説明

平版印刷版の製造方法

a)(i)親水性表面を有するかまたは親水性層が付与されている支持体、
(ii)光重合可能層および、場合により、光重合可能層と支持体との間の中間層を含んでなる、該支持体上のコーティングを含んでなり、該光重合可能層が重合可能化合物、重合開始剤および結合剤を含んでなる平版印刷版前駆体を準備し、b)該コーティングを版セッター内で像通りに露光し、c)前駆体を予備加熱装置内で段階(b)後の10分間以内の期間内に加熱し、d)前駆体を少なくとも1つのゴム引き装置を含んでなるゴム引き台内で処理し、それによりゴム溶液が前駆体に適用される段階を含んでなり、それにより単一段階で光重合可能層の露光されていない領域を支持体から除去しそして版をゴム引きする、平版印刷版の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は、ネガ−作用性(negative−working)の光重合体印刷版前駆体を像通りに露光し、予備加熱装置内で像通りの露光後の10分間未満の期間内に加熱しそしてゴム引き台内でゴム溶液で処理し、それにより単一段階で版を現像しそしてゴム引きする、平版印刷版の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
平版印刷では、いわゆる印刷マスター、例えば印刷版、が回転印刷機のシリンダー上に設置される。マスターは平版像をその表面上に担持しそしてインキを該像に適用しそして次にインキをマスターから典型的には紙である受容体材料上に移すことにより印刷されたコピーが得られる。従来のいわゆる「湿潤」平版印刷では、インキ並びに水性湿し溶液(湿し液とも称する)が親油性(または疎水性、すなわちインキ−受容性、水−反撥性)領域並びに親水性(または疎油性、すなわち水−受容性、インキ−反撥性)領域よりなる平版像に供給される。いわゆる「ドリオグラフィー」印刷では、平版像はインキ−受容性およびインキ−不粘着性(インキ−反撥性)領域よりなりそしてドリオグラフィー印刷中にインキだけがマスターに供給される。
【0003】
印刷マスターは一般的にいわゆるコンピューター−ツウ−フィルム(computer−to−film)(CtF)方法により得られ、そこでは例えば活字書体選択、走査、色分離、スクリーニング、トラッピング、レイアウトおよび組付けの如き種々の印刷前段階がデジタル方式で行われそして各色選択が像−セッターを用いて製版用フィルムに転写される。処理後に、フィルムは版前駆体と称する像形成材料の露光用マスクとして使用することができそして版処理後に、マスターとして使用できる印刷版が得られる。1995年頃以来、いわゆる「コンピューター−ツウ−プレート(computer−to−plate)」(CtP)方法が多くの関心を得てきた。「ダイレクト−ツウ−プレート(direct−to−plate)」とも称するこの方法は、デジタル文書がいわゆる版−セッターにより印刷版前駆体に直接転写されるため、フィルムの作製を回避する。CtP用の印刷版前駆体はしばしばデジタル版と称する。
【0004】
デジタル版はおおまかに3つの範疇:(i)銀塩拡散転写機構に従い作動する銀版、(ii)露光で硬化する光重合可能な組成物を含有する光重合体版、および(iii)像形成機構が熱によりまたは光から熱への(light−to−heat)転換により引き起こされるサーマル版、に分類できる。サーマル版は主として、830nmまたは1064nmで発光する赤外レーザー用に感光される。光重合体は青色、緑色もしくは赤色光線(すなわち450〜750nmの間の波長範囲)用に、紫色光線(すなわち350〜450nmの間の波長範囲)用にまたは赤外光線(すなわち750〜1500nmの間の波長範囲)用に感光されうる。レーザー源が、対応するレーザー波長に感光される印刷版前駆体を露光するために、次第に使用されてきた。典型的には、Arレーザー(488nm)またはFD−YAGレーザー(532nm)が感可視光線性光重合体版を露光するために使用されうる。元来はDVDによるデータ貯蔵用に開発された低価格の青色または紫色レーザーダイオードの大規模な入手性が、より短い波長で作動する版−セッターの製造を可能にした。より具体的には、350〜450nmで発光する半導体レーザーがInGaN材料を用いて実現された。約830nmで発光する赤外レーザーまたは約1060nmで発光するNd−YAGレーザーを使用することもできる。
【0005】
典型的には、光重合体版前駆体は支持体、光重合可能コーティングおよびオーバーコートを含んでなる。光重合可能コーティングは重合可能化合物、重合開始剤および結合剤を含んでなり、そしてオーバーコートは一般的にコーティング内の酸素の浸透を遮断するためにポリビニルアルコール結合剤を含んでなる。像通りの露光で、開始剤により生成したフリーラジカルが酸素により捕獲されずそして重合可能化合物の架橋結合および/または重合を開始させて露光された領域の硬化またはキュアリングをもたらしうる。露光された前駆体は一般的にはpH>10を有するアルカリ性現像剤の中で処理され、それにより露光されなかった領域におけるオーバーコートおよび光重合可能コーティングが現像剤溶液中に可溶化される。特許文献1は像通りの露光後にオーバーコートが予備洗浄段階で水で除去されてアルカリ性現像溶液中のスラジの生成を減少させそしてそれにより非−像部分における汚染が防止されるそのような平版印刷版の製造方法を開示している。
【0006】
最近では、ほとんどの商業用平版は、版を例えば酸化、指紋、脂肪、油もしくは塵による汚染からまたは例えば版の取扱い中の引っ掻きによる損傷から保護するために、露光された版が現像された後に且つそれが印刷機に置かれる前に、追加のゴム引き工程を必要とする。そのような追加のゴム引き段階は、それが時間のかかる段階であり且つ追加のゴム引き台を必要とするため、最終使用者にとっては不便である。
【0007】
特許文献2はアルカリ性−現像可能な平版印刷版前駆体として有用な像形成可能要素の処理法を開示し、ここで該要素は特定の構造を有する水溶性ポリヒドロキシ化合物を含んでなる水性アルカリ性現像−ゴム引き溶液を用いて現像されそしてゴム引きされる。
【0008】
特許文献3は加熱時に凝固する疎水性熱可塑性重合体粒子のコーティングを含んでなる像通りに加熱された前駆体をゴム溶液で現像する感熱性平版印刷版の製造方法を開示している。このタイプの印刷版の実際の態様はアグファ(Agfa)により商品名Azuraで導入された。
【0009】
特許文献4、特許文献5、特許文献6、特許文献7、特許文献8、特許文献9、特許文献10、特許文献11および特許文献12には、像通りの露光後に光重合体版が印刷機上に設置されそして印刷機上でインキおよび湿し水を適用することにより処理されて露光されなかった領域を支持体から除去する平版印刷版の製造方法が開示されている。特許文献13および特許文献14も光重合可能層を含んでなる版を印刷機上処理で湿し水およびインキを用いてまたは非−アルカリ性水性現像剤を用いて処理できる方法を開示している。印刷機上処理の現像可能性を改良するためおよび印刷工程における版の耐性を改良するために、付着促進化合物を印刷版前駆体に加えることもできる。典型的には、これらの化合物はエチレン性不飽和結合および支持体の表面に吸着可能な官能基を有する。他の化合物および重合体を付着促進化合物として使用することができる。特許文献15、特許文献16、特許文献17、特許文献18、特許文献19、特許文献20、特許文献21、特許文献22および特許文献23に開示されているように化合物は光重合可能層内にまたは支持体と光重合可能層との間の中間層内に存在しうる。
【0010】
そのような光重合体印刷版の印刷機上処理に伴う第一の問題は日光安定性の欠如であり、すなわち像は処理前に安定でなくそして、その結果として、露光された版は露光後短時間内に処理する必要がある。しかしながら、印刷機上処理は印刷作業中に可能でないため、最終使用者は露光された版を印刷機上に設置しそして処理できる前にその前の印刷作業が完了するまで待たねばならない。その結果、未処理版が周囲光線により影響されることを避けるために、次の印刷作業用の版の露光はその前の印刷作業の完了直前まで遅らせねばならない。或いは、露光された版をセーフライト条件下に保たねばならないが、これも例えば感紫色性および感赤外性の光重合体版に通常伴われる使用の容易さおよび簡便さを減ずる。
【0011】
印刷機上処理可能な光重合体版に関する先行技術における未解決のままの第二の問題は露光と処理との間の可視像の欠如である。着色剤を感光性コーティングに加えて処理によるコーティングの露光されなかった領域の除去後に可視像を得ることは知られているが、これは像通りの露光直後には露光された版を露光されなかった版から区別することができず、可視像は印刷機上処理後にのみ出現するため、露光後しか像品質を検査できなくする。
さらに、印刷機上処理可能な版は通常は着色剤を含有しない。なぜならコーティングの非−印刷領域の印刷機上除去が湿し溶液および/またはインキの汚染を引き起こすことがあり、そして着色剤による汚染が消える前に印刷される許容できないコピー数をもたらすことがあるからである。
【0012】
湿し水およびインキを用いる印刷機上処理に伴う第三の問題は露光されなかった領域の不充分な清掃性である。
【0013】
2005年5月18日に出願された未公開の特許出願である特許文献24には、像通りに露光された前駆体がゴム引き溶液で現像される平版印刷版の製造方法が開示されている。
【特許文献1】米国特許第2004/0131974号明細書
【特許文献2】国際公開第02/101469号パンフレット
【特許文献3】欧州特許第1342568号明細書
【特許文献4】米国特許第6,027,857号明細書
【特許文献5】米国特許第6,171,735号明細書
【特許文献6】米国特許第6,420,089号明細書
【特許文献7】米国特許第6,071,675号明細書
【特許文献8】米国特許第6,245,481号明細書
【特許文献9】米国特許第6,387,595号明細書
【特許文献10】米国特許第6,482,571号明細書
【特許文献11】米国特許第6,576,401号明細書
【特許文献12】米国特許第6,548,222号明細書
【特許文献13】米国特許第2003/16577号明細書
【特許文献14】米国特許第2004/13968号明細書
【特許文献15】欧州特許第851299号明細書
【特許文献16】欧州特許第1091251号明細書
【特許文献17】米国特許第2004/214105号明細書
【特許文献18】欧州特許第1491356号明細書
【特許文献19】米国特許第2005/39620号明細書
【特許文献20】欧州特許第1495866号明細書
【特許文献21】欧州特許第1500498号明細書
【特許文献22】欧州特許第1520694号明細書
【特許文献23】欧州特許第1557262号明細書
【特許文献24】PCT/EP第2005/052298号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明の目的は光重合体版前駆体により平版印刷版を製造する方法を提供することであり、それは使用者により処理段階を必要とせず、且つ、印刷機上への設置前の露光された版を限定されていない時間にわたり周囲光線内に保ちうる方法として認識される。この目的は、像通りに露光された版前駆体を予備加熱装置内で像通りの露光後の10分間未満の期間内に加熱しそして少なくとも1つのゴム引き装置を含んでなるゴム引き台内でゴム溶
液で処理しそれにより単一段階で版を現像しそしてゴム引きするという具体的な特徴を有する請求項1で定義された方法により実現される。版は現像されそしてゴム引きされるため、平版像はもはや周囲日光により影響されえない。対照的に、日光へのさらなる露光は露光された領域の重合度を増加させるだけであり、すなわち像を劣化させるよりむしろ強化させるであろう。さらに、本発明者は前駆体を予備加熱装置内で像通りの露光後の10分間未満の期間内に加熱することにより潜像の安定性が改良されて高解像度の像の再現をもたらすことに気付いた。
【0015】
本発明の別の目的は光重合体版前駆体により平版印刷版を製造する方法を提供することであり、それは使用者による処理段階を必要とせず且つ印刷機上への設置前に限定されていない時間にわたり周囲光線内に保つことができそして印刷機上への版の設置前に可視像が与えられる方法として認識される。この目的は着色剤を光重合体版のコーティングに加えることにより実現される。コーティングの非−印刷領域はゴム引き装置内で除去されるため、印刷作業の開始中の湿し溶液またはインキの汚染の危険性はない。
【0016】
発明の他の具体的な態様は従属請求項に定義される。
【課題を解決するための手段】
【0017】
発明の詳細な記述
本発明によると、
a)(i)親水性表面を有するかまたは親水性層が備えられている支持体、
(ii)光重合可能層および、場合により、光重合可能層と支持体との間の中間層を含ん
でなる、該支持体上のコーティング
を含んでなり、該光重合可能層が重合可能化合物、重合開始剤および結合剤を含んでなる平版印刷版前駆体を準備し、
b)該コーティングを版セッター内で像通りに露光し、
c)前駆体を予備加熱装置内で段階(b)後の10分間未満の期間内に加熱し、
d)前駆体を少なくとも1つのゴム引き装置を含んでなるゴム引き台内で処理し、それによりゴム溶液が前駆体に適用される
段階を含んでなり、それにより単一段階で光重合可能層の露光されていない領域を支持体から除去しそして版をゴム引きする、平版印刷版の製造方法が提供される。
【0018】
本発明では、印刷版前駆体は版セッター、すなわち前駆体を像通りに露光するために適するレーザー露光装置、により印刷機外で像通りに露光する。本発明の方法で使用される前駆体はネガ−作用性であり、それにより露光された領域でコーティングが硬化する。ここでは、「硬化した」はコーティングがゴム引き溶液に関して不溶性または非−分散性になりそしてコーティングの重合および/または架橋結合によって達成されることを意味する。
【0019】
