広角帆布の製造方法及び製造装置
【課題】広角帆布の製造方法において、帆布の構成糸の損傷が少なく、かつ経糸と緯糸との複数種類の交差角を実現できる、簡素で汎用性の高い方法を提供する。
【解決手段】経糸12aと緯糸12bとを含んで構成される帆布12に対し、予め接着処理工程を行い、その後、その回転軸線が前記帆布12の幅方向に対して傾斜角度αをもって傾斜するように配置した傾斜ロール31の周面に帆布12を巻き掛け、この状態で帆布12を長手方向に平行な方向に移動させることにより前記緯糸12bを傾斜させる(広角処理工程)。この傾斜角度αは所定の範囲で変更できるように構成されている。その後、帆布12は乾燥処理工程で乾燥させる。
【解決手段】経糸12aと緯糸12bとを含んで構成される帆布12に対し、予め接着処理工程を行い、その後、その回転軸線が前記帆布12の幅方向に対して傾斜角度αをもって傾斜するように配置した傾斜ロール31の周面に帆布12を巻き掛け、この状態で帆布12を長手方向に平行な方向に移動させることにより前記緯糸12bを傾斜させる(広角処理工程)。この傾斜角度αは所定の範囲で変更できるように構成されている。その後、帆布12は乾燥処理工程で乾燥させる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ゴムベルト等に用いられるいわゆる広角帆布の製造方法及び製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、例えばゴムベルト内に積層状に装填される帆布には、ゴムベルトの屈曲性を良好にするため、経糸と緯糸の交差角が広角であるいわゆる広角帆布が使われることがある。
【0003】
この広角帆布の製造方法としては、例えば特許文献1に開示されるように、通常の手段で製造された織布の両耳部を一対のテンターチェーン部に取り付けられた針付きブロック体に把持させ、前記テンターチェーンの進行と共にその緯糸の平行性を失うことなく経緯交差角を変角させる方法がある。
【0004】
一方、特許文献2は、上記特許文献1のような方法では製造装置が複雑な構造になり、設置スペースや設備費が高くなるという問題を指摘し、これを解決する手段として、織布を経糸と平行に一定の速度で搬送し、その両面に接触させる一対の円錐状ローラーを、それぞれ織布の移動方向と逆方向に回転させることで、緯糸の円錐状ローラーの大径部接触側を小径部接触側に対し反移動方向に傾斜させ、経糸に対し緯糸を90°よりも大きい角度で交差させた後、前記織布の経糸と緯糸の交差部を接着処理する方法を提案している。
【特許文献1】特公昭57−48659号公報(第5図など)
【特許文献2】特開平5−59660号公報(図1など)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献2では、円錐状ローラーを織布に接触させた状態で当該織布の移動方向と逆の方向に回転させ、その摩擦力で緯糸を傾斜させる構成としているため、帆布の表面の負担が大きく、構成糸が損傷して品質を低下させる恐れがあった。
【0006】
また広角帆布の分野では一般に、その用途や事情によって、実現したい経糸と緯糸との交差角が種々異なるのが実情である。この点、前記特許文献2は、円錐状ローラーの円錐角は、製造しようとする広角織布の経糸と緯糸の交差角を勘案して適宜増減し、最適な円錐角を決定すればよいとしている(特許文献2の[0025]第2文)。
【0007】
上記の記載のとおり、特許文献2の装置で様々な交差角を実現しようとする場合は、円錐角の異なる円錐状ローラーを複数準備して交換して用いなければならないことになる。即ち特許文献2の構成は、コストや手間、汎用性等の点で未だ改善の余地が残されていた。
【課題を解決するための手段及び効果】
【0008】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段とその効果を説明する。
【0009】
◆本発明の第1の観点によれば、経糸と緯糸とを含んで構成される帆布を、その回転軸線が前記帆布の幅方向に対して傾斜するように配置した傾斜ロールの周面に巻き掛け、この状態で帆布を長手方向に平行な方向に移動させることにより前記緯糸を傾斜させる広角処理工程を含む、広角帆布の製造方法が提供される。
【0010】
これにより、帆布が傾斜ロールに巻き掛けられ、帆布が傾斜ロールの周面に対し大きな面積で接触しながら広角処理されることから、帆布の表面の負担を軽減でき、構成糸の損傷を回避できる。また、帆布を広角化するための簡素かつ汎用性の高い構成が可能になり、広角処理の工数及び設備コストの低減を図ることができる。
【0011】
◆前記の広角帆布の製造方法においては、前記傾斜ロールの回転軸線の、前記帆布の幅方向に対する傾斜角度を変更できるように構成することが好ましい。
【0012】
これにより、傾斜ロールの傾斜角度を変更するだけで様々な交差角を実現でき、汎用性に一層優れた製造方法とできる。
【0013】
◆前記の広角帆布の製造方法においては、前記傾斜ロールが複数備えられており、前記帆布は、傾斜ロールに巻き掛かった後かつ次の傾斜ロールに巻き掛かる前に、回転軸線が帆布の幅方向に沿って設けられた中継ロールに巻き掛かることが好ましい。
【0014】
これにより、複数の傾斜ロールに巻き掛けさせることで広角化作用を繰返し行うことができ、帆布の十分な広角処理を無理なく行うことができる。また、複数の傾斜ロールが分担して広角化作用を行うから、それぞれの傾斜ロールの傾斜角度をその分小さくすることができ、帆布の皺や弛みを防止できる。更に、帆布は傾斜ロール→中継ロール→傾斜ロールと巻き掛かることとなるから、帆布が連続して傾斜ロールに巻き掛かることが回避され、これによっても帆布の皺や弛みを防止できる。
【0015】
◆前記の広角帆布の製造方法においては、前記広角処理工程の前に接着処理工程が行われ、前記広角処理工程の後に乾燥処理工程が行われることが好ましい。
【0016】
