説明

廃プラスチックのガス化方法

【課題】廃プラスチックを可燃性ガスに転換するガス化技術において、炉内からの発生ガスの流量変化、ガス発熱量変化等を小さくして、安定した反応を得ることと、廃プラスチックのガス化効率を向上させること。
【解決手段】ポリエチレンを20〜80質量%含有している廃プラスチックを、破砕機1にて最大長で300mm以下に切断した後、圧縮乾燥機2にて圧縮するとともに加熱し、該廃プラスチックの温度を72℃以上、110℃未満として、嵩比重で0.07〜0.2kg/リットルに減容した後に、ガス化炉4に供給してガス化する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、廃プラスチックを可燃性ガスに転換する方法に関する。また、廃プラスチックに繊維系廃棄物などの有機物を含む廃棄物を可燃性ガスに転換する方法にも応用できる。
【背景技術】
【0002】
近年、資源問題や環境問題への注目が強くなるに従って、石油資源の枯渇や炭酸ガス排出削減のニーズが強くなりつつある。そのために、化石燃料の代替エネルギーとして、バイオマス利用や廃棄物リサイクルが推進されつつある。化石燃料代替技術としては、天然繊維やでんぷんをエタノールなどに加工する方法、廃木材や廃プラスチックを固形燃料(RPF)に加工する方法、廃プラスチックを炭化水素油に転換する方法、廃木材、下水有機汚泥や廃プラスチックを可燃ガスに転換する方法や、高炉やコークス炉などの製鉄設備で使用する方法などが行われている。
【0003】
これらの方法のうち、石炭、ピッチ、オイルコークス、廃木材、下水有機汚泥、廃プラスチック、一般家庭ごみ、衣料屑や強化プラスチックなどの有機系産業廃棄物、木材などを含む建設廃棄物などの有機物を含む物質を可燃ガスに転換する方法(ガス化技術)は、各種の有機物を使用することができ、かつ、これらの混合物であっても問題がない利点がある。また、ガス化技術により回収したガスは、水素、一酸化炭素、メタン、場合によっては、更に他の可燃性炭化水素を多く含むものである。この回収ガスは、1立方メートル当り6〜15GJの燃焼熱を持つことから、ボイラーや加熱炉の燃料として利用できる。また、水素と一酸化炭素を中心とするガスを回収する場合は、アンモニアやメタノールなどの化学原料を製造する工程でも使用することができる。また、このガス化技術は、石炭、ピッチ、オイルコークスのガス化にも応用されるものである。
【0004】
廃棄物やバイオマスを使用するガス化処理では、状況により原料が安定的に入荷しないことがあることから、これを単独の燃料として、ボイラーや加熱炉を操業することができない場合が多い。このような理由で、回収ガスは、天然ガスや重油などの燃料と混合して、使用されることが多い。例えば、高炉とコークス炉を持つ製鉄所での副生可燃ガスと回収ガスを混合して、燃料ガスとして使用する例がある。また、回収ガスを化学原料用のガスと、ナフサ等をガス化したガスを混合して使用する例がある。
【0005】
これらの方法において、廃プラスチックや一般家庭ゴミをガス化することは、廃棄物を減容化して、最終処分場に関る問題を解決するとともに、未利用の廃棄物をエネルギーとして利用できることから、環境問題とエネルギー問題を同時に解決する有効な方法であり、例えば特開2005−213493号公報や特開2006−83310号公報にも記載されている。
【0006】
特開2005−213493号公報に記載されている方法においては、廃プラスチックなどをコークス充填層に供給して、可燃性ガスを製造する方法である。この方法では、廃プラスチックを赤熱したコークス充填層で熱分解して、更に酸素と水蒸気を反応させることから、水素、一酸化炭素、メタンを主体とするガスが得られる。また、特開2006−83310号公報では、プラスチックを主体とする廃棄物の再資源化において、熱分解中に300℃未満の水蒸気を供給して廃棄物を熱分解してガスおよび油を回収する方法である。
【0007】
