発光素子(OLED)の一電極である画素電極31が形成され、その上部に画素定義膜18が形成され、この画素定義膜18に所定の開口部を形成して画素電極31を露出させた後、有機発光素子の有機発光膜32を形成する。
【0037】
前記有機発光素子は、電流の流れにより、赤色、緑色、青色の光を発光して所定の画像情報を表示するものであり、TFTのドレイン電極16bにコンタクトホールを介してコンタクトされた画素電極31、全体画素を覆うように備わった対向電極33、及びそれら画素電極31と対向電極33との間に配置されて発光する有機発光膜32から構成される。
【0038】
前記画素電極31と対向電極33は、前記有機発光膜32により互いに絶縁されており、有機発光膜32に互いに異なる極性の電圧を加え、有機発光膜32から発光させる。
【0039】
前記有機発光膜32は、低分子または高分子の有機膜が使われうる。低分子有機膜を使用する場合、ホール注入層(HIL:Hole Injection Layer)、ホール輸送層(HTL:Hole Transport Layer)、発光層(EML:Emission Layer)、電子輸送層(ETL:Electron Transport Layer)、電子注入層(EIL:Electron Injection Layer)などが単一あるいは複合構造に積層されて形成され、使用可能な有機材料も、銅フタロシアニン(CuPc)、N,N−ジ(ナフタレン−1−イル)−N,N’−ジフェニル−ベンジジン(NPB)、トリス−8−ヒドロキシキノリンアルミニウム(Alq3)などを始めとして多様に適用可能である。それら低分子有機膜は、真空蒸着の方法により形成されうる。このとき、ホール注入層、ホール輸送層、電子輸送層、及び電子注入層などは共通層として、赤色、緑色、青色の画素に共通して適用されうる。従って、図4とは異なり、それら共通層は、対向電極33のように、全体画素を覆うように形成されうる。
【0040】
前記画素電極31は、アノード電極の機能を行い、前記対向電極33は、カソード電極の機能を行うが、もちろん、それら画素電極31と対向電極33との極性は、反対になってもよい。
【0041】
第1基板1の方向に画像が具現される背面発光型(bottom emission type)である場合、前記画素電極31は透明電極になり、対向電極33は反射電極になりうる。このとき、画素電極31は、仕事関数が大きいITO、IZO、ZnO、またはInなどから形成され、対向電極33は、仕事関数の小さな金属、すなわち、Ag、Mg、Al、Pt、Pd、Au、Ni、Nd、Ir、Cr、Li、Caなどから形成されうる。
【0042】
対向電極33の方向に画像を具現する前面発光型(top emission type)である場合、前記画素電極31は反射電極として備わり、対向電極33は透明電極として備わりうる。このとき、画素電極31になる反射電極は、Ag、Mg、Al、Pt、Pd、Au、Ni、Nd、Ir、Cr、Li、Ca及びそれらの化合物などから形成された反射膜と、仕事関数の大きいITO、IZO、ZnO、またはInなどとを含んで備わりうる。そして、前記対向電極33になる透明電極は、仕事関数が小さな金属、すなわち、Ag、Mg、Al、Pt、Pd、Au、Ni、Nd、Ir、Cr、Li、Ca及びそれらの化合物を蒸着した後、その上にITO、IZO、ZnO、またはInのような透明導電物質でもって補助電極層やバス電極ラインを形成できる。
【0043】
両面発光型の場合、前記画素電極31と対向電極33とがいずれも透明電極として備わりうる。
【0044】
前記画素電極31及び対向電極33は、必ずしも前述の物質から形成されるものに限定されず、伝導性有機物や、Ag、Mg、Cuなど導電粒子の含まれた伝導性ペーストなどで形成することもできる。かような伝導性ペーストを使用する場合、インクジェットプリンティング法を使用してプリンティングでき、プリンティング後には焼成し、電極として形成できる。
【0045】
このように製造された表示部3の対向電極33の上面には、この表示部3を覆うように無機物、有機物、または有機・無機複合積層物からなるパッシベーション膜34がさらに備わりうる。
【0046】
一方、図1から分かるように、前記表示部3に隣接しては、外部素子と表示部3とを連結するパッド部4がそれぞれ設けられている。
【0047】
前記表示部3とパッド部4は、第1方向(X)にm個、第2方向(Y)にn個備わっている。このとき、1つの表示部3とパッド部4とが1つの単位セルをなし、各単位セルの表示部3とパッド部4は、第2方向(Y)に互いに隣接している。
