説明

床構造体

【課題】 本発明の目的は、耐据え切り性、耐加重変形性に優れた、倉庫、駐車場等の床構造体にある。
【解決手段】 上から(A)表面層、(B)繊維強化熱硬化性樹脂硬化物層、(C)ビニルエステル樹脂(C-1)、空乾性ビニルエステル樹脂(C-2)及び重合性不飽和単量体(C-3)を含む不飽和樹脂組成物(c1)であって、前記組成物(c1)を硬化物とした際のJISK6301での引張り伸び率が30%以上である不飽和樹脂組成物(c1)と珪砂(c2)とを含む硬化物層、(D)基体からなる床構造体であって、硬化物層(C)の体積のうち、珪砂(c2)が25〜80体積%で、前記硬化物層(C)が荷重時変形量0.3mm以下である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、床構造体に関する。さらに詳細には、本発明は、耐据え切り性、耐加重変形性に優れた、倉庫、駐車場等の床構造体に関する。
【背景技術】
【0002】
土木建築物、駐車場等の床構造は、上から表面舗装層(A)、繊維強化熱硬化性樹脂層(B)、繊維強化熱硬化性樹脂層用接着剤層(C)、JISK6301での引張り伸び率が30%以上の高分子組成物層(D)(具体的には、JISA6021の屋根用防水用塗膜材であるウレタンゴム系1類及び2類、アクリルゴム系、クロロプレンゴム系、アクリル樹脂系、ゴムアスファルト系塗膜材)、基体(E)から構成するものが知られている。(特許文献1)
【0003】
しかしながら、こうした床構造は、フォークリフト、大型自動車が動く前にハンドルを切るとその車加重により床面が変形、或いは、床面に亀裂が入るといった問題が生じていた。
【0004】
【特許文献1】特開05−33309号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、フォークリフト、大型自動車が動く前にハンドルを切っても、その車加重により床面が変形、或いは、床面に亀裂が入るといったことのない床構造体にあり、耐据え切り性、耐加重変形性に優れた、土木建築物、駐車場等の床構造体にある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、床構成をどのようにすれば本願の目的が達成される床構造体となるかについて、鋭意研究の結果、本発明を完成するに至った。
即ち、本発明は、上から
(A)表面層、
(B)繊維強化熱硬化性樹脂硬化物層、
(C)ビニルエステル樹脂(C-1)、空乾性ビニルエステル樹脂(C-2)及び重合性不飽和単量体(C-3)を含む不飽和樹脂組成物(c1)であって、前記組成物を硬化物とした際のJISK6301での引張り伸び率が30%以上である不飽和樹脂組成物(c1)と珪砂(c2)とを含む硬化物層、
(D)基体からなる床構造体であって、
硬化物層(C)の体積のうち、珪砂(c2)が25〜80体積%で、前記硬化物層(C)が荷重時変形量0.3mm以下であることを特徴とする床構造体を提供するものである。
【発明の効果】
【0007】
本発明は、特定の硬化物層(C)を基体(D)と硬化物層(B)との間に設けることにより、フォークリフト、大型自動車が動く前にハンドルを切ったり、コーナー部を走行しても、その加重により床面が変形、或いは、床面に亀裂が入るといったことのない床構造体、即ち、耐据え切り性、耐加重変形性に優れた、土木建築物及び駐車場等の床構造体を得ることができる。また、硬化物層(C)が不飽和樹脂であるので、繊維強化熱硬化性樹脂硬化物層(B)を接着剤層を介することなく設けることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
本発明に用いる基本(D)とは、例えば、セメントコンクリート、アスファルトコンクリート、JIS5403(石綿スレート)、ALC板、PC板、FRP、プラスチック、木質物、金属などの単独あるいは組み合わせで構成されたもので、その形状はいずれのものでもよく、構造物の表面であれば球面、曲面、延長面、平面、斜面等いずれでも良い。通常、セメントコンクリート、アスファルトコンクリートの平面、斜面である。コンクリート、金属等の堅固な基体には、公知の下地処理、プライマー剤の塗布処理を行うのが好ましい。
【0009】
