説明

廃棄乳処理装置及び方法

【課題】廃棄乳の処理を適切に行う処理装置及び方法を提供する。
【解決手段】沈殿分離槽第一槽10、沈殿分離槽第二槽11、汚泥濃縮貯留槽第一槽12を経て、上向流嫌気汚泥ろ床法を用いる経て、接触ばっ気槽の接触材としてカキ殻を使用したカキ殻接触ばっ気槽22による処理をする、そして、ひも状接触材を使用し曝気する揺動床ばっ気槽第一槽23による処理をする、さらに、炭素繊維を用いた接触ばっ気方式の炭素繊維ばっ気槽30による処理をする。その後、搾乳施設における他の排水とともに、ばっ気型スクリーン、流量調整槽、汚泥濃縮貯留槽第三槽、カキ殻接触槽、揺動床ばっ気槽第二槽、沈殿槽、消毒槽、放流槽を経て放流する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、搾乳施設における排出汚水を廃棄乳の処理をも合わせて行う廃棄乳処理装置及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
搾乳施設(ミルキングパーラー)においては、搾乳機械(牛乳搬送パイプライン、ミルカー、バルクタンク)の洗浄水が排出汚水となる。
また、搾乳プラットホームで排出される糞尿の洗浄水も排出汚水となる。
これらの排出汚水のほかに、廃棄乳の処理の問題がある。廃棄乳は、高脂肪であること及びワクチンを含むことから浄化が難しいといわれる。
特許文献1は、カキ殻を主組成とした排水処理剤を提案する。
特許文献2は、脂質を付着させた乾燥菌体、水溶性金属塩・金属酸化物からなる金属化合物、高分子凝集剤を用いてパーラー排水の浄化をする方法を提案する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−297301号公報
【特許文献2】特開2010−240582号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
家畜排せつ物法(家畜排せつ物の管理の適正化及び利用の促進に関する法律)の完全施行(2004年11月)に伴い、廃棄乳の処理を適切に行う必要性が高まった。
本発明は、廃棄乳の処理を適切に行う処理装置及び方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の処理装置及び方法は、次の四つを主要な特徴とする。第一に、上向流嫌気汚泥ろ床法・UASB(Upflow Anaerobic Sludge Blanket)を組み込む。第二に、カキ殻を接触材として使用する接触ばっ気槽を設ける。第三に、ひも状接触材を接触材として使用し曝気する揺動床ばっ気槽を設ける。第四に、処理工程の後半に炭素繊維を用いた接触ばっ気方式を採用する。
【0006】
本発明に係る廃棄乳処理装置は、搾乳施設において生じる廃棄乳を放流基準に至るよう処理する廃棄乳処理装置であって、廃棄乳を投入し、沈殿分離処理を施す沈殿分離槽第一槽と、該沈殿分離槽第一槽において沈殿分離処理がなされ、流出した処理水を投入し、再び沈殿分離処理を施す沈殿分離槽第二槽と、該沈殿分離槽第二槽及び前記沈殿分離槽第一槽の処理による汚泥を濃縮し、浮上するスラムと濃縮された汚泥とをスラリーポンプにて吸い上げて除去する汚泥濃縮貯留槽第一槽と、該汚泥濃縮貯留槽第一槽、前記沈殿分離槽第一槽及び前記沈殿分離槽第二槽の処理を経た水を、上向流嫌気汚泥ろ床法・UASB(Upflow Anaerobic Sludge