説明

広視野の超解像顕微鏡を提供するためのシステム、方法及びコンピューターがアクセス可能な媒体

それらを用いて少なくとも一つの第一のパルス電磁放射を発生する装置、システム、方法及びコンピューターがアクセス可能な媒体の例示的な実施態様が提示される。このような放射は、少なくとも一つの分子の少なくとも一つの励起した状態を枯渇する。さらに、前記第一のパルス電磁放射に基づいて少なくとも一つの第二の電磁放射を発生することができる。例えば、第二の電磁放射は、複数のスポットを持つパターンを有することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の開示の例示的な実施態様は、サンプルに関連した情報を提供するためのシステム、方法及びコンピューターがアクセス可能な媒体に関し、特には、広視野の超解像顕微鏡を用いるための例示的なシステム、方法及びコンピューターがアクセス可能な媒体に関する。
【背景技術】
【0002】
(関連出願の表示)
本出願は、2009年1月26日出願の米国特許出願第61/147,346号の優先権を主張するものであり、その出願の全ての開示は引用することにより本明細書の一部である。
【0003】
最近、光学顕微鏡の改良がなされ、副回折限界蛍光イメージング(sub-diffraction limited fluorescence imaging)(又はナノ顕微鏡(nanoscopy)と呼ばれる)の可能性が提供されている(Hell S W, "Toward fluorescence nanoscopy", Nat Biotechnol. 2003, 21.1347-55参照)。これらの利点は、PALM/STORM(Betzig Eら, "Imaging intracellular fluorescent proteins at nanometer resolution", Science 2006, 313: 1642-5、及びRust M Jら, "Sub-diffraction-limit imaging by stochastic optical reconstruction microscopy (STORM)", Nat Methods, 2006, 3:793-5参照)及びSTED(Westphal V., "Video-rate far-field optical nanoscopy dissects synaptic vesicle movement", Science 2008, 320 246-9、及びWilhg K Iら, "STED microscopy reveals that synaptotagmm remains clustered after synaptic vesicle exocytosis", Nature 2006, 440 935-9参照)として参照することができる。
【0004】
PALM/STORMの考えは、回折限界より大きい分離を用いて僅かなフルオロフォアを繰り返し光活性化すること、及びガウシアン当てはめ手順を用いてそれらの位置を正確に決定することである。STEDの考えは、ドーナツ型ビームを用いてイメージングスポットの中心の周りの励起可能なフルオロフォアを枯渇することによって行われる。両技術は、これまでは電子顕微鏡によってのみ観察可能であった、30nmに届く分解能で細胞内の細部のイメージを提供してきた(Westphal V.ら, "Video-rate far-field optical nanoscopy dissects synaptic vesicle movement", Science 2008, 320:246-9、及びHuang B.ら, "Three-dimensional super-resolution imaging by stochastic optical reconstruction microscopy". Science 2008, 319:810-3)。
【0005】
上記の技術には限界がある。例えば、PALM/STORM手順は、めったにない事象の励起を要求し、そして現在のところ適当なシグナル対ノイズに達するまでに多くの時間を要するであろうし、このことは生物のイメージングを妨げる。STED手順は、より早くに行うことができる(Westphal V.ら, "Video-rate far-field optical nanoscopy dissects synaptic vesicle movement", Science 2008, 320:246-9参照)が、励起状態を配置するためにドーナツビームの完全性に依存するであろう。組織中での収差がドーナツビームの形を壊す可能性に従って、このような完全性の不足が、組織中への副回折限界イメージング深度を制限又は妨げるであろう。無傷の又は生きた組織の副回折限界イメージングを提供できる技術は、生物科学においてナノ顕微鏡の著しい可能性を提供できるであろう。例えば、ヒト医学における問題に利用したときには、動物及びヒトの研究における深部組織ナノ顕微鏡は、組織問題の分子機構のより良い理解を提供できる。
