説明

廃棄物処理装置

【課題】投入容器から臭気を発散させず、かつ投入容器が周囲の臭気を十分に吸引し、排気することのできる廃棄物処理装置を提供する。
【解決手段】廃棄物処理装置は、家庭から排出される有機物系の廃棄物が投入される投入口11、21、31を有する投入容器10、20、30を備えている。投入容器10等は、投入口11等を開閉可能な蓋部材12、22、32を有している。蓋部材12等には空気流入口13、23、33が設けられている。投入容器10等の排出口15、25、35は処理槽40に連通している。処理槽40は排気装置50を備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は廃棄物処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、家庭から排出される有機物系の廃棄物であるし尿を処理可能な従来のトイレ装置が開示されている。このトイレ装置は、便鉢と、便鉢に連通する排出管とを有する大便器を備えている。排出管の下端開口には、開口を開閉可能なフラッパーが取り付けられている。大便器の下方には、連通管を介して処理槽が設けられている。連通管には吸気管が接続されている。処理槽には排気装置が設けられている。
【0003】
このトイレ装置では、常時はフラッパーが排出管の下端開口を閉鎖しているため、処理槽の臭気がトイレ室内へ流入することを確実に防止することができる。フラッパーは、汚物を排出する際に排出管の下端開口を開放する。この時には、吸気管が閉じられ、排気装置により便鉢からトイレ室内の空気を吸引する。このため、処理槽の臭気がトイレ室内へ流入することを防止できる。
【0004】
【特許文献1】特開2006−112093号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、上記従来のトイレ装置では、常時はフラッパーが排出管の下端開口を閉鎖しており、汚物を排出する際の数秒間のみフラッパーが排出管の下端開口を開放し、トイレ室内の空気を吸引する。このため、トイレ室内の臭気を便鉢を介して十分に吸引し、排気することは困難である。
【0006】
本発明は、上記従来の実情に鑑みてなされたものであって、投入容器から臭気を発散させず、かつ投入容器が周囲の臭気を十分に吸引し、排気することのできる廃棄物処理装置を提供することを解決すべき課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
廃棄物処理装置は、家庭から排出される有機物系の廃棄物が投入される投入口と、空気流入口が設けられ、該投入口を開閉可能な蓋部材と、該投入口に連通し、投入された該廃棄物が排出される排出口とを有する投入容器と、
該排出口に連通し、該廃棄物が滞留する処理槽と、
該処理槽から排気を行う排気装置とを備えていることを特徴とする。
【0008】
この廃棄物処理装置では、排気装置が駆動されると、処理槽内の空気が屋外に排気され、それに伴い、投入容器が周囲の空気を吸引する。この際、投入口が蓋部材により閉鎖されている場合には、空気流入口から空気が吸引される。また、投入口が蓋部材により閉鎖されずに開放されている場合には、投入口から空気が吸引される。このため、処理槽内の臭気が投入容器から外部に発散しない。また、投入容器が周囲の臭気を吸引し、屋外へ排気することができる。
【0009】
したがって、本発明の廃棄物処理装置は、投入容器から臭気を発散させず、かつ投入容器が周囲の臭気を十分に吸引し、排気することができる。
【0010】
処理槽は、微生物を担持した担持体を収納し、廃棄物を分解可能であり得る。この場合、投入容器に投入された家庭から排出される有機物系の廃棄物(し尿、生ゴミ、紙類、ペットの糞、剪定枝及び雑草など)を処理槽内で微生物により分解することができる。このため、家庭から排出される有機物系の廃棄物を良好に処理することができる。また、投入容器が設置された室内の暖かい新鮮な空気(酸素)を処理槽内に導入することができるため、微生物の活動を活発にすることができ、有機物系の廃棄物を良好に分解することができる。
【0011】
空気流入口には、投入容器内から外部に空気が流出することを防止する逆止弁が設けられ得る。この場合、排気装置が駆動されず、蓋部材の空気流入口が周囲の空気を吸引しない時には、逆止弁により空気流入口が閉鎖される。このため、処理槽内の臭気が空気流入口から発散することを確実に防止することができる。
【0012】
複数の投入容器がそれぞれ別の室内外に設置され、各投入容器の排出口は床下に設置された処理槽に連通し得る。この場合、それぞれの室内外で発生する廃棄物をその場で投入容器に投入することができる。このため、廃棄物を容易に処理することができる。
【0013】
投入容器は大便器であり、投入口は便鉢の上端開口であり、蓋部材は便蓋であり、排出口は便鉢に連通する排出管の下端開口であり得る。この場合、し尿を容易に処理することができる。
