説明

平面研削方法

【課題】立形両頭平面研削盤を用いてワークを研削する際に、ワークと定盤とが接触することを確実に防止して研削精度や砥石寿命を向上させることができる平面研削方法を提供する。
【解決手段】ワークWを研削する際に、まず、下側砥石11の研削面12を、定盤上面31よりも上方となるように位置決めするとともに、上側砥石21の研削面22を、下側砥石11の研削面12との間にワークWを搬入できる間隔を空けて位置決めする。ついで、移載アーム40を回転させることで、ワークWを下側砥石11の研削面12と上側砥石21の研削面22との間に搬入する。ついで、下側主軸10を上方に移動させるとともに、上側主軸20を下方に移動させ、ワークWの上下面を研削する。そして、下側主軸10を元の位置に戻し、ワークWを定盤上面31へと搬出する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、立形両頭平面研削盤によって、被研削物の上下面を平面研削する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の一般的な立形両頭平面研削盤(以下、単に「研削盤」という)の概略構成を図4に示す。同図4に示すように、この研削盤1は、鉛直方向に同軸に配設された下側及び上側主軸10,20と、この主軸10,20の相互に対向する端部にそれぞれ固設されたカップ形の砥石11,21と、前記主軸10,20をそれぞれ軸回りに回転させる駆動モータ13,23と、前記主軸10,20をそれぞれ昇降させる下側及び上側昇降機構14,24と、ワークWが載置される定盤30と、ワークWを保持して移載する移載アーム40と、当該移載アーム40を垂直軸を中心に水平回転させるアーム回転駆動機構43と、前記移載アーム40に保持されたワークWをその軸心回りに回転させるワーク回転駆動機構44と、前記駆動モータ13,23、昇降機構14,24、アーム回転駆動機構43及びワーク回転駆動機構44を制御する制御装置50とを備えている。
【0003】
前記各砥石11,21は、それぞれの開口側端面が平坦な研削面12,22となっており、これら研削面12,22が対向し、且つ前記主軸10,20と同軸となるように当該主軸10,20に固設されている。また、前記主軸10,20は、前記駆動モータ13,23によって同方向、或いは相互に逆方向に回転されるとともに、前記下側及び上側昇降機構14,24によってそれぞれ個別に軸方向に昇降される。
【0004】
斯くして、前記下側及び上側昇降機構14,24は、前記制御装置50により、前記主軸10,20を昇降させて、前記各砥石11,21の研削面12,22を予め設定した位置に位置決めする。尚、前記各砥石11,21の研削面12,22はそれぞれ水平になっている。
【0005】
前記定盤30は、前記下側主軸10の砥石11の側方にこれに近接して配置されている。この定盤30の上面31は、前記研削面12,22と平行になっており、当該上面31に載置されたワークWが、前記移載アーム40によって前記砥石11の研削面12上に移載される。
【0006】
前記移載アーム40の平面図を図5に示す。同図に示すように、この移載アーム40は、その両端部にそれぞれ、鉛直方向に貫通したワーク保持穴42,42を備えており、このワーク保持穴42,42内にそれぞれワークWを保持することができるようになっている。
【0007】
また、移載アーム40は、その中央部に、前記定盤上面31に対して垂直な回転軸41を備えており、前記アーム回転駆動機構43によって当該回転軸41が回転されることにより、この回転軸41を中心として例えば、図5(a)の矢示A方向に回転し、前記定盤上面31に載置されたワークWを前記砥石11の研削面12上に搬入するとともに、前記砥石11の研削面12上にあるワークWを定盤上面31に搬出する。尚、移載アーム40は左右対称形であるので、図5においては、その一端側の図示を省略した。
【0008】