本発明に用いる硬化物層(C)とは、ビニルエステル樹脂(C-1)、空乾性ビニルエステル樹脂(C-2)及び重合性不飽和単量体(C-3)を含む不飽和樹脂組成物を硬化剤で硬化したものであって、前記組成物を硬化物とした際のJISK6301での引張り伸び率が30%以上である不飽和樹脂組成物(c1)と珪砂(c2)とを含むもので、硬化物層(C)の体積のうち、珪砂(c2)が25〜80体積%で、前記硬化物層(C)が荷重時変形量0.3mm以下のものである。硬化物層(C)の体積のうち珪砂(c2)占める体積%は、25〜80体積%であるが、この範囲から外れると、荷重変形量が増えて耐据え切り性が悪くなる。好ましくは35〜70体積%である。硬化物層(C)の厚みは、1〜10mmが好ましい。本発明では前記不飽和樹脂組成物(c1)を硬化物とした際のJISK6301での引張り伸び率が30%以上であるが、好ましくは100〜260%である。
【0010】
前記荷重変形量とは、基体(セメントコンクリート板、アスファルト板)に不飽和樹脂組成物を厚み1.7mm、3.4mmの二水準で塗布硬化(硬化方法記載)し、室温で1週間の養生を行った試験板を用いて、スプリング式によるプロクター貫入試験器(株式会社 丸東製作所製、JIS A 6204に規定されている試験方法で利用される。)を用い、直径4mmのニードルに荷重10kgf(自重含む)をかけることによって荷重80kgf/cm2を与え、沈み込んだニードルの深さを荷重変形量とした。
【0011】
前記ビニルエステル樹脂(C-1)とは、例えば、不飽和ポリエステル(メタ)アクリレート樹脂、エポキシ(メタ)アクリレート樹脂、ウレタン(メタ)アクリレート樹脂およびこれらの混合物が挙げられる。
【0012】
不飽和ポリエステル(メタ)アクリレート樹脂とは、飽和二塩基酸と多価アルコールとの縮合反応で得られる飽和ポリエステルと(メタ)アクリレート化合物とから得られるものと、α、β−不飽和二塩基酸を含む二塩基酸と多価アルコールとの縮合で得られる不飽和ポリエステルと(メタ)アクリル化合物とから得られるものがある。
【0013】
前記飽和二塩基酸とは、例えば、フタル酸、無水フタル酸、ハロゲン化無水フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、テトラヒドロフタル酸、テトラヒドロ無水フタル酸、ヘキサヒドロフタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、ヘキサヒドロテレフタル酸、ヘキサヒドロイソフタル酸、コハク酸、マロン酸、グルタル酸、アジピン酸、セバシン酸、1,12−ドデカンジカルボン酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、2,7−ナフタレンジカルボン酸、2,3−ナフタレンジカルボン酸、2,3−ナフタレンジカルボン酸無水物、4,4‘−ビフェニルジカルボン酸、またはこれらのジアルキルエステル等を挙げることができる。
【0014】
前記多価アルコールとは、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、1,3−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、水素化ビスフェノールA、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール等を挙げることができる。
【0015】
前記不飽和二塩基酸としては、マレイン酸、無水マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、無水イタコン酸等を挙げることができる。
【0016】
前記(メタ)アクリル化合物としては、不飽和グリシジル化合物、アクリル酸またはメタクリル酸の如き各種の不飽和一塩基酸、及びそのグリシジルエステル類等である。これらのうち、グリシジル(メタ)アクリレートが好ましい。
【0017】
前記エポキシ(メタ)アクリレート樹脂とは、エポキシ樹脂と(メタ)アクリロリル基を有するカルボン酸とを反応させて得られるものであり、例えばビスフェノールタイプのエポキシ樹脂と(メタ)アクリロリル基を有するカルボン酸とを反応させたもの、ノボラックタイプのエポキシ樹脂と(メタ)アクリロリル基を有するカルボン酸とを反応させたものがある。
