説明

廃棄物処理装置

【課題】 廃棄物処理過程において生成される気体を除菌および脱臭して無害化した後に排気することを可能にする。
【解決手段】 本発明の廃棄物処理装置1は、廃棄物10を加熱して滅菌する加熱滅菌槽4に、この加熱滅菌槽4おいて加熱により生成された気体10aを排出するための排気口4bが設けられるとともに、この排気口4bに接続して前記気体10aを外部に排出する排気流路5が設けられる。排気流路5には、除菌手段63および脱臭手段64を有する無害化処理部6が備えられて前記気体10aの無害化処理を行う。また、無害化処理部6の上流側には空気導入路7が連通されて、空気導入路7から流入させた空気90により前記気体10aを希釈して無害化処理部6を通過する気体の適温化が図られる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医療廃棄物等の滅菌処理を必要とする廃棄物の処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、医療廃棄物等の感染性廃棄物のように滅菌処理を必要とする廃棄物は焼却処理されるのが一般的であった。しかしながら、このような感染性廃棄物を焼却処理した場合、廃棄物の種類によってはダイオキシン等の有害ガスが発生するおそれがある。このため、近年では、廃棄物を焼却するのではなく、滅菌処理してから廃棄する方法がとられるようになっている。
【0003】
この種の処理方法には、例えば、特許文献1等に記載されているように高圧蒸気滅菌法や乾熱滅菌法等がある。高圧蒸気滅菌法とは、廃棄物を高圧高温の蒸気に曝すことよって廃棄物中に存在する微生物を殺滅させることによる処理方法である。また、乾熱滅菌法とは、廃棄物を高温雰囲気中(典型的には乾熱空気雰囲気中であるが、あるいは乾熱された不燃性ガス雰囲気中等であってもよい。)で加熱して、廃棄物中に存在する微生物を殺滅させることによる処理方法である。この乾熱滅菌法は、滅菌する際の高温雰囲気中に水蒸気が含まれている場合もあるが、微生物の殺菌に積極的に水蒸気を利用しない点で前記高圧蒸気滅菌法とは異なっている。
【0004】
これに対し、高圧蒸気滅菌法は高温の水蒸気を用いることによって微生物をより効果的に殺滅することができるため、殺滅効率の観点からは好ましい。しかしながら、高圧蒸気滅菌法では、高圧高温の水蒸気ガス雰囲気を形成する必要があるため、耐圧性の密閉型の滅菌槽が必要となる。そこで、このような耐圧性の密閉型の滅菌槽を必要とせず、比較的簡易な設備で容易に実施することができる乾熱滅菌法が広く実施されている。
【0005】
ところで、上記のように廃棄物を高温で滅菌処理すると、滅菌槽においては加熱により水分気化が起こり、滅菌槽の気体の体積が膨張することになる。したがって、膨張した滅菌槽内の気体を装置外へ排出する必要を生じるが、例えば、特許文献2に記載の処理装置においては、滅菌槽の排気口から出た不燃性ガスを循環させ、この循環する不燃性ガスを加熱して感染性廃棄物の加熱滅菌処理を行うように構成されている。
【特許文献1】特許第3961550号公報
【特許文献2】特開平11−276534号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、前記特許文献2に記載されたような従来の医療廃棄物を乾熱滅菌する装置では、被処理物の加熱のための熱源とは全く別に、排ガスを燃焼分解するための燃焼装置が必要となり、設備が大がかりとなって設備コストがかさむうえに、電気および都市ガスを多く消費する等によりランニングコストもかさむという問題点がある。
【0007】
したがって、医療廃棄物を対象とした処理装置において、液状物や水分含有率が高い廃棄物に対してもダイオキシン等の有害ガスや臭気の発生を防止して、人体に悪影響を及ぼすような物質が排出されない構造を備えつつ、設備コストおよびランニングコストを抑えて、滅菌処理や処理物排出等の容易な安全性の高い処理装置とすることが求められた。
【0008】
そこで本発明は、上記のような事情にかんがみてなされたものであり、確実かつ効率的に廃棄物の滅菌が可能で、設備コストおよびランニングコストを抑えた廃棄物処理装置を提供するとともに、かかる廃棄物処理過程において生成される気体を除菌および脱臭して無害化した後に排気することを可能にするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記した目的を達成するため、本発明に係る廃棄物処理装置は、廃棄物を加熱して滅菌する加熱滅菌槽に、この加熱滅菌槽において加熱により生成された気体を排出するための排気口が設けられるとともに、前記気体を外部に排出する排気流路が前記排気口に接続して設けられ、この排気流路には、除菌手段および脱臭手段を有する無害化処理部が備えられて前記気体の無害化処理を行うとともに、この無害化処理部の上流側に空気導入路が連通されて、空気導入路から流入させた空気により前記気体を希釈して無害化処理部を通過する気体の適温化が図られることを特徴としている。
