説明

廃棄物の焼却装置

【課題】医療廃棄物としての注射器、カテーテル等の石油製品及び化学製品を焼却しても大気に放出されるダイオキシンを極微量に抑えることができる廃棄物の焼却装置を提供する。
【解決手段】内部に一次燃焼室15を構成した燃焼炉11と、この燃焼炉11の内底部に設けられ、一次燃焼室15で燃焼するための燃料16を載置する火格子17と、一次燃焼室15の内部に突出した状態に設けられ、密閉蓋28を有する開口部27を設けて内部に被焼却物を収容して間接燃焼させる二次燃焼室31を構成するステンレス坩堝24と、このステンレス坩堝24の二次燃焼室31と一次燃焼室15とを連通し、二次燃焼室31で発生した排気ガス、臭気を一次燃焼室15に供給する連通路33と、燃焼炉11に一次燃焼室15の内部と連通して設けられた煙突34とを具備したことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、例えば、病院等から廃棄される注射器、カテーテル等の医療廃棄物を焼却処理する廃棄物の焼却装置に関する。
【背景技術】
【0002】
医療廃棄物としての注射器、カテーテル等の石油製品及び化学製品を焼却すると、有害な排気ガス及び臭気が発生し、大気汚染の問題となる。そこで、これらの廃棄物を焼却する装置は、焼却炉本体に第1の燃焼室と第2の燃焼室を設けている。そして、第1の燃焼室に焼却物を投入して焼却物を燃焼し、この第1の燃焼室で発生した有害な排気ガス及び臭気を煙突から分岐して設けられた排気管を介して第2の燃焼室に導き、この第2の燃焼室で再燃焼して有害な排気ガス及び臭気を除去するようにしたものが知られている(例えば、特許文献1参照。)。
また、主燃焼炉と再燃焼炉とを排気管によって接続して設け、主燃焼炉に焼却物を投入し、この主燃焼炉で発生した有害な排気ガス及び臭気を排気管を介して再燃焼炉に導き、この再燃焼炉で再燃焼して有害な排気ガス及び臭気を除去するようにしたものが知られている(例えば、特許文献2参照。)。
さらに、焼却器本体の内部を火格子によって一次燃焼室と二次燃焼室とに上下に区画し、一次燃焼室に焼却物を投入して焼却物を燃焼し、この一次燃焼室で発生した有害な排気ガス及び臭気を循環通路を介して二次燃焼室に導き、この二次燃焼室で再燃焼して有害な排気ガス及び臭気を除去するようにしたものが知られている(例えば、特許文献3参照。)。
【特許文献1】特許第3015866号公報
【特許文献2】特許第3468925号公報
【特許文献3】特許第3553284号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
前述のように構成された廃棄物の焼却装置は、一次燃焼で発生した有害な排気ガス及び臭気を除去するために二次燃焼し、煙突から大気に排気される有害な排気ガス及び臭気を低減するものである。しかしながら、いずれも燃料としてガスを使用し、火格子上の廃棄物に直接火炎を当てて燃焼するものである。また、一次燃焼で発生した有害な排気ガス及び臭気を再燃焼室に導き、最燃焼するものもあるが、二次空気とガスバーナからの火炎が発生している再燃焼室に有害な排気ガスを送り込んで直接燃焼するようになっている。
従って、有害な排気ガス及び臭気が大気に排気される量を低減できるものの、燃焼室に廃棄物を直接投入及び有害な排気ガスを直接供給しているために、燃焼室内で廃棄物から発生した有害な排気ガス及び臭気は、廃棄物を燃焼する燃焼室と連通している煙突から大気に排気されることになる。このため、医療廃棄物としての注射器、カテーテル等の石油製品及び化学製品を焼却した場合、ダイオキシンの発生が免れない。
また、燃焼室に燃焼用空気を送り込むために、電動送風機を使用しているために、燃料としてのガスと電動送風機を駆動する電気を供給できる地域でないと使用できないとともに、燃料消費量及び電力消費量が嵩むという事情がある。
この発明は、前記事情に着目してなされたもので、その目的とするところは、医療廃棄物としての注射器、カテーテル等の石油製品及び化学製品を焼却しても大気に放出されるダイオキシンを極微量に抑えることができる廃棄物の焼却装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
この発明は、前記目的を解決するために、請求項1は、内部に一次燃焼室を構成した燃焼炉と、この燃焼炉の内底部に設けられ、前記一次燃焼室で燃焼するための薪、廃材等の燃料を載置する火格子と、前記一次燃焼室の内部に突出した状態に設けられ、密閉蓋を有する開口部を設けて内部に被焼却物を収容して間接燃焼させる二次燃焼室を構成する被焼却物容器と、この被焼却物容器の二次燃焼室と前記一次燃焼室とを連通し、二次燃焼室で発生した排気ガス、臭気を一次燃焼室に供給する連通路と、前記燃焼炉に前記一次燃焼室の内部と連通して設けられた煙突とを具備したことを特徴とする廃棄物の焼却装置にある。
