説明

床板支持具

【課題】長尺としても強度低下や反りを生ずることがなく、かつ床下空間の配線・配管作業の支障とならず、さらに製造コストおよび取り扱い性の良好な床板支持具を目的とする。
【解決手段】床板支持具10は、円筒部23と、円筒部23より細く、中実な長尺部24とが連続して形成された脚部材21と、円筒部23に、外嵌して螺着し、床板1の下面を支持する受け部材11とを備えることを特徴とする。床板支持具10は、長尺としても強度低下や反りを生ずることがなく、かつ床下空間の配線・配管作業の支障とならず、さらに製造コストおよび取り扱い性が良好である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建築物の床の構築に用いられる床板支持具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、鉄筋コンクリートマンションなどの建築物では、スラブと床板との間に床板支持具を介して一定の空間を設け、二重床とすることで、該空間を、電気や通信用の配線を通す空間、床下冷暖房設備用の空間、給排水管やガス管を配管するための空間などとして利用している。
【0003】
前記床板支持具は、通常、床板の下面に接する受け部材と、該受け部材に螺着され、前記空間の高さ調整を行う脚部材とを備えている(特許文献1、特許文献2参照)。該脚部材は、軽量化による取り扱い性向上の観点から、脚部材の上端から下端付近までを中空とした、円筒形状とされている。
このような脚部材を製造する場合、200mm程度までの短い脚部材は、一般的な抜き型に樹脂を流し込み、スライド成形することで製造可能であるが、200mm程度を超える長さの脚部材は、成形性の観点から、中空を形成するためのコアシリンダを成形金型に固定し、該成形金型を用いた射出成形により製造される。
【0004】
ところで、二重床が構築されるスラブの表面は、一定の平面であるとは限らず、必要に応じて、種々の段差が形成されている。特に、水回り設備の設置箇所に位置するスラブは、他のスラブより掘り下げて形成されていることが多い。このような段差を有したスラブ上に二重床を構築するには、他のスラブより掘り下げて形成されたスラブに対して、通常より長尺の床板支持具を用いる必要がある。長尺の床板支持具を製造するには、長尺の床板支持具が得られるよう加工された成形金型に、長尺のコアシリンダを固定して射出成形することになる。
【特許文献1】実公平3−34440号公報
【特許文献2】登録実用新案第2533405号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、長尺のコアシリンダは射出成形時の圧力により曲がりやすく、その結果、得られる脚部材の肉厚に偏りが生じ、該脚部材の強度低下や反りを招くという問題があった。コアシリンダを太くすれば、前記圧力によるコアシリンダの曲がりを低減できるものの、得られる床板支持具の外径も太くならざるを得ない。外径が太い床板支持具は、床下空間での配線・配管作業などの障害となり、これらの作業に支障をきたす恐れがある。また、外径が太い床板支持具は、製造時に多くの樹脂量が必要なために製造コストが増大し、かつ質量が増加するために取り扱い性が悪くなる。
本発明は、前記事情に鑑みてなされたものであって、長尺としても強度低下や反りを生ずることがなく、かつ床下空間の配線・配管作業の支障とならず、さらに製造コストおよび取り扱い性の良好な床板支持具を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記の課題を達成するために、本発明は以下の構成を採用した。
(1)円筒部と、該円筒部より細く、中実な長尺部とが連続して形成された脚部材と、
前記円筒部に、外嵌して螺着し、床板の下面を支持する受け部材と
を備えることを特徴とする床板支持具。
(2)前記長尺部に、該長尺部の長手方向に沿ってリブが形成された請求項1に記載の床板支持具。
【発明の効果】
【0007】
本発明の床板支持具は、長尺としても強度低下や反りを生ずることがなく、かつ床下空間の配線・配管作業の支障とならず、さらに製造コストおよび取り扱い性が良好である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、図面を参照し、この発明の実施の形態について説明する。
図1に示すように、本発明の一実施形態例の床板支持具10は、床板1とスラブ2との間に設置して、二重床を構築するために用いられ、床板1の下面を支持する受け部材11と、床板1とスラブ2との間に所定の高さを確保するための脚部材21とを主体に構成されている。また、図2に示すように、脚部材21は、円筒部23と、円筒部23より細く、中実な(中身の詰まった)長尺部24とが連続して形成され、受け部材11は、脚部材21の円筒部23に、外嵌して螺着される。ここで、本発明では、説明の便宜上、図1、2のように床板支持具10を設置したときの各構成要素について、床板1側を上側、スラブ2側を下側とする。
【0009】
