説明

平衡誘導による導電率測定方法及び装置

【課題】導電率を測定する際に、渦電流による損出が起きないようにして、ノイズの低減、S/N比の改善、測定感度のバラツキを抑える。
【解決手段】空芯コイルからなる第1のコイル1aと逆巻きの空芯コイルからなる第2のコイル1bを間隔を置いて、かつ、コイル1a、1bの軸心を一致させて配置する。また、その第1と第2の空芯コイル1a、1b間に空芯コイルからなる受信コイル2を配置する。送信コイルは直列に接続して交流信号を入力し、その交流信号と受信コイル2の受信電流の位相差を測定して導電率を求める。こうすることで、コアによる渦電流損失、ノイズの発生、S/N比の悪化、測定感度のバラツキが起きないようにして、導電率を測定する

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特に、土木分野での土や岩石あるいはコンクリートなどの導電率(この逆数を土木分野では比抵抗と称する)を測定する平衡誘導による導電率測定方法及び装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
土や岩石の導電率の測定は、対象物に電極を介して直流電流を流し、表層の電位差から導電率を求める電気探査法や、ある間隔で置かれた1対の送受信コイルに交流電流を流し、対象物からの誘導磁場を測定して導電率を求める電磁法などがある。
電気探査法は、電極を用いるので取り付けのための工事が必要で、使用場所が限定されるという問題がある。これに対し、電磁法は非接触で導電率を測定できるため、使用場所を選ばない。そのため、導電率測定の主流となると考えられる。
【0003】
ところで、この電磁法は、例えば、送信コイルと受信コイルをある間隔にして測定対象の表面に置き、送信コイルで磁場(1次磁場)を発生させ、その磁場による誘導磁場(2次磁場)を受信コイルで測定して導電率を求める。そのため、受信コイルには1次磁場の影響が加わることになり、測定する導電率が正しい値にならず実用性に問題がある。
【0004】
この問題を解決する方法として、例えば、キャンセルコイルを別途に設けて打ち消す方法、あるいは電子回路によって1次磁場の波形を反転させて受信電圧に加えてキャンセルする方法などがある。しかし、いずれの方法でも送受信コイルがある間隔で置かれた測定装置では、完全に1次磁場の影響を打ち消すことは極めて難しい。
【0005】
なぜなら、小さい導電率をもつ測定対象(堅個な岩石や乾燥した砂、あるいは地盤内の空洞や緩み域など)では受信電圧が微弱になり、小さな1次磁場の影響でも受信回路のS/N比が低下する。そのため、測定誤差がより大きくなる。
【0006】
また、送受信コイルが離れていると、受信コイルの直下だけでなくコイル間隔の下方からの誘導磁場も加わるため、測定したい1点下のみの導電率を測定できないという問題点がある。すなわち、送信コイルと受信コイルの間隔が短くなるほど1次磁場の影響が強くなり、反対に長くなると、送受信コイル間の下方にある目的の対象物以外の影響が加わるため、正しい測定データを得られなくなるという問題がある。
例えば、円形もしくは矩形の送信コイルによる1次磁場は、ビオサバールの法則により図6のような磁場分布を呈する。そして、一般に、コイルは、中心軸方向で磁場強度や受信感度が最大である性質を持ち、コイル外縁を離れると距離の3乗で急速に減衰する。図6は、送信コイル20と受信コイル21が離れて置かれた従来の電磁法の模式図であるが、この図から分かるように、受信コイル21を鎖交する1次磁場の磁力線は、ある幅と広がりを有する。そのため、これによる誘導磁場も同様な空間となるため受信コイル21直下以外の導電率情報も加わることになる。その結果、ピンポイント的な測定データを得難いのである。
このような問題を解決する方法として、特許文献1の比抵抗測定装置がある。この装置は、図7に示すように、コイル20aは、棒状のコア22に左巻きに巻かれた送信コイル上部であり、コイル20bは、前記コア22に右巻きに巻かれた送信コイル下部である。コイル23は、その中間に置かれた受信コイルである。この送信コイル20a、20bの両端に、測定したい任意の周波数の駆動電圧を印加すると送信電流I1が流れる。しかし、上下部の送信コイル20a、20bは互いに逆巻きになっているため磁場は中間で打ち消し合い、受信コイル23には信号電圧が発生しない。したがって、コイル20a、b、23の巻き数や位置関係を正確に製作すれば容易にキャンセル状態を実現できることになる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2007−139498号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上記の比抵抗測定装置では、受信電圧を大きくとるため、コイルの中心に鉄やフェライトの磁芯を挿入しており、1次磁場をキャンセルするのに磁芯を上下させる。そのため、磁芯を挿入すると渦電流による損失が発生する。