【0018】
前記ビスフェノールタイプのエポキシ樹脂としては、例えばエピクロルヒドリンとビスフェノールA若しくはビスフェノールFとの反応により得られる実質的に1分子中に2個以上のエポキシ基を有するグリシジルエーテル型のエポキシ樹脂、メチルエピクロルヒドリンとビスフェノールA若しくはビスフェノールFとの反応により得られるジメチルグリシジルエーテル型のエポキシ樹脂、あるいはビスフェノールAのアルキレンオキサイド付加物とエピクロルヒドリン若しくはメチルエピクロルヒドリンとから得られるエポキシ樹脂などが挙げられる。
【0019】
また、前記ノボラックタイプのエポキシ樹脂としては、例えばノボラック型フェノール樹脂又はノボラック型クレゾール樹脂とエピクロルヒドリン又はメチルエピクロルヒドリンとの反応により得られるエポキシ樹脂などが挙げられる。
【0020】
前記の不飽和一塩基酸としては、例えばアクリル酸、メタクリル酸、桂皮酸、クロトン酸、モノメチルマレート、モノブテンマレート、ソルビン酸またはモノ(2−エチルヘキシル)マレート等が挙げられ、これらを単独又は2種以上を併用して用いられる。
【0021】
本発明のウレタン(メタ)アクリレート樹脂とは、ビニルウレタン樹脂とも呼ばれ、ポリオール、イソシアネート、および水酸基含有(メタ)アクリレートとを原料とするウレタン(メタ)アクリレートのオリゴマーである。
【0022】
かかるウレタン(メタ)アクリレート樹脂は、ポリオールとイソシアネートとを反応させて、末端イソシアネート基含有プレポリマーを得、次いでこれに水酸基含有(メタ)アクリレートを反応させて得ることができる。
【0023】
前記ポリオールとしては、ポリエーテルポリオールおよびポリエステルポリオール等が挙げられる。かかるポリエーテルポリオールとしては、例えばポリオキシプロピレンジオール、ポリテトラメチレングリコールエーテル、ポリオキシエチレンジオール等が挙げられ、またポリエステルポリオールとしては、二塩基酸又はその酸無水物と多価アルコール類との重縮合物が挙げられる。
【0024】
かかる二塩基酸又はその酸無水物としては、例えばフタル酸、無水フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、ニトロフタル酸、テトラヒドロ無水フタル酸等が挙げられ、これらを単独または2種以上を併用して用いられる。
【0025】
前記多価アルコールとしては、例えばエチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、2−メチルプロパンー1,3−ジオール、ネオペンチルグリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール等が挙げられ、これらを単独または2種以上を併用して用いられる。
【0026】
次に前記イソシアネートとしては、例えば2,4−トリレンジイソシアネートおよびその異性体又は異性体の混合物、ジフェニルメタンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、水添キシレンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、トリジンジイソシアネート、ナフタリンジイソシアネート、トリフェニルメタントリイソシアネート等のポリイソシアネートが挙げられる。これらのポリイソシアネートのうち、ジイソシアネートが好ましい。これらを単独又は2種以上併用して用いることができる。
【0027】
また前記した水酸基含有(メタ)アクリレート類としては、例えばヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート等が挙げられ、これらを単独または2種以上を併用して用いられる。
【0028】
前記不飽和樹脂組成物(c1)には、樹脂成分として空乾性ビニルエステル樹脂(C-2)を併用する。その際、併用する量は、好ましくは50重量%以下である。不揮発分(樹脂固形分)は、好ましくは50〜80重量%である。これを外れると効果が十分ではない。
【0029】
前記空乾性ビニルエステル樹脂(C-2)とは、前記のビニルエステル樹脂(C-1)に空乾性成分を導入した重合体である。空乾性成分は、次の公知のものが挙げられる。
