説明

床磨き剤組成物

【課題】 アクリレートを豊富に含む分散物において従来の可塑剤と同等に適していながら、毒性及び生態毒性の面で問題のない新しい物質の提供。
【解決手段】 本発明は、ポリカルボン酸とモノアルコールとのエステルまたはモノカルボン酸とポリオールとのエステルを含む、硬質表面、好ましくは床の磨き用及び処理用調合物に関する。特定の態様では、本発明の調合物は、更に、ポリマー性(メタ)アクリル酸(エステル)及び/またはスチレン−(メタ)アクリル酸(エステル)コポリマー、必要に応じて更に追加的にポリエチレンワックス分散物も含むことができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、2005年6月15日に出願された優先権主張の基礎となるドイツ特許出願第102005027603.2号に記載されたものである。この出願明細書の内容は全て本明細書に掲載されたものとする。
【背景技術】
【0002】
本発明は、ポリカルボン酸とモノアルコールとのエステル並びにモノカルボン酸とポリオールとのエステルを含む、硬質表面を磨くための調合物、特に床磨き剤組成物に関する。
【0003】
床磨き剤組成物は、一時的なまたはほぼ永続的な保護コートを問題の床に施すために、主に、ポリアクリレート及び/またはスチレン−(メタ)アクリル酸(エステル)コポリマーを分散物として並びにポリウレタン分散物を、ワックスエマルションとの混合物として使用する。この保護コートは、床の損傷を防ぐと共に、汚れの粒子及び/またはヒール痕によって生ずる線状の擦り傷の結果、汚れが刷り込まれるのを防ぎ、またそれと同時に床材に美感を与える。
【0004】
ポリマー分散物及びワックスエマルションを含む床磨き剤組成物の処方は典型的には乳化剤及び可塑剤を含む。
【0005】
これらの可塑剤の目的は、ポリマー分散物の最低造膜温度(MFT)を、それらから製造されるドライブライトエマルション(dry-bright emulsions)が、室温で施用後に凝集性の膜を形成する程度まで低下させることである。可塑剤の種類と量は、使用するポリマー分散物によって決定される。これらの種類及び量は、保護膜が歩行時に汚れず、温度が高い時には粘着せず、そして低温下で粉末を形成しないようなものである必要がある。異なる複数の可塑剤の組み合わせによって可塑化することができる。永続的可塑剤及び一時的可塑剤の両方とも使用される。永続的可塑剤は保護膜中に残り、他方、それらの一時的対応物は蒸発する。
【0006】
これらの可塑剤の他、湿潤剤及び流動制御剤、例えばフッ素系界面活性剤、もしくは湿潤樹脂のアルカリ性溶液、または特殊なアクリレート分散物が追加的に使用される。湿潤樹脂溶液またはアクリレート分散物は、液体磨き剤の均一な平坦化を供し、他方、フッ素系界面活性剤の効果は、床上に施用されたドライブライドエマルションを均一に乾燥させることと、不均一なまだらな磨き剤膜の形成を防ぐことである。
【0007】
入手可能な永続的可塑剤としては、例えばフタル酸ジブチル、ε−カプロラクタム及びトリブトキシエチルホスフェート(TBEP)などがある。一時的可塑剤にはグリコール類、例えばエチルジグリコール、メチルジグリコール、並びに(N−メチル)−2−ピロリドンなどがある。N−メチル−2−ピロリドンは、最近、催奇作用を有することが疑われている。フタレート類はホルモン様作用の原因とされ、カプロラクタム類、グリコール誘導体及びフッ素系界面活性剤は環境汚染物質と分類されており、そしてトリブトキシエチルホスフェートは神経毒の恐れがある。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
それ故、アクリレートを豊富に含む分散物において可塑剤として上に挙げた物質と同等に適しているが、毒性及び生態毒性の面で問題のない新しい物質を見出すための努力が為されており、そしてこれが本発明の課題の一つである。これと同時に、そのような可塑剤は、例えばフッ素系界面活性剤から湿潤剤及び流動制御剤の機能を受け継ぎ、そしてこれらの替わりとならなければならない。
【課題を解決するための手段】
【0009】
驚くべきことに、上記課題が、ポリカルボン酸とモノアルコールを反応させること並びにモノカルボン酸をポリオールと反応させることによって得られるエステルを、硬質表面、特に床材を磨くための調合物中に使用することによって達成されることが見出された。この種のエステルは可塑化作用及び流動促進作用の両方を示す。本発明の調合物をこのような表面に施用しそしてその上で乾燥する間、これらのエステルは気泡のない膜を確実に形成させる。それ故、永続的可塑剤及び一時的可塑剤の両方、更にはフッ素系界面活性剤をポリオールエステルに置き換えることが可能である。またそれ故、これらのエステルを使用することによって、フタレート類、フッ素系界面活性剤、グリコール誘導体及びリン化合物のいずれも含まない床磨き用組成物を製造することができる。
【0010】
本発明は、次式I及び/または次式II及び/または次式IIIで表される、ポリカルボン酸をモノアルコールと反応させるか、またはモノカルボン酸をポリオールと反応させることによって得られるエステルを含む、硬質表面磨き用の調合物を提供する。
【0011】
【化1】