像形成後に、版前駆体は場合により、以下で「予備−加熱」または「予備加熱」とも称するように加熱されて、重合および/または架橋結合反応を促進または加速する。この予備加熱段階は10分間未満、好ましくは5分間未満、より好ましくは1分間未満、の期間内に行われ、最も好ましくは予備加熱は像通りの露光直後に、すなわち30秒間未満の期間内に、行われる。加熱を開始できるまでの時間制限はないが、前駆体は露光後にできるだけ速やかに、普通は数秒間後に、加熱され、版を予備加熱装置に移しそして加熱工程を開始する。この加熱段階において、前駆体は好ましくは約80℃〜150℃の温度においてそして好ましくは約5秒間〜1分間の滞在時間において加熱される。予備加熱装置には好ましくは例えばIR−ランプ、UV−ランプ、加熱された空気、加熱された金属ロールなどの如き加熱部品が装備される。
【0020】
予備加熱段階に引き続き、版前駆体は少なくとも1個のゴム引き装置、好ましくは2個のゴム引き装置、すなわち第一および第二のゴム引き装置、を含んでなるゴム引き台の中で処理され、すなわち現像されそしてゴム引きされる。1個もしくは複数のゴム引き装置の中で、ゴム溶液が前駆体のコーティングに適用され、それにより光重合可能層の露光されなかった領域が支持体から除去されそしてそれにより単一段階で露光されなかった領域で支持体の親水性表面がゴムの吸着により保護される。前駆体が最初に第一のゴム引き装置内でそして引き続き第二のゴム引き装置内でゴム溶液で処理される時に、それにより第二のゴム引き装置のゴム溶液の汚染が減じられ、それにより第二のゴム引き装置のゴム溶液の粘度が減じられるかまたは抑制されそして第二のゴム引き装置内のスラジ生成が減じられるかまたは抑制されるという追加の利点が得られる。これが第二のゴム引き装置のゴム溶液の改良された寿命をもたらし、それによりこのゴム溶液は、場合により再生(例えば濾過)および/または補充溶液の添加と組み合わせて、より多い数の版を現像しそしてゴム引きするために使用することができ、これは費用の節約であり且つ環境に優しい。
【0021】
ゴム溶液を用いる現像は、露光されなかった領域において版上に残存するゴム引き剤のために、露光されなかった領域において支持体の表面を保護するための追加のゴム引き段階が必要ないという追加の利点を有する。その結果、前駆体は単一段階で処理およびゴム引きされそして版上の得られた平版像は周囲日光によりまたは汚染により影響されないであろう。
【0022】
印刷段階において、版は印刷機の版シリンダーの上に設置されそして印刷工程が開始される。
【0023】
ゴム溶液
ゴム溶液は典型的には、印刷版の平版像を例えば酸化、指紋、脂肪、油もしくは塵による汚染からまたは例えば版の取扱い中の引っ掻きによる損傷から保護することが可能な1種もしくはそれ以上の表面保護化合物を含んでなる水性液体である。そのような化合物の適当な例はフィルム−形成性親水性重合体または界面活性剤である。ゴム溶液を用いる処理後に版上に残存する層は好ましくは0.005〜20g/mの間、より好ましくは0.010〜10g/mの間、最も好ましくは0.020〜5g/mの間、の表面保護化合物を含んでなる。
【0024】
この記述では、ゴム溶液中に存在する化合物の全ての濃度は、断らない限り、調整済みゴム溶液に関する重量百分率(重量%または重量/重量%)として表示される。ゴム溶液は通常は濃縮溶液として供給することができ、それは最終使用者により使用前に供給業者の指示に従い水で希釈されて調整済みゴム溶液にされ、一般的には1部のゴムが1部〜10部の水で希釈される。
【0025】
ゴム溶液中の保護化合物としての使用に好ましい重合体は、アラビアゴム、プルラン、セルロース誘導体、例えばカルボキシメチルセルロース、カルボキシエチルセルロースもしくはメチルセルロース、(シクロ)デキストリン、ポリ(ビニルアルコール)、ポリ(ビニルピロリドン)、多糖、アクリル酸、メタクリル酸もしくはアクリルアミドのホモ−および共重合体、ビニルメチルエーテルおよび無水マレイン酸の共重合体、酢酸ビニルおよび無水マレイン酸の共重合体またはスチレンおよび無水マレイン酸の共重合体である。非常に好ましい重合体は、カルボン酸、スルホン酸もしくはホスホン酸基を含有する単量体またはそれらの塩類、例えば(メタ)アクリル酸、酢酸ビニル、スチレンスルホン酸、ビニルスルホン酸、ビニルホスホン酸またはアクリルアミドプロパンスルホン酸、のホモ−および共重合体である。
【0026】
表面保護剤としての使用のための界面活性剤の例はアニオン系または非イオン系界面活
性剤を包含する。コーティングされた層の表面性質を改良するために、ゴム溶液は表面保護剤としての1種もしくはそれ以上の上記の親水性重合体並びに、その上に、1種もしくはそれ以上の界面活性剤も含んでなりうる。ゴム溶液の表面張力は好ましくは20〜50mN/mである。
【0027】
ゴム溶液は好ましくはアニオン系界面活性剤、より好ましくはアニオン基がスルホン酸基であるアニオン系界面活性剤、を含んでなる。
【0028】
アニオン系界面活性剤の例は、アリフェート類(aliphates)、アビエテート類(abietates)、ヒドロキシアルカンスルホネート類、アルカンスルホネート類、ジアルキルスルホスクシネート類、直鎖状アルキルベンゼンスルホネート類、分枝鎖状アルキルベンゼンスルホネート類、アルキルナフタレンスルホネート類、アルキルフェノキシポリオキシエチレンプロピルスルホネート類、ポリオキシエチレンアルキルスルホフェニルエーテル類の塩類、N−メチル−N−オレイルアミノエタンスルホン酸ナトリウム、N−アルキルスルホ琥珀酸モノアミド二ナトリウム、石油スルホネート類、硫酸化されたひまし油、硫酸化された牛脂油、脂肪族アルキルエステル類の硫酸エステル類の塩類、アルキル硫酸エステル類の塩類、ポリオキシエチレンアルキルエーテル類の硫酸エステル類、脂肪族モノグリセリド類の硫酸エステル類の塩類、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル類の硫酸エステル類の塩類、ポリオキシエチレンスチリルフェニルエーテル類の硫酸エステル類の塩類、アルキル燐酸エステル類の塩類、ポリオキシエチレンアルキルエーテル類の燐酸エステル類の塩類、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル類の燐酸エステル類の塩類、スチレン無水マレイン酸共重合体の部分的に鹸化された化合物、オレフィン−無水マレイン酸共重合体の部分的に鹸化された化合物、およびナフタレンスルホネートホルマリン縮合体を包含する。これらのアニオン系界面活性剤の中で、ジアルキルスルホスクシネート類、アルキル硫酸エステル類の塩類およびアルキルナフタレンスルホネート類が特に好ましい。
【0029】
適当なアニオン系界面活性剤の具体例は、ドデシルフェノキシベンゼンジスルホン酸ナトリウム、アルキル化されたナフタレンスルホネートのナトリウム塩、メチレン−ジナフタレン−ジスルホン酸二ナトリウム、ドデシル−ベンゼンスルホン酸ナトリウム、スルホン化されたアルキル−ジフェニルオキシド、ペルフルオロアルキルスルホン酸アンモニウムまたはカリウムおよびジオクチル−スルホ琥珀酸ナトリウムを包含する。
【0030】
非イオン系界面活性剤の適当な例は、ポリオキシエチレンアルキルエーテル類、アリール基がフェニル基、ナフチル基もしくは芳香族複素環式基でありうるポリオキシエチレンアルキルアリールエーテル類、ポリオキシエチレンポリスチリルフェニルエーテル類、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテル類、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンブロック重合体、グリセリン脂肪族酸類の部分的エステル類、ソルビタン脂肪族酸の部分的エステル類、ペンタエリトリトール脂肪族酸の部分的エステル類、プロピレングリコールモノ脂肪族エステル類、スクロース脂肪族酸類の部分的エステル類、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪族酸の部分的エステル類、ポリオキシエチレンソルビトール脂肪族酸類の部分的エステル類、ポリエチレングリコール脂肪族エステル類、ポリ−グリセリン脂肪族酸類の部分的エステル類、ポリオキシエチレン化されたひまし油類、ポリオキシエチレングリセリン脂肪族酸類の部分的エステル類、脂肪族ジエタノールアミド類、N,N−ビス−2−ヒドロキシアルキルアミン類、ポリオキシエチレンアルキルアミン類、トリエタノールアミン脂肪族エステル類、およびトリアルキルアミンオキシド類を包含する。これらの非イオン系界面活性剤の中で、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル類、ポリオキシエチレンアルキルナフチルエーテル類およびポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレンブロック重合体が特に好ましい。さらに、弗素性および珪素性のアニオン系および非イオン系界面活性剤も同様に使用できる。
【0031】
2種もしくはそれ以上の上記界面活性剤を組み合わせて使用することができる。例えば、2種もしくはそれ以上の異なるアニオン系界面活性剤の組み合わせまたはアニオン系界面活性剤および非イオン系界面活性剤の組み合わせが好ましいこともある。そのような界面活性剤の量は具体的に限定されないが好ましくは0.01〜30重量%、より好ましくは0.05〜20重量%である。
【0032】
本発明によると、ゴム溶液は好ましくは3〜9の間、より好ましくは4.5〜8.5の間、最も好ましくは5〜7の間、のpH−値を有する。ゴム溶液のpHは一般的には、0.01〜15重量%、好ましくは0.02〜10重量%、の量の鉱酸、有機酸または無機塩で調節される。鉱酸類の例は、硝酸、硫酸、燐酸およびメタ燐酸を包含する。特に有機酸類がpH調節剤としてそして減感剤として使用される。有機酸類の例は、カルボン酸類、スルホン酸類、ホスホン酸類またはそれらの塩類、例えば琥珀酸塩類、燐酸塩類、ホスホン酸塩類、硫酸塩類およびスルホン酸塩類、を包含する。有機酸の具体例は、クエン酸、酢酸、シュウ酸、マロン酸、p−トルエンスルホン酸、酒石酸、リンゴ酸、乳酸、レブリン酸、フィチン酸および有機ホスホン酸を包含する。
【0033】
ゴム溶液は好ましくは無機塩をさらに含んでなる。無機塩の例は、硝酸マグネシウム、一塩基性燐酸ナトリウム、二塩基性燐酸ナトリウム、硫酸ニッケル、ヘキサメタ燐酸ナトリウムおよびトリポリ燐酸ナトリウムを包含する。燐酸二水素アルカリ−金属塩、例えばKHPOまたはNaHPO、が最も好ましい。他の無機塩類、例えば硫酸マグネシウムまたは硝酸亜鉛、を腐食抑制剤として使用することができる。鉱酸、有機酸または無機塩は単独でまたはそれらの1種もしくはそれ以上と組み合わせて使用できる。
【0034】
本発明の別の態様によると、版の処理における現像剤としてのゴム溶液は好ましくはアニオン系界面活性剤および無機塩の混合物を含んでなる。この混合物ではアニオン系界面活性剤は好ましくはスルホン酸基を有するアニオン系界面活性剤、より好ましくはモノ−もしくはジ−アルキル置換されたジフェニルエーテル−スルホン酸のアルカリ−金属塩、であり、そして無機塩は好ましくは一もしくは二塩基性燐酸塩、より好ましくは燐酸二水素アルカリ−金属塩、最も好ましくはKHPOもしくはNaHPO、である。
【0035】
本発明の別の態様によると、アニオン系界面活性剤および無機塩の混合物を含んでなるゴム溶液は好ましくは3〜9の間、より好ましくは4〜8の間、最も好ましくは5〜7の間、のpH−値を有する。
【0036】
前記成分の他に、湿潤剤、例えばエチレングリコール、プロピレングリコール、トリエチレングリコール、ブチレングリコール、ヘキシレングリコール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、グリセリン、トリメチロールプロパンおよびジグリセリン、もゴム溶液中に存在しうる。湿潤剤は単独でまたはそれらの1種もしくはそれ以上と組み合わせて使用できる。一般的に、前記湿潤剤は好ましくは1〜25重量%の量で使用される。
【0037】
さらに、キレート化合物もゴム溶液中に存在しうる。希釈水の中に含有されるカルシウムイオンおよび他の不純物は印刷に悪影響を与えそしてその結果として印刷された物体の汚染を引き起こしうる。この問題はキレート化合物を希釈水に加えることにより排除できる。そのようなキレート化合物の好ましい例は有機ホスホン酸類またはホスホノアルカントリカルボン酸類を包含する。具体例は、エチレンジアミン四酢酸、ジエチレントリアミン五酢酸、トリエチレンテトラミン六酢酸、ヒドロキシエチルエチレンジアミン三酢酸、ニトリロ三酢酸、1−ヒドロキシエタン−1,1−ジホスホン酸およびアミノトリ(メチレンホスホン酸)のカリウムまたはナトリウム塩類である。これらのキレート化剤のナト
リウムまたはカリウム塩類の他に、有機アミン塩類が有用である。そのようなキレート化剤の好ましい添加量は希釈形態のゴム溶液に関して0.001〜5重量%である。
【0038】
さらに、防腐および発泡防止剤がゴム溶液中に存在しうる。そのような防腐剤の例は、フェノール、その誘導体、ホルマリン、イミダゾール誘導体、デヒドロ酢酸ナトリウム、4−イソチアゾリン−3−オン誘導体、ベンゾイソチアゾリン−3−オン、ベンズトリアゾール誘導体、アミジングアニジン誘導体、第四級アンモニウム塩類、ピリジン誘導体、キノリン誘導体、グアニジン誘導体、ジアジン、トリアゾール誘導体、オキサゾールおよびオキサジン誘導体を包含する。そのような防腐剤の好ましい添加量は、それが細菌、真菌、酵母などに安定的な影響を与えうるようなものである。細菌、真菌および酵母の種類によるが、それは好ましくは希釈形態のゴム溶液に関して0.01〜4重量%である。さらに、好ましくは、2種もしくはそれ以上の防腐剤を組み合わせて使用して種々の真菌および細菌に対する防腐効果を与えることもできる。発泡防止剤は好ましくはシリコーン発泡防止剤である。これらの発泡防止剤の中で、乳剤分散剤タイプまたは溶解タイプの発泡防止剤のいずれも使用できる。そのような発泡防止剤の適切な添加量は希釈形態のゴム溶液に関して0.001〜1.0重量%である。
【0039】
