説明

廃プラスチックシートの処理方法および処理機構

【課題】回収された廃プラスチックシートの束を搬送しながら確実に平面状に広げることのできる処理機構を提案すること。
【解決手段】廃プラスチックシートの処理機構20では、巻き取り束27の状態から引き出された廃プラスチックシート23の表面中央部分に沿ってノズル36から水を流すことにより水流37を形成し、廃プラスチックシート23の中央部分をガイドベース22の上面22aに押し付けた状態で搬送する。この結果、廃プラスチックシート23は、水流37によってセンタリングされながら左ベルトコンベアー31、右ベルトコンベアー32によって搬送されるので、これらのベルトコンベアー31、32によって確実に左右に平面状に押し広げられる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、束になった状態で回収された長尺状の廃プラスチックシート、例えばビニール製、ポリエチレン製などの使用済みの農業用マルチシートを再資源化するために、廃プラスチックシートを巻き取り状態から引き出して平面状に押し広げる処理を効率良く行うことのできる廃プラスチックシートの処理方法および処理機構に関する。
【背景技術】
【0002】
使用済みの農業用マルチシートはロール状に巻き付けられた巻き取り束の状態で回収される。回収された農業用マルチシートを再原料化するためには、そこに付着あるいは混入している泥、その他の異物を分離除去する必要がある。回収された農業用マルチシートの巻き取り束からは、丸まった状態、皺の付いた状態あるいは折り重なった状態で農業用マルチシートが引き出される。このような状態の農業用マルチシートに付着あるいは混入している泥、その他の異物を除去するためには、農業用マルチシートを平面状に押し広げてブラッシング洗浄などを行う必要がある。
【0003】
農業用マルチシートを平面状となるように搬送しながら左右に押し広げる機構としては、特許文献1において、螺旋状の送り歯が外周面に形成されているローラーを用いるものが提案されている。ここに開示の機構では、円形外周面に螺旋状の送り歯が形成されている送りローラー対を左右に配置し、左側の送りローラー対では、送り方向の回転に伴って、これらの間を搬送されるマルチシートを左側の端に向けて広げながら送り出すように、螺旋状の送り歯が形成されている。右側の送りローラー対では、逆に右側の端に向けて広げながら送り出すように、螺旋状の送り歯が形成されている。これら左右の送りローラー対の上方に巻取り棒が配置されており、農業用マルチシートは、これら左右の送りローラー対の間を通ることにより左右に広げながら送り出されて巻取り棒に巻き取られるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−126099号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、螺旋状の送り歯を備えたローラーを用いて、使用済みの農業用マルチシートなどの長尺状の廃プラスチックシートを束になった状態から引き出して搬送する機構においては、廃プラスチックシートが搬送方向に直交する方向(搬送路の幅方向、ローラーの幅方向)に片寄ってしまい、平面状に広げられた状態で搬送路に沿って送り出すことができないという問題点がある。
【0006】
すなわち、巻き取り束の状態から引き出された廃プラスチックシートは厚さに片寄りがあり、左右のローラー対のうちの一方の側において強く押し付けられた片当りの状態で送り出される。この結果、引き出された廃プラスチックシートは一方の側に徐々に片寄ってしまい、搬送路の幅方向の中心に、押し広げられた廃プラスチックシートの幅方向の中心が一致した状態にはならない。引き出された廃プラスチックシートが一方の側に片寄ると、平面状に十分に押し広げられずに洗浄工程に移ってしまうので付着異物、混入異物を確実に除去することができない。また、廃プラスチックシートが大きく片寄ると、搬送路を規定している側方の部材に当り、その部分で廃プラスチックシートが詰まり、搬送不能な状態に陥ることもある。
【0007】
このために、従来においては束の状態から引き出された廃プラスチックシートを平面状に押し広げる作業を手作業に頼らざるを得ず、このために、廃プラスチックシートの洗浄、裁断工程を含む再資源化のための処理を自動機によって効率良く行うことができなかった。
【0008】