【0006】
従って、無傷の又は生きた組織の副回折限界イメージングを提供できる、例示的なシステム、方法及びコンピューターがアクセス可能な媒体は、上記の問題及び/又は欠点のいくつかを克服するために有用でありうる。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】Hell S W, "Toward fluorescence nanoscopy", Nat Biotechnol. 2003, 21.1347-55
【非特許文献2】Betzig Eら, "Imaging intracellular fluorescent proteins at nanometer resolution", Science 2006, 313: 1642-5
【非特許文献3】Rust M Jら, "Sub-diffraction-limit imaging by stochastic optical reconstruction microscopy (STORM)", Nat Methods, 2006, 3:793-5
【非特許文献4】Westphal V., "Video-rate far-field optical nanoscopy dissects synaptic vesicle movement", Science 2008, 320 246-9
【非特許文献5】Wilhg K Iら, "STED microscopy reveals that synaptotagmm remains clustered after synaptic vesicle exocytosis", Nature 2006, 440 935-9
【非特許文献6】Huang B.ら, "Three-dimensional super-resolution imaging by stochastic optical reconstruction microscopy". Science 2008, 319:810-3
【非特許文献7】Ventalon CとMertz J., "Quasi-confocal fluorescence sectioning with dynamic speckle illumination", Opt. Lett. 2005, 30:3350-2
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
よって、上記の問題及び/又は欠点の少なくともいくつかは、本発明の開示に従ったシステム、方法及びコンピューターがアクセス可能な媒体の例示的な実施態様で扱うことができる。
【課題を解決するための手段】
【0009】
従って、(例えば、少なくとも一つの第一の構成を用いて、)少なくとも一つの第一のパルス電磁放射を発生する装置、システム、方法及びコンピューターがアクセス可能な媒体の例示的な実施態様が提供されうる。このような放射は、少なくとも一つの分子の少なくとも一つの励起状態を枯渇(deplete)させる。更に、前記第一のパルス電磁放射に基づいて、(例えば、少なくとも一つの第二の構成を用いて、)少なくとも一つの第二の電磁放射を発生することができる。例えば、前記第二の電磁放射は、複数のスポットを有するパターンを持つことができる。
【0010】
例示的な実施態様に従って、前記パターンは、スペックルパターンでありうる、及び/又は変更可能である。第一の構成は、分子を励起できる少なくとも一つの第三のパルス電子放射を発生するように、及び時間内に第二のパルス電磁放射に先行(precede)するように構成できる。分子は、生物構造の中に提供されうる。第二及び第三の放射を、生物構造上又は中の実質的に同じ位置に送るように構成された少なくとも一つの第三の構成もまた提供されうる。更に、前記生物構造からの少なくとも一つの第四の電磁放射を受けるために構成された少なくとも一つの第四の構成が提供されうる。このような例示的な第四の電磁放射は、前記第二の電磁放射の波長とは異なった波長をもつことができる。
【0011】
本発明の開示の他の例示的な実施態様に従って、第四の構成は、第四の電磁放射に基づいて生物構造の少なくとも一つの部分のイメージを作成することができる。第四の構成は、検出器の配列又は少なくとも一つの電荷結合検出器を含むことができる。第四の構成は、第四の電磁放射に基づいて、複数の別個のパターンをもった、生物構造の複数の部分の複数の異なったイメージを作成することができ、そして複数のイメージから最終のイメージを形成することができる。
