説明

広角光学系および撮像装置

【課題】
本発明は、良好な結像性能を有し、且つ小型化を実現した広角の光学系を提供する。
【解決手段】
物体側から順に物体側に凸の負メニスカスの第1レンズ110と、光軸に対して略直交する平面における水平方向の曲率と垂直方向の曲率からなるアナモルフィック面を物体側に有する負メニスカスの第2レンズ120と、物体側に凸の正の第3レンズ130と、開口絞り140と、像側に凸の正の第4レンズ150と、からなり、レンズ全系の前記水平方向の焦点距離をFh、レンズ全系の垂直方向の焦点距離をFvとしたときに、1.10 < Fv/Fh < 1.30 の条件を満足し、且つ、前記第2レンズの物体側面とは別の第2のアナモルフィック面を、前記第2レンズの物体側面のパワーと正負の符号が異なる面に備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、広角撮像光学系とそれを用いた撮像装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
監視用カメラや車載用カメラなどに用いられる撮像光学系には、広い画角を確保しながら画面全域で結像性能が良いことが要求される。特に画角180度を超えるような超広角光学系となると歪曲収差が大きくなる傾向にあるので、低歪曲の設計を要求される。これらの要望に対応し得る可能性がある単焦点の広角光学系として、下記の特許文献1がある。
【0003】
特許文献1には、水平方向には超広画角で、垂直方向には画角を抑制すると共に比較的像歪みが少ない超広角撮像光学系であるアナモルフィック光学系が提案されている。
しかしながら、監視用カメラや車載用カメラにおいては、搭載スペースが限られることが多いことなどから小型であることが要求されるが、特許文献1に係るアナモルフィック光学系は10枚のレンズからなり、小型の撮像装置を実現する事は困難であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−163549号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、良好な結像性能を有し、且つ小型化を実現した広角の光学系を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため本発明の撮像光学系は、物体側から順に物体側に凸の負メニスカスの第1レンズと、光軸に対して直交する平面における水平方向と垂直方向とで異なる曲率からなるアナモルフィック面を物体側に有する負メニスカスの第2レンズと、物体側に凸の正の第3レンズと、開口絞りと、像側に凸の正の第4レンズと、からなり、レンズ全系の前記水平方向の焦点距離をFh、レンズ全系の前記垂直方向の焦点距離をFvとしたときに、以下の条件式(1)を満足し、
1.10 < Fv/Fh < 1.30 ・・・(1)
且つ、前記第2レンズの物体側面とは別の第2のアナモルフィック面を、前記第2レンズの物体側面のパワーと正負の符号が異なる面に備える事を特徴とする。
【0007】
好ましくは、以下の条件式(2)を満足することを特徴とする。
【0008】
0.4 < r1v/r1h < 0.8 ・・・(2)
ただし、r1hは前記水平方向の曲率の半径、r1vは前記垂直方向の曲率の半径。
【0009】
好ましくは、前記第2レンズおよび第4レンズは樹脂材料からなる事を特徴とする。
【0010】
好ましくは、前記第2のアナモルフィック面を前記第4レンズに形成したことを特徴とする。
【0011】
上記目的を達成するため本発明の撮像装置は、上述のいずれかの撮像光学系と、その撮像光学系により形成される光学像を電気信号に変換する撮像素子とを備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、小型、軽量でありながら良好な結像性能を有する広角光学系および撮像装置を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明である広角光学系のレンズ断面である。
【図2】実施形態1の広角光学系の水平方向における断面図である。
【図3】実施形態1の広角光学系の垂直方向における断面図である。
【図4】実施形態2の広角光学系の水平方向における断面図である。
【図5】実施形態2の広角光学系の垂直方向における断面図である。
【図6】実施形態3の広角光学系の水平方向における断面図である。
【図7】実施形態3の広角光学系の垂直方向における断面図である。
【図8】実施形態4の広角光学系の水平方向における断面図である。
【図9】実施形態4の広角光学系の垂直方向における断面図である。