また、前記ワーク回転駆動機構44の具体的な構造は図示しないが、移載アーム40のワーク保持穴42,42に保持されたワークWは、かかるワーク回転駆動機構44によって、図5(b)に図示した如く、例えば、矢示B方向に回転されており、このように回転された状態で、下側砥石11の研削面12上に搬入され、定盤上面31上に搬出される。尚、ワーク保持穴42,42に保持されたワークWは、移載アーム40によって研削面12上に移載されたとき、ワーク回転駆動機構44によって回転され、定盤30上に搬出されたとき、その回転が停止されるようになっていても良い。
【0009】
尚、ワークWを定盤30と砥石11の研削面12との間で搬送する機構としては、図4及び図5に示した所謂ダブルアーム形式の前記移載アーム40に限られるものではなく、一端にのみワーク保持穴を備えた所謂シングルアーム形式のものでもよい。或いは、周縁部に複数の保持穴を所定間隔で環状に備えた円板状部材を用い、これを水平回転させて搬送する所謂ロータリキャリア方式による機構のものでも良い。
【0010】
そして、以上の構成を備えた研削盤1を用いてワークWの上下面を平面研削する従来の研削方法としては、まず、前記下側昇降機構14により前記下側主軸10を移動させ、前記砥石11の研削面12が定盤上面31よりも僅かに上方(通常5μm以上15μm以下)に位置するように位置決めするとともに、前記上側昇降機構24により前記上側主軸20を移動させ、前記砥石11の研削面12との間にワークWを搬入可能な間隔を有するように、砥石21の研削面22を位置決めする。
【0011】
尚、このとき、移載アーム40の一方は定盤30の上方にあり、そのワーク保持穴42にはワークWが保持され、他方は砥石11,21間に位置し、そのワーク保持穴42にはワークWが保持されていないものとする。
【0012】
ついで、前記アーム回転駆動機構43により移載アーム40を回転させて、そのワーク保持穴42に保持されたワークWを定盤上面31から砥石11の研削面12上に移載した後、上側昇降機構24により上側主軸20を下降させて、砥石21の研削面22をワークWの上面に当接させ、当該研削面12,22によってワークWの上下面を所定量研削する。尚、上述したように、前記ワークWは、ワーク回転駆動機構44によってその軸中心に回転されている。
【0013】
次に、このようにして研削加工を完了した後、上側主軸20を上昇させて砥石21をワークWから離反させ、しかる後、前記アーム回転駆動機構43により再度移載アーム40を回転させることにより、研削済みのワークWを前記研削面12から定盤上面31へと移載する。
【0014】
このとき、移載アーム40の、定盤30の上方に位置する他方のワーク保持穴42には、新たなワークWが供給されて保持されており、前記移載アーム40の回転により、この新たなワークWが前記研削面12上に移載される。
【0015】
斯くして、以後、上記と同様の動作を繰り返すことによって、連続的にワークWが研削加工される。
【0016】
ところで、このような一般的な研削盤1及びこれを用いた研削方法において、これを改良した両頭平面研削装置及びその研削方法として、従来、特開平10−543号公報に開示されたものが提案されている。
【0017】
この両頭平面研削装置は、上述した従来の研削盤1の構成に加えて、下側砥石の研削面上に載置されたワークの下面と定盤上面との間の上下方向の間隔を検知する非接触センサを備えており、複数のワークを連続加工することによって生じる下側砥石研削面の摩耗量を、前記非接触センサによって検出できるようになっている。
【0018】
そして、検出した摩耗量に相当する寸法だけ下側砥石を上昇させることで、下側砥石の研削面が常に定位置に位置するように、これを制御している。
【0019】
下側砥石の研削面が摩耗により下方に後退して、その上下方向の位置が定盤上面に近づくと、加工中にワーク下面と定盤上面とが接触して、当該ワーク下面が損傷することになるが、特開平10−543号公報に開示された研削装置及びその研削方法では、下側砥石の研削面を常に定位置に位置するように制御することで、このような問題が生じるのを防止しようとしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0020】