前記成分の他に、所望するならインキ受容剤がゴム溶液中に存在しうる。そのようなインキ受容剤の例は、テレビン油、キシレン、トルエン、低ヘプタン、溶媒ナフサ、ケロシン、ミネラルスピリット、炭化水素類、例えば約120℃〜約250℃の沸点を有する石油画分、フタル酸ジエステル類(例えば、フタル酸ジブチル、フタル酸ジヘプチル、フタル酸ジ−n−オクチル、フタル酸ジ(2−エチルヘキシル)、フタル酸ジノニル、フタル酸ジデシル、フタル酸ジラウリル、フタル酸ブチルベンジル)、脂肪族二塩基性エステル類(例えば、アジピン酸ジオクチル、アジピン酸ブチルグリコール、アゼライン酸ジオクチル、セバシン酸ジブチル、セバシン酸ジ(2−エチルヘキシル)、セバシン酸ジオクチル)、エポキシド化されたトリグリセリド類(例えば、エポキシ大豆油)、燐酸エステル類(例えば、燐酸トリクレシル、燐酸トリオクチル、燐酸トリスクロロエチル)並びに1気圧において15℃もしくはそれより低い固化点および300℃もしくはそれより高い沸点を有する可塑剤、例えば安息香酸類のエステル類(例えば、安息香酸ベンジル)を包含する。これらの溶媒と組み合わせて使用できる他の溶媒の例は、ケトン類(例えば、シクロヘキサノン)、ハロゲン化された炭化水素類(例えば、二塩化エチレン)、エチレングリコールエーテル類(例えば、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノフェニルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル)、脂肪族酸類(例えば、カプロン酸、エナント酸、カプリル酸、ペラルゴン酸、カプリン酸、ウンデシル酸、ラウリン酸、トリデシル酸、ミリスチン酸、ペンタデシル酸、パルミチン酸、ヘプタデシル酸、ステアリン酸、ノナデカン酸、アラキン酸、ベヘン酸、リグノセリン酸、セロチン酸、ヘプタコサン酸、モンタン酸、メリシン酸、ラクセル酸、イソ吉草酸)並びに不飽和脂肪族酸類(例えば、アクリル酸、クロトン酸、イソクロトン酸、ウンデシクリン酸、オレイン酸、エライジン酸、セトレイン酸、エルカ酸、ブテシジン酸、ソルビン酸、リノール酸、リノレン酸、アラキドン酸、プロピオル酸、ステアロル酸、鰮酸、タリリン酸、リカン酸)を包含する。好ましくは、それは50℃の温度において液体である脂肪族酸であり、より好ましくは5〜25個の炭素原子を有し、最も好ましくは8〜21個の炭素原子を有する。インキ受容剤は単独でまたはその1種もしくはそれ以上と組み合わせて使用できる。インキ受容剤は好ましくは0.01〜10重量%、より好ましくは0.05〜5重量%、の量で使用される。前記のインキ受容剤は水中油型乳剤として存在することができまたは可溶化剤を用いて溶解させることができる。
【0040】
例えば10〜10の間の分子量を有する例えばポリ(エチレンオキシド)またはポリビニルアルコールの如き粘度増加化合物を加えることにより、ゴム溶液の粘度を例えば1.7〜5mPa.sの間の値に調節することができる。そのような化合物は0.01〜
10g/lの濃度で存在しうる。
【0041】
ベーキングゴムは上記と同様な組成を有し、一般的なベーク温度において蒸発しない化合物がさらに好ましい。ベーキングゴム溶液またはベーキングゴム引き溶液は、ドデシルフェノキシベンゼンジスルホン酸ナトリウム、アルキル化されたナフタレンスルホン酸、スルホン化されたアルキルジフェニルオキシド、メチレンジナフタレンスルホン酸などの水溶液でありうる。他のゴム引き溶液は親水性重合体成分および有機酸成分を含有する。さらに他のベーキングゴム引き溶液はヒドロキシエチリデンジホスホン酸のカリウム塩を含有する。さらに他のベーキングゴム引き溶液はスルホスクシナメート化合物および燐酸を含有する。
【0042】
ベーキングゴム溶液と版との間の接触角度は好ましくは、少なくとも1種の界面活性剤を加えることにより下げられる。好ましい界面活性剤は非−イオン性ポリグリコール類および過弗素化された脂肪族ポリエステルアクリレート類である。
【0043】
別の態様では、ベーキングゴム引き溶液は(a)水、(b)少なくとも1種の親水性重合体および(c)少なくとも2個の官能基を含んでなりそしてベンゼンカルボン酸、ベンゼンスルホン酸、ベンゼンホスホン酸、アルカンホスホン酸およびそれらの水溶性塩類よりなる群から選択される水溶性有機酸類よりなる群から選択される少なくとも1種の成分を含んでなる。本発明に従い水溶液の中に溶解させる上記の化合物(b)および(c)は、それらが普遍的なベーキング温度において蒸発しないようなものである。形成される保護層はベーキング後でも水溶性のままであり、そして印刷版を損傷せずに容易に除去できる。
【0044】
成分(b)は特に以下の親水性重合体:N−ポリビニル−ピロリドン、ポリビニルメチルエーテル、エチレン単位および無水マレン酸単位を含有する共重合体、ビニルホスホン酸単位、ビニルメチルホスフィン酸単位および/またはアクリル酸単位を含有するホモ重合体または共重合体、並びに/或いはポリアルキレングリコール、例えばポリエチレングリコール、を含んでなる。
【0045】
成分(c)は特に、ベンゼンジスルホン酸類、3〜6個のカルボキシル基を有するベンゼンポリカルボン酸類、アルカン基中に1〜3個の炭素原子を有するアルカンジホスホン酸類、アルカン基中に5〜9個の炭素原子を有するカルボキシル基含有アルカンジホスホン酸類、および/またはこれらの酸類の水溶性塩類の1種(好ましくはアルカリ金属塩類もしくはアンモニウム塩類)を含んでなる。成分(c)の具体例は、ベンゼン−1,3−ジスルホン酸、ベンゼン−1,2,4−トリカルボン酸(トリメリト酸)、ベンゼン1,2,4,5−テトラカルボン酸(ピロメリト酸)、ベンゼンヘキサカルボン酸(メリト酸)、メタンジホスホン酸(ジホスホノメタン)、4,4−ジホスホノ−ヘプタン−1,7−ジオン酸(3,3−ジホスホン−ピメイン酸(3,3−diphosphone pimeic acid))、およびこれらの酸類のナトリウム塩類を包含する。他の態様では、使用のためのベーキングゴム引き溶液はヒドロキシ−ポリカルボン酸類、例えばクエン酸および/またはその塩類、少なくとも4個の炭素原子を有する水溶性アルカンジオール類、例えばヘキサンジオール−(1,6)並びに界面活性剤(好ましくはアニオン系または非−イオン系界面活性剤)、例えばアルキルアリールスルホネート類、アルキルフェノールエーテルスルホネート類および天然界面活性剤(例えば、サポニン(Saponin))をさらに含有しうる。適当なベーキングゴム溶液、それらの成分および濃度の具体例は例えば欧州特許出願公開第222297号明細書、欧州特許出願公開第1025992号明細書、独国特許出願公開第2626473号明細書および米国特許第4,786,581号明細書に見ることができる。
【0046】
支持体
特に好ましい平版支持体は電気化学的に研磨されそして陽極酸化されたアルミニウム支持体である。アルミニウム支持体の研磨および陽極酸化は既知である。研磨用に使用される酸は例えば硝酸または硫酸である。研磨用に使用される酸は好ましくは塩化水素を含んでなる。例えば塩化水素および酢酸の混合物も使用できる。電気化学的研磨と一方では陽極酸化パラメーター、例えば電極電圧、酸電解質の性質および濃度、または電力消費量とのそして他方ではRaおよび陽極重量(アルミニウム表面上で生成するAlのg/m)に関する得られた平版性質、との間の関係は既知である。種々の製造パラメーターとRaまたは陽極重量との間の関係に関するさらなる詳細は例えばATB Metallurgie Journal,volume 42 nr.1−2(2002)pag.69に発表されたF.R.Mayersによる論文“Management of Change in the Aluminium Printing Industry”に見ることができる。
【0047】
陽極酸化されたアルミニウム支持体はいわゆる後−陽極酸化処理にかけられてその表面の親水性質を改良することができる。例えば、アルミニウム支持体の表面を高温、例えば95℃、において珪酸ナトリウム溶液で処理することによりアルミニウム支持体を珪酸処理することができる。或いは、酸化アルミニウム表面を無機弗化物をさらに含有しうる燐酸塩溶液で処理することを含んでなる燐酸塩処理を適用できる。さらに、酸化アルミニウム表面をクエン酸またはクエン酸塩溶液ですすぐこともできる。この処理は室温において行うこともできまたは約30〜50℃のわずかに高められた温度において行うこともできる。さらに興味ある処理は炭酸水素塩溶液を用いる酸化アルミニウム表面のすすぎを包含する。さらに、酸化アルミニウム表面をポリビニルホスホン酸、ポリビニルメチルホスホン酸、ポリビニルアルコールの燐酸エステル類、ポリビニルスルホン酸、ポリビニルベンゼンスルホン酸、ポリビニルアルコールの硫酸エステル類、およびスルホン化された脂肪族アルデヒドとの反応により生成するポリビニルアルコール類のアセタール類で処理できる。
【0048】
別の有用な後−陽極酸化処理は、ポリアクリル酸または少なくとも30モル%のアクリル酸単量体単位を含んでなる重合体、例えばアライド・コロイズ(ALLIED COLLOIDS)から市販されているポリアクリル酸であるGLASCOL E15、の溶液を用いて行うことができる。
【0049】
研磨されそして陽極酸化された支持体はシート状材料、例えば板、であることができ、または円筒状部品、例えば印刷機の印刷シリンダーの周りを滑りうるスリーブ、でありうる。
【0050】
支持体は以下で「ベース層」と称する親水性層を備えることができる柔軟性支持体でもありうる。柔軟性支持体は例えば紙、プラスチックフィルムまたはアルミニウムである。プラスチックフィルムの好ましい例はポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリエチレンナフタレートフィルム、酢酸セルロースフィルム、ポリスチレンフィルム、ポリカーボネートフィルムなどである。プラスチックフィルム支持体は不透明または透明でありうる。
【0051】
ベース層は好ましくは硬化剤、例えばホルムアルデヒド、グリオキサル、ポリイソシアネートまたは加水分解されたテトラ−アルキルオルト珪酸エステル、で架橋結合された親水性結合剤から得られる架橋結合された親水性層である。後者が特に好ましい。親水性ベース層の厚さは0.2〜25μmの範囲内で変動することができそして好ましくは1〜10μmである。ベース層の好ましい態様のさらなる詳細は例えば欧州特許出願公開第1025992号明細書に見ることができる。
【0052】
コーティング
支持体上のコーティングは光重合可能組成物を含んでなる少なくとも1つの層を含んでなり、該層は以下では「光重合可能層」とも称する。該コーティングは水溶性または水−膨潤性重合体を含んでなる酸素−遮断層を該光重合可能層上にさらに含んでなることができ、該遮断層は以下では「頂部層」または「オーバーコート」または「オーバーコート層」とも称する。該コーティングは重合可能層と支持体との間に中間層をさらに含んでなりうる。
【0053】
コーティングの厚さ(thickness)は0.4〜10g/mの間、より好ましくは0.5〜5g/mの間、最も好ましくは0.6〜3g/mの間、にわたる。
【0054】
光重合可能層は、重合可能化合物、露光された領域内で該重合可能化合物を硬化させうる重合開始剤および結合剤を含んでなる。コーティングは付着促進化合物をさらに含んでなる。
【0055】
光重合可能層は、好ましくは0.4〜5.0g/mの間、より好ましくは0.5〜3.0g/mの間、最も好ましくは0.6〜2.2g/mの間、にわたるコーティング厚さ(thickness)を有する。
【0056】
付着促進化合物
付着促進化合物は、該支持体と相互作用可能な化合物、好ましくは付加−重合可能なエチレン系不飽和結合および支持体と相互作用可能な官能基、より好ましくは研磨されそして陽極酸化されたアルミニウム支持体と相互作用可能な官能基、を有する化合物、である。「相互作用」は、官能基および支持体の間で、共有結合、イオン結合、錯体結合、配位結合または水素−架橋結合であることができ且つ吸着工程、化学反応、酸−塩基反応、錯体−生成反応またはキレート基もしくは配位子の反応により形成されうる結合がそれにより形成されるような物理的および/または化学的反応または方法の各々のタイプであると理解される。付着促進化合物は光重合可能層内におよび/または光重合可能層と支持体との間の中間層内に存在する。
【0057】
付着促進化合物は、欧州特許出願公開第851299号明細書3頁22行〜4頁1行、欧州特許出願公開第1500498号明細書7頁[0023]章〜20頁[0052]章、欧州特許出願公開第1495866号明細書5頁[0030]章〜11頁[0049]章、欧州特許出願公開第1091251号明細書3頁[0014]章〜20頁[0018]章、および欧州特許出願公開第1520694号明細書6頁[0023]章〜19頁[0060]章に記載されているように少なくとも1種の低分子量化合物または重合体状化合物から選択することができる。好ましい化合物は、ホスフェートまたはホスホネート基をアルミニウム支持体上に吸着可能な官能基として含んでなりそして付加−重合可能なエチレン性二重結合反応基を含んでなる化合物、特に欧州特許出願公開第851299号明細書3頁22行〜4頁1行および欧州特許出願公開第1500498号明細書7頁[0023]章〜20頁[0052]章に記載されたもの、である。支持体上に吸着可能な官能基として以下で「トリアルコキシシラン」基とも称するトリ−アルキル−オキシシラン基を含んでなる化合物、特に欧州特許出願公開第1557262号明細書49頁[0279]章および欧州特許出願公開第1495866号明細書5頁[0030]章〜11頁[0049]章に記載されているような付加−重合可能なエチレン性二重結合反応基を有するシラン結合剤、も好ましく、ここでアルキルは好ましくはメチルまたはエチルであり、或いはトリアルキルオキシシラン基はシラノール基に少なくとも部分的に加水分解される。
【0058】
付着促進化合物は光重合可能層内に組成物の非−揮発性成分の1〜50重量%の間、好
ましくは3〜30重量%の間、より好ましくは5〜20重量%の間、にわたる量で存在しうる。
【0059】
