説明

平版印刷版用支持体および平版印刷版材料

【課題】耐刷性や耐地汚れ性を低下させずにインキ着肉性に優れた平版印刷版用支持体を提供する。また、レーザー描画に適性を有し、ケミカルフリーな現像が可能でありインキ着肉性に優れた平版印刷版材料を提供する。
【解決手段】プラスチックフィルム基体と該親水性層との間に位置する中間層がポリマーラテックスとゼラチンと架橋剤を含有し、該ポリマーラテックス量が該ゼラチン量に対して10〜100質量%であることを特徴とする平版印刷版用支持体。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はプラスチックフィルム基体上に親水性層を有する平版印刷版用支持体に関する。またこうした平版印刷版用支持体を用いた平版印刷版材料に関する。
【背景技術】
【0002】
平版印刷版用支持体としては、PS版等のように粗面化処理され、陽極酸化皮膜を有するアルミニウム板が広く用いられているが、他方で紙やフィルムを支持体とする平版印刷版材料が広く用いられている。こうした平版印刷版材料の一例として、銀塩拡散転写現像(DTR現像)を利用した平版印刷版材料がある。この平版印刷版材料は、露光されたハロゲン化銀結晶がDTR現像により化学現像され黒色の銀を形成し親水性の非画像部を形成し、一方、未露光のハロゲン化銀結晶は現像液中の銀塩錯化剤により銀塩錯体となって表面の物理現像核に拡散し、物理現像を生起してインク受容性の物理現像銀を主体とする画像部を形成する。こうしたプラスチックフィルムのようにフレキシブルな基体を用いた平版印刷版材料は、アルミ支持体の場合と比較して、安価でかつ取り扱いが容易であり、特にCTP(コンピュータートゥープレート)方式を利用した製版システムにおいては、ロール状の平版印刷版材料として極めてコンパクトに露光装置内に収納できるため好んで使用されている。
【0003】
アルミニウム支持体を利用せず、プラスチックフィルム基体表面に親水性層を設ける例としては、例えば、特公昭49−2286号公報に記載のヒドロキシアルキル基を有する(メタ)アクリレート系ポリマーによる親水性樹脂層、特公昭56−2938号公報に記載の尿素樹脂と顔料から構成される親水性層、特開昭48−83902号公報に記載のアクリルアミド系ポリマーをアルデヒド類で硬化させて得られる親水性層、特開昭62−280766号公報に記載の水溶性メラミン樹脂、ポリビニルアルコール、水不溶性無機粉体を含有する組成物を硬化させて得られる親水性層、特開平8−184967号公報に記載の側鎖にアミジノ基を有する繰り返し単位を含む水溶性ポリマーを硬化して得られる親水性層、特開平8−272087号公報に記載の親水性(共)重合体を含有し、加水分解されたテトラアルキルオルソシリケートで硬化された親水性層、特開平10−296895号公報に記載のオニウム基を有する親水性層、特開平11−311861号公報に記載のルイス塩基部分を有する架橋親水性ポリマーを多価金属イオンとの相互作用によって三次元架橋させて得られる親水性層、特開2000−122269号公報に記載の親水性樹脂及び水分散性フィラーを含有する親水性層等が挙げられる。
【0004】
更に特開2000−158839号公報(特許文献1)には、ポリアクリル酸等のカルボキシル基を有する水溶性ポリマーを含む親水性層をフィルム支持体上に形成し、インキ脱離性の良好な結果を示している。しかしながら、これら従来から知られる親水性層を用いた平版印刷版材料は、画像部の耐刷性と非画像部の耐地汚れ性において十分満足できるものではなく、この問題を改善する平版印刷版材料として本願出願人は特願2009−70880にて支持体と親水性との間にゼラチンと架橋剤を含有する中間層を設けた平版印刷版材料を開示した。しかしながらこの中間層を用いた場合、インキ着肉性が低下するという問題が生じる場合があった。
【0005】
一方、先に述べたようにプラスチックフィルムのようなフレキシブルな支持体を有する印刷版が要望されているが、銀塩拡散転写方式(DTR法)を利用した平版印刷版は高アルカリ溶液を現像液として用いていることから、現像処理が煩雑で、処理液の液性管理が厄介であり、安定した品質を維持することに問題があった。こうした背景から、現像処理を必要としないプロセスレス印刷版や、あるいは現像液が実質的にアルカリ剤を含有しないケミカルフリーの現像処理が可能な印刷版が切望されており、特にフレキシブルでプロセスレスあるいはケミカルフリーの印刷版に対する期待が大である。
【0006】
現在までのところ、プロセスレス印刷版としては、インクジェット方式あるいは感熱転写方式を利用するもの、及びレーザー光を利用する方式として、アブレーション方式を利用するもの、熱融着タイプのもの、及びマイクロカプセル型のものが挙げられる。これらは、下記に述べるレーザー光を利用する方式に比べて画質的に劣る問題があるものの、最も簡便に平版印刷版が作製できるため好ましい方式である。一方、レーザー光を利用する方式として、アブレーション方式に関しては、例えば、特開平8−507727号公報、特開平6−186750号公報、特開平6−199064号公報、特開平7−314934号公報、特開平10−58636号公報、特開平10−244773号公報等に記載されているものが挙げられる。熱融着タイプは、例えば、特許2938397号公報、特開2001−88458号公報、特開2001−39047号公報、特開2004−50616号公報及び特開2004−237592号公報等に記載される熱により熱融着性微粒子を融着させる方式を利用するものが挙げられる。マイクロカプセル型に関しては、特開2002−29162号公報、特開2002−46361号公報、特開2002−137562号公報、特開2004−66482号公報等にみられるような、マイクロカプセルあるいは微粒子に光重合性機能を付与した素材を使用し、光重合により、これらを硬化させるタイプのものである。しかしながらこれら各種方式を利用した平版印刷版であっても、プラスチックフィルム基体上に前述した中間層と親水性層を有する支持体を利用した場合、インキ着肉性が十分でないという共通した問題があった。
【0007】
特開2003−215801号公報(特許文献2)、特開2008−230205号公報(特許文献3)、特開2008−238505号公報(特許文献4)、特開2008−250198号公報(特許文献5)には、ケミカルフリーな現像が可能な光重合系の平版印刷版材料として、側鎖にフェニル基を介してビニル基が結合したアニオン性を有する共重合ポリマーを用いた感光層を有する平版印刷版材料が開示されている。しかしこのようなケミカルフリーな現像を可能にする上記共重合ポリマーは、従来から知られるアルカリ現像タイプの平版印刷版で使用するアルカリ可溶性ポリマーと比べてより親水性が高い。このためこのようなケミカルフリーな現像が可能な平版印刷版材料の支持体として、プラスチックフィルム基体上に中間層と親水性層を有する支持体を利用した場合、インキ着肉性が低下するという問題が特に顕著に現れ改善が求められていた。更に、上記共重合ポリマーとして側鎖にビニル基が置換したフェニル基とスルホン酸基を有する共重合ポリマーを用いた場合、インキ着肉性の低下はとりわけ顕著であった。
【0008】
特開2005−305852号公報(特許文献6)には、塗布故障や機上現像性の改善を目的にプラスチックフィルム基体と親水性層との間に位置する下引き層に、ゼラチンと特定量の硬膜剤を含有する下引き層を設けた平版印刷版が記載される。しかしながら十分なインキ着肉性は得られなかった。また、特開2005−161863号公報(特許文献7)や特開2006−56185号公報(特許文献8)にはプラスチックフィルム基体上にポリマーラテックスを含有する第1下塗り層、ゼラチンを含有する第2下塗り層及び親水性層を有する平版印刷版用支持体が開示されているが、十分なインキ着肉性は得られなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2000−158839号公報