【特許文献1】特開平10−543号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0021】
ところが、上記従来の一般的な研削盤1においては、ワークWを移載する際の、前記下側砥石11の研削面12の位置(搬入位置)、並びにワークWを研削する際の前記研削面12の位置(研削位置)が同じ位置であり、しかも、これら搬入位置及び研削位置は、上述したように、定盤上面31よりも僅かに上方に設定されているため、以下に説明するような問題があった。
【0022】
即ち、前記下側砥石11の研削面12上にあるワークWに上側砥石21の研削面22を押し当てて当該ワークWを研削する際、当然のことながら、当該砥石11,21に研削負荷が作用し、また、下側砥石11には、研削負荷に加えてワークWの重量による荷重も作用するが、このような荷重は、図6(a)のように、上側主軸20及び下側主軸10に対して、その中心軸から外れた偏荷重となっており、砥石11,21に作用する負荷が軽負荷である場合にはあまり問題とならないものの、重負荷が作用する場合には、図6(b)に示すように、下側主軸10及び上側主軸20の各フランジが傾く或いは砥石11,21が撓むことで、ワークWの下面が定盤上面31に接触し、当該ワークWの下面及び定盤上面31が損傷するという問題を生じるのである。尚、図6(b)では、傾いた状態を分かり易くするために、実際よりも大きい傾斜角度で図示している。
【0023】
また、ワークW下面と定盤上面31とが接触することで、ワークWが定盤30に支えられた状態となるため、上側砥石21の研削量よりも下側砥石11の研削量の方が小さくなり、下側砥石11の目詰まりが発生する或いはワークWの上下面の研削代を適切に配分することが困難になるという問題も生じる。加えて、ワークWが傾いた状態で研削されることにもなるため、研削精度(特に平面度)の低下や砥石11,21の型崩れが発生するという問題も生じ、砥石11,21の型崩れが頻繁に発生することで、ドレッシング作業の必要回数が増加し、加工コストが増加するという問題も発生する。
【0024】
これらの問題は、前記搬入位置を上方に上げることで解消されるが、かかる搬入位置を上方に設定すると、下側砥石11の研削面12と定盤上面31との段差が大きくなりすぎ、下側砥石11の研削面12から定盤上面31へとワークWを移載する際に、下側砥石11のエッジ部分で研削後のワークW下面が傷つきやすくなるという問題や、この段差が障害となって、ワークWを研削面12上に移載することができないという根本的な問題を生じる。
【0025】
尚、前記搬入位置及び研削位置が同じ位置に設定され、これらの位置が定盤上面から僅か上方に設定されているという点については、特開平10−543号公報に開示された研削装置も同様であり、当該研削装置においても上記と同様の問題が生じていた。
【0026】
本発明は、以上の実情に鑑みなされたもので、研削時に、ワークと定盤とが接触することを確実に防止して研削精度や砥石寿命を向上させることができる平面研削方法の提供を、その目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0027】
上記課題を解決するための本発明は、
それぞれ平坦な研削面を有する一対の砥石を、その前記研削面同士が対向するように上下に配設するとともに、該一対の砥石をそれぞれその研削面と直交する軸を中心に回転させ、ついで、載置台上に配置した被研削物を水平方向にスライドさせて前記一対の砥石間に搬入し、ついで、前記一対の砥石研削面によって前記被研削物の上下面を研削加工するようにした平面研削方法であって、
前記下側砥石を、前記載置台上の被研削物をその研削面上にスライド搬入可能な位置に位置決めするとともに、前記上側砥石を、非接触で前記被研削物を搬入可能な間隔をもって前記下側砥石の上方に位置決めし、
ついで、前記載置台上の被研削物をスライド搬入せしめて前記下側砥石の研削面上に載置し、
この後、前記下側砥石を上昇させることにより、又は、前記下側砥石を上昇させるとともに前記上側砥石を下降させることにより、前記被研削物の上面を前記上側砥石の研削面に当接せしめて、前記被研削物の上下面を研削加工し、