付着促進化合物は中間層内に組成物の非−揮発性成分の少なくとも50重量%、好ましくは少なくとも80重量%、より好ましくは少なくとも90重量%、最も好ましくは100重量%、の量で存在しうる。
【0060】
場合により存在する中間層は0.001〜1.5g/mの間、より好ましくは0.003〜1.0g/mの間、最も好ましくは0.005〜0.7g/mの間、にわたるコーティング厚さ(thickness)を有する。
【0061】
重合可能化合物および重合開始剤
本発明の1つの態様によると、該重合可能な単量体またはオリゴマーは少なくとも1個のエポキシまたはビニルエーテル官能基を含んでなる単量体またはオリゴマーであり、そして該開始剤は露光時に、場合により増感剤の存在下で、遊離酸を発生しうるブロンステッド酸発生剤であり、以下で該開始剤は「カチオン系光開始剤」または「カチオン系開始剤」とも称する。
【0062】
適当な多官能性エポキシ単量体は、例えば、3,4−エポキシシクロヘキサンカルボン酸3,4−エポキシシクロヘキシルメチル、アジピン酸ビス−(3,4−エポキシシクロヘキシメチル)、二官能性ビスフェノールAエピクロロヒドリンエポキシ樹脂および多官能性エピクロロヒドリンテトラフェニロールエタンエポキシ樹脂を包含する。
【0063】
適当なカチオン系光開始剤は、例えば、ヘキサフルオロアンチモン酸トリアリールスルホニウム、ヘキサフルオロ燐酸トリアリールスルホニウム、ヘキサフルオロアンチモン酸ジアリールヨードニウム、およびハロアルキル置換されたs−トリアジンを包含する。ほとんどのカチオン系開始剤は、ブロンステッド酸を発生する他に、光または熱分解中にフリーラジカルも発生するため、それらはフリーラジカル開始剤でもあることが注目される。
【0064】
本発明のより好ましい態様によると、該重合可能な単量体またはオリゴマーは以下で「フリー−ラジカル重合可能単量体」とも称する少なくとも1個の末端エチレン基を有するエチレン性不飽和化合物であり、そして該開始剤は露光時に、場合により増感剤の存在下で、フリーラジカルを発生しうる化合物であり、以下で該開始剤は「フリーラジカル開始剤」とも称する。
【0065】
適当なフリー−ラジカル重合可能単量体は、例えば、多官能性(メタ)アクリレート単量体(例えば(エチレングリコール、トリメチロールプロパン、ペンタエリトリトール、エトキシル化されたエチレングリコールおよびエトキシル化されたトリメチロールプロパンの(メタ)アクリレートエステル類、多官能性のウレタン化された(メタ)アクリレート、およびエトキシル化された(メタ)アクリレート)並びにオリゴマー状のアミンジアクリレート類を包含する。(メタ)アクリル系単量体は他の二重結合またはエポキシド基を、(メタ)アクリレート基の他に、有することもできる。(メタ)アクリレート単量体は酸性官能基(例えばカルボン酸)または塩基性官能基(例えばアミン)も含有しうる。
【0066】
露光時に直接的にまたは増感剤の存在下でフリーラジカルを発生可能ないずれのフリーラジカル開始剤でも本発明のフリーラジカル開始剤として使用することができる。適当なフリーラジカル開始剤は、例えば、アセトフェノンの誘導体(例えば2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン、および2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルホリノプロパン−1−オン);ベンゾフェノン;ベンジル;ケトクマリン(例えば3−ベンゾイル−7−メトキシクマリンおよび7−メトキシクマリン);キサントン;チオキサントン;ベンゾインまたはアルキル−置換されたアントラキノン;オニウム塩類(例えばヘキサフルオロアンチモン酸ジアリールヨードニウム、ジアリールヨードニウムトリフラート、ヘキサフルオロアンチモン酸(4−(2−ヒドロキシテトラデシル−オキシ)−フェニル)フェニルヨードニウム、ヘキサフルオロ燐酸トリアリールスルホニウム、p−トルエンスルホン酸トリアリールスルホニウム、ヘキサフルオロアンチモン酸(3−フェニルプロパン−2−オニル)トリアリールホスホニウム、およびヘキサフルオロ燐酸N−エトキシ(2−メチル)ピリジニウム、並びに米国特許第5,955,238号明細書、第6,037,098号明細書、および第5,629,354号明細書に記載されたようなオニウム塩類);ホウ酸塩類(例えばトリフェニル(n−ブチル)ホウ酸テトラブチルアンモニウム、トリフェニル(n−ブチル)ホウ酸テトラエチルアンモニウム、テトラフェニルホウ酸ジフェニルヨードニウム、およびトリフェニル(n−ブチル)ホウ酸トリフェニルスルホニウム、並びに米国特許第6,232,038号明細書および第6,218,076号明細書に記載されたようなホウ酸塩類);ハロアルキル−置換されたs−トリアジン類(例えば2,4−ビス(トリクロロメチル)−6−(p−メトキシ−スチリル)−s−トリアジン、2,4−ビス(トリクロロメチル)−6−(4−メトキシ−ナフト−1−イル)−s−トリアジン、2,4−ビス(トリクロロメチル)−6−ピペロニル−s−トリアジン、および2,4−ビス(トリクロロメチル)−6−[(4−エトキシ−エチレンオキシ)−フェン−1−イル]−s−トリアジン、並びに米国特許第5,955,238号明細書、第6,037,098号明細書、第6,010,824号明細書および第5,629,354号明細書に記載されたようなs−トリアジン類);並びにチタノセン(ビス(エタ.9−2,4−シクロペンタジエン−1−イル)ビス[2,6−ジフルオロ−3−(1H−ピロール−1−イル)フェニル)チタン)を包含する。オニウム塩類、ホウ酸塩類、およびs−トリアジン類が好ましいフリーラジカル開始剤である。ジアリールヨードニウム塩類およびトリアリールスルホニウム塩類が好ましいオニウム塩類である。トリアリールアルキルホウ酸塩類が好ましいホウ酸塩類である。トリクロロメチル置換されたs−トリアジン類が好ましいs−トリアジン類である。
【0067】
既知の光重合開始剤を本発明の組成物内で使用することができ、本発明の好ましい態様では本発明に従う光重合可能組成物はヘキサアリール−ビスイミダゾール(HABI;トリアリール−イミダゾールの二量体)化合物を光重合開始剤として単独でまたは別の光開始剤と組み合わせて含んでなる。
【0068】
ヘキサアリールビスイミダゾール類の製造工程は独国特許第1470154号明細書に記載されておりそして光重合可能組成物中のそれらの使用は欧州特許第24629号明細書、欧州特許第107792号明細書、米国特許第4410621号明細書、欧州特許第215453号明細書および独国特許第3211312号明細書に提供されている。好ましい誘導体は例えば2,4,5,2’,4’,5’−ヘキサフェニルビスイミダゾール、2,2’−ビス(2−クロロフェニル)−4,5,4’,5’−テトラフェニルビスイミダゾール、2,2’−ビス(2−ブロモフェニル)−4,5,4’,5’−テトラフェニルビスイミダゾール、2,2’−ビス(2,4−ジクロロフェニル)−4,5,4’,5’−テトラフェニルビスイミダゾール、2,2’−ビス(2−クロロフェニル)−4,5,4’,5’−テトラキス(3−メトキシフェニル)ビスイミダゾール、2,2’−ビス(2−クロロフェニル)−4,5,4’,5’−テトラキス(3,4,5−トリメトキシフェニル)ビスイミダゾール、2,5,2’,5’−テトラキス(クロロフェニル)−4,4’−ビス(3,4−ジメトキシフェニル)ビスイミダゾール、2,2’−ビス(2,6−ジクロロフェニル)−4,5,4’,5’−テトラフェニルビスイミダゾール、2,2’−ビス(2−ニトロフェニル)−4,5,4’,5’−テトラフェニルビスイミダゾール、2,2’−ジ−o−トリル−4,5,4’,5’−テトラフェニルビスイミダゾール、2,2’−ビス(2−エトキシフェニル)−4,5,4’,5’−テトラフェニルビスイミダゾールおよび2,2’−ビス(2,6−ジフルオロフェニル)−4,5,4’,5’−テトラフェニルビスイミダゾールである。HABI光開始剤の量は典型的には光重合可能組成物の非揮発性成分の合計重量に関して、0.01〜30重量%、好ましくは0.5〜20重量%、にわたる。
【0069】
増感剤としての光学的明色化剤(optical brightener)および光開始剤としてのヘキサアリールビスイミダゾールの組み合わせにより本発明に関して非常に高い感度が得られうる。
【0070】
ヘキサアリールビスイミダゾール化合物以外の光開始剤の適当な種類は芳香族ケトン類、芳香族オニウム塩類、有機過酸化物、チオ化合物、ケトオキシムエステル化合物、ボレート化合物、アジニウム化合物、メタロセン化合物、活性エステル化合物および炭素−ハロゲン結合を有する化合物を包含するが、好ましくは組成物はホウ素を含まない光重合開始剤を含んでなりそして特に好ましくは光重合開始剤はホウ素化合物を含まない。本発明に適する光開始剤の多くの具体例は欧州特許出願公開第1091247号明細書に見ることができる。他の好ましい開始剤はトリハロメチルスルホン類である。
【0071】
好ましくはヘキサアリールビスイミダゾール化合物および/またはメタロセン化合物は単独でまたは他の適当な光開始剤と、特に芳香族ケトン類、芳香族オニウム塩類、有機過酸化物、チオ化合物、ケトオキシムエステル化合物、アジニウム化合物、活性エステル化合物または炭素ハロゲン結合を有する化合物と、組み合わせて使用される。
【0072】
本発明の好ましい態様では、ヘキサアリールビスイミダゾール化合物は本発明の光重合可能組成物中で使用される全ての光開始剤の50モル%より多く、好ましくは少なくとも80モル%、そして特に好ましくは少なくとも90モル%、にする。
【0073】
本発明の別の態様によると、該重合可能単量体またはオリゴマーは少なくとも1個のエポキシまたはビニルエーテル官能基を含んでなる単量体またはオリゴマーと少なくとも1個の末端エチレン性基を有する重合可能なエチレン性不飽和化合物との組み合わせであることができ、そして該開始剤はカチオン系開始剤およびフリー−ラジカル開始剤の組み合わせでありうる。少なくとも1個のエポキシまたはビニルエーテル官能基を含んでなる単量体またはオリゴマーおよび少なくとも1個の末端エチレン性基を有する重合可能なエチレン性不飽和化合物は同一化合物であることができ、ここで化合物はエチレン基およびエポキシまたはビニルエーテル基の両方を含有する。そのような化合物の例は、エポキシ官能性アクリル系単量体、例えばアクリル酸グリシジル、を包含する。フリーラジカル開始剤およびカチオン系開始剤は、化合物がフリーラジカルおよび遊離酸の両方を発生可能であるなら、同一化合物でありうる。そのような化合物の例は、増感剤の存在下でフリーラジカルおよび遊離酸の両方を発生可能である種々のオニウム塩類、例えばヘキサフルオロアンチモン酸ジアリールヨードニウムおよびs−トリアジン類、例えば2,4−ビス(トリクロロメチル)−6−[(4−エトキシエチレンオキシ)−フェン−1−イル]−s−トリアジン、を包含する。
【0074】
光重合可能層は多官能性単量体も含んでなりうる。この単量体はエチレン性不飽和基および/またはエポキシもしくはビニルエーテル基から選択される少なくとも2個の官能基を含有する。光重合体コーティング内での使用のための特定の多官能性単量体は米国特許第6,410,205号明細書、米国特許第5,049,479号明細書、欧州特許第1079276号明細書、欧州特許第1369232号明細書、欧州特許第1369231号明細書、欧州特許第1341040号明細書、米国特許第2003/0124460号明細書、欧州特許第1241002号明細書、欧州特許第1288720号明細書および引用された参考文献であるChemistry & Technology UV & EB formulation for coatings,inks & paints−Volume 2−Prepolymers and Reactive Diluents for UV and EB Curable Formulations by N.S.Allen,M.A.Johnson,P.K.T.Oldring,M.S.Salim−Edited by P.K.T.Oldring−1991−ISBN 0 947798102を包含する参考文献書籍に開示されている。ウレタン(メタ)アクリレート多官能性単量体が特に好ましく、それらは単独でまたは他の(メタ)アクリレート多官能性単量体と組み合わせて使用することができる。
【0075】
光重合可能層は共−開始剤(co−initiator)も含んでなりうる。典型的には、共−開始剤はフリーラジカル開始剤および/またはカチオン系開始剤と組み合わせて使用される。光重合体コーティング内での使用のための特定の共−開始剤は米国特許第6,410,205号明細書、米国特許第5,049,479号明細書、欧州特許第1079276号明細書、第1369232号明細書、欧州特許第1369231号明細書、欧州特許第1341040号明細書、米国特許第2003/0124460号明細書、欧州特許第1241002号明細書、欧州特許第1288720号明細書および引用された参考文献であるChemistry & Technology UV & EB formulation for coatings,inks & paints−Volume 3−Photoinitiators for Free Radical and Cationic Polymerisation by K.K.Dietliker−Edited by P.K.T.Oldring−1991−ISBN 0 947798161を包含する参考文献書籍に開示されている。
【0076】
光重合可能層は開始阻害剤も含んでなりうる。光重合体コーティング内での使用のための特定の開始阻害剤は米国特許第6,410,205号明細書、欧州特許第1288720号明細書および6/5/2004に出願された公開されていない特許出願である欧州特許出願公開第04101955号明細書に開示されている。
【0077】
光重合可能層の結合剤