(1)グリコール成分に、-0-CH2-CH=CH2 で示されるアリルエーテル基を含有する化合物を併用する。
(2)酸成分に環状脂肪族不飽和多塩基酸及びその誘導体を含有する化合物を併用する。
(3)ジシクロペンタジエンを含有する化合物を併用する。
(4)乾性油、エポキシ反応性希釈剤を併用する。
【0030】
ビニルエステル樹脂(C-1)と空乾性ビニルエステル樹脂(C-2)の混合比率は、(C-1)/(C-2)の重量比率が、(C-1):(C-2)=99:1〜50:50(重量部)であることが好ましい。(C-2)成分が50より多い場合、樹脂硬化物の引っ張り強度、引き裂き強度、耐水性、耐湿熱性等の特性が悪くなる。
【0031】
前記重合性不飽和単量体(C-3)とは、主成分としてアクリル酸エステル、メタクリル酸エステル等のアクリル系不飽和単量体であり、樹脂と架橋可能なアクリル系不飽和単量体或いはアクリル系不飽和オリゴマー等が挙げられる。不飽和ポリエステル樹脂で用いられるスチレンモノマーは、臭気のため使用しないほうが良い。しかし、本発明の効果を損なわない程度併用することは可能である。スチレンモノマーの使用量は、樹脂(c1)固形分100重量部に対して好ましくは30重量部以下用いることができる。
【0032】
前記珪砂(c2)とは、主に石英粒からなる砂で、花崗岩(かこうがん)などの風化で生じるもので、珪石(ガラス・陶磁器・セメント・煉瓦(れんが)などの原料となる珪酸質の岩石の自然破砕物で、白珪石・軟珪石・炉材珪石などを粉砕した人工珪砂もある。本発明においても、天然、人工を問わない。粒径についても特に限定するものではないが、公知慣用の分級機、例えば株式会社マルイ製電磁式フルイ振とう機 [ハイシーブ]を用いて該珪砂200gを10分間にわたって連続で振動を与えて篩い分けた結果から得られる篩下の積算曲線において80%に該当する粒径が0.2〜2.0mmである珪砂が好ましい。
粒度範囲別に分けて流通している珪砂は、ある粒度範囲で規定されている珪砂単独での使用も、異なる粒径範囲を持つ複数珪砂での使用も可能である。珪砂の粒径が大きいと硬化物層(C)の配合から、塗装作業性が良くなる方向であり、骨材配合比率を増やすことが可能になるので変形量低減に有効だが材料の分離(骨材の沈降)が生じやすくなる。逆に粒径が小さいと材料の分離(骨材の沈降)は生じにくくなるが硬化物層(C)の配合の塗装作業性が低下する。これら相反する傾向を両立するには異なる粒径範囲を持つ複数珪砂の組み合わせがより好ましい。
【0033】
かかる珪砂は絶乾状態での使用が好ましい。含水率が高くなると不飽和樹脂組成物の硬化に阻害を与える傾向を示す。
【0034】
前記樹脂組成物は、硬化を速めるために硬化剤を含有することが好ましく、硬化剤としては有機過酸化物が挙げられる。有機過酸化物の具体例としては、ジアシルパーオキサイド系、パーオキシエステル系、ハイドロパーオキサイド系、ジアルキルパーオキサイド系、ケトンパーオキサイド系、パーオキシケタール系、アルキルパーエステル系、パーカーボネート系等公知のものが挙げられる。さらに、光硬化剤、紫外線硬化剤、熱硬化剤等の公知の硬化剤が単独或いは併用して使用できる。
【0035】
硬化剤の添加量は、好ましくはビニルエステル樹脂(C-1)と空乾性ビニルエステル樹脂(C-2)と重合性不飽和単量体(C-3)との合計量100重量部に対して、0.1〜6重量部である。上記硬化剤は、2種以上組み合わせて使用しても良い。
【0036】
前記不飽和樹脂組成物(c1)には、硬化促進剤を含有させることも好ましく、硬化促進剤としては、金属石鹸類、例えばナフテン酸コバルト、オクチル酸コバルト、オクチル酸亜鉛等が挙げられ、金属キレート化合物としては、バナジウムアセチルアセテート、コバルトアセチルアセテートがある。またアミン類にはアニリン、N,N−ジメチルアニリン等公知のものが挙げられる。
【0037】
硬化促進剤の添加量は、樹脂固形分100重量部に対して好ましくは0.1〜5重量部使用する。本発明においては、アミン系促進剤が好ましい。なお、硬化促進剤は、予め樹脂組成物に添加しておいても良いし、使用時に添加しても良い。
【0038】