ついで、前記下側砥石を下降させて、前記被研削物を前記載置台上にスライド搬出可能な位置に位置決めし、
この後、前記下側砥石上の被研削物を前記載置台上に搬出するようにしたことを特徴とする平面研削方法に係る。
【0028】
この平面研削方法によれば、まず、下側砥石を、上側砥石との間に被研削物が搬入可能な間隔を空け、且つ載置台上の被研削物をスライド搬入可能な位置、即ち、搬入位置に位置決めした後、前記載置台上の被研削物を下側砥石の研削面上に載置する。
【0029】
ついで、前記下側砥石を、前記搬入位置の上方に設定された研削位置まで上昇させ、下側砥石を研削位置に上昇させた状態で、当該下側砥石及び上側砥石によって前記被研削物の上下面を研削加工する。
【0030】
そして、研削加工完了後、下側砥石を、被研削物を載置台上にスライド搬出可能な位置、即ち、搬出位置に下降させ、下降後、被研削物を載置台上に搬出する。
【0031】
このように、本発明によれば、被研削物の研削位置を当該被研削物の搬入位置よりも上方に設定しているので、この研削位置を適正な位置に設定することで、例え、研削時に重負荷が作用したとしても、かかる重負荷に起因した砥石の撓みや弾性変形或いは主軸の傾きにより被研削物下面と定盤上面とが接触するのを確実に防止して研削精度や砥石寿命を向上させることができる。また、この接触によって生じるワークや定盤の損傷を未然に防止することもできる。
【0032】
一方、被研削物を搬入,搬出する際には、下側砥石を、載置台上との間で被研削物をスライド搬送可能な位置に位置決めするようにしており、従来と同様に、下側砥石と載置台上との間で、被研削物をスムーズに搬送することができる。
【0033】
尚、前記搬入位置と搬出位置は同じ位置でも、これらが異なる位置でも良く、各位置は、下側砥石の研削面が前記載置台上面よりも上方となるような位置でも良い。
【0034】
また、前記搬入位置における下側砥石の研削面が前記載置台上面よりも下方に位置し、前記搬出位置における同研削面が前記載置台上面よりも上方に位置するように設定してもよい。
【0035】
このようにすることで、搬入,搬出のいずれの場合にも、搬送方向において、突出した出っ張りが生じず、よりスムーズに被研削物を搬送することができる。
【0036】
また、前記研削位置における前記下側砥石の研削面は、前記載置台上面から20μm以上300μm以下(より好ましくは30μm以上120μm以下)となる位置であるのが好ましい。同研削面の位置を載置台上面より20μm以上上方に設定することで、研削時に被研削物下面と載置台上面とが接触するのを効果的に防止でき、一方、300μm以下にすることで、下側砥石の上昇時間が長くなるのを適正な範囲に抑えることができ、研削加工のサイクルタイムが長くなるのを許容範囲内に抑えることができる。
【発明の効果】
【0037】
以上説明したように、本発明に係る平面研削方法によれば、研削位置を被研削物の搬入位置よりも上方に設定したので、研削時に重負荷が作用したとしても、被研削物下面と載置台上面とが接触するのを確実に防止して研削精度の低下及び偏摩耗に伴う砥石コストの増加を防止することができる。また、上述したような、下側砥石の目詰まり、ワークの研削代の片寄り、ワークや載置台の損傷といった問題の発生も未然に防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】本発明に係る平面研削方法の手順を示す説明図である。尚、移載アームは一端のみ図示した。
【図2】本発明に係る平面研削方法の手順を示す説明図である。尚、移載アームは一端のみ図示した。
【図3】本発明に係る平面研削方法の手順を示す説明図である。尚、移載アームは一端のみ図示した。
【図4】従来の立形両頭平面研削盤の概略構成を示す正面図である。
【図5】従来の立形両頭平面研削盤における移載アームを示す平面図である。尚、移載アームは一端のみ図示した。
【図6】従来の立形両頭平面研削盤で砥石研削面の傾きが生じる過程を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0039】
