説明

平面位置検出装置及びこれを適用した平面モータ

【課題】レゾルバ方式の位置検出機能を適切に組み合わせて異なる2方向の検出機能を実現する。
【解決手段】スケール部10側に異なる2方向の位置検出を行うための固定側インダクトシン基板3,4を重畳させるなどして配置し、スケール部10側に給電するように構成した上で、検出対象に付随するスライダ部20に2方向への位置検出を行う可動側インダクトシン基板5,6を設けて位置検出を行うようにしたので、コイルパターンを小さくして分解能を容易に高めることができ、スライダ部20側も軽量にして検出対象である作動体等の負荷となることも回避して、コンパクトかつ低コストで高性能の平面位置検出機能を実現することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スライダがプラテン上でスライドする際の位置検出を行い、平面モータの位置決め等に利用するための平面位置検出装置及びこれを適用した平面モータに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、この種の位置検出を行うものとして、特許文献1に示すものが知られている。このものは、レゾルバを用いてスライダの位置検出を行うべく、レゾルバのセンサ部200は、コア201と、このコア201に巻かれたコイル202で構成される。センサ部200はプラテン10上に所定の空隙を介して配置される。コア201のプラテン10との対向面には、プラテン10の歯と同じピッチPで磁極の歯が形成されている。
【0003】
プラテン10とコア201との間には、プラテン10の歯とコア201の歯の相対位置に応じたインピーダンスZが存在する。コイル202に励磁電圧として一定振幅の矩形電圧を入力するとコア201が励磁され、プラテン10との間に磁気回路Bが形成される。この磁気回路BはインピーダンスZにより影響を受けるため、結果としてコイル202の端子間電圧はプラテン10とコア201の相対位置に応じて正弦波状に変化する。そこで、コイル202の端子間電圧を取り出し、その振幅を検出信号とする。
【0004】
レゾルバは、このようなセンサ部200を2個用意し、図2に示すようにプラテン10に対する位相を90°ずらして配置して構成する。センサ部200の一方をsin相、他方をcos相とし、これらのセンサ部から得られる検出信号のアークタンジェントを取ることによって、レゾルバのプラテン10に対する位相差、すなわちプラテン10の歯に対する相対位置が求められる。なお、プラテン10のどの歯に対する相対位置かは、検出信号が原点位置から繰り返す正弦波の山の数をカウントして求められる。これにより、原点位置を基準としてレゾルバの位置を精度よく検出できる。
【0005】
同文献の図12には、このような位置決め装置において、レゾルバをスライダ1のプラテン10との対向面に埋設して設けた例が示されている。1a,1bはスライダ1のプラテン10との対向面にX軸方向に形成された磁極の歯である。1c,1dはスライダ1のプラテン10との対向面にY軸方向に形成された磁極の歯である。これらの磁極の歯がプラテン10の磁極の歯とそれぞれX軸方向用およびY軸方向用の平面モータを構成している。
【0006】
また、上記特許文献1には、従来技術として特許文献2に示される光学式の検出装置が紹介されている。このものは、複数のスライダ部を広いプラテン上で交互に移動制御して複数工程を同一プラテン上で実行させる場合、移動範囲に著しい制約が生じてシステムの設計が困難であることに鑑み、バーミラーのサイズに制限を受けることなく、複数のスライダ部を同一プラテン上の任意位置に位置制御できるXYステージを実現するために、四辺形のプラテン上で四辺形のスライダ部を2次元方向に位置制御するXYステージにおいて、前記スライダ部の四辺の少なくとも三辺に設けられたバーミラーと、前記プラテンの四辺の少なくとも二辺に沿って固定配置され、前記バーミラーに照射したレーザビームの反射光を受光する複数個のレーザ干渉計と、を備えたXYステージが示されている。
【0007】
特許文献2は、特許文献1の不具合、すなわちレーザ干渉計やバーミラーが高価である点、レーザ高原は短命である点、レーザ光を遮るものがあると位置検出できないため設計自由度が低い点等を挙げ、これを解決するものであるとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2009−300270号公報
【特許文献2】特開2007−163418号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