これにより、先に接着処理された帆布が傾斜ロールに巻き掛かることとなるから、帆布と傾斜ロールとの摩擦力を十分に確保して広角化作用を安定して且つ確実に行わせることができる。また、後の乾燥処理によって、広角が十分に固定した帆布を製造することができる。
【0017】
◆本発明の第2の観点によれば、以下のように構成する、広角帆布の製造装置が提供される。帆布繰出部、広角処理部、乾燥処理部、及び帆布巻取部を少なくとも備える。前記広角処理部は、長手方向に平行な方向に移動する帆布を巻き掛けるための、その回転軸線が前記帆布の幅方向に対して傾斜するように配置した傾斜ロールを含んで構成されている。
【0018】
これにより、帆布が傾斜ロールに巻き掛けられ、帆布が傾斜ロールの周面に対し大きな面積で接触しながら広角処理されることから、帆布の表面の負担を軽減でき、構成糸の損傷を回避できる。また、帆布を広角化するための簡素かつ汎用性の高い構成が可能になり、広角処理の工数を低減できるとともに、安価な製造装置とすることができる。
【0019】
◆前記の広角帆布の製造装置においては、前記広角処理部は、前記傾斜ロールの回転軸線の、前記帆布の幅方向に対する傾斜角度を変更可能に構成されていることが好ましい。
【0020】
これにより、傾斜ロールの傾斜角度を変更するだけで様々な交差角を実現でき、汎用性に一層優れた製造装置とできる。
【0021】
◆前記の広角帆布の製造装置においては、前記傾斜ロールは複数備えられており、前記帆布の搬送経路の前記傾斜ロールと傾斜ロールとの間の位置には、その回転軸線を帆布の幅方向と平行となるようにして、当該帆布を巻き掛けるための中継ロールを備えることが好ましい。
【0022】
これにより、複数の傾斜ロールに巻き掛けさせることで広角化作用を繰返し行うことができ、帆布の十分な広角処理を無理なく行うことができる。また、複数の傾斜ロールが分担して広角化作用を行うから、それぞれの傾斜ロールの傾斜角度をその分小さくすることができ、帆布の皺や弛みを防止できる。更に、傾斜ロールと傾斜ロールとの間に中継ロールが備えられているから、帆布が連続して傾斜ロールに巻き掛かることが回避され、これによっても帆布の皺や弛みを防止できる。
【0023】
◆前記の広角帆布の製造装置においては、前記帆布繰出部から前記広角処理部までの帆布の搬送経路の中途に接着処理部が配設されていることが好ましい。
【0024】
これにより、上流側の接着処理部にて接着処理された帆布が広角処理部で傾斜ロールに巻き掛かることとなるから、帆布と傾斜ロールとの摩擦力を十分確保して広角化作用を安定かつ確実に行わせることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
次に、発明の実施の形態を説明する。図1は本発明の一実施形態に係る広角帆布の製造装置の全体的な構成を示した側面模式図、図2は緯糸傾斜装置の傾斜ロールの部分を示す要部拡大斜視図、図3は広角処理のイメージを説明する展開図である。
【0026】
図1には広角帆布の製造装置の模式側面図が示され、この製造装置1は、帆布12の搬送経路の上流側から下流側へ向かって順に、帆布繰出部としての繰出装置2と、接着処理部としての接着処理装置3と、広角処理部としての緯糸傾斜装置4と、乾燥処理部としてのテンター装置5と、帆布巻取部としての巻取装置6と、を備えている。
【0027】
繰出装置2は、経糸と緯糸とが直交した帆布ロール11を着脱自在に備えた構造となっている。一方、巻取装置6は、接着処理、広角処理等の一連の処理工程が行われた後の帆布12を巻取ロール13として巻き取ることができるように構成されている。
【0028】
接着処理装置3は、接着液の貯溜タンク13を備え、この貯溜タンク13内に浸漬ロール14が設けられている。前記繰出装置2から貯溜タンク13に至る帆布搬送経路にはガイドロール15が備えられている。また、接着処理装置3の下流には、複数のガイドロール16、帆布12を搬送駆動するマングルロール17、及びテンションロール18が備えられている。
【0029】
緯糸傾斜装置4の内部には帆布の搬送経路が複数回折り返すように構成され、この搬送経路には、複数の傾斜ロール31及び折返しロール(中継ロール)32が交互に備えられている。また、傾斜ロール31群の上流側にはガイドロール33が配設される。更に、緯糸傾斜装置4の下流側には、複数のガイドロール19や、帆布12の搬送のための駆動ロール20が備えられている。
【0030】
テンター装置5は、帆布を広げ又は延伸しながら搬送する装置であって、その内部には、上下に適宜の加熱手段(図略)が備えられている。本実施形態では、このテンター装置5で乾燥処理工程を行うように構成されている。テンター装置5の下流側には、複数のガイドロール21及び駆動ロール22が設けられている。
【0031】
緯糸傾斜装置4の内部に構成される帆布搬送経路のうち傾斜ロール31周辺部分の要部斜視図が図2に示され、この傾斜ロール31の回転軸線31cは、当該傾斜ロール31に巻き掛かる前の段階の帆布12の面に平行な面内で、帆布12の幅方向に対し若干の傾斜角度αだけ傾斜させている。
【0032】
この状態で帆布12は、傾斜ロール31の周面に巻き掛かった状態で、マングルロール17や駆動ロール20の駆動により、当該帆布12の長手方向に平行な方向に搬送される。これにより、傾斜ロール31の幅方向一端側においては帆布12の移動量が増大し、他端側においては逆に減少する。言い換えれば、傾斜ロール31の幅方向一端側から他端側に向かうに従って、その長手方向の移動量が徐々に小さくなる。このように、帆布12の移動量に幅方向で不均衡を作り出すことによって、緯糸が経糸に対して90°から傾斜することとなり、帆布12の広角処理が実現される。
【0033】
なお、前記の傾斜ロール31は図示しない揺動機構によって揺動自在に支持されており、その傾斜角度αは、実現したい交差角(経糸と緯糸との配向角度)に応じて、所定範囲内で適宜変更することが可能になっている。
【0034】
本実施形態の緯糸傾斜装置4においては、前記の構成の傾斜ロール31を帆布搬送経路に複数配置しているが、傾斜ロール31と傾斜ロール31との間には、必ず前記折返しロール32が配置されている。言い換えれば、帆布搬送経路の上流から下流に向かうにつれて、傾斜ロール31、折返しロール32、傾斜ロール31、・・・というように、傾斜ロール31と折返しロール32とを交互に配置した構成となっている。