【図10】実施形態5の広角光学系の水平方向における断面図である。
【図11】実施形態5の広角光学系の垂直方向における断面図である。
【図12】本発明の実施形態の撮像装置の基本構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を用いて、本発明の広角光学系及びそれを用いた撮像装置の実施形態について説明する。実施形態1から5の広角光学系を総称して本実施形態の広角光学系という。
【0015】
図1は本発明である広角光学系の断面である。物体側から順に、第1レンズ110、第2レンズ120、第3レンズ130、開口絞り140、第4レンズ150が配置される4枚構成の単焦点の広角光学系100である。更には、160は水晶ローパスフィルターや赤外線除去フィルターおよび撮像素子を保護する保護ガラス等に対応する設計上設けられたガラスブロック、CCD(Charge Coupled Device)やCMOS(Complementary Mental-Oxide Semiconductor Device)等の撮像素子の受光面が配置される結像面170を有する。入射した光は物体側より、第1レンズ110の物体側R1面1、像面側R2面2、第2レンズ120の物体側R3面3、像面側R4面4、第3レンズ130の物体側R5面5、像面側R6面6、開口絞り部140の面7、第4レンズ150の物体側R7面8、像面側R8面9、ガラスブロック160を順次通過し撮像素子の設けられた結像面170へと集光される。また、レンズの厚さとなるR1面1とR2面2間の距離をD1、第1レンズのR2面2と第2レンズのR3面3までの距離をD2、第2レンズの厚さとなるR3面3とR4面4間の距離をD3、第2レンズのR4面4と第3レンズのR5面5間の距離をD4、第3レンズの厚さとなるR5面5とR6面6間の距離をD5、第3レンズのR6面6と絞り部の面7までの距離をD6、絞り部の面7と第4レンズのR7面8間の距離をD7、第4レンズの厚さとなるR7面8とR8面9間の距離をD8、第4レンズのR9面10と、結像面までの距離をバックフォーカスBFとする。
【0016】
図2は実施形態1の広角光学系の水平方向における断面図である。
【0017】
図3は実施形態1の広角光学系の垂直方向における断面図である。
実施形態1は全系の水平方向焦点距離0.719mm、実施形態1は全系の垂直方向焦点距離0.814mm、Fナンバー2.4、レンズ全長11.8mm、バックフォーカス1.77mmの広角光学系である。
【0018】
図4は実施形態2の広角光学系の水平方向における断面図である。
【0019】
図5は実施形態2の広角光学系の垂直方向における断面図である。
実施形態2は全系の水平方向焦点距離0.683mm、実施形態2は全系の垂直方向焦点距離0.776mm、Fナンバー2.37、レンズ全長11.4mm、バックフォーカス1.77mmの広角光学系である。
【0020】
図6は実施形態3の広角光学系の水平方向における断面図である。
【0021】
図7は実施形態3の広角光学系の垂直方向における断面図である。
実施形態3は全系の水平方向焦点距離0.676mm、実施形態3は全系の垂直方向焦点距離0.748mm、Fナンバー2.43、レンズ全長11.1mm、バックフォーカス1.77mmの広角光学系である。
【0022】
図8は実施形態4の広角光学系の水平方向における断面図である。
【0023】
図9は実施形態4の広角光学系の垂直方向における断面図である。
実施形態4は全系の水平方向焦点距離0.652mm、実施形態4は全系の垂直方向焦点距離0.789mm、Fナンバー2.3、レンズ全長11.2mm、バックフォーカス1.77mmの広角光学系である。
【0024】
図10は実施形態5の広角光学系の水平方向における断面図である。
【0025】
図11は実施形態5の広角光学系の垂直方向における断面図である。
実施形態5は全系の水平方向焦点距離0.667mm、実施形態4は全系の垂直方向焦点距離0.83mm、Fナンバー2.24、レンズ全長11.2mm、バックフォーカス1.77mmの広角光学系である。
各実施形態の断面図において、左方は物体側(被写体側)で、右方が像側(結像面側)である。100A〜100Eは広角光学系であり、4枚のレンズは物体側から順に、負の屈折力を有する第1レンズ110、負の屈折力を有する第2レンズ120、正の屈折力を有する第3レンズ130、開口絞り140、正の屈折力を有する第4レンズ150からなっている。
【0026】
以下、本実施形態の広角光学系の構成とその作用について説明する。
【0027】