【0010】
このような構成によれば、滅菌処理する必要のある感染性廃棄物は、加熱滅菌槽において加熱され滅菌処理される。その際に生成される余剰の気体は、加熱滅菌槽から排気流路へと導入されて排気流路内で浄化され、無害化されることになるため、衛生的で安全な状態で装置外へと排出することが可能となっている。また、このとき、無害化処理部を通過させる気体を空気導入路から流入した空気と混合させて適温化させているので、無害化処理部の性能を十分に発揮させて浄化し滅菌することが可能となっている。
【0011】
なお、本発明の説明中において「滅菌」とは滅菌対象物(ここでは廃棄物)中に含まれる菌を完全に除去してしまうことに限定されるものではなく、法令等で求められる程度の菌の量まで滅菌対象物に含まれる菌の量を低減することをいうものとする。さらに具体的に説明すると、本発明の加熱滅菌処理によって、廃棄物処理において求められる無菌性保証レベル(sterility assurance level: SAL)以下にまで廃棄物中の微生物の生存量を減少させることを目的としている。
【0012】
また、本発明は前記構成の廃棄物処理装置において、除菌手段が、加熱滅菌槽から排出された気体に含まれる粉塵粒子を除去する高性能フィルターを含むことを特徴としている。これにより、加熱滅菌槽から排出された気体の除菌を行い、清浄化することができる。
【0013】
また、本発明は前記構成の廃棄物処理装置において、脱臭手段が、加熱滅菌槽から排出された気体の臭気を除去する活性炭部を含むことを特徴としている。これにより、気体に含まれる微粒子および臭気成分を吸着除去することができる。
【0014】
また、本発明は前記構成の廃棄物処理装置において、無害化処理部は、さらに、前記気体を気液分離して除湿するミストセパレータと、前記気体中に含まれる粉体成分、水溶性成分または加水分解性成分を除去して前処理するプレフィルターとを含み、排気流路の上流側から順に、ミストセパレータ、プレフィルター、高性能フィルター、および活性炭部が配置されていることを特徴としている。
【0015】
上記の高性能フィルターとして、例えばULPAフィルターを利用することができる。このように無害化処理部を構成することで、加熱滅菌槽から排出された気体を効率よく処理して、除菌および脱臭でき、新鮮空気とほぼ遜色ない程度にまで清浄化して排気することが可能となる。
【0016】
また、本発明は前記構成の廃棄物処理装置において、排気流路の末端には無害化処理部を経た気体を排気する排気ブロアーが設けられることが好ましい。さらに、前記構成の廃棄物処理装置において、無害化処理部の上流側に排気流路内の温度または湿度を測定する検知手段が設けられ、この検知手段により得られた測定情報に基づいて排気流路からの排気量が制御されることが好ましい。これにより、廃棄物を効率的に滅菌処理することが可能になり、安定して確実に滅菌することができる。
【発明の効果】
【0017】
上述のように構成される本発明の廃棄物処理装置によれば、確実かつ効率的に廃棄物の滅菌処理を行うことが可能となり、また、設備コストおよびランニングコストを抑えて、廃棄物処理過程において生成される気体を清浄な無害化状態にして排気することが可能になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明に係る廃棄物処理装置を実施するための最良の形態について、図面を参照しつつ説明する。
【0019】
図1〜図8は本発明の廃棄物処理装置を示し、廃棄物の加熱滅菌処理工程を順を追って模式的に描いた説明図である。
【0020】
この廃棄物処理装置1は、医療施設や医療関係の検査施設から排出されるダイアライザーや注射液のシリンダ、輸液セット、人工肛門や使い捨ておむつ等の排泄物収納袋、その他医療や検査に用いたプラスチックを主体とする医療廃棄物を、加熱滅菌槽4にて加熱することにより乾熱滅菌処理するための装置である。廃棄物処理装置1は、廃棄物投入部2、破砕部3、および廃棄物を加熱滅菌する加熱滅菌槽4を備えている。また、加熱滅菌槽4には、排気口4bおよび排気流路5が接続され、加熱滅菌槽4で廃棄物10を加熱する際に生成された気体10aを無害化処理して排気する経路が設けられている。