光重合可能層は結合剤も含んでなりうる。結合剤は広範囲の有機重合体から選択できる。異なる結合剤の組成物も使用できる。有用な結合剤は例えば、塩素化されたポリアルキレン(特に塩素化されたポリエチレンおよび塩素化されたポリプロピレン)、ポリメタクリル酸アルキルエステル類またはアルケニルエステル類(特にポリ(メタ)アクリル酸メチル、ポリ(メタ)アクリル酸エチル、ポリ(メタ)アクリル酸ブチル、ポリ(メタ)アクリル酸イソブチル、ポリ(メタ)アクリル酸ヘキシル、ポリ(メタ)アクリル酸(2−エチルヘキシル)および(メタ)アクリル酸アルキルエステル類またはアルケニルエステル類と他の共重合可能な単量体との(特に(メタ)アクリロニトリル、塩化ビニル、塩化ビニリデン、スチレンおよび/またはブタジエンとの)ポリアルキル(メタ)アクリレート共重合体、ポリ塩化ビニル(PVC、塩化ビニル/(メタ)アクリロニトリル共重合体、ポリ塩化ビニリデン(PVDC)、塩化ビニリデン/(メタ)アクリロニトリル共重合体、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ビニルピロリドンまたはアルキル化されたビニルピロリドンの共重合体、ポリビニルカプロラクタム、ビニルカプロラクタムの共重合体、ポリ(メタ)アクリロニトリル、(メタ)アクリロニトリル/スチレン共重合体、(メタ)アクリルアミド/アルキル(メタ)アクリレート共重合体、(メタ)アクリロニトリル/ブタジエン/スチレン(ABS)三元共重合体、ポリスチレン、ポリ(α−メチルスチレン)、ポリアミド類、ポリウレタン類、ポリエステル類、メチルセルロース、エチルセルロース、アセチルセルロース、ヒドロキシ−(C−C−アルキル)セルロース、カルボキシメチルセルロース、ポリビニルホルマールおよびポリビニルブチラールを包含する。特に好ましい結合剤は、ビニルカプロラクタム、ビニルピロリドンまたはアルキル化されたビニルピロリドンを単量体単位として有する重合体である。アルキル化されたビニルピロリドン重合体は、アルファ−オレフィン類をビニルピロリドン重合体骨格上にグラフト化することにより、得られうる。そのような生成物の代表例はISPから市販されているAgrimer AL Graft重合体である。アルキル化基の長さはC〜C30に変動しうる。他の有用な結合剤は、カルボキシル基を含有する結合剤、特にα,β−不飽和カルボン酸類の単量体単位またはα,β−不飽和ジカルボン酸類(好ましくはアクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、ビニル酢酸、マレイン酸もしくはイタコン酸)の単量体単位を含有する共重合体、である。用語「共重合体」は本発明に関しては少なくとも2種の単量体の単位を含有する重合体として理解すべきであり、そのため三元共重合体およびそれより高級の混合重合体も含む。有用な共重合体の特定の例は、(メタ)アクリル酸の単位およびアルキル(メタ)アクリレート類、アリル(メタ)アクリレート類および/または(メタ)アクリロニトリルの単位を含有するもの並びにクロトン酸の単位およびアルキル(メタ)アクリレート類の単位を含有する共重合体並びに/または(メタ)アクリロニトリルおよびビニル酢酸/アルキル(メタ)アクリレート共重合体である。無水マレイン酸またはマレイン酸モノアルキルエステル類の単位を含有する単量体も適する。これらの中では、例えば、無水マレイン酸およびスチレン、不飽和エーテル類もしくはエステル類または不飽和脂肪族炭化水素類の単位を含有する共重合体並びにそのような共重合体から得られるエステル化生成物がある。別の適当な結合剤は、分子内無水ジカルボン酸類を用いるヒドロキシル−含有重合体の転化から得られうる生成物である。他の有用な結合剤は、酸水素原子を有する基が存在する重合体であり、それらの一部または全ては活性化されたイソシアネート類を用いて転化される。これらの重合体の例は、脂肪族もしくは芳香族のスルホニルイソシアネート類またはホスフィン酸イソシアネート類を用いるヒドロキシル−含有重合体の転化により得られる生成物である。脂肪族または芳香族のヒドロキシル基を有する重合体、例えばヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート類、アリルアルコール、ヒドロキシスチレンまたはビニルアルコールの単位を含有する共重合体、並びにエポキシ樹脂、もそれらが充分な数の遊離OH基を有するなら、適する。特に有用な結合剤および特に有用な反応性結合剤は欧州特許第1369232号明細書、欧州特許第1369231号明細書、欧州特許第1341040号明細書、米国特許第2003/0124460号明細書、欧州特許第1241002号明細書、欧州特許第1288720号明細書、米国特許第6,027,857号明細書、米国特許第6,171,735号明細書および米国特許第6,420,089号明細書に開示されている。
【0078】
結合剤として使用される有機重合体は600〜700000の間、好ましくは1000〜350000の間、の典型的な平均分子量Mを有する。10〜250、好ましくは20〜200、の間の酸価、または50〜750の間、好ましくは100〜500の間、のヒドロキシル価を有する重合体がさらに好ましい。1種もしくは複数の結合剤の量は、組成物の非−揮発性成分の合計重量に関して、一般的に10〜90重量%、好ましくは20〜80重量%、にわたる。
【0079】
これらの特に適する結合剤は酢酸ビニルおよびビニルアルコールの共重合体でもあり、好ましくはビニルアルコールを10〜98モル%、より好ましくは35〜95モル%の間、最も好ましくは40〜75モル%、のビニルアルコールの量で含んでなり、50〜65モル%のビニルアルコールで最良の結果が得られる。酢酸ビニルおよびビニルアルコールの共重合体の、DIN53401に規定された方法により測定されるエステル−値は好ましくは25〜700mgのKOH/gの間、より好ましくは50〜500mgのKOH/gの間、最も好ましくは100〜300mgのKOH/gの間、にわたる。酢酸ビニルおよびビニルアルコールの共重合体の粘度は4重量%水溶液に対して20℃においてDIN53105に規定された通りにして測定されそして粘度は好ましくは3〜60mPa.sの間、より好ましくは4〜30mPa.sの間、最も好ましくは5〜25mPa.sの間、にわたる。酢酸ビニルおよびビニルアルコールの共重合体の平均分子量Mは好ましくは5000〜500000g/モルの間、より好ましくは10000〜400000g/モルの間、最も好ましくは15000〜250000g/モルの間、にわたる。他の好ましい結合剤は欧州特許第152819B1号明細書2頁50行−4頁20行および欧州特許第1043627号明細書3頁[0013]章に開示されている。
【0080】
別の態様では、重合体状結合剤は疎水性骨格および例えば親水性ポリ(アルキレンオキシド)セグメントを包含する懸垂基を含んでなる。重合体状結合剤は疎水性骨格に結合された懸垂シアノ基も包含する。そのような結合剤の組み合わせも使用することができる。一般的には、重合体状結合剤は室温において固体でありそして典型的には非−弾性熱可塑性(non−elastomeric thermoplastic)である。重合体状結合剤は親水性および疎水性領域の両方を含んでなり、これは現像可能性を促進させることにより露光されたおよび露光されなかった領域の区別を高めるために重要であると思われる。一般的に、重合体状結合剤は約10,000〜250,000の範囲内の、より一般的には約25,000〜200,000の範囲内の、数平均分子量(M)により特徴づけられる。重合可能組成物は重合体状結合剤の別個の粒子を含んでなりうる。好ましくは、別個の粒子は重合可能組成物中に懸濁されている重合体状結合剤の粒子である。別個の粒子の存在は露光されなかった領域の現像可能性を促進させる傾向がある。この態様に従う重合体状結合剤の具体例は米国特許第6,899,994号明細書、第2004/0260050号明細書、米国特許第2005/0003285号明細書、米国特許第2005/0170286号明細書および米国特許第2005/0123853号明細書に記載されている。この態様の重合体状結合剤の他に、像形成可能層は場合により1種もしくはそれ以上の共−結合剤を含んでなりうる。典型的な共−結合剤は、水溶性または水−分散性重合体、例えば、セルロース誘導体、ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸、ポリ(メタ)アクリル酸、ポリビニルピロリドン、ポリラクチド、ポリビニルホスホン酸、合成共重合体、例えばアルコキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレートの共重合体、である。共−結合剤(co−binder)の具体例は、米国特許第2004/02600500号明細書、米国特許第2005/0003285号明細書および米国特許第2005/0123853号明細書に記載されている。この態様に従いそして米国特許第2004/0260050号明細書、米国特許第2005/0003285号明細書および米国特許第2005/0123853号明細書にさらに詳細に記載されている結合剤および場合により共−結合剤をその像形成可能層が含んでなる印刷版前駆体は場合により頂部コートおよび中間層を含んでなる。
【0081】
界面活性剤
種々の界面活性剤を光重合可能層内に加えてゴム溶液を用いる前駆体の現像可能性を与えるかまたは促進させうる。重合体状および小分子状の両方の界面活性剤を使用できる。非イオン系界面活性剤が好ましい。好ましい非イオン系界面活性剤は、1つもしくはそれ以上のポリエーテル(例えばポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、並びにエチレングリコールおよびプロピレングリコールの共重合体)セグメントを含有する重合体およびオリゴマー類である。好ましい非イオン系界面活性剤の例は、プロピレングリコールおよびエチレングリコールのブロック共重合体(プロピレンオキシドおよびエチレンオキシドのブロック共重合体とも称する);エトキシル化されたまたはプロポキシル化されたアクリレートオリゴマー類;並びにポリエトキシル化されたアルキルフェノール類およびポリエトキシル化された脂肪アルコール類である。非イオン系界面活性剤は好ましくはコーティングの0.1〜30重量%の間、より好ましくは0.5〜20%の間、そして最も好ましくは1〜15%の間、にわたる量で加えられる。
【0082】
増感剤
光硬化可能組成物は増感剤も含んでなりうる。非常に好ましい増感剤は、350nm〜450nmの間、好ましくは370nm〜420nmの間、より好ましくは390nm〜415nmの間、の吸収スペクトルを有する紫色光線吸収増感剤である。特に好ましい増感剤は、これらの特許出願に引用された参考文献を包含する欧州特許第1349006号
明細書[0007]〜[0009]章、22/09/2003に出願された欧州特許出願公開第3103499号明細書、および国際公開第2004/047930号パンフレットに開示されている。他の非常に好ましい増感剤は、750nm〜1300nmの間、好ましくは780nm〜1200nmの間、より好ましくは800nm〜1100nmの間、の吸収スペクトルを有する赤外光線吸収染料である。特に好ましい増感剤は、ヘプタメチンシアン染料、特に欧州特許第1359008号明細書[0030]〜[0032]章に開示された染料、である。他の好ましい増感剤は、450nm〜750nmの間の吸収スペクトルを有する青色、緑色または赤色光線吸収増感剤である。有用な増感剤は、米国特許第6,410,205号明細書、米国特許第5,049,479号明細書、欧州特許第1079276号明細書、欧州特許第1369232号明細書、欧州特許第1369231号明細書、欧州特許第1341040号明細書、米国特許第2003/0124460号明細書、欧州特許第1241002号明細書および欧州特許第1288720号明細書に開示された増感染料から選択することができる。
【0083】
着色剤
コーティングの光重合可能層または他の層は着色剤も含んでなりうる。着色剤は光重合可能層内にまたは光重合可能層の下もしくは上の別個の層内に存在しうる。ゴム溶液を用いる処理後に、着色剤の少なくとも一部は硬化したコーティング領域上に残り、そしてゴム処理中に露光されなかった領域において着色剤を含むコーティングを除去することにより可視像が支持体上に形成されうる。
【0084】
着色剤は染料または顔料でありうる。染料または顔料を含んでなる層が肉眼から見て着色される時には染料または顔料を着色剤として使用することができる。
【0085】
着色剤は顔料でありうる。種々のタイプの顔料、例えば有機顔料、無機顔料、カーボングラック、金属粉末顔料および蛍光顔料、を使用できる。有機顔料が好ましい。
【0086】
有機顔料の具体例は、キナクリドン顔料、キナクリドンキノン顔料、ジオキサジン顔料、フタロシアニン顔料、アントラピリミジン顔料、アンタンスロン顔料、インダンスロン顔料、フラバンスロン顔料、ペリーレン顔料、ジケトピロロピロール顔料、ペリノン顔料、キノフタロン顔料、アントラキノン顔料、チオインジゴ顔料、ベンズイミダゾロン顔料、イソインドリノン顔料、アゾメチン顔料、およびアゾ顔料を包含する。
【0087】
着色剤として使用可能な顔料の具体例は以下のものである(ここでC.I.はカラーインデックスの略語であり、青色着色された顔料は肉眼から見て青色に現れる顔料であると理解され、他の着色された顔料も同様な方法で理解すべきである):
−C.I.Pigment Blue 1、C.I.Pigment Blue 2、C.I.Pigment Blue 3、C.I.Pigment Blue 15:3、C.I.Pigment Blue 15:4、C.I.Pigment Blue 15:34、C.I.Pigment Blue 16、C.I.Pigment Blue 22、C.I.Pigment Blue 60など、並びにC.I.Vat Blue 4、C.I.Vat Blue 60などを包含する青色着色された顔料、
−C.I.Pigment Red 5、C.I.Pigment Red 7、C.I.Pigment Red 12、C.I.Pigment Red 48(Ca)、C.I.Pigment Red 48(Mn)、C.I.Pigment Red 57(Ca)、C.I.Pigment Red 57:1、C.I.Pigment Red 112、C.I.Pigment Red 122、C.I.Pigment Red 123、C.I.Pigment Red 168、C.I.Pigment Red 184、C.I.Pigment Red 202、およびC.I.Pigment Red 209を包含する赤色着色された顔料、
