説明

平版印刷版用アルミニウム板材

【課題】平版印刷版原版とした場合、アルミニウム材料中に混入している炭化アルミニウムに起因する膨れが生じない平版印刷版用アルミニウム板材を提供する。
【解決手段】PoDFA法により測定された円相当径で3μm以上の炭化アルミニウムの存在個数が4個以下であることを特徴とする平版印刷版用アルミニウム板材。前記PoDFA法による円相当径で3μm以上の炭化アルミニウムの存在個数の測定は、前記平版印刷版用アルミニウム板材3000gを電気炉中の坩堝内で溶解し、得られた溶湯を専用フィルタにより2000gろ過し、溶湯1000gを前記専用フィルタ上に残したまま凝固させ、フィルタ上10mm高さまでの凝固溶湯の直径縦断面中央部(14mm×10mm)を観察面として、フィルタ上面に堆積した溶湯中の介在物中の炭化アルミニウムを顕微鏡観察することにより行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、平版印刷版原版とした場合、保護層に膨れが生じることがない平版印刷版用アルミニウム板材、とくに、炭化アルミニウムに起因する膨れが生じることがない平版印刷版用アルミニウム板材に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、平版印刷版原版としては、アルミニウム板材からなる親水性支持体上に親油性の感光性樹脂層を設けた構成を有するものが広く用いられている。その製版方法として、通常は、リスフィルムを介してマスク露光後、非画像部を溶解除去することにより所望の印刷版を得る方法が用いられていた。
【0003】
最近では、画像情報をコンピュータを用いて電子的に処理、蓄積、出力するデジタル化技術が広く普及しており、このようなデジタル化技術に対応した新しい画像出力方式が種々実用されるようになってきている。その結果、レーザー光のような指向性の高い光をデジタル化された画像情報に従って走査し、リスフィルムを介すること無く、直接印刷版を製造するコンピューター・トゥ・プレート(CTP)技術が用いられるようになってきた。
【0004】
CTP技術による平版印刷版原版の製造は、印刷版用アルミニウム板材に、砂目処理などの粗面化処理、硫酸アルマイト処理を行った後、表面に感光性樹脂層、保護層を塗布し、加熱露光処理することにより行われるが、これらの平版印刷版原版においては、保護層に膨れが発生することがあり、そのまま使用すると露光不良による画像抜け等の画像欠陥を引き起こすという問題がある。サイズが50μm以上の膨れが生じると、露光不良による画像抜け等の画像欠陥を引き起こすことが確認されている。
【0005】
保護層に生じる膨れは、アルミニウム板材中の炭化アルミニウムが保護層の内側で水蒸気と反応して生じるメタンガスに起因するものであるとして、アルミニウム板材中の炭化アルミニウムの含有量を10ppm未満に規定した平版印刷版用アルミニウム板材が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】WO2007/093605A1号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
発明者らは、前記提案の炭化アルミニウム含有量を規定した平版印刷版用アルミニウム板材に着目し、保護層に生じる膨れとアルミニウム板材中の炭化アルミニウムとの関係について追試を行った結果、膨れの原因は、感光層と保護層を塗布したアルミニウム板材の表層部に存在する炭化アルミニウムが水と反応して水酸化アルミニウムとなって体積膨張し、アルミニウム板と保護層の間で異物となって保護層を押し上げるためであることを見出した。
【0008】
CTP技術による平版印刷版原版の製造工程中の砂目処理などの粗面化処理、硫酸アルマイト処理においては水洗工程があるが、その後、表面に塗布される感光性樹脂層、保護層が水分を透過する性質を有するため、保護層内には水分が存在する。このことも、炭化アルミニウムと水との反応を引き起こす原因となることが判った。炭化アルミニウムの含有量を前記提案のように10ppm未満に規定しても、前記保護層などを設けた場合、直径が50μm以上の膨れが生じ、50μm程度の微小な画像抜けが発生している。
【0009】
膨れの発生による露光不良を防止する手法を見出すことを目的として、さらに試験検討を行った結果、発明者らは、アルミニウム板材中に存在する炭化アルミニウムのサイズを微細にすることが最も有効且つ重要であることを知見した。
【0010】