上記式中、R1、R2及びR3の基は、互いに独立して、水素、炭素原子数1〜30の線状もしくは分枝状アルキル基、または炭素原子数2〜30の線状もしくは分枝状アルケニル基であり、そしてR4は、水素または式−C(O)R5のアシル基であり、R5は、炭素原子数1〜30の線状もしくは分枝状アルキル基、または炭素原子数2〜30の線状もしくは分枝状アルケニル基であり、但し、R1、R2、R3またはR4の基のうちの少なくとも一つは炭化水素基である。
【0012】
好ましい態様の一つでは、本発明の硬質表面磨き用調合物は、上記式Iのクエン酸のエステル、好ましくはそれのアルキル基R1、R2及びR3が炭素原子数1〜6の線状もしくは分枝状アルキル基であるクエン酸のエステルを含む。特に好ましい調合物は、トリブチルクエン酸エステル及びトリエチルクエン酸エステルを含む。
【0013】
本発明に従い使用されるクエン酸エステルは、クエン酸をアルコールでエステル化することによって製造される。アルコールの例としては、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、イソブタノール、tert−ブタノール、ペンタノール、ヘキサノール、ヘプタノール、オクタノール、(カプリリルアルコール)、オクテノール、オクタジエノール、ノナノール、デカノール(カプリルアルコール)、デセノール、デカジエノール、ドデカノール(ラウリルアルコール)、ドデカジエノール、リシノレイルアルコール、ミリスチルアルコール、セチルアルコール、ステアリルアルコール、セテアリルアルコール、オレイルアルコール、リノレイルアルコール、リノレニルアルコール、アラキジルアルコール、ベヘニルアルコール、獣脂アルコール、パルミチルアルコール、ヤシ脂肪アルコール、及びゲルベアルコールなどが挙げられる。
【0014】
更に別の好ましい態様の一つでは、本発明の硬質表面磨き用調合物は、上記式II及びIIIで表される、ポリオール(例えばトリメチルプロパン及び/またはグリセロール)とモノカルボン酸とのエステルを含む。この場合、炭素原子数2〜12の鎖長、好ましくは炭素原子数2〜8、非常に好ましくは炭素原子数2〜6、極めて好ましくは炭素原子数2〜4の鎖長を有するモノカルボン酸を使用することが好ましい。
【0015】
本発明の硬質表面、特に床材磨き用調合物は、上記式I及び/または式II及び/または式IIIで表される、ポリカルボン酸とモノアルコールとのエステルまたはモノカルボン酸とポリオールとのエステルを、完成した調合物の総重量を基準にして1〜15重量%、好ましくは2〜10重量%、より好ましくは2〜5重量%の重量で含む。
【0016】
更に別の好ましい態様の一つでは、本発明の硬質表面磨き用調合物は、
a) 上記式I及び/または式II及び/または式IIIで表される、ポリカルボン酸とモノアルコールとのまたはモノカルボン酸とポリオールとのエステルの一種または二種以上、及び
b) 以下の構造単位Iの一種もしくは二種以上及び/または以下の構造単位IIの一種もしくは二種以上、必要に応じて及びスチレン、3−メチルスチレン、4−メチルスチレンもしくはα−メチルスチレンから誘導される以下の構造単位IIIの一種もしくは二種以上を含む、ポリマー性(メタ)アクリル酸(エステル)及び/またはスチレン(メタ)アクリル酸(エステル)コポリマーの一種もしくは二種以上、
を含む。
【0017】
【化2】