【特許文献2】特開2003−215801号公報
【特許文献3】特開2008−230205号公報
【特許文献4】特開2008−238505号公報
【特許文献5】特開2008−250198号公報
【特許文献6】特開2005−305852号公報
【特許文献7】特開2005−161863号公報
【特許文献8】特開2006−56185号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の目的は、印刷時における耐刷性や耐地汚れ性が低下することなくインキ着肉性に優れた平版印刷版用支持体を提供することにある。また、レーザー描画に適性を有し、ケミカルフリーな現像が可能であり、インキ着肉性に優れた平版印刷版材料を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の上記目的は、以下の発明によって達成された。
(1)プラスチックフィルム基体上に、親水性層を含有する平版印刷版用支持体であって、該プラスチックフィルム基体と該親水性層との間に位置する中間層がポリマーラテックスとゼラチンと架橋剤を含有し、該ポリマーラテックス量が該ゼラチン量に対して10〜100質量%であることを特徴とする平版印刷版用支持体。
(2)上記(1)に記載の平版印刷版用支持体が有する親水性層上に、側鎖にビニル基が置換したフェニル基とスルホン酸基を有する共重合ポリマー、光重合開始剤及び増感色素を含有する感光層を有する平版印刷版材料。
【発明の効果】
【0012】
本発明により、印刷時における耐刷性や耐地汚れ性が低下することなくインキ着肉性に優れた平版印刷版用支持体を提供することができる。また、ケミカルフリーな現像が可能で、インキ着肉性に優れた平版印刷版材料を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の平版印刷版用支持体が有するプラスチックフィルム基体としては、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリビニルアセタール、ポリカーボネート、二酢酸セルロース、三酢酸セルロース、プロピオン酸セルロース、酪酸セルロース、硝酸セルロース等が代表的に挙げられ、特にポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレートが好ましく用いられる。
【0014】
本発明の平版印刷版用支持体は、プラスチックフィルム基体上に親水性層を有し、該プラスチックフィルム基体と該親水性層との間に位置する中間層がポリマーラテックスとゼラチンと架橋剤とを含有し、該ポリマーラテックス量がゼラチン量に対して10〜100質量%である。本願出願人は特願2009−70880にて、画像部の耐刷性と非画像部の耐地汚れ性共に十分な性能が得られる平版印刷版材料として、プラスチックフィルム基体と親水性層との間にゼラチンを含有する中間層を有する平版印刷版材料を出願した。しかしながらゼラチンを含有する中間層上に親水性層や感光層を塗布した場合、十分なインキ着肉性が得られない場合があった。そこで本発明者は鋭意検討した結果、ポリマーラテックス量をゼラチン量に対して10〜100質量%とすることで、十分なインキ着肉性が得られることを見いだした。すなわち上記した本発明の優れた効果は、中間層が含有するポリマーラテックス量を上記範囲とすることにより、中間層上に親水性層や感光層を塗布した際にゼラチンの低分子成分の拡散移動が感光層にまで及ぶことがなく、十分なインキ着肉性が得られるものと推測される。
【0015】
本発明の中間層が含有するポリマーラテックス量は、ゼラチン量に対して10〜100質量%であるが、より好ましいポリマーラテックス量はゼラチン量に対して30〜50質量%である。ポリマーラテックス量が10質量%未満である場合には十分なインキ着肉性が得られない。これはポリマーラテックス量が少ないことでゼラチンの低分子成分の拡散移動が生じるためと推測される。またポリマーラテックス量が100質量%を超えた場合であっても十分なインキ着肉性が得られない。これはポリマーラテックスの量が多くても中間層中におけるゼラチンの分子間相互作用が低下し、ゼラチンの低分子成分の拡散移動が生じるものと推測される。
【0016】
本発明における中間層に用いられるポリマーラテックスとしては、単独重合体や共重合体等各種公知のラテックスを用いることができる。単独重合体としては酢酸ビニル、塩化ビニル、スチレン、メチルアクリレート、メチルメタクリレート、ブチルアクリレート、メタクリロニトリル、ブタジエン、イソプレン、アクリロニトリル等があり、共重合体としてはエチレン・ブタジエン、スチレン・ブタジエン、アクリロニトリル・ブタジエン、スチレン・p−メトキシスチレン、スチレン・酢酸ビニル、酢酸ビニル・塩化ビニル、酢酸ビニル・マレイン酸ジエチル、メチルメタクリレート・アクリロニトリル、メチルメタクリレート・ブタジエン、メチルメタクリレート・スチレン、メチルメタクリレート・酢酸ビニル、メチルメタクリレート・塩化ビニリデン、メチルアクリレート・アクリロニトリル、メチルアクリレート・ブタジエン、メチルアクリレート・スチレン、メチルアクリレート・酢酸ビニル、アクリル酸・ブチルアリレート、メチルアクリレート・塩化ビニル、ブチルアクリレート・スチレン等がある。この中でもアニオン性のポリマーラテックスが好ましく、更にカルボキシル基を有するポリマーラテックスを用いることが好ましい。カルボキシル基を含有するポリマーラテックスとしてはカルボキシル変性スチレン・ブタジエンラテックスや、カルボキシル変性アクリロニトリル・ブタジエンラテックスや、カルボキシル変性メチルメタクリレート・ブタジエン等が挙げられる。
【0017】
本発明の中間層はゼラチンを含有するため、かかるポリマーラテックスは水性媒体に分散されたエマルジョンであることが好ましく、その平均粒径は0.01〜1.0μmであることが好ましく、更に好ましくは0.05〜0.2μmである。このエマルジョンはポリマーラテックスをそのまま水性媒体中に分散させたものであってもよいが、特に乳化重合により製造されたエマルジョンであることが望ましい。
【0018】
本発明の中間層の固形分塗布量の好ましい範囲は、1平方メートルあたり1gから50gの間であり、更に好ましい範囲は1平方メートルあたり2gから25gの間であり、最も好ましい範囲は1平方メートルあたり3gから15gの間である。中間層の固形分塗布量が少ないと、非画像部の耐地汚れ性が悪化、あるいは画像部の耐刷性が悪化する場合がある。また、中間層の固形分塗布量が過剰にあると画像部の耐刷性が悪化する場合がある。
【0019】
本発明の中間層が含有するゼラチンとしては平均分子量30,000以上であることが好ましく、より好ましくは70,000〜150,000である。例えば牛骨または牛皮を原料としたアルカリ法ゼラチン、豚皮を原料に用いた酸性法ゼラチン、変性ゼラチン(例えばフタル化ゼラチン等)が挙げられ、またこれらのゼラチンに含まれる不純物(例えばカルシウムイオン、ナトリウムイオン、クロライドイオン等の塩類、脂質、核酸及びその分解物、アルデヒド類等)が精製や脱塩処理を施すことにより低減されたゼラチンが挙げられる。本発明の中間層には二種類以上のゼラチンを併用してもよい。
【0020】
また本発明の中間層は架橋剤を含有する。かかる架橋剤としては、公知の種々の化合物が挙げられる。具体的にはエポキシ化合物、アジリジン化合物、オキサゾリン化合物、イソシアネート化合物及びその誘導体、ホルマリン等のアルデヒド化合物及びメチロール化合物、ヒドラジド化合物等が好ましい例として挙げられ、特に好ましい架橋剤はエポキシ化合物である。
【0021】
エポキシ化合物としては分子内に2個以上のエポキシ基を有する化合物が好ましく使用される。好ましいエポキシ化合物の具体例を下記に示す。
【0022】
【化1】

