説明

廃品回収コンテナの天蓋構造及び廃品回収コンテナ

【課題】廃品回収の無人ステーションにおいても、火災発生の初期消火を担保できる廃品回収コンテナの天蓋構造を提供する。
【解決手段】屋外若しくは倉庫に設置される可燃性の廃品を回収保管する上方開放のオープン型コンテナ11に適用する天蓋構造において、コンテナ本体11の上面開口部の上面に、天蓋となる下面開口の下向き箱体13を固定するとともに、該下向き箱体13の天井側に感熱型の自動消火器15を配し、下向き箱体13の一側面下側を切り欠いてコンテナ本体11の上端との間に廃品投入口21、21を形成し、該廃品投入口21、21は自在開閉可能な蓋体23、23を備え、さらに、該廃品投入口21、21の上側縁から自動消火器15との間に熱気逸散防止壁25、25を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、屋外若しくは倉庫に設置される可燃性廃品を資源として回収保管するコンテナの天蓋構造に関する。特に、既製の廃品回収コンテナに取り付けるだけで、無人の廃品回収施設とすることができる廃品回収コンテナの天蓋構造に係る発明である。
【0002】
ここで、可燃性廃品とは、燃え易い紙製廃品(雑古紙、新聞紙、雑誌、牛乳パック、段ボール等)、布製廃品(古布、古着等)およびプラスチック廃品(プラスチック容器、フィルム等)のことを言う。
【背景技術】
【0003】
昨今、環境問題の高まりから、これまでの大量生産・消費・廃棄型の社会経済活動や日常の生活スタイルが見直されつつある。
【0004】
このため、従来、ゴミとして廃棄されていた廃品を資源として循環使用することにより、ゴミを可及的に出さないゴミゼロ社会への転換が求められている。
【0005】
このゴミゼロ社会を実現するために、各自治体、企業さらには家庭から出る循環可能な廃品を、可及的に長時間受け入れられる廃品回収施設の出現が希求されている。
【0006】
そして、回収資源の受入のために長時間、人を配置することは、人件費が嵩み、実際的ではなく、常時解放(受け入れ)型の廃品回収施設(ゴミ回収ステーション)の無人化が要求されている。
【0007】
しかし、常時解放型とした場合において、回収資源中に可燃性廃品が含まれているとき(実際、燃え易い紙製廃品や布製廃品が多い。)、タバコの投げ捨てやイタズラ等により、可燃性廃品が発火することがある。
【0008】
このため、可燃性廃品を回収する廃品回収コンテナを無人化した場合、いたずらや無意識でタバコが廃品投入口から投入されたとき、火災が発生する。したがって、従来は、ゴミ回収ステーションの無人化が困難視されていた。
【0009】
なお、本発明の特許性に影響を与えるものではないが、特許文献1において、消火機構付きゴミ回収箱が提案されている。
【0010】
しかし、特許文献1に記載のゴミ回収箱は、駅等に設置されるいわゆる小形ゴミ箱であり、本発明のような廃品回収コンテナとはその大きさにおいて異質である。特許文献1に記載のゴミ回収箱は、せいぜい高さ70〜80cm以内で平面大きさ50cm四方以内のものであるのに対し、後述の如く、小形に属する2t−4m3タイプのコンテナでも全長2730mm×高さ900mm×幅1530mmである。
【0011】
そして、消火方法も、消火剤を可燃性材料からなる袋型容器に充填して、火災発生時、炎の熱によって袋型容器が破られ、内部の消火剤が箱内に落下し火を消し止めるものであり、本発明の如く、熱感知乃至煙検知して消火剤を下方へ噴射して消火するものとは異質である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特開平7−109001号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明は、上記にかんがみて、無人の廃品回収施設においても、火災発生の初期消火(鎮火)を担保できる廃品回収コンテナの天蓋構造及び廃品回収コンテナを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明者は、上記課題を解決するために、鋭意開発に努力をした結果、下記構成の廃品回収コンテナの天蓋構造に想到した。
【0015】
屋外若しくは倉庫に設置される可燃性の廃品を資源として回収保管する上方開放のオープン型コンテナ(以下、「コンテナ本体」という。)に適用する天蓋構造において、
前記コンテナ本体の上面開口部の上面に、下面開口の下向き箱体が固定されるとともに、該箱体の天井側に感熱型又は煙検知型の自動消火器が配され、