原料である廃プラスチックは、形状が種々あり、また嵩比重も低いことから、ガス化炉への供給が一定速度でできない問題や、廃プラスチックとともに、空気が大量に入り込み、ガスが窒素で希釈されてしまう問題が起きる。従って、ガス化炉内に廃プラスチックを供給するためには、技術的な工夫が必要である。例えば特開2004−034534号公報に記載されているように、プラスチックに含まれる大粒径粒子、綿状物質、フラフを除去することでホッパ内や供給配管での粒子の流れを安定させ、また供給ホッパに撹拌翼を設けて粒子の棚つりを防止する方法などが行われている。
【0008】
一方、原料供給を安定化するために、廃プラスチックをガス化炉などで処理する前に、事前処理を行うことがある。例えば特開2001−232634号公報に記載されている方法のように、ガス化や油化などの化学的リサイクル方法に対応する粒状化物を製造して、これをガス化炉で使用することも行われている。この方法により、廃プラスチックを安定的にガス化炉に供給できるようになり、ガスの発生速度が安定して、炉内の反応も安定する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2005−213493号公報
【特許文献2】特開2006−83310号公報
【特許文献3】特開2004−034534号公報
【特許文献4】特開2001−232634号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
廃プラスチックのガス化処理において、安定した反応制御のためには、原料である廃プラスチックを安定的に供給する必要がある。廃プラスチックは、形状に定まったものがなく、嵩比重も小さいのが一般的である。また、嵩比重の変動も大きいという問題がある。家庭などから排出された容器包装を主体とする廃プラスチックは嵩比重が特に小さく、一般に0.02〜0.05kg/リットル程度である。また、最大長が500mm程度の大きな袋状のものから、数mmのものまでが混在している問題もあった。これは、衣料などを廃棄した繊維系廃棄物についても同様である。以下、廃プラスチックを例とした説明を行う。
【0011】
以上のような性状の廃プラスチックをそのままガス化炉に供給することから、種々の問題が起きる。ガス化炉の原料供給装置は容積型のものであり、単位時間当たり一定容積の原料を炉内に供給する。供給装置に適合しないプラスチック片が入っている場合には、特開2004−034534号公報に記載されているように、これを排除することや混合操作を行う場合もあるが、大粒径粒子やフラフを除去して、撹拌を行うことでも、原料である廃プラスチックの嵩比重変動の影響を小さくすることはできなかった。つまり、廃プラスチックは雑多なプラスチックの集まりであって、その影響で、その嵩比重はプラスチック種、形状、サイズ等の影響を受けていた。その結果、廃プラスチックの嵩比重は、部分によって2〜4倍の差があることが一般的であった。
【0012】
このように、廃プラスチックの嵩比重の変動が大きいため、例え大粒径粒子やフラフの除去や撹拌操作をしても、ガス化炉に供給される廃プラスチックの質量供給速度は大きく変動していた。この影響により、ガス化炉内の廃プラスチック量が変化することから、炉内反応が変化してしまい、この結果、ガス発生量が変化し、またガス組成も変化していた。このような状態では、廃プラスチック量が多い場合は、回収ガスのメタンなどの炭化水素が増えるとともに、タールやススも増加することから、回収ガスの汚れが悪化する問題が起きていた。また、嵩比重が小さいため、廃プラスチックの集合体には、大量の空気が含まれる問題があった。この結果、ガス化炉内に、廃プラスチックとともに、空気が入り込み、燃焼制御の妨げとなるとともに、回収ガスを窒素で希釈することから、回収ガスの発熱量が低下する問題もあった。
【0013】
一方、上記の問題を解決するために行っていた廃プラスチックの事前処理においても問題があった。例えば、特開2001−232634号公報に記載されているような廃プラスチックの粒状化処理では、5〜30mm程度の大きさの粒状化物を製造する。この粒状化物の嵩比重は0.1〜0.4g/cm3程度であり、その値の変動も少ない。これをガス化炉に供給することで、ガス発生量やガス組成の変化が小さくなっていた。しかしながら、粒状化処理のためには、廃プラスチック1トン当り150〜250kWhの動力を必要とし、エネルギー消費が多く、その製造費用が高価である問題があった。また、製造設備も高出力の装置が必要であり、設備費も高価である問題があった。