【0023】
アジリジン化合物として好ましい化合物の具体例を下記に示す。
【0024】
【化2】

【0025】
オキサゾリン化合物としては、置換基として下記一般式(1)で示す基を分子内に2個以上含む化合物が好ましく、市販される各種化合物として例えば(株)日本触媒からエポクロスの商品名で提供される各種グレードの化合物が好ましく使用される。
【0026】
【化3】

【0027】
イソシアネート化合物としては、水中で安定である化合物が好ましく、いわゆる自己乳化性イソシアネート化合物や、ブロックイソシアネート化合物が好ましく使用される。自己乳化性イソシアネート化合物としては、例えば特公昭55−7472号公報(米国特許第3,996,154号明細書)、特開平5−222150号公報(米国特許第5,252,696号明細書)、特開平9−71720号公報、特開平9−328654号公報、特開平10−60073号公報等に記載されるような自己乳化性イソシアネートを指す。
【0028】
ホルムアルデヒド、グリオキサール等のアルデヒド化合物及びメチロール化合物の例としては、ホルムアルデヒド、グリオキザール、及び下記に示すような種々のN−メチロール化合物を例示することができる。
【0029】
【化4】

【0030】
ヒドラジド化合物として好ましく使用できる化合物の具体例を下記に示す。
【0031】
【化5】

【0032】
上記のような種々の架橋剤とゼラチンとの比率に関しては好ましい範囲が存在する。ゼラチン100質量部に対して架橋剤は1〜40質量部の範囲で用いることが好ましい。
【0033】
またポリマーラテックス量がゼラチン量に対して10〜100質量%である本発明の中間層は、該架橋剤を含有することによりゼラチンの溶解率が0〜10質量%である中間層とすることが好ましく、より好ましくは0〜5質量%である。
【0034】
本発明のゼラチンの溶解率は、プラスチックフィルム基体上に中間層が塗布された支持体を細かく裁断し、この片を合計100cm準備し、これを25℃、10mlの純水中に投入し、日本ジェネティクス(株)製SHAKING BATHSにて1分間攪拌し、この液を採取し、紫外・可視吸収スペクトル測定装置(UShiO社製 V−560)を用いて、液中に溶解したゼラチン量を定量することで求められる。
【0035】
本発明の平版印刷版材料の中間層には無機微粒子を含有することができる。これらの無機微粒子には、コロイダルシリカ、二酸化チタン粒子、アルミナ粒子(例えば酸化アルミニウム水和物、水酸化アルミニウム)、ゼオライト、その他の金属酸化物からなる粒子等が挙げられる。また、これらの無機微粒子は粒子表面に表面処理がなされていてもよい。
【0036】
本発明の親水性層の構成は、カルボキシル基、アミノ基、水酸基、アセトアセトキシ基から選ばれる少なくとも1種の官能基を有する水溶性ポリマー、無機微粒子及び架橋剤を含有することが好ましい。
【0037】
本発明の平版印刷版用支持体が有する親水性層が含有するカルボキシル基、アミノ基、水酸基、アセトアセトキシ基から選ばれる少なくとも1種の官能基を有する水溶性ポリマーとしては、例えばポリビニルアルコール、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース等の水酸基を有する水溶性ポリマーや、ポリアクリル酸、ポリスチレン−マレイン酸共重合体、ポリ酢酸ビニル−クロトン酸共重合体、カルボキシメチルセルロース等のカルボキシル基を有する水溶性ポリマー、及びポリエチレンイミン、ポリアリルアミン等のアミノ基を有する水溶性ポリマー等を挙げることができる。
【0038】
本発明の親水性層には一般式(2)で示されるポリマーを含有することが特に好ましく、該ポリマーを用いることで、特に画像部の耐刷性及びインキ着肉性に優れた平版印刷版材料が得られる。
【0039】
【化6】

【0040】
式中Xはポリマー組成中に占める繰り返し単位の質量%を表し、1から40までの任意の数値を表す。繰り返し単位Aは反応性基としてカルボキシル基、アミノ基、水酸基、アセトアセトキシ基から選ばれる基を有する繰り返し単位を表し、繰り返し単位Bはポリマーを水溶性にするために必要な親水性基を有する繰り返し単位を表す。
【0041】
上記一般式(2)で示される水溶性ポリマーは後述する架橋剤との間で効率的に架橋反応が進行するための反応性基を分子内に含むことが重要である。こうした反応性基として、カルボキシル基、アミノ基、水酸基、アセトアセトキシ基が挙げられる。これらの反応性基を分子内に有する水溶性ポリマーを得るには、反応性基を有する各種モノマーを共重合する形で組み込むことが好ましく行われる。上記一般式(2)で示す繰り返し単位Aに対応するモノマーとしては、アクリル酸、メタクリル酸、2−カルボキシルエチルアクリレート、2−カルボキシルエチルメタクリレート、イタコン酸、クロトン酸、マレイン酸、フマル酸、桂皮酸、マレイン酸モノアルキルエステル、フマル酸モノアルキルエステル、4−カルボキシルスチレン、アクリルアミド−N−グリコール酸等のカルボキシル基含有モノマー及びこれらの塩、アリルアミン、ジアリルアミン、2−ジメチルアミノエチルアクリレート、2−ジメチルアミノエチルメタクリレート、2−ジエチルアミノエチルアクリレート、2−ジエチルアミノエチルメタクリレート、3−ジメチルアミノプロピルアクリルアミド、3−ジメチルアミノプロピルメタクリルアミド、4−アミノスチレン、4−アミノメチルスチレン、N,N−ジメチル−N−(4−ビニルベンジル)アミン、N,N−ジエチル−N−(4−ビニルベンジル)アミン等のアミノ基含有モノマー、4−ビニルピリジン、2−ビニルピリジン、N−ビニルイミダゾール等の含窒素複素環含有モノマー、N−メチロールアクリルアミド、4−ヒドロキシフェニルアクリルアミド等の(メタ)アクリルアミド類、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレート、2−ヒドロキシプロピルメタクリレート、グリセロールモノメタクリレート等のヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート類及びアセトアセトキシメタクリレート等が挙げられるが、これらの例に限定されるものではない。
【0042】
上記一般式(2)において、繰り返し単位Aの共重合体中における割合であるXは1から40であり、この範囲より少なければ架橋反応が進行しても十分な膜強度が得られない場合があり、この範囲より多ければ、下記の水溶性を付与するための繰り返し単位Bの導入による効果が薄れ、親水性層の水に対する親和性が低下する場合がある。
【0043】
更に、一般式(2)における繰り返し単位Bを与えるためのモノマーとしては、ビニルスルホン酸、アリルスルホン酸、メタリルスルホン酸、スチレンスルホン酸、2−スルホエチルメタクリレート、3−スルホプロピルメタクリレート、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸等のスルホン酸基含有モノマー及びこれらの塩、ビニルホスホン酸等のリン酸基含有モノマー及びこれらの塩、ジメチルジアリルアンモニウムクロライド、アクリル酸−2−(トリメチルアンモニオ)エチルエステル、メタクリル酸−2−(トリメチルアンモニオ)エチルエステル、アクリル酸−2−(トリエチルアンモニオ)エチルエステル、メタクリル酸−2−(トリエチルアンモニオ)エチルエステル、(3−アクリルアミドプロピル)トリメチルアンモニウムクロライド、N,N,N−トリメチル−N−(4−ビニルベンジル)アンモニウムクロライド等の4級アンモニウム塩、アクリルアミド、メタクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミド、N,N−ジメチルメタクリルアミド、N,N−ジエチルアクリルアミド、N−イソプロピルメタクリルアミド等の(メタ)アクリルアミド類、メタクリル酸メトキシジエチレングリコールモノエステル、メタクリル酸メトキシポリエチレングリコールモノエステル、メタクリル酸ポリプロピレングリコールモノエステル等のアルキレンオキシ基含有(メタ)アクリレート類、N−ビニルピロリドン、N−ビニルカプロラクタム等が挙げられるがこれらに限定されるものではない。これら水溶性モノマーは繰り返し単位Bを構成するために1種で用いてもよいし、任意の2種類以上を用いてもよい。本発明における好ましい水溶性ポリマーの具体例を下記に示す。なお、本発明において水溶性とは1Lの水に水溶性ポリマーが0.5g以上溶解することを意味する。
【0044】
【化7】