広角光学系では、広い画角を得るために焦点距離を短くする必要があるが、機構的な制約からバックフォーカスは焦点距離に比べて長くしなくてはならない。そこで、前方に負の屈折力を有するレンズ郡を配置し、入射した光を一度発散した後、後方の正の屈折力を有するレンズ群で集光することにより、レンズ系の主点をレンズ後方に飛出させ焦点距離に比べて長いバックフォーカスを確保することが可能となる。
本実施形態の広角光学系100A〜100Eでは、負の屈折力を有する第1レンズと第2レンズで光を発散させ、全体として正の屈折力を有する開口絞りをはさんだ第3レンズと第4レンズで集光する。物体側に2枚の負レンズを配置することで、主点を後方に置くための十分な負の屈折力を得ながら、諸収差を良好に補正することができる。負のレンズ群を2枚としたのは、単レンズでは像面湾曲収差や非点収差の発生を抑えるために製造上困難な形状になってしまうため分割している。特に、第2レンズを非球面化することによって第1レンズで補正しきれない上記収差の補正を行う。像側の正レンズ群のうち、開口絞りの前に第3レンズ、後に第4レンズを配置することにより、倍率の色収差を補正することが可能となる。強い屈折力をもつ第4レンズを開口絞り後に配置することにより、結像面170への入射角度を小さくし、かつ歪曲、非点の両収差を良好に補正することが可能となる。
【0028】
本実施形態の広角光学系は、第1レンズ110は物体側に凸面を向けたメニスカスレンズであり、第2レンズ120は像側に凹面を向け、第3レンズ130は物体側に凸面を向け、第4レンズ150は像側に凸面を向けている。第1レンズが物体側に凸面を向けたメニスカス形状を有することで、第1レンズの面1に対する軸外光線の入射角度を小さく保つことが可能となり、収差の発生を抑えることが出来る。また、第2レンズが像側に凹面を向けた形状、第3レンズが物体側に凸面を向けた形状を有することで、諸収差を良好に補正することが出来る。そして、前記第4レンズは像側に凸面を向け、像側に非球面を有することで、像面への入射角度を小さくすることが出来る。第2レンズ120と第4レンズ150が樹脂材料で形成されることにより、軽量化や低コスト化が実現でき、第3レンズ130を硝子材料で形成することにより幅広い分散値の材料を選択でき、結果として倍率の色収差を良好に補正することが可能となる。
【0029】
超広角光学系において、画角を確保しながら収差補正を十分に行うには、レンズ4枚構成が妥当となる。光学性能を優先すると、4枚ともガラス材料で構成するのが望ましいが、コストを考えると樹脂材料を多用する方にメリットがある。実用的には、車載カメラや監視カメラに利用される場合、使用環境が屋外になることが多く厳しい耐環境性能を要求されるため、物体側からみて第1レンズはガラスである事が好ましい。風雨にさらされる事はもちろん紫外線にも留意しなければならないことから、第1レンズは樹脂にすることは困難となる。残りの第2、第3、第4のレンズを全て樹脂にすると、樹脂レンズのパワーの合算が強い正となる。樹脂レンズは、温度によって屈折率の変動がガラスに比べて10倍程度大きい。その為、第2、第3、第4のレンズを樹脂にすると温度変動によって屈折率が変わりレンズのバックフォーカスがシフトする。本願のようにパワーバランスが正・正・負・負の4枚構成の超広角光学系において3枚を樹脂にするとパワーバランスが悪くなってしまう。そこで第3もしくは第4のレンズをガラスとする事で温度変動を緩和する方向に相殺ことが可能となる。第3のレンズは、倍率に色収差を補正するレンズで高屈折高分散であることが好ましい。よって第1、第3のレンズをガラス、第2、第4のレンズを樹脂とする事が好ましい。
【0030】
第2レンズと第4レンズの各レンズはそれぞれ少なくとも1面の非球面形状が形成される。非球面形状を持つことにより、収差補正が容易となり、小型でありながら良好な解像性能を得ることが可能となる。非球面形状を有するレンズの形成には樹脂材料が適しているが、樹脂材料は一般的に温度変化による面形状変化や屈折率がガラスと比べて大きく、環境温度が変化した場合における性能変化が大きくなる。そこで負の第2レンズと正の第4レンズを樹脂化することでバランスをとり、環境変化によるピントシフトを相殺して緩和している。
【0031】
アナモルフィック面についても同様である。アナモルフィック面は、結像面における水平方向と垂直方向の焦点距離を変える事ができる。よって、アナモルフィック面は回転非対称であるため、製造難易度が高く、コストが従来のレンズに比べて高くなる。そのため低コストでアナモルフィック光学系を実現するには、アナモルフィック面を成型の自由度が高い樹脂レンズにアナモルフィック面を設けるほうが適している。
【0032】