受け部材11は、図3、4、5に示すように、中空の円筒形状をしており、その内周に脚部材21の円筒部23に螺着するための雌ネジ溝12が形成されている。受け部材11の上側には、床板1と平行に接する床板固定部13が周設されている。床板固定部13より上側には、環状の突出部14が形成されている。床板固定部13の下側には、受け部材11を補強する補強梁16が複数形成され、これら補強梁16は、受け部材11の下端まで伸びている。
【0010】
床板固定部13は、図1、2に示すように、その上面が床板1の下面に当接されることで、床板1を安定して支えることができるように設けられている。
突出部14は、図2に示すように、床板支持具10を床板1とスラブ2との間に設置する際、下層床板1aに開けられた床板支持具固定孔3に挿入され、受け部材11を下層床板1aの所定位置に固定できるよう設けられている。
【0011】
このような構成を有した受け部材11は、射出成形などにより製造される。受け部材11の製造に用いられる樹脂としては、強度などの観点からナイロン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ABSなどが挙げられ、中でも好ましくはナイロン、ポリプロピレンが用いられる。また、受け部材11の製造に用いられる樹脂に、ガラス繊維などの補強材を混入することもできる。
【0012】
脚部材21には、図2、6に示すように、円筒部23と、円筒部23より細く、中実な長尺部24とが連続して形成されている。
円筒部23の外周には、受け部材11を螺着するための雄ネジ溝22が形成されている。
また、円筒部23に形成された中空部27には、図6、7に示すように、脚部材21の長手方向に沿って突条26a、突条26bが複数形成されている。
【0013】
中空部27は、二重床構築の施工時に、脚部材21を回転させ、受け部材11の高さ調整を行うための回転工具(不図示)を挿入するために設けられている。図6に示す中空部27の深さDは中空部27の直径にもよるが、おおむね200mm以下が好ましい。中空部27の深さDが200mmを超えると、中空部27を形成するため射出成形時に用いられるコアシリンダが、射出成形時の圧力により曲がりやすくなる可能性がある。
【0014】
突条26a、26bは、前記回転工具を中空部27に挿入して脚部材21を回転させる際、前記回転工具を脚部材21に係合させるために設けられている。前記回転工具により、脚部材21を回転させることで、受け部材11は上下方向に移動し、スラブ2の表面からの受け部材11の高さを調整できる。これにより、床板1とスラブ2との間に設けられる空間を所定の高さに調整することができる。
【0015】
長尺部24には、図6、8に示すように、長尺部24の長手方向に沿ってリブ28が複数形成されている。
リブ28は、長尺部24を極力細くし、かつ強度を高めるために形成されている。リブ28を形成することで、長尺部24をより細くしつつ、強度を維持でき、製造コストおよび取り扱い性をより向上できる。
リブ28は、図6、8に示すように、円筒部28の外径Cからはみ出ないように設けられる。リブ28が円筒部28の外径からはみ出ると、強度的に意味をなさないばかりか、床下空間への配線や配管や床下設備の作業に支障をきたす恐れがある。リブ28の厚みFは特に限定されないが、強度と軽量化の観点から、好ましくは2〜3mmである。この実施形態例では、リブ28の本数を4本としたが、これに限定されず、リブ28の本数は適宜決定される。
【0016】
また、この実施形態例では、図2、6に示すように、長尺部24の下側に、台座受け部25が形成され、台座受け部25に、スラブ2に面する側に中空部29が形成されている。
中空部29には、図1、2の実施形態例に示すように、弾性体からなる台座30が装着されており、この床板支持具10は、台座30を介してスラブ2に接する。これにより、床板上で生じた振動は台座30で減衰され、スラブ2への振動の伝播を低減でき、以って階下への防振効果を得ることができる。なお、前記弾性体の材質としては、天然ゴム、スチレンブタジエンゴム、クロロプレンゴムなどのゴム系材料が挙げられる。
【0017】
このような構成を有した脚部材21は、樹脂の射出成形により一体成形される。
射出成形に用いられる樹脂としては、例えばナイロン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレートなどが挙げられ、中でも強度と成形性、軽量化の観点から、ナイロンが好ましい。また、前記樹脂には、ガラス繊維や炭素繊維などの補強材を混合して、強度の強化を図ってもよい。
なお、脚部材21の長さとしては特に限定されないが、おおむね200mm〜600mmの範囲で製造される。
【0018】
本発明においては、長尺部24の長さを変更することで、脚部材21を所望の長さとすることができる。これにより、図6に示すように、中空部27の長さDは、脚部材21の長さ変更に左右されることなく、回転工具の係合に必要な長さとすることができる。したがって、脚部材21を射出成形する際には、成形金型に固定されるコアシリンダを、中空部27を形成する長さとすればよく、コアシリンダの長さを極力短くすることができる。よって、本発明の床板支持具は、射出成形時の圧力によるコアシリンダの変形が生じにくく、長尺の床板支持具においても強度低下や反りを生ずることがない。
