説明

床下空気流制御装置

【課題】機械的な機構を用いずに車体の床下に発生する空気流を制御することができるようにする。
【解決手段】車体2の前部下面に配設された弾性を有するアンダーパネル21と、アンダーパネル21の弾性変形を所定の変化量で規制するストッパー部22とを備えている。そして、アンダーパネル21は、通風口13から導入された走行風圧力によって車体2の下面から下方に向けて変形する。これにより、機械的な機構を用いずに空気の圧力によってアンダーパネル21を変形させることができ、車体2の床下に生じる空気流を制御することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、走行時に車両の周りに発生する空気流、特に車両の床下と地面の間に生じる空気流を制御する床下空気流制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に、車両の挙動安定を向上させるために車体周りにおける走行中の空気の流れを整流にすることで得られる外力、例えば抗力や揚力を利用した空気抵抗低減部材が車体各所に取り付けられている。従来の空気抵抗低減部材としては、例えば、車体前部のバンパーの下端に設けられるフロントアンダスポイラや、車体後部に設けられるリアアンダスポイラ等がある。
【0003】
また、車両が時速80km以上の高速で走行する際には、車体の周りに発生する空気抵抗は、摩擦抵抗が比較的少なく、圧力抗力が90%以上占めている。そのため、車体の外装には、各部形状や部品によって圧力をさげるための工夫がされている。例えば、フロントスポイラや車体下面にアンダーパネル等の床下空気流制御装置を設けて車両と路面との隙間を少なくすることが行われている。
【0004】
このように、車両と路面との隙間を小さくすると、地表面と車両の床下間には、負圧域が生じる。その結果、この地表面と車両の床下間に生じる負圧域によって、車両に対する地表面への押し付け効果を高めることができ、車両の挙動安定を向上させることができる。
【0005】
なお、特許文献1や特許文献2では、車体の前部下面に設けたアンダーパネルをリンク機構やアクチュエータからなる機械式の可動機構によって動かすことで、車両の床下部分を流れる空気を制御する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平6−255542号公報
【特許文献2】特開昭62−251281号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1や特許文献2に開示されている技術では、アンダーパネルを可動させる可動機構が車体の前端下部、又は車体の床下前部(いわゆるアプローチアングルの近傍)に設けられている。このように、従来技術では、可動機構等の機械的構造物が最低地上高近傍と地面から近い場所で、且つ車体の先端付近に位置しているため、この可動機構やアンダーパネルが角度の急な坂道の入口又は出口などの路面や輪留め等の障害物と干渉し易かった。更に、干渉した際の外力によって、可動機構自体の破損や故障を招く確率が高い、という問題があった。
【0008】
また、走行中に可動機構が破損した場合、アンダーパネルが車体の下方に下がった状態で可動機構が故障するとアンダーパネルが路面と接触して破損したり、車両が走行不能になったりするという問題もあった。
【0009】
本発明の目的は、上記の問題点を考慮し、高速走行時の走行及び操縦安定性を高めるために、機械的な機構を用いずに車体に発生する空気流を制御することができる床下空気流制御装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決し、本発明の目的を達成するため、本発明の床下空気流制御装置は、車体の前部に通風口を有する車両に設けられる床下空気流制御装置である。そして、車体の前部下面に配設され、通風口より導入される走行風圧力によって前記車体の下面から下方に向けて変形可能な弾性を有するアンダーパネルと、アンダーパネルの弾性変形を所定の変化量で規制するストッパー部と、を備えている。
【0011】