前記不飽和樹脂組成物(c1)には、重合禁止剤を添加するのが好ましく、該重合禁止剤としては、トリハイドロベンゼン、ハイドロキノン、1,4−ナフトキノン、パラベンゾキノン、トルハイドロキノン、ハイドロキノンモノメチルエーテル、p−tert−ブチルカテコール、2,6−tert−ブチル−4−メチルフェノール等が挙げられる。その使用量は、組成物中10〜1000ppmが好ましい。
【0039】
前記不飽和樹脂組成物(c1)には、樹脂表面の空気硬化性を向上させるため、ワックスを添加することが好ましい。該ワックスとしては、パラフィンワックスかつ/または、極性ワックスを単独、あるいは、併用する事ができ、この極性ワックスとしては、その構造中に極性基並びに非極性基を合わせ持つもので、具体的には、エマノーン3199、3299(花王(株)製)、リケマールS−71−D、S−200(理研ビタミン(株)製)、NPS−8070、NPS−9125、OX−WEISSEN−8(日本精蝋(株)製)、ダイヤカルナPA−30(三菱化学製)といった化合物等が挙げられる。
【0040】
このワックスの添加量としては、ビニルエステル樹脂(C-1)と空乾性ビニルエステル樹脂(C-2)と重合性不飽和単量体(C-3)との合計量100重量部に対して0.1〜5重量部、好ましくは0.2〜2.0重量部使用する。
【0041】
前記の繊維強化熱硬化性樹脂硬化物層(B)は、前記のビニルエステル樹脂(C-1)と重合性不飽和単量体(C-3)とからなる不飽和樹脂組成物、或いは不飽和ポリエステルと重合性不飽和単量体とからなる不飽和樹脂組成物をマットあるいはシート状ガラス繊維強化材に含浸して硬化させて形成される。その厚みは好ましくは1〜3mmである。
【0042】
前記表面層(A)とは、不飽和樹脂系の常温硬化塗料や、常温硬化性塗料、常温乾燥性塗料等のアクリルウレタン、アクリルシリコン系塗料を塗布することにより形成されるものである。その厚みは、好ましくは0.1〜0.5mmである。
【0043】
本発明の床構造体は、土木建築物の基体(D)へ施工することで得られ、その方法としては、基体にプライマー材を塗布量0.02〜0.5kg/m塗布することが好ましく、より好ましくは0.05〜0.25kg/mである。塗布方法としては、刷毛、ローラなどで土木建築物基体に均一に塗布することが好ましい。この基体とは、既存の樹脂塗布床、コンクリート等であり、好ましくはセメントコンクリートである。基体は、床以外の、壁、柱等の土木建築物を構成するものであってもよい。
【0044】
本発明の床構造体は、前記不飽和樹脂組成物(c1)と珪砂(c2)とを施工現場で混合物とし、好ましくはプライマー層を介して基体上に1〜15kg/mレーキ等で塗布して硬化物層(C)を設け、ついでその上に、ガラス繊維強化材を敷設して前記不飽和樹脂組成物を塗布含浸硬化して繊維強化熱硬化性樹脂硬化物層(B)を形成する。さらに、この上に表面層(A)を施工することで得られる。
【実施例】
【0045】
以下に実施例を示すが、文中「部」、「%」等は断りのない限り「質量部」、「質量%」を意味するものである。
【0046】
(荷重変形量)
荷重変形量の測定方法は、基体(D)(セメントコンクリート板、アスファルト板)に組成物(c1)と珪砂(c2)の混合物を厚み1.7mm、3.4mmの二水準で塗布硬化(実施例に硬化方法記載)し硬化物層(C)を形成し、室温で1週間の養生を行った試験板を用いて、スプリング式によるプロクター貫入試験器(株式会社 丸東製作所製、JIS A 6204に規定されている試験方法で利用される。)を用いて直径4mmのニードルを用いて荷重10kgf(自重含む)をかけることによって荷重80kgf/cm2を与え、沈み込んだニードルの深さを変形量として求めた。
【0047】
(据え切り試験)
据切り試験は、基体(D)(セメントコンクリート板、アスファルト板)にプライマー、硬化物層(C)、繊維強化熱硬化性樹脂硬化物層(B)として不飽和ポリエステル樹脂/ガラスマット=72/28質量部を設けた構造体に、ウレタンゴムソリッドタイヤで荷重80kgf/cm2を構造体の上からかけながら、毎分50回転で据え切った結果を示した。
【0048】
合成例1<プライマーの調製>