【0012】
本発明の開示の更なる例示的な実施態様に従って、第二の構成は、第二の電磁放射のパターンを変更するために、制御可能とできる。第二の電磁放射のパターンを変更するために第二の構成を制御する少なくとも一つの第五の構成が提供できる。第五の構成は、(i)空間光変調器、(ii)デジタル光プロセッサー、(iii)可動拡散構成、及び/又は(iv)デジタルミラー構成を含むことができる。
【0013】
本発明の開示の例示的な実施態様のこれらの及び他の目的、特徴及び利点は、添付の請求の範囲との関連で、本発明の開示の例示的な実施態様の以下の詳細な記載を読むことにより明らかとなろう。
【0014】
本発明の開示の更なる目的、特徴及び利点は、本発明の開示の実例である実施態様を示している添付の図面との関連で、以下の詳細な記載から明らかとなろう。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】図1は、本発明の開示に従ったスペックル超解像顕微鏡(Speckle Superresolution Microscopy:SSM)装置の例示的な実施態様の概略図である。
【図2】図2Aは、例えば、同一の電磁放射源構成(例えば、レーザー)を共有することによって2つの放射を同期する、本発明の開示に従った同期化システムの例示的な実施態様のブロック図である。図2Bは、例えば、電子制御を用いて、2つの放射を同期する、本発明の開示に従った同期化システムの他の例示的な実施態様のブロック図である。
【図3】図3Aは、伝送モードの、本発明の開示に従ったパターン発生システムの例示的な実施態様のブロック図である。図3Bは、反射モードの、図3Aのパターン発生システムの例示的な実施態様のブロック図である。
【図4】図4Aは、例示的なパターンでの利用可能なゼロ部(null)を説明した、本発明の開示に従ったシミュレーションスペックルパターンの例示的なイメージである。図4Bは、図4Aに示されたパターンの、ゼロ部での利用可能な励起フルオロフェアを示している、本発明の開示に従った例示的なシステムを用いて作成した均一な蛍光の生物構造の例示的なシミュレーションSSMイメージである。図4Cは、例示的なパターンでの利用可能なゼロ部を説明した、本発明の開示に従った他のシミュレーションスペックルパターンの例示的なイメージである。図4Dは、図4Cに示されたパターンの、ゼロ部での利用可能な励起フルオロフェアを示している、本発明の開示に従った例示的なシステムを用いて作成した均一な蛍光の生物構造の他の例示的な対応するシミュレーションSSMイメージである。
【図5】図5は、本発明に従った、広視野検出器上でサンプルをイメージ化するために拡大撮影システムを用いた検出システムの例示的な実施態様の概略図である。
【図6】図6は、本発明の開示に従った、SSM手順及び/又はシステムから得られたデータのための、イメージ構成方法の例示的な実施態様のフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
図面を通じて、同じ参照番号及び符号は、特に断りのない限り、実例である実施態様の同様の特徴、要素、構成要素及び部分を示すために用いられる。更に、本発明の主題の開示は、ここで、図面を参照して詳細に記載されるが、それは実例としての実施態様との関連でなされる。添付の請求の範囲で定められる本発明の主題の開示の範囲及び精神から離れることなしに、記載された例示的な実施態様に対して変更及び改変をすることができることが意図されている。
【0017】
スペックル超解像顕微鏡(SSM)とも呼ばれうる本発明の開示の例示的な実施態様に従って、励起状態を飽和させるためのレーザースペックルパターンが使用されうるが、一方、励起のために利用可能なスペックルパターンのゼロ部における小さな焦点位置はそのままである。スペックルを用いる一つの例示的な利点は、STEDと異なり、コヒーレントスペックルパターンが、組織内への高度の散乱深度が存在する場合でさえ、強いゼロ強度のゼロ部を保ち続けることが起こりうることである。加えて、これらの強いゼロ部のために、有効飽和係数が、ドーナッツビームのそれより、約2桁高くなり得る。
【0018】
PALM/STORMの考えとは異なり、本発明の開示に従った例示的な技術及びプロセスは、確率論的ではなさそうである。ゼロ部内の大部分のフルオロフォアが、励起に利用可能であると思われ、それは、より大きなシグナル対ノイズ比(SNR)という利点をもたらす。さらに、本発明の開示の例示的な実施態様に従って、ブリーチングステージ活性化サイクルが要求されないかもしれない。例えば、本発明の開示に従った例示的なSSM技術を用いて、ゼロ部は、スペックルパターンを変えることによって変化しうる。