【0014】
また、廃棄物であるため、廃プラスチックには、水分が付着していることに起因する問題もあった。水分がガス化炉内に入ると、炉内で蒸発して、その大部分はプラスチック又はプラスチックからの揮発分と反応して水素となる。反応そのものは、プラスチックガス化に悪影響を与えないものの、水が蒸発する際の蒸発潜熱により、炉内の温度が低下して、プラスチックガス化反応が十分に進まない問題や、水分量の変動による炉内温度制御が不安定になる問題があった。従来技術で廃プラスチックの水分を除去する方法もあるが、通常の乾燥炉や熱風などでプラスチックを乾燥すると、発火して火事になることがあるため、簡単には乾燥できないという問題もあった。
【0015】
以上に説明したように、ガス化炉への原料供給技術には、質量基準での原料供給速度の変動の問題があり、また廃プラスチックの粒状化処理にも、事前処理にかかるエネルギー消費が多い問題があった。また、廃プラスチックの付着水分によるガス化炉の熱的、反応的な問題もあった。このように、廃プラスチックのガス化に関する従来技術には、技術的な課題があり、これを解決するための新しい技術が求められていた。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明は、上記に記載されたような廃プラスチックのガス化処理に伴う問題を解決するためになされたものであり、その内容は下記に記載される通りである。
(a)ポリエチレンを20〜80質量%含有している廃プラスチックを、最大長で300mm以下に切断した後に、ケーシング中で、圧縮することで摩擦熱を発生させるなどの方法で加熱する。加熱後に貫通穴から押出して、圧縮して乾燥することで、嵩密度を上げる。圧縮乾燥時のモーター動力を原料の廃プラスチックの水分を変数として決める。付着水分が12質量%以上の場合は、処理量(トン)当りの圧縮機の出力である圧縮動力比PR(kWh/トン)を、2.5Mw+18<PR<6.5Mw+18の範囲として、圧縮された廃プラスチックの温度を85℃以上、110℃未満とする。また、付着水分が5質量%以上、12質量%未満の場合は、処理量(トン)当りの圧縮機の出力である圧縮動力比PR(kWh/トン)を、1.8Mw+17<PR<5.5Mw+17の範囲として、圧縮された廃プラスチックの温度を72℃以上、110℃未満とする。このことで、廃プラスチックの水分を低下させるとともに、廃プラスチックを嵩比重で0.07〜0.2kg/リットルに減容する。この方法で、減容された廃プラスチックをガス化炉に供給して、廃プラスチックをガス化する。ここで、Mwは、廃プラスチックの付着水分比率(質量%)である。
(b)また、圧縮乾燥前に付着水分が12質量%以上の廃プラスチックを90℃以下の温度で予備乾燥して、付着水分を12質量%未満とする。その後に、処理量(トン)当りの圧縮機の出力である圧縮動力比PR(kWh/トン)を、1.8Mw+18<PR<5.5Mw+17の範囲として、廃プラスチックを圧縮乾燥する。
(c)前出(a)又は(b)の方法において、側面に複数の貫通穴を有しているケーシング内において、スクリュー式圧縮機にて連続的に、廃プラスチックを圧縮して、当該貫通穴から廃プラスチックを押出して圧縮乾燥する。この際の貫通穴の内径を25〜100mmとする。
(d)前出(a)から(c)のいずれか1つの方法において、圧縮乾燥して製造した廃プラスチック凝集物を、その大きさが平均15mm以下であるものか、15mm以上のサイズの凝集物を2MPa(約20kg−f/cm3)の圧力で押し潰した際に平均15mm以下のサイズとなるものの比率が90%以上とする。これを容積式の供給装置で、ガス化炉に供給して、廃プラスチックをガス化する。
(e)以上に説明した(a)から(d)のいずれかの方法において、廃プラスチックをガス化炉に供給する装置を、容積式の供給装置、例えばケーシング内をスクリューで押し込みガス化炉に供給する装置、ケーシング内を往復動作するピストンで押し込みガス化炉に供給する装置、を用いて、ガス化炉に供給して、廃プラスチックをガス化する。
