説明

平面的拡張が容易な軽量薄型の太陽光集光器

【課題】太陽光集光器を大規模化する為に、各部材の応力と曲げモーメントを低減化する。太陽光集光器は小さな基礎モデルで成り立つ構成でも、大規模化すると構成部材の強度に支障が生じがちである。
【解決手段】反射板重量負荷を支える支持点を反射板列の中心線近傍に複数設ける事によって、各構成部材にかかる重量負荷を分散化させる事を、解決手段とする。主な構成物である反射板1を支えるには、反射板1の中心点で支持するのが最適である。さらに支持点が増えれば増えるほど太陽光集光器全体の重量は分散されるので、大規模化しても重量負荷がかさむことがない。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は太陽光集光器に関し、多数の反射板の向きを太陽追尾制御して集光点に光を集める方式の太陽光集光器に関する。利用形態は、太陽熱発電、太陽光発電、温水供給器、調理器、照明器等である。
【背景技術】
【0002】
従来から複数枚の反射板を連動させて1焦点に集光させる太陽光集光器は、様々な出願がなされてきた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開昭51−27347号公報
【特許文献2】実開昭61−22016号公報
【特許文献3】特開2004−191025号公報
【特許文献4】特開昭61−27517号公報
【特許文献5】特開2003−329963号公報
【特許文献6】国際公開2002−1117号公報 しかしながら特許文献1は、方角追尾のみか、仰角追尾のみしか出来ない構成である。特許文献2は、方角追尾のみで、仰角追尾はできない構成である。すると季節によって太陽軌道が変化すると集光位置も変化する構成であった。吸熱体を線状にしなければならないという不具合が生じていた。
【0004】
特許文献3は、方角追尾はするが、仰角については初期設定のみか仰角追尾するのか不明な構成である。いずれにしろ反射板を設置する面積の土台ごと動かす構成なので、大規模化はとても困難な構成である。大規模化させるには空間に巨大な構造物を建てる事となり、風抵抗も考慮した構築をして、さらにそれら装置を動かすには多大なエネルギーを要することとなってしまう。
特許文献4〜6は、方角追尾、仰角追尾をし、かつ薄型の構成ではあるが、拡張するにはそれぞれに問題を抱えた構成である。
特許文献4は、ブラインドの様に吊るす構成である為、風防の透明カバーが必要であり、拡張するには負担が大きい。帆船の帆が大きな風力を得ているように大面積の透明カバーにも大きな圧力が加わる。それに耐える構造物を建築すること自体が大きな負担となり、大規模化はかなり困難である。
【0005】
特許文献5は、平面的拡張が容易なように見えるが、現実的には拡張困難な構成である。ワイヤーがたるんで反射板が地面に触れる事のないように張力を張る必要がある。それゆえ反射板を増やして拡張するにはかなり張力を張る必要が生じる。高張力に耐えるべく太く重いワイヤーにせざるを得ず、その自重がたわみ易さをもたらすという悪循環に陥る。またワイヤーを高張力にすることで、支点に大きな曲げモーメント負荷がかかる。ユニットを増設すれば支点の列にかかる負担はさらに嵩み、土台破壊の危惧さえ生じる。たるみを許容すれば、支点を高める必要が生じ、すると支点の土台にかかる曲げモーントはあまり減らないかかえって増加する。さらに支点が高くなると風抵抗が強まって負荷が増加してしまう。
特許文献6も、平面的拡張が容易なように見えるが、現実的には小面積でも実施困難な構成である。多くの部材が点接点で構築され、かつ糸で動力伝達するのは、精度も耐久性も維持が困難である。大規模化すれば糸のわずかな伸びや部材接点のわずかなズレが大きく悪影響を及ぼす事となる。また共通リンクを大規模化して動かすには駆動装置への負担が大きい構成である。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の課題は、太陽光集光器を構成する各部材の応力と曲げモーメントの低減化である。太陽光集光器の分野は、大規模化が求められる分野である。そして小さな基礎モデルで成り立つ構成でも、大規模化すると構成部材の強度に支障が生じがちである。各構成部材の応力や曲げモーメントが小さければ、大規模化につながる。支障が生じる例が特許文献4〜6である。それらは反射板を50枚、100枚と拡張し、そのユニットを50列、100列と拡張すると、前項記述のように問題が顕在化し、大規模化を阻んでいたわけである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