【0045】
【化8】

【0046】
本発明において親水性層に好ましく用いられる無機微粒子としては、コロイダルシリカ、二酸化チタン粒子、アルミナ粒子(例えば酸化アルミニウム水和物、水酸化アルミニウム)、ゼオライト、その他の金属酸化物からなる粒子等が挙げられる。また、これらの無機微粒子は粒子表面に表面処理がなされていてもよい。本発明において特に好ましい無機微粒子はコロイダルシリカ、二酸化チタン粒子であり、特に優れたインキ着肉性が得られる。
【0047】
本発明に好ましく用いられるコロイダルシリカとは、光散乱方式粒度分布計で計測される平均粒子径が好ましくは5〜200nmである球状、針状、不定形、あるいは球状粒子が連なってできるネックレス状等の種々の形状、粒子径のシリカ粒子であり、水中に安定的に分散したシリカゾルが好ましく用いられる。こうした素材は、例えば日産化学工業(株)からスノーテックスの商品名で各種のコロイダルシリカが提供されており、球状のシリカゾルとしてスノーテックスXS(粒子径4〜6nm)、スノーテックスS(粒子径8〜11nm)、スノーテックス20(粒子径10〜20nm)、スノーテックスXL(粒子径40〜60nm)、スノーテックスYL(粒子径50〜80nm)、スノーテックスZL(粒子径70〜100nm)、スノーテックスMP−2040(粒子径200nm)及び表面のナトリウム塩を除去した酸性タイプのシリカゾルとしてスノーテックスOXS、OS等が好ましく使用できる。針状あるいは不定形のシリカゾルとして、例えばスノーテックスUP、OUPや日揮触媒化成(株)から出されているファインカタロイドF−120等が挙げられる。ネックレス状のシリカゾルとして、スノーテックスPS−S(粒子径80〜120nm)、PS−M(粒子径80〜150nm)及びこれらの酸性タイプであるPS−SO及びPS−MO等が挙げられる。
【0048】
本発明に好ましく用いられる二酸化チタン粒子とは、平均粒子径が10〜800nmの間にある球状粒子が好ましく、その製造方法は塩素法、硫酸法がありアナタース型、ルチル型、ブルカライト型等があるが、好ましくはルチル型の二酸化チタンを無機物で表面処理したものである。二酸化チタン表面の無機処理としては、アルミナ処理、シリカ処理、ジルコニア処理、亜鉛処理、錫処理、アンチモン処理等があり、それぞれの酸化物が用いられる。これらの中でもシリカ処理、ジルコニア処理、亜鉛処理が好ましく、特にシリカ処理、ジルコニア処理が好ましい。また、これらの無機処理は複合処理であってもよく、例えば、シリカとアルミナの複合処理、ジルコニアとアルミナの複合処理、シリカ、ジルコニア及びアルミナの複合処理が挙げられる。このような二酸化チタン粒子は、例えば堺化学工業(株)からR−11P(粒子径200nm)、R−21(粒子径200nm)、R−61N(粒子径260nm)、R−5N(粒子径250nm)、R−45M(粒子径290nm)、A−110(粒子径150nm)、A−190(粒子径150nm)、石原産業(株)からTTO−55A(粒子径30〜50nm)、TTO−55D(粒子径30〜50nm)として市販されている。
【0049】
親水性層に含まれる無機微粒子は、各々の種類の無機微粒子を単独で使用してもよいが、あるいは異なる種類の無機微粒子を種々の割合で混合して用いてもよい。上述したような無機微粒子の含有量は前述した水溶性ポリマー1質量部に対して0.1〜10質量部の範囲が好ましく、特に好ましくは0.5〜5質量部の範囲で含まれることである。
【0050】
親水性層の乾燥質量に関しては好ましい範囲が存在し、具体的には、親水性層の乾燥質量が1平方メートルあたり0.1gから10gの間であり、好ましい範囲は1平方メートルあたり0.2gから5gの間であり、最も好ましい範囲は1平方メートルあたり0.3gから2gの間である。
【0051】
本発明の親水性層には架橋剤を含むことが好ましく、前述した中間層に含有できる架橋剤と同化合物群を用いることができる。特に好ましい架橋剤はエポキシ化合物である。
【0052】
本発明の親水性層には、前述の水溶性ポリマー、無機微粒子、架橋剤の他に、界面活性剤、pH調整剤等を含有することができる。
【0053】
本発明の平版印刷版用支持体上には以下のような公知の方法により画像を形成することができるが、本発明はこれらの方法に限るものではない。
【0054】
公知のインクジェット法により画像状にインキ受容素材を親水性層上に付着させてインク受容性画像層を形成する。該インキ受容素材は耐水性を有する素材であって、ホットメルトや画像形成後に熱または光で硬化する熱硬化性物質または光硬化性物質でもよい。
【0055】
熱硬化性物質の例としては、ハロゲン化ビスフェノール、レゾルシン、ビスフェノールF、テトラヒドロキシフェニルエタン、ノボラック、ポリヒドロキシ化合物、ポリグリコール、グリセリントリエーテル、ポリオレフィン、エポキシ化大豆油、ビニルシクロヘキセンジオキシド、エポキシ化大豆油と有機酸またはその無水物(例、フタル酸、マレイン酸、セバシン酸またはその無水物)、あるいは有機過酸化物(例、過酸化ベンゾイルまたは過酸化フタロイド)との組み合わせ、ジアリルオルソフタレート、ジアリルイソフタレートまたはジアリルクロレンテート、あるいはこれらと有機化酸化物(例、過酸化ベンゾイルまたは過酸化フタロイド)との組み合わせ、N−メチル−N′−メチロールウロンエチルエーテル、N−メチル−N′−メチロールウロンメチルエーテル、N−エチル−N′−メチロールウロンメチルエーテル、テトラメチロールウレア、N−メチル−N,N′,N′−トリメチロールウレア、N−エチル−N,N′,N′−トリメチロールウレア、N,N′−ジエチル−N,N′−ジメチロールウレア、モノ及びポリメチロールメラミン、p−メチロールフェノール、フェノール、o−メチロールフェノール、2,4−ジメチロールフェノールあるいは2,6−ジメチロールフェノールとホルムアルデヒドとの組み合わせ、アニリン樹脂、キシレン樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、及びフラン樹脂を挙げることができる。
【0056】
光硬化性物質としては、不飽和ポリエステル(二塩基酸の例:無水マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、コハク酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、無水フタル酸、テトラヒドロ無水フタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、無水トリメリット酸及び無水ピロメリット酸;多価アルコールの例:エチレングリコール、プロピレングリコール、2,3−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,4−ブタンジオール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリエチレングリコール、グリセリントリメチロールプロパン、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール);及びアクリレートまたはメタクリレートモノマーまたはオリゴマー(例:メトキシジエチレングリコールメタクリレート、メトキシテトラエチレングリコールメタクリレート、メトキシジエチレングリコールアクリレート、メトキシポリエチレングリコールアクリレート、メトキシポリエチレングリコールメタクリレート、2−ヒドロキシドデシルメタクリレート、2−ヒドロキシドデシルアクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート、エチレングリコールメタクリレート、ポリエチレングリコールジメタクリレート、1,3−ブチレングリコールジメタクリレート、1,4−ブチレングリコールジメタクリレート、1,6−ヘキサングリコールジメタクリレート、ネオペンチルグリコールジメタクリレート、ジプロピレングリコールジメタクリレート、ポリプロピレングリコールジメタクリレート、2,2−ビス(4−メタクリロキシジエトキシフェニル)プロパン、ジエチレングリコールジアクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレート、1,3−ブチレングリコールジアクリレート、1,6−ヘキサングリコールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、ポリプロピレングリコールジアクリレート、2,2′−ビス(4−アクリロキシプロピロキシフェニル)プロパン、2,2′−ビス(4−アクリロキシジエトキシフェニル)プロパン、トリメチロールプロパントリメタクリレート、トリメチロールエタントリメタクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、トリメチロールエタントリアクリレート、トリメチロールメタントリアクリレート、トリメチロールプロパンジアクリレートモノヤシ油脂肪酸エステル、テトラメチロールメタンテトラアクリレート、ジブロムネオペンチルグリコールジメタクリレート、及び2,3−ジブロムプロピルアクリレート)を挙げることができる。上記光硬化性物質は、一般に光重合開始剤と共に使用される。光重合開始剤の例としては、ベンゾフェノン等の芳香族ケトン類、アセトフェノン類、ジケトン類及びアシルオキシムエステル類等を挙げることができる。
【0057】
感熱転写方式による親油性の画像層の形成は、例えば下記のように行うことができる。本発明の平版印刷版用支持体の親水性層表面に、基体上に感熱転写層を設けてなる感熱転写シートの感熱転写層を密着させる。次いで基体側からサーマルヘッドにより画像様に加熱し、該親水性層上に加熱部分に対応する感熱転写層を転写する。これにより、該親水性層表面の一部に感熱転写層からなる親油性層を形成する。勿論サーマルヘッドの代わりにレーザービームを使用することもできる。上記感熱転写シートの感熱転写層の材料としては、加熱により溶融して上記画像受容層に転写することができるものが使用される。感熱転写層は、加熱により溶融する樹脂及び無機顔料からなり、必要により染料が添加される。樹脂例としては、パラフィンワックス、天然ロジン、高級脂肪酸エステル、ポリアミド、エチレン/酢酸ビニル共重合体、ポリエステル、ポリアクリル酸エステル等のアクリル樹脂、ポリ塩化ビニル等を挙げることができ、無機顔料の例としてはシリカ、炭酸カルシウム、カーボンブラック、チタンホワイト等を挙げることができる。
【0058】
また、公知の光重合性の感光層を親水性層上に塗設し、露光後、未露光部分をケミカルフリーな現像液にて現像する、もしくは印刷機上で給湿液等により除去して画像層を形成することも好ましく行うことができる。こうした感光層に用いるポリマーとしては分子内に重合性二重結合を有するポリマーがあり、分子内に重合性二重結合を有する重合体として特に側鎖に重合性二重結合を有するポリマーを用いる系が好ましい。本発明に関わるケミカルフリーな現像液にて現像する、もしくは印刷機上で給湿液等により除去して画像層を形成することが可能な光硬化性感光層を与える系として、重合性二重結合を有するモノマーとしてビニル基が置換したフェニル基を有するモノマーと、水溶性基含有モノマーとして構造中にスルホン酸基を有しているモノマー(例えば3−スルホプロピルメタクリレート、4−スルホスチレン、4−スルホ−n−ブチルメタクリルアミド、スルホ−tert−ブチルアクリルアミド等)を共重合成分として含む、側鎖にビニル基が置換したフェニル基とスルホン酸基を有する共重合ポリマーが挙げられ、該スルホン酸基は塩(例えばナトリウム塩、カリウム塩、トリエチルアンモニウム塩、リチウム塩、テトラメチルアンモニウム塩等)を形成していてもよい。このポリマーは構造中に有するスルホン酸基が水溶性を高めるため、現像液のpH値が4.0以上10.0未満の範囲内にある、アルカリ剤を実質的に含有しないケミカルフリーな現像液にて現像を行う方法(以下、単に水現像と称する場合もある)、または露光後の露光済み版を印刷機に装着して印刷機上で現像を行う方法(以降、機上現像と称する場合もある)が可能となる。また、重合性二重結合として側鎖にビニル基が置換したフェニル基を有することで、高感度化が可能となる。
【0059】
上記共重合ポリマーが側鎖に有するビニル基が置換したフェニル基とは、ベンゼン環やナフタレン環等の芳香族環にビニル基が置換されており、該ビニル基はハロゲン原子、カルボキシル基、スルホ基、ニトロ基、シアノ基、アミド基、アミノ基、アルキル基、アリール基、アルコキシ基、アリールオキシ基等で置換されていても良く、また芳香族環にも置換基を有していてもよい。このような重合体は本発明の平版印刷版用支持体が有する親水性層と強固に結合するため、印刷時における物理的な応力による画像の剥離や溶解が極めて起こりにくく、このため向上されたインキ着肉性は多部数にわたるロングラン印刷時においても刷了まで持続することができるため好ましい。ビニル基が置換したフェニル基とは、詳細には下記一般式(3)で表される。
【0060】
【化9】

