説明

廃棄プラスチックの選別システム

【課題】廃棄プラスチックの選別システムにおいて、特に禁忌品と呼ばれるライター、小物金属等はプラスチック包装材の下に隠れている或いはこれらに紛れ込んでいるため視認が極めて困難である。このためこれらの除去に多くの人手を必要としている。破袋後にトロンメル等、篩機を通し小物を篩下に落下させ小物の異物を除去する方法が実用化されているが資源物の収率が悪化する。
【解決手段】篩機の下方に空気搬送型渦気流選別装置を設け、篩目を通過した残渣のうち資源物であるプラスチックフィルム類を風力にて資源系に戻す機構を具備し、高収率化を達成した。篩目は70mm以上で小物異物除去率90%以上、資源物の収率は95%超となった。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主として小物異物が混在する廃棄プラスチック類から小物異物を除去する作業を高効率化し、かつ資源物の高収率化を図る選別システムに関わる。
【背景技術】
【0002】
近年、容器包装リサイクル法に基づく廃棄プラスチック類は、プラスチック製ゴミ袋につめられ資源ごみとして選別回収され、中間処理場にて一次選別の後圧縮減容機にて圧縮減容と矩形のベール化が行われ、再資源化工場へ送られる。再資源化工場ではベールの解体、二次選別、破砕、洗浄、乾燥、粒状化等が行われ再びプラスチック原料へ戻す等のリサイクルに伴う作業がおこなわれている。
【0003】
家庭等から回収される廃棄プラスチック類には、プラスチックの包装材、ゴミ袋等のプラスチックの袋、プラスチックボトル、プラスチックのおもちゃ(異物)の他、禁忌品と呼ばれるライターおよび小型金属ごみ(異物)が混在している。このため異物の除去が重要な作業となる。
【0004】
一般に回収された廃棄プラスック類は、袋を破った(以後破袋と呼ぶ)後、ベルトコンベアに流され、目視による異物除去が実施されている。しかしながらプラスチック包装材は嵩密度が低く嵩張るため、目視による異物の視認を難しくしている。特に禁忌品と呼ばれるライター、小物金属等はプラスチック包装材の下に隠れている、或いはこれらに紛れ込んでいるため視認が極めて困難である。このため破袋後にトロンメル等の篩機により小物を篩下に落下させ小物の異物を機械的に除去する方法も取られている。
【0005】
しかしながらこの場合、篩目が細かいとフィルムに包み込まれた小物異物が取りきれない。一方粗すぎると資源物となるフィルム類の一部も篩目を通過し残渣として落下するため、収率が悪くなる。上記相反する課題の解決が求められている。
更にもう一つの課題として、上述した中間処理場および再資源化工場は、すでに多くの場所で稼動している。改造の場合、新設時に比べて設備のスペースが限られてくるため、搬送を含む設備機器の省スペース化は、実用上重要な課題となる。
【0006】
(特許文献1)は、円錐形のケーシング下部の内周に沿って圧縮空気を吹き込み、ケーシング内に上昇する渦気流を発生させ、各家庭等から収集されたごみ袋等の破袋後の袋、フィルム片等の軽比重物を風力で巻き上げ、瓶、缶、プラボトル等の重比重物と仕分け、分別するものである。分別された袋、フィルム片は、排出口から渦気流の空気とともに排出される。空気搬送する場合は、吸引ダクトを経てサイクロンにて固気分離する。サイクロンの後段に集塵機と吸引ブロワーが必要となる。
(特許文献2)は上記渦気流分別装置の改良にかかわるものであり、各家庭等から収集された粗大ごみ或いは建設廃棄物等の破砕後、軽比重の木片等と重比重の小石、金属片等とを互いに分別する、ごみの埋め立て或いは焼却の前処理分別を目的としている。
尚、上記先行文献では、渦気流をつくるため圧縮空気を用いている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2001−29893号公報
【特許文献2】特開2003−159567号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
篩による小物異物の除去において、篩目が細かいとフィルムに包み込まれた小物異物が取りきれない。一方粗すぎると資源物となるフィルム類の一部が篩目を通過し残渣として落下するため、資源物の収率が悪くなる。これら相反する問題の解決は重要な課題の一つである。
更にもう一つの課題として、上述した中間処理場および再資源化工場は、すでにおおくの場所で稼動している。改造の場合、新設時に比べて設備の設置スペースが限られるため、搬送を含む設備機器の省スペース化は、実用上重要な課題である。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題は以下の手段により解決される.