温度計、撹拌機、不活性ガス導入口、及び還流冷却器を備えた四つ口フラスコにミリオネートMR−200(日本ポリウレタン (株)製:クルードMDI)300質量部、ポリプロピレングリコール(分子量700、水酸基当量350)210質量部、乾燥したトルエン474質量部、乾燥した酢酸エチル474質量部を仕込み80℃で5時間反応を行い湿気硬化型ウレタン プライマー溶液(p−1)を得た。溶液の性状は、外観:褐色液体、遊離NCO%:5.2(固形分あたり:14.8)、固形分:35%であった。
【0049】
合成例2<不飽和樹脂組成物(c1)>
温度計、撹拌機、不活性ガス導入口、及び還流冷却器を備えた四つ口フラスコに、三井ポリオールジオール700(三井化学(株)製)を283質量部、TDI(トリレンジイソシアネート)を144質量部仕込み、窒素雰囲気中80℃に保持し、5時間反応後理論NCO当量516を確認した。30℃まで冷却し、2−ヒドロキシエチルメタアクリレートを109質量部仕込み、80℃で4時間反応し、NCO%が0.1質量%以下になったところでメタクリル酸メチル358質量部、トルハイドロキノン0.08質量部、ターシャリブチルカテコール0.026質量部、ジメチルアニリン0.1質量部、6%ナフテン酸コバルトの0.4質量部を加え、不揮発分60.0%の樹脂組成物p−2を得た。
【0050】
合成例3<不飽和樹脂組成物(c1)>
温度計、撹拌機、不活性ガス導入口、及び還流冷却器を備えた2リットルの四つ口フラスコに、ネオペンチルグリコール208質量部、2−メチル−1,3−プロパンジオール270質量部、アジピン酸292質量部、ヘキサヒドロ無水フタル酸308質量部、無水マレイン酸196質量部、モノブチルチンオキサイド0.255質量部を仕込み、窒素雰囲気中205℃まで昇温し、4時間反応し、70%メタクリル酸メチル溶液が酸価60.8になったところで、110℃まで冷却した。これに、トルハイドロキノン0.178質量部、2−メチルイミダゾール0.295質量部、グリシジルメタアクリレート273質量部を加え、110℃で8時間反応後、メタクリル酸メチル871質量部、アクリル酸ブチル100質量部、トルハイドロキノン0.1質量部、ジメチルアニリン0.1質量部、6%ナフテン酸コバルトの0.4質量部を加え、不揮発分60.0%、酸価1.2の樹脂組成物p−3を得た。
【0051】
合成例4<不飽和樹脂組成物(c1)>
グリセリン1.33モル、アマニ油0.67モルを180〜200℃で4時間反応させアルコリシスを得た。次にジエチレングリコール4モル、ジプロピレングリコール4モル、フマル酸5.0 モル、無水フタル酸5.0モル、トルハイドロキノン0.1質量部、ジメチルアニリン0.1質量部、6%ナフテン酸コバルトの0.4質量部を公知の条件で加熱脱水縮合させて酸価25の樹脂組成物p−4を得た。
【0052】
合成例5<不飽和樹脂組成物(c1)>
温度計、攪拌機、不活性ガス導入口、及び還流冷却器を備えた四つ口フラスコにメチルテトラヒドロ無水フタル酸を332部仕込み、ネオアリルP−30(ペンタエリスリトールトリアリルエーテル、ダイソー社製)を512質量部加え発熱を抑制しながら150℃で3時間反応した。酸価が理論値とほぼ同じ67となった段階で120℃迄冷却し、メタクリル酸グリシジルを143質量部加え、空気/窒素=1/1吹き込み雰囲気下で5時間反応した。酸価が3以下となった時点で、ハイドロキノン0.067質量部、ターシャルブチルカテコール0.033質量部、メタクリル酸メチル658質量部、ジメチルアニリン0.1質量部、6%ナフテン酸コバルトの0.5質量部を加え、樹脂組成物p−5を得た。
【0053】
合成例6<比較用ウレタン樹脂>
ポリオキシプロピレントリオール(平均分子量;3000)の8.9質量部と、ポリオキシプロピレンジオール(平均分子量;3000)の80.0質量部と、トリレンジイソシアネート(2,4−異性体80質量%)の11.1質量部とを反応させ(NCO/OHモル比=2.05)、NCO基含有率2.7質量%のイソシアネート基末端ポリウレタンプレポリマーであるp−6−1を得た。
また、粗MBOCA(メチレンビスオルソアニリン2核体含有量60.13質量%)の8.2質量部に、フタル酸ジオクチルの28.5質量部と、炭酸カルシウムの60質量部と、顔料ペーストの3質量部と、オクチル酸(鉛含有量24質量%)の0.3質量部とを加えて混合し硬化剤組成物p−6−2を得た。
【0054】
