説明

廃棄物の処理装置及び処理方法

【課題】 廃棄タイヤや廃棄プラスチックを熱処理して、その中から油分を取り出し、再利用するための処理装置を提供する。
【解決手段】 廃棄タイヤ・廃棄プラスチックからなる廃棄物を約400度の熱分解槽で加熱して、炭化物と熱分解されたガスとに分け、当該熱分解ガスだけをパイプを通し油水分離槽へ送り、次に当該熱分解ガスを水で冷却してから油水を分離し、油分だけリフラックスコンデンサーを使用して蒸留する装置であって、
(1)上記熱分解槽を加温するのが電気炉であり、
(2)上記パイプは着脱可能であり、かつ、取替え可能であり、
(3)上記蒸留には油水分離槽の上部のリフラックスコンデンサーを使用し、かつ、リフラックスコンデンサーの中に邪魔板を複数配置する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、廃棄タイヤや廃棄プラスチックを熱処理して、その中から油分を取り出し、再利用するための処理装置に属する。
【背景技術】
【0002】
従来、廃棄タイヤを処理する方法として、特開昭61−162587号公報に開示されるように、廃棄タイヤを加熱用釜に投入し、点火することで燃焼させて可燃性ガスと炭化物とに分離し、この可燃性ガスを釜の上部の直立管を経て2重傾斜還流ガス管に流して冷却することにより、廃棄タイヤから再生重油を製造することが知られている。
【0003】
また、一般タイヤを熱分解すると、水素やメタン等の多量の可燃性ガスが発生することが知られている。400度付近で、ガスの発生が激しくなることが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開昭61−162587号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記の手法では、(1)から(4)の課題が見つかっている。
【0006】
(1)火を使うことで熱分解槽を加熱することが知られているが、時間がかかり、光熱代がかかるという欠点がある。そこで、素早く所望の温度にできる電気を用いることを考案した。
【0007】
(2)熱分解ガスを輸送するパイプは、ガス等が底部に堆積して閉塞を起こし、その排出機能を失うことが多い。そのため、メンテナンスが必要となるが、多大なマンパワーと費用がかかる。そこで、メンテナンス作業の負荷軽減のため、取り外しができ、しかも、取替え可能なパイプを考案した。その継手には、パッキンを使わないこととした。パッキン自体に汚れが付着することによる取替えに係るコストを削減するためである。また、着脱可能なパイプを使うことで、取替えを容易にすることができるようにした。
【0008】
(3)種々雑多に混ざった再生重油の品質が良くないので、より高品質な再生油を抽出する仕組みが必要である。
【0009】
(4)熱分解バッチ運転において、熱分解の終了信号が重要である。従来は熱分解槽出口配管の温度変化により運転制御を行っていたが、熱分解槽からの伝熱の影響が大きく、正確な終了ポイントを把握しにくいという問題があった。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記課題を解決するための手段として、請求項1に記載の発明は、廃棄タイヤ・廃棄プラスチックからなる廃棄物を約400度の熱分解槽で加熱して、その中から廃棄物の原料となっていた油分を取り出すために、炭化物と熱分解されたガスとに分け、当該熱分解ガスから油分を抽出するためのシステムであって、熱分解されたガスだけをパイプを通し油水分離槽へ送り、次に熱分解されたガスを水で冷却してから油水を分離し、油分だけリフラックスコンデンサーを使用して蒸留する装置であって、
(1)上記熱分解槽を加温するのが電気炉であり、
(2)上記パイプは着脱可能であり、かつ、取替え可能であり、
(3)上記蒸留には油水分離槽の上部のリフラックスコンデンサーを使用し、かつ、リフラックスコンデンサーの中に邪魔板を複数配置することの3つを特徴とする廃棄物を再利用するための装置を提供する。
【0011】
前記課題を解決するための手段として、請求項2に記載の発明は、リフラックスコンデンサー内部の温度変化を検出することにより、運転終了の制御を行うことを特徴とする請求項1に記載の廃棄物を再利用するための装置を提供する。