本発明の課題は、この点に鑑みて、束の状態で回収された廃プラスチックシートを引き出して平面状に押し広げながら搬送する処理を人手に頼ることなく確実に行うことのできる廃プラスチックシートの処理方法および処理機構を提案することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の課題を解決するために、本発明の廃プラスチックシートの処理方法は、
回収された長尺状の廃プラスチックシートの巻き取り束から当該廃プラスチックシートを引き出して搬送路に沿って搬送し、
搬送される前記廃プラスチックシートの上面における前記搬送路の幅方向の中央部分に、当該廃プラスチックシートの搬送方向に流れる液体流を形成し、
前記液体流を中心として前記搬送路の下流側および幅方向の両側に向かう方向に傾斜している軌道を含む無限軌道に沿って移動する一対の送り歯付き無端ベルトを用いて、前記液体流が形成された状態の廃プラスチックシートを、前記液体流を中心として前記搬送路の幅方向の両側に平面状に押し広げながら搬送することを特徴としている。
【0010】
本発明では、巻き取り状態から引き出された廃プラスチックシートの上面中央部分に沿って水などの液体を流すことにより液体流を形成し、この状態で、送り歯を備えた無端ベルトを用いて廃プラスチックシートを左右に押し広げて平面状にしながら搬送している。引き出された廃プラスチックシートの上面における搬送路幅方向の中央部分に適切な流量の液体流を形成すると、当該液体流によって廃プラスチックシートのセンター位置が搬送路幅方向の中心に保持される。また、液体流を中心として、廃プラスチックシートが左右一対の送り歯付き無端ベルトによって左右に押し広げられながら搬送される。この結果、廃プラスチックシートが搬送路の幅方向に片寄ってしまうことを防止しながら、廃プラスチックシートを平面状に押し広げることができる。
【0011】
このようにして確実に平面状に押し広げられた状態で廃プラスチックシートを搬送することができるので、この後に、当該廃プラスチックシートの両面をブラッシング洗浄することによって、これらの面から確実に異物を除去することができる。
【0012】
一対の送り歯付き無端ベルトを用いる代わりに、外周面に螺旋状の送り歯が形成されている搬送ローラーを用いて搬送路の幅方向に押し広げながら搬送することも可能である。
【0013】
ここで、巻き取り状態の廃プラスチックシートは、その巻き取り中心側から引き出して搬送路に受け渡すことができる。この場合、巻き取り状態から引き出される廃プラスチックシートの捩れを取るために、回転自在な状態で支持されているターンテーブルに廃プラスチックシートの巻き取り束を載せておけば、ターンテーブルの回転によって引き出される廃プラスチックシートの捩れを解消することができる。この結果、送り歯付き無端ベルトあるいは螺旋状の送り歯付き搬送ローラーによって、搬送される廃プラスチックシートを確実に幅方向の両側に押し広げることができる。
【0014】
また、本発明の方法は農業用マルチシートを再資源化するための処理方法に用いることができる。この場合には、搬送ローラーを経由して押し広げられた状態で搬送される廃プラスチックシートの両面をブラッシング洗浄した後に、当該ブラッシング洗浄後の廃プラスチックシートを所定のサイズに裁断し、得られた廃プラスチックシートの裁断片を洗浄槽内に投入して攪拌することにより、裁断片に付着している異物を洗い落とし、洗浄後の裁断片に付着している洗浄水を振り落とす水切りを行い、水切り後の裁断片を乾燥し、乾燥後の裁断片を溶解してペレット状の再原料にすればよい。
【0015】
次に、本発明は、送り歯付き無端ベルトが備わっている一対のベルトコンベアーを用いて廃プラスチックシートを押し広げながら搬送する廃プラスチックシートの処理機構であって、
長尺状の廃プラスチックシートを搬送する搬送路と、
前記搬送路に沿って搬送される廃プラスチックシートの上面における前記搬送路の幅方向の中央部分に液体を供給して、当該上面の中央部分に前記搬送方向の下流側から上流側に向かって流れる液体流を形成する液体供給部と、
前記搬送路の幅方向において左右対称の状態に配置され、それぞれ送り歯付き無端ベルトが備わっている左ベルトコンベアーおよび右ベルトコンベアーとを有しており、
前記搬送路は、その搬送方向の上流側から下流側に向けて上方に傾斜しており、
前記送り歯付き無端ベルトのそれぞれにおける前記搬送路に沿って搬送される前記廃プラスチックシートに接する軌道は、前記液体流を中心として前記搬送路の下流側および幅方向の両側に向かう方向に傾斜していることを特徴としている。