【0021】
まず、廃棄物処理装置1における廃棄物10を加熱処理する経路について説明する。
【0022】
廃棄物処理装置1において、廃棄物10が移送されてくる廃棄物投入部2と、その廃棄物10を破砕する破砕部3は隣接して設けられており、その間に設けられた投入口31は開閉可能な投入板21によって仕切られて、破砕部3以降が常時気密状態に密閉されるように構成されている。投入板21は、投入口31に対して進退可能に設けられ、廃棄物10が移送されてきたとき、密閉していた投入口31から後退して、投入口31を開放する仕組みになっている。すなわち、廃棄物投入部2へ到達した廃棄物10は、投入板21が後退することによって開放された投入口31の手前に移送され、続いて投入板21が前進して廃棄物10を投入口31へと移送する。また、これにより、廃棄物10が破砕部3へと投入され、投入板21が投入口31を密閉する。
【0023】
破砕部3には、破砕機32が設置されており、投入された廃棄物10を細かい小片に破砕する。破砕機32は、廃棄物10を破砕できるものであれば特に限定されず、例えば二軸あるいは三軸剪断方式のものであってもよいし、複数の爪が表面に多数形成された破砕部材によって廃棄物10を破砕するものであってもよい。
【0024】
かかる破砕部3の下方には、破砕された廃棄物10を滞留させ、さらにその廃棄物10を加熱するための加熱滅菌槽4が設けられている。加熱滅菌槽4は、破砕部3に連通する導入口4aを端部上方に有し、10バッチ以上の廃棄物10を加熱処理しうる十分な容量を備えた槽として形成されている。
【0025】
この加熱滅菌槽4には、適宜の加熱手段41が配置されている。加熱手段41は、加熱滅菌槽4に移送されて滞留した廃棄物10を加熱して滅菌する。加熱手段41としては、特に限定されるものではなく、例えば、高温のスチームを循環させるスチーム管を槽外周に沿って配設したり、バーナーを槽下部に配設したりしてもよい。あるいは、加熱手段41として電気ヒーターを槽外周に配置するようにしてもよい。
【0026】
また、加熱滅菌槽4には、滞留させた廃棄物10を撹拌するための撹拌手段42が設けられている。撹拌手段42は、例えば、長手方向に伸びる軸421に連設されて放射状にのびる複数の攪拌パドル422から構成されて、軸421とともに駆動手段によって回転駆動するようになっている。これにより、廃棄物10に様々な種類のプラスチック類を含んでいても、撹拌されて混合された状態で加熱されるので、均一に処理することが可能となっている。
【0027】
加熱滅菌槽4においては、破砕された廃棄物10が加熱手段41によって約160℃に加熱され、20〜30分位かけてゆっくりと撹拌されながら滅菌する。加熱滅菌槽4の加熱は、破砕された廃棄物10が最初に投入される以前から開始されて予熱されており、徐々に槽内の温度を上昇させるようになっている。
【0028】
また、槽内の廃棄物10の温度を管理するため、かかる加熱滅菌槽4に対して、排気口4bの近傍に、放射温度計等の非接触式検知器43を設けるようにしてもよい。この場合、検知器43によって、廃棄物10の温度が検知され加熱滅菌槽4における処理温度が制御される。
【0029】
加熱滅菌槽4における処理温度は、前記のように非常に高温であるため、廃棄物10の組成によっては廃棄物10が変性したり溶解したりすることも考えられる。変性や溶解した廃棄物10が検知器に付着して、却って正確な温度検知が困難になることを避けるため、加熱滅菌槽4内の廃棄物10の温度は、槽内の廃棄物10に直接接触する温度検知手段によらずに検知することが好ましい。したがって、例えば、加熱滅菌槽4内の廃棄物10の温度を測定する非接触式検知器43を排気口4bと排気流路5交差部(例えば、排気口4bの中心軸と排気流路5の中心軸の交点、図9参照。)に設けて、それにより加熱滅菌槽4内の廃棄物10の温度を制御するようにすることが好ましい。
【0030】
そして、このような構成の加熱滅菌槽4に、例えば10バッチの所定量の廃棄物10が投入されて、約160℃の加熱温度で処理される際、廃棄物10に含まれていた水分等が水蒸気となり、槽内に気体10aが生成される。加熱滅菌槽4では、この生成された気体10aにより槽内の体積膨張が起こる。廃棄物処理装置1においては、この生成された気体10aを装置外へ排出する前に、気体10aを無害化する処理を行うように構成されている。