【0035】
そして、上記折返しロール32は、傾斜ロール31と異なり、その回転軸線が帆布12の幅に沿う方向(帆布12の長手方向に垂直な方向、経糸12aの向きと垂直な方向)に向けられている。これにより、帆布12が傾斜ロール31を連続して通過することが回避され、帆布12の移動量の幅方向での不均衡が過大になって皺や弛みを生じることを防止している。なお、皺や弛みの防止という観点からは、前記傾斜ロール31又は折返しロール32のうち少なくとも何れか一方は、帆布12の弛みを取る方向に付勢されるいわゆるエキスパンドロールとして構成されることが好ましい。
【0036】
なお、本実施形態の広角帆布の製造装置1では、接着処理装置3が緯糸傾斜装置4の上流側に設けられている。言い換えれば、この製造装置1では、接着処理工程が広角処理工程よりも前に行われる。これにより、緯糸傾斜装置4での広角処理工程において傾斜ロール31及び折返しロール32と帆布12との間の摩擦力を十分に確保でき、広角処理を確実に行うことができる。ただし、接着処理装置3を緯糸傾斜装置4の下流側に設けて、広角処理工程の後に接着処理工程を行うように構成することも可能である。
【0037】
また、本実施形態の製造装置1では、テンター装置5が緯糸傾斜装置4の下流側に設けられている。言い換えれば、この製造装置1では、乾燥処理工程が広角処理工程の後に行われる。これにより、接着処理工程、広角処理工程の順に行われた帆布12を乾燥処理することで、広角が十分に固定した帆布12を製造することができている。
【0038】
また、前記の広角処理は、帆布種によっては、帆布12の長手方向に張力を付与した状態で行うことが望ましい。本実施形態においては、緯糸傾斜装置4の上流側の前記マングルロール17と下流側の前記駆動ロール20とで送出速度差を意図的に生じさせることで、帆布12に適宜の大きさの張力を付与している。ただし、張力を付与する手段は前記に限定されるものではない。
【0039】
本願の発明者は、上記の製造装置1ないし製造方法の有用性を確認するため、以下の実験を行った。実験で使用する帆布は、経糸と緯糸が直交して配置された平織の帆布とし、広角処理工程の前の接着処理工程では、レゾルシン・ホルムアルデヒド・ラテックス(RFL)溶液に浸漬した。
【0040】
広角化される帆布の構成糸は綿20s/2×綿20s/2とし、密度は、経糸について75本/5cm,緯糸について75本/5cmのものを用いた。傾斜ロール31の角度は、4.6°,5.9°,7.9°,9.2°の4段階に変化させ、6回の実験を行った。
【0041】
傾斜ロール31の個数については、今回の実験では原則3個とし、傾斜ロール31の角度が5.9°の場合のときのみ、2個と3個の両方で実験を行った。また、広角処理時の帆布に付与する張力については、原則、伸張率が1.0%となるような張力とした。ただし、傾斜ロール31の角度が7.9°の場合のときのみ、1.0%と2.0%の両方で実験を行った。
【0042】
以上の実験の結果を下記の表に示す。
【表1】
【0043】
実験1と実験3と実験4の結果を比較すれば判るとおり、傾斜ロール31の傾斜角度αが大きくなるほど、広角化した交差角が得られている。ただし、傾斜角度αを9.2°にまで増大させた実験6では、交差角を傾斜角度7.9°とした場合(実験5)よりも交差角が減少しており、広角化傾向に頭打ちが見られた。
【0044】
なお、実験6では、他の実験1〜5とは異なり、傾斜ロール31の巻掛け部分の帆布12に弛みが生じているのが目視で観察された。即ち、傾斜角度αが大き過ぎても効果的な広角化を達成することはできず、傾斜ロール31の傾斜角度αは8°以下に設定するのが好ましいと考えられる。
【0045】
また、実験2と実験3とで結果を比較すれば、傾斜ロール31の個数が2個→3個と増大すると、交差角がより広角化した帆布が得られることが判る。更には、実験4と実験5の結果を見れば、伸張率が1.0%でも2.0%でも、良好な広角化が得られていることが判る。
【0046】
以上に示したように、本実施形態の製造装置1による製造方法では、経糸と緯糸とを含んで構成される帆布12を、その回転軸線31cが前記帆布12の幅方向に対して傾斜するように配置した傾斜ロール31の周面に巻き掛け、この状態で帆布12を長手方向に平行な方向に移動させることにより前記緯糸12bを傾斜させる広角処理工程を含んでいる。言い換えれば、上記製造装置1は、そのような広角処理工程を行う緯糸傾斜装置4を備えている。
【0047】
従って、帆布12が傾斜ロール31に巻き掛けられ、帆布12が傾斜ロール31の周面に対し大きな面積で接触することとなるから、構成糸12a・12bの損傷を少なくでき、帆布12の品質の低下を防止できる。また、帆布12を広角化するための簡素かつ汎用性の高い構成が可能になり、広角処理の工数及び設備コストの低減を図ることができる。
【0048】
また、本実施形態では、前記傾斜ロール31の回転軸線31cの、前記帆布12の幅方向に対する傾斜角度αを変更できるように構成している。従って、傾斜角度αを変更する簡単な操作で様々な交差角を実現でき、汎用性に一層優れた方法及び装置とできる。
【0049】
また、本実施形態では、前記傾斜ロール31は複数備えられており、前記帆布12は、傾斜ロール31に巻き掛かった後かつ次の傾斜ロール31に巻き掛かる前に、回転軸線が帆布12の幅方向に沿って設けられた折返しロール32に巻き掛かるようになっている。言い換えれば、緯糸傾斜装置4において、帆布12の搬送経路の前記傾斜ロール31と傾斜ロール31との間の位置には、回転軸線が帆布12の幅方向に沿って設けられた、帆布12を巻き掛けるための折返しロール32が備えられている。
【0050】