【0048】
そして、前記各表示部3を取り囲むように、ペースト状態のガラスフリットが第2基板2の第1基板1に向かった面に塗布され、これを一次的に熱処理(pre-sintering)し、ガラスフリット5を硬化させる。もちろん、ガラスフリット5は、第1基板1の第2基板2に向かった面に形成されることもある。ペースト状態のガラスフリットは、ディスペンサを利用して各セルに順次に塗布されるか、またはスクリーンプリンティング法を利用して各セルに一括塗布されうる。
【0049】
次に、ガラスフリット5が形成された第2基板2と第1基板1とを整列した後、図2から分かるように、レーザ照射器6を介してガラスフリット5に局部的にレーザを照射して第1基板1と第2基板2とを接合する。図2で見るとき、レーザの照射は、第2基板2の上部で行われるが、必ずしもそれらに限定されるものではなく、第1基板1の下部で行われることもあり、また第2基板2の上部及び第1基板1の下部で同時に行われることもある。
【0050】
このとき、レーザ照射器6の照射ヘッドが単一ヘッドである場合には、図1で見るとき、第1方向(X)の最初の列の第2方向(Y)に配列されたn個の単位セルのガラスフリットにレーザを照射し、次に、第1方向(X)の二列目の第2方向(Y)に配列されたn個の単位セルのガラスフリットにレーザを照射する方式でレーザ照射を進める。従って、レーザ照射器6の全体的な進行方向は、第1方向(X)になる。
【0051】
このとき、第1方向(X)及び第2方向(Y)は、互いに反対になってもよい。
【0052】
このように、ガラスフリット5を溶かして第1基板1と第2基板2とを接合するときのレーザ強度は第1強度とするが、前記第1強度は、レーザのビームサイズ及びフリット材料の特性によって決まりうる。また、前記第1強度は、ガラスフリット5の組成と、これと接合される第1基板1、第2基板2の組成とによって変わることもある。ただ、第1強度のレーザとしては、ガラスフリット5を、第1基板1と第2基板2とを接合させることができるように溶融させることができなければならない。
【0053】
このように、第1強度のレーザを利用し、ガラスフリット5を溶かして第1基板1と第2基板2とを接合した後には、図3から分かるように、第2強度のレーザを前記ガラスフリット5に照射し、前記第1基板1または第2基板2に所定のアニーリングを加える。
【0054】
アニーリング時のレーザ強度、すなわち、前記第2強度は、前記接合時のレーザ強度の第1強度とは異なる強度、さらに詳細には、第1強度より弱い強度であることが望ましいが、ほぼ第1強度の70ないし80%レベルで実施する。
【0055】
そして、このアニーリング工程で、第2強度のレーザを照射する順序は、接合工程で、第1強度のレーザを照射する順序に対してほぼ逆の順序で進められることが望ましい。
【0056】
すなわち、図1で見るとき、接合工程で、第1強度のレーザを照射する進行方向が全体的に第1方向(X)になされるので、アニーリング工程で、第2強度のレーザを照射する進行方向は、全体的に第1方向(X)の逆方向にすることが望ましい。
【0057】
さらに詳細には、前述の接合工程の第1強度のレーザ照射進行方向に逆の順序でアニーリング工程の第2強度のレーザ照射を進めることが望ましいが、しかし、このとき、必ずしも正確に逆の順序にする必要はなく、前述のように、全体的な進行方向のみ逆の順序になるように、すなわち、接合工程で、全体的に第1方向(X)にレーザ照射を進めたので、アニーリング工程では、全体的に第1方向(X)の逆の順序にレーザ照射を進めてもよい。
【0058】
かようなアニーリング工程は、レーザ照射器6の進行方向をコントロールして進行させてもよいが、レーザ照射器6の進行方向は、同一にセットしておいた状態で、第1基板1及び第2基板2を180°回しておき、単にレーザの強さのみをコントロールして進めてもよい。
【0059】
前述の接合工程を行った後、直ちに第2基板2を切断する場合、第1方向(X)の逆方向に突出した突起が第2基板2の切断面に存在することになる。これは、レーザを第1方向(X)に順次照射することにより、1つの単位セルに対してレーザ照射するとき、隣接した単位セルでも、基板12がレーザによる熱的ストレスを受けることになり、これが、第1方向(X)にレーザ照射が進められることにより、だんだんと加重されるためである。図5は、接合工程でのレーザ照射後に第2基板2を切断するとき、第2基板2の切断面に存在することになるパーティクルや突起の突出方向を全体的に描写したものである。