また、本発明のもう一つの床下空気流制御装置は、車両における車体の前部下面に配設され、車体の下面から下方に向けて変形可能な弾性を有するアンダーパネルと、アンダーパネルの弾性変形を所定の変形量で規制するストッパー部と、を備えている。更に、アンダーパネルの上方に配設され、膨らむことによりアンダーパネルを弾性変形させるエアバッグと、エアバッグに空気を送るエアタンクと、車両の速度に応じてエアタンクを制御し、エアバッグに送る作動圧力を調整する制御部と、を備えている。
【発明の効果】
【0012】
本発明の床下空気流制御装置によれば、故障が生じ易いリンク機構やアクチュエータ等の機械式の可動機構を用いずに空気の力によって、アンダーパネルを車体の下面から下方に向けて弾性変形させている。その結果、走行時に生じる衝撃力によってアンダーパネルの可動機構の故障や破損を防止することができ、装置の安全性を高めることが可能である。更に、本発明の床下空気流制御装置は、アンダーパネルの制御機構の構造が極めて簡単な構造であるため、装置全体の重量を軽減することができると共に、部品点数の削減を図ることができるという利点もある。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の第1の実施の形態例に係る床下空気流制御装置を備えた車両を示す側面図である。
【図2】本発明の第1の実施の形態例に係る床下空気流制御装置を備えた車両を正面から見た斜視図である。
【図3】本発明の第1の実施の形態例に係る床下空気流制御装置を備えた車両の要部を示す断面図である。
【図4】本発明の第1の実施の形態例に係る床下空気流制御装置のアンダーパネルが変形した状態における車両の要部の断面図である。
【図5】本発明の第1の実施の形態例に係る床下空気流制御装置のアンダーパネルが変形した状態における車両の側面図である。
【図6】本発明の第1の実施の形態例に係る床下空気流制御装置のアンダーパネルが変形した状態における車両の正面図である。
【図7】本発明の第1の実施の形態例に係る床下空気流制御装置におけるアンダーパネルの変形量と通風口を通る空気の風速との関係を示すグラフである。
【図8】本発明の第2の実施の形態例に係る床下空気流制御装置を備えた車両を示す側面図である。
【図9】本発明の第2の実施の形態例に係る床下空気流制御装置を備えた車両の要部を示す断面図である。
【図10】本発明の第2の実施の形態例に係る床下空気流制御装置の要部を示す説明図である。
【図11】本発明の第2の実施の形態例に係る床下空気流制御装置の回路構成を示すブロック図である。
【図12】本発明の第2の実施の形態例に係る床下空気流制御装置のエアバッグが膨らんだ状態における車両の要部の断面図である。
【図13】本発明の第2の実施の形態例に係る床下空気流制御装置のエアバッグが膨らんだ状態における車両の側面図である。
【図14】本発明の第3の実施の形態例に係る床下空気流制御装置の変形機構を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の床下空気流制御装置の実施の形態例について、図1〜図14を参照して説明する。なお、各図において共通の部材には、同一の符号を付している。また、本発明は、以下の形態に限定されるものではない。
また、説明は以下の順序で行う。
1.第1の実施の形態例
1−1.床下空気流制御装置の構成例
1−2.床下空気流制御装置の動作
2.第2の実施の形態例
3.第3の実施の形態例
【0015】
<1.第1の実施の形態例>
1−1.床下空気流制御装置の構成例
まず、図1〜図3を参照して本発明の第1の実施の形態例(以下、「本例」という。)にかかる床下空気流制御装置の構成例について説明する。
図1は、本例の床下空気流制御装置を備えた車両を示す側面図、図2は、車両の要部を正面から見た斜視図である。また、図3は、車両の要部を示す断面図である。
【0016】
図1に示すように、本例の床下空気流制御装置を備えた車両である自動車1は、全体の外殻を形成するセダン形式の車体2と、車体2の骨格を成しシャシー等を支持するフレーム3と、車体2の前後左右の下部に取り付けた4個の車輪4とで構成されている。
【0017】