Blanket)を用いて処理するUASB槽と、該UASB槽の処理を経た水に、嫌気性処理を施す嫌気ろ床槽と、該嫌気ろ床槽による処理により発生した余剰汚泥を濃縮する汚泥濃縮貯留槽第二槽と、前記嫌気ろ床槽による処理を経た水を投入し、接触材としてカキ殻を用いて曝気するカキ殻接触ばっ気槽第一槽と、該カキ殻接触ばっ気槽第一槽による処理を経た水に対し、ひも状接触材を接触材として使用し曝気する揺動床ばっ気槽第一槽と、該揺動床ばっ気槽第一槽による処理を経た水に対し、炭素繊維を用いた接触ばっ気を施す炭素繊維ばっ気槽と、該炭素繊維ばっ気槽の処理を経た水に対し、汚泥を沈殿させるとともに、上澄みを移流する移流・沈殿槽と、該移流・沈殿槽から移流された水を前記搾乳施設における他の排水とともに、投入するばっ気型スクリーンと、該ばっ気型スクリーンに投入された水の流量を調整する流量調整槽と、該流量調整槽を経た水に対し、カキ殻と接触させて曝気するカキ殻接触曝気槽第二槽と、該カキ殻接触ばっ気槽第二槽による処理を経た水に対し、ひも状接触材を接触材として使用しそれを揺動させつつ曝気する揺動床ばっ気槽第二槽と、該揺動床ばっ気槽第二槽による処理を経た水に対し、沈殿分離処理を施す沈殿槽と、該沈殿槽にて生じた余剰汚泥を濃縮する汚泥濃縮貯留槽第三槽と、前記沈殿槽にて分離された上澄みに対し、病原性微生物を死滅させる処理を施す消毒槽と、該消毒槽にて消毒された水を蓄える放流槽とを有し、前記廃棄乳を放流基準に至るまで処理することを特徴とする。
【0007】
本発明に係る廃棄乳処理方法は、搾乳施設において生じる廃棄乳を放流基準に至るよう処理する廃棄乳処理方法であって、廃棄乳を沈殿分離槽第一槽に投入し、沈殿分離処理を施す第一沈殿分離ステップと、該第一沈殿分離ステップにおいて沈殿分離処理がなされ、流出した処理水を投入し、再び沈殿分離処理を施す第二沈殿分離ステップと、該第二沈殿分離ステップ及び前記第一沈殿分離ステップの処理による汚泥を濃縮し、浮上するスラムと濃縮された汚泥とをスラリーポンプにて吸い上げて除去する第一汚泥濃縮貯留ステップと、該第一汚泥濃縮貯留ステップ、前記第一沈殿分離ステップ及び前記第二沈殿分離ステップの処理を経た水を、上向流嫌気汚泥ろ床法・UASB(Upflow Anaerobic Sludge Blanket)を用いて処理するUASBステップと、該UASBステップの処理を経た水に、嫌気性処理を施す嫌気ろ床ステップと、該嫌気ろ床ステップによる処理により発生した余剰汚泥を濃縮する第二汚泥濃縮貯留ステップと、前記嫌気ろ床ステップによる処理を経た水を投入し、接触材としてカキ殻を用いて曝気する第一カキ殻接触ばっ気ステップと、該第一カキ殻接触ばっ気ステップによる処理を経た水に対し、ひも状接触材を接触材として使用し曝気する揺動床ばっ気ステップと、該第一揺動床ばっ気ステップによる処理を経た水に対し、炭素繊維を用いた接触ばっ気を施す炭素繊維ばっ気ステップと、該炭素繊維ばっ気ステップの処理を経た水に対し、汚泥を沈殿させるとともに、上澄みを移流する移流・沈殿ステップと、該移流・沈殿ステップから移流された水を前記搾乳施設における他の排水とともに、投入するばっ気型スクリーン投入ステップと、該ばっ気型スクリーン投入ステップにて投入された水の流量を調整する流量調整ステップと、該流量調整ステップを経た水に対し、カキ殻と接触させて曝気する第二カキ殻接触ばっ気ステップと、該第二カキ殻接触ばっ気ステップによる処理を経た水に対し、ひも状接触材を接触材として使用し曝気する第二揺動床ばっ気ステップと、該第二揺動床ばっ気ステップによる処理を経た水に対し、沈殿分離処理を施す沈殿ステップと、該沈殿ステップにて生じた余剰汚泥を濃縮する第三汚泥濃縮貯留ステップと、前記沈殿ステップにて分離された上澄みに対し、病原性微生物を死滅させる処理を施す消毒ステップと、該消毒ステップにて消毒された水を蓄える放流ステップとを有し、前記廃棄乳を放流基準に至るまで処理することを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明は、以上のように構成されているから、次の効果を有する。
1 有用微生物を使用するので、乳脂肪や窒素化合物をも分解する。
2 各水槽の役割に応じて微生物が限定されているので、施設の小型化を実現できる。