−C.I.Pigment Yellow 1、C.I.Pigment Yellow
2、C.I.Pigment Yellow 3、C.I.Pigment Yellow 12、C.I.Pigment Yellow 13、C.I.Pigment Yellow 14C、C.I.Pigment Yellow 16、C.I.Pigment Yellow 17、C.I.Pigment Yellow 73、C.I.Pigment Yellow 74、C.I.Pigment Yellow 75、C.I.Pigment Yellow 83、C.I.Pigment Yellow 93、C.I.Pigment Yellow 95、C.I.Pigment Yellow 97、C.I.Pigment Yellow 98、C.I.Pigment Yellow 109、C.I.Pigment Yellow 110、C.I.Pigment Yellow 114、C.I.Pigment Yellow 128、C.I.Pigment Yellow 129、C.I.Pigment Yellow 138、C.I.Pigment Yellow 150、C.I.Pigment Yellow 151、C.I.Pigment Yellow 154、C.I.Pigment Yellow 155、C.I.Pigment Yellow 180、およびC.I.Pigment Yellow 185を包含する黄色着色された顔料、
−橙色着色された顔料はC.I.Pigment Orange 36、C.I.Pigment Orange 43、およびこれらの顔料の混合物を包含する、
緑色着色された顔料はC.I.Pigment Green 7、C.I.Pigment Green 36、およびこれらの顔料の混合物を包含する、
−黒色着色された顔料は、ミツビシ・ケミカル・コーポレーション(Mitsubishi Chemical Corporation)により製造されたもの、例えば、No.2300、No.900、MCF 88、No.33、No.40、No.45、No.52、MA 7、MA 8、MA 100、およびNo.2200 B;コロンビアン・カーボン・カンパニー・リミテッド(Columbian Carbon Co.,Ltd.)により製造されたもの、例えば、Raven 5750、Raven 5250、Raven 5000、Raven 3500、Raven 1255、およびRaven 700;カボット・コーポレーション(Cabot Corporation)により製造されたもの、例えば、Regal 400 R、Regal 330 R、Regal 660 R、Mogul L、Monarch 700、Monarch 800、Monarch 880、Monarch 900、Monarch 1000、Monarch 1100、Monarch 1300、およびMonarch 1400;並びにデグッサ(Degussa)により製造されたもの、例えば、Color Black FW 1、Color Black FW 2、Color Black FW 2 V、Color Black FW 18、Color Black FW 200、Color Black S 150、Color Black S 160、Color Black S 170、Printex 35、Printex U、Printex V、Printex 140 U、Special Black 6、Special Black 5、Special Black 4A、およびSpecial Black 4を包含する。
他のタイプの顔料、例えば褐色顔料、紫色顔料、蛍光顔料および金属粉末顔料、も着色剤として使用できる。顔料は単独でまたは2種もしくはそれ以上の混合物として着色剤として使用できる。
【0088】
シアン顔料を包含する青色着色された顔料が好ましい。
【0089】
顔料は顔料粒子の表面処理にかけてまたはかけずに使用できる。好ましくは、顔料は表面処理にかけられる。表面処理方法は、顔料の表面に対して、樹脂の表面コートを適用する方法、界面活性剤を適用する方法、および反応性物質(例えば、シランカップリング剤、エポキシ化合物、ポリイソシアネートなど)を結合させる方法を包含する。表面処理した顔料の適当な例は国際公開第02/04210号パンフレットに記載された改質顔料である。具体的には国際公開第02/04210号パンフレットに記載された青色着色された改質顔料が本発明における着色剤として好ましい。
【0090】
顔料は、好ましくは10μmより小さい、より好ましくは5μmより小さいそして特に好ましくは3μmより小さい、粒子寸法を有する。顔料の分散方法はインキまたはトナーなどの製造用に使用されるいずれかの既知の分散方法でありうる。分散機械は、超音波分散器、サンドミル、アトライター、パールミル、スーパーミル、ボールミル、羽根車、分散器、KDミル、コロイドミル、ダイナトロン、スリー−ロールミルおよび加圧混練器を包含する。それらの詳細は“Latest Pigment Applied Technology”(CMC Publications,published in 1986)に記載されている。
【0091】
いわゆる自己−分散性顔料の分散液の製造においては分散化剤を省略できる。自己−分散性顔料の具体例は、顔料表面が分散液体と相容性になるような方法で表面処理を受ける顔料である。水性媒体中の自己−分散性顔料の代表例は、粒子−表面に結合されたイオン性もしくはイオン化可能な基またはポリエチレンオキシド連鎖を有する顔料である。イオン性もしくはイオン化可能な基の例は、酸基またはそれらの塩類、例えばカルボン酸基、スルホン酸、燐酸またはホスホン酸およびこれらの酸類のアルカリ金属塩類である。自己−分散性顔料の適当な例は国際公開第02/04210号パンフレットに記載されておりそしてこれらは本発明において好ましい。国際公開第02/04210号パンフレット中の青色着色された自己−分散性顔料が好ましい。
【0092】
典型的には、コーティング内の顔料の量は約0.005g/m〜2g/m、好ましくは約0.007g/m〜0.5g/m、より好ましくは約0.01g/m〜0.2g/m、最も好ましくは約0.01g/m〜0.1g/m、の範囲内でありうる。
【0093】
着色剤は染料でもありうる。肉眼から見て着色されているいずれかの既知の染料、例えば市販の染料または例えば“Dye Handbook”(edited by the
Organic Synthetic Chemistry Association,published in 1970)に記載された染料、を光重合可能コーティング内の着色剤として使用できる。それらの具体例は、アゾ染料、金属錯体塩アゾ染料、ピラゾロンアゾ染料、アントラキノン染料、フタロシアニン染料、カルビオニウム染料、キノンイミン染料、メチン染料などを包含する。フタロシアニン染料が好ましい。適当な染料は塩−生成性有機染料でありそして油溶性染料および塩基性染料から選択されうる。それらの具体例(ここでCIはカラーインデックスの略語である)は、Oil Yellow 101、Oil Yellow 103、Oil Pink 312、Oil Green BG、Oil Blue GOS、Oil Blue 603、Oil Black BY、Oil Black BS、Oil Black T−505、Victoria Pure Blue、Crystal Violet(CI42555)、Methyl Violet(CI42535)、Ethyl Violet,Rhodamine B(CI415170B)、Malachite Green(CI42000)、Methylene Blue(CI52015)である。また、英国特許第2192729号明細書に開示された染料も着色剤として使用できる。
【0094】
典型的には、コーティング内の染料の量は約0.005g/m〜2g/m、好ましくは約0.007g/m〜0.5g/m、より好ましくは約0.01g/m〜0.2g/m、最も好ましくは約0.01g/m〜0.1g/m、の範囲内でありうる。
【0095】
焼出し剤
コーティングの光重合可能層または他の層は、焼出し剤、すなわち露光でコーティングの変色させうる化合物、も含んでなりうる。前駆体の像通りの露光後に、以下では「焼出し像」とも称する可視像が形成されうる。焼出し剤は欧州特許出願公開第1491356号明細書19および20頁[0116]〜[0119]章並びに米国特許第2005/8971号明細書17頁[0168]〜[0172]章に記載されているような化合物でありうる。好ましい焼出し剤は2005年7月1日に出願された公開されていないPCT出願であるPCT/欧州特許第2005/053141号明細書9頁1行〜20頁27行に記載されている化合物である。2005年6月21日に出願された公開されていない欧州特許第05105440.1号明細書5頁32行〜32頁9行に記載されているようなIR−染料がより好ましい。
【0096】
コントラスト
像通りの露光およびゴム溶液を用いる処理後に形成された像のコントラストは露光された領域における光学濃度と露光されなかった領域における光学濃度との間の差として定義され、そしてこのコントラストは好ましくはできる限り高い方がよい。これが、最終使用者が異なる色選択を区別しそして処理された版前駆体上の像の品質を検査するために前駆体がすでに露光されそしてゴム溶液で処理されたかどうかを直ちに確認可能にする。
【0097】
露光された領域における増加する光学濃度および/または露光されなかった領域における減少する光学濃度につれてコントラストが増加する。露光された領域内の光学濃度は露光された領域内に残存する着色剤の量および吸光係数並びに焼出し剤により生ずる色の強度につれて増加しうる。露光されなかった領域では、着色剤の量ができる限り低いこと並びに色焼出し剤の強度ができる限り低いことが好ましい。光学濃度は数個のフィルター(例えば、シアン、マゼンタ、イエロー)を装備した光学濃度計により反射率で測定できる。露光された領域および露光されなかった領域における光学濃度における差は好ましくは少なくとも0.3、より好ましくは少なくとも0.4、最も好ましくは少なくとも0.5、の値を有する。コントラスト値に関する具体的な上限はないが、典型的にはコントラストは3.0より高くなくまたは2.0よりも高くない。人間観察者にとって良好な可視コントラストを得るためには、着色剤の色のタイプも重要でありうる。コントラストにとって好ましい色はシアンまたは青色であり、すなわち青色とは我々は肉眼から見て青色が現れる色であると理解する。
【0098】
頂部層
コーティングは、以下で「オーバーコート層」または「オーバーコート」とも称する酸素遮断層として作用する頂部層を含んでなりうる。頂部層内で使用できる好ましい結合剤は、ポリビニルアルコール並びにこれらの特許出願に引用された参考文献を包含する22/09/2003に出願された欧州特許出願公開第3103498号明細書、米国特許第6,410,205号明細書および欧州特許第1288720号明細書に開示されている重合体である。頂部層用の最も好ましい結合剤はポリビニルアルコールである。ポリビニルアルコールは好ましくは74モル%〜99モル%の間にわたる加水分解度を有する。ポリビニルアルコールの重量平均分子量は20℃においてDIN53015に規定された通りにして4重量%水溶液の粘度により測定することができ、そしてこの粘度数は好ましくは3〜26の間、より好ましくは3〜15の間、最も好ましくは3〜10の間、にわたる。
【0099】
頂部層のコーティング厚さは好ましくは0.25〜1.75g/mの間、より好ましくは0.25〜1.3g/mの間、最も好ましくは0.25〜1.0g/mの間、で
ある。本発明のより好ましい態様では、頂部層は0.25〜1.75g/mの間のコーティング厚さを有しそして74モル%〜99モル%の間にわたる加水分解度および3〜26の間にわたる以上で規定された粘度数を有するポリビニルアルコールを含んでなる。
【0100】
好ましい態様では、高い感度、良好な日光安定性および比較的少ないかまたは全くない処理中のスラジ生成を得るために頂部層の組成および厚さが最適化される。スラジを減ずるためには、頂部層はより少ないポリビニルアルコールを含んでなりそしてより低い分子量、好ましくは26より低い、より好ましくは10より低い、粘度数(viscosity number)およびできる限り薄いが0.25g/mより厚い厚さを有するポリビニルアルコールが使用される。感度を改良するためには、高い、好ましくは88−98%の、加水分解度およびより厚い厚さまたは頂部層を用いる良好な酸素遮断が望まれる。日光安定性を改良するためには、減少する酸素に関する遮断性質を有する酸素遮断剤を用いることによる、好ましくはより薄い頂部層の厚さおよびより低い加水分解度を有するポリビニルアルコールを用いることによる、酸素の少ない浸透が望まれる。これらの要素の良好な均衡により、前駆体に関する最適化された性質が得られうる。
【0101】
頂部層は上記のゴム溶液の化合物から選択される成分も含んでなりうる。
【0102】
露光
像通りの露光段階は印刷機外で版セッター、すなわち前駆体をレーザー、例えば約830nmで発光するレーザーダイオード、約1060nmで発光するNdYAGレーザー、約400nmで発光する紫色レーザー、もしくはArレーザーの如き気体レーザーによる、または例えばデジタルミラー装置によるデジタル調整UV−露光による、またはマスクとの接触時の従来の露光による前駆体の像通りの露光に適する露光装置、内で行われる。本発明の好ましい態様では、前駆体はIR−光線または紫色光線を発光するレーザーにより像通りに露光される。
【0103】
予備加熱