その結果、受信電圧を大きくとるため、送信電流を増加すると、磁心内部から発生するノイズが無視できなくなり、受信電圧のS/N比の悪化を招く。
さらに、この渦電流による損失は、周波数が高くなるほど大きくなるため、特に、送信電流の周波数を広い範囲で使用した場合、周波数によって測定感度がばらつくという問題がある。
【0009】
そこで、この発明の課題は、渦電流による損出が起きないようにして、ノイズの低減、S/N比の改善、測定感度のバラツキを抑えることである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の課題を解決するため、この発明では、空芯コイルからなる第1のコイルと前記第1のコイルと逆巻きの空芯コイルからなる第2のコイルを間隔を置いて、かつ、コイルの軸心を一致させて配置し、その間隔を置いて配置した第1と第2の空芯コイルを直列に接続した送信コイルの第1と第2の空芯コイル間に、空芯コイルからなる受信コイルを前記第1と第2の空芯コイルと軸心を一致させて配置し、前記送信コイルの第1と第2の空芯コイルの直列回路の両端に交流信号を入力し、送信コイルあるいは受信コイルの一方あるいは両方を軸心方向に動かして受信コイルからの出力が最小となるように調整したのち、送信コイルの一方の開口を測定対象に対向させて、受信コイルに流れる電流と送信コイルに入力する交流信号の電流との位相差に基づいて測定対象の導電率を測定するという方法を採用したのである。
【0011】
このような方法を採用することにより、送信コイルと受信コイルに空芯コイルを用いることで、渦電流による損失、渦電流によるノイズの発生、渦電流によるS/N比の悪化や測定感度のバラツキが起きないようにする。また、1次磁場は、送信コイルと受信コイルの一方あるいは両方を軸心方向に動かし、送信コイルと受信コイルを相対的に動かすことでキャンセルする。このとき、空芯コイルは、コアを使用したものに対して透磁率が低くなり、前記コイルを鎖交する磁束の密度が低下する。そのため、受信電流のレベルは低下するが、受信電流と送信信号の電流の位相差を測定して導電率を求めることで、感度の低下が起きないようにできる。
【0012】
このとき、上記送信コイルの第1と第2の直列回路の両端間に交流信号を入力し、送信コイルあるいは受信コイルの一方または両方を軸心方向に動かして受信コイルからの出力が最小となるように調整したのち、送信コイルの一方の開口を測定対象に対向させて、前記送信コイルに複数の異なる周波数の信号電流を掃引したものを入力し、受信コイルに流れる電流値と送信コイルに入力する交流信号の電流との位相差に基づいて測定対象の導電率を測定するという方法を採用することができる。
【0013】
このような方法を採用することにより、上記の作用効果に加え、測定深度の向上と分解能の改善を図ることができる。すなわち、送信コイルからの電波が測定対象の表面から深部へ侵入する場合、一般に、表皮効果により、周波数の高い電波は表面近くを流れ、周波数の低い電波は内部深くまで達する。したがって、測定対象がコイルより遠方のものは、低い周波数で測定し、近傍のものは、高い周波数で測定することで、測定感度のバラツキを起こさない。また、波長の短い高い周波数で測定すれば、小さな対象物を精度良く測定できるため、分解能の改善が図れる。
【0014】
また、空芯コイルからなる第1のコイルと前記第1のコイルと逆巻きの空芯コイルからなる第2のコイルを間隔を置いて、かつ、コイルの軸心を一致させて配置し、その間隔を置いて配置した第1と第2の空芯コイルを直列に接続した送信コイルと、前記送信コイルの第1と第2の空芯コイル間に、その第1と第2の空芯コイルと軸心を一致させて配置した受信コイルと、前記送信コイルの第1と第2のコイルを直列に接続した直列回路の両端に、交流信号入力する信号発生手段と、前記受信コイルに流れる電流と信号発生手段の信号電流の位相差から導電率を算出する導電率検出手段とからなる構成を採用することができる。