従来のレゾルバの構成では、プラテンに設けた鉄心である歯を推力と位置検出に兼用しているため、所要の推力を確保するために歯のピッチを細かくしていくと、ギャップに対する高さ方向の変動の割合が大きくなることで推力変動が大きくなり、ギャップを小さく調整したり保ったりするためには多大なコストが生じることから、結果的にプラテンのピッチを小さくすることができず、安定した大きな推力を得ることが難しいものとなっている。
【0010】
そして、分解能を上げるために同一方向に同じ機能を持つレゾルバを多数設ける旨の示唆がされているが、このようにすると、レゾルバの数が増大してコスト高となるばかりか、レゾルバごとにコイルを巻いて励磁電源に接続する必要があるため、スライダも一層重くなり、動きも悪くなって、モータの性能低下にもつながるものとなる。
【0011】
本発明は、このような課題を有効に解決した平面位置検出装置及びこれを適用した平面モータを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、かかる目的を達成するために、次のような手段を講じたものである。
【0013】
すなわち、本発明の平面位置検出装置は、スケール部に対し、検出対象に追従するスライダ部を対向配置して、前記スケール部及び前記スライダ部の相対的位置を電磁誘導方式により検出するインダクトシン方式のものであって、前記スケール部に、第1方向に所定ピッチで連続する励磁用コイルパターンを有する第1の固定側インダクトシン基板と、前記所定方向と異なる第2方向に所定ピッチで連続する励磁用コイルパターンを有する第2の固定側インダクトシン基板と、これらの固定側インダクトシン基板のコイルパターンに通電するための給電手段とを設けるとともに、前記スライダ部に、前記第1方向に所定ピッチで連続する検出用コイルパターンを備えて前記第1方向への位置変位を検出するための第1の可動側インダクトシン基板と、前記第2方向に所定ピッチで連続する検出用コイルパターンを備えて前記第2方向への位置変位を検出するための第2の可動側インダクトシン基板とを、少なくとも互いが独立して動ける状態で設けたことを特徴とする。
【0014】
ここで独立して動ける状態とは、互いの位置関係が制約されていないために、一方の可動側基板がいた場所に他方の可動側基板が移動することが可能な状態を言う。したがって、独立して動ける状態に起因して、2つの可動側基板が縦列状態や並列状態になることがあり得る。
【0015】
このように構成すると、インダクトシン方式であるためコイルパターンのピッチを小さくしてもギャップ変動や推力変動が問題にならず、適切な推力と分解能を両立して確保することができる。また、可動側のインダクトシン基板の数が増大しても大幅なコスト高や重量化を招くことを回避することができ、可動側インダクトシン基板を複数設けてもスケール側で通電するため可動側を低コストで構成できる上に、可動側の負荷を軽減して位置検出性能の低下の原因となることも有効に回避することが可能となる。また、インダクトシン基板が独立して動いても光学的に検出する場合のような検出上の干渉を招くことがなく、数が増える程本発明の効果は顕著なものとなる。
【0016】
例えば直交方向や曲面上の交叉方向に独立して動く作動体の一方のX方向移動位置と他方のY方向位置を検出する必要があるような場合には、スライダ部を独立して動ける状態で複数設け、少なくともそれらのスライダの1つに第1の可動側インダクトシン基板を設け、他の1つに第2の可動側インダクトシン基板を設けていることが望ましい。
【0017】
各々の作動体が例えば別個に平面内や曲面内を自由に動く場合には、各々のスライダ部に、それぞれ第1の可動側インダクトシン基板と第2の可動側インダクトシン基板とを設けていることが望ましい。
【0018】
スケール側を2方向の検出機能を備えた取り扱い容易なものとするためには、第1の固定側インダクトシン基板と第2の固定側インダクトシン基板とをスケール部に一体的に積層して構成していることが好適である。
【0019】
検出の適正化を図るためには、第1の固定側インダクトシン基板と第1の可動側インダクトシン基板の間のギャップと、第2の固定側インダクトシン基板と第2の可動側インダクトシン基板の間のギャップとを一致させていることが望ましい。
【0020】
以上のような平面位置検出装置を備えて平面モータを構成すれば、検出対象である作動体の負荷軽減を通じてモータ性能を有効に向上させることができる。
【発明の効果】
【0021】