【0014】
投入容器は投入口から投入された物を一旦保持する受け部材を有し、受け部材は排気装置の駆動により投入容器内の空気が処理槽内に流れることを許容し得る。この場合、投入容器内に廃棄物以外の物が誤って投入されてしまった時に、その物は、一旦受け部材に保持されるため、処理槽内に落下せずに拾い上げることができる。また、受け部材は、排気装置が駆動されると投入容器内の空気が処理槽内に流れることを許容するため、投入容器は空気流入口もしくは投入口から空気を吸引し、処理槽内の臭気が外部に発散しない。また、投入容器が周囲の臭気を吸引し、屋外へ排気することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
本発明の廃棄物処理装置を具体化した実施例1を図面を参照しつつ説明する。
【実施例1】
【0016】
実施例1の廃棄物処理装置は、図1に示すように、トイレ室1には、投入容器である洋風大便器10が設置されている。また、洗面化粧台Wが設置された洗面化粧室2及びシステムキッチンSが設置された台所3のそれぞれの室内には、投入容器20が設置されている。さらに、屋外にも投入容器30が設置されている。
【0017】
トイレ室1に設置された洋風大便器10は、図1及び図2に示すように、便器本体10Aと、便座17と、便蓋12とを備えている。便器本体10Aの外形状は、上方より下方に向けて径が小さくなる略逆円錐台形状であり、外周面が内側に湾曲している。便器本体10Aには、上方に開口する略半球形状の便鉢16が形成されている。便鉢16の上端開口11が洋風大便器10の投入口である。便鉢16の下端中央部には開口16Aが形成されている。開口16Aは、パッキン18Aを介して器具排出管18の上端開口に接続されている。
【0018】
器具排出管18内には、略平板状の受け部材18Aが組み付けられている。受け部材18Aは、周縁の一端を器具排出管18の内周面に回動自在に保持され、常時は、開口16A及び器具排出管19の内周面に対して隙間を有して略水平状態に位置している。このため、便鉢16内にし尿などの廃棄物以外の物が誤って投入されてしまった時には、その物を受け部材18Aが保持するため、拾い上げることができる。受け部材18Aは、図示しない操作レバーを操作することにより、他端が下方に回動し、略垂直状態に位置する。下端開口15は、接続ソケット19を介して、連通管42に連通している。
【0019】
排泄されたし尿は、便鉢16の上端開口11から便鉢16内を通過し、受け部材18Aに一端保持される。その後、操作レバーが操作され、受け部材18Aが回動すると、受け部材18Aに保持されたし尿は、器具排出管18の下端開口15から連通管42に排出される。
【0020】
便鉢16の上端開口11には、取り外し可能な便座17が載置される。便座17の上部には、上端開口11を開閉可能な便蓋12が載置される。便蓋12には、空気流入口13が設けられている。空気流入口13には、便鉢16内から外部に空気が流出することを防止する逆止弁14が設けられている。逆止弁14は、弁体14Bと、弁体14Bを便蓋12の裏面に当接させる方向に付勢するばね14Sとから構成されている。
【0021】
洗面化粧室2及び台所3に設置された投入容器20は、図1及び図3に示すように、筐体20Aと、筐体20A内に一体化された内容器26と、筐体20Aに一端が軸支された蓋部材22とを備えている。内容器26の上端開口21が投入口であり、下端中央部に形成された下端開口25が排出口である。下端開口25は、連通管42の上端にパッキン42Pを介して接続されている。
【0022】
下端開口25には、略平板状の受け部材25Aが設けられている。受け部材25Aは、周縁の一端を下端開口25の一部から伸びた垂下片に回動自在に保持されて、常時は、下端開口25及び連通管42の内周面に対して隙間を有して略水平状態に位置している。このため、内容器20内に紙類などの有機物系の廃棄物以外の物が誤って投入されてしまった時には、その物を受け部材25Aが保持するため、拾い上げることができる。受け部材25Aは、図示しない操作レバーを操作することにより、他端が下方に回動し、略垂直状態に位置する。これにより、受け部材25Aに保持された紙類などの有機物系の廃棄物は、下端開口25から連通管42内へ排出される。
【0023】
内容器26の下部内面は、下端開口25に向かって窄むように曲面で形成されている。このため、上端開口21から投入された紙類などの有機物系の廃棄物は、スムーズに下端開口25に向けて落下する。
【0024】
蓋部材22は、軸支部27を中心に回動し、投入口である内容器26の上端開口21を開閉可能である。蓋部材22には、空気流入口23が設けられている。空気流入口23には、内容器26内から外部に空気が流出することを防止する逆止弁24が設けられている。逆止弁24は、弁体24Bと、弁体24Bを蓋部材22の裏面に当接させる方向に付勢するばね24Sとから構成されている。