【0060】
かような現象は、前述のアニーリング工程を介して解消しうる。
【0061】
すなわち、前述のように、第2強度を有するレーザを介し、接合工程とは反対方向にアニーリング工程を進める場合、第1基板1、第2基板2が受けた熱的ストレスの局部的不均衡は、再び平衡を取り戻すことになる。図6は、アニーリング工程でのレーザ照射後に、第2基板2を切断するとき、第2基板2の切断面に存在することになるパーティクルや突起の突出方向を全体的に描写したものである。
【0062】
従って、アニーリング工程を進めた後、基板を切断する場合、クラックの進行方向も所望の方向に一定に進めることができ、きれいな切断面を得ることができる。
【0063】
一方、アニーリング工程では、レーザによりガラスフリットがさらに溶けることがないように、接合工程よりは強度の低いレーザで作業することが望ましい。
【0064】
図7は、アニーリング工程を行わずに、接合工程のみを行った後で直ちに切断したときの第2基板2の切断面を表す写真である。そして、図8は、アニーリング工程を行った後で切断したときの第2基板2の切断面を表す写真である。
【0065】
図7に見るとき、上部に斜線の見える部分はカッタの挿入された部分であり、その下部は、このカッタの挿入された部分により発生したクラックが伝播されて切断された部分に該当する。
【0066】
図7から分かるように、ガラスフリットをレーザで溶かし、第1基板1と第2基板2とを接合する際に、レーザ照射が一方向にのみ進められるとガラスに熱的ストレスの不均一が発生し、切断面に突起が不規則に発生する。このことは、ほとんど必然的に不良をもたらすことになる。また、図7に見るとき、クラックが伝播された部分には、陰影が見られるが、この陰影は、クラックが伝播された部分が全体的に平坦でなく、断面が突出形態になったということを意味する。
【0067】
かような形態は、第1基板1及び第2基板2、すなわち、ガラスを切断した後に表面研磨工程を介しても除去できるが、一般の表面研磨工程は湿式工程であるために、密封を要するディスプレイ、特に、有機発光表示装置のように、湿式工程を避けねばならないディスプレイ装置では、適用するのがほぼ不可能である。
【0068】
図8は、本発明のようなアニーリングを実施しなかったときに、クラックが一方方向に進んだ例を表したものである。図8で、後でレーザシーリングされた部分100から、初めにレーザシーリングされた部分110にクラック120が進んだということが分かる。
【0069】
このようにガラスフリット接合で必然的に発生する不良に対しても、本発明のように、アニーリング工程を介して行えば、図9で見ることができるように、清潔な切断面を得ることができるのである。
【0070】
従って、本発明のようなアニーリングを実施すると、簡単に製品の品質向上を期することができる。
【0071】
一方、本願発明は、レーザ照射6の照射ヘッドが二以上であるマルチヘッドである場合にも適用可能である。
【0072】
図10は、マルチヘッドを使用したときのレーザ照射順序を容易に説明するための概略図である。図10では、レーザの照射される第1基板1の各セル3’の領域を概略的に図示したものであり、レーザの照射されるガラスフリット5は、簡単に線で図示した。図10に見るとき、第2方向(Y)にAないしEの5行が存在するが、マルチヘッドは、1行で1つのセルを飛び越して1セルずつ、いずれも5つのセルに対してレーザ照射することができるようになっている。従って、図10で図示された例では、A行に対してレーザ照射を行うとき、奇数列(A[o])に対し、または偶数列(A[e])に対して一括レーザ照射を行うことができる。
【0073】
かようなマルチヘッドを利用し、まずA行の奇数列(A[o])に対して接合用レーザ照射を行う。このとき、A行の偶数列(A[e])のセル3’は、奇数列(A[o])に対するレーザ照射により生成された熱が伝導され、間接照射された結果になり、一次熱特性変化が起きる。
【0074】
次に、マルチヘッドは、A行の偶数列(A[e])に対して接合用レーザ照射を行うことになるが、このとき、A行の偶数列(A[e])のセル3’は、レーザにより直接的な熱特性変化を受けることになる。
【0075】