本発明は、上記の知見に基づいてなされたものであり、その目的は、平版印刷版原版とした場合、アルミニウム材料中に混入している炭化アルミニウムに起因する膨れが発生しない平版印刷版用アルミニウム板材を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記の目的を達成するための本発明による平版印刷版用アルミニウム板材は、PoDFA法により測定された円相当径で3μm以上の炭化アルミニウムの存在個数が4個以下であることを特徴とする。前記PoDFA法による円相当径で3μm以上の炭化アルミニウムの存在個数の測定は、前記平版印刷版用アルミニウム板材3000gを電気炉中の坩堝内で溶解し、得られた溶湯を専用フィルタにより2000gろ過し、溶湯1000gを前記専用フィルタ上に残したまま凝固させ、フィルタ上10mm高さまでの凝固溶湯の直径縦断面中央部(14mm×10mm)を観察面として、フィルタ上面に堆積した溶湯中の介在物中の炭化アルミニウムを顕微鏡観察することにより行う。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、平版印刷版原版とした場合、アルミニウム材料中に混入している炭化アルミニウムに起因する膨れが発生しない平版印刷版用アルミニウム板材が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0013】
炭化アルミニウムは、精錬の過程や、溶解、精製、鋳造工程においてアルミニウム中に混入し、圧延工程を経て製造された平版印刷版用アルミニウムいた材に感光層や保護層を設けて平版印刷版原版とした場合に、アルミニウム板材の表層に存在する炭化アルミニウムが水と反応して水酸化アルミニウムを形成することで体積膨張し、保護層を押し上げ、露光不良による画像抜け等の画像欠陥を引き起こす。
【0014】
本発明の平版印刷版用アルミニウム板材は、PoDFA法により測定された円相当径で3μm以上の炭化アルミニウムの存在個数が4個以下であることを特徴とするものである。
【0015】
PoDFA(Porous Disc Filtration Apparatus) 法は、例えば、D.Doutre,B.Gariepy,J.P.Martin,G.Dube,“Aluminum Cleanliness Monitoring:Method and Applications in Process Development and Quality Control”pages 1179〜1195,Light Metals,1985に記載されており、金属中の介在物を測定する手法として当該技術分野においてよく知られている。
【0016】
本発明において、PoDFA法による円相当径で3μm以上の炭化アルミニウムの存在個数の測定は、前記平版印刷版用アルミニウム板材3000gを電気炉中の坩堝内で溶解し、得られた溶湯を専用フィルタにより2000gろ過し、溶湯1000gを前記専用フィルタ上に残したまま凝固させ、フィルタ上面に堆積した溶湯中の介在物中の炭化アルミニウムを顕微鏡観察することにより行う。
【0017】
上記の測定をさらに詳細に説明すると、電気炉中で、アルミナルツボを用いて溶湯3000gを溶解し、底部に専用フィルタ(直径25mm)をセットした専用ルツボを電気炉で800℃の温度に予熱した後、PoDFA装置(以下、チャンバ)内にセットする。専用ルツボ内に溶湯を静かに注ぎ入れる。ろ過後の溶湯を受ける容器とその重量を測る秤をチャンバの下部にセットしておく。
【0018】
チャンバ内を空気で加圧(2kg/cm)し、その圧力で溶湯をろ過する。ろ過量が2000gになった時、空気による加圧を中止してチャンバを開け、空冷して溶湯をそのまま凝固させる。溶湯の凝固後、フィルタ上10mm高さまでのアルミニウム部をフィルタ(厚さ5mm)と共に採取する。採取されたアルミニウム部は、直径14mm(フィルタ直径の中央部の14mm)×10mmのものである。
【0019】
この凝固溶湯の直径縦断面中央部(14mm×10mm)を観察面として、樹脂埋め、研磨し、光学顕微鏡(500〜1000倍)でアルミニウム部の全面積(14mm×10mm)を観察し、3μm以上の炭化アルミニウム(Al)の個数を観察する。炭化アルミニウムは、事前にEPMAやEDSなどの元素分析により確認しておくが、黒色に観察される粒子で、六角柱形状であり、観察面では六角形や矩形形状として観察される。
【0020】
発明者らは、前記の印刷不良が生じないアルミニウム板材における単位アルミニウム重量中の炭化アルミニウムの個数について、試験、検討を行った結果、上記観察面での炭化アルミニウムの個数が4個以下であれば、工業的に印刷不良の発生を解消できることを確認した。
【0021】
PoDFA法により測定された炭化アルミニウムのサイズが円相当径で3μm未満であれば、水と反応し水酸化アルミニウムを形成して体積膨張しても、露光不良を引き起こすような膨れは発生しない。
【0022】
また、円相当径で3μm以上の炭化アルミニウムが混入していたとしても、PoDFA法により測定された円相当径で3μm以上の炭化アルミニウム(以下、単に、円相当径で3μm以上の炭化アルミニウムという)の存在が4個以下であれば、その炭化アルミニウムがアルミニウム板材の表層部に存在し、水と反応して露光不良による画像抜け等の画像欠陥を引き起こす確率は工業的にはほとんどゼロである。
【0023】