懸かる課題解決の為、反射板重量負荷を支える支持点を反射板列の中心線近傍に複数設ける事によって、各構成部材にかかる重量負荷を分散化させる事を、解決手段とするものである。主な構成物である反射板を支えるには、反射板の中心点で支持するのが最適である。さらに支持点が増えれば増えるほど太陽光集光器全体の重量は分散されるので、大規模化しても重量負荷がかさむことがない。ただし支持点は厳密に反射板の中心に限定するものではなく、設計条件に応じて中心点近傍の範囲内であればよい。設計条件とは、製造の簡易化の為や、ユニット回動部の重心にして操作の省力化の為などである。
具体的な解決手段を段階的に説明する。南と北を結んだ想定南北線に反射板の中心を合わせて多数の反射板を並べ、これら反射板列の外側に南北棒を位置させ、この2本の南北棒をつなぐ東西棒を反射板の南北幅間隔で位置させて南北棒と東西棒を一体化してハシゴ形状のシーソーハシゴ部材を形成し、これら東西棒の内のいくつかの東西棒の中心に想定南北線で回転する南北軸受機構を設け、点在する各々の南北軸受機構には南北軸受機構を支える支柱を接続し、このシーソーハシゴ部材の任意の位置に想定南北線で回転する回転角操作動輪を設ける。シーソーハシゴ部材は点在する支柱で支えられると共に、回転角操作動輪の回転に合わせてシーソーのように東傾き、西傾きに揺動できるようになる。
【0008】
全ての反射板には軸中心線が反射板の中心点近傍を通過すると共に東西方向の軸線で回転する東西軸受機構を介してシーソーハシゴ部材に接続し、このシーソーハシゴ部材には東西軸受機構と同一軸線で回転する軸受を介して仰角クランクを接続すると共に、これら仰角クランクは等しい長さとし、全ての仰角クランク同士をクランク連動棒で連結し、この仰角クランクには反射板を初期設定仰角で保持する長さに調節された初期設定クランクの一端を接続し、この初期設定クランクの他端を反射板に接続する。この初期設定クランクの長さに応じて反射板の初期仰角が定められることとなる。またクランク連動棒を押し引きして仰角クランクの角度を変化させると、全ての反射板の仰角が同じだけ角度変化することとなる。
【0009】
このシーソーハシゴ部材の想定南北線の延長線上の隣接位置に独立した隣接南北軸を位置させ、この隣接南北軸の両端には隣接南北軸を支える隣接支柱を接続し、この隣接南北軸に操作軸受と被操作軸受を係合し、この操作軸受と被操作軸受は隣接南北軸に沿って摺動可能とし、かつ双方の軸回転角度差を解消しつつも互いに離れないよう係合してなり、被操作軸受とクランク連動棒末端を軸受を介して径差解消クランクで連結する。シーソーハシゴ部材を回動操作するとクランク連動棒も回動してしまうので、そのままではクランク連動棒を操作しにくい。そこでクランク連動棒に、径差解消クランク、被操作軸受、操作軸受を連結して、クランク連動棒の制御を可能にしているわけである。
【0010】
前記までの構成を1つのユニット単位とし、このユニットの向きを南北軸受機構の軸線が経度面に合う向きとし、このユニットを1つ以上構成して東西に並べ、全てのユニットの回転角操作動輪には回転角制御駆動手段を連結し、全てのユニットの操作軸受には仰角制御駆動手段を連結し、設定される集光点座標には光熱利用手段を設けて、太陽光集光器を構成することを解決手段とする。
狭義での仰角とは水平線基準の見上げる角度であるが、ここでいう仰角とは、南北軸を基準とした相対的仰角をいうこととする。
ここでいう反射板とは、平面鏡や湾曲した凹面鏡、球面凹面鏡、パラボラ凹面鏡も含むものとする。
ここでいう東西棒の内のいくつかの東西棒とは、強度的に支障なければ間引いてもよいということであり、全ての東西棒に支柱を設けても構わない。
ここでいう軸受とは、円柱軸と係合する軸受のみならず、股関節のように半球体と噛み合う凹面体、方位磁石針の支点のような支点を含む。本発明は軸受を多用しているが、1回転どころか回転90度以下の軸受ばかりである。その為、前記のような軸受擬似体も適用可能である。ただ望ましいのは小型軽量でメンテナンスフリーなエンジニアリングプラスチック軸受である。
【0011】