アナモルフィック面を1面のみに形成し機能を満足することは可能だが、複数面に分散するほうが、製造難易度を低く抑えられるためより好ましい。アナモルフィック面の水平方向と垂直方向の焦点距離の違いが大きいほど、アナモルフィック光学系の効果は期待できるが、回転非対称の度合いも大きくなるため、製造難易度は増すことになる。そこで、アナモルフィック面を複数に分散するほうが、各アナモルフィック面の水平方向と垂直方向の焦点距離の違いも小さく抑えることができ、回転対象に近い形状となるため、製造難易度を抑えることができる。
【0033】
またその場合、第2レンズの物体面の曲率とは符号が異なる面に第2のアナモルフィック面を付加することで、温度環境が変動しても水平画角と垂直画角の比率を一定に保つ事ができる。つまり、パワーが正の面と負の面にそれぞれ1面ずつ設ける事により、温度変化による水平方向の焦点距離と垂直方向の焦点距離の変動を相殺する事が可能となる。このためにも、第2と第4のレンズに樹脂材料を用いて、それぞれ第1と第2のアナモルフィック面を形成することが望ましい。
【0034】
以上のように、本実施形態の広角光学系では、各レンズにそれぞれ適切な屈折力配置と非球面およびアナモルフィック面を配置することにより、良好な光学性能を保ちつつ、全系のコンパクト化を実現している。さらに、良好な光学性能を得て、レンズ全系の小型化を図るための条件を以下に説明する。
以下は、歪曲収差を緩和するために好ましい、結像平面における水平方向と垂直方向の焦点距離の比を示すものである。ただし、Fhはレンズ全系の水平方向のd線における焦点距離、Fvはレンズ全系の垂直方向のd線における焦点距離とする。
【0035】
1.10 < Fv/Fh < 1.30 ・・・(1)
例えば、結像面の水平方向は超広角となる180度以上の画角であっても、垂直方向は水平方向と比べて画角を狭くする事で、人が見たときの歪曲収差を緩和している。上記関係式(1)の値が1.1以下になると回転対称レンズとほぼ等しくなるため、アナモルフィック光学系にする効果が低い。歪曲収差もわずかにしか補正されない。つまり射影特性が変わらない為、見た目にも変化に乏しい。回転非対称のレンズを成型するのは、困難でコストも要するため、上記関係式(1)の値が1.1以下になるような場合には、アナモルフィック光学系を用いないほうが好ましい。逆に上記の値が1.3以上になると歪曲補正の点からは有利だが、アナモルフィック面に負荷が大きくなり環境変化に耐える事も困難となる。換言すれば、第2レンズのYZ断面とXZ断面で面の形状が大きく異なる。ここでZは光軸方向の軸、X・Yは前記Z軸に垂直で互いに直交する軸である。
【0036】
アナモルフィック光学系によって得られる画像には一般的に、レンズフレアの水平方向への歪み、絞り開放時のボケの楕円形化、フォーカスによるボケ形状の変化、レンズディストーションの水平垂直比の不均一、といったような影響が発生する。
【0037】
以下は、上記の影響を抑えつつ良好な画質の画像を得るために好ましい、結像平面における水平方向と垂直方向の曲率半径の比を示すものである。ただし、r1hは第2レンズの物体側における水平方向の曲率半径、r1vは第2レンズの物体側における垂直方向の曲率半径とする。
【0038】
0.4 < r1v/r1h < 0.8 ・・・(2)
第2レンズの物体側面は、収差が小さい状態を維持しながらアナモルフィック面によって水平方向と垂直方向の焦点距離を変える事が可能である。上記関係式(2)の値が1に近いほど、レンズは光軸について回転対象に近い形状となり、水平と垂直の焦点距離も違いがなくなり、前述の影響も小さくなくなる。上記関係式(2)の値が小さくなると、水平と垂直の焦点距離を大きく変えることができる反面、0に近くなるほど前述の影響を大きく受けることになる。また、レンズが回転非対称な形状になるほど、成型の樹脂充填時に均一性が保ちにくくなってレンズ内の偏肉が発生して、レンズ内複屈折を発生させ、内部の屈折率が不均一となるので光学性能を劣化させる事となる。
【0039】
上記関係式(2)の上限値を超えると、アナモルフィック光学系としての効果が小さく、レンズで水平垂直の焦点距離を変えなくても画像処理で十分実現可能なレベルとなり、逆に下限値を超えると、アナモルフィック面への負荷が大きくなってレンズの公差が厳しくなり、製造難易度を上げることとなる。
【0040】
以下に、実施形態1から5それぞれの具体的な数値データを示す。各数値実施例において、図1に示すように物体側から順に面番号iを付与し、Riは第i面の近軸曲率半径、Diは第i面と第i+1面との間隔、ni、νiはそれぞれd線に対する屈折率、アッベ数を示す。
【0041】
また、各数値実施例の中で記載されるレンズの非球面形状は、物体側から像側へ向かう方向を正として、光軸からの高さHの位置での光軸方向の変位を、面頂点を基準にしてXとするとき
【0042】
【数1】