【0016】
また、本発明は、螺旋状の送り歯を備えた搬送ローラーを用いて廃プラスチックシートを押し広げながら搬送する廃プラスチックシートの処理機構であって、
長尺状の廃プラスチックシートを搬送する搬送路と、
前記搬送路の一方の側に配置した第1搬送ローラーと、
前記搬送路における前記第1搬送ローラーよりも搬送方向の下流側の位置において当該搬送路を挟み前記第1搬送ローラーとは反対の側に配置した第2搬送ローラーと、
前記第1搬送ローラーを経由して搬送される廃プラスチックシートの上面における前記搬送路の幅方向の中央部分に液体を供給して、当該上面の中央部分に前記搬送方向の下流側から上流側に向かって流れる液体流を形成する液体供給部とを有しており、
前記搬送路は、その搬送方向の上流側から下流側に向けて上方に傾斜しており、
前記第1搬送ローラーおよび前記第2搬送ローラーの外周面には、それぞれ、それらの長さ方向において左右対称の状態で一対の螺旋状の送り歯が形成されていることを特徴としている。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明を適用した実施の形態1の廃プラスチックシートの処理機構を示す概略平面図および概略側面図である。
【図2】本発明を適用した実施の形態2の廃プラスチックシートの処理機構を示す概略構成図である。
【図3】図2の処理機構の概略平面図および概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下に、図面を参照して本発明を適用した廃プラスチックシートの処理機構および処理方法の実施の形態を説明する。
【0019】
(実施の形態1)
図1を参照して説明すると、実施の形態1に係る廃プラスチックシートの処理機構20は不図示の機構フレーム21を備えており、この機構フレーム21には平板状のガイドベース22が取り付けられており、このガイドベース22の平坦な上面22aによって廃プラスチックシート23の搬送路が規定されている。ガイドベース22は幅方向においては水平に配置され、前後方向においては後端が上側の位置となるように傾斜配置されている。
【0020】
ガイドベース22の前端よりも搬送方向の上流側の位置には上流側ガイドローラー24が配置されており、ガイドベース22の後端よりも搬送方向の下流側の位置には下流側ガイドローラー25が配置されている。上流側ガイドローラー24よりも搬送方向の上流側の位置にはターンテーブル26が水平に配置されており、ターンテーブル26は垂直軸線26aを中心としていずれの方向にも回転自在である。ターンテーブル26の上面には、ロール状に巻き取られた状態の廃プラスチックシート23、例えば使用済みの農業用マルチシートの巻き取り束27が設置される(以下の説明では、廃プラスチックシートを農業用マルチシートとして説明する。)。
【0021】
ターンテーブル26に設置した巻き取り束27の中心側から引き出された農業用マルチシート23は、上流側ガイドローラー24を介して上方に引き出され、ガイドベース22の上面22aに沿って搬送され、下流側ガイドローラー25を介して下方に搬送されて、次段のブラシ洗浄部(図示せず)に引き渡される。巻き取り束27から農業用マルチシート23を引き出す際には、ターンテーブル26が回転することで、引き出される農業用マルチシート23の巻き付き、捩れが除去されながら当該農業用マルチシート23が引き出される。
【0022】
ここで、ガイドベース22の裏面側には左ベルトコンベアー31および右ベルトコンベアー32が配置されている。左ベルトコンベアー31は、下流側駆動ローラー33と上流側従動ローラー34の間に架け渡した送り歯付き無端ベルト35を備えている。送り歯付き無端ベルト35は、一定幅のベルト本体35aと、ベルト本体35aの外側表面においてベルト送り方向に沿って一定のピッチで取り付けた送り歯35bとを備えている。本例の送り歯35bはベルト送り方向に一直線状に配列された円弧状の突起から形成されている。送り歯35bとしては図示の形状以外のものを用いることも可能である。右ベルトコンベアー32も同様に構成されているので図1においては対応する部位に同一の符号を付してある。
【0023】