従って、偶数列(A[e])のセル3’は、二次にわたった熱履歴変化を経ることになる。一方、初めに接合用レーザ照射を受けた奇数列(A[o])のセル3’は、接合用レーザ照射を受けるときに強い熱特性変化を経たので、二次に行われる偶数列(A[e])のセル3’に対する接合用レーザ照射時には、その伝導される熱による影響が小さくなる。結果的に、偶数列(A[e])のセル3’に対する第2基板2のガラス強度が強くなり、スクライビングを行う場合、奇数列(A[o])側にクラックが伝播され、結局、偶数列(A[e])のセル3’のサイズが奇数列(A[o])のセル3’のサイズより大きくなるという問題が生まれる。従って、本発明では、これを防止するために、接合用レーザ照射を終えた後に、これを進めた順序と反対の順序にアニーリング用レーザ照射を行うのである。図10に見るとき、アニーリング順序は、E行の偶数列、奇数列、D行の偶数列、奇数列、 …、A行の偶数列、奇数列の順序に進められる。
【0076】
下表1は、図10に見るとき、第1方向(X)にA〜Rまで18の列があり、第2方向(Y)に8行まであるとき、前述のようなマルチヘッドを利用し、レーザ照射を行って接合した後、アニーリングを行っていないときに、ガラスカッティング不良によるセルサイズ偏差を表したものである。このとき、マルチヘッドは、9つの列を一度に照射することができるものである。そして、目標にしたセルサイズは、37.98mmである。
【表1】

【0077】
上の表1から分かるように、偶数列の場合、セルサイズが大きくなるセルが多数発生するということが分かる。
【0078】
下の表2は、同じ条件で、前述の図10の実施例のようなアニーリングを実施した後のセルサイズを表したものである。
【表2】

【0079】
表2から分かるように、該アニーリングを実施した場合、セルサイズの不良が顕著に減少するということが分かる。これは、隣接セル間の熱履歴を前記アニーリングにより補正したためである。
【0080】
以上で説明したような本発明は、必ずしも有機発光表示装置に限定されるものではなく、液晶表示装置や、無機電界発光表示装置など、多様な平板表示装置に適用されうるということは、いうまでもない。
【0081】
本発明は図面に図示された一実施例を参考として説明したが、それらは例示的なものに過ぎず、当分野で当業者ならば、それらから多様な変形及び実施例の変形が可能であるという点を理解することができるであろう。
【産業上の利用可能性】
【0082】
本発明の平板表示装置の製造方法は、例えば、ディスプレイ関連の技術分野に効果的に適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0083】
【図1】本発明の望ましい一実施例による平板表示装置の製造方法により製造される平板表示装置用基板の平面図を有している。
【図2】図1のII−IIラインに沿って切り取った断面図である。
【図3】アニーリング工程での図1のII−IIラインに沿って切り取った断面図である。
【図4】図1の表示部の一例を図示した断面図である。
【図5】接合工程後切断するとき、第2基板の切断面に形成される突起の形状を模式的に図示した平面図である。
【図6】アニーリング工程後切断するとき、第2基板の切断面に形成される突起の形状を模式的に図示した平面図である。
【図7】アニーリング工程を行わずに、接合工程だけを行った後で直ちに切断したときの第2基板の切断面を表す写真である。
【図8】アニーリング工程を行わずに、接合工程だけを行った後で直ちに切断したとき、第2基板でクラックが伝播される現象を表す写真である。
【図9】アニーリング工程を行った後で切断したときの第2基板の切断面を表す写真である。
【図10】マルチヘッドを使用したときのレーザ照射順序を容易に説明するための概略図である。
【符号の説明】
【0084】
1 第1基板
2 第2基板
3 発光部
4 パッド部
5 ガラスフリット
6 レーザ照射器
11 絶縁層
12 TFTの活性層
12a チャンネル領域
12b ソース領域
12c ドレイン領域
13 ゲート絶縁膜
14 ゲート電極
15 層間絶縁膜
16a ソース電極
16b ドレイン電極
17 平坦化膜
18 画素定義膜
31 画素電極
32 有機発光膜
33 対向電極
34 パッシベーション膜

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1基板の一方の面に発光素子を備える発光部を複数個形成する段階と、
第2基板を準備する段階と、
前記第1基板または第2基板の一方の面にガラスフリットを形成する段階と、