本発明の平面位置検出装置は、以上説明したように、スケール部側に異なる2方向の位置検出を行うための固定側インダクトシン基板を重畳させるなどして配置し、スケール部側に給電するように構成した上で、検出対象に付随するスライダ部に前記2方向への位置検出を行う可動側インダクトシン基板を設けて位置検出を行うようにしたものであり、コイルパターンを自由に小さくでき、またプラテンの歯を位置検出に兼用していないために歯のピッチを小さくする必要がなく、推力が損なわれることや推力が変動することも回避できるとともに、スライダ部側も軽量にして検出対象である作動体等の負荷となることも回避して、コンパクトかつ低コストで高性能の平面位置検出機能を実現することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の一実施形態に係る平面位置検出装置を適用した平面モータの模式的な斜視図。
【図2】平面モータの一部を模式的に示す部分断面図。
【図3】同平面位置検出装置を構成するスケール部の第1の固定側インダクトシン基板を模式的に示す平面図。
【図4】同平面位置検出装置を構成するスケール部の第2の固定側インダクトシン基板を模式的に示す平面図。
【図5】同平面位置検出装置を構成するスケール部の第1の固定側インダクトシン基板と第2の固定側インダクトシン基板を重ね合わせた状態を模式的に示す平面図。
【図6】同平面位置検出装置を構成するスケール部の固定側インダクトシン基板とスライド部の可動側インダクトシン基板の高さ方向の関係を模式的に示す模式的な断面図。
【図7】電磁誘導方式の位置検出装置の検出原理を説明するための図。
【図8】電磁誘導方式の位置検出装置の検出原理を説明するための図。
【図9】同実施形態における平面位置検出装置のノイズキャンセル機能を説明するための模式的な図。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の一実施形態を、図面を参照して説明する。
【0024】
図1に示すものは、プラテン1上を複数(図示例では3個)の作動体2が第1の方向であるX方向および第2の方向であるY方向に互いに独立して動けるように当該作動体2を不図示の駆動機構と関連づけて配置した平面モータMである。この種の駆動機構は、例えば特開2000−65970号公報等にも示されているように公知であるため詳細は省略するが、図2に模式的な断面として示すようにプラテン1に縦横に溝11を切って格子が形成され、作動体2を効率良く浮上支持ためにその表面の格子の溝11を埋める樹脂によるコーティング層12が形成されているものである。この実施形態で検出対象となっている作動体2は姿勢を保ってXY方向にのみ移動し回転しないものである。
【0025】
そして、図1に示す平面位置検出装置は、プラテン1側にスケール部10を設け、検出対象である各作動体2側における前記スケール部10の対向位置にスライダ部20を設けている。スケール部10及びスライダ部20には、相対的位置を電磁誘導方式により検出するインダクトシン方式のものが採用されている。通常のレゾルバが鉄心を介して磁路を結ぶために平面方向に鉄心を展開もしくは分布させて配置するのに対して、インダクトシン方式のものはギャップを介して磁路を結ぶだけで鉄心を有さず、薄板の基板同士を対向させるだけで構成できるものである。
【0026】
具体的に説明すると、スケール部10は、各々フラットな形状の第1の固定側インダクトシン基板3と第2の固定側インダクトシン基板4とを一体的に積層したものである。以下、「第1の固定側インダクトシン基板3」、「第2の固定側インダクトシン基板4」は、単に「第1の固定側基板3」、「第2の固定側基板4」と略称する。第1の固定側基板は、図3に示すように第1方向(以下、X方向とする)に所定ピッチ(所定周期)P1で連続する励磁用コイルパターン3aを形成され、第2の固定側基板4は、図4に示すように前記所定方向と直角に交叉する第2方向(以下、Y方向とする)に所定ピッチ(所定周期)P2で連続する励磁用コイルパターン4aを形成されて、これらは平面視において図5に示すように直交して格子を形成している。そして、固定側基板3,4に、励磁用コイルパターン3a、4aに通電するための交流電源を含む給電手段30、40が接続されている。給電手段30、40は図示例のように固定側基板3、4の各励磁用コイルパターン3a、4aごとに設けてもよいが、両固定側基板3、4の励磁用コイルパターン3a、4aを直列に接続して給電手段30、40が共通の給電手段であるように構成してもよい。ここに言う基板には、薄板のみならず薄いシート、可撓性のあるシート等が含まれ、本実施形態ではペットフィルム等に薄膜パターンを作ったものが用いられている。第1の固定側基板3および第2の固定側基板4は、図2に示したプラテン上のコーティング層12内に埋め込まれている。
【0027】