【0017】
すなわち、本願発明の要旨は、特許請求の範囲に記載した通りの下記内容である。
(1)ポリエチレンを20〜80質量%含有している廃プラスチックを、最大長で300mm以下に切断した後に、圧縮するとともに加熱して、該廃プラスチックの温度を72℃以上、110℃未満として、嵩比重で0.07〜0.2kg/リットルに減容した後に、ガス化炉に供給してガス化することを特徴とする廃プラスチックのガス化方法。
(2)付着水分が12質量%以上の廃プラスチックを処理する際に、付着水比率(Mw:質量%)により、処理量(トン)当りの圧縮機の出力である圧縮動力比PR(kWh/トン)を、2.5Mw+18<PR<6.5Mw+18(kWh/トン)とすることを特徴とする(1)に記載の廃プラスチックのガス化方法。
(3)付着水分が6質量%以上、12質量%未満の廃プラスチックを処理する際に、付着水比率(Mw:質量%)により、処理量(トン)当りの圧縮機の出力である圧縮動力比PR(kWh/トン)を、1.7Mw+17<PR<5.5Mw+17(kWh/トン)とすることを特徴とする(1)に記載の廃プラスチックのガス化方法。
(4)付着水分が12質量%以上の廃プラスチックを圧縮乾燥前に90℃以下の温度で予備乾燥して、水分を12質量%未満とした後に、圧縮するとともに加熱した後に、ガス化処理することを特徴とする請求項1記載の廃プラスチックのガス化方法。
(5)側面に複数の貫通穴を有しているケーシング内において、スクリュー式圧縮機にて連続的に、廃プラスチックを圧縮して、当該貫通穴から廃プラスチックを押出して圧縮するとともに加熱することを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の廃プラスチックのガス化方法。
(6)ケーシングの貫通穴の内径を25〜100mmとすることを特徴とする(5)に記載の廃プラスチックのガス化方法。
(7)圧縮するとともに加熱して製造した廃プラスチック凝集物を、大きさが平均15mm以下であるものか、15mm以上のサイズの凝集物を2MPaの圧力で押し潰した際に平均15mm以下のサイズであるものの比率が90%以上とすることを特徴とする(1)から(6)のいずれか1項に記載の廃プラスチックのガス化方法。
(8)廃プラスチックを容積式の供給装置にて、ガス化炉に供給して、廃プラスチックをガス化するとすることを特徴とする(1)から(7)のいずれか1項に記載の廃プラスチックのガス化方法。
【発明の効果】
【0018】
本発明で製造した廃プラスチック凝集物は圧縮乾燥されているため、嵩比重の変動が少なく、また水分含有率が低い特徴を持つ。嵩比重の変動が少ないことから、ガス化炉内に供給される廃プラスチック凝集物の供給速度の変動が小さくなる。この結果、ガス化反応速度が安定化することから、発生ガスの化学成分が安定化し、発生ガスに含まれるススやタールの含有率も安定化する。
また、ガス化炉内に供給される水分が低減されるため、炉内での水の蒸発熱が節約されて、ガス化炉の熱バランスが改善して、廃プラスチックから回収できるエネルギー量が増加する効果もある。本発明を実施することにより、このように、ガス化反応が安定化するとともに、回収できるエネルギーも増加する利点がある。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明では、廃プラスチックとして、嵩比重の小さいものを対象とする。例えば、雑多な種類からなる家庭から排出される廃プラスチックや工場などで発生する嵩の大きい加工屑プラスチックである。また、本発明の方法が効果を発揮する廃プラスチックはポリエチレンを20〜80質量%含むものである。以上のポリエチレン比率の範囲であれば、廃プラスチックを50容積%以上含家庭ごみも対象となる。廃プラスチックの水分は3〜20質量%程度のものである。本発明における廃プラスチックのガス化処理の全体フローを図1に示す。図1の設備は、破砕機1、圧縮乾燥機2、供給装置3、ガス化炉4、ガス処理装置5から構成される。
【0020】