該箱体の一側面下側が切り欠かれて前記コンテナ本体の上端との間に廃品投入口を形成し、該廃品投入口は自在開閉可能な蓋体を適宜備え、さらに、該廃品投入口の上側縁から前記自動消火器との間に熱気(煙)逸散防止壁を備えている、ことを特徴とする。
【0016】
廃品回収コンテナに天蓋構造を適用することにより、無人の廃品回収施設においても、火災の初期消火を担保できる。即ち、廃品回収コンテナのコンテナ本体の一側上端縁に沿って形成される廃品投入口の上側縁から感熱型又は煙検知型の自動消火器との間に熱気(煙)逸散防止壁を備えることにより、自動消火器の作動遅れを阻止できる。火元で暖められた空気(熱気乃至煙)が廃品投入口から逃げることが阻止されて、自動消火器の感知部に熱気/煙が滞留しやすくなり、消火器の迅速な作動(消火液放射)が確実となる。熱気(煙)逸散防止壁が存在しないと、自動消火器の感熱部に熱気/煙の滞留が発生し難く、自動消火器の迅速な作動が担保し難くなる。自動消火器の検知部が作動温度又は煙濃度を検知可能になるまで一定時間が必要なためである。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の一実施形態における回収コンテナの天蓋構造の枠組みを示す斜視図である。
【図2】同じく天蓋構造の枠組みに壁及び開閉蓋を取り付けた状態を示す斜視図である。
【図3】(A)、(B)、(C)は、本発明の回収コンテナの天蓋構造の各モデルを示す横断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の廃品回収コンテナの天蓋構造の一実施形態について説明する。
【0019】
本発明の天蓋構造は、屋外若しくは倉庫に設置される可燃性の廃品を資源として回収保管する上方開放のオープン型コンテナ(以下、「コンテナ本体」という。)11に適用するものである。ここでは、自動消火器は感熱型を例に採り説明する。このため、「熱気(煙)逸散防止壁」は、「熱気逸散防止壁」と称するが、煙検知型でも同様である。
【0020】
即ち、本発明の天蓋構造は、最初から製作してもよいが、既製のコンテナ本体(又は部分改修品)11を利用することにより、回収コンテナの製造コストを低減することができる。使用する既製のコンテナ本体11は、標準的な大人が廃品投入できる高さであれば特に限定されないが、50〜160cmの高さを有する既製のコンテナから選定することが廃品投入作業性の見地から望ましい。
【0021】
例えば、2t−4m3タイプ規格(内寸:全長2730mm×高さ900mm×幅1530mm、板厚(側面)2.3mm、板厚(底板)3.2mm)、4t−8m3タイプ(内寸:全長3600mm×高さ1170mm×幅1910mm、板厚(側面)2.3mm、板厚(底板)3.2mm)、4t−10m3タイプ(全長6000mm×高さ1350mm×2200mm、板厚(側板)3mm、板厚(底板)4mm)等を挙げることができる。(株式会社瑞穂会社案内製品紹介欄から引用、URL: HYPERLINK "http://www.tumuzo.com/contents" http://www.tumuzo.com/contents[平成22年4月16日検索])
なお、図例ではコンテナ本体11の投入品排出口27の扉29が観音開きであるが、投入品排出口の扉が片開き、三方開き、さらには、下開きのコンテナ本体にも、本発明のコンテナの天蓋構造は勿論適用できる。
【0022】
前記コンテナ本体11の上面開口部の上面に、下面開口の下向き箱体13が固定されるとともに、該箱体13の天井側に感熱型の自動消火器15が配されている。
【0023】
ここで、天蓋となる下向き箱体13のコンテナ本体11に対する固定の態様は、組み立て式(分解可能タイプ)、半固着式(部分分解可能タイプ)、固着式(分解不能タイプ)を問わない。
【0024】
即ち、ボルト・ナットやクリップ、嵌着具(パイプ接続)を用いて分解可能としたり、溶接や接着剤により固着(分解不能に固定)したりする。なお、それらの固定作業に際して、コンテナ本体11の開口上端周縁に、適宜、部分的な改造(穴あけ、切削、アングル・チャンネル取付け等の工作)が可能である。
【0025】
本実施形態では、アングルやチャンネルを用いて下向き箱体13の箱体枠17を溶接によりコンテナ本体11上に組み立てる。
【0026】
そして、箱体枠17の天井側中央梁17aに、2箇所、感熱型の消火器15を取り付ける。この消火器15の取付けは、箱体枠17に壁体19を形成した後でもよい。
【0027】