従って、複数の傾斜ロール31に巻き掛けさせることで広角化作用を繰返し行うことができ、帆布12の十分な広角処理を無理なく行うことができる。また、複数の傾斜ロール31が分担して広角化作用を行うことから、それぞれの傾斜ロール31の傾斜角度αをその分だけ小さくすることができ、帆布12の皺や弛みを防止できる。また、帆布12の搬送経路において傾斜ロール31と傾斜ロール31との間の位置に折返しロール32が備えられているから、帆布12が連続して傾斜ロール31に巻き掛かることが回避され、これによっても帆布12の皺や弛みを防止することができる。
【0051】
また、本実施形態では、広角処理工程の前に接着処理工程が行われ、広角処理工程の後に乾燥処理工程が行われる。即ち、緯糸傾斜装置4の上流側に接着処理装置3が設けられ、緯糸傾斜装置4の下流側にテンター装置5が設けられている。従って、予め接着処理された帆布12が傾斜ロール31に巻き掛かることとなるから、帆布12と傾斜ロール31との摩擦力を十分確保して広角化作用を安定かつ確実に行わせることができ、また、後の乾燥処理によって、広角が十分に固定した帆布12を製造することができる。
【0052】
上記に本発明の好ましい実施形態を示したが、上記実施形態は例えば以下のように変更することができる。
【0053】
例えば、前記傾斜ロール31に関しては、ゴムロール、ウレタンロール、ローレット加工ロール等、種々の事情に応じて様々なロールを採用することができる。
【0054】
また、帆布12の傾斜ロール31及び折返しロール32への巻掛け角度に関しては、上記実施形態では180°の折返し状に巻き掛けているが、これに限定されるものではない。ただし、巻掛け角度が小さすぎると広角処理効果が不十分となり易いので、ある程度の巻掛け角度の大きさ(例えば、90°以上)を確保することが好ましい。
【0055】
傾斜ロール31の傾斜方向については、帆布12の移動量に幅方向で不均衡を作り出すことができれば良く、前記の傾斜方向とすることに限定されない。また、傾斜ロール31の傾斜角度αの変更可能範囲は、α=0°を含むように設定されていても良い。更には、複数の傾斜ロール31の傾斜角度α同士を互いに異ならせても良い。
【0056】
また、乾燥処理工程はテンター装置5で行われる必要は必ずしもなく、乾燥可能な手段である限り、他の構成の装置を用いて良い。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【図1】本発明の一実施形態に係る広角帆布の製造装置の全体的な構成を示した側面模式図。
【図2】緯糸傾斜装置の傾斜ロールの部分を示す要部拡大斜視図。
【図3】広角処理のイメージを説明する展開図。
【符号の説明】
【0058】
1 広角帆布の製造装置
2 繰出装置(帆布繰出部)
3 接着処理装置(接着処理部)
4 緯糸傾斜装置(広角処理部)
5 テンター装置(乾燥処理部)
6 巻取装置(帆布巻取部)
12 帆布
12a 経糸
12b 緯糸
31 傾斜ロール
31c 傾斜ロールの回転軸線
α 傾斜ロールの傾斜角度
32 折返しロール(中継ロール)
【技術分野】
【0001】
本発明は、ゴムベルト等に用いられるいわゆる広角帆布の製造方法及び製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、例えばゴムベルト内に積層状に装填される帆布には、ゴムベルトの屈曲性を良好にするため、経糸と緯糸の交差角が広角であるいわゆる広角帆布が使われることがある。
【0003】
この広角帆布の製造方法としては、例えば特許文献1に開示されるように、通常の手段で製造された織布の両耳部を一対のテンターチェーン部に取り付けられた針付きブロック体に把持させ、前記テンターチェーンの進行と共にその緯糸の平行性を失うことなく経緯交差角を変角させる方法がある。
【0004】
一方、特許文献2は、上記特許文献1のような方法では製造装置が複雑な構造になり、設置スペースや設備費が高くなるという問題を指摘し、これを解決する手段として、織布を経糸と平行に一定の速度で搬送し、その両面に接触させる一対の円錐状ローラーを、それぞれ織布の移動方向と逆方向に回転させることで、緯糸の円錐状ローラーの大径部接触側を小径部接触側に対し反移動方向に傾斜させ、経糸に対し緯糸を90°よりも大きい角度で交差させた後、前記織布の経糸と緯糸の交差部を接着処理する方法を提案している。
【特許文献1】特公昭57−48659号公報(第5図など)
【特許文献2】特開平5−59660号公報(図1など)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献2では、円錐状ローラーを織布に接触させた状態で当該織布の移動方向と逆の方向に回転させ、その摩擦力で緯糸を傾斜させる構成としているため、帆布の表面の負担が大きく、構成糸が損傷して品質を低下させる恐れがあった。
【0006】
また広角帆布の分野では一般に、その用途や事情によって、実現したい経糸と緯糸との交差角が種々異なるのが実情である。この点、前記特許文献2は、円錐状ローラーの円錐角は、製造しようとする広角織布の経糸と緯糸の交差角を勘案して適宜増減し、最適な円錐角を決定すればよいとしている(特許文献2の[0025]第2文)。
【0007】
上記の記載のとおり、特許文献2の装置で様々な交差角を実現しようとする場合は、円錐角の異なる円錐状ローラーを複数準備して交換して用いなければならないことになる。即ち特許文献2の構成は、コストや手間、汎用性等の点で未だ改善の余地が残されていた。
【課題を解決するための手段及び効果】
【0008】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段とその効果を説明する。
【0009】
◆本発明の第1の観点によれば、経糸と緯糸とを含んで構成される帆布を、その回転軸線が前記帆布の幅方向に対して傾斜するように配置した傾斜ロールの周面に巻き掛け、この状態で帆布を長手方向に平行な方向に移動させることにより前記緯糸を傾斜させる広角処理工程を含む、広角帆布の製造方法が提供される。
【0010】
これにより、帆布が傾斜ロールに巻き掛けられ、帆布が傾斜ロールの周面に対し大きな面積で接触しながら広角処理されることから、帆布の表面の負担を軽減でき、構成糸の損傷を回避できる。また、帆布を広角化するための簡素かつ汎用性の高い構成が可能になり、広角処理の工数及び設備コストの低減を図ることができる。