【0015】
このような構成を採用することにより、送信コイルと受信コイルに空芯コイルを用いたことで、渦電流による損失、渦電流によるノイズの発生、渦電流によるS/N比の悪化や測定感度のバラツキが起きない。また、送信コイルと受信コイルの一方あるいは両方を軸心方向に動かし、送信コイルと受信コイルを相対的に動かすことで1次磁場をキャンセルする。このとき、空芯コイルは、コアを使用したものに対して透磁率が低くなり、前記コイルを鎖交する磁束の密度が低下する。そのため、受信電流のレベルは低下するが、導電率検出手段で受信電流と送信信号の電流の位相差を測定して導電率を求めることで、感度の低下を招かない。
【0016】
このとき、上記信号発生手段が複数周波数の交流信号を掃引した出力を発生する構成を採用することができる。
【0017】
このような構成を採用することより、上記の作用効果に加えて、測定対象がコイルより遠方のものは、掃引周波数の低い周波数で測定し、近傍のものは、高い周波数で測定する。このように、距離に応じて最適な周波数で検出するので、測定感度のバラツキを生じない。また、波長の短い高い周波数で測定すれば、小さな対象物を精度良く測定できるため、分解能の改善が図れる。
【0018】
その際、上記送信コイルを非磁性体で形成した外側筒部材と、その内部に嵌める内側筒部材のいずれか一方の外周に巻回し、他方の内側筒部材あるいは外側筒部材の外周に受信コイルを巻回した構成を採用することができる。
【0019】
このような構成を採用することにより、送信コイルと受信コイルの軸心を一致させてコンパクトに配置することができる。
【0020】
また、このとき、上記外側筒部材と内側筒部材をそれぞれ軸方向に移動する調整手段を設けた構成を採用することができる。
【0021】
このような構成を採用することにより、調整手段を設けたことで、1次磁場をキャンセルする調整が容易にできる。
【0022】
また、このとき、上記送信コイルの第1と第2の巻回数を同じにした構成を採用することができる。
【0023】
このような構成を採用することにより、第1と第2の空芯コイルの磁束密度を同じにできるので、両者の中間点を目安として受信コイルを配置すると、1次磁場をキャンセルできるため、調整が容易になる。
【発明の効果】
【0024】
この発明は、上記のように構成したことにより、渦電流による損出が起きないようにして、ノイズの低減、S/N比の改善、測定感度のバラツキを抑えることができる。
そのため、測定対象の導電率を小さい値から大きい値まで幅広く測定できる。特に、測定点直下だけの導電率を正しく測定できる効果は大である。また、従来機のように1次磁場のキャンセルが不十分であるという問題点を解決でき、より正確な導電率の測定を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】実施形態の斜視図
【図2】実施形態の作用説明図
【図3】実施形態の送信コイルと受信コイルの分解斜視図
【図4】(a)、図3の断面図、(b)図3の平面図
【図5】実施形態のブロック図
【図6】従来例の作用説明図
【図7】従来例のブロック図
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、この発明を実施するための形態を図面に基づいて説明する。
この形態の平衡誘導による導電率測定装置は、図1に示すように、送信コイル1、受信コイル2、信号発生手段Aと、導電率検出手段Bで構成されている。
【0027】
送信コイル1は、図2に示すように、空芯コイルからなる第1のコイル1aと第2のコイル1bで構成され、第2のコイル1bは、第1のコイル1aと逆巻きの空芯コイルとなっている。また、第1のコイル1aと第2のコイル1bは、間隔を置いて軸心を一致させて配置し、その間隔を置いて配置した第1と第2の空芯コイル1a、1bを直列に接続する。
一方、受信コイル2は、前記送信コイル1の第1と第2の空芯コイル1a、1b間に、その第1と第2の空芯コイル1a、1bと軸心を一致させて配置する。
そのため、送信コイル1と受信コイル2は、図3の外側筒部材Cとその内側に嵌める内側筒部材Dで支持するようにしてある。
【0028】