【0043】
で表される。但し、rは近軸曲率半径、A、B、C、Dは非球面係数、Kは円錐定数である。
【0044】
さらに、各数値実施例の中で記載されるレンズのアナモルフィック面形状は、物体側から像側へ向かう方向を正として、光軸からの高さHの位置での光軸方向の変位を、面頂点を基準にしてXとするとき
【0045】
【数2】

【0046】
で表される。但し、面頂点を基準にして光軸方向の変異をXとする。X軸方向の変異をx、Y軸方向の変異をy、X軸方向の近軸曲率をCUX、Y軸方向の近軸曲率をCUYとする。各係数は以下のとおりとする。
回転対称の4次係数:AR
回転対称の6次係数:BR
回転対称の8次係数:CR
回転対称の10次係数:DR
回転非対称の4次係数:AP
回転非対称の6次係数:BP
回転非対称の8次係数:CP
回転非対称の10次係数:DP
【実施例1】
【0047】
図2、図3は、実施例1において水平方向と垂直方向の断面図を示している。
図2に示すように、第1レンズは物体側に凸面を向けたメニスカス形状、第2レンズは像面に凹となるメニスカス形状、第3レンズは物体側に凸面を向けたメニスカス形状、開口絞り、第4レンズは両凸形状を有する。第2レンズと第4レンズはそれぞれ樹脂となり片面にアナモルフィック面、片面に非球面を有する。
<数値実施例1>
表1から表5は実施例1の各数値を示す。
【0048】
表1は、実施例1における全系の水平方向の焦点距離fh(mm)、垂直方向焦点距離fv(mm)、Fナンバー、水平画角Θ1(°)、垂直画角Θ2(°)、レンズ全長(mm)、バックフォーカスBF(mm)の数値を示している。
【0049】
【表1】

【0050】
表2は、実施例1における広角光学系の各面番号iに対応した各レンズ、絞り140の近軸曲率半径R(mm)、間隔D(mm)、d線に対する屈折率n、d線に対するアッベ数νを示している。
【0051】
【表2】

【0052】
表3は、実施例1における非球面を含む第2レンズ120および第4レンズ150の所定面の非球面係数を示す。
【0053】
【表3】

【0054】
表4は、実施例1におけるアナモルフィック面を含む第2レンズ120および第4レンズ150の所定面のアナモルフィック係数を示す。
【0055】
【表4】

【0056】
表5は条件式の各数値を示している。実施例1は各条件式の値を満たしており、光学系の小型化、薄型化を図りつつ、諸収差が良好に補正された広角光学系が得られる。
【0057】
【表5】