【0012】
前記課題を解決するための手段として、請求項3に記載の発明は、廃棄タイヤ・廃棄プラスチックからなる廃棄物を熱分解槽に入れ、約400度の電気炉を利用して加熱して、廃棄物を炭化物と熱分解ガスとに分ける工程と、熱分解ガスを、着脱可能なパイプを通じて油水分離槽に送る工程と、油水分離槽の上部のリフラックスコンデンサーの中で、熱分解ガスを冷却し、蒸留する工程と、蒸留された油水を、油水分離器を経て油分のみを分解油タンクに送る工程とからなる廃棄物の原料となっていた油分を取り出す方法を提供する。
【発明の効果】
【0013】
加熱手段を電気にすることで効率的で、かつ、交換可能なパイプを利用することでつまりがなく、邪魔板を利用することで品質の高い油分を取得できるので、資源の有効活用が期待できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】廃棄処理のシステム全体図
【図2】リフラックスコンデンサー(還流冷却装置)及び油水分離槽の拡大図
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下に本発明の実施の形態を添付図面に基いて説明する。図1は、本発明の廃棄処理のシステム全体を示す概念図であり、図2は、図1におけるリフラックスコンデンサー(還流冷却装置)及び油水分離槽を拡大して示した図である。
【0016】
廃棄物を投入口より、熱分解槽(100)に投入する。その熱分解槽(100)を加熱する方法は、電気であり、電気炉(104)を使用する。化石燃料を焼却して加温しない。つまり、電気炉(104)を熱分解槽(100)の回りに巻きつけるような形で取り付ける。その熱分解槽(100)に投入された廃棄物は、約400度の温度で加温される。この温度で大量にガスが発生するが、そのガス発生の促進のため、窒素発生装置(図示せず。)を熱分解槽(100)付近に置き、適宜、熱分解槽(100)に、窒素を送り込む。
【0017】
また、その熱分解槽(100)には、撹拌モータ(M)により撹拌できる回転シャフト(103)を使用し、熱分解槽(100)自体は、取り外しができるいわゆるバッチ式を採用している。バッチ式にすれば、取り外し可能な面で、いわゆる連続式よりも、清掃が容易であることを考慮したためである。
【0018】
次に、熱分解槽(100)には、炭化物と熱分解されたガスが発生する。熱分解槽(100)に残った炭化物とは別に、その熱分解ガスは、パイプ(300)を通じて油水分離槽(200)に到達する。このパイプ(300)を通じて到着した熱分解ガスは、未だ高温なので、この油水分離槽(200)の周りは水で冷却できるよう、油水分離槽(200)の周りに水冷手段(201)を取り付ける。油分は水より比重が軽いので、油水分離槽(200)の上の方に溜まる。その溜まった油分を、さらにリフラックスコンデンサー(還流冷却装置)(400)に入れて、冷却し、蒸留する。つまり、フィルタリングすることで、再利用に適した性質の良い油分を取り出す。
【0019】
このリフラックスコンデンサー(400)には、図2に示すように、内部に邪魔板(401)を配置し、何層も水噴霧を行い、当該ガスを洗浄する。この際、邪魔板(401)は、5枚が適当であるが、その枚数は廃棄物との関係で異なる。また、邪魔板(401)は、フィルターとしてもよく、濾過機能によってさらに不純物を効率良く除去することが可能である。さらに、このリフラックスコンデンサー(400)には、複数の仕切板(402)を設けて、その仕切板(402)には、複数の穴を開けておくことで、一度に、大量の油水が下方に落ちていくのを防ぐ。
【0020】
従来のリフラックスコンデンサーは大気放熱による冷却のため、多量処理、また連続使用においては冷却能力が不足する。また、リフラックスコンデンサー(400)内部には冷却能力を向上させるため、邪魔板(401)を複数設けているが、長時間の使用においてはこの表面に固体成分の付着が発生する。従って、リフラックスコンデンサー(400)には、冷却能力を向上させるために水冷手段(403)を設け、内部清掃の効率化のためにリフラックスコンデンサー(400)を分割できる構造とした。