【0061】
式中、R11、R12及びR13は、同じであっても異なっていても良く、それぞれ水素原子、ハロゲン原子、カルボキシル基、スルホ基、ニトロ基、シアノ基、アミド基、アミノ基、アルキル基、アリール基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、アルキルアミノ基、アリールアミノ基、アシル基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基から選ばれる基を表し、これらの基を構成するアルキル基及びアリール基は、ハロゲン原子、カルボキシル基、スルホ基、ニトロ基、シアノ基、アミド基、アミノ基、アルキル基、アリール基、アルケニル基、ヒドロキシ基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、アルキルアミノ基、アリールアミノ基、アシル基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基等で置換されていてもよい。これらの基の中でも、R11が水素原子もしくは炭素数4以下の低級アルキル基(例えばメチル基、エチル基等)であり、R12及びR13が水素原子であるものが特に好ましい。
【0062】
式中、R14は水素原子、ハロゲン原子、カルボキシル基、ニトロ基、シアノ基、アミド基、アミノ基、アルキル基、アリール基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、アルキルアミノ基、アリールアミノ基、アシル基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基から選ばれる基を表す。また、これらの基を構成するアルキル基及びアリール基は、ハロゲン原子、カルボキシル基、スルホ基、ニトロ基、シアノ基、アミド基、アミノ基、アルキル基、アリール基、アルケニル基、アルキニル基、ヒドロキシ基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、アルキルアミノ基、アリールアミノ基、アシル基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基等で置換されていてもよい。
【0063】
式中、mは0〜4の整数を表し、pは0または1の整数を表す。また、Lは炭素原子、窒素原子、酸素原子、硫黄原子から選ばれる原子または水素原子、炭素原子、窒素原子、酸素原子、硫黄原子群からなる多価の連結基を表す。
【0064】
を構成する複素環の例としては、ピロール環、ピラゾール環、イミダゾール環、トリアゾール環、テトラゾール環、イソオキサゾール環、オキサゾール環、オキサジアゾール環、イソチアゾール環、チアゾール環、チアジアゾール環、チアトリアゾール環、インドール環、インダゾール環、ベンズイミダゾール環、ベンゾトリアゾール環、ベンズオキサゾール環、ベンズチアゾール環、ベンズセレナゾール環、ベンゾチアジアゾール環、ピリジン環、ピリダジン環、ピリミジン環、ピラジン環、トリアジン環、キノリン環、キノキサリン環等の含窒素複素環、フラン環、チオフェン環等が挙げられ、これらの複素環は置換基を有していてもよい。
【0065】
上述した多価の連結基が置換基を有する場合、置換基としては、ハロゲン原子、カルボキシル基、スルホ基、ニトロ基、シアノ基、アミド基、アミノ基、アルキル基、アリール基、アルケニル基、アルキニル基、ヒドロキシ基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、アルキルアミノ基、アリールアミノ基、アシル基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基等が挙げられる。
【0066】
本発明における側鎖にビニル基が置換したフェニル基とスルホン酸基を有する共重合ポリマーの具体例を下記に示す。
【0067】
【化10】