3 効率のよい働きをするので、余剰汚泥の生成量が少ない。
4 北海道のような寒冷地の冬場でも活発に働く微生物を用いることができるので、北海道における酪農に利用できる。
5 高脂肪とワクチンゆえに浄化が難しいといわれる廃棄乳の処理が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】廃棄乳処理装置の前半部分の構成を示す概念図である。
【図2】廃棄乳処理装置の後半部分(排水処理装置)の構成を示す切り欠き図である。
【図3】廃棄乳処理装置の前半部分の外観を示す9枚の写真である。
【図4】本発明に使用するカキ殻の写真である。
【図5】炭素繊維ばっ気槽に用いる炭素繊維の写真である。
【図6】廃棄乳処理装置の後半部分(排水処理装置)における処理の手順を示す図である。
【図7】廃棄乳処理装置の後半部分(排水処理装置)における各部分の透視度比較写真である。
【図8】装置の設置を開始してから971日後に至るまでのBOD(Biochemical Oxygen Demand:生物化学的酸素要求量)の測定結果を示す折れ線グラフである。
【図9】装置の設置を開始してから971日後に至るまでの透視度の測定結果を示す折れ線グラフである。
【図10】廃棄乳処理装置の設置をしてから110日を越えるに至るまでのCOD(Chemical Oxygen Demand:化学的酸素要求量)の測定結果を沈殿分離槽第一槽、沈殿分離槽第二槽、UASB槽について示す折れ線グラフである。
【図11】廃棄乳処理装置の設置をしてから110日を越えるに至るまでのCOD(Chemical Oxygen Demand:化学的酸素要求量)の測定結果をカキ殻接触ばっ気槽第一槽、揺動床ばっ気槽第一槽、炭素繊維ばっ気槽、移流・沈殿槽について示す折れ線グラフである。
【図12】本発明の廃棄乳処理装置に毎日廃棄乳を120リットル投入し、118日間運転し続けた後に道立総合研究機構の立会のもとに測定したBOD、CODの結果を原水、沈殿分離槽第一槽、沈殿分離槽第二槽、UASB槽、嫌気ろ床槽、カキ殻接触ばっ気槽第一槽、揺動床ばっ気槽第一槽、炭素繊維ばっ気槽について示す表である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照しつつ、本発明の廃棄乳処理装置の実施形態について説明する。
図1は、廃棄乳処理装置の前半部分の構成を示す概念図である。本発明の廃棄乳処理装置は、前半部分と後半部分との二つに大きく分けられる。前半部分は、廃棄乳処理をもっぱら行う装置であり、これのみでは放流基準に至らない可能性がある。後半部分は搾乳施設で発生する排水を処理する装置である。前半部分の処理を終えた水は、後半部分の処理を経て確実に放流基準に至る。
【0011】
図1の沈殿分離槽第一槽10は、廃棄乳を最初に投入する部分である。投入された廃棄乳は、時間をかけることにより腐敗、発酵し、酸性になっていく。そして重力により分離沈降する。沈殿分離槽第一槽10の上澄みをさらに沈殿分離槽第二層11により再度分離沈降させる。汚泥濃縮貯留槽12は、前述した二つの沈殿分離槽で沈殿した汚泥を濃縮して貯めるタンクである。濃縮された汚泥及び浮かんだスカム(脂肪分など)はスラリーポンプを用いて組み上げて、堆肥場に運び、堆肥を作るのに役立てる。
【0012】
沈殿分離槽第一槽10、沈殿分離槽第二層11、汚泥濃縮貯留槽12を経て処理された水は、次に、UASB槽13の反応槽の底から流入させる。UASB槽13は、上向流嫌気汚泥ろ床法・UASB(Upflow Anaerobic Sludge Blanket)を用いるものであり、その反応槽には生物学的に形成された汚泥床が形成されている。この反応槽に必要な微生物は、UASB槽の設置する際に種となる微生物を備え付ける。このUASB法は、周知のもので構わない。UASB槽13に流入させた水は、当該汚泥床を通過して上方に向かって流れていく。この汚泥床には嫌気性菌(酸素を嫌う菌)が保持されており、有機物質をメタン(CH4)、二酸化炭素(CO2)を含む最終生成物にまで生物学的に分解する(嫌気性消化)。UASB法は、汚泥を粒状化して高濃度の生物を保持できる特徴がある。