請求項2は、請求項1の前記燃焼炉には、前記一次燃焼室の内部に空気を強制的に供給する電動送風機を有し、前記一次燃焼室の内部にエアカーテンを形成したことを特徴とする。
請求項3は、請求項2の前記電動送風機は、太陽光発電システムから電力が供給されることを特徴とする。
請求項4は、請求項1の前記被焼却物容器は、耐熱性を有する密閉されたステンレスまたはセラミック坩堝であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0005】
この発明によれば、被焼却物を密閉された容器に収容し、間接的に燃焼させることにより、医療廃棄物としての注射器、カテーテル等の石油製品及び化学製品を焼却しても大気に放出されるダイオキシンを極微量に抑えることができるという効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
以下、この発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
【0007】
図1〜図3は第1の実施形態を示し、図1は廃棄物の焼却装置の正面図、図2は同じく縦断正面図、図3は被焼却物容器の斜視図である。図1及び図2に示すように、燃焼炉11は立方体箱形状の本体12を有し、この本体12の内周壁には断熱材13と耐熱材14との二重壁が設けられ、内部には一次燃焼室15が構成されている。
【0008】
燃焼炉11の内底部には一次燃焼室15で燃焼するための薪、廃材等の燃料16を載置する火格子17が設けられている。この火格子17の上部に対向する燃焼炉11の前面には薪、廃材等の燃料16を供給する供給口18が設けられ、火格子17の下部に対向する燃焼炉11の前面には灰を排出する排出口19が設けられている。燃焼炉11の前面には供給口18を開閉する開閉扉20と排出口19を開閉する開閉扉21が設けられている。開閉扉20,21にはヒンジ機構20a,21a、クランプ機構20b,21b及び取手20c,21cが設けられている。
【0009】
前記燃焼炉11の上部(上壁)の略中央部には一次燃焼室15と連通する開口22が設けられている。開口22の縁部22aには燃焼炉11の上部に突出する矩形状の耐熱断熱性を有する囲い壁23が設けられている。囲い壁23の内部には病院等から廃棄される注射器、カテーテル等の医療廃棄物Aが収容される被焼却物容器としての耐熱性を有するステンレス坩堝24が着脱可能に設けられている。
【0010】
ステンレス坩堝24は、図3に示すように、上部開口の矩形状の容器であり、開口縁には前記開口22の縁部22aに係止される鍔部25が設けられ、鍔部25には取手26が設けられている。
【0011】
図1に示すように、囲い壁23の開口部27には耐熱断熱性を有する密閉蓋28が設けられている。密閉蓋28は一端部にヒンジ機構29、他端部にクランプ機構30を有し、ヒンジ機構29を支点として上下方向に開閉できるようになっている。そして、ステンレス坩堝24を含む囲い壁23の内部は密閉された二次燃焼室31に形成されている。
【0012】
囲い壁23の側壁には排気管32に一端が接続され、この他端は燃焼炉11に上壁を貫通して一次燃焼室15の内部に突出している。そして、二次燃焼室31と一次燃焼室15とを連通し、二次燃焼室31で発生した有害な排気ガス、臭気を一次燃焼室15に供給(戻す)する連通路33を構成している。また、燃焼炉11の上壁には一次燃焼室15の内部と連通し、一次燃焼室15で発生した排気ガスを大気に放出する煙突34が設けられ、この煙突34の下端は火格子17の上部近傍まで延長している。
さらに、燃焼炉11の側壁には電動送風機35が設けられている。この電動送風機35は太陽電池モジュールからなる太陽光発電パネル36、充電器37からなる太陽光発電システム38から電力が供給されて駆動されるようになっている。電動送風機35によって一次燃焼室15の内部に燃焼用空気を強制的に供給すると、一次燃焼室15の内部にエアカーテン39を形成することができ、一次燃焼室15内の高温空気が煙突34から逃げるのを抑制し、一次燃焼室15内の温度を保つ働きをしている。
次に、廃棄物の焼却装置の作用について説明する。
密閉蓋28を開放し、囲い壁23の内部のステンレス坩堝24に病院等から廃棄される注射器、カテーテル等の医療廃棄物Aを収容した後、密閉蓋28によって開口部27を閉塞する。開閉扉20を開放し、薪、廃材等の燃料16を供給口18から一次燃焼室15に供給し、火格子17の上部に載置する。燃料16に着火するとともに、電動送風機35を駆動して燃焼用空気を一次燃焼室15に供給し、開閉扉20を閉塞する。