外側筒部材Cと内側筒部材Dは、筒部材本体Ca、Daと蓋部材Cb、Dbとで構成されており、筒部材本体Ca、Daと蓋部材Cb、Dbは非磁性体で形成されている。
筒部材本体Ca、Daは、外周に周方向の溝13を設けて送信コイル1と受信コイル2を巻回するようになっている。この溝13は、内側筒部材本体Daでは、溝13の中央に分離帯13aを設けて2つに分割し、送信コイル1を構成する第1と第2の2つの空芯コイル1a、1bをそれぞれ巻回することで、第1の空芯コイル1aと逆巻きに巻回した第2の空芯コイル1bを、間隔を置いて軸心を一致させて配置し、その間隔を置いて配置した第1と第2の空芯コイル1a、1bを直列に接続できるようになっている。
一方、外側筒部材Cでは、溝13は、外部筒部材本体Caの中央部分に一本形成して、受信コイル2を巻回することで、送信コイル1の第1と第2の空芯コイル1a、1b間に、その第1と第2の空芯コイル1a、1bと軸心を一致させて配置できるようにしてある。
また、筒部材本体Ca、Daの両端の開口端に、ネジ孔14を設けて蓋部材Cb、Dbを取り付けるようになっており、蓋部材Cb、Dbを取り付けることで、受信コイル2と送信コイル1の位置調整を行えるようにしてある。
【0029】
蓋部材Cb、Dbは、外側筒部材用と内側筒部材用とがあって、両方の蓋部材Cb、Dbは、中央に孔を設けたドーナツ型となっている。この蓋部材Cb、Dbの外側筒部材用の蓋部材Cbは、外側筒部材本体Caの開口と同径か少し大径で、板面の周縁に沿って貫通孔15を設けて、外側筒部材本体Caの両側の開口のネジ孔14にネジ止めするようになっている。さらに、この蓋部材Cbには、周縁の貫通孔15と中央のドーナツ孔との間にバランス調整用のネジ16を挿通する孔17を設けてある。この形態では、図4(b)に示すように、90度間隔で4個設けてある。
一方、内側筒部材用の蓋部材Dbは、内側筒部材本体Daの開口より大径で、外側筒部材本体Caの内径より稍小径で、図4(a)のように、外側筒部材本体Caの開口に嵌るサイズに形成されている。また、中央のドーナツ孔の周縁の板面に、貫通孔15を設けて内側筒部材本体Daの両側の開口にネジ止めするようになっている。さらに、内側筒部材用の蓋部材Dbには、中央のドーナツ孔と周縁との間にバランス調整用のネジ16と係合するネジ孔18を90度間隔で4個形成し、図4のように、内側筒部材Dを外側筒部材本体Caに嵌め入れた際に、バランス調整用のネジ16を挿通する外側筒部材用の蓋部材Cbの孔17と合致するようになっている。
すなわち、外側筒部材Cに内側筒部材Dを嵌め入れた際に、外側筒部材Cと内側蓋部材Dbを、図4(a)のように、バランス調整用ネジ16で連結し、バランス調整用ネジ16を回動することにより、内側筒部材Dを上下の軸方向に移動するように構成し、調整手段を形成している。
なお、前記4個のバランス調整用ネジ16を個々に調整することにより、送信コイル1の軸心を傾けて受信コイル2の感度やノイズを調整することもできる。また、符号19は、送信コイル1と受信コイル2を支えるスタンドである。
【0030】
信号発生手段Aは、図5に示すように、信号発信器7と送信電流駆動装置5で構成されている。
信号発信器7は、下記のような系列の正弦波を発振する所謂掃引発振器で、この形態では、1分間隔で16周波数を順に発振するものである。この出力は、送信電流駆動装置5と、導電率検出手段Bに接続されている。
364、256,182,128、91、64、45.5、32、22.8、16、
11.4、8、5.7、2.8、2 (KHz)
【0031】
送信電流駆動装置5は、送信コイル1を電流駆動するための駆動装置で、所謂ドライブ回路である。
【0032】
導電率検出手段Bは、受信信号増幅器6、位相差検出装置8、導電率演算回路9及びA/D変換器10で構成されている。
受信信号増幅器6は、受信コイル2と接続され、受信コイル2の受信信号を位相差検出装置8の入力レベルまで、増幅するためのものである。
位相差検出装置8は、受信信号増幅器6と、信号発生手段Aの信号発振器7の出力と接続されており、両出力を比較して位相差に基づく電圧を導電率演算回路9に出力する。
導電率演算回路9は、位相差に基づく電圧を導電率に基づく信号に変換するためのもので、変換した信号は、A/ D 変換器10に出力される。
A / D 変換器10は、前記信号をデジタルデータ化するためのもので、デジタルデータ化した信号は、この形態では、パソコン11に出力して、リアルタイムで表示するようになっている。