【0013】
UASB槽13において、遊離ガス及び汚泥より離脱されたガスは、反応槽の頂部に設置されたガス捕集用蓋(図示を省略)中に捕集される。残存固形物や生物粒子を含む液は沈殿池で固液分離される。分離された固形物は、沈降し、邪魔板を通過して汚泥床の表面に戻る。
【0014】
UASB槽13の処理を経た水は、次に、嫌気ろ床槽20により浄化される。固形性ろ材が充填された反応槽を用いるものである。その固形性ろ材の表面には、嫌気性細菌が増殖し保持されている。排水は、そのろ材と接触しながら上方に向かって流れて浄化される。
【0015】
そのあとで、汚泥濃縮貯留槽第二槽を経て、汚泥が蓄えられ、処理された水は、カキ殻接触ばっ気槽第一槽22にてカキ殻に接触しつつ好気性微生物(細菌・カビ・原生動物など)が活動するのに必要な酸素を曝気(ブロワによりタンク中に空気を吹き込むこと)装置により送り込んで、好気性細菌により浄化される。カキ殻は、図4(a)に示すような貝の中身を取り外したあとの殻を網でひとまとめにし図4(b)に示すように、俵状に設置したものを用いることができる。図4(c)は、そのようにひとまとめにした俵状のカキ殻を堆積した様子を示している。
【0016】
カキ殻接触ばっ気槽第一槽22を経た水は、揺動床ばっ気槽第一槽23において、曝気して空気を送り込み、それによりひも状接触材を揺り動かしつつ微生物の活動を活性化させて、浄化される。ここでひも状接触材には、愛知県豊川市のTBR株式会社が販売する「生物膜処理用ひも状接触材PV−45」を使うことができる。このひも状接触材は、ポリ塩化ビニリデンのこまかい繊維をモール状に加工して長いひも状にしたものであり、比表面積が1.4m2/mであり、空隙率が99パーセント以上と大きく、多種多様な微生物が同時に生息できるものである。揺動床ばっ気槽第一槽23(後述する揺動床ばっ気槽第二槽においても同様である。)の上部には、塩ビパイプが10センチメートル間隔で多数並列させて水平に設けられる。そしてその塩ビパイプの一本一本に10センチメートル間隔でひも状接触材の上端を固定し、下端が揺動床ばっ気槽の底近くに達するように垂れ下がらせる。曝気ポンプからの放気は、揺動床ばっ気槽の底付近からなされる。その曝気により、ひも状接触材は、揺動し、処理されるべき排水との接触がなされる。このひも状接触材の表層は、好気性菌が増殖し、中心部では嫌気性菌が発生する。これらの菌は、本装置を排気乳処理装置として運転し続けることにより、発生し、保存される。ひも状接触材の中心部において発生する嫌気性菌は、好気性菌の老化排泄物を摂取し、バランスの良い食物連鎖が起こる。したがって余剰汚泥が減少する。また、高等生物の増殖ができるので、藻類やワムシ、ミジンコによる脱燐ができる。さらに、硝酸菌が増殖し、アンモニア性窒素の消化が促進されるため、脱窒菌による脱窒ができる。返送汚泥の必要がないので維持管理がほとんど不要であり、均一な安定した処理を行うことができる。
【0017】
炭素繊維ばっ気槽30は、炭素繊維を髪の毛のように束ねたもの(図5(a))、タンク内に浸して(図5(b))、曝気することで水中の汚濁物質や微生物が付着するものである(図5(c))。炭素繊維を用いた接触ばっ気方式は、群馬工業高等専門学校物質工学科の小島昭先生の協力を得て開発したものである。
【0018】
炭素繊維をばっ気槽30により浄化された水は、移流・沈殿槽31を経て、図2で示す後半部分の装置(排水処理装置)に移流される。移流・沈殿槽31は、その上澄みだけを次の工程に移流すべく、重力による固液分離を行うタンクである。