この像通りの露光段階後に、前駆体を場合により予備加熱装置内で加熱して重合および/または架橋結合反応を加速する。この予備加熱段階は10分間未満、好ましくは5分間未満、より好ましくは1分間未満、の期間内で行われ、最も好ましくは予備加熱は像通りの露光直後に、すなわち30秒間未満の期間内に、行われる。加熱を開始できるまでの時間制限はないが、前駆体は露光後にできるだけ速やかに、普通は数秒間後に、加熱され、版を予備加熱装置に移しそして加熱工程を開始する。この加熱段階において、前駆体は好ましくは80℃〜150℃の温度においてそして好ましくは5秒間〜1分間の滞在時間にわたり行われる。予備加熱装置には好ましくは、加熱部品、例えばIR−ランプ、UV−ランプ、加熱された空気、加熱された金属ロールなど、が装備される。
【0104】
洗浄
露光段階後に、または予備加熱段階が存在する時には予備加熱段階後に、前駆体を予備洗浄台内で洗浄することができ、それにより洗浄液、すなわち水または水溶液、を前駆体のコーティングに供給することにより頂部層の少なくとも一部が除去されうる。洗浄液は好ましくは水、より好ましくは水道水、である。
【0105】
水性の用語は、水または水と水−混和性有機溶媒、例えばアルコール類、例えばメタノール、エタノール、2−プロパノール、ブタノール、イソ−アミルアルコール、オクタノール、セチルアルコールなど;グリコール類、例えばエチレングリコール;グリセリン;N−メチルピロリドン;メトキシプロパノール;並びにケトン類、例えば2−プロパノンおよび2−ブタノンなど、との混合物を包含する。水−混和性有機溶媒はこれらの混合物中に多くとも50重量%、好ましくは20重量%より少なく、より好ましくは10重量%より少なく、存在することができ、最も好ましくは有機溶媒は水溶液中に存在しない。水溶液は、水または水と水−混和性有機溶媒との混合物中に溶解または分散させた化合物をさらに含んでなりうる。そのような化合物は上記のゴム溶液の化合物から選択されうる。
【0106】
この段階で使用される洗浄液は、好ましくは15℃〜85℃の間、より好ましくは18℃〜65℃の間、最も好ましくは20℃〜55℃の間、にわたる温度を有する。
【0107】
予備洗浄台は少なくとも1個の予備洗浄装置を含んでなることができ、ここで洗浄液は前駆体に、噴霧、噴射、浸漬または回転コーティング、ロールコーティング、スロットコーティングもしくはグラビアコーティングを包含するコーティング技術により、或いは浸漬パッドを用いる擦り付けにより或いは手によるまたは自動装置内のいずれかによる注入により適用される。噴霧、噴射、浸漬またはコーティング技術が好ましい。
【0108】
噴霧技術で使用できる噴霧ノズルの例は、ベルギー、ブリュッセルのスプライング・システムズ(Spraying Systems)で市販されているタイプSUJIの空気補助噴霧ノズルである。噴霧ノズルは50mm〜200mmの距離でノズルと受容基質との間に設置できる。噴霧溶液の流速は7ml/分に設定できる。噴霧工程中に4.80×10Paの範囲内の空気圧を噴霧ヘッド上で使用できる。この層を噴霧工程中におよび/または噴霧工程後に乾燥できる。噴射技術で使用できる噴射ノズルの代表例はインキ−ジェットノズルおよびバルブ−ジェットノズルである。
【0109】
予備洗浄装置の少なくとも1つに洗浄液をコーティングに適用しながらコーティングを擦り付けおよび/またはブラシかけするための少なくとも1個のローラーを装備することができる。
【0110】
予備洗浄段階で使用される洗浄液はタンク内で集められそして洗浄液は数回使用することができる。洗浄液は新鮮な水および/または新鮮な水溶液を予備洗浄段階のタンクに加えることにより補充することができる。該新鮮な水および新鮮な水溶液はそれぞれ前駆体を洗浄するためにこれまでに使用されていない水および水溶液である。別の方法では、洗浄液は1回だけ使用することができ、すなわち新鮮な水または新鮮な水溶液だけが好ましくは噴霧または噴射技術によりコーティングに適用される。好ましくは水道水がこの別方法で使用される。
【0111】
予備洗浄台は2個もしくはそれ以上の予備洗浄装置、好ましくは2もしくは3個の予備洗浄装置、を含んでなりうる。
【0112】
本発明の好ましい態様では、予備洗浄台は第一および第二の予備洗浄装置を含んでなり、それにより前駆体は最初に第一の予備洗浄装置内で洗浄されそして引き続き第二の予備洗浄装置内で洗浄される。前駆体は最初に第一の予備洗浄装置内で第二の予備洗浄装置内で使用された洗浄液で洗浄され、そして、引き続き、第二の予備洗浄装置内で新鮮な水または新鮮な水溶液で好ましくは噴霧または噴射技術により洗浄できる。別の方法では、第一および第二の予備洗浄装置は好ましくはカスケードシステムの配置を有することができ、それにより第一および第二の予備洗浄装置内で前駆体を洗浄するために使用される洗浄液はそれぞれ第一および第二のタンク内に存在し、そしてそれにより新鮮な水または新鮮な水溶液が第二の予備洗浄装置内に加えられる時に第二のタンクの洗浄液が第一のタンクに溢流する。
【0113】
本発明の別の態様では、予備洗浄台は第一、第二および第三の予備洗浄装置を含んでなることができ、それにより前駆体は最初に第一の予備洗浄装置内で、引き続き第二の予備洗浄装置内でそして最後に第三の予備洗浄装置内で洗浄される。前駆体は最初に第一の予
備洗浄装置内で第二の予備洗浄装置内で使用された洗浄液で洗浄され、引き続き第二の予備洗浄装置内で第三の予備洗浄装置内で使用された洗浄液で洗浄され、そして最後に第三の予備洗浄装置内で新鮮な水または新鮮な水溶液で好ましくは噴霧または噴射技術により洗浄できる。別の方法では、第一、第二および第三の予備洗浄装置は好ましくはカスケードシステムの配置を有することができ、それにより第一、第二および第三の予備洗浄装置内で前駆体を洗浄するために使用される洗浄液はそれぞれ第一、第二および第三のタンク内に存在し、そしてそれにより新鮮な水または新鮮な水溶液が第三の予備洗浄装置内に加えられる時に第三のタンクの洗浄液が第二のタンクに溢流しそして第二のタンクの洗浄液が第一のタンクに溢流する。
【0114】
本発明の別の態様では、予備洗浄装置の各々で使用される洗浄液は洗浄液中に存在する不溶性物質を除去することにより再生することもできる。洗浄液中の不溶性物質の存在は数種の理由により、例えば顔料含有コーティングの洗浄により、洗浄液の溶媒もしくは水の蒸発により、または洗浄液中の成分の沈殿、凝固もしくはフロキュレーションにより、引き起こされうる。不溶性物質は、数種の技術、例えば濾過、限外濾過、遠心または傾斜、により除去されうる。例えば本発明の洗浄液の如き廃棄溶液を廃棄するために適する装置は欧州特許出願公開第747773号明細書に記載されている。装置は予備洗浄装置のタンクに連結されてフィルターまたはフィルター膜上への洗浄液の循環により使用された洗浄液を再生することができる。洗浄液はフィルターまたはフィルター膜上に連続的に、周期的にもしくは洗浄時間中に循環させることができ、または洗浄液の懸濁度または透明度(すなわち光学的伝達性)の測定により循環を調整し、それにより懸濁度が上限値を超えた時に循環を開始しそして下限値に達した時に停止する。上限および下限懸濁値は所望する精製度に関連して選択することができ、一般的には洗浄液の光学的透過性は出発時のその値の50%より低くなく、好ましくは80%より低くなく、より好ましくは95%より低くない。
【0115】
本発明では、存在する時には、頂部層の少なくとも一部が洗浄段階において除去され、好ましくは頂部層の50%より多く、より好ましくは80%より多く、最も好ましくは95%より多く、が除去される。好ましくは、光重合可能層は洗浄段階において実質的に抽出または溶解されず、それにより洗浄段階で使用される洗浄液は光重合可能層の成分を2重量%より少ない、より好ましくは1重量%より少ない、最も好ましくは0.5重量%より少ない、光重合可能層のこれらの成分の濃度しか含有しない。好ましくは洗浄液中でできる限り省略される光重合可能層の成分は、重合可能単量体、多官能性単量体、開始剤、抑制剤および/または増感剤である。
【0116】
ゴム−処理
予備加熱装置内の加熱段階後にまたは、洗浄段階が存在する時には、洗浄段階後に、
ゴム溶液を前駆体のコーティングに適用することにより前駆体がゴム引き台内で現像され、それにより単一段階で光重合可能層の露光されなかった領域を支持体から除去しそして版をゴム引きする。ゴム引き台は少なくとも1個のゴム引き装置を含んでなり、そこでゴムが前駆体に噴霧、噴射、浸漬またはコーティング技術により、或いは浸漬パッドを用いる擦り付けにより或いは手によるまたは自動装置内のいずれかによる注入により適用される。
【0117】
噴霧技術で使用できる噴霧ノズルの例は、ベルギー、ブリュッセルのスプライング・システムズで市販されているタイプSUJIの空気補助噴霧ノズルである。噴霧ノズルは50mm〜200mmの距離でノズルと受容基質との間に設置できる。噴霧溶液の流速は7ml/分に設定できる。噴霧工程中に4.80×10Paの範囲内の空気圧を噴霧ヘッド上で使用できる。この層を噴霧工程中におよび/または噴霧工程後に乾燥できる。噴射技術で使用できる噴射ノズルの代表例はインキ−ジェットノズルおよびバルブ−ジェットノズルである。
【0118】
ゴム引き装置の少なくとも1つにゴムをコーティングに適用しながらコーティングを擦り付けおよび/またはブラシかけするための少なくとも1個のローラーを装備することができる。現像段階で使用されるゴムはタンク内で集められそしてゴムは数回使用することができる。ゴムは補充溶液をゴム引き装置のタンクに加えることにより補充することができる。別の方法では、ゴム溶液は1回だけ使用することができ、すなわち出発ゴム溶液だけが好ましくは噴霧または噴射技術によりコーティングに適用される。該出発ゴム溶液は前駆体の現像用にこれまでに使用されなかったゴム溶液でありそして現像の出発時に使用されたゴム溶液と同じ組成を有する。
【0119】
該補充溶液は、出発ゴム溶液、濃縮ゴム溶液、希釈ゴム溶液、非−イオン系界面活性剤の溶液、水、4〜7の間にわたるpHを有する緩衝剤の溶液またはベーキングゴムから選択できる溶液である。濃縮または希釈ゴム溶液は、以上で定義されたものより高いまたはより低い濃度のゴム添加剤を含んでなる溶液である。活性生成物のゴム溶液中の濃度が所望するレベルより下である時には濃縮ゴム溶液を補充溶液として加えることができる。活性生成物のゴム溶液中の濃度が所望するレベルより上である時またはゴム溶液の粘度が増加する時またはゴム溶液の容量が例えば溶媒もしくは水の蒸発により所望するレベルより上である時には希釈ゴム溶液または水を使用できる。ゴム溶液がより高い濃度の界面活性剤を必要とする時またはゴム溶液のpHが所望するpH値または例えば4〜7の間の2種のpH値の範囲内の所望するpH値に調節する必要がある時には非−イオン系界面活性剤の溶液または緩衝液の溶液を加えることができる。
【0120】
補充溶液の追加、すなわち補充溶液のタイプおよび量、は以下のパラメーター、例えば現像される版前駆体の数および領域、現像の期間、それぞれのゴム引き装置内の容量(最少および最大レベル)、ゴム溶液の粘度(もしくは粘度増加)、ゴム溶液のpH(もしくはpH変化)、ゴム溶液の密度(もしくは密度増加)およびゴム溶液の伝導度(もしくは伝導度増加)の少なくとも1つまたはこれらの少なくとも2つの組み合わせの測定により調整できる。ゴム溶液の粘度(もしくは粘度増加)はPAAR密度計で測定できる。
【0121】
この段階で使用されるゴム溶液は好ましくは15℃〜85℃の間、より好ましくは18℃〜65℃の間、最も好ましくは20℃〜55℃の間、にわたる温度を有する。
【0122】
本発明の好ましい態様では、ゴム引き台は第一および第二のゴム引き装置を含んでなり、それにより前駆体は最初に第一のゴム引き装置内で現像されそして引き続き第二のゴム引き装置内で現像される。前駆体は最初に第一のゴム引き装置内で第二のゴム引き装置内で使用されたゴム溶液で現像され、そして、引き続き、第二のゴム引き装置内で出発ゴム溶液で好ましくは噴霧または噴射技術により現像される。別の方法では、第一および第二のゴム引き装置は好ましくはカスケードシステムの構造を有し、それにより第一および第二のゴム引き装置内で前駆体を現像するために使用されるゴム溶液がそれぞれ第一および第二のタンク内に存在し、そしてそれにより補充溶液が第二のゴム引き装置内に加えられる時に第二のタンクのゴム溶液が第一のタンクに溢流する。場合により、第一のゴム引き装置に補充溶液を加えることができそしてこの補充溶液は第二のゴム引き装置に加えられるものと同じまたは別の補充溶液であることができ、例えば希釈ゴム溶液、非−イオン系界面活性剤の溶液または水を補充剤として第一のゴム引き装置に加えることができる。
【0123】
本発明の別の態様では、ゴム引き台は第一、第二および第三のゴム引き装置を含んでなることができ、それにより前駆体は最初に第一のゴム引き装置内で、引き続き第二のゴム引き装置内でそして最後に第三のゴム引き装置内で現像される。前駆体は最初に第一のゴム引き装置内で第二のゴム引き装置内で使用されたゴム溶液で現像され、引き続き第二の
ゴム引き装置内で第三のゴム引き装置内で使用されたゴム溶液で現像され、そして最後に第三のゴム引き装置内で出発ゴム溶液で好ましくは噴霧または噴射技術により現像される。別の方法では、第一、第二および第三のゴム引き装置は好ましくはカスケードシステムの構造を有し、それにより第一、第二および第三のゴム引き装置内で前駆体を現像するために使用されるゴム溶液がそれぞれ第一、第二および第三のタンク内に存在し、そしてそれにより補充溶液が第三のゴム引き装置内に加えられる時に第三のタンクのゴム溶液が第二のタンクに溢流し、そしてそれにより第二のタンクのゴム溶液が第一のタンクに溢流する。場合により、第二および/または第一のゴム引き装置にも補充溶液を加えることができそしてこの補充溶液は第三のゴム引き装置に加えられるものと同じまたは別の補充溶液であることができ、例えば希釈ゴム溶液、非−イオン系界面活性剤の溶液または水を補充剤として第二または第一のゴム引き装置に加えることができる。別の選択肢では、2種の補充溶液、例えば出発ゴム溶液および水、を1つのゴム引き装置に加えることもできる。
【0124】