本発明のアルミニウム板材を得る方法としては、(1)原料として、円相当径で3μm以上の炭化アルミニウムの存在個数が4個以下のアルミニウム地金を使用する、(2)アルミニウム板材の製造工程において、円相当径で3μm以上の炭化アルミニウムが4個を超えて生成されないようにする、(3)製造工程途中において、円相当径で3μm以上の炭化アルミニウムを除去する、などの措置を採るのが好ましい。以下、好ましい製造工程について述べる。
【0024】
本発明の平版印刷版用アルミニウム板材は、所定の組成を有するアルミニウム合金を溶解、溶湯精製を行って鋳造し、得られた鋳塊を均質化処理、熱間圧延、冷間圧延することにより製造される。
【0025】
炭化アルミニウムはアルミニウム地金中に不純物として含まれている。これは電解精練時に使用する炭素電極と精練中のアルミニウム溶湯との反応により生成されたものである。原料としては、円相当径で3μm以上の炭化アルミニウムの存在個数が4個以下のアルミニウム地金を使用するのが好ましい。なお、多少の炭化アルミニウムが地金に混入していたとしても、これらを溶解炉にて火炎で溶解することにより大部分の炭化アルミニウムが消失することが確認された。
【0026】
溶解後、鋳造に先立って、溶湯精製として、溶湯に対してフィルタリング(溶湯ろ過)を行って、円相当径で3μm以上の炭化アルミニウムを除去することがより好ましい。この場合、ろ過性能が高いセラミックチューブフィルタの適用が好適である。通常のアルミニウム鋳造ラインで使用されるセラミックチューブフィルタ(例えば、日本ガイシ(株)製のCグレード:平均気孔径160μm)を適用しても、円相当径で3μm以上の炭化アルミニウムを完全に除去することはできない。このため、より効果的に炭化アルミニウムを除去するために、メッシュの細かなセラミックチューブフィルタ(例えば、日本ガイシ(株)製のDグレード:平均気孔径120μm)を使用する。また、事前に300ton以上の溶湯を通湯して、フィルタの外表面に十分な厚さのケーク層を形成することにより、溶湯中に存在する円相当径で3μm以上の炭化アルミニウムの多くを除去することができる。
【0027】
原料を溶解炉で溶解して得られた溶湯をろ過精製し、鋳造する場合、一般的な精製工程、DC鋳造工程においては、アルミニウム溶湯と炭素含有鋳造用品などの炭素含有部品とが接触して反応し、炭化アルミニウムが生成される。炭素含有部品を使用しないようにすることが望ましいが、実際面では困難であるから、アルミニウム溶湯と反応し難い緻密な炭素材料からなる鋳造用品などの部品を使用するのが好ましく、やむを得ず、粗悪な炭素材料からなる部品を適用する場合には、アルミニウム溶湯との接触を防止するために、炭素含有部品の表面に離型剤を塗布したり、断熱性保護材を被覆するのが好ましい。
【0028】
アルミニウム溶湯中に円相当径で3μm以上の炭化アルミニウムが存在するかどうかは、前記PoDFA法により確認することができる。鋳造に先立って、PoDFA法により溶湯中の炭化アルミニウム生成の有無やそのサイズを評価すれば、に導入される溶湯の性状を知ることができ、鋳造工程での炭素含有鋳造用品との接触防止処置の必要性を把握することができる。
【0029】
DC鋳造工程で造塊された鋳塊を、均質化処理、熱間圧延、さらに所定の厚さに冷間圧延した後、得られたアルミニウム板材に対して、特開2008−83383号公報の段落0024に記載される方法で電気化学的エッチング処理を行った後、段落0025に記載される方法で化学エッチング処理、スマット除去処理を施し、次いで、段落0026〜0027に記載される方法で陽極酸化処理され、段落0028〜0168に記載される光重合性感光層、保護層を設けて印刷版とされる。必要に応じて、感光層形成前に下塗り層、中間層を設けてもよい。
【0030】
炭化アルミニウムのサイズと印刷版の膨れの関係を調べるために、円相当径で3μm以上の炭化アルミニウムを含有したアルミニウム地金を溶解し、炭素含有鋳造用品を使用して(前記の炭素含有鋳造用品と溶湯との接触防止処置を行うことなく)鋳造し鋳塊を得た。得られた鋳塊を常法に従って均質化処理、熱間圧延、冷間圧延し、厚さ0.24mmのアルミニウム板材とした。
【0031】
得られた板材に対して、特開2008−83383号公報の段落0024、0025、0026に記載される方法に従って、塩酸硝酸を用いる電気化学的エッチングによる粗面化処理を行い、苛性ソーダによる化学的エッチング、硫酸によるスマット除去処理を施したのち、硫酸を用いて陽極酸化皮膜を形成した。さらに下記の中間層塗布液1を、バーコーターを用いて乾燥塗布量30mg/mとなるように塗布し、150℃で5秒間乾燥した。
中間層塗布液1:
テトラエチルシリケート 4.0質量部
化合物1(下記) 1.2質量部
化合物2(下記) 11.0質量部
メタノール 5.0質量部
リン酸水溶液(85%) 2.5質量部
【0032】
上記成分を混合、攪拌すると約30分で発熱した。60分攪拌して反応させた後、以下に示す液を加えることによって中間層塗布液1を調整した。
メタノール 2000質量部
1−メトキシー2−プロパノール 100質量部
【0033】
【化1】