ここで南北軸受機構および東西軸受機構を軸受機構と表記する理由は、固定側と可動側で、どちらが軸で、どちらが軸受でもよい為である。
ここでいう回転角操作動輪とは、チェーン歯車、ギア歯車、ベルト車などのトルク伝達部材である。一般的には円形であるが、実稼動する角度範囲が限られているので、実稼動する角度範囲だけで形成された扇型の動輪も、本発明の動輪に含むものとする。
ここでいう反射板を初期設定仰角で保持する長さに調節された初期設定クランクについて詳しく説明する。東西軸受を介して連結している反射板と仰角クランクは自由に回動する。ここで反射板の一点と仰角クランクの一点を特定長さのクランクで接続すれば、反射板と仰角クランクの成す角度は定まる。反射板の仰角の制御方法はいろいろあるが、いずれにしろ各反射板の仰角は初期設定しておく必要がある。ちなみに本発明の太陽光集光器では、春分の真昼の日南中角度の太陽光を集光点へ反射させる仰角を初期設定仰角と想定している。太陽光集光器の設置が水平でないならば、設置面傾斜も勘案して初期設定仰角は定められる。反射板と集光点の位置関係で定まる為、個々の反射板の初期設定仰角は異なる。なので初期設定クランクの長さは、個々の反射板の初期設定仰角になるような長さに調整される必要がある。
【0012】
太陽光集光器は大きさやユニット数や集光点座標など、設計で変えうる要素がたくさんあり、そのうえ設置面傾斜、緯度、経度が密接に関係してくるのでややっこしい説明になる。太陽光集光器の製造時点で上記条件が決まっていれば、初期設定クランクもそれぞれに定められる長さに成型されればよいだけの話である。ただ製造時点で上記条件が未定ならば初期設定クランクは長さ調節が少なくとも1回は調節可能であることを要する。さらに設置場所や集光点を変更し得る条件ならば、初期設定クランクは再調節可能な構成であることが求められる。
例えば1回だけ調節可能なクランクの具体例は、伸縮棒アンテナのように嵌り合ったパイプで、初期設定時にはそのパイプ同士をハンダ溶着する構成である。再調節可能な具体例ば、スタンドマイクのポールのように嵌り合ったパイプの側面に固定用ネジを設けた構成でもよい。または角度固定式のコンパスのように、円弧状のボルト穴とボルトの組み合わせでもよい。
【0013】
操作軸受と被操作軸受について、詳しい説明をする。軸受が軸に沿って摺動可能であるとは、ソロバン玉がソロバン軸に沿って摺動するのと同様な動きが可能という意味である。双方の軸回転角度差を解消しつつも互いに離れないよう係合しているとは、操作軸受を摺動させると、被操作軸受も離れずに摺動するという事である。具体的にはラジアル軸受とスラスト軸受とラジアル軸受を連結した構成である。他の例としては操作軸受の前後に被操作軸受を設けて、被操作軸受同士をマタギ部材で連結した構成も考えうる。逆に被操作軸受の前後を操作軸受ではさむ構成も考えうる。
径差解消クランクについて、補足説明する。ユニットの反射板仰角を操作するにはクランク連動棒を動かす必要がある。しかしながらユニットは太陽の軌道運行を追尾して南北軸で回転していくので、そのままでは外部と接続できない。そこでクランク連動棒を動かす為のクランク機構を隣接南北軸の操作軸受にまで連結すれば、ユニットが回動しても操作軸受の位置移動も回動もなくなり、操作可能となる。操作軸受を隣接南北軸に沿って摺動させれば、被操作軸受も摺動し、径差解消クランクとクランク連動棒と仰角クランクと初期設定クランクも動き、反射板の仰角が操作できる訳である。これらの操作を行なうと、隣接南北軸を基準としたクランク連動棒までの径距離は変化する。その弊害を解消する為に径差解消クランクを介在させている訳である。
【0014】
ここでいうユニットを1つ以上構成して東西に並べるとは、東隣りか西隣りにユニットを増設していくという事である。またユニット1つだけの構成も含んでいるという意味である。目的や設計条件によってはユニット1つだけでも構成しうるし、集光器として充分に作用効果を発揮するからである。
ここでいう想定南北線とは、本発明の構成を理解し易くする為の基準線の表現であり、ユニットごとに想定南北線がある。同一ユニットの南北軸受機構と回転角操作動輪と隣接南北軸は、想定南北線上に位置することとなる。
ユニットの向きを南北軸受機構の軸線が経度面に合う向きとすることの説明をする。南北軸受機構の向きは南北方向の垂直面内の直線方向であればよい。