【0068】
本発明の平版印刷版材料の光重合性の感光層は、レーザー描画に適性を有し、露光後、未露光部分をケミカルフリーな現像液にて現像する。もしくは印刷機上で給湿液等により除去して画像層を形成することを目的に、上記側鎖にビニル基が置換したフェニル基とスルホン酸基を有する共重合ポリマーと共に、光重合開始剤及び増感色素を含有する感光層であることが極めて好ましい。本発明に用いられる光重合開始剤としては、光または電子線の照射によりラジカルを発生しうる化合物であれば任意の化合物を用いることができる。
【0069】
本発明に用いることのできる光重合開始剤の例としては有機ホウ素塩化合物、芳香族オニウム塩化合物、有機過酸化物、ヘキサアリールビイミダゾール化合物、トリハロアルキル置換化合物、芳香族ケトン類等が挙げられ、特に好ましい光重合開始剤は有機ホウ素塩化合物である。
【0070】
有機ホウ素塩化合物の例としては、特開平8−217813号公報、特開平9−106242号公報、特開平9−188685号公報、特開平9−188686号公報、特開平9−188710号公報等に記載の有機ホウ素アンモニウム化合物、特開平6−175561号公報、特開平6−175564号公報、特開平6−157623号公報等に記載の有機ホウ素スルホニウム化合物及び有機ホウ素オキソスルホニウム化合物、特開平6−175553号公報、特開平6−175554号公報等に記載の有機ホウ素ヨードニウム化合物、特開平9−188710号公報等に記載の有機ホウ素ホスホニウム化合物、特開平6−348011号公報、特開平7−128785号公報、特開平7−140589号公報、特開平7−292014号公報、特開平7−306527号公報等に記載の有機ホウ素遷移金属配位錯体化合物等が挙げられる。また、特開昭62−143044号公報、特開平5−194619号公報等に記載の対アニオンとして有機ホウ素アニオンを含有するカチオン性色素が挙げられる。
【0071】
芳香族オニウム塩化合物の例としては、N、P、As、Sb、Bi、O、S、Se、TeまたはIの芳香族オニウム塩が含まれる。このような芳香族オニウム塩化合物は特公昭52−14277号公報、特開昭52−14278号公報、特開昭52−14279号公報等に例示されている化合物を挙げることができる。
【0072】
有機過酸化物の例としては、分子中に酸素−酸素結合を一個以上有する有機化合物のほとんど全てが含まれるが、例えば、3,3′,4,4′−テトラ(tert−ブチルパーオキシカルボニル)ベンゾフェノン、3,3′,4,4′−テトラ(tert−アミルパーオキシカルボニル)ベンゾフェノン、3,3′,4,4′−テトラ(tert−ヘキシルパーオキシカルボニル)ベンゾフェノン、3,3′,4,4′−テトラ(tert−オクチルパーオキシカルボニル)ベンゾフェノン、3,3′,4,4′−テトラ(クミルパーオキシカルボニル)ベンゾフェノン、3,3′,4,4′−テトラ(p−イソプロピルクミルパーオキシカルボニル)ベンゾフェノン、ジ(tert−ブチルジパーオキシ)イソフタレート等の過酸化エステル系が好ましい。
【0073】
ヘキサアリールビイミダゾール化合物の例としては、特公昭45−37377号公報、特公昭44−86516号公報に記載のロフィンダイマー類、例えば2,2′−ビス(o−クロロフェニル)−4,4′,5,5′−テトラフェニルビイミダゾール、2,2′−ビス(o−ブロモフェニル)−4,4′,5,5′−テトラフェニルビイミダゾール、2,2′−ビス(o,p−ジクロロフェニル)−4,4′,5,5′−テトラフェニルビイミダゾール、2,2′−ビス(o−クロロフェニル)−4,4′,5,5′−テトラ(m−メトキシフェニル)ビイミダゾール、2,2′−ビス(o,o′−ジクロロフェニル)−4,4′,5,5′−テトラフェニルビイミダゾール、2,2′−ビス(o−ニトロフェニル)−4,4′,5,5′−テトラフェニルビイミダゾール、2,2′−ビス(o−メチルフェニル)−4,4′,5,5′−テトラフェニルビイミダゾール、2,2′−ビス(o−トリフルオロメチルフェニル)−4,4′,5,5′−テトラフェニルビイミダゾール等が挙げられる。
【0074】
トリハロアルキル置換化合物の例としては、具体的にはトリクロロメチル基、トリブロモメチル基等のトリハロアルキル基を分子内に少なくとも一個以上有する化合物であり、米国特許第3,954,475号明細書、米国特許第3,987,037号明細書、米国特許第4,189,323号明細書、特開昭61−151644号公報、特開昭63−298339号公報、特開平4−69661号公報、特開平11−153859号公報等に記載のトリハロメチル−s−トリアジン化合物、特開昭54−74728号公報、特開昭55−77742号公報、特開昭60−138539号公報、特開昭61−143748号公報、特開平4−362644号公報、特開平11−84649号公報等に記載の2−トリハロメチル−1,3,4−オキサジアゾール誘導体等が挙げられる。また、該トリハロアルキル基がスルホニル基を介して芳香族環あるいは含窒素複素環に結合した、特開2001−290271号公報等に記載のトリハロアルキルスルホニル化合物が挙げられる。
【0075】
芳香族ケトン類の好ましい例としては、「RADIATION CURING IN POLYMER SCIENCE AND TECHNOLOGY」 J.P.FUOASSIER,J.F.RABEK(1993)、P.77〜P.177に記載のベンゾフェノン骨格、あるいはチオキサントン骨格を有する化合物、特公昭47−6416号公報に記載のα−チオベンゾフェノン化合物、特公昭47−3981号公報に記載のベンゾインエーテル化合物、特公昭47−22326号公報に記載のα−置換ベンゾイン化合物、特公昭47−23664号公報に記載のベンゾイン誘導体、特開昭57−30704号公報に記載のアロイルホスホン酸エステル、特公昭60−26483号公報に記載のジアルコキシベンゾフェノン類、特公昭60−26403号公報、特開昭62−81345号公報に記載のベンゾインエーテル類、特開平2−211452号公報に記載のp−ジ(ジメチルアミノベンゾイル)ベンゼン、特開昭61−194062号公報に記載のチオ置換芳香族ケトン、特公平2−9597号公報に記載のアシルホスフィンスルフィド、特公平2−9596号公報に記載のアシルホスフィン類、特公昭63−61950号公報に記載のチオキサントン類、特公昭59−42864号公報に記載のクマリン類を挙げることができる。
【0076】
本発明に用いられる光重合開始剤には光酸発生剤として知られている化合物も含まれる。光酸発生剤は、光または電子線の照射により分解し、塩酸、スルホン酸等の強酸やルイス酸の如き酸を発生しうる化合物であれば任意の化合物を用いることができる。本発明に用いることのできる光酸発生剤の例としては、(k)芳香族ジアゾニウム塩化合物、(l)ピバリン酸−o−ニトロベンジルエステル、ベンゼンスルホン酸−o−ニトロベンジルエステル等のo−ニトロベンジルエステル類、(m)9,10−ジメトキシアントラセン−2−スルホン酸−4−ニトロベンジルエステル、ピロガロールトリスメタンスルホネート、ナフトキノンジアジド−4−スルホン酸エステル類等のスルホン酸エステル誘導体、(n)ジベンジルスルホン、4−クロロフェニル−4′−メトキシフェニルジスルホン等のスルホン類、(o)リン酸エステル誘導体及び(p)米国特許第3,332,936号明細書、特開平2−83638号公報、特開平11−322707号公報、特開2000−1469号公報等に記載のスルホニルジアゾメタン化合物等を挙げることができる。
【0077】
本発明で特に好ましい光重合開始剤である有機ホウ素塩化合物は、有機ホウ素塩から構成されており、有機ホウ素塩を構成する有機ホウ素アニオンは、下記一般式(4)で表される。
【0078】
【化11】