燃料16の燃焼によって一次燃焼室15内の温度が徐々に上昇し、1時間程度で900〜1000℃に達し、ステンレス坩堝24の底部及び周面部が加熱される。従って、ステンレス坩堝24の内部の注射器、カテーテル等の医療廃棄物Aは、間接的に加熱されて溶解される。つまり、ステンレス坩堝24の内部の二次燃焼室31は約900℃に達し、注射器のシリンジや注射針は焼却されてステンレス坩堝24の底部に僅かに残滓が残る程度となる。
ステンレス坩堝24の内部の医療廃棄物Aが焼却されると、ダイオキシン等の有害な排気ガスや臭気が発生するが、二次燃焼室31内の有害な排気ガスや臭気は連通路33を介して一次燃焼室15に戻され、一次燃焼室15で再燃焼される。一次燃焼室15の内部には電動送風機35によってエアカーテン39が形成されているため、一次燃焼室15に戻された有害な排気ガスや臭気が煙突34から排気されることはなく、一次燃焼室15内で滞留されて加熱されることになり、有害な排気ガスや臭気を除去することができる。従って、最終的に煙突34から排気されるダイオキシンを極微量に抑制することができる。
【0013】
また、燃料16に薪、廃材等を使用し、太陽光発電システム38から電力によって電動送風機35を駆動することにより、ガスや電気の設備の無い地域に焼却装置を搬送して使用することができ経済的である。
なお、前記実施形態においては、被焼却物容器としての耐熱性を有するステンレス坩堝を使用しているが、セラミックス容器でもよく、また形状も矩形、円形等限定されるものではない。また、被燃焼物は病院等から廃棄される注射器、カテーテル等の医療廃棄物に限定されるものではない。
【0014】
なお、この発明は、前記実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、前記実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組合せにより種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。さらに、異なる実施形態に亘る構成要素を適宜組合わせてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】この発明の第1の実施形態を示す廃棄物の焼却装置の正面図。
【図2】同実施形態を示す廃棄物の焼却装置の縦断正面図。
【図3】同実施形態を示す被焼却物容器の斜視図。
【符号の説明】
【0016】
11…燃焼炉、15…一次燃焼室、16…燃料、17…火格子、24…ステンレス坩堝、27…開口部、28…密閉蓋、31…二次燃焼室、33…連通路、34…煙突、35…電動送風機

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部に一次燃焼室を構成した燃焼炉と、
この燃焼炉の内底部に設けられ、前記一次燃焼室で燃焼するための薪、廃材等の燃料を載置する火格子と、
前記一次燃焼室の内部に突出した状態に設けられ、密閉蓋を有する開口部を設けて内部の被焼却物を間接燃焼させる二次燃焼室を構成する被焼却物容器と、
この被焼却物容器の二次燃焼室と前記一次燃焼室とを連通し、二次燃焼室で発生した排気ガス、臭気を一次燃焼室に供給する連通路と、
前記燃焼炉に前記一次燃焼室の内部と連通して設けられた煙突と、
を具備したことを特徴とする廃棄物の焼却装置。
【請求項2】
前記燃焼炉には、前記一次燃焼室の内部に燃焼用空気を強制的に供給する電動送風機を有し、前記一次燃焼室の内部にエアカーテンを形成したことを特徴とする請求項1の廃棄物の焼却装置。
【請求項3】
前記電動送風機は、太陽光発電システムから電力が供給されることを特徴とする請求項2の廃棄物の焼却装置。
【請求項4】
前記被焼却物容器は、耐熱性を有する密閉されたステンレスまたはセラミック坩堝であることを特徴とする請求項1の廃棄物の焼却装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2007−170748(P2007−170748A)
【公開日】平成19年7月5日(2007.7.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−369530(P2005−369530)
【出願日】平成17年12月22日(2005.12.22)
【出願人】(505474290)株式会社 内村組 (1)
【Fターム(参考)】