前記第1基板と第2基板との間に、前記ガラスフリットが介在するように前記第1基板と第2基板とを対向配置する段階と、
第1強度のレーザを照射し、前記ガラスフリットを溶かし、前記ガラスフリットにより前記第1基板と第2基板とを接合する段階と、
第1強度のレーザが照射された領域に第2強度のレーザを照射し、前記第1基板または第2基板をアニーリングする段階とを含むことを特徴とする平板表示装置の製造方法。
【請求項2】
前記第2強度は、前記第1強度より低い強度であることを特徴とする請求項1に記載の平板表示装置の製造方法。
【請求項3】
前記第2強度は、前記第1強度の70ないし80%であることを特徴とする請求項2に記載の平板表示装置の製造方法。
【請求項4】
前記第2強度のレーザでアニーリングする段階は、前記第1強度のレーザで、前記ガラスフリットを溶かして接合する段階とは逆の順序で進められることを特徴とする請求項1に記載の平板表示装置の製造方法。
【請求項5】
前記発光部は、第1方向にm個、第2方向にn個配列され、
前記第1強度のレーザで前記ガラスフリットを溶かして接合する段階は、第1方向に進められ、
前記第2強度のレーザでアニーリングする段階は、第1方向の逆方向に進められることを特徴とする請求項1に記載の平板表示装置の製造方法。
【請求項6】
前記発光部は、第1方向にm個、第2方向にn個配列され、
前記第1強度のレーザで、前記ガラスフリットを溶かして接合する段階は、第2方向にまず進行した後、第1方向に進められる順序を反復的に行うことであり、
前記第2強度のレーザでアニーリングする段階は、第2方向にまず進められた後、第1方向の逆方向に進められる順序を反復的に行うことを特徴とする請求項1に記載の平板表示装置の製造方法。
【請求項7】
前記第1強度のレーザで前記ガラスフリットを溶かして接合する段階、及び前記第2強度のレーザでアニーリングする段階は、それぞれ一回に二つ以上の発光部に対して進められることを特徴とする請求項1に記載の平板表示装置の製造方法。
【請求項8】
前記発光部は、第1方向にm個、第2方向にn個配列され、
前記第1強度のレーザで前記ガラスフリットを溶かして接合する段階は、第1方向に沿った1列の発光部に対して進められた後、第2方向に沿って次の1列の発光部に対して進められることであり、
前記第2強度のレーザでアニーリングする段階は、前記第1強度のレーザで前記ガラスフリットを溶かして接合する段階の逆の順序で進められることを特徴とする請求項7に記載の平板表示装置の製造方法。
【請求項9】
前記第1強度のレーザで接合する段階後に、
前記第1基板及び第2基板を180°回転させる段階をさらに含むことを特徴とする請求項1に記載の平板表示装置の製造方法。
【請求項10】
前記第1強度のレーザで接合する段階と、前記第2強度のレーザでアニーリングする段階とで、レーザを照射するレーザ照射器の進行方向が同じであることを特徴とする請求項9に記載の平板表示装置の製造方法。
【請求項11】
前記第1強度または第2強度のレーザは、前記第1基板側から照射されることを特徴とする請求項1に記載の平板表示装置の製造方法。
【請求項12】
前記第1強度または第2強度のレーザは、前記第2基板側から照射されることを特徴とする請求項1に記載の平板表示装置の製造方法。
【請求項13】
前記第1強度または第2強度のレーザは、前記第1基板及び第2基板の両側から照射されることを特徴とする請求項1に記載の平板表示装置の製造方法。
【請求項14】
前記アニーリング段階後に、前記第1基板または第2基板を、前記各発光部別に切断する段階をさらに含むことを特徴とする請求項1に記載の平板表示装置の製造方法。
【請求項15】
前記発光素子は、有機電界発光素子であることを特徴とする請求項1に記載の平板表示装置の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図10】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2008−170926(P2008−170926A)
【公開日】平成20年7月24日(2008.7.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−92396(P2007−92396)
【出願日】平成19年3月30日(2007.3.30)
【出願人】(590002817)三星エスディアイ株式会社 (2,784)
【Fターム(参考)】