水平な南北方向、南に傾斜した方向、北に傾斜した方向、もしくは垂直線である。
【0015】
東西軸受機構の設置位置について、補足説明する。東西軸受機構が設けられる位置は、反射板の中心点近傍ではない。あくまで軸受の中心線が反射板中心点近傍を通過するのみであり、設置位置は反射板の中心点から適度に東西に離れた位置となる。東西軸受機構の設置位置は、東西棒と兼ねる構成と、東西棒と兼ねない構成が考えられる。東西棒が東西軸を兼ねる構成は、東西軸延長線と南北軸中心が支柱上で重なる構成であり、構成部材が少なくて済み、部材にかかる応力負担も少なくて済む。東西棒と兼ねない構成は、東西棒同士の中間点の南北棒内面に東西軸受機構を設ける構成である。東西軸受機構の他端は反射板の東辺中間と西辺中間と接続する。東西軸受機構を介して、反射板はシーソーハシゴ部材に接続されることとなる。東西軸受機構の軸線と南北軸受機構中心が分離されるので、反射板の回転中心を厳密に反射板表面中心に位置させることが出来る。
ここでいう回転角制御駆動手段および仰角制御駆動手段は、2軸太陽追尾手段のことである。回転角制御駆動手段の代表的な構成は、時刻に応じて時計短針の回転変位の半分の変位角度で回転角操作動輪を駆動させる手段である。その他、コンピュータに太陽軌道座標の回転角度と仰角をデータ蓄積しておき、月日と時刻に合わせて制御する手段も構成し得る。その他、集光点側に設置した光センサーによるフィードバック制御なども適用できる。
ここでいう光熱利用手段は、熱を利用する太陽熱発電、太陽熱温水供給器、太陽熱調理器であり、光を利用する太陽光照明器、太陽光発電である。
【発明の効果】
【0016】
本発明の太陽光集光器の効果は、装置の自重を支える支柱を多数設けることによって、それぞれの部材にかかる応力と曲げモーメントが低減し、大規模化を可能にしたという効果である。一般的に、付帯物のある長尺回転体を支える位置は、回転体の両端しかない。長尺回転体に該当するものはシーソーハシゴ部材であり、付帯物とは連動棒である。本発明では、反射板を用いた集光では太陽が移動する角度の半分の角度を追尾すれば済む点や、太陽光利用は日出から日の入まででなく、水平線上20度ぐらいからで充分である点から、長尺回転体の途中にも支持点を設けられる事を見出して実現したものである。ユニット当りの反射板の数を拡張しても、その拡張数だけ支柱も増やせば、支柱の負荷が増えることはない。
なんとも平凡で瑣末な効果のようであるが、特許文献4〜6では増設によって、いずれかの部材に大きな応力負荷や曲げモーメント負荷がかかり、大規模化を困難たらしめていた。本発明はそれを解消するものである。
もう1つの効果は、太陽光集光器の構成が比較的単純ゆえに、各部材を小型化し、全体を低く平面化できるので、風の抵抗を受けにくいという効果をもたらす。風による破損や、風に耐えるように補強する必要が低減する。さらには部材の軽量化をはかれることにもつながる。本発明の太陽光集光器は単純な構成なので、例えば10センチ程度の反射板寸法であっても構成可能である。1メートル平方1枚の反射板と10センチ平方100枚の反射板の受光面積は等しいが、その風抵抗は10センチ平方反射板100枚のほうが少ない。受風面積が小さいほど風力影響を受けにくい為と、地表高さが低いほど風速は弱くなる為である。また太陽光集光器の周辺の建物や植栽などの防風物によっても風は減衰し、その影響は風下に向けて防風物の高さの30倍の水平距離まで及び、低い物ほどその恩恵を受ける。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
図1を参照として本発明の実施例を説明する。南と北を結んだ想定南北線に反射板1の中心を合わせて長さ比2対1の長方形の反射板1の長辺を東西向きにして3枚ならべ、、これら反射板1の外側に南北棒2を位置させ、この2本の南北棒2をつなぐ東西棒3を反射板1の南北幅間隔で位置させて南北棒2と東西棒3を一体化してハシゴ形状のシーソーハシゴ部材4を形成し、すべての東西棒3の中心に想定南北線で回転する南北軸受5を設け、この南北軸受5には南北軸6を係合し、この南北軸6には支柱7を接続し、シーソーハシゴ部材4を設置固定する。
シーソーハシゴ部材4は、点在する南北軸6を支点としてシーソーのように東へ傾いたり、西へ傾いたりする。