車体2は、前後中間部の左右両側面を構成する左右一対のドア6と、左右一対のフロントフェンダ7と、ボンネット8と、後部に設けたトランク9とを備えている。フロントフェンダ7は、両ドア6に隣接して車体2の前部左右両側面を構成している。このフロントフェンダ7の上部からボンネット8が連続し、車体2の前部上面を構成している。
【0018】
ボンネット8は、開閉自在に設けられており、ボンネット8を上側に開放した車体2の前部には、各種部品を区分けして内蔵する搭載空間11が構成されている。また、トランク9の上部には、空気抵抗低減部材であるリアテールゲートスポイラ10が取り付けられている。
【0019】
図2に示すように、車体2の前部には、通風口13を有するフロントカバー12が取り付けられている。また、図3に示すように、フロントカバー12の通風口13の後方には、ラジエータ14と、ACコンデンサ16がラジエータコアサポート17に支持された状態で搭載空間11に固定されている。そして、フロントカバー12の通風口13から、ラジエータ14及びACコンデンサ16に冷却風が導入される。
【0020】
更に、車体2の前部には、床下空気流制御装置20が設けられている。この床下空気流制御装置は、弾性を有するアンダーパネル21と、アンダーパネル21を車体2に変形可能に支持すると共にアンダーパネル21の変形を規制するストッパー部22と、走行風導入ガイド15とを有している。ストッパー部22は、アンダーパネル21を支持する規制板23と、アンダーパネル21の変形を規制する複数のストッパー片24とから構成されている。
【0021】
図3に示すように、規制板23は、アンダーパネル21とラジエータ14及びACコンデンサ16の間に配置されている。この規制板23は、略平板状に形成されており、複数の挿通孔23aが設けられている。そして、規制板23は、2つの取付ステー33,33(図2参照)に支持された状態で、車体2の前部に配置されている。図3に示すように、この規制板23には、固定ネジ31とバネ32を介してアンダーパネル21が弾性変形可能に取り付けられている。
【0022】
アンダーパネル21は、弾性を有する略平板状の部材として形成されており、通風口13の近傍である車体2の前部の下面に配置されている。このアンダーパネル21は、ストッパー部22を構成する規制板23に支持されて車体2に搭載されたラジエータ14及びACコンデンサ16の下方に配置されている。具体的には、アンダーパネル21における車体2の前方側の一端が、固定ネジ31を介して規制板23と共にフロントカバー12に固定されており、他端が規制板23にバネ32を介して固定されている。
【0023】
このアンダーパネル21の材質としては、例えば熱可塑性樹脂が挙げられるが、これに限定されるものではなく、その他各種の弾性を有する平板状の材料を用いることができる。
【0024】
また、アンダーパネル21には、ストッパー部22を構成する複数のストッパー片24が設けられている。複数のストッパー片24は、アンダーパネル21の一面から車体2の搭載空間11に向けて突出している。ストッパー片24は、棒状の軸部24aと、軸部24aの先端に設けられた略円形状の当接部24bとから構成されている。
【0025】
この複数のストッパー片24の軸部24aは、規制板23に設けられた挿通孔23aに上下方向に移動可能に挿通している。また、当接部24bの外径は、規制板23の挿通孔23aの直径よりも大きく設定されている。そして、この複数のストッパー片24の当接部24bが規制板23の挿通孔23aの周囲に当接することで、アンダーパネル21における下方への変形を所定量で規制している(図4参照)。
【0026】
なお、当接部24bは、通常は略円形状に形成されるが、この形状は必ずしも略円形状に限定されるものではなく、例えば四角形や六角形に形成してもよい。すなわち、当接部24bの形状は、規制板23の挿通孔23aの周囲に当接し、アンダーパネル21の変形を止めることができるものであれば種々に設定できるものである。
【0027】
複数のストッパー片24における軸部24aの長さは、ラジエータ14及びACコンデンサ16の近傍に配置されたストッパー片24が一番長く設定されており、ラジエータ14及びACコンデンサ16から離れるにつれて短くなるように設定されている。この複数のストッパー片24における軸部24aの長さによって、アンダーパネル21の最大変形時の形状が決まる。