【0025】
屋外に設置された投入容器30は、図1に示すように、筐体30Aと、筐体30A内に一体化された内容器36と、筐体30Aに一端が軸支された蓋部材32とを備えている。内容器36の上端開口31が投入口であり、下端に形成された下端開口35が排出口である。下端開口35は、連通管42の上端に接続されている。
【0026】
下端開口35には、略平板状の受け部材35Aが設けられている。受け部材35Aは、周縁の一端を下端開口35の一部から伸びた垂下片に回動自在に保持されて、常時は、下端開口35及び連通管42の内周面に対して隙間を有して略水平状態に位置している。このため、内容器36内に剪定枝などの有機物系の廃棄物以外の物が誤って投入されてしまった時には、その物を受け部材35Aが保持するため、拾い上げることができる。受け部材35Aは、図示しない操作レバーを操作することにより、他端が下方に回動し、略垂直状態に位置する。これにより、受け部材35Aに保持された剪定枝などの有機物系の廃棄物は、下端開口35から連通管42内へ排出される。
【0027】
内容器36の下部内面は、下端開口35に向かって窄むように曲面で形成されている。このため、上端開口31から投入された剪定枝などの有機物系の廃棄物は、スムーズに下端開口35に向けて落下する。
【0028】
蓋部材32は、図示しない軸支部を中心に回動し、投入口である内容器36の上端開口31を開閉可能である。蓋部材32には、空気流入口33が設けられている。空気流入口33には、洗面化粧室2などに設置された投入容器20の逆止弁24と同様の構造を有する逆止弁34が設けられている。
【0029】
トイレ室1に設置された洋風大便器10の排出口である下端開口15と、洗面化粧室2及び台所3に設置された投入容器20の排出口である下端開口25と、屋外に設置された投入容器30の排出口である下端開口35とのそれぞれに接続された各連通管42の下端は、床下に配置された処理槽40に接続されている。このため、洋風大便器10及び投入容器20、30の下端開口15、25、35から排出されたし尿、紙類、剪定枝などの有機物系の廃棄物は処理槽40内に投入される。処理槽40内には、微生物を担持した担持体41であるおが屑が収納され、投入された有機物系の廃棄物を分解可能である。処理槽40には、排気装置50が接続されている。排気装置50は、処理槽40内を屋外に連通する排気管51と、排気管51の途中に配置され、図示しないモーターにより回転するファン52とから構成されている。
【0030】
このように構成された実施例1の廃棄物処理装置は、排気装置50が駆動され、ファン52が回転すると、処理槽40内の空気が排気管51を通って、屋外に排気される。これに伴い、各受け部材18A、25A、35Aの周囲の隙間から便鉢16内及び内容器26、36内の空気が吸引され、洋風大便器10及び投入容器20、30が周囲の空気を吸引することができる。この際、投入口(便鉢16の上端開口11、内容器26、36の上端開口21、31)が便蓋12又は蓋部材22、32により閉鎖されている場合には、空気流入口13、23、33から空気が吸引される。また、投入口が便蓋12又は蓋部材22、32により閉鎖されずに開放されている場合には、投入口から空気が吸引される。このため、処理槽40内の臭気は洋風大便器10及び投入容器20、30から外部に発散しない。また、洋風大便器10及び投入容器20、30が周囲の臭気を吸引し、屋外へ排気することができる。
【0031】
したがって、実施例1の廃棄物処理装置は、洋風大便器10及び投入容器20、30から臭気を発散させず、かつ洋風大便器10及び投入容器20、30が周囲の臭気を十分に吸引し、排気することができる。
【0032】
トイレ室1では、し尿やペットの糞などを洋風大便器10から処理槽40内に投入することができる。洗面化粧室2では、洗面化粧室2内で使用した紙類などを投入容器20から処理槽40内に投入することができる。台所3では、生ゴミなどを投入容器20から処理槽40内に投入することができる。屋外では、剪定枝や雑草などを投入容器30から処理槽40内に投入することができる。処理槽40内に投入されたこれら有機物系の廃棄物は、処理槽40内で微生物により分解される。このように、それぞれの室内外で発生する有機物系の廃棄物をその場で投入容器20、30に投入することができ、良好に処理することができる。
【0033】
また、トイレ室1、洗面化粧室2及び台所3内の温かい新鮮な空気(酸素)を処理槽40内に導入することができるため、微生物の活動を活発にすることができ、有機物系の廃棄物を良好に分解することができる。
【0034】