【0031】
次に、廃棄物10を加熱処理する際に生成される気体10aの排出経路について、図9を参照しつつ説明する。図9は、廃棄物処理装置1における気体10aの排出経路を模式的に示す説明図である。
【0032】
前記加熱滅菌槽4には、加熱により生成された余剰な気体10aを排出するための排気口4bが設けられている。排気口4bは、導入口4aの反対側の上方に設けられており、槽内に生成された気体10aを効率よく排出しうるようになっている。
【0033】
排気口4bには、気体10aを装置外へ排出する排気流路5が接続されている。また、排気流路5の末端には、排気ブロアー8が設けられている。
【0034】
排気流路5には、除菌手段および脱臭手段を有する無害化処理部6が備えられて、加熱滅菌槽4から排出された気体10aを無害化処理することができるようになっている。例示の形態では、無害化処理部6には、排気流路5の上流側から順に、ミストセパレータ61、プレフィルター62、除菌手段としての高性能フィルター63、および脱臭手段としての活性炭部64が配置されている。
【0035】
排気流路5のミストセパレータ61は、排気流路5に流入した気体10aを気液分離して除湿する。ミストセパレータ61は、例えば水分吸着剤を有して形成されている。高性能フィルターは濡れると性能が低下するおそれがあるが、ミストセパレータ61により気体10aの除湿がなされるため、高性能フィルター63の性能を十分に発揮させることが可能になる。
【0036】
プレフィルター62は、ミストセパレータ61を通過した気体10a中に含まれる比較的粒子の大きな粉体成分、水溶性成分または加水分解性成分等を除去して、次の除菌手段(高性能フィルター63)への負担を軽減させる前処理を行う。プレフィルター62には、例えば、ニッケル合金を網状に構成してなる多孔質フィルターなどが好ましい。
【0037】
また、除菌手段としては、加熱滅菌槽4から排出されて、ミストセパレータ61およびプレフィルター62を通過した気体10aに含まれる粉塵粒子を除去する高性能フィルター63が採用されている。高性能フィルター63は、例えば、大気中における粒径0.15μm以上の微粒子に対して99.9995%以上の捕集率を備えるULPAフィルター(Ultra Low Penetration Air Filter)が好ましく、さらに高い捕集率を備えた超ULPAフィルター等であってもよい。これにより、ウイルス等が気体10a中に含まれていたとしても捕集して気体10aから除去することができる。
【0038】
さらに、脱臭手段としては、装置外へ排出される気体10aの臭気を除去する活性炭部64であることが好ましい。活性炭部64は、吸着脱臭作用を有する活性炭を含むフィルターや活性炭の充填されたユニットからなる。これにより、気体10aに含まれる微粒子および臭気成分が除去され、無臭化される。
【0039】
これらの無害化処理部6の構成により、加熱滅菌槽4から排出された気体10aは、除菌・消臭され、新鮮空気とほぼ遜色ない程度にまで清浄化される仕組みになっている。
【0040】
ここで、無害化処理部6における高性能フィルター63の除菌性能と活性炭部64の脱臭性能を十分に発揮させるためには、これらを通過する気体温度が、10〜70℃までの範囲であることが好ましい。そこで、例示の形態においては、排気流路5において無害化処理部6の上流側に空気導入路7が連通されて、空気導入路7から流入させた空気90により、排気流路5を流通する気体10aを希釈して、無害化処理部6に対する適温化が図られるようになっている。すなわち、排気流路5に取り入れられる空気90は、通常、約30℃程度までの外気温であり、加熱滅菌槽4から排出された高温の気体10aと合流・混合されて、10〜70℃までの範囲で適温化された気体10aを生成するのに利用されている。
【0041】
空気導入路7は、排気流路5の無害化処理部6の上流側で、さらに好ましくは排気口4bの上流側に設けられて、排気流路5へと外部の新鮮空気を供給しうるようになされている。具体的には、図5に示されるように、廃棄物投入部2に空気導入路7を連通させて、廃棄物投入部2に流入している外気をそのまま送り込むように構成されることが効率的である。
【0042】
かかる無害化処理部6は、ミストセパレータ61、プレフィルター62、高性能フィルター63、および活性炭部64がそれぞれ単独で排気流路5に備えられるに限らず、これらの一部または全部がサンドイッチ構造とされた処理ユニットが排気流路5の下流側に設置される構成であってもよい。