【0034】
【化2】

【0035】
上記中間層上に、下記組成の感光性組成物(1)をバーコーターを用いて塗布した後、90℃で1分間乾燥して感光層を形成した。乾燥後の感光層の質量は1.35g/mであった。
感光性組成物1:
エチレン性不飽和二重結合を有する付加重合性化合物
(DEGUSSA製PELEX666−O) 1.69質量部
バインダーポリマー(下記化合物3、質量平均分子量=8万) 1.87質量部
増感色素(下記D40) 0.13質量部
ヘキサアリールビイミダゾール光重合開始剤
(黒金化成(株)製BIMD) 0.46質量部
ε―フタロシニアン(下記F−1)
(25質量%メチルエチルケトン分散液) 1.70質量部
メルカプト基含有化合物(下記SH−1) 0.34質量部
フッ素系ノニオン界面活性剤メガファックF−780F
(大日本インキ化学工業(株)製) 0.03質量部
クペロンAL(和光純薬工業(株)製重合禁止剤)
トリクレジルホスフェート10質量%溶液 0.12質量部
メチルエチルケトン 27.0 質量部
プロピレングリコールモノメチルエーテル 26.7 質量部
【0036】
【化3】

【0037】
【化4】

【0038】
【化5】

【0039】
【化6】

【0040】
この感光層上に、下記組成の保護層塗布水溶液を乾燥塗布質量が2.5g/mとなるようにバーコーターで塗布し、120℃で1分間乾燥させ、平版印刷版原版を得た。
保護層塗布水溶液:
ポリビニルアルコール(ケン化度95モル%、重合度500)
水溶性樹脂(表1記載)
ポリマー(下記SP−1) 2.0質量部
ルビスコールVA64W(50%水溶液、BASF製) 1.2質量部
ノニオン系界面活性剤パイオニンD230(竹本油脂製) 2.0質量部
ノニオン系界面活性剤エマレックス710(日本乳化剤製) 1.8質量部
水 1100 質量部
【0041】
【化7】