以下、本発明の具体的な実施形態に係る平面研削方法について、図面を参照しつつ説明する。尚、本実施形態において用いる立形両頭平面研削盤については、図4に示した従来の研削盤1と同様のものである。したがって、その具体的な構成についての説明は、これを省略する。
【0040】
本実施形態に係る平面研削方法によれば、まず、下側昇降機構14により下側主軸10及び下側砥石11を移動させて、図1(a)に示すように、下側砥石11の研削面12が、定盤上面31よりも僅かに上方に位置するように位置決めするとともに、上側砥石21の研削面22が、前記下側砥石11の研削面12との間にワークWを搬入可能な間隔を有するように、前記上側昇降機構24により前記上側主軸20及び上側砥石21を移動させて位置決めする。以下、この下側砥石11及び上側砥石21の位置を「ワーク搬入位置」という。
【0041】
このように、本例では、ワーク搬入位置における前記研削面12の位置を、定盤上面31より僅か上方に設定して、研削面12と定盤上面31との間に段差を設けているが、これは、後にこの研削面12上にワークWが搬入,載置されたときに、当該ワークWの下面と定盤上面31とが接触するのを防止するためである。また、ワーク搬入位置は、後述するようにワーク搬出位置でもあり、ワークWを搬出する際に、砥石11のエッジ部分によって研削後のワークW下面が傷つきやすくなるのを防止するためである。
【0042】
一方、研削面12と定盤上面31との間に段差を設けると、この段差が、ワークWを研削面12上にスライド搬送する際の障害となるため、当該段差は極力小さい方が好ましい。
【0043】
以上を考慮すると、上記段差は、総じて5μm〜15μmの範囲内に設定するのが好ましい。例えば、ワークWの重量が重い場合には15μm程度、重量が軽い場合には5μm程度に前記段差を設定するようにしても良いし、ワークWの重量に関係なく、当該段差を設定するようにしても良い。
【0044】
尚、このようにして、下側砥石11及び上側砥石21がワーク搬入位置に位置決めされたとき、移載アーム40の一方端は定盤30の上方にあって、そのワーク保持穴42にはワークWが保持されており、他方端は砥石11,21間に位置して、そのワーク保持穴42にはワークWが保持されていないものとする。図1〜図3においては、移載アーム40の他方端側の図示を省略している。
【0045】
また、定盤30の上方に位置する前記ワーク保持穴42へのワークWの供給及び後述する取出しは、ローダーやロボット等の適宜自動装置を用いてこれを行うことができる。
【0046】
ついで、図1(b)に示すように、アーム回転駆動機構43によって回転軸41を回転させることで、移載アーム40を180°回転させ、前記一方端側のワーク保持穴42に保持された状態で定盤上面31に載置されたワークWを、ワーク回転駆動機構44によってその軸中心に回転させつつ、下側砥石11の研削面12と上側砥石21の研削面22との間に搬入して下側砥石11の研削面12上に載置する。尚、下側砥石11の研削面12と上側砥石21の研削面22との間に搬入した後、ワークWをワーク回転駆動機構44によってその軸中心に回転させるようにしても良い。
【0047】
ついで、図2(a)に示すように、下側昇降機構14によって下側主軸10及び下側砥石11を距離dだけ上昇させるとともに、上側昇降機構24によって上側主軸20及び上側砥石21をワークWに向けて距離d(切込み量)だけ下降させる。その際、下側主軸10及び下側砥石11の上昇速度は特に制限はないが、上側主軸20及び上側砥石21の下降速度は、研削加工速度とする。
【0048】
これにより、上側砥石21の研削面22がワークWの上面に当接し、下側砥石11の研削面12及び上側砥石21の研削面22によって、ワークWの上下面が研削される。
【0049】