左右一対の送り歯付き無端ベルト35は、搬送路幅方向の中心線Lを中心として、搬送方向の上流側から下流側に向かって、搬送路幅方向の両側に広がる方向に左右対称な状態で傾斜している。また、各送り歯付き無端ベルト35の幅方向の両側の端部分は、搬送される農業用マルチシート23を左右に平面状に広げた場合の幅方向の両側縁よりも外方まで延びている。また、ガイドベース22には、送り歯付き無端ベルト35の無限軌道におけるガイドベース22に対峙するベルト部分が、上面22aから上方に露出するように、左右一対の細長い一定幅の長方形の開口部22bが形成されている。これらの開口部22bを介して、送り歯付き無端ベルト35の上側の軌道部分に位置するベルト部分が僅かにガイドベース22の上方に突出していると共に、当該ベルト部分に配列されている送り歯35bが上方に突出している。
【0024】
次に、ガイドベース22の下流側の後端部の上方には、液体供給用のノズル、例えば水供給用のノズル36が配置されている。不図示の水供給源から供給される水はノズル36から、ガイドベース22の上面22aに沿って搬送される農業用マルチシート23の表面(上面)23aに供給される。ノズル36は搬送路幅方向の中央に配置されており、搬送方向の下流側から上流側に向かって水を吹き出す。本例では下に向けて垂直に水を吹き出す。なお、水の代わりに洗浄液などを流すことにより農業用マルチシート23の表面23aの中央部分に液体流を形成してもよい。
【0025】
ノズル36から水を吹き出しながら農業用マルチシート23を搬送すると、農業用マルチシート23の表面23aに沿って、その幅方向の中央部分を搬送方向の下流側から上流側に向けて流れる水流37が形成される。この結果、農業用マルチシート23の中央部分は長さ方向に沿って水流37によってガイドベース22の上面22aに押し付けられる。この結果、農業用マルチシート23の幅方向の中央部分が搬送路幅方向の中央に位置決めされた状態で搬送される。
【0026】
このようにして、農業用マルチシート23が搬送路の中心にセンタリングされた状態で搬送されるので、左ベルトコンベアー31、右ベルトコンベアー32は、農業用マルチシート23をその幅方向の中央を中心として左右に押し広げながら搬送することができる。よって、巻き取り束の状態から固まった状態で引き出された農業用マルチシート23が搬送途中で搬送路の幅方向に片寄ってしまうことがなく、確実に平面状に押し広げられる。
【0027】
平面状に押し広げられた後に農業用マルチシート23は下流側ガイドローラーを介して、洗浄などの後工程の処理部に送り込まれる。例えば、農業用マルチシート23の再資源化の処理においては、予備洗浄工程、シート裁断工程、本洗浄工程、水切り工程、乾燥工程、および造粒工程が順次に施される。予備洗浄工程では、巻き取られた農業用マルチシートを水平に押し広げながら搬送し、搬送される農業用マルチシートの表面および裏面に洗浄水を吹き付けながらブラッシング洗浄を行い、土、野菜屑などの残留異物を洗い落とす。
【0028】
裁断工程では、予備洗浄後の農業用マルチシートを二軸破砕機などを用いて裁断する。次の本洗浄工程では、例えば、裁断した農業用マルチシートを洗浄槽内に投入し、攪拌しながら洗浄して、シルトなどの細かな土、その他の細かな残留異物を確実に洗い落とす。この後の水切り工程では、農業用マルチシートを振動コンベヤ等を用いて振動を加えながら搬送することにより洗浄水を振り落とす。この後に乾燥工程を行い、しかる後に、造粒工程において乾燥後の裁断片を溶解してペレット状の再原料にする。
【0029】
なお、上記の例は本発明を農業用マルチシートの処理に適用したものであるが、本発明は束になった状態で回収される農業用マルチシート以外の長尺状の廃プラスチックシートの処理にも同様に適用可能である。
【0030】
(実施の形態2)
図2および図3を参照して、実施の形態2に係る廃プラスチックシートの処理機構を説明する。実施の形態2の処理機構1は機構フレーム2を備えており、この機構フレーム2は、左右の端に平行に配置した左垂直枠板3および右垂直枠板4を備えている。これら左垂直枠板3、右垂直枠板4の間には、これらの前側から後側に向けて表面側搬送ローラー5、裏面側搬送ローラー6および巻き取りローラー7がこの順序で平行に架け渡されている。表面側搬送ローラー5の手前側にはガイドローラー8が配置されており、この手前には、ターンテーブル9が配置されており、ここに、巻き取られた状態で回収された廃プラスチックシートの束(ロール)が設置される。例えば、使用済みの農業用マルチシート10の束11が設置される。
【0031】