【0042】
【表1】

【0043】
得られた平版印刷版原版を30日間放置し、表面に形成された膨れのサイズと膨れ部分に存在する異物より対応する炭化アルミニウムのサイズを求めた。形成された膨れの直径、これらの膨れ部分に存在する最大炭化アルミニウム径(円相当径)を表2に示す。
【0044】
【表2】

【0045】
表2に示すように、直径が大きい膨れ部分に存在する炭化アルミニウムは径が大きく、膨れ直径が50μmを超えるものには最大4μm以上の炭化アルミニウムが存在している。直径50μm以上の膨れが発生すると印刷欠陥が生じるから、膨れ部分に存在する炭化アルミニウムの最大径が3μm未満(膨れNo.12〜14)であれば、膨れ直径は50μm未満となり、露光不良による画像抜けなどの画像欠陥の発生の問題を解消することができる。膨れ直径50μmのものには最大3μm径の炭化アルミニウムが存在する場合(膨れNo.9)もあるが、膨れ部分に存在する炭化アルミニウムの最大径が3μm(膨れNo.10、11)であれば、膨れ直径を50μm未満とすることが可能である。
【実施例】
【0046】
実施例1
表3に示すアルミニウム地金を溶解し、表4に示す条件で溶湯精製、鋳造を行い鋳塊を得た。得られた鋳塊を常法に従って均質化処理、熱間圧延、冷間圧延し、厚さ0.24mmのアルミニウム板材とした。なお、表4における炭素含有部品との接触防止実施において、鋳造時に使用するストッパーへの接触防止は、円錐状黒鉛ストッパ−の表面に断熱繊維からなるカバーを設けることにより行った。
【0047】
得られた板材を試験材として、試験材について、PoDFA法により炭化アルミニウムの最大径(円相当径)、PoDFA法により円相当径で3μm以上の炭化アルミニウムの個数を測定し、炭化アルミニウムの含有量をガスクロ分析(正式名称:ガスクロマトグラフ分析法、軽金属協会規格LIS−A07−1971に準拠)で測定した。さらに、420mm×592mmのサイズとした試験材の表面に、前記段落0031〜0041に記載された方法に従ってエッチングによる粗面化処理を行った後、陽極酸化皮膜を形成し、さらに中間層、感光層、保護層を設け、30日間放置し、表面に形成された最大膨れ直径、直径50μm以上の膨れの数を測定した。結果を表5に示す。
【0048】
【表3】

【0049】
【表4】

【0050】
【表5】

【0051】
表4に示すように、本発明に従う試験材1〜3はいずれも、直径50μm以上の膨れの発生がなく、露光不良による画像抜け等の画像欠陥を引き起こすおそれがないものであった。
【0052】
これに対して、試験材4、5は原料のアルミニウム地金に含有している炭化アルミニウムのサイズが大きく、円相当径で3μm以上の炭化アルミニウムの個数が多いため、表面に形成された膨れの最大径が50μm以上となり、膨れの数も多くなった。試験材6、7は原料のアルミニウム地金に含有している炭化アルミニウムのサイズは小さいが、溶解、精製、鋳造の工程で炭素含有部品との接触により円相当径で3μm以上の炭化アルミニウムが多く生成され、表面に形成された膨れの直径が50μm以上となり、膨れの数も多くなった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
PoDFA法により測定された円相当径で3μm以上の炭化アルミニウムの存在個数が4個以下であることを特徴とする平版印刷版用アルミニウム板材。前記PoDFA法による円相当径で3μm以上の炭化アルミニウムの存在個数の測定は、前記平版印刷版用アルミニウム板材3000gを電気炉中の坩堝内で溶解し、得られた溶湯を専用フィルタにより2000gろ過し、溶湯1000gを前記専用フィルタ上に残したまま凝固させ、フィルタ上10mm高さまでの凝固溶湯の直径縦断面中央部(14mm×10mm)を観察面として、フィルタ上面に堆積した溶湯中の介在物中の炭化アルミニウムを顕微鏡観察することにより行う。

【公開番号】特開2011−37173(P2011−37173A)
【公開日】平成23年2月24日(2011.2.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−187667(P2009−187667)
【出願日】平成21年8月13日(2009.8.13)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【出願人】(000002277)住友軽金属工業株式会社 (552)
【Fターム(参考)】