【0043】
さらに、排気流路5において無害化処理部6の上流側に、排気流路5内の温度または湿度を測定する検知手段51が設けられる。検知手段51は、温度・湿度センサが望ましい。この検知手段51により得られた温度・湿度情報に基づいて、排気ブロアー8の稼働率が制御され、空気導入路7から供給される空気量や、排気流路5からの排気量が管理されている。
【0044】
なお、この排気ブロアー8を始め、加熱手段41および撹拌手段42等は図示しない制御手段によって制御されている。また、かかる制御手段は構成部材ごとに設けてもよいが、すべての構成部材を一つの制御手段で一括して制御するようにしてもよい。
【0045】
このように構成される廃棄物処理装置1の動作について図1〜図8を参照しつつ説明する。
【0046】
まず、加熱手段41によって加熱滅菌槽4の加熱が開始され、所定の温度に予熱される。この加熱滅菌槽4の予熱完了後、図1に示すように、廃棄物投入部2に廃棄物10が移送されてくる。
【0047】
次に、図2に示すように、廃棄物投入部2において投入板21が後退し、投入口31が開放される。そして、図3に示すように、搬送台22に載置された1バッチの廃棄物10が上方に持ち上げられる。続いて、図4に示すように、投入板21が前進して搬送台22上の廃棄物10を投入口31方向へ移送する。これにより、投入口31から廃棄物10が破砕部3内に投入される。
【0048】
廃棄物10の投入完了後、図5に示すように、投入板21が投入口31を閉止し、密閉される。また、廃棄物10の搬送台22は降下して待機状態となる。破砕部3においては、駆動手段によって破砕機32が回転駆動され、廃棄物10が細片に破砕される。破砕された廃棄物10は、順次、加熱滅菌槽4に滞留される。
【0049】
また、排気ブロアー8を稼働させると、廃棄物投入部2から外気が供給され、空気90が空気導入路7を通って排気流路5に導入されるようになる。このとき、破砕部3は投入口31が密閉されているので、破砕部3および加熱滅菌槽4へは空気90は導入されず、効率的に加熱されることが可能となる。
【0050】
続いて、図6に示すように、破砕されて加熱滅菌槽4に滞留した廃棄物10は、加熱手段41によって加熱滅菌がなされる。加熱滅菌槽4においては、撹拌手段42を回転駆動させることによって滞留した廃棄物10を撹拌しながら加熱処理がなされる。図7に示すように、加熱滅菌槽4が所定容量に達するまで、廃棄物10は投入口31から投入され、破砕されて、加熱滅菌槽4への移送が継続される。
【0051】
加熱滅菌槽4での加熱滅菌処理は、160℃で30分間行われる。廃棄物10が順次、加熱滅菌槽4へ投入されることで加熱滅菌槽4の温度は一旦低下することがあるが、非接触式検知器43によって槽内の廃棄物10の温度がモニタされ、制御手段が加熱手段41の駆動を制御し、適温に管理されている。
【0052】
また、かかる廃棄物10の破砕、加熱処理の間、加熱滅菌槽4からは生成された気体10aが排気口4bから排気流路5へと排出されている。同時に、排気流路5においては、検知手段51により温度・湿度情報が計測され、排気ブロアー8の稼働率を制御しつつ、空気導入路7から廃棄物投入部2を経由して新鮮空気90が供給されている。
【0053】
排気流路5においては、加熱滅菌槽4から排出された気体10aが、空気導入路7からの新鮮空気90と混合されて適温化が図られた後、無害化処理部6を通過する。気体10aは、ミストセパレータ61、プレフィルター62、高性能フィルター63、および活性炭部64を経て無害化され、排気ブロアー8を介して装置外へと放出される。
【0054】
そして、廃棄物10の所定時間の加熱処理が終了すると、廃棄物10の滅菌が完了し、図8に示すように、投入口31を開放して高温になっている廃棄物10の冷却を行う。廃棄物10の冷却処理に際しても、引き続き撹拌手段42を回転駆動させることにより、短時間での冷却が可能になる。十分に廃棄物10の冷却が完了すれば、加熱滅菌槽4から滅菌された廃棄物10を取り出して、廃棄物10の滅菌処理を終える。
【0055】
廃棄物処理装置1は以上のように構成されることで、確実かつ効率的に廃棄物10の滅菌処理が可能であり、かつ、廃棄物処理過程において生成される気体10aを除菌および脱臭して無害化した後に排気することを可能にし、大がかりな設備を必要とせず、設備コストおよびランニングコストを抑えて効率よく廃棄物10の加熱滅菌処理を行うことができる。そして、これにより、廃棄物10から発生するおそれのある有害な物質を確実に除去できるとともに、これまで外部委託していた医療廃棄物の処理を、院内や検査機関の施設内で行い、取扱いの容易な一般樹脂系廃棄物ごみとして廃棄することも可能になる。