自動消火器15としては、作動温度:50〜100℃のもので、放出パターンPを円錐形状とする下方放出型であるものとすることが望ましい(図3参照)。作動温度:50℃未満では、夏季に誤作動するおそれがあり、作動温度:100℃を超えると、発火後の早期作動が遅れるおそれがある。
【0028】
なお、「火災報知設備の感知器及び発信機に係る技術上の規格を定める省令」では、定温式感知器の公称作動温度は60〜150℃であり、実際は50〜100℃に設定することが多い。
【0029】
具体的な消火器15としては、市販の「全自動消火装置HDW-3320-A」(初田製作所製)等を、使用可能であるが、他の同様な機能を有する自動消火器でも勿論よい。
【0030】
上記下向き箱体13の壁体19を形成する際、少なくとも一側面(図例では長手方向両側、短手方向両側でも可)の下側を切り欠いてコンテナ本体11の上端との間に廃品投入口21、21を形成し、該廃品投入口21、21は自在開閉可能な蓋体23、23を備え、また、該廃品投入口21、21の上側縁と前記自動消火器15との間に熱気逸散防止壁25、25を備えている。
【0031】
なお、蓋体23は、図例では回動式であるが、スライド式であってもよく、さらに、倉庫内に設置するよう場合は、蓋体23は、必然的ではない。
【0032】
上記下向き箱体13は、通常、コンテナ本体11と同一平面形状を有するものとし、高さは、コンテナ本体11の大きさにもよるが、自動消火器15の推奨取付け高さ位置を確保可能な高さで、コンテナ搬送トラック(荷台傾斜トラック)で搬送可能な高さ以下であれば、特に限定されない。通常、回収コンテナCの全体高さが、コンテナ本体11の高さの1.5〜2.5倍(望ましくは2倍前後)となるものとする。具体的には、回収コンテナCの全体高さで、90〜250cmの範囲から適宜設定する。
【0033】
また、下向き箱体13の横断面形状は、コ字形(図3(A))に限られず、テーパ(図3(B))、ドーム状(半円状)(図3(C))、さらには、山形(三角形)等であってもよい。
【0034】
該熱気逸散防止壁25、25は、図例の如く、通常、箱体13の廃品投入口21の周縁から自動消火器15の天井側までの天井側前壁19aで形成する(図2)。
【0035】
壁体19の形成材料は、耐水性、防水性を有し、屋外に設置したとき強風等に耐えるものであれば限定されない。また、鉄板、木板、スレート板、石膏ボード、プラスチック板等の剛性材に限られず、箱体枠17を形成する場合は、プラスチックシート・ゴムシート、キャンバス等、の可撓性材でもよい。
【0036】
壁体19をキャンバス(布)やプラスチックシート等の可燃性材料で形成する場合は、少なくとも、内壁面にアルミ箔を張ったりして不燃化処理ないし薬剤で難燃化処理して耐火層を形成しておくことが望ましい。
【0037】
なお、箱体13の天板等が昇温し易い金属製等である場合は、夏季等の昼間において、箱体13の内部、即ち、回収コンテナCの内部が自動消火器15の作動温度以上に昇温するおそれがある(特に、蓋体23を閉めて略密閉状態になった場合。)。これらの場合は、箱体13の壁体19は断熱構造としたり少なくとも屋根面を遮熱構造(遮熱塗料を塗布)としたりしておくことが望ましい。
【0038】
また、図3(A)の二点鎖線で示す如く、箱体13の内部に、箱体13の壁体19とは別体の傾斜壁を設けて熱気逸散防止壁25としてもよい。傾斜壁とする場合は、傾斜角度は30°以上とする。傾斜角度が小さいと、熱空気の移動速度が低くなり望ましくない。
【0039】
なお、熱気逸散防止壁25を別体に形成した場合は、箱体13の壁体19を各機能に適するものとすることができ、材料選択の幅が増大する。
【0040】
例えば、壁体19は防水性を有すれば難燃性である必然性はなく、熱気逸散防止壁25は、防火性を有すればフィルムでもよく、壁体に要求される剛性(強度)を有する必然性はない。
【0041】
具体的には、壁体19を布製テントで形成し、熱気逸散防止壁25をアルミ板、アルミ箔貼着板等で形成することができる。
【0042】
このとき熱気逸散防止壁25の高さは、廃品投入口21の高さの1/2〜3/2(望ましくは1.5/2〜2.5/2)とする。廃品投入口21の(開口)高さに比して、熱気逸散防止壁25の高さが低いと熱気逸散防止壁25の作用(自動消火器の感知部における熱空気滞留作用)を充分に奏し難く、高さが高いと自動消火器15までの距離が長くなって、自動消火器15の作動所要時間が長くなり、初期消火が遅れるおそれがある。
【0043】