【0019】
本発明の開示に従ったSSMシステムの例示的な実施態様の概略図を図1に示す。このような例示的なシステムは、例えば、2つの連続する波長又はパルス光源110、120、スペックル発生器122,ビーム結合要素/構成125、ビームス分割要素/構成135,2つのレンズ191,192、及び検出要素/構成150を含みうる。
【0020】
例えば、このような図1の例示的なシステムを用いて、光源110からの光100は、スペックルパターン発生器122によって調節されて、スペックルパターンをもつ光101を生じることができる。2つの放射101、102は、ビーム結合要素/構成125によって結合され、そして、結合した放射は、サンプル180上又は中の実質的に同じ部分を照射することができる。放射は、生物構造上又は中の少なくとも一つの分子を励起することができる。パルスモードでは、励起パルス放射トレイン102が、時間内に、スペックルパルス放射トレイン102より先行し、そのため、スペックル放射が、焦点面上の生物構造の励起された分子を枯渇させる。このような例示的なケースでは、パターン上のスペックル位置内の殆どのフルオロフェアは、放射101によって基底状態まで使い果たされうる。このような例示的なケースでは、パターン上のスペックル位置内のフルオロフォアの大部分は、放射101によって基底状態まで枯渇されうる。パターンによって提供される回折限界を越えた少なくとも一つのゼロ部内のフルオロフォアのみが、蛍光励起のために利用可能として残りうる。従って、生物構造上又は中のそれらの位置情報をもつ蛍光発光シグナル103が、レンズ191を通じて提供され、そして、例えば、超解像の精度で、それぞれ、記録のために用いられうる。
【0021】
蛍光発光シグナル103は、同じレンズ191を通じて逆方向に伝えられ、そして、ビーム分割要素/構成135によって検出チャネルへと向けられうる。レンズ192は、検出要素/構成150に対して、サンプル180のイメージを拡大できる。
【0022】
本発明の開示の例示的な実施態様に従って、励起した分子で飽和させるために、励起及びスペックル放射を同期させることができる。例えば、2つの異なる同期配置を得ることができる。図2Aは、任意の同期システムの例示的な実施態様のブロック図を示しており、そこでは、2つの放射201、203が、同一の電磁放射(例えば、初期レーザー)源構成210から由来している。レーザー源210からの放射は、ビームスプリッター要素/構成211によって2つの部分に分割されうる。一つの部分は、放射(例えば、光)201となり、それは、スペックル発生のための光となることができる。他の経路においては、電磁放射(例えば、光)202は、波長変換器212と通って伝達され、特定の励起波長を持つ放射203を発生する。
【0023】
図2Bは、本発明の開示に従った同期システムの他の例示的な実施態様を示している。例えば、電磁放射(例えば、光)源251は、スペックル発生のために放射261を発生することができ、そして他の電磁放射(例えば、光)源252は、励起放射262を発生するために用いることができる。2つの放射261、262は、電子同期化構成270によって同期されうる。
【0024】
可変のスペックルパターンを発生するために、例えば、2つの異なった例示的な構成を備えることができる。例えば、伝送モードの、本発明の開示に従ったパターン発生システムの例示的な実施態様のブロック図を表している図3Aに示されるように、入射光301は、可変スペックル発生器330を通って伝達され、次いで、スペックルパターン302が発生する。図3Bは、パターン発生システムの他の実施態様のブロック図を示しており、そこでは、可変スペックル発生器350は、反射モードで用いられ、入射光341に対してスペックルパターン342を発生するために用いることができる。スペックル発生器330、350の一つ又は両方が、拡散構成、空間光変調器、デジタル光プロセッサー、デジタルミラー構成、又はスペックルパターン又は他の任意のパターンを発生できる他のスペックル発生器であることができる。入射の照射角度を変えることにより、及び/又は、発生器330、350の一つ又は両方を回転することによってスペックルパターンを変えることにより、又は異なるパターンを生じる他の手段を用いることにより、複数の異なったパターンが作成されうる。このような例示的な方法によって、パターン上のゼロ部の位置が変更されうる。
【0025】