【0079】
式中、R21、R22、R23及びR24は各々同じであっても異なっていてもよく、アルキル基、アリール基、アラルキル基、アルケニル基、アルキニル基、シクロアルキル基、複素環基を表す。これらの内で、R21、R22、R23及びR24の内の一つがアルキル基であり、他の置換基がアリール基である場合が特に好ましい。
【0080】
上記の有機ホウ素アニオンは、これと塩を形成するカチオンが同時に存在する。この場合のカチオンとしては、アルカリ金属イオン、オニウムイオン及びカチオン性増感色素が挙げられる。オニウム塩としては、アンモニウム、スルホニウム、ヨードニウム及びホスホニウム化合物が挙げられる。アルカリ金属イオンまたはオニウム化合物と有機ホウ素アニオンとの塩を用いる場合には、別に増感色素を添加することで色素が吸収する光の波長範囲での感光性を付与することが行われる。また、カチオン性増感色素の対アニオンとして有機ホウ素アニオンを含有する場合は、該増感色素の吸収波長に応じて感光性が付与される。しかし、後者の場合は更にアルカリ金属もしくはオニウム塩の対アニオンとして有機ホウ素アニオンを併せて含有するのが好ましい。
【0081】
本発明に用いられる有機ホウ素塩としては、先に示した一般式(4)で表される有機ホウ素アニオンを含む塩であり、塩を形成するカチオンとしてはアルカリ金属イオン及びオニウム化合物が好ましく使用される。特に好ましい例は、有機ホウ素アニオンとのオニウム塩として、テトラアルキルアンモニウム塩等のアンモニウム塩、トリアリールスルホニウム塩等のスルホニウム塩、トリアリールアルキルホスホニウム塩等のホスホニウム塩が挙げられる。特に好ましい有機ホウ素塩の具体例を下記に示す。
【0082】
【化12】

【0083】
【化13】

【0084】
本発明において、有機ホウ素塩と共に用いることで更に高感度化、硬調化が具現される光重合開始剤としてトリハロアルキル置換化合物が挙げられる。上記トリハロアルキル置換化合物とは、具体的にはトリクロロメチル基、トリブロモメチル基等のトリハロアルキル基を分子内に少なくとも一個以上有する化合物であり、好ましい例としては、該トリハロアルキル基が含窒素複素環基に結合した化合物としてs−トリアジン誘導体及びオキサジアゾール誘導体が挙げられ、あるいは、該トリハロアルキル基がスルホニル基を介して芳香族環あるいは含窒素複素環に結合したトリハロアルキルスルホニル化合物が挙げられる。
【0085】
トリハロアルキル置換した含窒素複素環化合物やトリハロアルキルスルホニル化合物の特に好ましい具体例を下記に示す。
【0086】
【化14】

【0087】
【化15】

【0088】
上記光重合開始剤は単独で用いてもよいし、任意の2種以上の組み合わせで用いてもよい。光重合開始剤の含有量は、重合性二重結合を有するモノマーを共重合成分として含むポリマーの100質量部に対して1〜100質量部の範囲が好ましく、更に1〜40質量部の範囲が特に好ましい。
【0089】
本発明の平版印刷版材料の光重合性の感光層が含有する増感色素は、増感色素が有する吸収極大波長に前述の光重合開始剤を増感するものである。これにより各種レーザー(例えば青紫色半導体レーザー、近赤外レーザー)による露光に対応することが可能になる。そして前記光重合開始剤が有機ホウ素塩である場合、該増感色素と組み合わせることで、各種レーザー光に対する感度が非常に高くなる特徴を有する。増感色素は、具体的には380〜1300nmの波長域において光重合開始剤の分解を増感するものであり、種々のカチオン性色素、アニオン性色素及び電荷を有しない中性の色素としてメロシアニン、クマリン、キサンテン、チオキサンテン、アゾ色素等が使用できる。本発明に関わる増感色素の具体例を以下に示す。
【0090】
【化16】

【0091】
【化17】

【0092】
本発明の増感色素として、青紫色半導体レーザー(バイオレットレーザー)対応の場合、380〜430nmの波長領域の光に感光性を持たせる系が特に好ましく、増感色素として、こうした波長領域に吸収を有することが必要であり、こうした目的で使用される特に好ましい具体例を以下に示す。
【0093】
【化18】

【0094】
本発明の増感色素として、近赤外レーザー対応の場合、750〜1100nmの波長領域の光に感光性を持たせる系が特に好ましく、増感色素として、こうした波長領域に吸収を有することが必要であり、こうした目的で使用される特に好ましい具体例を以下に示す。
【0095】
【化19】