ターンテーブル9に設置した束11から引き出された農業用マルチシート10は、ガイドローラー8に上側から架け渡され、表面側搬送ローラー5に下側から架け渡され、裏面側搬送ローラー6に上側から架け渡された後に、巻き取りローラー7に至る搬送路に沿って搬送されて平面状に押し広げられた状態で巻き取りローラー7に巻き取られる。束11から農業用マルチシート10を引き出す際には、ターンテーブル9が回転することで、引き出される農業用マルチシート10の巻き付きが除去されながら当該農業用マルチシートが引き出される。また、ガイドローラー8に対して表面側搬送ローラー5は同一高さ位置あるいは高い位置に配置されており、裏面側搬送ローラー6は表面側搬送ローラー5と同一高さ位置あるいは高い位置に配置されている。
【0032】
本例では、裏面側搬送ローラー6は表面側搬送ローラー5よりも高い位置に配置されており、これらの間においては、農業用マルチシート10が搬送方向の下流側(裏面側搬送ローラー6の側)から上流側(表面側搬送ローラー5の側)に向けて下方に傾斜した状態に架け渡される。
【0033】
表面側搬送ローラー5の円形外周面には、その長さ方向において左右対称の状態で一対の螺旋状の送り歯5a、5bが形成されている。例えば、一定の径の鉄筋あるいは針金(番線)を、一定のピッチでローラー外周面における長さ方向の中央位置から左右のローラー端に向けて逆向きに螺旋状に巻き付けて溶接などによって固定してある。表面側搬送ローラー5の一対の螺旋状の送り歯5a、5bに農業用マルチシート10を押し付け、この状態で表面側搬送ローラー5を搬送方向に回転すると、農業用マルチシート10の幅方向の左側の部分は左側の送り歯5aによってローラー左端側に向けて押し広げられながら搬送され、農業用マルチシート10の右側の部分は右側の送り歯5bによってローラー右端側に向けて押し広げられながら搬送される。
【0034】
裏面側搬送ローラー6の円形外周面にも、同様に、その長さ方向において左右対称の状態で一対の螺旋状の送り歯6a、6bが形成されている。裏面側搬送ローラー6は、農業用マルチシート10の裏面側に押し付けられた状態で当該農業用マルチシート10を搬送するので、左右の送り歯6a、6bの巻き方向が表面側搬送ローラー5の左右の送り歯5a、5bとは逆になっている。裏面側搬送ローラー6を回転すると、農業用マルチシート10の幅方向の左側の部分は左側の送り歯6aによってローラー左端側に向けて押し広げられながら搬送され、農業用マルチシート10の右側の部分は右側の送り歯6bによってローラー右端側に向けて押し広げられながら搬送される。
【0035】
なお、表面側搬送ローラー5および裏面側搬送ローラー6は例えば歯車列12を介して逆方向に同期回転するようになっている。これらの回転駆動源としては、巻き取りローラー7の駆動モーター13を用いることもできるが、別個の駆動モーターを用いることも可能である。また、表面側搬送ローラー5あるいは裏面側搬送ローラー6を、螺旋状の送り歯を備えた一対のローラーから構成し、これらの間に農業用マルチシートを挟みながら搬送することもできる。また、裏面側搬送ローラー6を搬送方向の上流側に配置し、表面側搬送ローラー5を搬送方向の下流側に配置することも可能である。
【0036】
次に、表面側搬送ローラー5と裏面側搬送ローラー6の間における上方に傾斜した搬送経路部分に沿って搬送される農業用マルチシート10の上方には、液体供給用のノズル、例えば水供給用のノズル14が配置されている。不図示の水供給源から供給される水はノズル14から、表面側搬送ローラー5および裏面側搬送ローラー6の間に傾斜状態に架け渡される農業用マルチシート10の表面(上面)10aに供給される。ノズル14は搬送路幅方向の中央(表面搬送用ローラー5および裏面搬送用ローラー6の長さ方向の中央)に配置されており、搬送方向の下流側から上流側に向かって斜め下方に水を吹き出すようになっている。なお、水の代わりに洗浄液などを流すことにより農業用マルチシート10の表面10aの中央部分に液体流を形成してもよい。
【0037】
ノズル14から水を吹き出しながら農業用マルチシート10を搬送すると、農業用マルチシート10の表面10aに沿って、その幅方向の中央部分を搬送方向の下流側から上流側に向けて流れる水流15が形成される。この結果、農業用マルチシート10の中央部分は長さ方向に沿って水流15の重さによって下方に撓んだ状態になり、農業用マルチシート10の幅方向の中央部分が搬送経路の幅方向の中央に位置決めされた状態で搬送される。
【0038】