【0058】
実施例1によれば、第2レンズの水平方向の曲率半径と垂直方向の曲率半径を(2)式の上限値に近づけるようにアナモルフィック係数を持たせたレンズとなっている。従って、水平方向と垂直方向の曲率半径は大きく異ならず、水平方向と垂直方向の焦点距離も大きく異ならない為、アナモルフィック光学系としての効果は小さいが、回転対称のレンズに近いためにレンズの製造難易度は低く、安価で設計どおりの性能を得ることができる。
【実施例2】
【0059】
図4、図5は、実施例2において水平方向と垂直方向の断面図を示している。
図4に示すように、第1レンズは物体側に凸面を向けたメニスカス形状、第2レンズは像面に凹となるメニスカス形状、第3レンズは物体側に凸面を向けたメニスカス形状、開口絞り、第4レンズは両凸形状を有する。第2レンズと第4レンズはそれぞれ樹脂となり両面にアナモルフィック面、片面に非球面を有する。
<数値実施例2>
表6から表10は実施例2の各数値を示す。
【0060】
表6は、実施例2における全系の水平方向焦点距離fh(mm)、垂直方向焦点距離fv(mm)、Fナンバー、水平画角Θ1(°)、垂直画角Θ2(°)、レンズ全長(mm)、バックフォーカスBF(mm)の数値を示している。
【0061】
【表6】

【0062】
表7は、実施例2における広角光学系の各面番号iに対応した各レンズ、絞り140の近軸曲率半径R(mm)、間隔D(mm)、d線に対する屈折率n、d線に対するアッベ数νを示している。
【0063】
【表7】

【0064】
表8は、実施例2における非球面を含む第2レンズ120および第4レンズ150の所定面の非球面係数を示す。
【0065】
【表8】

【0066】
表9は、実施例2におけるアナモルフィック面を含む第2レンズ120および第4レンズ150の所定面のアナモルフィック係数を示す。
【0067】
【表9】

【0068】
表10は条件式の各数値を示している。実施例2は各条件式の値を満たしており、光学系の小型化、薄型化を図りつつ、諸収差が良好に補正された広角光学系が得られる。
【0069】
【表10】

【0070】
実施例2によれば、実施例1に対して水平方向と垂直方向の曲率半径を(2)式の値を小さくなるようにすることでアナモルフィック光学系としての効果を高めた例となっている。従って、レンズの製造難易度は高いものの、アナモルフィック光学系としての効果が大きく期待でき、十分に水平方向と垂直方向の焦点距離の比を変えることが可能となる。
【実施例3】
【0071】
図6、図7は、実施例3において水平方向と垂直方向の断面図を示している。
図6に示すように、第1レンズは物体側に凸面を向けたメニスカス形状、第2レンズは像面に凹となるメニスカス形状、第3レンズは物体側に凸面を向けたメニスカス形状、開口絞り、第4レンズは両凸形状を有する。第2レンズと第4レンズはそれぞれ樹脂となり両面にアナモルフィック面、両面に非球面を有する。
<数値実施例3>
表11から表15は実施例3の各数値を示す。
【0072】
表11は、実施例3における全系の水平方向焦点距離fh(mm)、垂直方向焦点距離fv(mm)、Fナンバー、水平画角Θ1(°)、垂直画角Θ2(°)、レンズ全長(mm)、バックフォーカスBF(mm)の数値を示している。
【0073】
【表11】

【0074】
表12は、実施例3における広角光学系の各面番号iに対応した各レンズ、絞り140の近軸曲率半径R(mm)、間隔D(mm)、d線に対する屈折率n、d線に対するアッベ数νを示している。
【0075】
【表12】

【0076】
表13は、実施例3における非球面を含む第2レンズ120および第4レンズ150の所定面の非球面係数を示す。
【0077】
【表13】

【0078】
表14は、実施例3におけるアナモルフィック面を含む第2レンズ120および第4レンズ150の所定面のアナモルフィック係数を示す。
【0079】
【表14】

【0080】
表15は条件式の各数値を示している。実施例3は各条件式の値を満たしており、光学系の小型化、薄型化を図りつつ、諸収差が良好に補正された広角光学系が得られる。
【0081】
【表15】