[式中、R1は水素またはメチルである]
【0018】
【化3】

[式中、
2は水素またはメチルであり、そして
Lは、−COOR3、−CONR78または−COO-+であり、
3は、
炭素原子数1〜36の直鎖状もしくは分枝状アルキル基または炭素原子数2〜36の直鎖状もしくは分枝状アルケニル基(これらは、必要に応じて、アルコキシル化されていてもよく、そして好ましくはエチレンオキシ(EO)、プロピレンオキシ(PO)、ブチレンオキシ(BO)またはEO/PO基を含むことができる)であるか、あるいは
(AO)x−H((AO)はエトキシ、プロポキシまたはブトキシ基であり、そしてxは1〜50の数である)で表される基であるか、あるいは
グリシジル基、C2〜C10ヒドロキシアルキル基またはグリセロール基であるか、あるいは
環原子数が5〜8、好ましくは6の環状芳香族または非芳香族基、好ましくはシクロアルキル基であるか、あるいは
環原子数が5〜8、好ましくは6の環状芳香族または非芳香族基であって、その環が炭素原子及び異種原子(好ましくはO及び/またはN)から構成され、そして炭素原子ばかりでなく、窒素原子も、炭素原子数1〜36の線状もしくは分枝状アルキルもしくはアルコキシ基、または炭素原子数2〜36の線状もしくは分枝状アルケニルもしくはアルケニルオキシ基、または式−COR4(R4は炭素原子数1〜22のアルキル基である)のアセチル基によって置換されていることができる、前記環状芳香族または非芳香族基であるか、あるいは
−(CR56y−シクロアルキルまたは−(CR56y−アリール(式中、R5及びR6は、各々互いに独立して、H、または炭素原子数1〜4の線状もしくは分枝状アルキル基であり、そしてyは1〜10の数である)であるか、あるいは
炭素原子数8〜18のパーフルオロアルキル基であり、
7及びR8は、各々互いに独立して、
水素であるか、あるいは
炭素原子数1〜36の直鎖状もしくは分枝状アルキル基または炭素原子数2〜36の直鎖状もしくは分枝状アルケニル基であって、必要に応じて、アルコキシル化されていてもよくそして好ましくはエチレンオキシ(EO)、プロピレンオキシ(PO)、ブチレンオキシ(BO)もしくはEO/PO基を含むことができる、前記アルキル基またはアルケニル基であるか、あるいは
(C2〜C10)ヒドロキシアルキル基であるか、あるいは
−CH2−CH2−N(CH32またはポリアミン基であるか、あるいは
環原子数が5〜8、好ましくは6の環状芳香族または非芳香族基、好ましくはシクロアルキル基であるか、あるいは
環原子数5〜8、好ましくは6の環状芳香族または非芳香族基であって、その環が、炭素原子及び異種原子(好ましくはO及び/またはN)によって構成されており、そして炭素原子ばかりでなく、窒素原子も、炭素原子数1〜36の線状もしくは分枝状アルキルもしくはアルコキシ基または炭素原子数2〜36の線状もしくは分枝状アルケニルもしくはアルケニルオキシ基または式−COR9(式中、R9は炭素原子数1〜22のアルキル基である)のアセチル基によって置換されていてもよい、上記環状芳香族または非芳香族基であるか、あるいは
7及びR8は、それらが結合する窒素原子と一緒になって、5、6もしくは7員の芳香族または非芳香族環を形成し、そしてその環は、窒素原子の他には好ましくはCH2基のみを含み、
+は、Li+、Na+、K+、Mg++/2、Ca++/2、Al+++/3、NH4+、モノアルキルアンモニウム、ジアルキルアンモニウム、トリアルキルアンモニウム及び/またはテトラアルキルアンモニウムイオンであり、この際、前記アンモニウムイオンのアルキル置換基は、互いに独立して、(C1〜C22)アルキル基または(C2〜C10)ヒドロキシアルキル基であることができる]
【0019】
【化4】