図4A〜4Dは、それぞれ、シミュレーションスペックルパターンに関連した2つの例示的なイメージ、及び2つの対応するシミュレーションSSMイメージの例を示しており、本発明の開示に従った技術の例示的な実施態様を説明している。例えば、完全に発展した例示的なスペックルパターンが図4Aに示されており、それは、コヒーレントレーザーを用いて散乱体を照射したときに見られる例示的な粒状特性を示している。例えば、スペックルパターンは、均一な蛍光性サンプルを照射することができ、それによって、殆どのサンプルは、図4Bに示されるように、基底状態の誘導枯渇へと導かれる。このような例示的なケースでは、ゼロ部(黒いスポット)によって表される場所内のフルオロフォアの大部分は、蛍光励起のために利用可能なまま残っていると思われる。これらの暗いスポットは、一般には、回折限界より小さい精度を持って互いに分離され、従って、それらの位置は、ある種の当てはめ手順を用いて、高精度で、個々に確認出来るであろう。
【0026】
例えば図4C及び4Dに示されるように、暗いスポットの位置は、入射の照射角度を変えること又は新たなスペックルパターンを作成することによって、新たなパターンを作るために変えることができる。例示的な手順は、パターンを変更し、そして実質的に異なった暗いスポットのセットの他のイメージを検出することによって繰り返すことができる。複数のイメージの検出及びこの複数のイメージの再結合は、構造物の合成イメージを提供できる。広視野イメージング及び光学切片は、例えば、Ventalon CとMertz J., "Quasi-confocal fluorescence sectioning with dynamic speckle illumination", Opt. Lett. 2005, 30:3350-2に記載の例示的な方法によって、時間とともに変化するスペックルパターンの変化又は境界或いは高空間振動数成分を測定することにより達成することができる。軸方向の超解像はまた、例えば、Huang B.ら., "Three-dimensional super- resolution imaging by stochastic optical reconstruction microscopy". Science 2008, 319:810- 3で議論されている、非点収差STORM手順を用いることにより容易となる。
【0027】
図5は、広視野検出器上でサンプルをイメージ化するために倍率系を用いた、本発明の開示に従った検出システムの例示的な実施態様の概略図を示している。生物構造550上又は中のスペックルの回折限界を超えた少なくとも一つのゼロ部からの例示的な蛍光発光は、例示的な検出システムのレンズ501、502によって拡大され、そして検出要素/構成555,例えば電荷結合検出基(CCD)又は配列された検出器によって検出されうる。倍率は、回折限界を超える解像度をもつように設計又は選択されうる。従って、検出要素/構成555は、例示的な回折限界より小さい、イメージの一部分に対応することができるピクセルサイズで生物構造のイメージを記録できる。
【0028】
図6は、本発明の開示に従った、データ収集から完全イメージ取得までのイメージ構成手順の例示的な実施態様のフロー図を示している。例えば、スペックルパターンを発生し(手順610)、そして、イメージがスペックルパターンに基づいて取得できる(手順620)。次いで、十分なイメージがあるか否かを決定できる(手順630)。もし、十分で無い場合は、その時は、手順を工程610に戻す。そうで無い場合は、イメージを再結合して構造物の合成イメージを作成する。この例示的な手順では、生物構造のイメージは、枯渇照射(depletion radiation)のスペックルパターンに基づいて取得できる。各スペックルパターンは、スペックルパターンのゼロ部位置に基づいてある数のイメージピクセルを生じることができる。異なったスペックルパターンは、その中で照射されたほんのわずかのピクセルでもって異なったイメージを生じうる。それ故、連続してスペックルパターンを変化させて複数のイメージを取得することにより、完全な構造物の合成イメージが、複数のスペックルパターンによって容易に得られる複数の異なったイメージを結合することにより取得できる。このことは、加算、加重和及び/又は類似の方法を含む算術結合を用いることにより成されうる。
【0029】