このようにして、農業用マルチシート10が搬送経路の中心にセンタリングされた状態で搬送されるので、表面側搬送ローラー5および裏面側搬送ローラー6においては、農業用マルチシート10をその幅方向の中央を中心として左右に押し広げながら搬送する。よって、束の状態から固まった状態で引き出された農業用マルチシート10は、搬送途中で搬送経路の幅方向に片寄ってしまうことがなく、螺旋状の送り歯が付いている双方のローラー5、6によって確実に平面状に押し広げられる。
【0039】
平面状に押し広げられた後に農業用マルチシート10は巻き取りローラー7に巻き取られる。巻き取りローラー7に巻き取られた農業用マルチシート10は、巻き取りローラー7から取り出された後に洗浄などの処理が施される。例えば、農業用マルチシート10の再資源化の処理においては、予備洗浄工程、シート裁断工程、本洗浄工程、水切り工程、乾燥工程、および造粒工程が順次に施される。予備洗浄工程では、巻き取られた農業用マルチシートを水平に押し広げながら搬送し、搬送される農業用マルチシートの表面および裏面に洗浄水を吹き付けながらブラッシング洗浄を行い、土、野菜屑などの残留異物を洗い落とす。
【0040】
裁断工程では、予備洗浄後の農業用マルチシートを二軸破砕機などを用いて裁断する。次の本洗浄工程では、例えば、裁断した農業用マルチシートを洗浄槽内に投入し、攪拌しながら洗浄して、シルトなどの細かな土、その他の細かな残留異物を確実に洗い落とす。この後の水切り工程では、農業用マルチシートを振動コンベヤ等を用いて振動を加えながら搬送することにより洗浄水を振り落とす。この後に乾燥工程を行い、しかる後に、造粒工程において乾燥後の裁断片を溶解してペレット状の再原料にする。
【0041】
なお、上記の例は本発明を農業用マルチシートの処理に適用したものであるが、本発明は束になった状態で回収される農業用マルチシート以外の長尺状の廃プラスチックシートの処理にも同様に適用可能である。
【符号の説明】
【0042】
1 廃プラスチックシートの処理機構
2 機構フレーム
3 左垂直枠板
4 右垂直枠板
5 表面側搬送ローラー
5a、5b 螺旋状の送り歯
6 裏面側搬送ローラー
6a、6b 螺旋状の送り歯
7 巻き取りローラー
8 ガイドローラー
9 ターンテーブル
10 農業用マルチシート
10a 表面
11 束
12 歯車列
13 駆動モーター
14 ノズル
15 水流
20 廃プラスチックシートの処理機構
21 機構フレーム
22 ガイドベース
22a 上面
23 廃プラスチックシート(農業用マルチシート)
23a 表面
24 上流側ガイドローラー
25 下流側ガイドローラー
26 ターンテーブル
27 廃プラスチックシートの巻き取り束
31 左ベルトコンベアー
32 右ベルトコンベアー
33 下流側駆動ローラー
34 上流側従動ローラー
35 送り歯付き無端ベルト
35a ベルト本体
35b 送り歯
36 ノズル
37 水流
L 搬送路幅方向の中心線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
回収された長尺状の廃プラスチックシートの巻き取り束(27)から当該廃プラスチックシート(23)を引き出して搬送路に沿って搬送し、
搬送される前記廃プラスチックシート(23)の上面(23a)における前記搬送路の幅方向の中央部分に、当該廃プラスチックシート(23)の搬送方向に流れる液体流(37)を形成し、
前記液体流(37)を中心として前記搬送路の下流側および幅方向の両側に向かう方向に傾斜している軌道を含む無限軌道に沿って移動する一対の送り歯付き無端ベルト(35)を用いて、前記液体流(37)が形成された状態の廃プラスチックシート(23)を、前記液体流(37)を中心として前記搬送路の幅方向の両側に平面状に押し広げながら搬送することを特徴とする廃プラスチックシートの処理方法。
【請求項2】
回収された長尺状の廃プラスチックシートの巻き取り束(11)から当該廃プラスチックシート(10)を引き出して搬送路に沿って搬送し、
搬送される前記廃プラスチックシート(10)の上面(10a)における前記搬送路の幅方向の中央部分に、当該廃プラスチックシート(10)の搬送方向に流れる液体流(15)を形成し、
前記液体流(15)が形成された状態の廃プラスチックシート(10)を、外周面に螺旋状の送り歯(5a、5b、6a、6b)が形成されている搬送ローラー(5、6)を用いて前記搬送路の幅方向の両側に平面状に押し広げながら搬送することを特徴とする廃プラスチックシートの処理方法。
【請求項3】
請求項1または2において、