【0019】
図1に示した一つ一つのタンクは、たとえばFRP(繊維強化プラスチック)によって構成することができる。FRPサイロの流用も可能である。特に強度が必要な場合には、RC造り(鉄筋コンクリート造り)とする。図3は、廃棄乳処理装置の前半部分の外観を示す9枚の写真である。図3(a)は、沈殿分離槽第一槽を、図3(b)は、沈殿分離槽第二槽を、図3(c)は、汚泥濃縮貯留槽を、図3(d)はUASB槽を、図3(e)は、嫌気ろ床槽を、図3(f)は、カキ殻接触ばっ気槽を、図3(g)は、揺動床ばっ気槽を、図3(h)は炭素繊維ばっ気槽を、図3(i)は、沈殿槽をそれぞれ示している。
【0020】
図2に示すのは、廃棄乳処理装置の後半部分(排水処理装置)の構成を示す切り欠き図である。図2に示すこの装置は、出願人が既に販売している排水処理装置であり、搾乳施設で発生する排水(廃棄乳を除く)を放流基準にまで浄化する実績をもっているものである。
【0021】
図2の装置は、ばっき型スクリーン40、流量調整槽41、汚泥濃縮貯留槽第三槽45、カキ殻接触ばっ気槽第二槽50、揺動床ばっ気槽第二槽60、沈殿槽70、消毒槽80、放流槽90が一体的に構成されている。ばっ気が必要なタンクには曝気装置(ブロワ35)により空気が吹き込まれる。ばっき型スクリーン40は、大きな夾雑物を分離除去する目的でスクリーンを設けたものである。スクリーンの目づまりを防ぐために、常時スクリーンをばっ気するものである。流量調整槽41は、汚水を後段の処理槽に一度に流れていくのを防ぎ、一定量ずつ送るためのタンクである。
【0022】
汚泥濃縮貯留槽第三槽45は、図1の汚泥濃縮貯留槽第一槽12及び汚泥濃縮貯留槽第二槽21と同様の機能を持つタンクである。カキ殻接触ばっ気槽第二槽50は、図1のカキ殻接触ばっ気槽第一槽22と同様の機能を持つタンクである。揺動床ばっ気槽第二槽60は、図1の揺動床ばっ気槽第一槽と同様のタンクである。沈殿槽70は、図1の移流・沈殿槽31と同様の機能を持つタンクである。
【0023】
消毒槽80は、放流直前の消毒を行うタンクである。例えば、次亜塩素酸ナトリウムを用いた消毒が施される。放流槽90は、放流されるべき処理後の水が貯められるタンクである。
【0024】
図6は、廃棄乳処理装置の後半部分(排水処理装置)における処理の手順を示す図である。概ね図2に示すタンクのならびの順に処理が進む。沈殿槽70に蓄えられた汚泥は、汚泥濃縮貯留槽第三槽45に返送される。また、汚泥濃縮貯留槽第三槽45内の汚泥はその一部が流量調整槽41に返送される。
【0025】
図7は、廃棄乳処理装置の後半部分(排水処理装置)における各部分の透視度比較写真である。図7(a)は、流量調整槽41、図7(b)は、汚泥濃縮貯留槽第三槽45、図7(c)は、カキ殻接触ばっ気槽第二槽50、図7(d)は、揺動床ばっ気槽第二槽60、図7(e)は、沈殿槽70の処理水をそれぞれ透明カップに入れて横から写真を撮ったものである。この装置による処理が進むにつれて水が透き通っていく様子がわかる。
【0026】
図8は、図2の装置の設置を開始してから971日後に至るまでのBOD(Biochemical Oxygen Demand:生物化学的酸素要求量)の測定結果を示す折れ線グラフである。横軸は日数を、縦軸はBODの数値を表している。120mg/lが放流基準であり、水平の線を入れて表示してある。装置の設置を開始してから72日目までにはBODの数値が安定していない。微生物の定着に至るまで、調整に時間を要したためである。90日以降は、放流基準をクリアできている。940日ごろに廃棄乳処理装置を増設した。それ以降は、さらにBODの値がよくなっていることが見て取れる。
【0027】