【0082】
実施例3によれば、アナモルフィック面が形成されるのは第2レンズのみとなっている。実施例1に比べて(2)式の値は小さく、アナモルフィック面としての効果は大きくなっているが、単体のレンズのみでアナモルフィック面を形成するには設計・製造上の制約も多い為、光学系全体としては水平方向と垂直方向の焦点距離比は実施例1に対して小さくなっている。アナモルフィック面を第2レンズのみに集約した為、第2レンズについては負荷が増して製造難易度は高くなるが、水平垂直方向の調整を行なう必要のあるレンズが一枚で済むため、組み込みの難易度は低く抑えることができる。
【実施例4】
【0083】
図8、図9は、実施例4において水平方向と垂直方向の断面図を示している。
図8に示すように、第1レンズは物体側に凸面を向けたメニスカス形状、第2レンズは像面に凹となるメニスカス形状、第3レンズは物体側に凸面を向けたメニスカス形状、開口絞り、第4レンズは両凸形状を有する。第2レンズと第4レンズはそれぞれ樹脂となり各両面にアナモルフィック面を有する。
<数値実施例4>
表16から表20は実施例4の各数値を示す。
【0084】
表16は、実施例4における全系の水平方向焦点距離fh(mm)、垂直方向焦点距離fv(mm)、Fナンバー、水平画角Θ1(°)、垂直画角Θ2(°)、レンズ全長(mm)、バックフォーカスBF(mm)の数値を示している。
【0085】
【表16】

【0086】
表17は、実施例4における広角光学系の各面番号iに対応した各レンズ、絞り140の近軸曲率半径R(mm)、間隔D(mm)、d線に対する屈折率n、d線に対するアッベ数νを示している。
【0087】
【表17】

【0088】
表18は、実施例4における非球面を含む第2レンズ120および第4レンズ150の所定面の非球面係数を示す。但し、実施例4においては第2レンズ120および第4レンズ150の各両面にアナモルフィック面が形成されており、数1で表される非球面の形成はない。
【0089】
【表18】

【0090】
表19は、実施例4におけるアナモルフィック面を含む第2レンズ120および第4レンズ150の所定面のアナモルフィック係数を示す。
【0091】
【表19】

【0092】
表20は条件式の各数値を示している。実施例4は各条件式の値を満たしており、光学系の小型化、薄型化を図りつつ、諸収差が良好に補正された広角光学系が得られる。
【0093】
【表20】

【0094】
実施例4によれば、実施例1に対して、アナモルフィック面を増やした実施例となっている。具体的には、2枚の樹脂レンズの全面にアナモルフィック面を形成した例となっている。樹脂レンズである第2レンズと第4レンズにアナモルフィック光学系としての効果を分散している為、個々のレンズ製造難易度を低くできる。
【実施例5】
【0095】
図10、図11は、実施例5において水平方向と垂直方向の断面図を示している。
図10に示すように、第1レンズは物体側に凸面を向けたメニスカス形状、第2レンズは像面に凹となるメニスカス形状、第3レンズは物体側に凸面を向けたメニスカス形状、開口絞り、第4レンズは両凸形状を有する。第2レンズと第4レンズはそれぞれ樹脂となり各両面にアナモルフィック面を有する。
<数値実施例5>
表21から表25は実施例5の各数値を示す。
【0096】
表21は、実施例5における全系の水平方向焦点距離fh(mm)、垂直方向焦点距離fv(mm)、Fナンバー、水平画角Θ1(°)、垂直画角Θ2(°)、レンズ全長(mm)、バックフォーカスBF(mm)の数値を示している。
【0097】
【表21】

【0098】
表22は、実施例5における広角光学系の各面番号iに対応した各レンズ、絞り140の近軸曲率半径R(mm)、間隔D(mm)、d線に対する屈折率n、d線に対するアッベ数νを示している。
【0099】
【表22】

【0100】
表23は、実施例5における非球面を含む第2レンズ120および第4レンズ150の所定面の非球面係数を示す。但し、実施例5においては第2レンズ120および第4レンズ150の各両面にアナモルフィック面が形成されており、数1で表される非球面の形成はない。
【0101】
【表23】

【0102】
表24は、実施例4におけるアナモルフィック面を含む第2レンズ120および第4レンズ150の所定面のアナモルフィック係数を示す。
【0103】
【表24】

【0104】
表25は条件式の各数値を示している。実施例5は各条件式の値を満たしており、光学系の小型化、薄型化を図りつつ、諸収差が良好に補正された広角光学系が得られる。
【0105】
【表25】