【0028】
すなわち、複数のストッパー片24の長さを調整することで、アンダーパネル21の最大変形時の形状及び最大の変形量を任意に設定することができる。例えば、法律で定められている路面からの最低の高さや、車体2と路面との距離等に設定される。
【0029】
なお、複数のストッパー片24のうちラジエータコアサポート17の下方に配置される上部規制ストッパー片24Aは、他のストッパー片24よりもその長さが短く設定されている。そして、この上部規制ストッパー片24Aは、アンダーパネル21とラジエータコアサポート17との間に介在され、アンダーパネル21の上方への移動を制限している。
【0030】
また、アンダーパネル21の上方には、アーチ状に形成された走行風導入ガイド15が設けられている。この走行風導入ガイド15は、通風口13を通過した走行風をアンダーパネル21側へ導くものである。これにより、通風口13からの走行風を走行風導入ガイド15によって効率良くアンダーパネル21に導くことができる。
【0031】
1−2.床下空気流制御装置の動作
次に、図4〜図6を参照して本例の床下空気流制御装置の動作について説明する。
図4は、アンダーパネルが変形した状態を示す車両の要部の断面図である。図5は、アンダーパネルが変形した状態を示す車両の側面図、図6は、アンダーパネルが変形した状態を示す車両の正面図である。
【0032】
図4に示すように、自動車1が例えば時速80km以上の高速で走行すると、フロントカバー12の通風口13からラジエータ14と、ACコンデンサ16に向けて空気が流れ込む。そして、アンダーパネル21へ走行風をガイドする走行風導入ガイド15にも通風口13から空気が流れ込む。そのため、アンダーパネル21は、通風口13から導入される走行風の圧力によって、車体2の下方に押される。これにより、ストッパー片44が規制板43の挿通孔43aに沿って下方に下がると共に、アンダーパネル21は、その弾性力に抗して車体2の下方に向けて略円弧状に弾性変形する。
【0033】
このように、本例では、機械式な機構を用いずに、自動車1が走行する際に生じる通風口13を通過する空気、すなわち自動車1の走行風によってアンダーパネル21を変形させている。これにより、リンク機構やアクチュエータ等の機械式の可動機構を用いない極めて簡単な構成であるため、路面の凹凸の段差等によって生じる衝撃力によって故障や破損が起こりにくい床下空気流制御装置20を提供することが可能である。その結果、装置の安全性を高めることができると共にアクチュエータやギア等の可動機構の部品点数を削減することが可能である。
【0034】
また、図5に示すように、アンダーパネル21が車体2の下方に向けて弾性変形することで、アンダーパネル21と路面との隙間が狭まる。そして、アンダーパネル21と路面との間に負圧が発生し、アンダーパネル21が路面側に引っ張られる力が作用する。そのため、アンダーパネル21には、内側から通風口13から導入される走行風からの圧力によって押し下げる力と、路面との負圧によって路面側に引っ張られる力が作用する。これにより、アンダーパネル21を極めて容易に変形させることが可能である。
【0035】
更に、自動車1の速度が上がり、アンダーパネル21が車体2の下方に変形すると、ストッパー片24の当接部24bが規制板23の挿通孔23aの周囲に当接する(図4参照)。これにより、アンダーパネル21における下方への変形を所定の変形量で規制することができる。更に、この時のアンダーパネル21の形状を複数のストッパー片24の軸部24aの長さによって設定することが可能である。
【0036】
また、図5及び図6に示すように、アンダーパネル21が車体2の下方に向けて変形することで、アンダーパネル21と路面との間に流れる空気の流速が増加する。ベルヌーイの定理により、流速が増加することで、車体2の床下と路面との圧力が低下する。その結果、路面と車体2の床下間に負圧域が得られ、自動車1に対する路面への押し付け効果が高まり、自動車1の挙動安定性を高めることができる。
【0037】