図9は、図2の装置の設置を開始してから971日後に至るまでの透視度の測定結果を示す折れ線グラフである。276日以降は、透視度が20センチメートル以下であり安定している。
【0028】
図10は、図1の廃棄乳処理装置の設置をしてから110日を越えるに至るまでのCOD(Chemical Oxygen Demand:化学的酸素要求量)の測定結果を沈殿分離槽第一槽、沈殿分離槽第二槽、UASB槽について示す折れ線グラフである。設置当初は、微生物の定着に時間を要する。10日を過ぎた頃から、浄化の効果があらわれており、日数が増すにつれて効果が増していることがみてとれる。
【0029】
図11は、図1の廃棄乳処理装置の設置をしてから110日を越えるに至るまでのCOD(Chemical Oxygen Demand:化学的酸素要求量)の測定結果をカキ殻接触ばっ気槽第一槽、揺動床ばっ気槽第一槽、炭素繊維ばっ気槽、移流・沈殿槽について示す折れ線グラフである。18日以降において効果があらわれており、100日を過ぎた頃には顕著な効果が見て取れる。
【0030】
図12は、図1の廃棄乳処理装置に毎日廃棄乳を120リットル投入し、118日間運転し続けた後に道立総合研究機構の立会のもとに測定したBOD、CODの結果を原水、沈殿分離槽第一槽、沈殿分離槽第二槽、UASB槽、嫌気ろ床槽、カキ殻接触ばっ気槽第一槽、揺動床ばっ気槽第一槽、炭素繊維ばっ気槽について示す表である。118日間の運転後は、BODが1、CODが20という数値であり、放流基準まであと一歩のところまできていることがわかる。この数値は、本発明の廃棄乳処理装置の前半部分(図1)だけの成績であり、このあとで、図2の排水処理装置の浄化処理を施すことによって放流が問題ない基準にまで浄化が可能である。
【産業上の利用可能性】
【0031】
搾乳施設(ミルキングパーラー)において利用可能である。乳製品の加工工場において、余剰の牛乳を廃棄する必要がある場合にも利用可能である。
【符号の説明】
【0032】
10 沈殿分離槽第一槽
11 沈殿分離槽第二槽
12 汚泥濃縮貯留槽第一槽
13 UASB槽
20 嫌気ろ床槽
21 汚泥濃縮貯留槽第二槽
22 カキ殻接触ばっ気槽第一槽
23 揺動床ばっ気槽第一槽
30 炭素繊維ばっ気槽
31 移流・沈殿槽
35 ブロワ(ばっ気装置)
40 ばっ気型スクリーン
41 流量調整槽
45 汚泥濃縮貯留槽第三槽
50 カキ殻接触曝気槽第二槽
60 揺動床ばっ気槽第二槽
70 沈殿槽
80 消毒槽
90 放流槽

【特許請求の範囲】
【請求項1】
搾乳施設において生じる廃棄乳を放流基準に至るよう処理する廃棄乳処理装置であって、
廃棄乳を投入し、沈殿分離処理を施す沈殿分離槽第一槽と、
該沈殿分離槽第一槽において沈殿分離処理がなされ、流出した処理水を投入し、再び沈殿分離処理を施す沈殿分離槽第二槽と、
該沈殿分離槽第二槽及び前記沈殿分離槽第一槽の処理による汚泥を濃縮し、浮上するスラムと濃縮された汚泥とをスラリーポンプにて吸い上げて除去する汚泥濃縮貯留槽第一槽と、
該汚泥濃縮貯留槽第一槽、前記沈殿分離槽第一槽及び前記沈殿分離槽第二槽の処理を経た水を、上向流嫌気汚泥ろ床法・UASB(Upflow Anaerobic Sludge Blanket)を用いて処理するUASB槽と、
該UASB槽の処理を経た水に、嫌気性処理を施す嫌気ろ床槽と、
該嫌気ろ床槽による処理により発生した余剰汚泥を濃縮する汚泥濃縮貯留槽第二槽と、
前記嫌気ろ床槽による処理を経た水を投入し、接触材としてカキ殻を用いて曝気するカキ殻接触ばっ気槽第一槽と、
該カキ殻接触ばっ気槽第一槽による処理を経た水に対し、ひも状接触材を使用し曝気する揺動床ばっ気槽第一槽と、
該揺動床ばっ気槽第一槽による処理を経た水に対し、炭素繊維を用いた接触ばっ気を施す炭素繊維ばっ気槽と、
該炭素繊維ばっ気槽の処理を経た水に対し、汚泥を沈殿させるとともに、上澄みを移流する移流・沈殿槽と、