上記構造単位Iは、式CH2=CR1−COOH(式中、R1は水素またはメチルである)の不飽和カルボン酸の重合の結果であり、上記構造単位IIは、例えば、式CH2=CR2−L(式中、R2及びLは上に記載の定義を有する)の不飽和化合物の重合によって生ずる。
【0020】
本発明の調合物に使用される上記ポリマー性(メタ)アクリル酸(エステル)及び/またはスチレン−(メタ)アクリル酸(エステル)コポリマーは、75〜80℃の範囲の温度で遊離基乳化重合することによって製造され、そして0〜80℃の造膜温度を有する。
【0021】
好ましく使用されるポリマーは、各々のコポリマーを基準にして、カルボキシル含有モノマー1〜30重量部、20℃以下のガラス転位温度を有するホモポリマーを形成するモノマー、好ましくはアクリル酸のC1〜C6アルキルエステル及び/またはメタクリル酸のC4〜C8アルキルエステル30〜70重量部、及び室温以上のガラス転位温度を有するホモポリマーを形成するモノマー、好ましくは(メタ)アクリル酸のC1〜C3アルキルエステル、またはスチレン30〜70重量部から構成される(メタ)アクリレートコポリマーを含む。
【0022】
ホモポリマーが室温以上のガラス転位温度を有する特に好ましいコモノマーの一つはスチレンである。
【0023】
特に好ましい態様の一つでは、本発明の調合物は、アクリレートコポリマーとして(R)Licomer M55、(R)Licomer M63、(R)Licomer M72(クラリアントGmbH)を含む。
【0024】
好ましい態様では、本発明の調合物は、0〜80℃の造膜温度を有するポリマー性(メタ)アクリル酸(エステル)及び/またはスチレン−(メタ)アクリル酸(エステル)コポリマーを、完成した調合物を基準にして純粋なポリマーもしくはコポリマーとして計算して、ポリマー性(メタ)アクリル酸(エステル)及び/またはスチレン−(メタ)アクリル酸(エステル)コポリマー5〜45重量%、好ましくは5〜30重量%、より好ましくは8〜20重量%の重量で含む。
【0025】
更に別の好ましい態様の一つでは、本発明の硬質表面磨き用調合物はポリエチレンワックス分散物を含む。
【0026】
好ましくは(R)Licomer W11及び(R)Licomer W19(クラリアントGmbH)が使用される。(R)Licomer W11及び(R)Licomer W19は、酸化されたポリエチレンワックスを120〜150℃の温度下に2〜6barの圧力で乳化することによって製造されるセ二次ポリエチレンワックス分散物(secondary polyethylene wax)である。
【0027】
好ましい態様では、本発明の調合物は、ポリエチレンワックス分散物を、完成した調合物を基準して純粋なポリマーとして計算して、ポリエチレンワックス5〜45重量%、好ましくは5〜30重量%、より好ましくは8〜20重量%の重量で含む。
【0028】
本発明の調合物は、更に、典型的には乳化剤、界面活性剤、防腐剤、フラグランス及び染料を含む。
【0029】
利用可能な非イオン性乳化剤は、好ましくは、炭素原子数6〜30、好ましくは10〜22、非常に好ましくは14〜22の必要に応じてヒドロキシル化された線状脂肪アルコールにエチレンオキシド0〜30モル及び/またはプロピレンオキシド0〜5モルを付加した付加生成物である。使用し得るものの例には、オクタノール(カプリリルアルコール)、オクテノール、オクタジエノール、デカノール(カプリルアルコール)、デセノール、デカジエノール、ドデカノール(ラウリルアルコール)、ドデカジエノール、リシノレイルアルコール、ミリスチルアルコール、セチルアルコール、ステアリルアルコール、セテアリルアルコール、オレイルアルコール、リノレイルアルコール、リノレニルアルコール、アラキジルアルコール及びベヘニルアルコールなどが挙げられる。また、天然に生ずるグリセリド、例えば牛脂、パーム油、ピーナッツ油、ナタネ油、綿実油、大豆油、ヒマワリ油、及びアマニ油を還元することによって得られるか、あるいは脂肪酸エステルから対応するアルコールとのエステル交換生成物より生成され、それ故異なる脂肪アルコールの混合物である、脂肪アルコール画分を使用することもできる。この種の物質は、例えばStenol(R)、例えばStenol(R)1618、またはLanette(R)、例えばLanette(R) O及びLanette(R)22、またはLorol(R)、例えばLorol(R) C18の名称で商業的に入手が可能である。
【0030】
本発明において好ましい乳化剤の更に別の部類は、炭素原子数6〜30、好ましくは10〜22の線状及び/または分枝状の飽和及び/または不飽和脂肪酸にエチレンオキシド0〜30モル及び/またはプロピレンオキシド0〜5モルを付加した付加物である。イソステアリン酸、例えばEmersol(R) 871及びEmersol(R) 875の名称の商業製品、イソパルミチン酸、例えばEdenor(R) IP95、及びEdenor(R)(コグニス)の商標で購入可能な他の全ての脂肪酸を挙げることができる。このような脂肪酸の更に別の典型的な例は、カプロン酸、カプリル酸、2−エチルヘキサン酸、カプリン酸、ラウリン酸、イソトリデカン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、パルミトレイン酸、ステアリン酸、イソステアリン酸、オレイン酸、エライジン酸、ペトロセリン酸、リノール酸、リノレン酸、エレオステアリン酸、アラキジン酸、ガドレイン酸、ベヘン酸、エルカ酸、及び不飽和脂肪酸のダイマー、並びにこれらの工業的混合物である。特に好ましいものは、ヤシ油もしくはパーム油からの脂肪酸画分であり、特にステアリン酸が好ましい。
【0031】
好ましい乳化剤の更に別の部類は、未アルキル化もしくはアルキル化糖とC6〜C30脂肪酸とのエステルである。使用できる糖は、任意のモノサッカライドもしくはオリゴサッカライドである。通常は炭素原子数5もしくは6のモノサッカライドが使用され、その例はリボース、キシロース、リキソース、アルトース、グルコース、フルクトース、ガラクトース、アラビノース、アルトロース、マンノース、グロース、イドース、及びタロース、並びにデオキシ糖であるラムノース及びフコースである。炭素原子数4の糖、例えばエリトロース及びトレオースも使用することができる。
【0032】