前記巻き取り束を回転自在なターンテーブル(9、26)に載せ、当該巻き取り束の中心側から巻き取り状態の廃プラスチックシート(10、23)を引き出し、
前記ターンテーブル(9、26)の回転によって、引き出される廃プラスチックシートの捩れを解消しながら当該廃プラスチックシートを前記搬送路に引き渡すことを特徴とする廃プラスチックシートの処理方法。
【請求項4】
請求項3において、
前記液体流(15、37)を中心として平面状に押し広げられた前記廃プラスチックシート(10、23)の両面をブラッシング洗浄することを特徴とする廃プラスチックシートの処理方法。
【請求項5】
請求項4において、
ブラッシング洗浄後の廃プラスチックシートを所定のサイズに裁断し、
得られた廃プラスチックシートの裁断片を洗浄槽内に投入して攪拌することにより、裁断片に付着している異物を洗い落とし、
洗浄後の裁断片に付着している洗浄水を振り落とす水切りを行い、
水切り後の裁断片を乾燥し、
乾燥後の裁断片を溶解してペレット状の再原料にすることを特徴とする廃プラスチックシートの処理方法。
【請求項6】
請求項1の廃プラスチックシートの処理方法によって廃プラスチックシートを押し広げながら搬送する廃プラスチックシートの処理機構(20)であって、
長尺状の廃プラスチックシート(23)を搬送する搬送路と、
前記搬送路に沿って搬送される廃プラスチックシート(23)の上面(23a)における前記搬送路の幅方向の中央部分に液体を供給して、当該上面の中央部分に前記搬送方向の下流側から上流側に向かって流れる液体流(37)を形成する液体供給部(36)と、
前記搬送路の幅方向において左右対称の状態に配置され、それぞれ送り歯付き無端ベルト(35)が備わっている左ベルトコンベアー(31)および右ベルトコンベアー(32)とを有しており、
前記搬送路は、その搬送方向の上流側から下流側に向けて上方に傾斜しており、
前記送り歯付き無端ベルト(35)のそれぞれにおける前記搬送路に沿って搬送される前記廃プラスチックシート(23)に接する軌道は、前記液体流(37)を中心として前記搬送路の下流側および幅方向の両側に向かう方向に傾斜していることを特徴とする廃プラスチックシートの処理機構(20)。
【請求項7】
請求項2の廃プラスチックシートの処理方法によって廃プラスチックシートを押し広げながら搬送する廃プラスチックシートの処理機構(1)であって、
長尺状の廃プラスチックシート(10)を搬送する搬送路と、
前記搬送路の一方の側に配置した第1搬送ローラー(5)と、
前記搬送路における前記第1搬送ローラー(5)よりも搬送方向の下流側の位置において当該搬送路を挟み前記第1搬送ローラー(5)とは反対の側に配置した第2搬送ローラー(6)と、
前記第1搬送ローラー(5)を経由して搬送される廃プラスチックシート(10)の上面(10a)における前記搬送路の幅方向の中央部分に液体を供給して、当該上面の中央部分に前記搬送方向の下流側から上流側に向かって流れる液体流(15)を形成する液体供給部(14)とを有しており、
前記搬送路は、その搬送方向の上流側から下流側に向けて上方に傾斜しており、
前記第1搬送ローラー(5)および前記第2搬送ローラー(6)の外周面には、それぞれ、それらの長さ方向において左右対称の状態で一対の螺旋状の送り歯(5a、5b、6a、6b)が形成されていることを特徴とする廃プラスチックシートの処理機構(1)。
【請求項8】
請求項6または7において、
廃プラスチックシートの巻き取り束(11、27)を載せる回転自在なターンテーブル(9、26)を有し、
前記巻き取り束の中心側から巻き取り状態の廃プラスチックシートが引き出されて前記搬送路に引き渡されるようになっており、
前記ターンテーブルの回転によって、前記巻き取り束の中心側から引き出される廃プラスチックシートの捩れが解消されることを特徴とする廃プラスチックシートの処理機構(1、20)。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−192602(P2012−192602A)
【公開日】平成24年10月11日(2012.10.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−57706(P2011−57706)
【出願日】平成23年3月16日(2011.3.16)
【出願人】(507111449)サンシンエキスプレス株式会社 (2)
【出願人】(511053230)
【Fターム(参考)】