また、自動車1の速度が遅くなると、通風口13から導入される走行風からの圧力が減少し、走行風によってアンダーパネル21を押す力が低下する。すると、アンダーパネル21の弾性力と、アンダーパネル21と規制板23とを接続するバネ32の弾性力によって、アンダーパネル21は車体2の上方に向けて変形し、図3に示す初期状態に戻る。
【0038】
このように、アンダーパネル21は、それ自身の弾性力によって初期状態に戻ることができる。その結果、従来の機械式の装置のように可動機構が故障した場合に、アンダーパネル21が常に車体2の下方に突出した状態のままとなるという不具合を解消される。
【0039】
次に、図7及び表1を参照して、自動車1の速度とアンダーパネル21の変形量の関係について説明する。
図7は、アンダーパネルの変形量と通風口を通る風速との関係を示すグラフである。また、表1は、自動車1の時速(km/h)、通風口13を通過する空気の風速(m/s)、アンダーパネル21に作用する動圧(kgf/m)及びアンダーパネル21の変形量(mm)を示す表である。
【0040】
【表1】

【0041】
表1に示すように、自動車1の速度が上昇すると、通風口13を通過する風速も上昇していることが分かる。また、風速の上昇に伴って、アンダーパネル21に作用する動圧も略比例して増加する。このアンダーパネル21に作用する動圧が風速に比例して増加することで、アンダーパネル21の変形量も風速に略比例して増加する。すなわち、アンダーパネル21は、自動車1の速度に比例して変化するので、極めて簡単な構成で、アンダーパネル21と路面との距離を変化させることができる。
【0042】
更に、自動車1の速度が100km/hを超えると、アンダーパネル21の変形量は、約70mm付近で停止していることが分かる。これは、アンダーパネル21の変形量が約70mmに達すると、ストッパー部22によってアンダーパネル21の変形が規制されるためである。そのため、自動車1の速度が100km/hを超えてもアンダーパネル21は、約70mm以上変形することはない。これにより、アンダーパネル21が車体2と路面との間隔よりも大きく変形して、アンダーパネル21と路面とが接触することを防止することができる。
【0043】
なお、通風口13を通過する風速、アンダーパネル21に作用する動圧及びアンダーパネル21の変形量は、通風口13の位置及び開口面積、通風口13の後方の内部空間S(図4参照)の大きさやアンダーパネル21の弾性係数によって種々に変化するものである。
【0044】
また、本例の床下空気流制御装置20によれば、車体2の外観デザインに関係なく、車体2の前部に通風口13を有する自動車1に備えることができる。
【0045】
<2.第2の実施の形態例>
次に、図8〜図11を参照して本発明の第2の実施の形態例にかかる床下空気流制御装置の構成例について説明する。
図8は、第2の実施の形態例にかかる床下空気流制御装置を備えた車両を示す側面図、図9は、車両の要部を示す断面図である。図10は、第2の実施の形態例にかかる床下空気流制御機構の要部を示す模式図、図11は、第2の実施の形態例にかかる床下空気流制御機構の回路構成を示すブロック図である。
【0046】
この第2の実施の形態例に係る床下空気流制御装置40と第1の実施の形態例に係る床下空気流制御装置20と異なるところは、アンダーパネルを変形させる変形機構である。ここでは、床下空気流制御装置20と共通する部分には同一の符号を付して重複した説明を省略する。
【0047】
図8に示すように、第2の実施の形態例に係る床下空気流制御装置40は、第1の実施の形態例に係る床下空気流制御装置20と同様に、自動車1における車体2の前部下面に配置されている。図9に示すように、床下空気流制御装置40は、アンダーパネル21と、アンダーパネルの弾性変形を所定の変形量で規制するストッパー部42と、アンダーパネル21を変形させる変形機構46(図10参照)とを有している。
【0048】
この第2の実施の形態例では、アンダーパネル21は、車体2の前方側の一端が、固定ネジ31を介してフロントカバー12に固定されており、他端が車体2の床板18に不図示のバネを介して固定されている。
【0049】