請求項1は、破袋後の廃棄プラスチックの選別システムにおいて、篩機と、風力選別機を具備し、篩目を通過した残渣のうち風力にて浮遊する軽比重のプラスチック類を分別し、資源物として回収することを特徴とする廃棄プラスチックの選別システムである。これにより資源物の回収率にかかわる問題を解決できる。
請求項2は、前記篩機の有効篩目を70mm以上としている。フィルムに包まれた小型金属類のほとんどが篩目を通過する。これにより異物の除去率が大幅に向上できる。又、有効篩目を90mm以上とすれば小型金属類の他、缶、ボトル類も篩目を通過し、分別できる。廃棄プラスチックの選別作業の大幅な省力化が達成できる。
請求項3は、前記風力選別機が空気搬送型渦気流分別装置であることを特徴としている。空気搬送型渦気流分別装置は、残渣から資源物の選別機能とこれらを輸送する機能を一体化した設備のため、設備機器の設置がきわめて容易となる。又資源物の風力選別に利用した空気を搬送空気の一部として活用できるため、省エネルギーとなり、かつ使用後の選別用空気と搬送用空気の一括処理が可能になる。
【発明の効果】
【0010】
廃棄プラスチックの小物異物の除去作業が大幅に効率化し、かつ資源物の高精度化と高収率化をはかることができる。更に空気搬送型渦気流風力選別装置により、省スペース化、省エネルギー化を図ることができるとともに、既存設備への適用も容易となる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明における一実施形態を示した廃棄プラスチックの処理システム図である。
【図2】空気搬送型渦気流風力選別装置の正面図である。
【図3】図2のA−A断面図である
【図4】図2のB−B断面図である
【図5】従来の廃棄プラスチックの処理システム図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の一実施形態における廃棄プラスチックの処理システムを図1に、空気搬送型渦気流風力選別装置を図2から図4に示す。図2は前記正面図を、図3は図2の示すB―B断面を、図4は図2の示すA―A断面を示している。破袋後の廃棄プラスチック(以下ワークと呼ぶ)は篩機1に投入され、小物異物は篩目から下方へ落下する。篩目を通過できないワークは後段の選別コンベア7に送られ、手選別等にて異物の除去が行われた後、圧縮減容機8に投入される。篩機1の篩目を通過したワークは、残渣投入ホッパー13に落下し、空気搬送型渦気流風力選別装置3にて風に浮遊する軽比重のプラスチック袋片様の資源物と、重比重のライターおよび小型金属等の異物とに分別される。資源物は、空気搬送型渦気流風力選別装置3の資源物排出口14から固気分離装置5へ空気輸送され資源物として圧縮減容機8へ投入される。一方、ライター、小型金属類の小物異物は空気搬送型渦気流風力選別装置3の選別ケーシング11内を通過し下端より、異物コンテナ6に落下する。
空気搬送型風力選別装置3は、図2に示すように下端から上端に向かうにつれて徐々に径が広くなる内周面を有する円錐形の選別ケーシング11と、この選別ケーシング11の上端にあり選別ケーシング11と連通する排出ケーシング12と、この排出ケーシング12の上端にあり排出ケーシング12に連通する残渣投入ホッパー13と、ケーシング11内のほぼケーシング軸上に配置されたワーク散乱用中子17と、図3に示すように選別用ノズル15と図4に示すように空気輸送用ノズル16と、資源物排出口14とにより構成される。
【0013】
選別ケーシング11には図2と図4に示すように、下部にケーシングの内周面に沿ってエアーを噴出する選別用ノズル15が設けられ、選別ケーシング11内に旋回流が形成される。また、選別ケーシング11とほぼ同軸上でかつケーシング上端からケーシングの高さの三分の一程度下がったところに頂点がくるように設置された上面が円錐状のワーク散乱用中子17が設けられている。残渣投入ホッパー13から投入されたワークはこのワーク散乱用中子17に衝突し選別ケーシング11の内周面方向へ散乱される。ワーク散乱用中子17と選別ケーシング11の内周の間隙では上昇成分を有する旋回流が形成されワークのうち風に乗りやすい軽比重のプラススチック片等の資源物は排出ケーシング12へ巻き上げられる。
【0014】
排出ケーシング12には、図4に示すように空気搬送用ノズル16が選別用ノズル15とほぼ同一の円周上かつ同じ向きに設けられている。また、空気搬送用ノズル16の取り付け口から空気噴出方向へ約240度回転した位置に排出口14が設けられている。排出口14の排出方向は排出ケーシング12の接線方向である。排出ケーシング12に巻き上げられてきたプラススチック片等の資源物を含む旋回流は空気搬送用ノズル16から噴出された空気と混合、加速され排出用ケーシング12の資源物排出口14から資源物戻しダクト9へ噴出され、圧縮減容機8の投入口前に設置された固機分離機5へ搬送される。固気分離機5では、被搬送物と搬送空気を分離し、被搬送物を圧縮減容機8へ落下させる。搬送空気は、図示しない除塵機を通して大気へ放出される。
尚、ワーク散乱用中子17と選別ケーシング11の内周の間隙は、有効篩目幅と以上でなければならない。ワーク散乱用中子17は、複数の丸棒状の取り付け具にて選別ケーシング11に取り付けられている。
【0015】
従来の廃棄プラスチックの処理システムを図5に示した。
従来は、篩機1からの落下したワークはすべて異物コンテナ3等にて受けられ、残渣として焼却あるいは埋め立て処分されている。
【実施例】
【0016】