本発明の開示に従ったシステムの例示的な実施態様の実施を容易にし、及び/又は図6に示された例示的な方法を実行するための、例示的な手順は、ソフトウエアによって行うことができる。このようなソフトウエアは、コンピューターがアクセス可能な媒体(例えば、ハードドライブ、RAM、ROM、フレキシブルディスク、メモリースティック、SDカード、ミニSDカード、及び/又はそれらの組合せ)で提供できる。ソフトウエアは、プロセッシング構成(例えば、1又はそれ以上のコンピューター)によってアクセスされて用いられ、このようなコンピューターをプログラム及び/又は設定し、プロセッシング構成上で、ソフトウエアによって定義及び/又は構築された手順を実行し、例示的なシステム/構成/方法を制御して、上記したように結果を得る。
【0030】
広視野SSMのための、最大出力要求及び/又は選択は、STEDのそれよりも大きいと思われる。優位なSTED動作を達成するために、最大パルスエネルギー密度は、一般には、例えば、おおよそ、約10〜100MW/cm2でありうる。光が、高い(例えば、1.0より大きいNAの)レンズを用いて単一スポットに焦点を当てられた時に、十分な最大出力をもつコモンパルスレーザーが用いられうる。SSMシステム、方法及び/又は手順を用いて、拡張された視野を照射することができ、従って、少なくとも照射された視野直径の平方によって放射強度が減退するであろう。例示的なSSMシステム、方法及び手順は、一光子を処理することができるので、電源の要求/選択は、複数の光子処理を用いた場合より低いであろう。従って、慣用のレーザー源を有した例示的なSSMシステム及び/又は手順を用いて、好ましい結果を達成することが可能である。さらに、STED動作は、三重項緩和(TREX)(Donnert Gら、"Macromolecular-scale resolution in biological fluorescence microscopy", Proc Natl Acad Sci U S, 2006, 103:11440-5、参照)を用いることによって遥かに低い電源で達成できる。スペックル照射を用いて見いだされる改良された飽和率は、例えば、更なる出力要求を小さくすることにより、本発明の開示の例示的な実施態様を補助できる。にもかかわらず、もし例示的な広視野SSM手順が、適当なレーザー源の利用不可のために扱えない場合は、例示的なSSM手順及び/又は技術は、慣用のパルスレーザー及び複数の又はマルチモードの(即ち、象像)検出器を用いて点スキャンモードにて実施することができる。
【0031】
本発明の開示の例示的な実施態様に従って、例示的なSSMシステム、方法及び/又は手順は、スペックルパターン飽和によって構造物の超解像イメージを達成できる。例えば、本発明の開示の例示的な実施態様は、SSMを用いた散乱媒質を含む構造物での、広視野超解像顕微鏡法を提供するための、例示的なシステム、方法、コンピューターがアクセス可能な媒体及び手順を提供できる。
【0032】
上記は本発明の原理を単に説明しているに過ぎない。記載された実施態様に対しての、種々の変更及び置換は、本明細書に記載された教示より当業者にとって明らかである。確かに、本発明の開示の例示的な実施態様に従った構成、システム及び方法は、任意のOCTシステム、OFDIシステム、SD-OCTシステム又は他のイメージングシステムとともに用いることができ及び/又はそれらを実行することができ、そして、例えば、2004年9月8日出願の国際特許出願PCT/US2004/029148号(これは、国際公開第WO 2005/047813号として2005年5月26日に公開されている)、2005年11月2日出願の米国特許出願第11/266,779号明細書(これは、米国特許出願公開第2006/0093276号として、2006年5月4日に公開されている)、2004年7月9日出願の米国特許出願第10/501,276号明細書(これは、米国特許出願公開第2005/0018201号として、2005年1月27日に公開されている)、及び2002年5月9日公開の米国特許出願公開第2002/0122246号明細書に記載の構成、システム及び/又は方法とともに用いることができる。これらの公報の記載は全て、引用することにより本明細書の一部である。従って、本技術分野の当業者には、本明細書中に明白に示され又は記載されてはいないが、本発明の原理を具現化する多数のシステム、構成及び方法を考えることができ、それらは本発明の開示の範囲に含まれるということが理解される。加えて、本明細書において明示的に引用はされていない従来技術の知識も、ここにおいて、それらの全ての開示は本明細書に明示的に引用される。本明細書で参照された上記の全ての公報及び文献の開示の全ては、ここで引用することにより本明細書の一部である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも一つの分子の少なくとも一つの励起状態を枯渇させる、少なくとも一つの第一のパルス電磁放射を発生するように構成された少なくとも一つの第一の構成、及び