本発明において好ましいオリゴサッカライドは、2〜10個のモノサッカライド単位から組成される。例えばスクロース(サッカロース)、ラクトースもしくはトレハロースなどがある。好ましい糖単位は、モノサッカライドであるグルコース、フルクトース、ガラクトース及びアラビノース、及びジサッカライドであるスクロースである。グルコース及びスクロースが特に好ましい。上記の糖は、メチル、エチル、プロピル、イソプロピルもしくはブチル基によって部分的にエーテル化されていてもよい。例えば、メチルグルコシド、エチルグルコシドまたはブチルグルコシドなどがある。エステル化するためには、上に挙げたC6〜C30脂肪酸及びこれらの混合物の全てを使用することができる。原則的にモノエステル化糖及びポリエステル化糖が適している。好ましいものは、モノエステル、セスキエステル及びジエステルであり、例えばスクロースモノステアレート、スクロースジステアレート、スクロースモノココエート、スクロースジココエート、メチルグルコシドモノステアレート、メチルグルコシドセスキステアレート、メチルグルコシドイソステアレート、エチルグルコシドモノラウレート、エチルグルコシドジラウレート、エチルグルコシドモノココエート、エチルグルコシドジココエート、及びブチルグルコシドモノココエートなどがある。
【0033】
好ましい乳化剤の更に別の部類は、一般式RO−(Z)x(式中、RはC8〜C22アルキル基であり、Zは糖であり、そしてxは糖単位の数である)に相当する、C8〜C22アルキル−モノグリコシド及びオリゴグリコシドである。本発明において使用できる上記アルキルモノグリコシド及びアルキルオリゴグリコシドは、ただ一つの特定のアルキル基Rを含むことができる。特に好ましいものは、Rが、C8及びC10アルキル基、C12及びC14アルキル基、C8〜C16アルキル基、またはC12〜C16アルキル基から本質的に構成されるアルキルモノグリコシド及びアルキルオリゴグリコシドである。糖単位Zとしては、上に挙げた任意の望ましいモノサッカライドまたはオリゴサッカライドを使用することができる。好ましい糖単位はグルコース、フルクトース、ガラクトース、アラビノース及びスクロースであり、特に好ましいものはグルコースである。本発明において有用なアルキルモノグリコシド及びアルキルオリゴグリコシドは、糖単位を平均して1.1〜5、好ましくは1.1〜2.0、より好ましくは1.1〜1.8個含む。
【0034】
上記のアルキルモノグリコシド及びアルキルオリゴグリコシドのアルコキシル化された同族体も本発明において好ましく使用することができる。これらの同族体は、アルキルグリコシド単位当たりエチレンオキシド単位及び/またはプロピレンオキシド単位を平均して10個まで含むことができる。これに関連して好適なアルキルグリコシドは、例えば、ココイルグルコシド、デシルグルコシド、ラウリルグルコシド、セテアリルグルコシド及びアラキジルグルコシドである。
【0035】
好ましい乳化剤の更に別の部類は、C8〜C22脂肪酸とプロピレングリコール、グリセロール及びソルビタンとの部分エステルである。エステル化のためには、上に挙げたC8〜C22脂肪酸及びこれらの混合物の全てを使用することができる。特に好適な例は、プロピレングリコールモノステアレート、グリセロールモノラウレート、グリセロールモノステアレート、グリセロールジステアレート、グリセロールモノオレエート、ソルビタンモノラウレート、ソルビタンジラウレート、ソルビタンモノステアレート、ソルビタンセスキステアレート、ソルビタンジステアレート、ソルビタンモノイソステアレート、ソルビタンモノオレエート、ソルビタンジオレエート、または商業製品であるMonomuls(R)90−0、Monomuls(R)90−L 12、及びCutina(R)MDである。これらの乳化剤は、1分子当たり平均して10個までのエチレンオキシド単位及び/またはプロピレンオキシド単位を含むことができる。
【0036】
乳化剤の更に別の好ましい部類は、式HO-CH2-CHOH-CH2[-O-CH2-CHOH-CH2]n-O-CH2-CHOH-CH2OH(式中、nは0〜8である)のポリグリセロール、及びアルキル鎖中に官能基を有していてもよい線状もしくは分枝状C8〜C22脂肪酸と前記ポリグリセロールとのエステル、好ましくはポリグリセリル−2ジポリヒドロキシステアレート(商業製品はDehymuls(R)PGPH)及びポリグリセリル−3ジイソステアレート(商業製品はLameform(R)TGI)である。
【0037】
好ましい非イオン性界面活性剤は、エチレンオキシドを約1モル〜約25モル含む脂肪アルコールオキシエチレートである。その脂肪族アルコールのアルキル鎖は線状もしくは分枝状で第1級もしくは第2級であることができ、そして一般的には8〜22個の炭素原子を含む。特に好ましいものは、炭素原子数10〜20のアルキル鎖を含むアルコールと、アルコール1モル当たり2〜18モルのエチレンオキシドとの縮合生成物である。アルキル鎖は飽和もしくは不飽和であることができる。前記アルコールエトキシレートは、エチレンオキシドの狭い同族体分布(狭範エトキシレート)またはエチレンオキシドの広い同族体分布(広範エトキシレート)を示すこともできる。商業的に入手可能な非イオン性界面活性剤の例には、クラリアントGmbH製のGenapolTMグレード品などが挙げられる。
【0038】
適当な防腐剤の例には、フェノキシエタノール、パラベン類、イソチアゾリノン類またはソルビン酸などが挙げられる。
【0039】
硬質表面磨き用の本発明の調合物、特に床磨き剤組成物は、構成分を単に混合することによって調製することができる。これらの構成分は、固形物としてまたは溶液としてオートマチックミキサーに導入することができる。
【0040】
本発明の調合物は、いわゆる標準製品の形で、または濃厚物もしくはペーストの形であることができるが、これらの製品の間に明確な境界はないことは当業者には知られている。
【0041】
標準製品は一般的には液状であり、そしてそれらの構成分の溶液もしくは分散物を構成するものである。濃厚物は、構成分の溶液もしくはエマルションでありそして液状乃至粘性のコンシステンシーを有する。
【0042】
施用は人手でまたは典型的なオートマチッククリーナーで行うことができ、そして例えば磨き剤液を塗り、次いで乾燥して薄い磨き剤膜を形成することによって行われる。
【0043】
本発明の調合物は、硬質表面、特にタイル(ファインポースレン製のタイル含む)、天然石スラブから作られた床材、並びにリノリウム及びPVCなどの弾性の被覆材が施された床を磨くのに適している。
【0044】
以下の例は本発明を例示するものであるが、本発明はこれに限定されない。百分率は断りがない限りは全て重量%である。
【実施例】
【0045】
例1及び例2
フタレート、グリコール及びホスフェート(TBEP)を含む床磨き剤組成物(例1)及びクエン酸トリブチルを含み、フタレート、グリコール及びホスフェート(TBEP)のいずれも含まない床磨き剤組成物(例2)
【0046】
【表1】