まず、破砕機1にて、廃プラスチックを切断する。破砕機1は、カッターの付いた回転式のローターのある切断機が良い。切断機の型式には、ローターが1軸のものと2軸のものがある。なお、破砕機1はシャー式でも良いが、生産性が低い問題があるため、ローター式が望ましい。切断後の廃プラスチックのサイズは300mm以下とする。ここで、300mmのサイズの意味としては、300mm間隔のスクリーンを通過することであり、スクリーンで篩い分けしない場合は、本発明のサイズとは、切断片のうち、所定の値以下の最大長を持つものの比率が90%程度となる長さを言う。高密度の圧縮加熱を行う際には、150mmもしくは50mm以下のサイズに切断することが良い。切断する際の廃プラスチックの水分は8質量%以上であると、切断に伴う発熱による発火の問題が起きづらい。なお、切断前には、金属や無機質の異物を除去しておくことが望ましい。
【0021】
ここで、破砕機1の作用の例を図2で詳細に説明する。なお、図2は2軸式破砕機の例である。廃プラスチックの集合体を上方の供給口11から供給する。廃プラスチックは破砕刃を有するローター12の間で切断される。ローター12の下には、スクリーン13があり、所定のサイズ以下の切断片は下方に、また所定のサイズ以上の切断片はスクリーン13の上から、側方に流れる。スクリーン13の上から側方に流れたオーバーサイズの破砕片は、リターンコンベア14にて、再度、ローター12の上方に供給されて切断される。切断片サイズが小さいほど、圧縮乾燥後の集合体の嵩密度が高くなる利点がある。しかし、切断片があまり小さいと後工程の圧縮乾燥処理での圧縮操作が難しくなるこから、切断片サイズとしては、15mm以下とすることは望ましくない。
【0022】
切断された廃プラスチックを圧縮乾燥機2に供給する。圧縮乾燥機2は、廃プラスチックを圧縮し、かつその際の摩擦熱等で廃プラスチックを加熱するものであればいずれの型式の物でも良い。ただし、生産性等を考慮すると、図3に示すような、側面に複数の貫通穴25を有するケーシング22内に押込みスクリュー23があり、原料供給口21から供給された廃プラスチックを押込みスクリュー23で廃プラスチックを圧縮して、貫通穴25から押出す方式のものが良い。この装置では、原料供給口21から廃プラスチックを供給して、押し込みスクリュー23により、廃プラスチックに摩擦を生じさせることで、加熱乾燥する。温度が上がった廃プラスチックを貫通穴25から押出す。適正な温度条件とするためには、押し込みスクリュー23を駆動するモーター24の動力を適正範囲にする。なお、温度が不足する場合は、ヒーターを用いて加熱することもある。また、押し込みローラーで廃プラスチックを圧縮して貫通穴から押出す方式のものを使用することも良い。
【0023】
圧縮乾燥時の条件は、廃プラスチックの温度を72℃以上、110℃未満とする。本発明では、廃プラスチックの粒状化物を形成するのではなく、凝集物を作ることから、一般的なプラスチック粒状化物を製造する温度よりも低い処理温度とする。本発明では、廃プラスチック中のポリエチレンを部分的に軟化させる。これは、後述するように、凝集物が壊れやすく、適度な大きさであることが重要であることが理由である。この条件で圧縮乾燥することが必要であるため、上記の温度での処理を行う。ポリエチレンの軟化点は一般的に72〜121℃であり、廃プラスチックを調査した結果、その中に含まれるポリエチレンのうち多くのものの軟化点は85〜95℃であった。更に本発明者らは実験を行い、この結果では、廃プラスチック中のポリエチレンを部分的に軟化点させるためには、72℃以上、110℃未満であることが良いことが判明した。また、望ましくは、72〜100℃であることが良い。ただし、ポリエチレン比率が40%以上である場合などは、85〜100℃の条件が良い。
【0024】
圧縮乾燥する際に、上記の温度範囲に廃プラスチックの温度を制御するためには、圧縮乾燥時に廃プラスチックにかかる動力等を調整する。調整方法は以下に示すとおりである圧縮乾燥では、付着水の一部を蒸発させるため、付着水分比率により、動力等を変更する。この理由は、適切な凝集のためには、あまり動力を掛けすぎると温度が上がりすぎて、プラスチック同士が結合してしまうことと、水分の蒸発が過激となり、突沸ように水蒸気が過激に貫通穴から噴出す現象が起きて、処理が困難になるためである。また、動力が不足すると、温度が不足して、凝集が上手く行かないためである。