全ての反射板1の裏面の東辺中央と西辺中央に東西向きの軸で回転する東西軸受8を設ける。東西軸受8は反射板1の東端、西端に位置しているが、東西軸受8の中心線は反射板1の中心近傍を通過しているわけである。
【0018】
東西棒3の両端部は東西軸9を兼ねさせ、この東西軸9と東西軸受8を係合することで反射板1はシーソーハシゴ部材4に連結する。反射板1は東西棒3を軸として南へ傾いたり北へ傾いたりする。東西棒3中心と南北軸6中心と支柱7は同一垂直線上にあり、動きも複雑なので、図2〜8で説明する。図2は支柱7の西面である。短い南北軸6をY字形の支柱7が支える。この南北軸6に南北軸受5を係合し、この南北軸受5に東西棒3を一体化して接続し、この東西棒3は東西軸9を兼ねさせて東西軸受8と係合し、この東西軸受8で反射板1を接続する。図3では方向を理解し易くする為に、仮の反射板10の形状を五角形の野球ベース形状に置き換えると共に、南北棒などは省略している。仮の反射板10の突端部は北向きとした。図4は北から見た図である。図5は仮の反射板10を東へ傾けた図である。図5の状態を西から見たのが図6である。図5の状態から仮の反射板10を南へ傾けたのが図7である。このように親シーソーの上に、子供のシーソーを直交させて載せた構成である。東西棒3が親シーソーであり、反射板が子供シーソーに相当する。東西棒3も反射板も1周回転させる事は出来ないが、180度弱の範囲で揺動できる。後々説明する仰角クランクを連結すると可動範囲は狭まるが、120度は充分に動かせる。反射板での追尾は太陽移動角度の半分で済むので充分である。もちろん仰角クランクの長さを縮めれば150度に範囲拡大も可能である。
回転角操作歯車11の設置位置は、図9に示す通りである。シーソーハシゴ部材4の北端に回転角操作歯車11を一体的に設ける。
【0019】
仰角クランク12の接続位置は、図9に示す通りである。東西軸9の延長線と交差する南北棒上の位置に東西向きの軸で回転する軸受を介して仰角クランク12を接続する。これら全ての仰角クランク12同士を連動させるクランク連動棒13で連結する。仰角クランク12およびクランク連動棒13は、東側の南北棒2にも、西側の南北棒2にも連結する。さらに東側のクランク連動棒13と西側のクランク連動棒13を梁14でつないで一体化する。梁14の位置は仰角クランク12の接続部と接続部の中間である。それゆえクランク連動棒13を操作しても、梁14は支柱7にぶつからない。
初期設定クランク15の接続位置は、図10に示す通りである。仰角クランク12と反射板1の間に初期設定クランク15を設ける。初期設定クランク15は互いに摺動する円弧部材16と締付け具17からなる。円弧の重なり長さを調節することで、反射板1の初期仰角を設定できる。クランク連動棒13を動かすと、そのユニット18の3枚の反射板1は同じ角度だけ仰角が変化する。その動きを示すのが図10、11である。クランク連動棒13を引っ張ると、仰角クランク12が回動し、初期設定クランク15も等しく回動し、反射板1も等しく回動する。
つづいて仰角制御する部分の説明をする。図1に示すように、シーソーハシゴ部材4の南北軸6の南側延長線上に隣接南北軸19を設ける。この隣接南北軸19の両端は隣接支柱20で固定支持する。この隣接南北軸19に操作軸受21と被操作軸受22を係合する。この操作軸受21と被操作軸受22は隣接南北軸19に沿って摺動可能とし、かつ双方の軸回転角度差を解消しつつも互いに離れないよう係合してなり、被操作軸受22下部とクランク連動棒13先端を東西向きの軸で回転する軸受を介して径差解消クランク23で連結する。各ユニット18の操作軸受21の上面同士を操作軸受連動棒24で連結する。さらに操作軸受連動棒24に仰角制御駆動装置25を連結する。
【0020】
ユニット18が回動すると、クランク連動棒13も回動し、径差解消クランク23も回動し、被操作軸受22も回動するが、操作軸受21は回動しない。それゆえ3つのユニット18の操作軸受21の上面を操作軸受連動棒24で連結しても支障無いわけである。図1を活用して無理に説明するならば、ユニット回動による姿勢変化は、西端ユニットの姿勢から、中央ユニットの姿勢、東端ユニットの姿勢へと変化する。微妙ながら径差解消クランク23が回動するが、操作軸受21は回動しない様子が示されている。そして仰角制御駆動装置25で操作軸受連動棒24を押したり引いたりすると、操作軸受21、被操作軸受22、径差解消クランク23、クランク連動棒13、仰角クランク12、初期設定クランク15と連動し、全ての反射板1の仰角が等しく操作される。