光沢は、DIN67530またはISO2813(60°の角度での被膜の反射率計値の測定)に従い測定した。
【0047】
フロアトラフィック(floor traffic)試験では、数週間後でさえ、上記二つの調合物(例1及び例2)には明らかな差はなかった。
例1及び2の調製
水及び可塑剤(エチレンジグリコール、トリブトキシエチルホスフェート及び/またはクエン酸トリブチル)を、激しく攪拌しながら5〜10分の期間(t)、室温で混合した。各々の成分は、攪拌しながら、上に記載の順に続けて加えた。その後、強烈に攪拌した(t=30分)。
例3、4及び5:クエン酸トリブチルを含むが、フッ素系界面活性剤は含まない床磨き剤組成物
【0048】
【表2】

【0049】
【表3】

【0050】
【表4】

例3、4及び5の調製法
水及びクエン酸トリブチルを、強力に攪拌しながら5〜10分の期間(t)混合した。次いで、それぞれの成分を攪拌しながら上に記載の順番で加えた。その後、強力に攪拌した(t=30分)。
【0051】
【表5】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリカルボン酸とモノアルコールを反応させるかあるいはモノカルボン酸をポリオールと反応させることによって得られる、次式I及び/または次式II及び/または次式IIIで表されるエステルを含む、硬質表面の磨き用及び処理用の調合物。
【化1】