【0025】
水分を付着水分が12質量%以上の場合は、処理量(トン)当りの圧縮機の出力である圧縮動力比PR(kWh/トン)を2.5Mw+18<PR<6.5Mw+18(kWh/トン)の範囲とすれば、廃プラスチックの温度を85℃以上、110℃未満とすることができる。また、付着水分が5質量%以上、12質量%未満の場合は、処理量(トン)当りの圧縮機の出力である圧縮出力比PR(kWh/トン)を1.7Mw+17<PR<5.5Mw+17(kWh/トン)の範囲とすれば、廃プラスチックの温度を85℃以上、110℃未満とする。なお、Mwは、廃プラスチックの付着水分比率(質量%)である。以上の操作により、廃プラスチックの温度を所定の範囲とするとともに、付着水分を1/2又はそれ以下とすることができる。この際の貫通穴の内径を25〜100mmとするとともに、必要があれば、一部の当該貫通穴を閉塞して、圧縮装置動力を所定の範囲内とする。
【0026】
付着水分が12質量%以上と比較的水分が多い廃プラスチックの場合は、圧縮乾燥前に廃プラスチックを、熱風装置や回転式乾燥装置で、予備乾燥して水分を12質量%未満とする。この際の温度を90℃以下とする。これは、高温で乾燥すると発火の危険があるからである。その後に、処理量(トン)当りの圧縮機の出力である圧縮出力比PR(kWh/トン)を、1.8Mw+17<PR<4.4Mw+17(kWh/トン)の範囲として、廃プラスチックを圧縮乾燥する。本発明においても、付着水分が12質量%以上では、残留水分が6〜8質量%と比較的多く残ることから、付着水分を低くしたい場合は、この予備乾燥により、安定して低水分の凝集物が得られる。
【0027】
以上の方法で製造した圧縮乾燥して製造した廃プラスチック凝集物は、嵩比重が0.07〜0.2kg/リットルのものである。この嵩比重であると、廃プラスチック凝集物の集合体には、適度の空間があり、ガス化炉内に供給された際に、ガスの発生速度が平均化する利点がある。この廃プラスチック凝集物は、完全に粘着して一体化したものではなく、1mm程度から10mm程度のプラスチック粒子の集合体である。この集合体として、ガス化反応に適しているものは、その大きさが平均15mm以下であるものか、15mm以上のサイズの凝集物であっても、2MPa(約20kg−f/cm3)の圧力で押し潰した際に平均15mm以下のサイズとなるものの比率が90%以上とする。一般に、凝集物が大きすぎると、ガス化炉内での反応が不均一になる傾向がある。従って、凝集物が短時間に分解・気化するのに適した大きさであることが良い。本発明者らの実験結果では、炉内の廃プラスチック供給部分の温度が400〜850℃であれば、凝集物の大きさは15mm以下が望ましいことが判った。ここで、15mmの大きさとは、15mmの網目のスクリーンを通過するサイズであることを言う。また、本発明の凝集物は、容積式などの供給装置の中で力を受けると小粒のものに分解することから、例え15mm以上の大きさであっても、2MPaの圧力で押し潰した際に平均15mm以下のサイズとなるものであれば、供給装置内で分解されて、炉内に供給される際には、適正なサイズとなっていることから、炉内では、同様の反応条件となる。
【0028】
これを図1の供給装置3で、ガス化炉4に供給して、廃プラスチックをガス化する。供給装置3の型式は種々あるが、容積式のものが最も望ましい。ここで、容積式供給装置とは、ケーシング内をスクリューで押し込む方式(スクリュー式フィーダー)、ケーシング内をプッシャーで押し込む方式、一定の容積を持った部分のある回転体が凝集物を取り込んでいく方式(テーブルフィーダーやロータリーフィーダーなど)、その他がある。また、気流搬送式の供給装置を用いることもある。
【0029】