ストッパー部42は、車体2の床板18に固定された規制板43と、アンダーパネル21から車体2の搭載空間11に向けて突出する複数のストッパー片44とから構成されている。複数のストッパー片44は、後述する変形機構46のエアバッグ47を間に挟むようにして、アンダーパネル21における前側と後側に配置されている。
【0050】
図10Aに示すように、変形機構46は、アンダーパネル21を変形させるエアバッグ47と、エアタンク48と、コンプレッサ51と、制御部52と、制御ソレノイドバルブ53と、タンク圧力センサ54と、2つのライン圧力センサ56とを有している。
【0051】
エアバッグ47の一面には、エアバッグ47の膨らむ方向を規制する押え板49が取り付けられている。このエアバッグ47は、2つの配管58を介してエアバッグ47に空気を供給するエアタンク48に接続されている。2つの配管58には、エアバッグ47の空気の圧力を検出するライン圧力センサ56がそれぞれ設けられている。また、2つの配管58におけるエアタンク48側の一端には、制御ソレノイドバルブ53が設けられている。
【0052】
この制御ソレノイドバルブ53を開閉することで、エアタンク48からエアバッグ47へ空気を送ったり、エアバッグ47内に溜まった空気を抜いたりすることができる。エアタンク48には、エアタンク48内の圧力を検出するタンク圧力センサ54が設けられている。更に、エアタンク48は、配管59を介してエアタンク48に圧縮空気を送るコンプレッサ51に接続されている。
【0053】
図11に示すように、制御部52は、2つのライン圧力センサ56と、タンク圧力センサ54と、コンプレッサ51と、制御ソレノイドバルブ53に接続されている。そして、制御部52には、2つのライン圧力センサ56からエアバッグ47の圧力情報が入力されると共にタンク圧力センサ54からエアタンク48の圧力情報が入力される。また、制御部52は、車両ECU61と電気的に接続されている。そして、制御部52には、この車両ECU61に接続されている車速センサ62によって検出された自動車1の速度信号が入力される。
【0054】
このように、制御部52は、自動車1の速度信号、エアバッグ47及びエアタンク48の圧力情報に基づいて、コンプレッサ51及び制御ソレノイドバルブ53に制御信号を出力する。そして、コンプレッサ51は、制御部52からの制御信号に基づいて、制御ソレノイドバルブ53の開閉制御を行い、エアタンク48に圧縮空気を供給している。すなわち、この制御ソレノイドバルブ53の開閉制御によって、エアバッグ47に供給する空気量が調整されるようになっている。
【0055】
再び図9に戻って説明すると、エアバッグ47は、規制板43側に押え板49を接触させた状態でアンダーパネル21の上方に配置されている。つまり、エアバッグ47は、規制板43とアンダーパネル21の間に介在されている。また、エアタンク48は、車体2の前部に配置されている。なお、エアタンク48の配置する箇所は、車体2の前部に限定されるものではなく、車体2のトランク9や搭載空間11(図2参照)等に配置してもよい。
【0056】
その他の構成は、上述した第1の実施の形態例にかかる床下空気流制御装置20と同様であるため、それらの説明は省略する。このような構成を有する床下空気流制御装置40によっても、上述した第1の実施の形態例にかかる床下空気流制御装置20と同様の作用及び効果を得ることができる。
【0057】
なお、この第2の実施の形態例にかかる床下空気流制御装置40によれば、車体2の前部に通風口13を有していない自動車1にも搭載することができる。
【0058】
次に、図10B、図12及び図13を参照して第2の実施の形態例にかかる床下空気流制御装置40の動作について説明する。
図10Bは、エアバッグ47が膨らんだ状態を示す変形機構の模式図、図12は、エアバッグ47が膨らんだ状態の自動車1の要部を示す断面図、図13は、エアバッグ47が膨らんだ状態の自動車1の側面図である。
【0059】
まず、変形機構46を構成する制御部52は、車両ECU61から自動車1の速度信号と、タンク圧力センサ54及びライン圧力センサ56からエアバッグ47及びエアタンク48の圧力情報を取得する。次に、制御部52は、取得した速度信号及び圧力情報からエアバッグ47に供給する作動空気圧力を算出する。この算出した作動空気圧力に応じて制御部52は、制御ソレノイドバルブ53及びコンプレッサ51を制御する。この制御ソレノイドバルブ53及びコンプレッサ51から、エアバッグ47に空気が供給され、エアバック47に作動圧力が発生するする。これにより、図10Bに示すように、エアバッグ47が膨らむ。