なお、符号12は、上記信号発生手段Aと導電率検出手段Bの処理を制御するための制御装置で、ここでは、マイクロコンピュータを使用してコントロールするようになっている。
【0033】
なお、この形態では、外側筒部材Cに受信コイル2を巻回し、内側筒部材Dに送信コイル1を巻回したが、これに限定されるものではない。外側筒部材Cに送信コイル1を巻回し、内側筒部材Dに受信コイル2を巻回しても良いことは明らかである。
また、この形態では、送信コイル1と受信コイル2を支持する筒部材C、Dに円筒形のものを使用したが、前記筒部材C、Dの形状は円筒だけに限定されるものではない。3角や4角などの多角筒や断面が楕円などであってもコイルとして作用するので、筒状のものであっても良い。
【0034】
この形態は、以上のように構成され、次に、この発明の平衡誘導に導電率測定方法について説明する。
この形態の導電率測定装置は、図3のように、送信コイル1と受信コイル2をコンパクトに組み立てることができるので、巻回数の異なる複数の送信コイル1と受信コイル2を準備して組み合せるようにすれば、測定対象に応じて受信感度や分解能などを最適に設定できる。
この送信コイル1と受信コイル2の組み立ては、測定に最適な受信コイル2を巻回した外側筒部材本体Caと送信コイル1を巻回した内側筒部材本体Daを準備する。そして、外側筒部材本体Caの下側の開口に外側筒部材用の蓋部材Cbを取り付け、外側筒部材本体Caの上方の開口から内側筒部材Dを嵌入する。このとき、内側筒部材本体Daの下側の開口に内側筒部材用の蓋部材Dbを取り付けおき、嵌め入れた内側筒部材Dを回動するなどして、両蓋部材Cb、Dbのバランス調整ネジ用のネジ孔18と孔17を合わせる。そして、外側筒部材本体Caの開口に内側筒部材用の蓋部材Dbを嵌め入れ、内側筒部材本体Daの開口にネジ止めしたのち、外側筒部材本体Caの開口に外側筒部材用の蓋部材Cbをネジ止めする。このとき、外側筒部材用の蓋部材Cbと内側筒部材用の蓋部材Dbのバランス調整ネジ用のネジ孔18と孔17とを合わせてバランス調整用ネジ16を嵌める。
【0035】
このように、送信コイル1と受信コイル2の組み立てができると、組み立てられた送信コイル1と受信コイル2を導電率測定装置の信号発生手段Aと導電率検出手段Bに接続する。
そして、導電率測定装置の信号発生手段Aから送信コイル1に交流信号を入力し、受信コイル2の出力を導電率検出手段Bで測定して、出力レベルが最小となるようにバランス調整用ネジ16を回して調整する。
すなわち、送信コイル1の第2のコイル1bは第1のコイル1aと逆向きに巻回してある。そのため、磁場は打ち消し合って磁場の影響が極小となるポイントが生じるので、そのポイントに受信コイル2が位置するように調整を行うことで、受信コイル2への1次磁場の影響をキャンセルするのである。このとき、送信コイル1の第1のコイル1aと第2のコイル1bの巻回数を同じにしておけば、構造上分離帯13aの部分が磁場の影響がゼロとなる目安となるので、調整が楽にできる。
【0036】
このように調整ができると、測定を開始する。この形態の送信コイル1と受信コイル2は、地盤や斜面あるいは堤防などの導電率を測定することに適した形状としてあるので、それらの場所の表面に置いて、非破壊的に直下の導電率の深度分布を測定する。
なお、この形態では、前記コイル1、2の調整を行ってから、現場に設置するようにしたが、現場で組み立てや調整を行うようにしても良いことは明らかである。
【0037】
測定は、送信コイル1と受信コイル2を測定箇所に置くと、送信コイル1の下側の開口が測定箇所と対向するので、測定装置を作動して、受信コイル2に流れる電流と送信コイル1の交流信号の電流との位相差に基づいて測定対象の導電率の測定を開始する。このように、前記コイル1、2の開口を測定箇所に対向させて磁束を収束することにより、測定直下の導電率を測定できる。
【0038】
このとき、送信コイル1と受信コイル2に空芯コイルを用いたことにより、コアによる渦電流損失、ノイズの発生、S/N比の悪化、測定感度のバラツキが起きない。その際、空芯コイルを用いたことで、コアを使用したものに比べて透磁率が低くなり、受信コイル2を鎖交する磁束の密度は低下して、受信電流のレベルは低下するが、受信電流と送信信号の電流の位相差を測定して導電率を求めることで、感度の低下は起きない。
【0039】