一方、各スライダ部20には、図3に示すように、X方向に所定ピッチ即ちここでは前記第1の固定側基板3のコイルパターン3aと同一ピッチP1で連続する検出用コイルパターン5aを備えてX方向への位置変位を検出するための第1の可動側基板5と、図4に示すようにY方向に所定ピッチ即ちここでは前記第2の固定側基板4のコイルパターン4aと同一ピッチP2で連続する検出用コイルパターン6aを備えてY方向への位置変位を検出するための第2の可動側基板6とが設けてある。以下、「第1の可動側インダクトシン基板5」、「第2の可動側インダクトシン基板6」についても、単に「第1の可動側基板5」、「第2の可動側基板6」と略称する。これらの基板5、6もフラットな形状のもので、これらの基板5,6には、検出用コイルパターン5a、6aに生じる電圧変化から位置検出を行う不図示の検出器が接続されている。
【0028】
その際、第1の可動側基板5と第2の可動側基板6とは図1に示すように1つのスライダ部20において平面方向に位置をずらして配置してあり、図6に示すように第1の固定側基板3と第1の可動側基板5の間のギャップg1と、第2の固定側基板4と第2の可動側基板6の間のギャップg2とが一致するように、各々の基板3,4,5,6の高さ位置が設定してある。
【0029】
コイルパターン3a、4a、5a、6aについて詳述すると、第1の固定側基板3の励磁用コイルパターン3aは、図3に示すように、X方向に所定ピッチP1で励磁部31を並列させその間を折り返し部32a、32bで千鳥状に接続した構成を有し、第2の固定側基板4の励磁用コイルパターン4aは、図4に示すようにY方向に所定ピッチP2で励磁部41を並列させその間を折り返し部42a、42bで千鳥状に接続した構成を有している。
【0030】
また、第1の可動側基板5の検出用コイルパターン5aは、図3に示すように、X方向に沿って前記第1の固定側基板3の励磁部31のピッチP1と同一ピッチで検出部51を並列させその間を折り返し部52a、52bで接続してX方向への位置変位を検出するように構成され、第2の可動側基板6の検出用コイルパターン6aは、図4に示すように、Y方向に沿って前記第2の固定側基板4の励磁部41のピッチP2と同一ピッチで検出部61を並列させその間を折り返し部62a、62bで接続して構成されている。
【0031】
検出原理を、例えばペアとなってX方向の位置検出機能を有する第1の固定側基板3の励磁用コイルパターン3aと第1の可動側基板5の検知用コイルパターン5bとに基づいて説明すると、図7(a)に示すように、スケール部10側のコイルパターン3a上にスライダ部20側のコイルパターン5aを重畳させた状態でスケール部10側のコイルパターン3aに図中矢印で示すように交流電流を流すと、コイルパターン3a、5aの平行なところすなわちスケール部10側のコイルパターン3aの励磁部31とスライダ部20側のコイルパターン5aの検出部51との電磁連結により、当該励磁部51に電磁誘導作用で電圧が発生して図中矢印で示す方向に電流が流れる。スライダ部20とスケール部10の位置が同図(b)に示すようにピッチP1方向に変化すると励磁部31と検出部51の相対距離が変化するため、発生する電圧が同図(c)のように正弦波状に変化する。この変化した電圧をとらえて位置を検出する。
【0032】
すなわち、位置Aでは、スケール部10のパターン3aとスライダ部20のパターン5aが一致し電磁結合は正方向の最大になる。スライダ部20が1/4ピッチずれた位置Bでは、スライダ部20の検出部51がスケール部10の検出部31の中間にあり、スライダ部20の両方向に流れる電流の影響を等しく受け電磁結合はゼロになる。1/2ピッチずれた位置Cでは、位置Aとは逆方向の関係になり、電磁結合は負方向に最大になる。3/4ピッチずれた位置Dでは、位置Bと同じ関係位置になり、結合は同じくゼロになる。1ピッチずれた位置Eは、位置Aと同じになる。電磁結合は移動位置によって、誤差のないSIN結合となる。
【0033】
スケール部10に対し、このようなスライダ部20側のコイルパターン5aを図8(a)に示すように位相をずらして(例えば90°)一対に設けることにより、同図(b)に示すような位相のずれた2つの正弦波を取り出し、ここからスライダ部20の移動方向を含めた位置検出を行うことができる。ペアとなってY方向の位置検出機能を有する第1の固定側基板4の励磁用コイルパターン4aと第1の可動側基板6の検知用コイルパターン6bとの間においても同様である。
【0034】