【0060】
ここで、図12に示すように、エアバッグ47は、規制板43とアンダーパネル21の間に介在されている。更に、エアバッグ47における規制板43側にはエアバッグ47の膨らむ方向を規制する押え板49が設けられている。そのため、エアバッグ47は、アンダーパネル21側へ膨らむ。これにより、エアバッグ47によって下方に押されることにより、アンダーパネル21は、その弾性力に抗して車体2の下方に向けて略円弧状に弾性変形する。その結果、図13に示すように、アンダーパネル21が車体2の下方に向けて変形することで、路面と自動車1の床下間に負圧域が得られる。
【0061】
また、自動車1の速度が遅くなると、制御部52は、制御ソレノイドバルブ53を開放させてエアバッグ47の空気圧を低下させる。すると、エアバッグ47の空気圧がアンダーパネル21の弾性力よりも小さくなり、エアバッグ47は、アンダーパネル21に押されて内部に溜まった空気が抜けてしぼむ。その結果、アンダーパネル21は、図9に示す初期状態に戻るように車体2の上方に向けて変形する。
【0062】
なお、本例では、エアバッグ47の空気圧とアンダーパネル21の弾性係数によって、アンダーパネル21の変形量を推定し、エアバッグ47に供給する作動空気圧力を調整した例を説明したが、これに限定されるものではない。例えば、ストッパー片44の軸部44aと規制板43の挿通孔43aに位置センサを設け、このストッパー片44の軸部44aの移動量によってアンダーパネル21の変形量を推定するようにしてもよい。これにより、エアバッグ47に供給する空気量及び/又はエアバッグ47の空気圧を調整することもできる。
【0063】
<3.第3の実施の形態例>
次に、図14を参照して本発明の第3の実施の形態例にかかる床下空気流制御装置について説明する。
図14は、第3の実施の形態例にかかる床下空気流制御装置の変形機構を示すブロック図である。
【0064】
この第3の実施の形態例にかかる床下空気流制御装置70と第2の実施の形態例にかかる床下空気流制御装置40と異なるところは、変形機構の構成である。そのため、ここでは、変形機構について説明する。なお、床下空気流制御装置70の変形機構以外の構成は、第2の実施の形態例にかかる床下空気流制御装置40と同じであるので、重複した説明は省略する。
【0065】
図14に示すように、第3の実施の形態例にかかる床下空気流制御装置70の変形機構76は、エアタンク78と、エアバッグ77と、コンプレッサ81と、ソレノイドバルブ83とを有している。エアタンク78とソレノイドバルブ83は、配管88によって接続されている。更に、エアタンク78と、ソレノイドバルブ83との間には、減圧バルブ91と、リリーフバルブ92が設けられている。そして、減圧バルブ91とリリーフバルブ92には、それぞれ圧力センサ93,93が接続されている。
【0066】
減圧バルブ91は、一次側であるエアタンク78側から通過する空気を弁体の開度を変化させることによって二次側であるエアバッグ77へ減圧するバルブであり、エアバッグ77へ作動空気圧力供給するためのものである。
【0067】
また、リリーフバルブ92は、所定の圧力(設定圧)になると自動的に弁が開き流体を放出し、圧力が降下すれば弁が閉じる機能を有している。そのため、このリリーフバルブ92によって、所定値以上の圧力が加わった際に、その圧力を下げることができ、エアバッグ77が破裂したり、ソレノイドバルブ83が故障することを防ぐことができる。更に、このリリーフバルブ92と圧力センサ93によって、エアバック77の減圧時における作動空気圧力の速度をコントロールしている。その結果、車両の速度が遅くなった際に、エアバッグ77の圧力を速やかに減圧することができる。
【0068】
また、ソレノイドバルブ83とエアバッグ77は、2つの配管89,89で接続されている。そして、この2つの配管89,89には、エアバッグ77に供給する空気の流量を一定に保つ2つの流量制御バルブ94,94と、エアバッグ77の圧力を検出する2つの圧力センサ86,86が設けられている。