[式中、R1、R2及びR3の基は、互いに独立して、水素、炭素原子数1〜30の線状もしくは分枝状アルキル基、または炭素原子数2〜30の線状もしくは分枝状アルケニル基であり、そしてR4は、水素または式−C(O)R5のアシル基であり、R5は、炭素原子数1〜30の線状もしくは分枝状アルキル基であるか、または炭素原子数2〜30の線状もしくは分枝状アルケニル基であり、但し、R1、R2、R3またはR4の基のうちの少なくとも一つは炭化水素基である]
【請求項2】
式Iのクエン酸のエステルを含み、この際、アルキル基R1、R2及びR3が、炭素原子数1〜8、好ましくは2〜6の線状もしくは分枝状アルキル基である、請求項1の硬質表面磨き用及び処理用の調合物。
【請求項3】
トリブチルクエン酸エステルまたはトリエチルクエン酸エステルを含む、請求項1または2の硬質表面磨き用及び処理用の調合物。
【請求項4】
トリメチロールプロパン及び/またはグリセロールなどのポリオールと、モノカルボン酸、好ましくは炭素原子数2〜12、より好ましくは2〜8、非常に好ましくは2〜6、特に2〜4のモノカルボン酸との、上記一般式II及び/またはIIIのエステルを含む、請求項1の硬質表面磨き用及び処理用の調合物。
【請求項5】
ポリカルボン酸とモノアルコールとのエステルまたはモノカルボン酸とポリオールとのエステルを、各々の場合において完成した調合物の総重量を基準として1〜15重量%、好ましくは2〜10重量%、より好ましくは2〜5重量%の重量で含む、請求項1〜4のいずれか一つの硬質表面磨き用及び処理用の調合物。
【請求項6】
a) 上記式I及び/または式II及び/または式IIIで表される、ポリカルボン酸とモノアルコールとのエステルまたはモノカルボン酸とポリオールとのエステルの一種または二種以上、
b) 以下の構造単位Iの一種もしくは二種以上及び/または以下の構造単位IIの一種もしくは二種以上、必要に応じて及びスチレン、3−メチルスチレン、4−メチルスチレンもしくはα−メチルスチレンから誘導される以下の構造単位IIIの一種もしくは二種以上を含むポリマー性(メタ)アクリル酸(エステル)及び/またはスチレン−(メタ)アクリル酸(エステル)コポリマーの一種もしくは二種以上、
を含む、請求項1〜5のいずれか一つの硬質表面磨き用及び処理用の調合物。
【化2】