該少なくとも一つの第一のパルス電磁放射に基づいて少なくとも一つの第二の電磁放射を発生するように構成された少なくとも一つの第二の構成(ここで、該少なくとも一つの第二の電磁放射は複数のスポットを持つパターンを有している)、
を含む装置。
【請求項2】
前記パターンがスペックルパターンである請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記パターンが可変である請求項1に記載の装置。
【請求項4】
前記少なくとも一つの第一の構成が、更に、前記少なくとも一つの分子を励起し、かつ時間内に前記少なくとも一つの第二のパルス電磁放射より先行する、少なくとも一つの第三のパルス電磁放射を発生するように構成されている請求項1に記載の装置。
【請求項5】
前記少なくとも一つの分子が生物構造中に提供されている請求項1に記載の装置。
【請求項6】
更に、前記第二及び第三の放射を、生物構造上又は中の実質的に同じ位置に送るように構成されている少なくとも一つの第三の構成を含む請求項4に記載の装置。
【請求項7】
更に、前記生物構造からの少なくとも一つの第四の電磁放射を受け取るように構成されている少なくとも一つの第四の構成(ここで、該少なくとも一つの第四の電磁放射は、前記少なくとも一つの第二の電磁放射の波長とは異なる波長を有する)、
を含む請求項6に記載の装置。
【請求項8】
前記少なくとも一つの第四の構成が、前記少なくとも一つの第四の電磁放射に基づいて前記生物構造の少なくとも一つの部分のイメージを作成する、請求項7に記載の装置。
【請求項9】
前記少なくとも一つの第四の構成が、配列された検出器又は少なくとも一つの電荷結合検出器を含む請求項8に記載の装置。
【請求項10】
前記少なくとも一つの第四の構成が、前記少なくとも一つの第四の電磁放射に基づいて複数の区別できるパターンを有する前記生物構造の複数の部分の複数の異なったイメージを作成し、そして、該複数のイメージから最終イメージを形成する、請求項7に記載の装置。
【請求項11】
前記少なくとも一つの第二の構成が、前記少なくとも一つの第二の電磁放射のパターンを変更できるように制御可能である、請求項1に記載の装置。
【請求項12】
更に、前記少なくとも一つの第二の構成を制御して前記少なくとも一つの第二の電磁放射のパターンを変化させる、少なくとも一つの第五の構成を含む請求項1に記載の装置。
【請求項13】
前記少なくとも一つの第五の構成が、少なくとも一つの(i)空間光変調器、(ii)デジタル光プロセッサー、(iii)可動拡散構成、又は(iv)デジタルミラー構成を含む、請求項12に記載の装置。
【請求項14】
少なくとも一つの分子の少なくとも一つの励起状態を枯渇させる少なくとも一つの第一のパルス電磁放射を発生する工程、及び
該少なくとも一つの第一のパルス電磁放射に基づいて少なくとも一つの第二の電磁放射を発生する工程(ここで、該少なくとも一つの第二の電磁放射は、複数のスポットをもつパターンを有している)、
を含む方法。
【請求項15】
ソフトウエアをその中に有しているコンピューターがアクセス可能な媒体であって、
コンピューター構成が該ソフトウエアを読み出し及び実行したときに、該コンピューター構成が、
少なくとも一つの分子の少なくとも一つの励起状態を枯渇させる少なくとも一つの第一のパルス電磁放射の発生を引き起こす工程、及び
該少なくとも一つの第一のパルス電磁放射に基づいて少なくとも一つの第二の電磁放射の発生を引き起こす工程(ここで、該少なくとも一つの第二の電磁放射は、複数のスポットをもつパターンを有している)、
を含む手順を実行するように構成されている、
コンピューターがアクセス可能な媒体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公表番号】特表2012−515930(P2012−515930A)
【公表日】平成24年7月12日(2012.7.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−548198(P2011−548198)
【出願日】平成22年1月26日(2010.1.26)
【国際出願番号】PCT/US2010/022034
【国際公開番号】WO2010/085775
【国際公開日】平成22年7月29日(2010.7.29)
【出願人】(506286973)ザ ジェネラル ホスピタル コーポレーション (27)
【氏名又は名称原語表記】THE GENERAL HOSPITALCORPORATION
【住所又は居所原語表記】55 Fruit Street, Boston, MA02114 (US).
【Fターム(参考)】