【0106】
実施例5によれば、実施例4に対し、全アナモルフィック面について製造限界レベルまで水平方向と垂直方向の曲率の違いを大きくしている。本発明でとりうるレンズ構成で最もアナモルフィック光学系としての効果を持たせた実施例である。
【0107】
以上、本実施形態の広角光学系および撮像モジュールについて説明したが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではなく、発明の要旨を逸脱しない範囲で種種の変形が可能である。例えば、上記実施例において、ガラスブロック170に赤外線除去フィルターを設ける構成にしたが、このような構成に限られず、赤外カットコートをガラスブロック170の面に施しても良い。また、他のレンズ面やローパスフィルター等のフィルターに赤外コートを施しても良い。
【0108】
本実施形態の広角光学系によれば、撮像素子を用いた撮像系、特に監視用カメラや車載カメラ等に好適であり、小型、薄型で高い光学性能の広角光学系、及び、前記広角光学系を備えた撮像モジュールが実現できる。
【0109】
図12に本発明による撮像レンズ100を用いた撮像装置の実施形態の断面図を示す。撮像レンズ100およびCCD(Charge Coupled Device)やCMOS(Complementary Mental-Oxide Semiconductor device)等の撮像素子210は筐体220によって位置関係を規定、保持される。このとき撮像レンズ100の結像面160は撮像素子210の受光面に一致するように配置されている。
【0110】
撮像レンズ100によって取り込まれ、撮像素子210の受光面に結像した被写体像は、撮像素子210の光電変換機能によって電気信号に変換されて、画像信号として撮像装置200から出力される。
【0111】
上述のような撮像レンズ100は、構成枚数が少なく、小型、軽量であるため、搭載スペースがコンパクトにできるため、様々な用途の撮像装置に適している。また広角撮像レンズでありながら、歪曲収差の発生を低減し、高い光学性能を持つ被写体像を撮像素子210に受光面上に結像でき、視認性に優れた画像信号を出力できるため、特に監視用カメラや車載用カメラ等において優位性の高い撮像装置の実現が可能である。
【符号の説明】
【0112】
100 … 撮像光学系
110 … 第1レンズ
120 … 第2レンズ
130 … 第3レンズ
140 … 開口絞り
150 … 第4レンズ
160 … ガラスブロック
170 … 結像面
200 … 撮像装置
210 … 撮像素子
220 … 筐体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
物体側から順に物体側に凸の負メニスカスの第1レンズと、光軸に対して直交する平面における水平方向と垂直方向とで異なる曲率からなるアナモルフィック面を物体側に有する負メニスカスの第2レンズと、物体側に凸の正の第3レンズと、開口絞りと、像側に凸の正の第4レンズと、からなり、レンズ全系の前記水平方向の焦点距離をFh、レンズ全系の前記垂直方向の焦点距離をFvとしたときに、以下の条件を満足し、
1.10 < Fv/Fh < 1.30 ・・・(1)
且つ、前記第2レンズの物体側面とは別の第2のアナモルフィック面を、前記第2レンズの物体側面のパワーと正負の符号が異なる面に備える事を特徴とする撮像光学系。
【請求項2】
前記撮像光学系において、以下の条件を満足することを特徴とする請求項1に記載の撮像光学系
0.4 < r1v/r1h < 0.8 ・・・(2)
ただし、r1hは前記水平方向の曲率の半径、r1vは前記垂直方向の曲率の半径。
【請求項3】
前記第2レンズおよび第4レンズは樹脂材料からなる請求項1もしくは2に記載の撮像光学系。
【請求項4】
前記第2のアナモルフィック面を前記第4レンズに形成したことを特徴とする請求項3に記載の撮像光学系。
【請求項5】
前記第1から4請求項のいずれかに記載の撮像光学系と、当該撮像光学系により形成される光学像を電気信号に変換する撮像素子とを備えたことを特徴とする撮像装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate


【公開番号】特開2013−109268(P2013−109268A)
【公開日】平成25年6月6日(2013.6.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−255986(P2011−255986)
【出願日】平成23年11月24日(2011.11.24)
【出願人】(000006633)京セラ株式会社 (13,660)
【Fターム(参考)】