上記の方法により、事前処理された廃プラスチックはガス化炉4で可燃性ガスに転換される。ガス化炉4の型式としては、流動層式、コークス充填層式、噴流式、シャフト炉式などの型式がある。流動層式では、流動化している砂に廃プラスチック凝集物と水蒸気や酸素を供給して、廃プラスチックをガス化する。コークス充填層式では、高温のコークス充填層に廃プラスチック凝集物を供給して、ガス化して、更に酸素や水蒸気でガス成分を調整する。噴流式では、高温のガス化室に廃プラスチック凝集物を吹き込んで、ガス化する。シャフト炉式では、コークスなどのスペーサー機能のある充填層上部から廃プラスチック凝集物を供給して、ガス化して、廃プラスチックに含まれる無機物を溶融してスラグ化する。これらでの処理でのガス化温度は400〜850℃である。
【0030】
以上の方法により、供給された廃プラスチック凝集物は、炭素、水蒸気、酸素等と反応して、水素、一酸化炭素、メタン、エタン、その他炭化水素などの可燃性ガスや窒素、二酸化炭素などのガスに転換される。また、廃プラスチックの一部は、ススやタールに転換される。
【実施例】
【0031】
本発明の方法を実施した操業例を説明する。廃プラスチックの破砕装置は、図2に示される2軸式のものであり、圧縮乾燥機は図3に示される型式のものである。供給装置は、スクリュー式のものと回転式のものを使用して、両者を比較した。ガス化炉は流動層式のもので、流動層の温度を450〜700℃にして、廃プラスチックのガス化処理を行った。
【0032】
原料である廃プラスチックの組成等を表1に示す。原料1は、純度の高い廃プラスチックであり、ポリエチレンを68質量%含むものであった。原料2は、家庭から排出された容器包装を中心とする廃プラスチックであり、比較的水分の高いものである。原料3は、事務所から排出されたもので、廃プラスチックが68質量%、ポリエチレンを27質量%含むものでものである。
【0033】
【表1】

ガス化処理の結果を表2に示す。なお、ガス化反応の安定性については、ガス発熱量のバラツキ(1分平均値の標準偏差)と冷ガス効率(プラスチックの化学エネルギーのうち、ガスの化学エネルギーに添加された比率)を評価基準とした。
【0034】
表2のガス化処理1aは原料1を従来技術で処理した結果である。この処理の結果では、ガス化処理1aでは、ガス容積当り発熱量は10.5MJ/m3であり、ガス発熱量のバラツキは1.1MJ/m3であった。また、冷ガス効率は63.3%であった。一方、本発明の方法のガス化処理1bでは、事前処理で、廃プラスチックの嵩密度0.18kg/リットルであり、付着水分も3.4質量%であった。また、凝集物の80%が15mm以下で、15mm以上のものの全量が2MPaの力で15mm以下となった。この処理の結果では、ガス容積当り発熱量は11.6MJ/m3であり、ガス発熱量のバラツキは0.57MJ/m3であり、また、冷ガス効率は69.4%といずれも向上した値となった。
【0035】
【表2】

表2のガス化処理2aは、原料2を従来技術で処理した結果である。この結果、ガス化処理2aでは、ガス容積当り発熱量は9.1MJ/m3であり、ガス発熱量のバラツキは1.3MJ/m3であった。また、冷ガス効率は58.1%であった。一方、本発明の方法として、ガス化処理2bとガス化処理2cを行った。ガス化処理2bでは、通常の事前処理を行い、廃プラスチックの嵩密度を0.10kg/リットルとして、付着水分も6.8質量%まで低下させた。この結果、ガス容積当り発熱量は10.6MJ/m3まで向上し、ガス発熱量のバラツキは0.81MJ/m3であり、また、冷ガス効率は、63.4%といずれも向上した値となった。また、ガス化処理2cは、まず廃プラスチックを付着水分10.6質量%まで予備乾燥したものを圧縮乾燥した。この結果、廃プラスチックの嵩密度を0.20kg/リットルとして、付着水分も3.8質量%なで低下させた。この結果、ガス容積当り発熱量は11.0MJ/m3まで向上し、ガス発熱量のバラツキは0.52MJ/m3であり、また、冷ガス効率は、64.8%と更に向上した。なお、ガス化処理2b、2cともに、凝集物は15mm以下であるか、15mm以上のものの全量が2MPaの力で15mm以下となった。
【0036】