尚、下側砥石11の上昇量dは、定盤上面31とワークWの下面(即ち、下側砥石11の研削面12)との間の距離が、研削負荷等に起因した下側及び上側主軸10,20や下側砥石11の変形によっても、ワークWの下面と定盤上面31とが接触しないような距離となるように適宜設定される量であり、定盤上面31と前記研削面12との間の距離が20μm以上300μm以下(より好ましくは30μm以上120μm以下)の範囲内となるような量(例えば、d=50μm)に設定するのが好ましい。20μm未満の場合には、研削負荷等に起因したワークW下面と定盤上面31との接触を有効に防止することができず、一方、300μmを越えると、下側砥石11の上昇時間が長くなり、研削加工のサイクルタイムが許容範囲を超えて長くなるからである。
【0050】
また、切込み量dは、ワークWの上下面に設定された研削代の合計に相当する量であり、この切込み量dについても適宜設定される。
【0051】
斯くして、研削完了後のワークWの厚みをtとすると、前記ワーク搬入位置における上側砥石21の研削面22の位置、即ち、下側砥石11の研削面12からの距離Lは下式によって算出され、上側砥石21の研削面22の位置は、下側砥石11の研削面12から距離Lだけ上方に設定される。
【0052】
L=d+d+t
【0053】
上記のようにして、ワークWの研削を完了すると、次に、図2(b)に示すように、下側昇降機構14及び上側昇降機構24によって、それぞれ下側主軸10及び上側主軸20を元の前記搬入位置に復帰させる。
【0054】
その後、図3に示すように、アーム回転駆動機構43により移載アーム40を180°回転させて、研削完了後のワークWを下側砥石11の研削面12上から定盤上面31へと搬出する。
【0055】
尚、移載アーム40の、定盤30の上方に位置する他方のワーク保持穴42には、上記と同様にして新たなワークWが供給されて保持されており、前記移載アーム40の回転により、この新たなワークWが前記研削面12上に移載される。
【0056】
そして、定盤30上に搬出されたワークWをワーク保持穴42から取出し、空になったワーク保持穴42に新たなワークWを供給する。
【0057】
斯くして、以後、上記と同様の動作を繰り返すことによって、連続的にワークWが研削加工される。
【0058】
以上のように、本発明の平面研削方法によれば、ワーク搬入位置よりも上方に設定した位置まで、下側砥石11の研削面12の位置を移動させてワークWに研削加工を施すため、例え、研削時に砥石11,21の研削面12,22に重負荷が作用したとしても、下側主軸10及び上側主軸20の各フランジの傾きによるワークW下面と定盤上面31との接触を確実に防止することができる。これにより、ワークW下面と定盤上面31との接触によって生じるワークWや定盤30の損傷を未然に防止できる。
【0059】
また、ワークWが定盤30に支えられ、下側及び上側砥石11,21の研削量に差が生じることに起因する、下側砥石11の目詰まりやワークWの研削代配分の困難化という問題の発生も防止できる。さらに、傾いた状態のワークWを研削することもなくなるため、高い研削精度(特に平面度)を維持することができる。加えて、砥石11,21の型崩れ(偏摩耗)の発生も抑えることができるため、ドレッシング作業の回数を減らすことができ、砥石を長持ちさせることができる。
【0060】
上述した点に加え、ワークWを搬入,搬出する際は、従来と同様に、下側砥石11の研削面12と定盤上面31との間の段差が、ワークWをスライド搬送できる段差としているため、ワークWをスムーズに移載することができる。
【0061】
以上、本発明の具体的な実施形態について説明したが、本発明が採り得る具体的な態様は、何らこれらに限定されるものではない。
【0062】
例えば、前記ワーク搬入位置における下側砥石11の位置を、下側砥石11の研削面12が、定盤上面31よりも僅かに下方に位置するように設定してもよい。
【0063】