合成例7<繊維強化熱硬化性樹脂(B)>
オルソフタル酸の1037部、無水マレイン酸の294質量部、ジエチレングリコールの318質量部およびトリエチレングリコールの1050質量部と、トルハイドロキノン0.135質量部とを、200〜220℃で加熱縮合せしめて、二重結合力価が838なる、不飽和ポリエステルを調製した。得られた樹脂の67質量部に対し、スチレン33質量部、6%ナフテン酸コバルトの0.4質量部と、DMA(ジメチルアニリン)の0.1質量部を加え、積層用樹脂p−7を得た。
【0055】
(配合例)
合成例2〜5で得られた樹脂組成物p−2〜5を次表に記す比率で混合し、c1−1〜c1−4を得た。
そして、主剤/硬化剤の割合を、質量比で1/1(NCO/NH2モル比=1.05)として混合して組成物p−6を得た。
【0056】
【表1】

【0057】
[実施例1]
コンクリート上にプライマーP−1を150g/m2で塗布・乾燥し、(C)層としてc1−1/瀬戸珪砂5号/ナイパーNS(過酸化ベンゾイル40%懸濁液;日本油脂株式会社製)=100/150/3を3mmの厚さで塗布、硬化させた。
その硬化塗膜の変形量は80kgf/cm2時に0.25mmだった。
その上に(B)層として、p−7/パーメックN(55%メチルエチルケトンパーオキシド溶液;日本油脂株式会社製)=100/1とガラスマット#450でGC(ガラス含有率)=28%となるように積層・硬化した。
さらに(A)表面層として「ディオバーHTP−550(ビニルエステル樹脂;大日本インキ化学工業株式会社製)/ナイパーNS=100/3」(a−1)を300g/m2塗布した。
7日間の養生を行った後、フォークリフトを想定した荷重80kgf/cm2でウレタンゴムソリッドタイヤを用いて据え切り試験を実施、100回転時点でも異常は確認できなかった。
【0058】
[実施例2]
アスファルトコンクリート上に(C)層としてc1−2/東北珪砂3号/東北珪砂5号/東北珪砂7号/カドックスCH−50L(過酸化ベンゾイル50%粉末;化薬アクゾ株式会社製)=100/100/100/100/2を5mmの厚さで塗布、硬化させた。
その硬化塗膜の変形量は80kgf/cm2時に0.01mmだった。
その上にp−7/パーメックN=100/1とガラスマット#450でGC(ガラス含有率)=28%となるように積層・硬化した。
さらに(A)表面層として「ディオバーHTP−550/ナイパーNS=100/3」(a−1)を300g/m2で塗布した。
7日間の養生を行った後、フォークリフトを想定した荷重80kgf/cm2でウレタンゴムソリッドタイヤを用いて据え切り試験を実施、100回転時点でも異常は確認できなかった。
【0059】
[実施例3]
セメントコンクリート上にプライマーP−1を150g/m2で塗布・乾燥し、(C)層としてc1−3/東北珪砂6号/カドックスCH−50L=100/200/2を3mmの厚さで塗布、硬化させた。
その硬化塗膜の変形量は80kgf/cm2時に0.02mmだった。
その上に(B)層として、p−7/パーメックN=100/1とガラスマット#450でGC(ガラス含有率)=28%となるように積層・硬化した。
さらに(A)表面層として「ディオバーHTP−550/ナイパーNS=100/3」(a−1)を300g/m2で塗布した。
7日間の養生を行った後、フォークリフトを想定した荷重80kgf/cm2でウレタンゴムソリッドタイヤを用いて据え切り試験を実施、100回転時点でも異常は確認できなかった。
【0060】
[実施例4]
セメントコンクリート上にプライマーP−1を150g/m2で塗布・乾燥し、(C)層としてc1−4/鹿島2号/東北珪砂7号/カドックスCH−50L=100/700/100/2を10mmの厚さで塗布、硬化させた。
その硬化塗膜の変形量は80kgf/cm2時に0.01mmだった。
その上に(B)層としてp−7/パーメックN=100/1とガラスマット#450でGC(ガラス含有率)=28%となるように積層・硬化した。
さらに(A)表面層として溶剤型アクリルウレタン系塗料を300g/m2で塗布した。
【0061】
7日間の養生を行った後、フォークリフトを想定した荷重80kgf/cm2でウレタンゴムソリッドタイヤを用いて据え切り試験を実施、表面層の剥離は認められるが100回転時点でも繊維強化熱硬化性樹脂硬化物層(B)から下の層では異常は確認できなかった。