【0011】
◆前記の広角帆布の製造方法においては、前記傾斜ロールの回転軸線の、前記帆布の幅方向に対する傾斜角度を変更できるように構成することが好ましい。
【0012】
これにより、傾斜ロールの傾斜角度を変更するだけで様々な交差角を実現でき、汎用性に一層優れた製造方法とできる。
【0013】
◆前記の広角帆布の製造方法においては、前記傾斜ロールが複数備えられており、前記帆布は、傾斜ロールに巻き掛かった後かつ次の傾斜ロールに巻き掛かる前に、回転軸線が帆布の幅方向に沿って設けられた中継ロールに巻き掛かることが好ましい。
【0014】
これにより、複数の傾斜ロールに巻き掛けさせることで広角化作用を繰返し行うことができ、帆布の十分な広角処理を無理なく行うことができる。また、複数の傾斜ロールが分担して広角化作用を行うから、それぞれの傾斜ロールの傾斜角度をその分小さくすることができ、帆布の皺や弛みを防止できる。更に、帆布は傾斜ロール→中継ロール→傾斜ロールと巻き掛かることとなるから、帆布が連続して傾斜ロールに巻き掛かることが回避され、これによっても帆布の皺や弛みを防止できる。
【0015】
◆前記の広角帆布の製造方法においては、前記広角処理工程の前に接着処理工程が行われ、前記広角処理工程の後に乾燥処理工程が行われることが好ましい。
【0016】
これにより、先に接着処理された帆布が傾斜ロールに巻き掛かることとなるから、帆布と傾斜ロールとの摩擦力を十分に確保して広角化作用を安定して且つ確実に行わせることができる。また、後の乾燥処理によって、広角が十分に固定した帆布を製造することができる。
【0017】
◆本発明の第2の観点によれば、以下のように構成する、広角帆布の製造装置が提供される。帆布繰出部、広角処理部、乾燥処理部、及び帆布巻取部を少なくとも備える。前記広角処理部は、長手方向に平行な方向に移動する帆布を巻き掛けるための、その回転軸線が前記帆布の幅方向に対して傾斜するように配置した傾斜ロールを含んで構成されている。
【0018】
これにより、帆布が傾斜ロールに巻き掛けられ、帆布が傾斜ロールの周面に対し大きな面積で接触しながら広角処理されることから、帆布の表面の負担を軽減でき、構成糸の損傷を回避できる。また、帆布を広角化するための簡素かつ汎用性の高い構成が可能になり、広角処理の工数を低減できるとともに、安価な製造装置とすることができる。
【0019】
◆前記の広角帆布の製造装置においては、前記広角処理部は、前記傾斜ロールの回転軸線の、前記帆布の幅方向に対する傾斜角度を変更可能に構成されていることが好ましい。
【0020】
これにより、傾斜ロールの傾斜角度を変更するだけで様々な交差角を実現でき、汎用性に一層優れた製造装置とできる。
【0021】
◆前記の広角帆布の製造装置においては、前記傾斜ロールは複数備えられており、前記帆布の搬送経路の前記傾斜ロールと傾斜ロールとの間の位置には、その回転軸線を帆布の幅方向と平行となるようにして、当該帆布を巻き掛けるための中継ロールを備えることが好ましい。
【0022】
これにより、複数の傾斜ロールに巻き掛けさせることで広角化作用を繰返し行うことができ、帆布の十分な広角処理を無理なく行うことができる。また、複数の傾斜ロールが分担して広角化作用を行うから、それぞれの傾斜ロールの傾斜角度をその分小さくすることができ、帆布の皺や弛みを防止できる。更に、傾斜ロールと傾斜ロールとの間に中継ロールが備えられているから、帆布が連続して傾斜ロールに巻き掛かることが回避され、これによっても帆布の皺や弛みを防止できる。
【0023】
◆前記の広角帆布の製造装置においては、前記帆布繰出部から前記広角処理部までの帆布の搬送経路の中途に接着処理部が配設されていることが好ましい。
【0024】
これにより、上流側の接着処理部にて接着処理された帆布が広角処理部で傾斜ロールに巻き掛かることとなるから、帆布と傾斜ロールとの摩擦力を十分確保して広角化作用を安定かつ確実に行わせることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
次に、発明の実施の形態を説明する。図1は本発明の一実施形態に係る広角帆布の製造装置の全体的な構成を示した側面模式図、図2は緯糸傾斜装置の傾斜ロールの部分を示す要部拡大斜視図、図3は広角処理のイメージを説明する展開図である。
【0026】
図1には広角帆布の製造装置の模式側面図が示され、この製造装置1は、帆布12の搬送経路の上流側から下流側へ向かって順に、帆布繰出部としての繰出装置2と、接着処理部としての接着処理装置3と、広角処理部としての緯糸傾斜装置4と、乾燥処理部としてのテンター装置5と、帆布巻取部としての巻取装置6と、を備えている。
【0027】
繰出装置2は、経糸と緯糸とが直交した帆布ロール11を着脱自在に備えた構造となっている。一方、巻取装置6は、接着処理、広角処理等の一連の処理工程が行われた後の帆布12を巻取ロール13として巻き取ることができるように構成されている。
【0028】
接着処理装置3は、接着液の貯溜タンク13を備え、この貯溜タンク13内に浸漬ロール14が設けられている。前記繰出装置2から貯溜タンク13に至る帆布搬送経路にはガイドロール15が備えられている。また、接着処理装置3の下流には、複数のガイドロール16、帆布12を搬送駆動するマングルロール17、及びテンションロール18が備えられている。
【0029】
緯糸傾斜装置4の内部には帆布の搬送経路が複数回折り返すように構成され、この搬送経路には、複数の傾斜ロール31及び折返しロール(中継ロール)32が交互に備えられている。また、傾斜ロール31群の上流側にはガイドロール33が配設される。更に、緯糸傾斜装置4の下流側には、複数のガイドロール19や、帆布12の搬送のための駆動ロール20が備えられている。
【0030】
