説明

平角線巻線を有する永久磁石同期機

スロット(4)内の銅占積率が高い永久磁石同期機(2)を提供する。本発明の同期機の固定子は平行側面スロット(4)を有し、該スロットが平角線(5)からなる巻線系を備え、平角線(5)が各々1つの歯(3)を包囲しかつ歯巻回コイル(6)として構成され、平角線(5)が平打巻回され、平角線(5)の短辺側が各々歯(3)の方を向き、各歯巻回コイル(6)が少なくとも2層の平角線(5)を有する。平角線はスロット底の方から巻回するとよい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、永久磁石同期機であって、固定子を有し、該固定子が平行側面スロットを有し、これらスロットが平角線巻線を備え、平角線巻線が各々1つの歯を包囲しかつ歯巻回コイルとして構成されているものに関する。
【背景技術】
【0002】
表皮効果およびそれとともに電気機械への入熱を減らすべく、個々の丸線からなる撚り導体束や編組導体束からなるコイルを巻回することは公知である。しかしこの場合には、製造支出が高まり、電気機械のスロット内での銅占積率が低下する。
【0003】
上記欠点を避けるべく、コイルは銅プレス索で製造できるが、コイルの費用増を伴う。
【0004】
欧州特許出願公開第1255344号明細書により、平角線で構成されたコイル構成が公知である。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
その点から出発して本発明の課題は、製造費が低く、銅占積率が高く、同時に漂遊損失率が比較的低い永久磁石同期機を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この課題は本発明によれば、平角線が平打巻回され、平角線の短辺側が各々歯の方を向き、各歯巻回コイルが少なくとも2層の平角線を有することにより達成される。
【0007】
平角線の本発明に係る配置では、巻線横断面は特にスロット幅の方向に配列しており、スロット高の方向にはごく僅かに配列しているにすぎない。この結果表皮効果が減少し、それに伴い別の巻線配置に比べて漂遊損失が実質的に減少する。特にこのような歯巻回コイルは、平行側面スロット対を有し、固定子穴の方向を向いた開放スロットで利用でき、その結果歯巻回コイルを通しての固定子の装着が著しく容易となる。
【0008】
固定子を同軸に構成した場合、歯巻回コイルは外側から積層星形鉄心に装着され、引き続きヨーク背面内で位置決めされる。
【0009】
使用する各平角線は、線材規格に明示された許容範囲の下方の曲げ半径で加工できる。
【0010】
本発明に係る構造は、特にトルクモータの固定子用に適する。それは、トルクモータにおいて、特にモータの小型化に厳しい要求が課されるからである。
【0011】
歯巻回コイルを予め支持体上で位置決めし又は巻回すると、永久磁石同期機の組付けにとり有利である。
【0012】
支持体付き又は支持体なしの歯巻回コイルは固定子穴により、又2分割固定子の場合には外部から、歯上で位置決めされ、ヨーク背面内で固定される。
【0013】
本発明と、従属請求項の特徴による本発明のその他の有利な諸構成を、以下、図面に略示する実施例に基づき詳しく説明する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
図1は電気機械の固定子1の細部図である。この図に示す歯3は隣接するスロット4を有し、スロットは平行側面に形成されている。スロット4内に、上下および並べて配置される平角線5を示してある。このように構成された歯巻回コイル6は、歯3に隣接した巻線層7がスロット底8から半径方向で固定子穴へと延び、第2層もスロット底8から固定子穴へと延びるように巻回されている。スロット内で平角線5の並置された巻線層7は電気的に直列にも並列にも接続可能である。この結果、1つの平角線寸法で2種類の巻線数を実現できる。例えば図2に原理的に示す並列回路の場合、平角線5にエナメル絶縁を施していれば、層間絶縁20は必ずしも必要ない。
【0015】
図2に示す如く、歯巻回コイル6は、線材規格に定められた許容範囲の下方にある曲げ半径で加工するとよい。スロット4の領域に歯巻回コイル6は固定子1の薄鋼板12に対する主絶縁11を持つ。歯巻回コイル6の始端9と終端10は、電気的に並列接続された平角線5を持つ歯巻回コイル6の通電を可能とする。平角線5は必要なら溝21又は他の加工部を有し、これが加工、例えば歯巻回コイル6の巻回を容易にする。歯巻回コイル6の固定を向上すべく、ケーブル結合具に類似した手段22を利用できる。