この場合、ワークWを搬入する際に、下側砥石11の研削面12の位置が、定盤上面31よりも僅かに下方に位置するように(例えば、定盤上面31よりも0〜15μm下がった位置となるように)、下側昇降機構14により下側主軸10及び下側砥石11を移動させ、アーム回転駆動機構43により移載アーム40を回転させてワークWを研削面12に移載した後、下側砥石11の研削面12が定盤上面31よりも所定量上方に位置するように、下側主軸10及び下側砥石11を予め決めた上昇量dだけ上昇させるとともに、上側昇降機構24により上側主軸20及び上側砥石21を下降させて、ワークWの上下面を研削し、その後、下側砥石11の研削面12が定盤上面31よりも僅かに上方となるように、下側昇降機構14により下側主軸10及び下側砥石11を移動させるとともに、上側昇降機構24により上側主軸20及び上側砥石21を上昇させ、下側砥石11の研削面12から定盤上面31へとワークWを搬出する。
【0064】
このようにすれば、ワークWを定盤上面31から下側砥石11の研削面12へと搬送する際にも、搬送方向において突出した出っ張りが生じず、ワークWをよりスムーズに搬送することができる。
【0065】
また、ワークWを下側砥石11の研削面12に移載した後、上側主軸20を固定した状態で、下側主軸10及び下側砥石11を前記上昇量dだけ上昇させ、更に、前記切込み量dだけ上昇させて、ワークWの上下面を研削するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0066】
1 研削盤
10 下側主軸
11 下側砥石
12 研削面
13 下側駆動モータ
14 下側昇降機構
20 上側主軸
21 上側砥石
22 研削面
23 上側駆動モータ
24 上側昇降機構
30 定盤
31 定盤上面
40 移載アーム
41 回転軸
42 ワーク保持穴
43 アーム回転駆動機構
44 ワーク回転駆動機構
50 制御装置
W ワーク

【特許請求の範囲】
【請求項1】
それぞれ平坦な研削面を有する一対の砥石を、その前記研削面同士が対向するように上下に配設するとともに、該一対の砥石をそれぞれその研削面と直交する軸を中心に回転させ、ついで、載置台上に配置した被研削物を水平方向にスライドさせて前記一対の砥石間に搬入し、ついで、前記一対の砥石研削面によって前記被研削物の上下面を研削加工するようにした平面研削方法であって、
前記下側砥石を、前記載置台上の被研削物をその研削面上にスライド搬入可能な位置に位置決めするとともに、前記上側砥石を、非接触で前記被研削物を搬入可能な間隔をもって前記下側砥石の上方に位置決めし、
ついで、前記載置台上の被研削物をスライド搬入せしめて前記下側砥石の研削面上に載置し、
この後、前記下側砥石を上昇させることにより、又は、前記下側砥石を上昇させるとともに前記上側砥石を下降させることにより、前記被研削物の上面を前記上側砥石の研削面に当接せしめて、前記被研削物の上下面を研削加工し、
ついで、前記下側砥石を下降させて、前記被研削物を前記載置台上にスライド搬出可能な位置に位置決めし、
この後、前記下側砥石上の被研削物を前記載置台上に搬出するようにしたことを特徴とする平面研削方法。
【請求項2】
前記被研削物を搬入及び搬出する際の前記下側砥石の位置を、その研削面が前記載置台上面よりも上方に位置するように設定したことを特徴とする請求項1記載の平面研削方法。
【請求項3】
前記被研削物を搬入する際の前記下側砥石の位置を、その研削面が前記載置台上面よりも下方に位置し、前記被研削物を搬出する際の前記下側砥石の位置を、その研削面が前記載置台上面よりも上方に位置するように設定したことを特徴とする請求項1記載の平面研削方法。
【請求項4】
前記被研削物の上下面を研削加工する際に、前記下側砥石を、その研削面が前記載置台上面から20μm以上300μm以下に位置するように上昇させることを特徴とする請求項1乃至3記載のいずれかの平面研削方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−183626(P2012−183626A)
【公開日】平成24年9月27日(2012.9.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−49977(P2011−49977)
【出願日】平成23年3月8日(2011.3.8)
【出願人】(000167222)光洋機械工業株式会社 (85)
【Fターム(参考)】