テンター装置5は、帆布を広げ又は延伸しながら搬送する装置であって、その内部には、上下に適宜の加熱手段(図略)が備えられている。本実施形態では、このテンター装置5で乾燥処理工程を行うように構成されている。テンター装置5の下流側には、複数のガイドロール21及び駆動ロール22が設けられている。
【0031】
緯糸傾斜装置4の内部に構成される帆布搬送経路のうち傾斜ロール31周辺部分の要部斜視図が図2に示され、この傾斜ロール31の回転軸線31cは、当該傾斜ロール31に巻き掛かる前の段階の帆布12の面に平行な面内で、帆布12の幅方向に対し若干の傾斜角度αだけ傾斜させている。
【0032】
この状態で帆布12は、傾斜ロール31の周面に巻き掛かった状態で、マングルロール17や駆動ロール20の駆動により、当該帆布12の長手方向に平行な方向に搬送される。これにより、傾斜ロール31の幅方向一端側においては帆布12の移動量が増大し、他端側においては逆に減少する。言い換えれば、傾斜ロール31の幅方向一端側から他端側に向かうに従って、その長手方向の移動量が徐々に小さくなる。このように、帆布12の移動量に幅方向で不均衡を作り出すことによって、緯糸が経糸に対して90°から傾斜することとなり、帆布12の広角処理が実現される。
【0033】
なお、前記の傾斜ロール31は図示しない揺動機構によって揺動自在に支持されており、その傾斜角度αは、実現したい交差角(経糸と緯糸との配向角度)に応じて、所定範囲内で適宜変更することが可能になっている。
【0034】
本実施形態の緯糸傾斜装置4においては、前記の構成の傾斜ロール31を帆布搬送経路に複数配置しているが、傾斜ロール31と傾斜ロール31との間には、必ず前記折返しロール32が配置されている。言い換えれば、帆布搬送経路の上流から下流に向かうにつれて、傾斜ロール31、折返しロール32、傾斜ロール31、・・・というように、傾斜ロール31と折返しロール32とを交互に配置した構成となっている。
【0035】
そして、上記折返しロール32は、傾斜ロール31と異なり、その回転軸線が帆布12の幅に沿う方向(帆布12の長手方向に垂直な方向、経糸12aの向きと垂直な方向)に向けられている。これにより、帆布12が傾斜ロール31を連続して通過することが回避され、帆布12の移動量の幅方向での不均衡が過大になって皺や弛みを生じることを防止している。なお、皺や弛みの防止という観点からは、前記傾斜ロール31又は折返しロール32のうち少なくとも何れか一方は、帆布12の弛みを取る方向に付勢されるいわゆるエキスパンドロールとして構成されることが好ましい。
【0036】
なお、本実施形態の広角帆布の製造装置1では、接着処理装置3が緯糸傾斜装置4の上流側に設けられている。言い換えれば、この製造装置1では、接着処理工程が広角処理工程よりも前に行われる。これにより、緯糸傾斜装置4での広角処理工程において傾斜ロール31及び折返しロール32と帆布12との間の摩擦力を十分に確保でき、広角処理を確実に行うことができる。ただし、接着処理装置3を緯糸傾斜装置4の下流側に設けて、広角処理工程の後に接着処理工程を行うように構成することも可能である。
【0037】
また、本実施形態の製造装置1では、テンター装置5が緯糸傾斜装置4の下流側に設けられている。言い換えれば、この製造装置1では、乾燥処理工程が広角処理工程の後に行われる。これにより、接着処理工程、広角処理工程の順に行われた帆布12を乾燥処理することで、広角が十分に固定した帆布12を製造することができている。
【0038】
また、前記の広角処理は、帆布種によっては、帆布12の長手方向に張力を付与した状態で行うことが望ましい。本実施形態においては、緯糸傾斜装置4の上流側の前記マングルロール17と下流側の前記駆動ロール20とで送出速度差を意図的に生じさせることで、帆布12に適宜の大きさの張力を付与している。ただし、張力を付与する手段は前記に限定されるものではない。
【0039】
本願の発明者は、上記の製造装置1ないし製造方法の有用性を確認するため、以下の実験を行った。実験で使用する帆布は、経糸と緯糸が直交して配置された平織の帆布とし、広角処理工程の前の接着処理工程では、レゾルシン・ホルムアルデヒド・ラテックス(RFL)溶液に浸漬した。
【0040】
広角化される帆布の構成糸は綿20s/2×綿20s/2とし、密度は、経糸について75本/5cm,緯糸について75本/5cmのものを用いた。傾斜ロール31の角度は、4.6°,5.9°,7.9°,9.2°の4段階に変化させ、6回の実験を行った。
【0041】
傾斜ロール31の個数については、今回の実験では原則3個とし、傾斜ロール31の角度が5.9°の場合のときのみ、2個と3個の両方で実験を行った。また、広角処理時の帆布に付与する張力については、原則、伸張率が1.0%となるような張力とした。ただし、傾斜ロール31の角度が7.9°の場合のときのみ、1.0%と2.0%の両方で実験を行った。
【0042】
以上の実験の結果を下記の表に示す。
【表1】
【0043】
実験1と実験3と実験4の結果を比較すれば判るとおり、傾斜ロール31の傾斜角度αが大きくなるほど、広角化した交差角が得られている。ただし、傾斜角度αを9.2°にまで増大させた実験6では、交差角を傾斜角度7.9°とした場合(実験5)よりも交差角が減少しており、広角化傾向に頭打ちが見られた。
【0044】
なお、実験6では、他の実験1〜5とは異なり、傾斜ロール31の巻掛け部分の帆布12に弛みが生じているのが目視で観察された。即ち、傾斜角度αが大き過ぎても効果的な広角化を達成することはできず、傾斜ロール31の傾斜角度αは8°以下に設定するのが好ましいと考えられる。
【0045】
また、実験2と実験3とで結果を比較すれば、傾斜ロール31の個数が2個→3個と増大すると、交差角がより広角化した帆布が得られることが判る。更には、実験4と実験5の結果を見れば、伸張率が1.0%でも2.0%でも、良好な広角化が得られていることが判る。
【0046】
以上に示したように、本実施形態の製造装置1による製造方法では、経糸と緯糸とを含んで構成される帆布12を、その回転軸線31cが前記帆布12の幅方向に対して傾斜するように配置した傾斜ロール31の周面に巻き掛け、この状態で帆布12を長手方向に平行な方向に移動させることにより前記緯糸12bを傾斜させる広角処理工程を含んでいる。言い換えれば、上記製造装置1は、そのような広角処理工程を行う緯糸傾斜装置4を備えている。