本発明の別の態様では、ゴム引き装置の各々で使用されるゴム溶液はゴム引き装置のゴム溶液中に存在する不溶性物質の除去により再生することができる。ゴム溶液中の不溶性物質の存在は、数種の理由により、例えば顔料含有コーティングの洗浄により、洗浄液の溶媒もしくは水の蒸発により、または洗浄液中の成分の沈殿、凝固もしくはフロキュレーションにより、引き起こされうる。不溶性物質は、数種の技術、例えば濾過、限外濾過、遠心または傾斜、により除去されうる。例えば本発明の洗浄液の如き不用な現像溶液を廃棄するために適する装置は欧州特許出願公開第747773号明細書に記載されている。装置はゴム引き装置のタンクに連結されてフィルターまたはフィルター膜上へのゴム溶液の循環により使用されたゴム溶液を再生することができる。ゴム溶液液はフィルターまたはフィルター膜上に連続的に、周期的にもしくは洗浄時間中に循環させることができ、またはゴム溶液の懸濁度または透明度(すなわち光学的伝達性)の測定により循環を調整し、それにより懸濁度が上限値を超えた時に循環を開始しそして下限値に達した時に停止する。上限および下限懸濁値は所望する精製度に関連して選択することができ、一般的にはゴム溶液の光学的透過性は出発時のその値の50%より低くなく、好ましくは80%より低くなく、より好ましくは95%より低くない。
【0125】
乾燥
本発明の別の態様によると、版はゴム−処理段階後に乾燥装置内で乾燥することができる。好ましい態様では、IR−ランプ、UV−ランプ、加熱された金属ローラーまたは加熱された空気から選択される少なくとも1個の加熱部品を含有しうる乾燥装置内で版を加熱することにより版を乾燥する。本発明の好ましい態様では、既知のように従来の現像機の乾燥部分で版は加熱された空気で乾燥される。
【0126】
ベーキング
本発明の別の態様によると、場合により版を乾燥した後に、版をベーキング装置内で加熱することができる。本発明の好ましい態様では、版がベーキング装置内で加熱される時に、前駆体はベーキングゴムを用いることにより現像されそして補充ベーキングゴムを加えることによりゴム溶液は好ましくは補充される。該補充ベーキングゴムは、出発ベーキングゴム、すなわち現像の開始時に使用されたものと同じ組成を有する溶液、濃縮ベーキングゴムまたは希釈ベーキングゴム、すなわち出発ベーキングゴムより高いかまたは低い濃度の添加剤を有する溶液、および水から選択できる溶液である。
【0127】
ベーキング装置はIR−ランプ、UV−ランプ、加熱された金属ローラーまたは加熱された空気から選択される少なくとも1個の加熱部品を含有しうる。版を好ましくはベーキング装置内で150℃より上に且つコーティングの分解温度より低く、より好ましくは200℃〜295℃の間に、最も好ましくは250℃〜290℃の間に、加熱する。より低い加熱温度が使用される時にはより長い加熱時間が一般的に使用され、そしてより高い加熱温度が使用される時にはより短い加熱時間が使用される。版を好ましくは10分間以内、より好ましくは5分間以内、最も2分間以内、の期間にわたり加熱する。
【0128】
本発明の好ましい態様では、版を欧州特許出願公開1506854号明細書に記載された方法により加熱する。本発明の別の好ましい態様では、版を国際公開第2005/015318号に記載された方法により加熱する。
【0129】
本発明の別の態様では、乾燥段階および加熱段階を単一段階で組み合わせることができ、そこではゴム−現像段階後に一体化された乾燥−ベーキング台の中で版を乾燥しそして加熱する。
【0130】
単一装置
本発明の別の態様によると、予備加熱装置およびゴム引き装置は機械的な版移送手段により一緒に連結される。ゴム引き装置はさらに機械的な版移送手段により乾燥装置に連結される。乾燥台はさらに機械的な版移送手段によりベーキング装置に連結される。ゴム引き装置はさらに機械的な版移送手段により一体化された乾燥−ベーキング装置にも連結される。
【0131】
本発明のさらに別の態様によると、該ゴム引き装置に連結された該予備加熱装置はさらに機械的な版移送手段により該版セッターに連結され、そこでは前駆体は周囲光線から遮断される。
【実施例】
【0132】
アルミニウム支持体S−1の製造:
26g/lのNaOHを含有する水溶液を65℃において2秒間にわたり噴霧することにより0.3mm厚さのアルミニウム箔を脱脂しそして脱塩水で1.5秒間にわたりすすいだ。箔を次に10秒間にわたり交流を用いて15g/lのHCl、15g/lのSO2−イオンおよび5g/lのAl3+イオンを含有する水溶液の中で37℃の温度および約100A/dmの電流密度において電気化学的に研磨した。5.5g/lのNaOHを含有する水溶液で36℃において2秒間にわたりエッチングすることによりアルミニウム箔を次にデスマット処理しそして脱塩水で2秒間にわたりすすいだ。箔を引き続き15秒間にわたり145g/lの硫酸を含有する水溶液の中で50℃の温度および17A/dmの電流密度において陽極酸化にかけ、次に脱塩水で11秒間にわたり洗浄しそして2.2g/lのポリビニルホスホン酸を含有する溶液を70℃において噴霧することにより3秒間にわたり後処理し、脱塩水で1秒間にわたりすすぎそして120℃において5秒間にわたり乾燥した。
【0133】
このようにして得られた支持体は干渉計NT1100で測定した0.35−0.4μmの表面粗さRaにより特徴づけられ、そして3.0g/mの陽極重量を有していた。
【0134】
感光層P−1の製造:
表2に示される成分を混合することにより感光層P−1用のコーティング組成物を製造した。生じた溶液を支持体上にコーティングした。コーティング後に、版を1分間にわたり120℃において循環オーブン内で乾燥した。生じた適用量は1.20g/mである。
【0135】
【表1】

【0136】
(1)Koma 30はクラリアント(Clariant)から市販されている13.9
重量%のトリメリト酸でエステル化されたビニルブチラール、ビニルアルコールお
よび酢酸ビニルの共重合体である
(2)FST 426Rは1モルの2,2,4−トリメチル−ヘキサメチレンジイソシア
ネートおよび2モルのヒドロキシエチルメタクリレートからの反応生成物88.2
重量%を含有する2−ブタノン中溶液(25℃における粘度3.30mm/s)
である
(3)Mono Z1620は1モルのヘキサメチレンジイソシアネート、1モルの2−
ヒドロキシエチルメタクリレートおよび0.5モルの2−(2−ヒドロキシエチル
)−ピペリジンからの反応生成物30.1重量%を含有する2−ブタノン中溶液(
25℃における粘度1.7mm/s)である
(4)Heliogene Blue D7490分散液(9.9重量%、25℃におけ
る粘度7.0mm/s)、欧州特許第1072956号明細書に定義されている
バスフ(BASF)の商品名
(5)DISBは1,4−ジ[3,5−ジメトキシ,4−イソブトキシ−スチリル]ベン
ゼンである
(6)HABIは2,2’−ビス(2−クロロフェニル)−4,4’,5,5’−テトラ
フェニル−1,2−ビスイミダゾールである
(7)MBTは2−メルカプトベンゾチアゾールである
(8)Hostanox 03はクラリアントから市販されているフェノール系酸化防止
剤である
(9)Edaplan LA411はムンジング・ヘミー(Munzing Chemi
e)から得られる界面活性剤(ダウ・ケミカル・カンパニー(Dow Chemi
cal Company)のDowanol PM(R)商標中10重量%溶液)
である
(10)Dowanol PMはダウ・ケミカル・カンパニーの商標であるプロピレング
リコールモノメチルエーテルである。
【0137】
オーバーコート層OC−1の製造:
感光層の頂部に表3で規定された組成を有する溶液をコーティングしそして110℃において2分間にわたり乾燥した。このようにして製造された保護オーバーコートOC−1は1g/mの乾燥厚さを有する。
【0138】
【表2】

【0139】
(1)Acticide LA1206はトル(Thor)から市販されている殺生物剤
である
(2)Lupasol Pはバスフから市販されているポリエチレンイミンの50重量%
水溶液である
(3)Lutensol A8(90重量%)はバスフから市販されている界面活性剤で
ある
【0140】
印刷版の製造
前駆体を25μJ/cmのエネルギーで紫色版セッター装置Advantage DL3850(アドレス性能:1270dpi)内で像形成した。
【0141】
予備加熱をVSP−85の予備加熱区域で行った(行程速度=1.2m/分、版温度=110℃)。露光の終了と予備加熱処理の開始との間の時間を変えた:0.5、1、5、10、15、30、60分間。
【0142】
予備加熱後に、印刷版をVSP−85の現像区域内でGum−1溶液中で25℃において1.2m/分で現像した。
【0143】
Gum−1は以下の通りにして製造された溶液である:
750gの脱塩水に
100mlのDowfax 3B2(ダウ・ケミカル(Dow Chemical)から市販されている)、
31.25gの1,3−ベンゼンジスルホン酸二ナトリウム塩(リーデル・デ・ハーン(Riedel de Haan)から入手可能である)、
31.25mlのVersa TL77(アルコ・ケミカル(Alco Chemical)から入手可能なポリスチレンスルホン酸)、
10.4gのクエン酸三ナトリウム二水和物、
2mlのActicide LA1206(トルからの殺生物剤)、
2.08gのPolyox WSRN−750(ユニオン・カーバイド(Union Carbide)から入手可能である)
を撹拌下で加えそして脱塩水をさらに加えて1000gとした。pHは7.2〜7.8の間である。
【0144】
110lpiラスターのハイライト・レンダリング(highlight rendering)を検査することにより印刷版を評価した。表4に、印刷版上で完全にまたはほぼ完全に見える最少%ドットが露光の終了と予備加熱の開始との間の時間(△時間(分))の関数として示される。
【0145】
【表3】

【0146】
表4から、露光の終了と予備加熱の開始との間の時間増加(△時間)がハイライト・レンダリングの減少をもたらすことがわかる。△時間が0.5〜5分間の間である時には、処理後に印刷版上で3%ドットパターンが依然として見える。△時間が30または60分間である時には、3%ドットパターンは(4および5%ドットパターンでも)もはや見えない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)(i)親水性表面を有するかまたは親水性層が備えられている支持体、
(ii)光重合可能層および、場合により、光重合可能層と支持体との間の中間層を含ん
でなる、該支持体上のコーティング
を含んでなり、該光重合可能層が重合可能化合物、重合開始剤および結合剤を含んでなる平版印刷版前駆体を準備し、
b)該コーティングをレーザーにより版セッター内で像通りに露光し、
c)前駆体を予備加熱装置内で段階(b)後の10分間未満の期間内に加熱し、
d)前駆体を少なくとも1つのゴム引き装置を含んでなるゴム引き台内で処理し、それによりゴム溶液が前駆体に適用される
段階を含んでなり、それにより単一段階で光重合可能層の露光されていない領域を支持体から除去しそして版をゴム引きする、平版印刷版の製造方法。
【請求項2】
期間が5分間未満である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
期間が1分間未満である、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
段階(c)において該前駆体を該予備加熱装置内で80℃〜150℃の間にわたる温度において加熱する、前記請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項5】
段階(c)において該前駆体を該予備加熱装置内で5秒間〜1分間の間にわたる滞在時間にわたり加熱する、前記請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項6】
該予備加熱装置に加熱部品が備えられる、前記請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項7】
該加熱部品がIR−ランプ、UV−ランプ、加熱された空気または加熱された金属ロールである、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
該予備加熱装置が該ゴム引き装置に機械的な版移送手段により連結される、前記請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項9】
該予備加熱装置が該版セッターに機械的な版移送手段により連結され、ここで前駆体が周囲光から遮蔽される、前記請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項10】
該予備加熱装置が該ゴム引き装置に機械的な版移送手段により連結されそして該予備加熱装置が該版セッターに機械的な版移送手段によりさらに連結され、ここで前駆体が周囲光から遮蔽される、前記請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項11】
該ゴム溶液が3〜9の間にわたるpH−値を有する、前記請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項12】
該レーザーが紫色光線を発光する、前記請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項13】
該レーザーが赤外光線を発光する、請求項1〜11のいずれかに記載の方法。

【公表番号】特表2009−516222(P2009−516222A)
【公表日】平成21年4月16日(2009.4.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−540585(P2008−540585)
【出願日】平成18年11月9日(2006.11.9)
【国際出願番号】PCT/EP2006/068303
【国際公開番号】WO2007/057348
【国際公開日】平成19年5月24日(2007.5.24)
【出願人】(507253473)アグフア・グラフイクス・ナームローゼ・フエンノートシヤツプ (21)
【Fターム(参考)】