【0056】
なお、かかる廃棄物処理装置1は、トラック等の車両の荷台に搭載されて廃棄物処理車両を構成するようになされてもよい。また、本発明は前記構成に限定されるものではなく、例えば廃棄物処理装置1において、加熱滅菌槽4において加熱処理の前に加熱乾燥処理を経るようにしてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0057】
本発明は、病院等の医療機関や検査機関などから出る感染性廃棄物を滅菌処理して安全に廃棄するのに好適に利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0058】
【図1】本発明に係る廃棄物処理装置における廃棄物の加熱滅菌処理工程を模式的に示す説明図である。
【図2】図1の次工程を示す説明図である。
【図3】図2の次工程を示す説明図である。
【図4】図3の次工程を示す説明図である。
【図5】図4の次工程を示す説明図である。
【図6】図5の次工程を示す説明図である。
【図7】図6の次工程を示す説明図である。
【図8】図7の次工程を示す説明図である。
【図9】本発明に係る廃棄物処理装置における気体の排出経路を模式的に示す説明図である。
【符号の説明】
【0059】
1 廃棄物処理装置
2 廃棄物投入部
21 投入板
3 破砕部
31 投入口
32 破砕機
4 加熱滅菌槽
4b 排気口
41 加熱手段
42 撹拌手段
43 検知器
5 排気流路
51 検知手段
6 無害化処理部
61 ミストセパレータ
62 プレフィルター
63 高性能フィルター
64 活性炭部
7 空気導入路
8 排気ブロアー
10 廃棄物

【特許請求の範囲】
【請求項1】
廃棄物を加熱して滅菌する加熱滅菌槽に、この加熱滅菌槽において加熱により生成された気体を排出するための排気口が設けられるとともに、前記気体を外部に排出する排気流路が前記排気口に接続して設けられ、この排気流路には、除菌手段および脱臭手段を有する無害化処理部が備えられて前記気体の無害化処理を行うとともに、この無害化処理部の上流側に空気導入路が連通されて、空気導入路から流入させた空気により前記気体を希釈して無害化処理部を通過する気体の適温化が図られることを特徴とする廃棄物処理装置。
【請求項2】
請求項1に記載の廃棄物処理装置において、
前記除菌手段は、加熱滅菌槽から排出された気体に含まれる粉塵粒子を除去する高性能フィルターを含むことを特徴とする廃棄物処理装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の廃棄物処理装置において、
前記脱臭手段は、加熱滅菌槽から排出された気体の臭気を除去する活性炭部を含むことを特徴とする廃棄物処理装置。
【請求項4】
請求項2または3に記載の廃棄物処理装置において、
前記無害化処理部は、さらに、前記気体を気液分離して除湿するミストセパレータと、前記気体中に含まれる粉体成分、水溶性成分または加水分解性成分を除去して前処理するプレフィルターとを含み、
排気流路の上流側から順に、ミストセパレータ、プレフィルター、高性能フィルター、および活性炭部が配置されていることを特徴とする廃棄物処理装置。
【請求項5】
請求項1〜請求項4のいずれか一つの請求項に記載の廃棄物処理装置において、
前記排気流路の末端には無害化処理部を経た気体を排気する排気ブロアーが設けられたことを特徴とする廃棄物処理装置。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか一つの請求項に記載の廃棄物処理装置において、
前記無害化処理部の上流側に排気流路内の温度または湿度を測定する検知手段が設けられ、この検知手段により得られた測定情報に基づいて排気流路からの排気量が制御されることを特徴とする廃棄物処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2009−82823(P2009−82823A)
【公開日】平成21年4月23日(2009.4.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−256112(P2007−256112)
【出願日】平成19年9月28日(2007.9.28)
【出願人】(000002358)新明和工業株式会社 (919)
【Fターム(参考)】