また、便蓋12及び蓋部材22、32に設けられた空気流入口13、23、33には、逆止弁14、24、34が設けられているため、排気装置50が駆動されず、吸気流入口13、23、33から周囲の空気を吸引しない時には、逆止弁14、24、34により空気流入口13、23、33が閉鎖される。このため、処理槽40内の臭気が空気流入口13、23、33から発散することを確実に防止することができる。
【0035】
以上において、本発明を実施例1に即して説明したが、本発明は上記実施例1に制限されるものではなく、その趣旨に逸脱しない範囲で適宜変更して適用できることはいうまでもない。
【0036】
例えば、排気装置は、蓋部材が投入口を開放すると排気を開始し、その後、蓋部材が投入口を閉鎖し、設定時間が経過すると排気を停止するようにしてもよい。このようにすると、蓋部材が投入口を開放している間は、室内の空気を投入口から吸引し、臭気が処理槽から室内に流入することを防止する。また、蓋部材が投入口を閉鎖した後も設定時間が経過するまで、室内の空気を吸引して室内を換気する。これにより、室内に臭気が残留しない。また、排気装置の駆動が停止されるため、省エネを図ることができる。
【0037】
洋風大便器10のみを処理槽40に連通してもよい。この場合、処理槽40は、浄化槽であってもよい。
洋風大便器10は、一般的な形状の洋風大便器であってもよい。また、簡易水洗式大便器であってもよい。また、和風大便器であってもよい。
小便器を処理槽40に連通してもよい。この場合、小便器の鉢面の開口を覆う蓋部材を設けるとよい。
【0038】
空気流入口13、23、33には、逆止弁が設けられていなくてもよい。
操作レバーが操作され、受け部材18A、25A、35Aの一端が下方に回動して略垂直状態に位置する際に排気装置のファン52の回転数を増加させるとよい。このようにすると、洋風大便器10及び投入容器20、30から処理槽40内の臭気が外部への発散することをより確実に防止することができる。
洋風大便器10及び投入容器20、30は、受け部材18A、25A、35Aを有しなくてもよい。
処理槽40は、微生物を担持した担持体と、有機物系の廃棄物とを攪拌する攪拌装置を設けていてもよい。この場合、廃棄物の分解がより良好に行なわれる。
屋外に設置された投入容器30は、雨水などが内部に侵入しない構造を有するとよい。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】実施例1の廃棄物処理装置を示す全体図である。
【図2】実施例1の投入容器である洋風大便器を示す一部切欠き図である。
【図3】実施例1の投入容器を示す断面図である。
【符号の説明】
【0040】
11、21、31…投入口(上端開口)
10、20、30…投入容器(10…洋風大便器)
12、22、32…蓋部材(12…便蓋)
13、23、33…空気流入口
15、25、35…排出口(下端開口)
18A、25A、35A…受け部材
14、24、34…逆止弁
40…処理槽
41…担持体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
家庭から排出される有機物系の廃棄物が投入される投入口と、空気流入口が設けられ、該投入口を開閉可能な蓋部材と、該投入口に連通し、投入された該廃棄物が排出される排出口とを有する投入容器と、
該排出口に連通し、該廃棄物が滞留する処理槽と、
該処理槽から排気を行う排気装置とを備えていることを特徴とする廃棄物処理装置。
【請求項2】
前記処理槽は、微生物を担持した担持体を収納し、該廃棄物を分解可能である請求項1記載の廃棄物処理装置。
【請求項3】
前記空気流入口には、前記投入容器内から外部に空気が流出することを防止する逆止弁が設けられている請求項1又は2記載の廃棄物処理装置。
【請求項4】
複数の前記投入容器がそれぞれ別の室内外に設置され、各該投入容器の前記排出口は床下に設置された前記処理槽に連通している請求項1乃至3のいずれか1項記載の廃棄物処理装置。
【請求項5】
前記投入容器は大便器であり、前記投入口は便鉢の上端開口であり、前記蓋部材は便蓋であり、前記排出口は該便鉢に連通する排出管の下端開口である請求項1乃至4のいずれか1項記載の廃棄物処理装置。
【請求項6】
前記投入容器は前記投入口から投入された物を一旦保持する受け部材を有し、該受け部材は前記排気装置の駆動により前記投入容器内の空気が前記処理槽内に流れることを許容する請求項1乃至5のいずれか1項記載の廃棄物処理装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate


【公開番号】特開2010−36060(P2010−36060A)
【公開日】平成22年2月18日(2010.2.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−198513(P2008−198513)
【出願日】平成20年7月31日(2008.7.31)
【出願人】(000000479)株式会社INAX (1,429)
【Fターム(参考)】