[式中、R1は水素またはメチルである]
【化3】

[式中、
2は水素またはメチルであり、そして
Lは、−COOR3、−CONR78または−COO-+であり、
3は、炭素原子数1〜36の直鎖状もしくは分枝状アルキル基または炭素原子数2〜36の直鎖状もしくは分枝状アルケニル基であって、必要に応じてアルコキシル化されていてもよくそして好ましくはエチレンオキシ(EO)、プロピレンオキシ(PO)、ブチレンオキシ(BO)もしくはEO/PO基を含むことができる前記アルキル基またはアルケニル基であるか、あるいは
(AO)x−Hで表され、この際、(AO)はエトキシ、プロポキシもしくはブトキシ基であり、そしてxは1〜50の数である基であるか、あるいは
グリシジル基、C2〜C10ヒドロキシアルキル基またはグリセロール基であるか、あるいは
環原子数が5〜8、好ましくは6の環状芳香族もしくは非芳香族基、好ましくはシクロアルキル基であるか、あるいは
環原子数が5〜8、好ましくは6の環状芳香族もしくは非芳香族基であって、その環が、炭素原子及び異種原子(好ましくはO及び/またはN)から構成され、そして炭素原子ばかりでなく、窒素原子も、炭素原子数1〜36の線状もしくは分枝状アルキルもしくはアルコキシ基、または炭素原子数2〜36の線状もしくは分枝状アルケニルもしくはアルケニルオキシ基、または式−COR4(式中、R4は炭素原子数1〜22のアルキル基である)のアセチル基によって置換されていることができる、前記環状芳香族または非芳香族基であるか、あるいは
−(CR56y−シクロアルキルまたは−(CR56y−アリール(式中、R5及びR6は、各々互いに独立して、H、または炭素原子数1〜4の線状もしくは分枝状アルキル基であり、そしてyは1〜10の数である)であるか、あるいは
炭素原子数8〜18のパーフルオロアルキル基であり、
7及びR8は、互いに独立して、
水素であるか、あるいは
炭素原子数1〜36の直鎖状もしくは分枝状アルキル基または炭素原子数2〜36の直鎖状もしくは分枝状アルケニル基であって、必要に応じてアルコキシル化されていてもよくそして好ましくはエチレンオキシ(EO)、プロピレンオキシ(PO)、ブチレンオキシ(BO)またはEO/PO基を含むことができる、前記アルキル基またはアルケニル基であるか、あるいは
(C2〜C10)ヒドロキシアルキル基であるか、あるいは
−CH2−CH2−N(CH32またはポリアミン基であるか、あるいは
環原子数5〜8、好ましくは6の環状芳香族または非芳香族基、好ましくはシクロアルキル基であるか、あるいは
環原子数5〜8、好ましくは6の環状芳香族または非芳香族基であって、その環は炭素原子及び異種原子(好ましくはO及び/またはN)から構成され、そして炭素原子ばかりでなく、窒素原子も、炭素原子数1〜36の線状もしくは分枝状アルキルもしくはアルコキシ基または炭素原子数2〜36の線状もしくは分枝状アルケニルもしくはアルケニルオキシ基、または式−COR9(式中、R9は炭素原子数1〜22のアルキル基である)のアセチル基によって置換されていることができる、前記環状芳香族または非芳香族基であるか、あるいは
7とR8は、それらが結合する窒素原子と一緒になって、5、6もしくは7員の芳香族または非芳香族環を形成し、そしてこの環は、窒素原子の他には、好ましくはCH2基のみを含み、
+は、Li+、Na+、K+、Mg++/2、Ca++/2、Al+++/3、NH4+、モノアルキルアンモニウム、ジアルキルアンモニウム、トリアルキルアンモニウム及び/またはテトラアルキルアンモニウムイオンであり、この際、これらのアンモニウムイオンのアルキル置換基は、互いに独立して、(C1〜C22)アルキル基または(C2〜C10)ヒドロキシアルキル基であることができる]
【化4】

【請求項7】
カルボキシル含有モノマー1〜30重量部、20℃以下のガラス転位温度を有するホモポリマーを形成するモノマー(好ましくはアクリル酸のC1〜C6アルキルエステル及び/またはメタクリル酸のC4〜C8アルキルエステル)30〜70重量部、及び室温以上のガラス転位温度を有するホモポリマーを形成するモノマー(好ましくは(メタ)アクリル酸のC1〜C3アルキルエステルまたはスチレン)30〜70重量部から形成される(メタ)アクリレートコポリマーを成分b)として含む、請求項6の硬質表面磨き用及び処理用調合物。
【請求項8】
0〜80℃の造膜温度を有するポリマー性(メタ)アクリル酸(エステル)及び/またはスチレン−(メタ)アクリル酸(エステル)コポリマーを、完成した調合物の総重量を基準にして純粋なポリマーもしくはコポリマーとして計算して5〜45重量%、好ましくは5〜30重量%、より好ましくは8〜20重量%の量で含む、請求項6または7の硬質表面磨き用及び処理用調合物。
【請求項9】
更にポリエチレンワックス分散物を含む、請求項1〜8のいずれか一つの硬質表面磨き用及び処理用調合物。
【請求項10】
酸化されたポリエチレンワックスを120〜150℃の温度で2〜6barの圧力下に乳化することによって製造された二次ポリエチレンワックス分散物を含む、請求項9の硬質表面磨き用及び処理用の調合物。
【請求項11】
ポリエチレンワックス分散物を、完成した調合物の総重量を基準にして純粋なポリマーとして計算して、5〜45重量%、好ましくは5〜30重量%、より好ましくは8〜20重量%の量で含む、請求項9または10の硬質表面磨き用及び処理用の調合物。

【公開番号】特開2006−348296(P2006−348296A)
【公開日】平成18年12月28日(2006.12.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−164146(P2006−164146)
【出願日】平成18年6月14日(2006.6.14)
【出願人】(597109656)クラリアント・プロドゥクテ・(ドイチュラント)・ゲゼルシャフト・ミト・ベシュレンクテル・ハフツング (115)
【Fターム(参考)】