【0016】
歯巻回コイル6を支持体23に巻回する場合、少なくとも歯3に向き合う側で、主絶縁11を省略できる。それは、支持体23の材料がこの機能を引受け又は含む故である。
【0017】
図3は電気機械、特に永久磁石同期機2の構造を示す。固定子1は、対で平行側面スロット4を備えた歯3と、各々その間にあって台形に形成された非巻回歯13とを有する。固定子1はハウジング16に嵌挿されている。ハウジング16の内部又は表面に、同期機2を冷却するための図示しない手段を備えている。これは、特に空気冷却のための冷却フィン、又はハウジング16内にある蛇行状又は螺旋状に配置された液体冷却用冷却通路である。回転子14の周面にある永久磁石15は好適な手段、例えば結合帯17によって保持される。回転子14自体が冷却手段、例えば冷却通路18を有する。
【0018】
回転子14は例えば主軸19上で位置決めされており、この主軸は図示しない生産機械又は工作機械の一部を成す。
【0019】
図4に示す歯巻回コイル6は、平角線6が、原理的に示す如く結合部23を経て電気的に直列に接続されている。層間に加わる電圧差の故に、層間絶縁20が不可欠である。
【0020】
図5に斜視図で例示する支持体23は平角線5を備え得る。その際には、支持体23の内面24が平角線5と歯3との間の主絶縁を引き受ける。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】平角線巻線の細部部である。
【図2】平角線で構成された歯巻回コイルを示す。
【図3】本発明に係る巻線を有する電気機械の横断面図である。
【図4】原理的直列回路を示す。
【図5】支持体の斜視図である。
【符号の説明】
【0022】
1 固定子、2 同期機、3、13 歯、4 スロット、5 平角線、6 歯巻回コイル、7 巻線層、8 スロット底、9 始端、10 終端、11 主絶縁、12 薄鋼板、14 回転子、15 永久磁石、16 ハウジング、17 結合帯、18 冷却通路、19 主軸、20 層間絶縁、21 溝、23 支持体、24 内面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
永久磁石同期機(2)であって、固定子が平行側面スロット(4)を有し、該スロットが平角線(5)からなる巻線系を備え、平角線(5)が各々1つの歯(3)を包囲しかつ歯巻回コイル(6)として構成されたものにおいて、
平角線(5)が平打巻回され、平角線(5)の短辺側が各々歯(3)の方を向き、各歯巻回コイル(6)が少なくとも2層の平角線(5)を有することを特徴とする永久磁石同期機。
【請求項2】
各層の平角線がスロット底の方から巻回されたことを特徴とする請求項1記載の永久磁石同期機。
【請求項3】
各第2歯(3)のみが歯巻回コイル(6)を有し、スロット(4)が各々歯巻回コイルの半分によって占められており、非巻回歯(13)と巻回歯(3)との系列が生じることを特徴とする請求項1又は2記載の永久磁石同期機。
【請求項4】
固定子(1)が同軸に構成されたことを特徴とする永久磁石同期機。
【請求項5】
歯巻回コイル(6)が固定子(1)内の少なくともスロット区域領域に主絶縁(11)を有することを特徴とする請求項1から3の1つに記載の永久磁石同期機。
【請求項6】
歯巻回コイル(6)が支持体(23)上に巻回され、歯巻回コイル(6)が支持体(23)と共に歯(3)で位置決めされたことを特徴とする請求項1から5の1つに記載の永久磁石同期機。
【請求項7】
歯巻回コイル(6)の平角線(5)が電気的に並列又は直列に接続されたことを特徴とする請求項1から6の1つに記載の永久磁石同期機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2008−514173(P2008−514173A)
【公表日】平成20年5月1日(2008.5.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−531745(P2007−531745)
【出願日】平成17年9月9日(2005.9.9)
【国際出願番号】PCT/EP2005/054501
【国際公開番号】WO2006/029992
【国際公開日】平成18年3月23日(2006.3.23)
【出願人】(390039413)シーメンス アクチエンゲゼルシヤフト (2,104)
【氏名又は名称原語表記】Siemens Aktiengesellschaft
【住所又は居所原語表記】Wittelsbacherplatz 2, D−80333 Muenchen, Germany
【Fターム(参考)】