【0069】
その他の構成は、上述した第1の実施の形態例にかかる床下空気流制御装置20と同様であるため、それらの説明は省略する。このような構成を有する床下空気流制御装置70によっても、上述した第1の実施の形態例にかかる床下空気流制御装置20と同様の作用及び効果を得ることができる。
【0070】
なお、本発明は上述しかつ図面に示した実施の形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載した発明の要旨を逸脱しない範囲内で種々の変形実施が可能である。例えば、第2の実施の形態例にかかる床下空気流制御装置40及び第3の実施の形態例にかかる床下空気流制御装置70において、エアバッグ及び/又はエアタンクを複数設けてもよい。
【符号の説明】
【0071】
1…自動車(車両)、 2…車体、 11…搭載空間、 12…フロントカバー、 13…通風口、 15…走行風導入ガイド、 18…床板、 20,50,70…床下空気流制御装置、 21…アンダーパネル、 22…ストッパー部、 23,43…規制板、 24,44…ストッパー片、 24A…上部規制ストッパー片、 24a…軸部、 24b…当接部、 31…固定ネジ、 32…バネ、 33…取付ステー、 46…変形機構、 47…エアバッグ、 48…エアタンク、 49…押え板、 51…コンプレッサ、 52…制御部、 53…制御ソレノイドバルブ、 54…タンク圧力センサ、 56…ライン圧力センサ、 58,59…配管、 61…車両ECU、 62…車速センサ、 S…内部空間

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体の前部に通風口を有する車両に設けられる床下空気流制御装置であって、
前記車体の前部下面に配設され、前記通風口から導入された走行風圧力によって前記車体の下面から下方に向けて変形可能な弾性を有するアンダーパネルと、
前記アンダーパネルの弾性変形を所定の変化量で規制するストッパー部と、
を備えたことを特徴とする床下空気流制御装置。
【請求項2】
前記アンダーパネルに作用する前記走行風圧力は、前記車両の速度に応じて変化する
ことを特徴とする請求項1に記載の床下空気流制御装置。
【請求項3】
前記通風口は、前記車両に搭載される冷却装置用の冷却風導入口を兼ねる
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の床下空気流制御装置。
【請求項4】
車両における車体の前部下面に配設され、前記車体の下面から下方に向けて変形可能な弾性を有するアンダーパネルと、
前記アンダーパネルの弾性変形を所定の変形量で規制するストッパー部と、
前記アンダーパネルの上方に配設され、膨らむことにより前記アンダーパネルを弾性変形させるエアバッグと、
前記エアバッグに空気を送るエアタンクと、
前記車両の速度に応じて前記エアタンクを制御し、前記エアバッグに送る空気作動圧力を調整する制御部と、
を備えたことを特徴とする床下空気流制御装置。
【請求項5】
前記ストッパー部は、
前記アンダーパネルから上方に向けて突出する複数のストッパー片と、
前記複数のストッパー片における下方への移動を制限する規制板と、からなる
ことを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の床下空気流制御装置。
【請求項6】
前記アンダーパネルは、熱可塑性樹脂からなる
ことを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の床下空気流制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2011−37413(P2011−37413A)
【公開日】平成23年2月24日(2011.2.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−189413(P2009−189413)
【出願日】平成21年8月18日(2009.8.18)
【出願人】(000151276)株式会社東京アールアンドデー (34)
【Fターム(参考)】