【0096】
上記増感色素は単独で用いてもよいし、任意の2種以上の組み合わせで用いてもよい。増感色素の含有量は、重合性二重結合を有するモノマーを共重合成分として含むポリマー100質量部に対して、0.1〜50質量部の範囲が好ましく、更に0.5〜20質量部の範囲が特に好ましい。
【0097】
光重合性の感光層を構成する他の要素として着色剤の添加も好ましく行うことができる。着色剤としては露光及び現像処理後において画像部の視認性を高める目的で使用されるものであり、カーボンブラック、フタロシアニン系色素、トリアリールメタン系色素、アントラキノン系色素、アゾ系色素等の各種の色素及び顔料を使用することができる。
【0098】
光重合性の感光層を構成する要素については上述の要素以外にも種々の目的で他の要素を追加して含有することもできる。例えば感光層のブロッキングを防止する目的で無機物微粒子あるいは有機物微粒子を添加することも好ましく行われる。
【0099】
光重合性の感光層の乾燥塗布量に関しては好ましい範囲が存在し、乾燥質量で1平方メートルあたり0.2gから5gの範囲で形成することが好ましく、最も好ましい範囲は1平方メートルあたり0.5gから3gの範囲である。
【0100】
本発明の平版印刷版材料には、支持体からみて感光層の上に保護層を有してもよく、光重合性の感光層において、レーザー露光により発生したラジカル種の失活を助長する要因にある酸素を、より遮断する性能の保護層が好ましく、特に露光機のレーザー光源がバイオレットレーザーの場合、市販されている光源では十分なエネルギー量が得られないため、保護層を塗設することが特に好ましい。保護層には比較的結晶性に優れた水溶性高分子化合物を用いることが好ましく、具体的には、ポリビニルアルコール、ビニルアルコール/フタル酸ビニル共重合体、酢酸ビニル/ビニルアルコール/フタル酸ビニル共重合体、酢酸ビニル/クロトン酸共重合体、ポリビニルピロリドン、酸性セルロース類、ゼラチン、アラビアゴム、ポリアクリル酸、ポリアクリルアミド等のような水溶性ポリマーが挙げられ、これらは単独または混合して使用できる。これらの内、ポリビニルアルコールを主成分として用いることが、酸素遮断性、現像除去性といった基本特性的に最も良好な結果を与える。
【0101】
保護層に使用するポリビニルアルコールは、必要な酸素遮断性と水溶性を有するための、未置換ビニルアルコール単位を含有する限り、一部がエステル、エーテル及びアセタールで置換されていてもよい。また、同様に一部が他の共重合成分を有していてもよい。ポリビニルアルコールの具体例としては71〜100%加水分解され、重合繰り返し単位が300から2400の範囲のものを挙げることができる。具体的には、(株)クラレ製のPVA−105、PVA−110、PVA−117、PVA−117H、PVA−120、PVA−124、PVA−124H、PVA−CS、PVA−CST、PVA−HC、PVA−203、PVA−204、PVA−205、PVA−210、PVA−217、PVA−220、PVA−224、PVA−217EE、PVA−217E、PVA−220E、PVA−224E、PVA−405、PVA−420、PVA−613、L−8等が挙げられる。
【0102】
前記ポリビニルアルコールの保護層中における含有量は、固形分換算で50質量%以上であることが好ましく、より好ましくは70質量%以上である。
【0103】
本発明の保護層には、ポリビニルアルコール、その他の水溶性ポリマー、各種の有機化合物、無機化合物を添加してもよい。また、光重合性の感光層上に塗設するための塗布性を改善する等の目的で界面活性剤を添加してもよい。
【0104】
本発明の保護層の乾燥質量は、酸素遮断性・現像除去性の他、カブリ性や密着性・耐傷性を考慮して選択されるが、1平方メートルあたり0.1gから3gの間が好ましい。
【0105】
本発明の平版印刷版材料の現像処理方法において、露光部は感光層が光重合反応を起こしているため、画像状に残余し(画像部)、未露光部は現像処理によって感光層が膨潤あるいは溶解されることで親水性層が表面に露出され(非画像部)、平版印刷版が得られる。
【0106】
この平版印刷版材料の層構成としては、プラスチックフィルム基体の上部に中間層、親水性層、感光層をこの順に設ける層構成の他に、例えば感光層の上部(支持体を下にして)に保護層を設けてもよいし、プラスチックフィルム基体の裏側(基体からみて感光層面の反対面)に裏層を設けてもよい。
【0107】
本発明の平版印刷版材料の現像処理方法として実質的にアルカリ剤を含有しないケミカルレス現像がある。この現像は現像液のpH値が4.0以上10.0未満の範囲内にある中性現像液(ケミカルレス現像液)を用いる方法であり、現像液のより好ましいpH値は4.0以上8.0未満である。またpH値が上記範囲内であれば他の添加剤を含有してもよく、この添加剤として、エタノール、イソプロパノール、n−ブチルセルソルブ、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、グリセリン、ベンジルアルコール等の各種有機溶剤、あるいは、アニオン系、カチオン系、ノニオン系等の界面活性剤等を添加することが可能である。添加剤の量は添加剤の種類、目的によって異なるが、水100質量部に対して10質量部以下が好ましく、より好ましくは3質量部以下の範囲である。更に、市販の印刷版用版面保護液や、印刷版用湿し水を使用することもできる。なお、この処理方法は現像工程の後に、例えば水洗工程等を含んでもよい。
【0108】
本発明の平版印刷版材料の現像処理方法として機上現像がある。この方法は上述した現像工程を介さず、露光後の版を印刷機に装着し、印刷機上で現像を行うシステムであり、機上現像は未露光部の光重合性の感光層がブランケットに転写して、ブランケットを介して印刷紙等に転写させる方法、給湿液用ロールを介して給湿液に未露光部の光重合性の感光層を溶解もしくは分散させる方法等がある。
【0109】
以下実施例により本発明を更に詳しく説明するが、効果はもとより本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【実施例】
【0110】
<中間層>
厚みが100μmのプラスチックフィルム基体上に、下記中間層の塗布をワイヤーバーにて行い、50℃の乾燥機にて10分間乾燥を行い、更に乾燥物を40℃の乾燥機にて2日間加熱を行った。なお、ワイヤーバーの種類を変更することで、中間層の乾燥質量の異なるサンプルも得た(表1に記載)。
【0111】
<中間層処方>
ゼラチン (株)ニッピ製 IK3000 分子量約120,000 10質量部
ポリマーラテックス 日本エイアンドエル(株)製 スマーテックス 表1に記載
架橋剤 H−9 1質量部
イオン交換水 100質量部
pH調整剤(水酸化ナトリウム水溶液もしくは硫酸水溶液にてpHを5.0に調整)
【0112】
なお、表1の中間層塗布サンプルの中で、比較Aは上記のポリマーラテックスを付与していないサンプルである。
【0113】
<親水性層>
上記中間層塗布サンプル上(中間層の表面)に、下記の親水性層処方にてワイヤーバーで乾燥質量が1.5g(1平方メートル当たり)になるように塗布を行い、50℃の乾燥機にて10分間乾燥を行い、本発明及び比較の平版印刷版用支持体を得た。
【0114】
<親水性層処方>
水溶性ポリマー WP−4 1質量部
無機微粒子
日産化学工業(株)製 スノーテックスPS−M(粒子径80〜150nm)
1.5質量部
架橋剤 H−9 0.5質量部
pH調整剤(水酸化ナトリウム水溶液もしくは硫酸水溶液にてpHを4.0に調整)
イオン交換水 10質量部
【0115】
<感光層>
上記平版印刷版用支持体上(親水性層の表面)に、下記の感光層処方にてワイヤーバーで乾燥質量が1.5g(1平方メートル当たり)になるように光重合性の感光層の塗布を行い、70℃の乾燥機にて10分間乾燥を行い、更に感光層の上に下記の保護層処方にてワイヤーバーで乾燥質量が1.5g(1平方メートル当たり)になるように保護層の塗布を行い、70℃の乾燥機にて10分間乾燥を行い、本発明及び比較の平版印刷版材料を得た。
【0116】
<感光層処方>
重合体 SP−1 1質量部
光重合開始剤 BC−6 0.1質量部
光重合開始剤 T−4 0.1質量部
増感色素 S−14 0.05質量部
着色剤 ビクトリアブルー 0.2質量部
アセトン 5質量部
エタノール 5質量部
テトラヒドロフラン 10質量部
【0117】
<保護層処方>
PVA105((株)クラレ製ポリビニルアルコール) 1質量部
イオン交換水 20質量部
【0118】
<露光試験>
得られた平版印刷版材料を、405nmバイオレットレーザーを搭載した外面ドラム方式プレートセッター(三菱製紙(株)製VIPLAS)を使用して、画像を露光量100μJ/mで露光した。
【0119】
<現像方法>
上記で描画した平版印刷版材料を30℃に調節したイオン交換水に15秒間浸け、セルローススポンジで軽く擦ることで未露光部を除去した。
【0120】
<ゼラチン溶解率>
ゼラチン溶解率は、プラスチックフィルム基体上に中間層が塗布された支持体を細かく裁断し、この片を合計100cm準備し、これを30℃、10mlの純水中に投入し、日本ジェネティクス(株)製SHAKING BATHSにて1分間攪拌し、この液を採取し、紫外・可視吸収スペクトル測定装置(UShiO社製 V−560)を用いて、液中に溶解したゼラチン量を定量して求めた。この値を表1に示した。
【0121】
<インキ着肉性>
印刷機ハイデルベルグKORD(Heidelberg社製オフセット印刷機の商標)、BestOne墨Nインキ(T&K TOKA(株)製)及び市販のPS版用給湿液(日研化学(株)製アストロマークIII)を用いて20000枚の印刷を行い、印刷初期と刷了時のインキ着肉性を下記基準において評価を行った。この結果を表1に示した。
印刷初期
○:1000枚目のサンプルの反射濃度値の90%に到達する枚数が20枚未満
△:1000枚目のサンプルの反射濃度値の90%に到達する枚数が20枚以上50枚未満
×:1000枚目のサンプルの反射濃度値の90%に到達する枚数が50枚以上
刷了時
○:刷了時における反射濃度が1000枚目のサンプルの反射濃度の90%以上
△:刷了時における反射濃度が1000枚目のサンプルの反射濃度の80%以上90%未満
×:刷了時における反射濃度が1000枚目のサンプルの反射濃度の80%未満
【0122】
【表1】

【0123】
また、上記した印刷条件にて耐刷性と耐地汚れ性を調べた。耐刷性は20000枚目の印刷物にて5%網点の画像部に欠損がないか50倍ルーペにて観察した。耐地汚れ性は2000枚目の印刷物の非画像部を目視で観察した。この結果、比較AからI及び本発明1から15の平版印刷版用支持体及び平版印刷版材料のいずれも良好な耐刷性と耐地汚れ性を有していた。
【0124】
表1の結果より、本発明により印刷時における耐刷性や耐地汚れ性が低下することなくインキ着肉性に優れた平版印刷版用支持体及び平版印刷版材料が得られることが判る。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
プラスチックフィルム基体上に、親水性層を含有する平版印刷版用支持体であって、該プラスチックフィルム基体と該親水性層との間に位置する中間層がポリマーラテックスとゼラチンと架橋剤を含有し、該ポリマーラテックス量が該ゼラチン量に対して10〜100質量%であることを特徴とする平版印刷版用支持体。
【請求項2】
前記請求項1に記載の平版印刷版用支持体が有する親水性層上に、側鎖にビニル基が置換したフェニル基とスルホン酸基を有する共重合ポリマー、光重合開始剤および増感色素を含有する感光層を有する平版印刷版材料。

【公開番号】特開2011−79279(P2011−79279A)
【公開日】平成23年4月21日(2011.4.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−235443(P2009−235443)
【出願日】平成21年10月9日(2009.10.9)
【出願人】(000005980)三菱製紙株式会社 (1,550)
【Fターム(参考)】