スケール部10に対し、このようなスライダ部20側のコイルパターン5aを図8(a)に示すように2個用意し、スケール部10のコイルパターン3aに対する位相を90°ずらして配置して構成する。スライダ部20側から検出する波の一方をsin相、他方をcos相とし、これらの検出信号のアークタンジェントを取ることによって、スライダ部20のスケール部10ひいてはプラテン10に対する位相差、すなわちプラテン10に対する相対位置が求められる。なお、プラテン10のコイルパターン5aのうちどの繰り返しパターンに対する相対位置かは、検出信号が原点位置から繰り返す正弦波の山の数をカウントして求められる。これにより、原点位置を基準としてスライダ20の位置を精度よく検出できる。ペアとなってY方向の位置検出機能を有する第1の固定側基板4の励磁用コイルパターン4aと第1の可動側基板6の検知用コイルパターン6bとの間においても同様である。
【0035】
ところで、この実施形態では、図3に示すX方向検出用の励磁部31や検出部51のピッチP1と図4に示す第2方向検出用の励磁部41や検出部61のピッチP2とが同一ピッチに設定してあり、図3に示すX方向を検出方向とする可動側の検出用コイルパターン5の折り返し部52a、52bが、図9(a)に示すようにスケール部10側に設けられた本来ペアではない図4のY方向の励磁用コイルパターン4aの励磁部41と電磁結合を起こすことがある。すなわち、前記第1の可動側基板5に設けられている検出用コイルパターン5aの検出部51のうち所定方向を往路51a、逆方向を復路51bとし、往路51aから復路51bに入る部位を第1の折り返し部52a、復路51bから往路51aに入る部位を第2の折り返し部52bとすると、第1の折り返し部52aと第2の折り返し部52bがそれぞれ第2の固定側基板4に設けられた励磁用コイルパターン4aの励磁部41と電磁連結して同一方向の電流が流れる方向に励磁されることになり、これが本来ペアである図3の第1の固定側基板3に設けられた検出用コイルパターン3aの励磁部31と第1の可動側基板5の励磁部51(上記往路51a、復路51b)とが電磁連結した際の検出信号に新たにノイズとして加わって、正確な検出ができなくなる不具合を引き起こす。
【0036】
そこで本実施形態は、同図(b)に示すように、基板5の検出用コイルパターン5aを、各折り返し部52a、52bにおいて前記第2の固定側基板4の励磁部41と電磁連結することにより生じる誘起電圧が全体として相殺されるように構成している。具体的には、隣接している第1の折り返し部52aと第2の折り返し部52bの間の距離dを、第2の固定側基板4の励磁部41の1周期分(1ピッチ分)の距離P1の(N−1/2)倍(N:自然数)、すなわち本実施形態ではN=1を採用してd=P1/2となるようにしている。そして、これにより第1の折り返し部52aと第2の折り返し部52bがそれぞれ第2の固定側基板の励磁部41と電磁連結した際に同図中に矢印で示すように逆向きの電流が流れるようにして、互いの影響を相殺する本発明の相殺部を構成している。基板6の検出用コイルパターン6aについても同様である。
【0037】
検出用の磁束に対する磁気抵抗を小さくするために、基板3,5の対向する側とは反対側の面、或いは、基板4,6の対向する側とは反対側の面に、それぞれ磁性膜等の磁性体を配置しておいてもよい。
【0038】
このように、本実施形態の平面位置検出装置は、検出機構にインダクトシン方式を採用したためコイルパターン3a、4a、5a、6aのピッチを小さくしてもギャップ変動や推力変動が問題にならず、適切な推力と分解能を両立して確保することができる。また、検出機能のメカニズムが平面モータMの推力を兼用せずに独立しているため検出が推力を妨げるという問題もなく、可動側の基板5,6の数が増大しても大幅なコスト高や重量化を招くことを回避することができ、可動側基板5,6を複数設けてもスケール部10側で通電するため可動側を低コストで構成することができる上に、可動側の負荷を軽減して位置検出性能の低下の原因となることも有効に回避することが可能となる。また、可動側の基板5,6が独立して動いても光学的に検出する場合のような検出上の干渉を招くことがなく、数が増える程本発明の効果は顕著なものとなる。
【0039】
また、第1の固定側基板3と第2の固定側基板4とをスケール部10に一体的に積層して構成しているので、スケール部10側を2方向の検出機能を備えた取り扱い容易な板状のセンサ部品またはセンサ部材として有効に活用することができるようになる。
【0040】
そして、以上のような平面位置検出装置を備えて平面モータMを構成することで、検出対象である作動体の負荷軽減を通じてモータ性能を有効に向上させることが可能となる。
【0041】
なお、各部の具体的な構成は、上述した実施形態のみに限定されるものではない。
【0042】