つづいて回転角制御する部分の説明をする。3つのユニットの回転角操作歯車11と回転角制御駆動モータ26をチェーン27で連結する。この時、各ユニットの反射光が集光点に集まるように、各ユニットの回転角操作歯車11をずらす。図1は中央の回転角操作歯車11の上方に集光点を想定し、真昼時刻の反射板1の制御姿勢を示している。ゆえに中央ユニットは水平であるが、東ユニットはやや西傾きであり、西ユニットはやや東傾きの回転角度でチェーン連結する。図示しないが集光点に光熱利用手段29を設けて、太陽光集光器を構成する。
【0021】
つぎに使用例を説明する。設置場所は東京都千代田区のビル屋上平面とする。太陽光集光器は、南北軸6を南北方向かつ水平に設置する。千代田区は北緯35度なので、春分真昼の太陽光角度、つまり日南中角度は54度となる。冬至と夏至の中間である春分の時点で仰角クランク12が垂直となるようにし、入射54度の太陽光が集光点に反射されるように反射板1の初期仰角を調節する。初期仰角は個々の反射板1で異なるので、それぞれ初期設定クランク15の長さを調節して、図13のようにする。
千代田区は東経139度なので、11時40分頃に太陽が真南にくる。12時に太陽が真南にくるのは、時刻標準地の明石である。11時40分頃に真南からの太陽光を集光点に反射させるように、回転角制御駆動モータ26はチェーン27を駆動させる。クランク機構のアソビやチェーン27のたるみは極力少なくして、駆動誤差を減らす。
反射板1の仰角の制御は、仰角制御駆動装置25で行なう。11時40分頃の日南中角度は月日に対応して定められ、冬至で31度、春秋分で54度、夏至で77度である。太陽軌道は日南中角度を頂点として、黄道の傾き約23度で上昇下降するので、それに合わせて仰角制御駆動装置25は操作軸受連動棒24を押し引きして仰角操作する。日付と時刻のデータから回転角制御駆動モータ26と仰角制御駆動装置25が反射板1の回転角と仰角を制御し、太陽光を受けている間は、反射光は光熱利用手段29に集光されることとなる。
【0022】
ユニットの仰角制御の様子を東から見た略図が図12〜14である。図12は冬至の様子であり、日南中角度31度なので、クランク連動棒13は押され、反射板1は南傾ぎみになる。左上に丸く描かれた太陽28から、破線で示すように光が入射、反射し、光熱利用手段29へと集光される。図13は春分の様子であり、仰角クランク12は垂直で済むように初期設定されているので、その通りの反射板姿勢となる。反射板1の初期仰角は、南位置の反射板1ほど北傾になり、北位置の反射板1ほど南傾になる。図14は夏至の様子であり、日南中角度77度なので、クランク連動棒13は引かれ、反射板1は北傾ぎみになる。
ユニットの回転角制御の様子を北から見た略図が図15〜17である。図15は朝の様子であり、東側からの日差しなので、ユニット18は東に傾けて回動される。真昼はユニット18は水平で済むように初期設定されるが、図16は昼手前の様子である。図17は夕方の様子であり、西側からの日差しなので、ユニット18は西に傾けて回動される。
【実施例1】
【0023】
つづいて東西棒と東西軸を分離した実施例を、図18を参照にして説明する。シーソーハシゴ部材と支柱の構成は、第1の実施例とほぼ同じである。相違点は反射板と仰角操作に関わる部分の位置をハシゴ半マス分ずらした点である。東西軸30の設置位置は南北棒31の内側の東西棒同士の中間点に片持ち梁状に設ける。この東西軸30に仰角クランク32および反射板把持具33を設ける。反射板把持具33で反射板34を挟んで保持する。この時、南北軸の中心線と東西軸30の軸心延長線は反射板34の中心点の表面で交差するように位置させる。すると反射板34の向きを操作しても中心点位置は東西南北に動くことはなく、集光精度が保てる。ちなみに第1の実施例では、南北軸6と東西軸9と反射板1表面に高低差があるので、回転角度や仰角によってわずかながら反射板位置は低く傾けた方向へずれ動く。ただし光熱利用手段の集光範囲が反射板より広ければ支障は無い。
初期設定クランク35は、仰角クランク32と反射板34の間を軸受を介して繋ぐ。初期設定クランク35は、ピストン部材36とシリンダ部材37で伸縮自在に係合し、固定ネジ38を締めることで長さ調節する構成である。東側のクランク連動棒と西側のクランク連動棒とを結ぶ梁39の位置は、仰角クランク32の下部と同位置になり、操作しても支柱に当らない。