【0021】
リフラックスコンデンサー(400)の冷却特性は、沸点100℃以下の、主としてガソリン等の低沸点の成分を回収するため、リフラックスコンデンサー(400)上部の温度を100℃以下とすることが望ましい。水冷手段(403)の水は、チラー(図示せず)より供給するが、リフラックスコンデンサー(400)上部の冷却能力を上げるため、冷却水は最初に上部を冷却し、次に下部へ供給する方式とした。
【0022】
リフラックスコンデンサー(400)内部には、熱分解ガスが流入するので、流入量に比例して温度が上昇する。熱分解のバッチ運転においては、熱分解ガスの発生量は山形のピークの後に急激に減衰するが、これはリフラックスコンデンサー(400)内部の温度変化と相似する。従って、従来は熱分解槽出口配管の温度変化を検出していたところを、リフラックスコンデンサー(400)の温度変化を検知することにより、より的確な運転終了の制御を行うことが可能となる。
【0023】
また、熱分解槽(100)と油水分離槽(200)とを連結するパイプ(300)については、2箇所でノンパッキンフェルール(管接続部のパッキンを必要としない管継手)を使用して、パイプ(300)を交換することができるようにした。これは、従来のパッキンを使用しないことにより、作業効率の向上及び異物が混入したりするのを防ぐことができる。パイプには、スチールやステンレスを使用するが、熱分解ガスの温度に耐えられる材質ならば何でも良い。
【0024】
リフラックスコンデンサー(400)で蒸留された油分は、油水分離器を通じて、水と油に分けてから、分解油タンクで保存される。一方、液体にならないガスについては、排ガス燃焼装置で燃やして処理する。
【符号の説明】
【0025】
100 熱分解槽
103 回転シャフト
104 電気炉
200 油水分離槽
201 水冷手段
300 パイプ
400 リフラックスコンデンサー(還流冷却装置)
401 邪魔板(フィルター)
402 仕切板
403 水冷手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
廃棄タイヤ・廃棄プラスチックからなる廃棄物を約400度の熱分解槽で加熱して、その中から廃棄物の原料となっていた油分を取り出すために、炭化物と熱分解されたガスとに分け、当該熱分解ガスから油分を抽出するためのシステムであって、
前記熱分解されたガスだけをパイプを通し油水分離槽へ送り、
次に前記熱分解されたガスを水で冷却してから油水を分離し、
油分だけリフラックスコンデンサーを使用して蒸留する装置であって、
(1)上記熱分解槽を加温するのが電気炉であり、
(2)上記パイプは着脱可能であり、かつ、取替え可能であり、
(3)上記蒸留には油水分離槽の上部のリフラックスコンデンサーを使用し、かつ、前記リフラックスコンデンサーの中に邪魔板を複数配置すること、
の3つを特徴とする廃棄物を再利用するための装置。
【請求項2】
前記リフラックスコンデンサーは、前記リフラックスコンデンサー内部の温度変化を検出することにより、運転終了の制御を行うことを特徴とする請求項1に記載の廃棄物を再利用するための装置。
【請求項3】
廃棄タイヤ・廃棄プラスチックからなる廃棄物を熱分解槽に入れ、約400度の電気炉を利用して加熱して、前記廃棄物を炭化物と熱分解ガスとに分ける工程と、
前記熱分解ガスを、着脱可能なパイプを通じて油水分離槽に送る工程と、
前記油水分離槽の上部のリフラックスコンデンサーの中で、前記熱分解ガスを冷却し、蒸留する工程と、
蒸留された油水を、油水分離器を経て油分のみを分解油タンクに送る工程と、
からなる前記廃棄物の原料となっていた油分を取り出す方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2012−12459(P2012−12459A)
【公開日】平成24年1月19日(2012.1.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−149112(P2010−149112)
【出願日】平成22年6月30日(2010.6.30)
【出願人】(510181954)株式会社エヌケイコーポレーション (1)
【Fターム(参考)】