そして、自動消火器の取付け高さは、自動消火器15の放出パターンPにおける円錐形状の前記コンテナ本体11の上端位置での裁断円の大きさが、前記コンテナ本体11の上端位置の開口幅より若干小さいもの(例えば、6〜9割、望ましくは7〜8割)を占めるものとする(図3参照)。通常、回収廃品のコンテナ本体11における投入量は6〜9割(より普通には7〜8割)であるためである。放出パターンPの開口幅同一乃至それより大きいと、消火液の無駄遣いとなり、開口幅に比して小さすぎると必要な消火面積を確保し難くなる。
【0044】
こうすることにより、コンテナ本体11に投入された可燃性の回収廃品の全面に亘り消火液が放射可能となって、火元位置に関係なく初期消火が可能となる。
【0045】
こうして、コンテナ本体を改造して本発明の天蓋構造を形成した、又は、当初から天蓋構造を有するように製造した廃品回収コンテナは、廃品回収ステーションに、傾斜荷台トラック等を用いて、屋外又は開放型倉庫に設置する。
【0046】
その際、監視・防犯対策の観点から、防犯カメラ(ネットワークカメラを含む。)を設置し、さらには、廃品回収コンテナの廃品投入口蓋体23、23が、深夜は閉じ朝に開くようにタイマーで、又は、天候を感知して又は遠隔操作により降雨・降雪時等に閉じ、天候回復時に開くように自動開閉可能としておくことが望ましい。人手で行なうことも可能である。
【0047】
当該廃品回収コンテナは、消火機能付であるため無人化して、仮令、イタズラ等により廃品回収コンテナ内の可燃性廃棄物が発火しても、迅速に自動消火器が作動して前述の理由により初期消火(鎮火)されるため、廃品回収コンテナの周囲にある可燃物に延焼する等のおそれがない。
【符号の説明】
【0048】
11・・・コンテナ本体
13、13B、13C・・・下向き箱体
15・・・自動消火器
17・・・箱体枠
19・・・壁体
21・・・廃品投入口
23・・・廃品投入口蓋体
25・・・熱気(煙)逸散防止壁
C・・・廃品回収コンテナ
P・・・消火液の放出パターン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
屋外若しくは倉庫に設置される可燃性の廃品を資源として回収保管する上方開放のオープン型コンテナ(以下、「コンテナ本体」という。)に適用する天蓋構造において、
前記コンテナ本体の上面開口部の上面に、下面開口の下向き箱体が固定されるとともに、該箱体の天井側に感熱型又は煙検知型の自動消火器が配され、
該箱体の一側面下側が切り欠かれて前記コンテナ本体の上端との間に廃品投入口が形成され、該廃品投入口は自在開閉可能な蓋体を適宜備え、また、該廃品投入口の上端縁から前記自動消火器との間に熱気(煙)逸散防止壁を備えている、
ことを特徴とする廃品回収コンテナの天蓋構造。
【請求項2】
前記自動消火器が、作動温度:50〜100℃のものであることを特徴とする請求項1記載の廃品回収コンテナの天蓋構造。
【請求項3】
前記自動消火器が、放出パターンを円錐形状とする下方放出型であることを特徴とする請求項1記載の廃品回収コンテナの天蓋構造。
【請求項4】
前記自動消火器の放出パターンにおける円錐形状の前記コンテナ本体の上端位置での裁断円の大きさが、前記コンテナ本体の上端位置の開口幅の6〜9割となるような高さに前記自動消火器が配されることを特徴とする請求項3記載の廃品回収コンテナの天蓋構造。
【請求項5】
前記下向き箱体の内壁面が耐火層(不燃層ないし難燃層)で形成されていることを特徴とする請求項1〜4いずれか一記載の廃品回収コンテナの天蓋構造。
【請求項6】
前記下向き箱体の横断面が、天井側でテーパ又は半円状であることを特徴とする請求項1〜5いずれか一記載の廃品回収コンテナの天蓋構造。
【請求項7】
前記コンテナ本体が既製品又は既製品の部分改造品であることを特徴とする請求項1〜6いずれか一記載の廃品回収コンテナの天蓋構造。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか一記載の廃品回収コンテナの天蓋構造を備えていることを特徴とする廃品回収コンテナ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2011−230890(P2011−230890A)
【公開日】平成23年11月17日(2011.11.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−102457(P2010−102457)
【出願日】平成22年4月27日(2010.4.27)
【出願人】(500088807)北勢商事株式会社 (3)
【Fターム(参考)】