【実施例2】
【0024】
つづいて本発明の太陽光集光器を拡張した実施例を、図19を参照にして説明する。50枚の反射板40で1つのユニット41として、このユニット41を50台並べ、各ユニット41の回転角操作動輪42とモーター43をチェーン44で連結し、各ユニット41の操作軸受45の上部同士を操作軸受連動棒46で連結し、この操作軸受連動棒46に油圧シリンダー47を連結する。モーター43と油圧シリンダー47は、通信電線48で制御装置49と接続し、制御装置49からの信号で太陽を追尾するように反射板40の回転角と仰角を駆動する。すべてを図示するのは困難なので、簡略した図で、反射板40の数もユニット41の数も略した。具体的構成は、第1の実施例と同等の構成である。
1つのユニット41は50枚の反射板40を並べた長さなので、ユニット41を回転させる為に大きなトルクを要するように思われがちだが、ユニット41は重心と南北軸回転中心が近いので、小さなトルクで駆動可能である。モーター43には50台分のユニット41のトルクがかかるが、ユニット1台分が小さいトルクなので、50台分でも充分に駆動可能である。回転角操作動輪42とモーター43の外側には、張力請負動輪50を設ける。チェーン44に掛かる張力は、張力請負動輪50が負うので、回転角操作動輪42とモーター43には余計な張力負荷はかからない。
仰角の操作については、油圧シリンダー47を2つ以上並設したほうが安定する。操作軸受連動棒46の操作で動く部分の重心バランスや軸受の回転抵抗や操作軸受連動棒46の剛性に応じていろいろに設計しうるが、油圧シリンダー47をいくつか並設したほうが無難である。
この太陽光集光器は50枚の反射板のユニットを50台の構成だが、さらに拡張することも可能である。モーターや油圧シリンダーの負担が過多になったとしても、駆動手段を増設しさえすれば成り立つわけである。
【実施例3】
【0025】
つづいて本発明の太陽光集光器の南北軸受機構において、支柱側を軸受とした実施例を、図20〜22を参照にして説明する。東西棒51を図20のような形状として、中心に南北軸52を位置させ、この南北軸52両端を下側から支える変形梁53に接続し、これら南北軸52と変形梁53と東西棒51を一体化し、この東西棒51を南北棒54と一体化してシーソーハシゴ部材を形成する。図20では1枚の反射板分の範囲外を省略している。この南北軸52に南北軸受55と一体化した支柱56を係合させたのが図21である。さらに反射板57を連結したのが図22である。反射板57は中央部に穴58が開いているので、仰角を変化させても南北軸受55に接触することはない。これら以外の部材の構成は第1の実施例と同等であるので省略する。
図を見易くする為に、穴58や南北軸受55を大きく図示したが、設計次第で穴58はもっと小さくできる。
本発明の太陽光集光器は、ビルの南面に設置することも可能である。その場合は支柱はビル垂直壁面に突出設置し、支柱先端に設けられる南北軸受は垂直向きとなり、真下に荷重がかかるので、南北軸受はスラスト軸受とする。
【産業上の利用可能性】
【0026】
太陽光集光器は、焦点位置にて焼却器を構成し得るし、様々なプラントの補助加熱手段として組み込む事が可能である。また集光点の光を地上へ2次反射させるビームダウン方式の太陽光集光器における1次反射部分に適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】形態1の全体の斜視図
【図2】支柱を西から見た側面図
【図3】仮の反射板を接続した支柱を西から見た側面図
【図4】仮の反射板を接続した支柱を北から見た正面図
【図5】仮の反射板を東傾させた状態を北から見た図
【図6】仮の反射板を東傾させた状態を西から見た図
【図7】仮の反射板を東南傾させた状態を北から見た図
【図8】仮の反射板を東南傾させた状態を西から見た図
【図9】反射板を略したユニット北端部の斜視図
【図10】反射板周辺の側面図
【図11】反射板を仰角操作した状態の側面図
【図12】冬至のユニットの仰角制御の様子を東から見た略図
【図13】春分のユニットの仰角制御の様子を東から見た略図
【図14】夏至のユニットの仰角制御の様子を東から見た略図
【図15】朝のユニットの回転角制御の様子を北から見下ろした略図