径800mm、長さ1500mmのトロンメル型篩機を使い、篩目サイズと異物除去率および資源物回収率について実験検討した。その結果篩目が70mm以上の時、異物除去率は98%、資源回収率は70%(残渣は投入量の30%)であった。残渣の内訳は、プラスチックフィルム片様資源物が80%、小型金属および割り箸等小型異物が20%であった。尚、試験用のワークは、某市にて分別収集された袋詰めの廃棄プラスチックごみを破袋機にて破袋したものである。篩機としては、トロンメル型の他、ロールスクリーン型、振動型についても試験してみたが、トロンメル型が被選別物に大きな上下動を与えかつ反転させることができるため、最も望ましいことがわかった。
【0017】
この残渣を用いて、ケーシング径600mm、全体高さ800mm(ホッパー除く)の渦気流風力選別装置にて資源物の回収率について実験検討した。選別用空気量が10m3/分以上の時、ライターおよび小型金属様の重量物をのぞく、資源物と割り箸等比較的軽比重の異物のほとんどが巻き上げられた。実験の目安として割り箸が異物側へ落下するように選別エアーを調整した。この場合、残渣中の資源物のうち約10%は渦気流選別装置を通過し異物側に落下したが、約90%は資源物として回収できた。
【0018】
次に、飲料缶、瓶、ボトル類を含むワークにて同様の実験を行った。篩目が100mm以上あれば径が80mm程度までの飲料缶、瓶、ボトル類のほとんどが篩下に落下した。この時、これらと一緒に落下する資源物も増大するがその90%超は渦気流風力選別装置にて選別回収された。通常、異物として混在するボトル形状の異物の径は80mm以下がほとんどのため、大幅な省力化が可能であることが確認できた。
【0019】
以下に空気輸送について詳述する。プラススチック片状の資源物を空気輸送するとき、輸送途上での詰まりを考慮すると、資源物戻りダクト径9は150mm以上、管内流速は15m/秒、望ましくは20m/秒程度が必要になる。仮に、ダクト径が150mmの場合、管内流速20m/秒を達成する風量は、21m3/分となる。一方選別に使用する渦気流は分別するワークにあわせて最適な風速に調整する必要があり、上記渦気流選別装置の場合、選別用空気量は10m3/分以下である。このため輸送用空気量は、選別用空気量と同等以上が必要となる。しかしながら、これの達成は容易でない。
【0020】
即ち、前述したように選別用選別ケーシング11の下端は重量物の落下口となっており開放されている。又、排出ケーシングの上端の一部も残渣投入ホッパー13に連通し開放されている。このためむやみに輸送用空気を吹き込むと輸送用の空気が選別用ケーシング11を逆流し、選別用ケーシング下端から噴出する。また残渣投入ホッパー13からも噴出し残渣が上方に吹き上がる。これらは排出ケーシング12の径および空気輸送用ノズル16からの吹き込み空気の流速と関連があり、排出ケーシング12の径は大きいほど、吹き込み空気の流速は早いほど良好であった。一方排出ケーシングの径は小さいほど、吹き込み空気の流速は遅いほど実用的には望ましい。いろいろ実験検討した結果、排出ケーシング12の径は選別ケーシング11の上端の径の1.5倍以上、吹き込み流速は50m/秒が必要であることが判明した。又、ワーク散乱用中子の傘の開き角は120度程度が良好であった。
【産業上の利用可能性】
【0021】
本発明に係わる廃棄プラスチックの処理システムは、廃棄プラスチックからこ異物を効率的に除去し資源物を高純度化するシステムとして利用できる。
【符号の説明】
【0022】
1・・・篩機、
2・・・篩機ホッパー、
3・・・空気搬送型渦気流風力選別装置、
4・・・送風機
5・・・固気分離機、
6・・・異物コンテナ、
7・・・選別コンベア、
8・・・圧縮減容機
9・・・資源物戻しダクト、
11・・・選別ケーシング、
12・・・排出ケーシング、
13・・・残渣投入ホッパー、
14・・・排出口、
15・・・選別用ノズル、
16・・・空気輸送用ノズル、
17・・・ワーク散乱用中子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
破袋後の廃棄プラスチックの選別システムにおいて、篩機と、風力選別機を具備し、篩目を通過した残渣のうち風力にて浮遊するプラスチック類を資源物として回収することを特徴とする廃棄プラスチックの選別システム
【請求項2】
前記篩機の有効篩目が70mm以上であることを特徴とする請求項1に記載する廃棄プラスチックの選別システム
【請求項3】
前記風力選別機が渦気流分別装置であって、空気輸送用ノズルと排出口を有しかつ選別ケーシングの大径側の径の1.5倍以上の径を有する排出ケーシングを選別ケーシングの上部に選別ケーシングと連通させ設け、風力にて分別された軽比重のプラスチック類を送風機にて空気搬送する機能を具備した空気搬送型渦気流分別装置であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載する廃棄プラスチックの選別システム


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−24662(P2012−24662A)
【公開日】平成24年2月9日(2012.2.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−163458(P2010−163458)
【出願日】平成22年7月21日(2010.7.21)
【出願人】(305039747)
【Fターム(参考)】