また、導電率測定装置の信号発生手段Aは、送信コイル1に出力する交流信号の周波数を前述した系列の周波数で掃引するので、測定深度の向上と分解能の改善を図れる。
すなわち、送信コイル1からの電波が測定対象の表面から深部へ侵入する場合、一般に、表皮効果により、周波数の高い電波は表面近くを流れ、周波数の低い電波はより深くまで達する。したがって、測定対象が前記コイル1、2より遠方のものは、低い周波数で測定し、近傍のものは、高い周波数で測定するので、測定感度のバラツキを起こさない。また、波長の短い高い周波数で測定すれば、小さな対象物を精度良く測定できるため、分解能の改善が図れる。
【符号の説明】
【0040】
1 送信コイル
1a 第1の空芯コイル
1b 第2の空芯コイル
2 受信コイル
13 溝
13a 分離帯
16 バランス調整用ネジ
A 信号発生手段
B 導電率検出手段
C 外側筒部材
Ca 外側筒部材本体
Cb 外側筒部材用蓋部材
D 内側筒部材
Da 内側筒部材本体
Db 内側筒部材用蓋部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
空芯コイルからなる第1のコイルと前記第1のコイルと逆巻きの空芯コイルからなる第2のコイルを間隔を置いて、かつ、コイルの軸心を一致させて配置し、その間隔を置いて配置した第1と第2の空芯コイルを直列に接続した送信コイルの第1と第2の空芯コイル間に、空芯コイルからなる受信コイルを前記第1と第2の空芯コイルと軸心を一致させて配置し、
前記送信コイルの第1と第2の空芯コイルの直列回路の両端に交流信号を入力し、送信コイルあるいは受信コイルの一方あるいは両方を軸心方向に動かして受信コイルからの出力が最小となるように調整したのち、
送信コイルの一方の開口を測定対象に対向させて、受信コイルに流れる電流と送信コイルに入力する交流信号の電流との位相差に基づいて測定対象の導電率を測定する平衡誘導による導電率測定方法。
【請求項2】
上記送信コイルの第1と第2の空芯コイルの直列回路の両端間に交流信号を入力し、送信コイルあるいは受信コイルの一方または両方を軸心方向に動かして受信コイルからの出力が最小となるように調整したのち、送信コイルの一方の開口を測定対象に対向させて、前記送信コイルに複数の異なる周波数の信号電流を掃引したものを入力し、受信コイルに流れる電流値と送信コイルに入力する交流信号の電流との位相差に基づいて測定対象の導電率を測定する請求項1に記載の平衡誘導による導電率測定方法。
【請求項3】
空芯コイルからなる第1のコイルと前記第1のコイルと逆巻きの空芯コイルからなる第2のコイルを間隔を置いて、かつ、コイルの軸心を一致させて配置し、その間隔を置いて配置した第1と第2の空芯コイルを直列に接続した送信コイルと、
前記送信コイルの第1と第2の空芯コイル間に、その第1と第2の空芯コイルと軸心を一致させて配置した受信コイルと、
前記送信コイルの第1と第2のコイルを直列に接続した直列回路の両端に、交流信号入力する信号発生手段と、
前記受信コイルに流れる電流と信号発生手段の信号電流の位相差から導電率を算出する導電率検出手段とからなる平衡誘導による導電率測定装置。
【請求項4】
上記信号発生手段が複数周波数の交流信号を掃引した出力を発生する請求項3に記載の平衡誘導による導電率測定装置。
【請求項5】
上記送信コイルを非磁性体で形成した外側筒部材と、その内部に嵌める内側筒部材のいずれか一方の外周に巻回し、他方の内側筒部材あるいは外側筒部材の外周に受信コイルを巻回した請求項3または4に記載の平衡誘導による導電率測定装置。
【請求項6】
上記外側筒部材と内側筒部材をそれぞれ軸方向に移動する調整手段を設けた請求項5に記載の平衡誘導による導電率測定装置。
【請求項7】
上記送信コイルの第1と第2の巻回数を同じにした請求項3乃至6のいずれかに記載の平衡誘導による導電率測定装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−149850(P2011−149850A)
【公開日】平成23年8月4日(2011.8.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−11863(P2010−11863)
【出願日】平成22年1月22日(2010.1.22)
【出願人】(591151808)株式会社環境総合テクノス (23)
【Fターム(参考)】