例えば、適用対象である1つの作動体上の独立して動く部位にスライダ部を取り付けても上記と同様の作用効果が奏されるし、直交方向に独立して動くスライダ部の一方にX方向検出用の可動側基板のみを設け、他方にY方向検出用の可動側基板のみを設ける等の態様によっても、上記に準じた作用効果が奏される。
【0043】
また、上記実施形態ではプラテンと作動体との作動面がフラットな平面であったが、円筒面や球体面等のような任意の曲面で構成されるプラテン上を作動体が移動するような場合にも、当該プラテンと作動体の間に本発明のスケール部とスライド部をコンパクトに構成することができ、このような面は平面を湾曲させて構成し、或いは微小な平面の集合として考えることができるため、本発明の平面にはこのような面も含まれる。
【0044】
さらに、上記実施形態では作動体が姿勢を保って回転せずにXY方向にのみ移動するものであったが、作動体が回転動作をも起こすものである場合は、同じ機能のスライド部を追加して差分をとることで回転検出を行うこともできる。
【0045】
さらにまた、上記実施形態のスケール部は励磁用コイルパターンを有する基板を2層に積層して構成されていたが、互いに異なる励磁用コイルパターンを有する基盤を3層若しくはそれ以上に積層して構成することもできる。
【0046】
その他の構成も、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変形が可能である。
【0047】
例えば、上記実施形態では、固定側のコイルパターンと可動側のコイルパターンを同一ピッチに設定したが、同期的に位置検出ができれば固定側のコイルパターンと可動側のコイルパターンは必ずしも同一ピッチでなくとも構わない。
【符号の説明】
【0048】
2…検出対象(作動体)
3…第1の固定側インダクトシン基板
3a…励磁用コイルパターン
4…第2の固定側インダクトシン基板
4a…励磁用コイルパターン
5…第1の可動側インダクトシン基板
5a…検出用コイルパターン
6…第2の可動側インダクトシン基板
6a…検出用コイルパターン
10…スケール部
20…スライダ部
g1、g2…ギャップ
M…平面モータ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
スケール部に対し、検出対象に追従するスライダ部を対向配置して、前記スケール部及び前記スライダ部の相対的位置を電磁誘導方式により検出するインダクトシン方式のものであって、
前記スケール部に、第1方向に所定ピッチで連続する励磁用コイルパターンを有する第1の固定側インダクトシン基板と、前記所定方向と異なる第2方向に所定ピッチで連続する励磁用コイルパターンを有する第2の固定側インダクトシン基板と、これらの固定側インダクトシン基板のコイルパターンに通電するための給電手段とを設けるとともに、前記スライダ部に、前記第1方向に所定ピッチで連続する検出用コイルパターンを備えて前記第1方向への位置変位を検出するための第1の可動側インダクトシン基板と、前記第2方向に所定ピッチで連続する検出用コイルパターンを備えて前記第2方向への位置変位を検出するための第2の可動側インダクトシン基板とを、少なくとも互いが独立して動ける状態で設けたことを特徴とする平面位置検出装置。
【請求項2】
スライダ部を独立して動ける状態で複数設け、少なくともそれらのスライダの1つに第1の可動側インダクトシン基板を設け、他の1つに第2の可動側インダクトシン基板を設けている請求項1記載の平面位置検出装置。
【請求項3】
各々のスライダ部に、それぞれ第1の可動側インダクトシン基板と第2の可動側インダクトシン基板とを設けている請求項2記載の平面位置検出装置。
【請求項4】
第1の固定側インダクトシン基板と第2の固定側インダクトシン基板とをスケール部に一体的に積層して構成している請求項1〜3何れかに記載の平面位置検出装置。
【請求項5】
第1の固定側インダクトシン基板と第1の可動側インダクトシン基板の間のギャップと、第2の固定側インダクトシン基板と第2の可動側インダクトシン基板の間のギャップとを一致させている請求項4記載の平面位置検出装置。
【請求項6】
請求項1〜5何れかに記載の平面位置検出装置を備えていることを特徴とする平面モータ。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−98056(P2012−98056A)
【公開日】平成24年5月24日(2012.5.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−243644(P2010−243644)
【出願日】平成22年10月29日(2010.10.29)
【出願人】(000002059)シンフォニアテクノロジー株式会社 (1,111)
【Fターム(参考)】