【0047】
従って、帆布12が傾斜ロール31に巻き掛けられ、帆布12が傾斜ロール31の周面に対し大きな面積で接触することとなるから、構成糸12a・12bの損傷を少なくでき、帆布12の品質の低下を防止できる。また、帆布12を広角化するための簡素かつ汎用性の高い構成が可能になり、広角処理の工数及び設備コストの低減を図ることができる。
【0048】
また、本実施形態では、前記傾斜ロール31の回転軸線31cの、前記帆布12の幅方向に対する傾斜角度αを変更できるように構成している。従って、傾斜角度αを変更する簡単な操作で様々な交差角を実現でき、汎用性に一層優れた方法及び装置とできる。
【0049】
また、本実施形態では、前記傾斜ロール31は複数備えられており、前記帆布12は、傾斜ロール31に巻き掛かった後かつ次の傾斜ロール31に巻き掛かる前に、回転軸線が帆布12の幅方向に沿って設けられた折返しロール32に巻き掛かるようになっている。言い換えれば、緯糸傾斜装置4において、帆布12の搬送経路の前記傾斜ロール31と傾斜ロール31との間の位置には、回転軸線が帆布12の幅方向に沿って設けられた、帆布12を巻き掛けるための折返しロール32が備えられている。
【0050】
従って、複数の傾斜ロール31に巻き掛けさせることで広角化作用を繰返し行うことができ、帆布12の十分な広角処理を無理なく行うことができる。また、複数の傾斜ロール31が分担して広角化作用を行うことから、それぞれの傾斜ロール31の傾斜角度αをその分だけ小さくすることができ、帆布12の皺や弛みを防止できる。また、帆布12の搬送経路において傾斜ロール31と傾斜ロール31との間の位置に折返しロール32が備えられているから、帆布12が連続して傾斜ロール31に巻き掛かることが回避され、これによっても帆布12の皺や弛みを防止することができる。
【0051】
また、本実施形態では、広角処理工程の前に接着処理工程が行われ、広角処理工程の後に乾燥処理工程が行われる。即ち、緯糸傾斜装置4の上流側に接着処理装置3が設けられ、緯糸傾斜装置4の下流側にテンター装置5が設けられている。従って、予め接着処理された帆布12が傾斜ロール31に巻き掛かることとなるから、帆布12と傾斜ロール31との摩擦力を十分確保して広角化作用を安定かつ確実に行わせることができ、また、後の乾燥処理によって、広角が十分に固定した帆布12を製造することができる。
【0052】
上記に本発明の好ましい実施形態を示したが、上記実施形態は例えば以下のように変更することができる。
【0053】
例えば、前記傾斜ロール31に関しては、ゴムロール、ウレタンロール、ローレット加工ロール等、種々の事情に応じて様々なロールを採用することができる。
【0054】
また、帆布12の傾斜ロール31及び折返しロール32への巻掛け角度に関しては、上記実施形態では180°の折返し状に巻き掛けているが、これに限定されるものではない。ただし、巻掛け角度が小さすぎると広角処理効果が不十分となり易いので、ある程度の巻掛け角度の大きさ(例えば、90°以上)を確保することが好ましい。
【0055】
傾斜ロール31の傾斜方向については、帆布12の移動量に幅方向で不均衡を作り出すことができれば良く、前記の傾斜方向とすることに限定されない。また、傾斜ロール31の傾斜角度αの変更可能範囲は、α=0°を含むように設定されていても良い。更には、複数の傾斜ロール31の傾斜角度α同士を互いに異ならせても良い。
【0056】
また、乾燥処理工程はテンター装置5で行われる必要は必ずしもなく、乾燥可能な手段である限り、他の構成の装置を用いて良い。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【図1】本発明の一実施形態に係る広角帆布の製造装置の全体的な構成を示した側面模式図。
【図2】緯糸傾斜装置の傾斜ロールの部分を示す要部拡大斜視図。
【図3】広角処理のイメージを説明する展開図。
【符号の説明】
【0058】
1 広角帆布の製造装置
2 繰出装置(帆布繰出部)
3 接着処理装置(接着処理部)
4 緯糸傾斜装置(広角処理部)
5 テンター装置(乾燥処理部)
6 巻取装置(帆布巻取部)
12 帆布
12a 経糸
12b 緯糸
31 傾斜ロール
31c 傾斜ロールの回転軸線
α 傾斜ロールの傾斜角度
32 折返しロール(中継ロール)
【特許請求の範囲】
【請求項1】
経糸と緯糸とを含んで構成される帆布を、その回転軸線が前記帆布の幅方向に対して傾斜するように配置した傾斜ロールの周面に巻き掛け、この状態で帆布を長手方向に平行な方向に移動させることにより前記緯糸を傾斜させる広角処理工程を含むことを特徴とする、広角帆布の製造方法。
【請求項2】
請求項1に記載の広角帆布の製造方法であって、
前記傾斜ロールの回転軸線の、前記帆布の幅方向に対する傾斜角度を変更できるように構成したことを特徴とする、広角帆布の製造方法。
【請求項3】
請求項1に記載の広角帆布の製造方法であって、前記傾斜ロールは複数備えられており、前記帆布は、傾斜ロールに巻き掛かった後かつ次の傾斜ロールに巻き掛かる前に、回転軸線が帆布の幅方向に沿って設けられた中継ロールに巻き掛かることを特徴とする、広角帆布の製造方法。
【請求項4】
請求項1から請求項3までの何れか一項に記載の広角帆布の製造方法であって、前記広角処理工程の前に接着処理工程が行われ、前記広角処理工程の後に乾燥処理工程が行われることを特徴とする、広角帆布の製造方法。
【請求項5】
帆布繰出部、広角処理部、乾燥処理部、及び帆布巻取部を少なくとも備えた広角帆布の製造装置であって、
前記広角処理部は、長手方向に平行な方向に移動する帆布を巻き掛けるための、その回転軸線が前記帆布の幅方向に対して傾斜するように配置した傾斜ロールを含んで構成されていることを特徴とする、広角帆布の製造装置。
【請求項6】