また、本発明では、長尺部24を円筒部23の外径より細くすることで、床下空間の配線・配管作業の支障とならず、さらに製造時に使用する樹脂量の増加が抑制されるため、製造コストを良好とすることができ、かつ軽量化の維持によって取り扱い性を良好とすることができる。
【0019】
長尺部24は、必要な強度を保った上で、極力細くするのが好ましい。これにより、製造時に使用する樹脂量をさらに抑制でき、製造コストをさらに良好とすることができる。また、樹脂量の抑制は軽量化につながるので、取り扱い性もさらに良好となる。なお、図6、8に示すように、長尺部24の直径Eは、円筒部23の外径Cより細くされていれば特に制限は無いが、強度と軽量化の観点から、好ましくは10mm〜40mmであり、より好ましくは15mm〜25mmである。
【0020】
以下、本発明の床板支持具を用いた二重床の構築の施工手順について、図1、2を参照しながら説明する。
まず、二重床の施工に際しては、図1、2に示すように、脚部材21の円筒部23に、受け部材11を外嵌して螺着しておく。次いで、受け部材11の上方に形成された突出部14を、下層床板1aに開けられた床板支持具固定孔3に挿入して、床板固定部13の上面を下層床板1aの下面に当接させるとともに、スラブ2の所定位置に台座30を接地する。なお、下層床板1aは床板1の基礎部分となる部材であり、通常、パーティクルボードなどが用いられる。また、図1において、下層床板1aは紙面垂直方向に延びている。また、実際の施工においては、下層床板1aに対して、単数または複数の床板支持具10が配置される。
【0021】
次いで、下層床板1aに設けられた床板支持具固定孔3から、中空部27内に回転工具(不図示)を挿入し、該回転工具の先端を中空部27内の突条26a、突条26bに係合させる。そして、回転工具を用いて、脚部材21を回転させることにより、受け部材11を所定の高さにまで移動させ、スラブ2と下層床板1aとの間の空間の高さを調整し、下層床板1aが均一に水平となるようにする。
ここで、回転工具とは、脚部材21を回転させる床板支持具10の専用工具であり、把手と、把手に取り付けられた軸棒と、該軸棒に取り付けられ、突条26a、突条26bに係合される形状の先端部品とを備えた工具である。
【0022】
次いで、図1に示すように、下層床板1aの上に、パーティクルボードなどからなる中層床板1bを重ね、皿ネジなどのネジ5を用い、下層床板1aと中層床板1bを固定する。
最後に、仕上げとなるフローリング材などの上層床板1cを中層床板1b上に貼り付けることで、床板1とスラブ2との間に空間を有した二重床が構築される。
【0023】
本発明の床板支持具は、長尺としても強度低下や反りを生ずることがないため、通常のスラブへの二重床の構築はもとより、水回り周辺への二重床の構築など、スラブが他の箇所より低くなっている箇所に、特に好適に用いることができる。さらに本発明の床板支持具は、脚部材を太くせずに長尺化できるので、床下空間の配線・配管作業の支障とならず、製造コストおよび取り扱い性も良好である。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の一実施形態例である床板支持具を、床板とスラブとの間に介して、二重床を構築した状態を示す模式図である。
【図2】図1のY−Y断面図である。
【図3】本発明の一実施形態例である床板支持具の受け部材を側面から眺めた部分断面図である。
【図4】本発明の一実施形態例である床板支持具の受け部材の下面図である。
【図5】本発明の一実施形態例である床板支持具の受け部材の上面図である。
【図6】本発明の一実施形態例である床板支持具の脚部材を側面から眺めた部分断面図である。
【図7】図6のA−A断面図である。
【図8】図6のB−B断面図である。
【符号の説明】
【0025】
1 床板
2 スラブ
10 床板支持具
11 受け部材
21 脚部材
27、29 中空部
23 円筒部
24 長尺部
25 台座受け部
28 リブ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
円筒部と、該円筒部より細く、中実な長尺部とが連続して形成された脚部材と、
前記円筒部に、外嵌して螺着し、床板の下面を支持する受け部材と
を備えることを特徴とする床板支持具。
【請求項2】
前記長尺部に、該長尺部の長手方向に沿ってリブが形成された請求項1に記載の床板支持具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2009−155970(P2009−155970A)
【公開日】平成21年7月16日(2009.7.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−337221(P2007−337221)
【出願日】平成19年12月27日(2007.12.27)
【出願人】(000010065)フクビ化学工業株式会社 (150)
【Fターム(参考)】