【0062】
【表2】

【0063】
[比較例1]
コンクリート上にプライマーp1を150g/m2で塗布・乾燥し、(C)層としてc1−1/東北珪砂5号/カドックスCH−50L=100/50/2を下層に3mmの厚さで塗布、硬化させた。
その硬化塗膜の変形量は80kgf/cm2時に0.41mmだった。
その上に(B)層としてp−7/パーメックN=100/1とガラスマット#450でGC(ガラス含有率)=28%となるように積層・硬化した。
さらに(A)表面層として「ディオバーHTP−550/ナイパーNS=100/3」(a−1)を300g/m2で塗布した。
7日間の養生を行った後、フォークリフトを想定した荷重80kgf/cm2でウレタンゴムソリッドタイヤを用いて据え切り試験を実施、50回転時点でFRP層が剥離していた。
【0064】
[比較例2]
コンクリート上にプライマーp−1を150g/m2で塗布・乾燥し、(C)層としてウレタン樹脂であるc1−5を3mmの厚さで塗布、硬化させた。その硬化塗膜の変形量は80kgf/cm2時に1.35mmだった。
その上に(B)層としてp−7/パーメックN=100/1とガラスマット#450でGC(ガラス含有率)=28%となるように積層・硬化した。
さらに(A)表面層として「ディオバーHTP−550/ナイパーNS=100/3」(a−1)を300g/m2で塗布した。
7日間の養生を行った後、フォークリフトを想定した荷重80kgf/cm2でウレタンゴムソリッドタイヤを用いて据え切り試験を実施、50回転時点でFRP層及び防水材層が剥離、下地コンクリートが露出していた。
【0065】
[比較例3]
アスファルトコンクリート上に(B)層としてp−7/パーメックN=100/1とガラスマット#450でGC(ガラス含有率)=28%となるように積層・硬化した。
7日間の養生を行った後、フォークリフトを想定した荷重80kgf/cm2でウレタンゴムソリッドタイヤを用いて据え切り試験を実施、10回転時点で異常が生じた。界面のアスファルトがカットバックし、ペースト状態であった。
【0066】
【表3】

【0067】
比較例1は珪砂の体積分率が外れ、荷重変形量も外れるために、耐据え切り性に劣るものであり、比較例2はウレタン樹脂の引張り伸び率が大きすぎ、荷重変形量が大きいために、耐据え切り性に劣るものであり、比較例3は、硬化物層(C)が存在しないために耐据え切り性に劣るものであった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
上から(A)表面層、
(B)繊維強化熱硬化性樹脂硬化物層、
(C)ビニルエステル樹脂(C-1)、空乾性ビニルエステル樹脂(C-2)及び重合性不飽和単量体(C-3)を含む不飽和樹脂組成物(c1)であって、前記組成物(c1)を硬化物とした際のJISK6301での引張り伸び率が30%以上である不飽和樹脂組成物(c1)と珪砂(c2)とを含む硬化物層、
(D)基体からなる床構造体であって、
硬化物層(C)の体積のうち、珪砂(c2)が25〜80体積%で、前記硬化物層(C)が荷重時変形量0.3mm以下であることを特徴とする床構造体。
【請求項2】
前記繊維強化熱硬化性樹脂硬化物層(B)が、不飽和ポリエステル、重合性不飽和単量体からなる樹脂組成物をガラス繊維強化材に含浸、硬化したものである請求項1記載の床構造体。
【請求項3】
前記珪砂(c2)が、篩い振とう機での篩下の積算曲線において80%に該当するものが粒径0.2〜2mmのものである請求項1又は2記載の床構造体。
【請求項4】
前記不飽和樹脂組成物(c1)の硬化物のJISK6301の引張伸び率が、100〜260%である請求項1〜3のいずれか1項に記載の床構造体。

【公開番号】特開2009−179989(P2009−179989A)
【公開日】平成21年8月13日(2009.8.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−19101(P2008−19101)
【出願日】平成20年1月30日(2008.1.30)
【出願人】(000002886)DIC株式会社 (2,597)
【Fターム(参考)】