請求項5に記載の広角帆布の製造装置であって、前記広角処理部は、前記傾斜ロールの回転軸線の、前記帆布の幅方向に対する傾斜角度を変更可能に構成されていることを特徴とする、広角帆布の製造装置。
【請求項7】
請求項5又は請求項6に記載の広角帆布の製造装置であって、前記傾斜ロールは複数備えられており、前記帆布の搬送経路の前記傾斜ロールと傾斜ロールとの間の位置には、その回転軸線を帆布の幅方向と平行となるようにして、当該帆布を巻き掛けるための中継ロールを備えたことを特徴とする、広角帆布の製造装置。
【請求項8】
請求項5から請求項7までの何れか一項に記載の広角帆布の製造装置であって、前記帆布繰出部から前記広角処理部までの帆布の搬送経路の中途に接着処理部が配設されていることを特徴とする、広角帆布の製造装置。
【請求項1】
経糸と緯糸とを含んで構成される帆布を、その回転軸線が前記帆布の幅方向に対して傾斜するように配置した傾斜ロールの周面に巻き掛け、この状態で帆布を長手方向に平行な方向に移動させることにより前記緯糸を傾斜させる広角処理工程を含むことを特徴とする、広角帆布の製造方法。
【請求項2】
請求項1に記載の広角帆布の製造方法であって、
前記傾斜ロールの回転軸線の、前記帆布の幅方向に対する傾斜角度を変更できるように構成したことを特徴とする、広角帆布の製造方法。
【請求項3】
請求項1に記載の広角帆布の製造方法であって、前記傾斜ロールは複数備えられており、前記帆布は、傾斜ロールに巻き掛かった後かつ次の傾斜ロールに巻き掛かる前に、回転軸線が帆布の幅方向に沿って設けられた中継ロールに巻き掛かることを特徴とする、広角帆布の製造方法。
【請求項4】
請求項1から請求項3までの何れか一項に記載の広角帆布の製造方法であって、前記広角処理工程の前に接着処理工程が行われ、前記広角処理工程の後に乾燥処理工程が行われることを特徴とする、広角帆布の製造方法。
【請求項5】
帆布繰出部、広角処理部、乾燥処理部、及び帆布巻取部を少なくとも備えた広角帆布の製造装置であって、
前記広角処理部は、長手方向に平行な方向に移動する帆布を巻き掛けるための、その回転軸線が前記帆布の幅方向に対して傾斜するように配置した傾斜ロールを含んで構成されていることを特徴とする、広角帆布の製造装置。
【請求項6】
請求項5に記載の広角帆布の製造装置であって、前記広角処理部は、前記傾斜ロールの回転軸線の、前記帆布の幅方向に対する傾斜角度を変更可能に構成されていることを特徴とする、広角帆布の製造装置。
【請求項7】
請求項5又は請求項6に記載の広角帆布の製造装置であって、前記傾斜ロールは複数備えられており、前記帆布の搬送経路の前記傾斜ロールと傾斜ロールとの間の位置には、その回転軸線を帆布の幅方向と平行となるようにして、当該帆布を巻き掛けるための中継ロールを備えたことを特徴とする、広角帆布の製造装置。
【請求項8】
請求項5から請求項7までの何れか一項に記載の広角帆布の製造装置であって、前記帆布繰出部から前記広角処理部までの帆布の搬送経路の中途に接着処理部が配設されていることを特徴とする、広角帆布の製造装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図2】
【図3】
【公開番号】特開2007−92193(P2007−92193A)
【公開日】平成19年4月12日(2007.4.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−280021(P2005−280021)
【出願日】平成17年9月27日(2005.9.27)
【出願人】(000006068)三ツ星ベルト株式会社 (730)
【出願人】(504456190)NI帝人商事株式会社 (2)
【出願人】(505362296)エヌアイ テイジン ショウジ (タイランド) カンパニー リミテッド (1)
【氏名又は名称原語表記】N.I. TEIJIN SHOJI (THAILAND) CO., LTD.
【住所又は居所原語表記】SRIJULSUP TOWER(17TH FLOOR) 44, RAMA 1 ROAD. RONGMUANG, PATHUMWAN, BANGKOK, 10330 THAILAND.
【出願人】(505362285)タナクル プリンティング アンド ダイイング カンパニー リミテッド (1)
【氏名又は名称原語表記】THANAKUL PRINTING & DYEING CO., LTD.
【住所又は居所原語表記】241 MOO 10, SUKSAWASDI 80, NAI KLONG BANG PLAKUD, PHRA SAMUTJADEE, SAMUTPRAKAN 10290, THAILAND.
【Fターム(参考)】
【公開日】平成19年4月12日(2007.4.12)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年9月27日(2005.9.27)
【出願人】(000006068)三ツ星ベルト株式会社 (730)
【出願人】(504456190)NI帝人商事株式会社 (2)
【出願人】(505362296)エヌアイ テイジン ショウジ (タイランド) カンパニー リミテッド (1)
【氏名又は名称原語表記】N.I. TEIJIN SHOJI (THAILAND) CO., LTD.
【住所又は居所原語表記】SRIJULSUP TOWER(17TH FLOOR) 44, RAMA 1 ROAD. RONGMUANG, PATHUMWAN, BANGKOK, 10330 THAILAND.
【出願人】(505362285)タナクル プリンティング アンド ダイイング カンパニー リミテッド (1)
【氏名又は名称原語表記】THANAKUL PRINTING & DYEING CO., LTD.
【住所又は居所原語表記】241 MOO 10, SUKSAWASDI 80, NAI KLONG BANG PLAKUD, PHRA SAMUTJADEE, SAMUTPRAKAN 10290, THAILAND.
【Fターム(参考)】
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