【図16】真昼のユニットの回転角制御の様子を北から見下ろした略図
【図17】夕方のユニットの回転角制御の様子を北から見下ろした略図
【図18】第1の実施例の反射板周辺の斜視図
【図19】第2の実施例の太陽光集光器全体の略図
【図20】第3の実施例の東西棒周辺を見下ろした斜視図
【図21】第3の実施例の東西棒に支柱を係合した斜視図
【図22】第3の実施例の東西棒に反射板を係合した斜視図
【符号の説明】
【0028】
1 反射板
2 南北棒
3 東西棒
4 シーソーハシゴ部材
5 南北軸受
6 南北軸
7 支柱
8 東西軸受
9 東西軸
11 回転角操作歯車
12 仰角クランク
13 クランク連動棒
15 初期設定クランク
18 ユニット
24 操作軸受連動棒
25 仰角制御駆動装置
26 回転角制御駆動モータ
27 チェーン
29 光熱利用手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
南と北を結んだ想定南北線に反射板の中心を合わせて多数の反射板を並べ、これら反射板列の外側に南北棒を位置させ、この2本の南北棒をつなぐ東西棒を反射板の南北幅間隔で位置させて南北棒と東西棒を一体化してハシゴ形状のシーソーハシゴ部材を形成し、これら東西棒の内のいくつかの東西棒の中心に想定南北線で回転する南北軸受機構を設け、点在する各々の南北軸受機構には南北軸受機構を支える支柱を接続し、このシーソーハシゴ部材の任意の位置に想定南北線で回転する回転角操作動輪を設け、
全ての反射板には軸中心線が反射板の中心点近傍を通過すると共に東西方向の軸線で回転する東西軸受機構を介してシーソーハシゴ部材に接続し、
このシーソーハシゴ部材には東西軸受機構と同一軸線で回転する軸受を介して仰角クランクを接続すると共に、これら仰角クランクは等しい長さとし、全ての仰角クランク同士をクランク連動棒で連結し、この仰角クランクには反射板を初期設定仰角で保持する長さに調節された初期設定クランクの一端を接続し、この初期設定クランクの他端を反射板に接続し、
このシーソーハシゴ部材の想定南北線の延長線上の隣接位置に独立した隣接南北軸を位置させ、この隣接南北軸の両端には隣接南北軸を支える隣接支柱を接続し、この隣接南北軸に操作軸受と被操作軸受を係合し、この操作軸受と被操作軸受は隣接南北軸に沿って摺動可能とし、かつ双方の軸回転角度差を解消しつつも互いに離れないよう係合してなり、被操作軸受とクランク連動棒末端を軸受を介して径差解消クランクで連結し、
前記までの構成を1つのユニット単位とし、このユニットの向きを南北軸受機構の軸線が経度面に合う向きとし、このユニットを1つ以上構成して東西に並べ、全てのユニットの回転角操作動輪には回転角制御駆動手段を連結し、全てのユニットの操作軸受には仰角制御駆動手段を連結し、設定される集光点座標には光熱利用手段を設けてなる、太陽光集光器。
【請求項2】
東西棒の両端を東西軸と成し、この東西軸と東西軸受を係合させて反射板をシーソーハシゴ部材に接続してなる、第1項記載の太陽光集光器。
【請求項3】
東西軸受機構の設置位置は南北棒の内側の東西棒同士の中間点に設け、シーソーハシゴ部材と反射板の接続はこの東西軸受機構を介して成される、第1項記載の太陽光集光器。
【請求項4】
ユニットの南北軸受機構の向きが垂直である、第1項記載の太陽光集光器。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate

【図16】
image rotate

【図17】
image rotate

【図18】
image rotate

【図19】
image rotate

【図20】
image rotate

【図21】
image rotate

【図22】
image rotate


【公開番号】特開2011−99627(P2011−99627A)
【公開日】平成23年5月19日(2011.5.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−254758(P2009−254758)
【出願日】平成21年11月6日(2009.11.6)
【特許番号】特許第4527803号(P4527803)
【特許公報発行日】平成22年8月18日(2010.8.18)
【出願人】(000160810)
【Fターム(参考)】