表2のガス化処理3aは原料3を従来技術で処理した結果である。この結果、ガス化処理3aでは、ガス容積当り発熱量は8.5MJ/m3であり、ガス発熱量のバラツキは0.89MJ/m3であった。また、冷ガス効率は54.6%であった。一方、本発明の方法のガス化処理3bでは、事前処理で、廃プラスチックの嵩密度を0.14kg/リットルとして、付着水分も4.8質量%とした。この結果、ガス容積当り発熱量は9.7MJ/m3であり、ガス発熱量のバラツキは0.43MJ/m3であり、また、冷ガス効率は、59.9%といずれも向上した。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】本発明のガス化装置の全体構成を示す図である。
【図2】廃プラスチックの破砕機の型式例を示す図である。
【図3】廃プラスチックの圧縮乾燥機の型式例を示す図である。
【符号の説明】
【0038】
1 破砕機
2 圧縮乾燥機
3 供給装置
4 ガス化炉
5 ガス処理装置
11 供給口
12 ローター
13 スクリーン
14 リターンコンベア
21 原料供給口
22 ケーシング
23 押込みスクリュー
24 モーター
25 貫通穴

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリエチレンを20〜80質量%含有している廃プラスチックを、最大長で300mm以下に切断した後に、圧縮するとともに加熱して、該廃プラスチックの温度を72℃以上、110℃未満として、嵩比重で0.07〜0.2kg/リットルに減容した後に、ガス化炉に供給してガス化することを特徴とする廃プラスチックのガス化方法。
【請求項2】
付着水分が12質量%以上の廃プラスチックを処理する際に、付着水比率(Mw:質量%)により、処理量(トン)当りの圧縮機の出力である圧縮動力比PR(kWh/トン)を、2.5Mw+18<PR<6.5Mw+18(kWh/トン)とすることを特徴とする請求項1に記載の廃プラスチックのガス化方法。
【請求項3】
付着水分が6質量%以上、12質量%未満の廃プラスチックを処理する際に、付着水比率(Mw:質量%)により、処理量(トン)当りの圧縮機の出力である圧縮動力比PR(kWh/トン)を、1.7Mw+17<PR<5.5Mw+17(kWh/トン)とすることを特徴とする請求項1に記載の廃プラスチックのガス化方法。
【請求項4】
付着水分が12質量%以上の廃プラスチックを圧縮乾燥前に90℃以下の温度で予備乾燥して、水分を12質量%未満とした後に、圧縮するとともに加熱した後に、ガス化処理することを特徴とする請求項1記載の廃プラスチックのガス化方法。
【請求項5】
側面に複数の貫通穴を有しているケーシング内において、スクリュー式圧縮機にて連続的に、廃プラスチックを圧縮して、当該貫通穴から廃プラスチックを押出して圧縮するとともに加熱することを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の廃プラスチックのガス化方法。
【請求項6】
ケーシングの貫通穴の内径を25〜100mmとすることを特徴とする請求項5に記載の廃プラスチックのガス化方法。
【請求項7】
圧縮するとともに加熱して製造した廃プラスチック凝集物を、大きさが平均15mm以下であるものか、15mm以上のサイズの凝集物を2MPaの圧力で押し潰した際に平均15mm以下のサイズであるものの比率が90%以上とすることを特徴とする請求項1から6のいずれか1項に記載の廃プラスチックのガス化方法。
【請求項8】
廃プラスチックを容積式の供給装置にて、ガス化炉に供給して、廃プラスチックをガス化するとすることを特徴とする請求項1から7のいずれか1項に記載の廃プラスチックのガス化方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2011−6619(P2011−6619A)
【公開日】平成23年1月13日(2011.1.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−153084(P2009−153084)
【出願日】平成21年6月29日(2009.6.29)
【出願人】(306022513)新日鉄エンジニアリング株式会社 (897)
【出願人】(000006655)新日本製鐵株式会社 (6,474)
【Fターム(参考)】