該移流・沈殿槽から移流された水を前記搾乳施設における他の排水とともに、投入するばっ気型スクリーンと、
該ばっ気型スクリーンに投入された水の流量を調整する流量調整槽と、
該流量調整槽を経た水に対し、カキ殻と接触させて曝気するカキ殻接触曝気槽第二槽と、
該カキ殻接触ばっ気槽第二槽による処理を経た水に対し、ひも状接触材を使用し曝気する揺動床ばっ気槽第二槽と、
該揺動床ばっ気槽第二槽による処理を経た水に対し、沈殿分離処理を施す沈殿槽と、
該沈殿槽にて生じた余剰汚泥を濃縮する汚泥濃縮貯留槽第三槽と、
前記沈殿槽にて分離された上澄みに対し、病原性微生物を死滅させる処理を施す消毒槽と、
該消毒槽にて消毒された水を蓄える放流槽と
を有し、前記廃棄乳を放流基準に至るまで処理することを特徴とする廃棄乳処理装置。
【請求項2】
搾乳施設において生じる廃棄乳を放流基準に至るよう処理する廃棄乳処理方法であって、
廃棄乳を沈殿分離槽第一槽に投入し、沈殿分離処理を施す第一沈殿分離ステップと、
該第一沈殿分離ステップにおいて沈殿分離処理がなされ、流出した処理水を投入し、再び沈殿分離処理を施す第二沈殿分離ステップと、
該第二沈殿分離ステップ及び前記第一沈殿分離ステップの処理による汚泥を濃縮し、浮上するスラムと濃縮された汚泥とをスラリーポンプにて吸い上げて除去する第一汚泥濃縮貯留ステップと、
該第一汚泥濃縮貯留ステップ、前記第一沈殿分離ステップ及び前記第二沈殿分離ステップの処理を経た水を、上向流嫌気汚泥ろ床法・UASB(Upflow Anaerobic Sludge Blanket)を用いて処理するUASBステップと、
該UASBステップの処理を経た水に、嫌気性処理を施す嫌気ろ床ステップと、
該嫌気ろ床ステップによる処理により発生した余剰汚泥を濃縮する第二汚泥濃縮貯留ステップと、
前記嫌気ろ床ステップによる処理を経た水を投入し、接触材としてカキ殻を用いて曝気する第一カキ殻接触ばっ気ステップと、
該第一カキ殻接触ばっ気ステップによる処理を経た水に対し、ひも状接触材を使用し曝気する第一揺動床ばっ気ステップと、
該第一揺動床ばっ気ステップによる処理を経た水に対し、炭素繊維を用いた接触ばっ気を施す炭素繊維ばっ気ステップと、
該炭素繊維ばっ気ステップの処理を経た水に対し、汚泥を沈殿させるとともに、上澄みを移流する移流・沈殿ステップと、
該移流・沈殿ステップから移流された水を前記搾乳施設における他の排水とともに、投入するばっ気型スクリーン投入ステップと、
該ばっ気型スクリーン投入ステップにて投入された水の流量を調整する流量調整ステップと、
該流量調整ステップを経た水に対し、カキ殻と接触させて曝気する第二カキ殻接触ばっ気ステップと、
該第二カキ殻接触ばっ気ステップによる処理を経た水に対し、ひも状接触材を使用し曝気する第二揺動床ばっ気ステップと、
該第二揺動床ばっ気ステップによる処理を経た水に対し、沈殿分離処理を施す沈殿ステップと、
該沈殿ステップにて生じた余剰汚泥を濃縮する第三汚泥濃縮貯留ステップと、
前記沈殿ステップにて分離された上澄みに対し、病原性微生物を死滅させる処理を施す消毒ステップと、
該消毒ステップにて消毒された水を蓄える放流ステップと
を有し、前記廃棄乳を放流基準に至るまで処理することを特徴とする廃棄乳処理方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2012−120959(P2012−120959A)
【公開日】平成24年6月28日(2012.6.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−272344(P2010−272344)
【出願日】平成22年12月7日(2010.12.7)
【出願人】(599026658)松尾建設工業株式会社 (1)
【Fターム(参考)】